(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
上記「可撓性を有する中空のチューブ」は、医療分野で用いられるチューブであって、その内腔内には、血液、薬液、栄養剤、体液、生理食塩水等の液状物が流れる。このチューブは、例えば、点滴液入りの容器、経腸栄養剤入りの容器、血液バック、若しくは腹膜透析液が充填された容器に接続される送液回路、又は血液透析に使用される血液回路等に使用される。
【0012】
「被接合部材」は、医療用具を構成する部品であって上記チューブに接合されるものであり、血液、薬液、栄養剤、体液、生理食塩水等の液状物が流れる貫通孔が形成されているものであれば特に制限はないが、例えば、コネクタ、アダプタ、三方活栓、点滴筒、混注部、瓶針等である。
【0013】
チューブが被接合部材の貫通孔内に挿入される場合は、上記「挿入体」はチューブであり、チューブの内腔内に被接合部材が挿入される場合は、上記「挿入体」は被接合部材である。
【0014】
本願において、「接合」とは、熱により溶融された樹脂同士が混和した後、固化することにより、チューブと被接合部材とが相互に接着されることをいう。
【0015】
本発明の好ましい医療用連結部材(以下、「医療用連結部材」を「連結部材」と略して称する場合もある。)の一例では、チューブが被接合部材の貫通孔内に挿入されている。すなわち、チューブが挿入体である。そして、連結部の溶着領域の非接触領域側とは反対側において、被接合部材の内周面とチューブの外周面との間に隙間が存在する。この場合、医療用連結部材の製造過程において、チューブと被接合部材との間に赤外線吸収剤を供給し易いので好ましい。
【0016】
本発明の好ましい医療用連結部材の一例では、被接合部材がチューブの内腔内に挿入されている。すなわち、被接合部材が挿入体である。そして、連結部の溶着領域の非接触領域側とは反対側において、前記被接合部材の外周面と前記チューブの内周面との間に隙間が存在している。この場合、医療用連結部材の製造過程において、チューブと被接合部材との間に赤外線吸収剤を供給し易いので好ましい。
【0017】
本発明の好ましい医療用連結部材の製造方法の一例では、チューブが被接合部材の貫通孔内に挿入される。即ち、チューブが挿入体である。この場合、被接合部材の内周面が、部分接触面と、非接触面と、接触面とを、チューブの挿入方向に沿ってこの順に含む。そして、被接合部材の、部分接触面を有する箇所における最大内径をW1
max、非接触面を有する箇所における内径をW3、接触面を有する箇所における内径をW2とすると、W2<W1max<W3を満足すると好ましい。その理由は、例えば、W2,W1max<W3の密着性が高く、故に、被接合部材の貫通孔やチューブの内腔内を通る液状物中への、部分接触面と部分接触面と向かい合うチューブの外周面の間に供給された赤外線吸収剤及び/又はその分解物の溶出が、よりいっそう確実に防止できるからである。
【0018】
また、チューブが挿入体である場合、上記非接触面を、第1非接触面と称することとすると、被接合部材の内周面は、部分接触面の第1非接触面側とは反対側に、部分接触面に隣接し且つその全周がチューブの外周面に接しない第2非接触面を有していると好ましい。この場合、第2非接触面と、当該第2非接触面と向かい合うチューブの外周面との間に隙間が存在するので、赤外線吸収剤の供給が行い易く、好ましい。
【0019】
本発明の好ましい医療用連結部材の製造方法の一例では、被接合部材が前記チューブの内腔内に挿入される。即ち、被接合部材が挿入体である。この場合、被接合部材の外周面は、部分接触面と、非接触面と、接触面とを、被接合部材のチューブの内腔内への挿入方向に沿ってこの順に含む。そして、被接合部材の部分接触面を有する箇所における最大外径をX2
max、非接触面を有する箇所における外径をX3、接触面を有する箇所における外径をX1とすると、X3<X2
max<X1を満足すると好ましい。その理由は、例えば、X1、X2
max>X3、X1=X2
maxである場合よりも、上記接触面と接触面と向かい合うチューブの内周面との密着性が高く、故に、被接合部材の貫通孔やチューブの内腔内を通る液状物中への、部分接触面と部分接触面と向かい合うチューブの内周面の間に供給された赤外線吸収剤及び/又はその分解物の溶出が、よりいっそう確実に防止できるからである。
