(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
n型層とp型層とが積層された構成を具備する半導体層が絶縁性の基板上に形成され、前記半導体層を用いて発光ダイオードと保護ダイオードとが形成された構成を具備する発光素子であって、
前記基板上における前記発光ダイオードが形成された領域である発光ダイオード領域と前記基板上における前記保護ダイオードが形成された領域である保護ダイオード領域との間で前記半導体層が除去された分離溝を具備し、
前記半導体層の上に透明電極が形成され、
前記発光ダイオード領域における前記透明電極の上に発光ダイオードカソード電極及び発光ダイオードアノード電極が、前記保護ダイオード領域における前記透明電極の上に保護ダイオードカソード電極及び保護ダイオードアノード電極が、絶縁層を介してそれぞれ形成され、
前記発光ダイオードカソード電極及び前記保護ダイオードカソード電極は、前記透明電極に形成された開口を通して前記n型層と接続され、
前記分離溝を挟んで、前記発光ダイオードアノード電極と前記保護ダイオードカソード電極、前記発光ダイオードカソード電極と前記保護ダイオードアノード電極、がそれぞれ対向するように配置され、前記半導体層の上における前記発光ダイオードアノード電極、前記発光ダイオードカソード電極、前記保護ダイオードカソード電極、及び前記保護ダイオードアノード電極の高さが略同一とされたことを特徴とする発光素子。
前記発光ダイオードアノード電極と前記保護ダイオードカソード電極、前記発光ダイオードカソード電極と前記保護ダイオードアノード電極、を前記分離溝をまたいでそれぞれ接続し、前記基板と別体とされた実装基板においてパターニングされて形成された接続電極を上面に具備することを特徴とする請求項1に記載の発光素子。
前記発光ダイオードカソード電極は、前記絶縁層に形成された複数の開口を介して前記半導体層におけるn型層に接続されたことを特徴とする請求項1又は2に記載の発光素子。
前記発光ダイオードアノード電極、前記発光ダイオードカソード電極は、それぞれ前記発光ダイオード領域における一方の端部側、他方の端部側に形成されたことを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の発光素子。
【背景技術】
【0002】
半導体の発光ダイオード(LED)は、各種の目的に使用されている。例えば、これを用いた照明機器は、従来の白熱電球や蛍光灯と比べて低消費電力かつ低発熱性のために、これらを将来的に置換することが期待されている。ここで、LEDにおけるp型半導体層やn型半導体層は、通常、エピタキシャル成長やイオン注入等によって形成される。このため、pn接合面は半導体ウェハの表面と平行に形成され、p側に接続された電極とn側に接続された電極は、この半導体層の上面と下面に振り分けられる。これらの電極間にpn接合の順方向電流を流すことによってこの発光素子を発光させることができる。
【0003】
一方、ESD(ElectroStatic Discharge)等により、瞬間的に逆方向の高電圧が半導体層に印加された場合には、LEDは破損する場合がある。このため、
図8にその回路図を示すような、発光ダイオード(LED)91が保護ダイオード92と並列に接続された構成の発光素子が用いられている。保護ダイオード92とLED91は、順方向が互いに逆向きになるように接続され、LED91の通常動作時(発光時)には保護ダイオード92には電流が流れず、LED91に逆方向の高電圧が印加された場合には、保護ダイオード92が順方向となってLED91をバイパスして電流が流れるような構成とされる。
【0004】
ここで、LED91を構成する半導体層の材料としては、GaN等の窒化物半導体が用いられる。保護ダイオード92も同様の材料で構成することが可能であるため、LED91と保護ダイオード92を同一ウェハ上に形成することが可能である。これにより、信頼性の高い発光素子を低コストで得ることができる。
【0005】
特許文献1には、こうした構造の発光素子が記載されている。この発光素子においては、同一のエピタキシャル基板上に半導体層が形成され、この半導体層を用いてLED91と保護ダイオード92が形成されている。また、これらの間がエピタキシャル基板まで掘り下げられた溝によって分離されている。この場合、LED91側のn型層と保護ダイオード92側のn型層、LED91側のp型層と保護ダイオード92側のp型層は、それぞれ同一の層で元々構成されるが、溝によって分離された領域毎に異なるダイオードの一部として機能する。