【0020】
また、被接合部材が挿入体である場合、上記非接触面を、第1非接触面と称することとすると、被接合部材の外周面は、部分接触面の第1非接触面側とは反対側に、部分接触面に隣接し且つその全周がチューブの内周面に接しない第2非接触面を有していると好ましい。この場合、第2非接触面と、当該第2非接触面と向かい合うチューブの内周面との間に隙間が存在するので、赤外線吸収剤の供給が行い易く、好ましい。
【0021】
本発明の好ましい医療用連結部材の製造方法の一例では、部分接触面は、梨地面であるか、リブを有する。
【0022】
以下、本発明の実施形態を示しながら詳細に説明する。但し、本発明は以下の実施形態に限定されないことは言うまでもない。
【0023】
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1にかかる医療用連結部材の正面図であり、
図2は
図1に示された医療用連結部材の中心軸に沿った断面図である。
【0024】
図1及び
図2に示されるように、本実施形態の医療用連結部材1は、中空のチューブ2と、被接合部材3とを含む。被接合部材3には、その長手方向に貫通した貫通孔3cが形成されており、被接合部材3は、その中心軸1aに対して回転対称形状を有している。被接合部材3は、その長手方向両端のうちのチューブ2と接合されている側と反対側に、例えば、チューブ2とは別の可撓性のチューブ4内に挿入されうる挿入部3dを有している。連結部材1は、チューブ2が被接合部材3の貫通孔3c内に挿入されることにより、チューブ2の一部と被接合部材3の一部とが、中心軸1aの軸方向と直交する方向に重なった連結部6を含む。
【0025】
図2に示されるように、連結部6は、溶着領域31と、非接触領域32と、接触領域33とを、被接合部材3の一方の先端3a側から他方の先端3n側に向ってこの順に含む。溶着領域31、非接触領域32、及び接触領域33の配列方向Aは、チューブ2の被接合部材3の貫通孔3cへの挿入方向と等しい。
【0026】
溶着領域31では、被接合部材3とチューブ2とが相互に接合されている。溶着領域31は、接合前に被接合部材3の部分接触面3e(
図3A参照)と被接合部材3内に挿入されたチューブ2の部分接触面3eに向かい合う外周面2aとの間に供給された赤外線吸収剤7(
図5A、
図5B参照)に赤外線を照射して、赤外線吸収剤7に隣接した被接合部材3及びチューブ2を各々溶融させた後、固化させることにより、形成されている。そのため、溶着領域31には、連結部材1の製造過程で使用された赤外線吸収剤7及び/又は赤外線吸収剤7の分解物が含まれている。非接触領域32では、被接合部材3の内周面3iとチューブ2の外周面2aとは接していない。接触領域33では、被接合部材3の内周面3g(
図3A参照)とチューブ2の外周面2a(
図3A参照)は相互に接しているが、接合はしていない。
【0027】
溶着領域31に赤外線吸収剤7及び/又は赤外線吸収剤7の分解物が存在することは、例えば、赤外分光光度計(IR)、液体クロマトグラフィー、ガスクロマトグラフィー等によって確認できる。
【0028】
チューブ2は、コスト低減の観点から、好ましくは単層構造を有している。また、チューブ2は、例えば、その長手方向全長に渡って、内径及び外径が一定である。ただし、上記「一定」には、成形上避けられない誤差範囲のものも含まれる。具体的には、内径及び外径が、各々、所定の値からの誤差が、±0.2mmの範囲内のものも含まれる。チューブ2は、射出成形法等の公知に方法により作製できる。中心軸1aに沿って見たチューブ2の開口を取り囲む内周面2bの形状は円形であり、その中心は中心軸1aに一致する。
【0029】
チューブ2の材料は、安全性が高く、融点が低いという理由から、オレフィン系重合体であると好ましい。本願において、オレフィン系重合体とは、オレフィン系単量体と、オレフィン系単量体又はその他の単量体とを重合して得られるホモポリマー又はコポリマーであって、オレフィン系単量体に由来する構成単位を50重量%以上含むものを言う。
【0030】
オレフィン系重合体としては、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン(低圧、中圧、高圧)、直鎖状低密度ポリエチレン、ボリブテン等のポリオレフィン(ホモポリマー)、プロピレン、エチレン、及びブテンからなる群から選ばれる2種以上のオレフィン系単量体を共重合して得られるコポリマー等が挙げられるが、中でも、ポリプロピレンが好ましい。
【0031】
チューブ2には、その弾性を保持するために、上記材料に加えて、さらに、滑剤、酸化防止剤、タッキング防止剤、可塑剤、界面活性剤等の添加剤が含まれていてもよい。
【0032】
チューブ2の外径及び内径について、特に制限はなく、通常、外径は1.0〜6.0mmであり、内径0.5〜4.5mmであるが、特に、外径が2.0〜5.0mmであり、内径が1.0〜3.8mmである、細径のチューブ2と、被接合部材3との接合に、本発明は好適に適用できる。細径のチューブを被接合部材の貫通孔内に挿入し、それらの接続部位を管状締め付け部材で締め付けると、外観が悪く且つ接合強度も弱いが、本発明によれば、被接合部材の貫通孔に挿入されたチューブの外径が1.0〜3.0mm程度と小さい場合でも、連結部材の外観は良好であり、且つ、接合強度も高い。
【0033】
図4Aに示されるように、チューブ2の挿入長さW12は、生物学的安全性の確保と高い液密性を確保する観点から8〜12mmが適当である。
【0034】
図3Aに示されるように、被接合部材3は、略円筒形状を有している。被接合部材3は、その長手方向に貫通する貫通孔3cを有することにより、中心軸1aに対向する内周面を有している。チューブ2が接合される前の被接合部材3の内周面3iは、中心軸1aからの距離の相違により、部分接触面3e、非接触面3f及び接触面3gを被接合部材3の端部3a側からこの順に有している。
【0035】
図3A及び
図3Bに示されるように、被接合部材3の部分接触面3eは、例えば、被接合部材3の長手方向と同方向に延びたリブ3hを複数有している。そのため、部分接触面3eは、1対のリブ3h間に凹部3jを有している。被接合部材3の部分接触面3eを有する箇所における内径は、部分接触面3eが複数のリブ3hを含むことにより、最少内径W1
minと、最大内径W1
maxとを有する。最少内径W1
minはチューブ2の外径よりも僅かに小さく、最大内径W1
maxはチューブ2の外径よりも僅かに大きいので、被接合部材3の貫通孔3c内にチューブ2が挿入されると、
図4Bに示されるように、リブ3hはチューブ2の外周面に接し、チューブ2の弾性の程度に応じてその頂部3h
tはチューブ2をその外側から径方向に押圧する。一方、凹部3j内の下側(中心軸1aから遠い側)にはチューブ2は充填されておらず、被接合部材3の内周面のうちの凹部3jに対応する箇所の少なくとも一部はチューブ2の外周面と接していない。そのため、被接合部材3内にチューブ2が挿入された状態では、非接触面3fと非接触面3fに向かい合うチューブ2の外周面2aとの隙間と、被接合部材3の外とを連通させる、細い通路8(
図4B参照)が被接合部材3の内周面とチューブ2の外周面との間に形成されるように、部分接触面3eと部分接触面3eに向かい合うチューブ2の外周面2aとが部分的に接する。リブ3hの高さHや、1対のリブ3h間の間隔W4(
図3B参照)や凹部3jの形状等は、赤外線吸収剤が、毛細管現象により、当該通路8の長手方向全長に渡って充填されるように、チューブ2の材料や、赤外線吸収剤の粘度等に応じて適宜設定されると好ましい。特に、チューブ2の材料が、熱により収縮する材料であれば、リブ3hの高さHや、1対のリブ3h間の間隔W4(
図3B参照)等は、その収縮の程度も考慮して設定されると好ましい。
【0036】
溶着領域31の連結部材1の長手方向と同方向の長さW9(
図3A)は、高い接合強度を確保する観点から、1〜4mmであると好ましく、2〜3mmであるとより好ましい。よって、部分接触面3eの被接合部材3の長手方向と同方向の長さも、同様の観点から、1〜4mmであると好ましく、2〜3mmであるとより好ましい。
【0037】
図3Aに示されるように、被接合部材3の非接触面3fを有する箇所における内径W3は、チューブ2の外径Mよりも大きいので、被接合部材3内にチューブ2が挿入された状態で、非接触面3fと非接触面3fに向かい合うチューブ2の外周面2aとは、互いに接しない。そのため、連結部材1の製造過程において、部分接触面3eと部分接触面3eに向かい合うチューブ2の外周面2aとの間に供給された赤外線吸収剤7(
図5A及び
図5B参照)は、部分接触面3eと部分接触面3eに向かい合うチューブ2の外周面2aとの間を超えて、非接触面3fと非接触面3fに向かい合うチューブ2の外周面2aとの間に侵入することが抑制されている。
【0038】
非接触面3fと非接触面3fに向かい合うチューブ2の外周面との間の距離W5(
図4A参照)は、毛細管現象を利用した通路8(
図4B参照)への赤外線吸収剤7の供給の容易化の観点から、0.1〜1mmであると好ましく、0.2〜0.8mmであると好ましい。
【0039】
非接触領域32の連結部材1の長手方向と同方向の長さW10(
図3A)は、高い生物学的安全性の確保と毛細管現象を利用した通路8への赤外線吸収剤の供給の容易化の観点から、1〜4mmであると好ましく、2〜3mmであるとより好ましい。よって、非接触面3fの被接合部材3の長手方向と同方向の長さも、同様の観点から、1〜4mmであると好ましく、2〜3mmであるとより好ましい。
【0040】
図3Aに示されるように、被接合部材3の接触面3gを有する箇所における内径W2は、被接合部材3の貫通孔3cに挿入される前のチューブ2の外径Mと等しいか、僅かに小さいと好ましい。内径W2がチューブ2の外径Mよりも僅かに小さいと、被接合部材3の貫通孔3cにチューブ2を挿入すると、接触面3gと接触面3gに向かい合うチューブ2の外周面2aとが密着し、連結部6(
図2参照)における、チューブ2と被接合部材3との液密性が向上するので好ましい。この場合、赤外線吸収剤が、仮に、非接触面3fと非接触面3fに向かい合うチューブ2の外周面2aとの間に侵入しても、接触面3gと接触面3gに向かい合うチューブ2の外周面2aとが密着しているので、チューブ2の内腔及び被接合部材3の貫通孔3c内を流れる液状物に赤外線吸収剤7及び/又はその分解物が接触することをより確実に抑制できる。
【0041】
接触領域33(
図2参照)の連結部材1の長手方向と同方向の長さW11(
図3A参照)は、高い生物学的安全性の確保、高い液密性の確保、及び組み立て容易性の観点から、1〜4mmであると好ましく、2〜3mmであるとより好ましい。よって、接触面3gの被接合部材3の長手方向と同方向の長さも、同様の観点から、1〜4mmであると好ましく、2〜3mmであるとより好ましい。
【0042】
以上のことから、被接合部材3の内径W2、最大内径W1
max、及び内径W3は、W2<W3及びW1
max<W3を満足していればよいが、液密性及び生物学的安全性の向上の観点から、W2<W1
max<W3であるとより好ましい。
【0043】
図3Bに示されるように、被接合部材3の部分接触面3eを有する箇所における最大肉厚W7
max及び最少肉厚W7
maxは、レーザー透過率を考慮すると、各々0.5〜1.2mmであると好ましく、0.4〜1.1mmであるとより好ましい。
【0044】
図3Aに示されるように、接触面3gの非接触面3f側の反対側における被接合部材3の内径W6は内径W2よりも小さいと好ましい。また、被接合部材3の内周面3iは、被接合部材3の貫通孔3c内にチューブ2を挿入した時に、チューブ2の一方の端面2cが当接する段差面3mを含んでいると好ましい。この場合、チューブ2の端面2cが段差面3mに当接するまで被接合部材3の貫通孔3c内にチューブ2を挿入するという簡単な操作により、チューブ2を所望の長さだけ被接合部材3の貫通孔3c内に挿入できるとともに、チューブ2の端面2cが段差面3mに接するので、液密性及び生物学的安全性をより向上できる。
【0045】
上記非接触面3fを、第1非接触面3fと称することとすると、被接合部材3の内周面は、部分接触面3eの第1非接触面3f側とは反対側において、部分接触面3eに隣接し且つその全周がチューブ2の内周面に接しない第2非接触面3kを有していると好ましい。第2非接触面3kは、例えば、被接合部材3の先端3aに近づくほど内径が大きくなるテーパ面3kであると好ましい。この場合、連結部材1の製造過程において、第2非接触面3k(テーパ面3k)と第2非接触面3kに向かい合うチューブ2の外周面2aとの間に隙間9(
図4A、5A参照)が存在することなる。中心軸1aに沿って見た隙間9の形状は環状である。この隙間9に、赤外線吸収剤7を一時的に貯留すれば、部分接触面3eと部分接触面3eと向かい合うチューブ2の外周面2aとの間に、赤外線吸収剤7を供給する操作が行い易くなり、且つ、赤外線吸収剤7の供給の均一性も向上するので、好ましい。
【0046】
被接合部材3の材料は、オレフィン系重合体であると好ましく、具体的には、ポリプロピレン、ポリエチレン(低圧、中圧、高圧)、直鎖状低密度ポリエチレン、ボリブテン等のポリオレフィン(ホモポリマー)、プロピレン、エチレン、及びブテンからなる群から選ばれる2種以上のオレフィン系単量体を共重合して得られるコポリマー等が挙げられるが、中でも、ポリプロピレンが好ましい。
【0047】
被接合部材3の硬度は、R40〜R140であると好ましく、R50〜R100であるとより好ましい。これらの値は、JIS−K7202に基づいて測定される値である。
【0048】
チューブ2の材料と被接合部材3の材料の組み合わせは、ポリプロピレン/ポリプロピレン、ポリエチレン/ポリエチレン等が挙げられるが、接合の相性が良く高い接合強度が得られるという理由から、ポリプロピレン/ポリプロピレンが好ましい。
【0049】
連結部材1の製造過程で使用される赤外線吸収剤としては、波長が900〜1200nmの近赤外線領域の光に対して、吸収係数Eが20以上であるものが好ましく、例えば、市販品としてClearweld(クリアウエルド(登録商標)、Gentex社製)等が挙げられる。
【0050】
次に、本発明の連結部材の製造方法の一例について説明する。ここでは、(実施形態1)の連結部材1の製造方法の一例について説明する。
【0051】
図3A及び
図4Aに示されるように、まず、チューブ2の端面2cが、段差面3mに達する迄、被接合部材3の貫通孔3c内にチューブ2を挿入する。
【0052】
次いで、
図5A及び
図5Bに示されるように、赤外線吸収剤7を隙間9に供給する。赤外線吸収剤7の供給は、チューブ2及び被接合部材3の周方向に接合ムラが生じないように、環状の隙間9の周方向に均等に行う。すると、赤外線吸収剤7は、毛細管現象により通路8(
図4B参照)内に侵入し、部分接触面3eとチューブ2の部分接触面3eに向かい合う外周面2aとの間に赤外線吸収剤7が供給されることとなる。
【0053】
赤外線吸収剤7の供給量は、生物学的安全性を向上させる観点から、通路8(
図4B)を赤外線吸収剤7で満たすことができるが、通路8を出て、非接触面3fと非接触面3fに向かい合うチューブ2の外周面2aとの間にまで侵入しないか、侵入しても僅かであるような量であると好ましい。また、赤外線吸収剤7の供給量は、生物学的安全性を向上させる観点から、接触面3gにまで達しない量であることが好ましい。
【0054】
次に、
図6に示されるように、被接合部材3の外周側から、部分接触面3eと部分接触面3eに向かい合うチューブ2の外周面との間に供給された赤外線吸収剤7に赤外線を照射する。すると、赤外線吸収剤7が赤外線を吸収して発熱する。この熱により、部分接触面3eとチューブ2の部分接触面3eに向かい合う外周面とが各々溶融する。被接合部材3とチューブ2は相互に相溶し易い樹脂材料から形成されているので、溶融した被接合部材3の樹脂と、溶融したチューブ2の樹脂とが混和し、相互に混和した溶融樹脂が固化するので、チューブ2と被接合部材3とは強固に接合される。
【0055】
チューブ2と被接合部材3の接合に使用される赤外線は、波長が900〜1200nmの電磁波であればよく、赤外線の照射装置として半導体レーザー装置を用いればよい。
【0056】
レーザー照射量(J/mm)等の赤外線照射条件は、赤外線吸収剤の種類、チューブ2及び被接合部材3の材料等に応じて適宜設定すればよい。
【0057】
このようにして得られた連結部材1における、チューブ2と被接合部材3の接合強度は、50N以上であると好ましく、80N以上であるとより好ましい。この接合強度は、JIS T 3211付属書に規定された破壊強度試験1.4に記載の方法によって測定される値である。
【0058】
このようにして得られた連結部材1の気密性は、1MPa以上であると好ましく、3MPa以上であるとより好ましい。この気密性は、JIS T 3211付属書に規定された気密度試験1.2に記載の方法によって測定される値である。
【0059】
(実施形態2)
図7は、本発明の実施形態2にかかる医療用連結部材の正面図であり、
図8は
図7に示された医療用連結部材の中心軸に沿った断面図である。
【0060】
図7及び
図8に示されるように、本実施形態の医療用連結部材10は、中空のチューブ12と、被接合部材13とを含む。被接合部材13には、その長手方向に貫通した貫通孔13cが形成されており、その中心軸10aに対して回転対称形状を有している。被接合部材13は、その長手方向両端のうちのチューブ12と接合されている側と反対側に、例えば、チューブ12とは別の可撓性のチューブ内に挿入されうる挿入部(図示せず)を有している。連結部材10は、被接合部材13がチューブ12の内腔12c内に挿入されることにより、チューブ12の一部と被接合部材13の一部とが、中心軸10aの軸方向と直交する方向に重なった連結部16を含む。
【0061】
図8に示されるように、連結部16は、溶着領域131と、非接触領域132と、接触領域133とを、チューブ12の一方の先端12b側から他方の先端側に向ってこの順に含む。溶着領域131、非接触領域132、及び接触領域133の配列方向Bは、被接合部材13のチューブ12への挿入方向と等しい。
【0062】
溶着領域131では、被接合部材13とチューブ12とが相互に接合されている。溶着領域131は、接合前に被接合部材13の部分接触面13e(
図9A参照)と部分接触面13eに向かい合うチューブ12の内周面12aとの間に供給された赤外線吸収剤17(
図12A、
図12B参照)に赤外線を照射して赤外線吸収剤17に隣接した被接合部材13及びチューブ12を各々溶融させた後、固化させることにより、形成されている。そのため、溶着領域131には、連結部材10の製造過程で使用された赤外線吸収剤17及び/又は赤外線吸収剤17の分解物が含まれている。非接触領域132では、被接合部材13の外周面13f(
図10参照)とチューブ12の内周面12aとは接していない。接触領域133では、被接合部材13の外周面13g(
図10参照)とチューブ12の内周面12aは相互に接しているが、接合はしていない。
【0063】
チューブ12の材料等は、実施形態1の連結部材1を構成するチューブ12と同じである。チューブ12は、チューブ12内に被接合部材13が挿入された際、後述する被接合部材13の部分接触面13eに含まれるリブ13h(
図9B、
図11B参照)に押圧されることにより若干変形する程度の弾性を有している。本実施形態で使用されるチューブ12も、好ましくは単層構造を有し、内径及び外径も、その長手方向全長に渡って一定である。中心軸10aに沿って見たチューブ12の開口を取り囲む内周面12aの形状は円形であり、その中心は中心軸10aに一致する。
【0064】
チューブ12の外径及び内径について、特に制限はなく、通常、外径は3〜12mmであり、内径2〜10mmである。
【0065】
被接合部材13の挿入長さX12(
図12A参照)は、生物学的安全性の確保と高い液密性を確保する観点から、8〜12mmが適当である。
【0066】
図9Aに示されるように、被接合部材13は、略円筒形状を有している。被接合部材13の外周面13iは、中心軸10aからの距離の相違により、接触面13g、非接触面13f及び部分接触面13eを被接合部材13の一方の先端13n側から他方の先端側にこの順に有している。
【0067】
図9A〜
図9Bに示されるように、被接合部材13の部分接触面13eは、被接合部材13の長手方向と同方向に延びたリブ13hを複数有している。そのため、部分接触面13eは、1対のリブ13h間には凹部13jを有している。被接合部材13の部分接触面13eを有する箇所における外径は、部分接触面13eが複数のリブ13hを含むことにより、最少外径X2
minと、最大外径X2
maxとを有する。最少外径X2
minはチューブ12の内径よりも僅かに小さく、最大外径X2
maxはチューブ12の内径よりも僅かに大きいので、被接合部材13をチューブ12の内腔に挿入すると、
図11Bに示されるように、リブ13hはチューブ12の内周面に接し、チューブ12の弾性の程度に応じてその頂部13h
tはチューブ12をその内側から径方向に押圧する。一方、凹部13j内の下側(中心軸10aから近い側)にはチューブ12は充填されておらず、被接合部材13の外周面のうちの凹部13jに対応する箇所の少なくとも一部はチューブ12の内周面と接していない。そのため、チューブ12内に被接合部材13内が挿入された状態では、
図11Bに示されるように、非接触面13fと非接触面13fに向かい合うチューブ12の外周面12aとの隙間と、被接合部材13の外とを連通させる細い通路18が被接合部材13の外周面13i(
図10参照)とチューブ12の内周面12a(
図10参照)との間に形成されるように、部分接触面13eと、部分接触面13eに向かい合うチューブ12の内周面12aとが部分的に接する。
図9Bに示されるように、リブ13hの高さLや、1対のリブ13h間の間隔X4や凹部13jの形状等は、赤外線吸収剤17が、毛細管現象により、当該通路18の長手方向全長に渡って充填されるように、チューブ12の材料や、赤外線吸収剤17の粘度等に応じて適宜設定されると好ましい。特に、チューブ12の材料が、熱により収縮する材料であれば、リブ13hの高さLや、1対のリブ13h間の間隔X4等は、その収縮の程度も考慮して設定されると好ましい。
【0068】
溶着領域131の連結部材10の長手方向と同方向の長さX9(
図10A)は、高い接合強度を確保する観点から、1〜4mmであると好ましく、2〜3mmであるとより好ましい。よって、部分接触面13eの被接合部材13の長手方向と同方向の長さも、同様の観点から、1〜4mmであると好ましく、2〜3mmであるとより好ましい。
【0069】
図8〜
図10に示されるように、被接合部材13の非接触面13f(
図10参照)を有する箇所における外径X3は、チューブ12の内径よりも小さいので、チューブ12内に被接合部材13が挿入された状態で、非接触面13fと非接触面13fに向かい合うチューブ12の内周面12aとは、互いに接しない。そのため、連結部材10の製造過程において、部分接触面13eと部分接触面13eに向かい合うチューブ12の内周面12aとの間に供給された赤外線吸収剤17(
図12A,
図12B参照)は、部分接触面13eと部分接触面13eに向かい合うチューブ12の内周面12aとの間を超えて、非接触面13fと非接触面13fに向かい合うチューブ12の内周面12aとの間に侵入することが抑制される。
【0070】
非接触面13fと非接触面13fに向かい合うチューブ12の内周面12aとの間の距離X5(
図11A参照)は、毛細管現象を利用した通路18(
図11B参照)への赤外線吸収剤17の供給の容易化の観点から、0.1〜1mmであると好ましく、0.2〜0.8mmであると好ましい。
【0071】
非接触領域132の連結部材10の長手方向と同方向の長さX10(
図10)は、高い生物学的安全性の確保と毛細管現象を利用した通路18への赤外線吸収剤の供給の容易化の観点から、1〜4mmであると好ましく、2〜3mmであると好ましい。よって、非接触面13fの被接合部材13の長手方向と同方向の長さも、同様の観点から、1〜4mmであると好ましく、2〜3mmであるとより好ましい。
【0072】
図8〜
図10に示されるように、被接合部材13の接触面13gを有する箇所における外径X1は、被接合部材13が挿入される前のチューブ12の内径Qと等しいか、僅かに大きいと好ましい。外径X1がチューブ12の内径Qよりも僅かに大きいと、チューブ12の内腔内に被接合部材13を挿入すると、接触面13gと接触面13gに向かい合うチューブ12の内周面12aとが密着するので、連結部部16(
図8参照)における、チューブ12と被接合部材13との液密性が向上するので好ましい。この場合、赤外線吸収剤が、仮に、非接触面13fと非接触面13fに向かい合うチューブ12の内周面との間に侵入しても、接触面13gと接触面13gに向かい合うチューブ12の外周面とが密着しているので、チューブ12の内腔及び被接合部材13の貫通孔13c内を流れる液状物に赤外線吸収剤7及び/又はその分解物が接触することがより確実に抑制できる。
【0073】
接触領域133(
図8参照)の連結部材10の長手方向と同方向の長さX11(
図10)は、高い生物学的安全性の確保、高い液密性の確保、及び組み立て容易性の観点から、1〜4mmであると好ましく、2〜3mmであるとより好ましい。よって、接触面13gの被接合部材13の長手方向と同方向の長さも、同様の観点から、1〜4mmであると好ましく、2〜3mmであるとより好ましい。
【0074】
以上のことから、被接合部材13の外径X1、最大外径X2
max、及び外径X3は(
図9A参照)、X1>X3及びX2
max>X3を満足していればよいが、液密性及び生物学的安全性の向上の観点から、X3<X2
max<X1であるとより好ましい。
【0075】
上記非接触面13fを、第1非接触面13fと称することとすると、被接合部材13の外周面は、
図9Aに示されるように、部分接触面13eの第1非接触面13f側とは反対側において、部分接触面13eに隣接し且つその全周がチューブ12の内周面に接しない第2非接触面として、例えば、被接合部材13の先端13nから遠のくほど外径が小さくなるテーパ面13k
1及びテーパ面13k
1に隣接しその直径が最大外径X2
Maxより小さい円筒面13k
2を有していると好ましい。この場合、連結部材10の製造過程において、被接合部材13の第2非接触面(テーパ面13k
1及び円筒面13k
2)と当該第2非接触面に向かい合うチューブ12の内周面12aとの間に隙間19(
図11A参照)が存在することなる。軸10a沿って見た隙間9の形状は環状である。この隙間19に、赤外線吸収剤17を一時的に貯留すれば、部分接触面13eと部分接触面13eと向かい合うチューブ12の内周面12aとの間に、赤外線吸収剤17を供給する操作が行い易くなり、且つ、赤外線吸収剤17の供給の均一性も向上するので、好ましい。
【0076】
被接合部材13の材料は実施形態1で用いられた被接合部材3のそれと同じでよい。チューブ12と被接合部材13の材料の好ましい組み合わせについても、実施形態1におけるそれを同じでよい。
【0077】
連結部材10の製造過程で使用される赤外線吸収剤についても、実施形態1で用いられたそれと同じでよい。
【0078】
次に、本発明の連結部材の製造方法の他の一例について説明する。ここでは、(実施形態2)の連結部材10の製造方法の一例について説明する。
【0079】
図12Aに示されるように、被接合部材13をチューブ12内に挿入する。
【0080】
次いで、
図12A及び
図12Bに示されるように、部分接触面13e(
図10参照)とチューブ12の部分接触面13eに向かい合う内周面との間に赤外線吸収剤17を供給する。赤外線吸収剤17の供給は、被接合部材13が第2非接触面(テーパ面13k
1及び円筒面13k2、
図9A参照)を有することにより形成された、チューブ12との隙間19に、実施形態1の場合と同様にして供給する。使用される赤外線吸収剤17は、実施形態1において用いたそれと同じでよい。
【0081】
次に、
図13に示されるように、チューブ12の外周側から、部分接触面13e(
図10参照)と部分接触面13eに向かい合うチューブ12の内周面12aとの間に供給された赤外線吸収剤17(
図12B参照)に赤外線を照射する。すると、赤外線吸収剤17が赤外線を吸収して発熱する。この熱により、部分接触面13eと部分接触面13eに向かい合うチューブ12の内周面12aとが各々溶融する。被接合部材13とチューブ12は相互に相溶し易い樹脂材料から形成されているので、溶融した被接合部材13の樹脂と、溶融したチューブ12の樹脂とが混和し、相互に混和した溶融樹脂が固化するので、チューブ12と被接合部材13とは強固に接合される。赤外線照射条件は、実施形態1の場合と同じでよい。
【0082】
このようにして得られた連結部材10おける、チューブ12と被接合部材13の接合強度及び気密性は、各々、実施形態1の連結部材1におけるそれと同じでよい。
【0083】
尚、実施形態1及び実施形態2では、被接合部材の部分接触面が複数のリブを有している、これに代えて、部分接触面に梨地加工が施されていてもよい。梨地加工が施された面の表面粗さは、部分接触面と部分接触面に向かい合うチューブの面との間への赤外線吸収剤が適切に供給されるべく、0.05〜1.0Raであると好ましく、0.1〜0.5Raであるとより好ましい。