【0006】
この際、LED91と保護ダイオード92を逆向きに接続するためには、LED91側のアノード電極(p型層に接続された電極)と保護ダイオード92側のカソード電極(n型層に接続された電極)、LED91側のカソード電極(n型層に接続された電極)と保護ダイオード92側のアノード電極(p型層に接続された電極)とを接続することによって、
図8の回路が実現される。この発光素子においては、LED91側のアノードと保護ダイオード92側のカソードとを半導体層上で延伸した電極で接続し、かつLED91側のカソードと保護ダイオード92側のアノードとを、この延伸電極と交差するボンディングワイヤで接続している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
素子を実装基板上に実装する際には、実装基板と素子とをはんだ等で接続し、このはんだ接続によって素子との間の電気的接続も行う、いわゆるフリップチップ接続という方式が採用される場合が多い。発光素子においても同様であり、この場合には、基板と反対側に光が発せられる構成とされる場合が多い。
【0009】
特許文献1に記載の発光素子をフリップチップ接続する場合には、延伸電極が設けられた側を実装基板に接続することになるため、ボンディングワイヤを用いる場合には、この実装は困難である。また、ボンディングワイヤを用いずにフリップチップ実装を行うことも可能であるが、延伸電極が設けられた側には段差が形成されているために、発光素子の実装基板への接合の状態を良好とすることは困難である。
【0010】
すなわち、LEDと保護ダイオードとが同一基板上に形成され、かつフリップチップ実装に適した構成をもつ発光素子を得ることは困難であった。
【0011】
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたものであり、上記問題点を解決する発明を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、上記課題を解決すべく、以下に掲げる構成とした。
本発明の発光素子は、n型層とp型層とが積層された構成を具備する半導体層が絶縁性の基板上に形成され、前記半導体層を用いて発光ダイオードと保護ダイオードとが形成された構成を具備する発光素子であって、前記基板上における前記発光ダイオードが形成された領域である発光ダイオード領域と前記基板上における前記保護ダイオードが形成された領域である保護ダイオード領域との間で前記半導体層が除去された分離溝を具備し、
前記半導体層の上に透明電極が形成され、前記発光ダイオード領域における前記
透明電極の上に発光ダイオードカソード電極及び発光ダイオードアノード電極が、前記保護ダイオード領域における前記
透明電極の上に保護ダイオードカソード電極及び保護ダイオードアノード電極が、絶縁層を介してそれぞれ形成され、
前記発光ダイオードカソード電極及び前記保護ダイオードカソード電極は、前記透明電極に形成された開口を通して前記n型層と接続され、前記分離溝を挟んで、前記発光ダイオードアノード電極と前記保護ダイオードカソード電極、前記発光ダイオードカソード電極と前記保護ダイオードアノード電極、がそれぞれ対向するように配置され、前記半導体層の上における前記発光ダイオードアノード電極、前記発光ダイオードカソード電極、前記保護ダイオードカソード電極、及び前記保護ダイオードアノード電極の高さが略同一とされたことを特徴とする。
本発明の発光素子は、前記発光ダイオードアノード電極と前記保護ダイオードカソード電極、前記発光ダイオードカソード電極と前記保護ダイオードアノード電極、を前記分離溝をまたいでそれぞれ接続
し、前記基板と別体とされた実装基板においてパターニングされて形成された接続電極を上面に具備することを特徴とする。
本発明の発光素子において、前記発光ダイオードカソード電極は、前記絶縁層に形成された複数の開口を介して前記半導体層におけるn型層に接続されたことを特徴とする。
本発明の発光素子において、前記発光ダイオードアノード電極、前記発光ダイオードカソード電極は、それぞれ前記発光ダイオード領域における一方の端部側、他方の端部側に形成されたことを特徴とする。
本発明の発光素子において、
前記透明電極には、前記発光ダイオードカソード電極から前記発光ダイオードアノード電極に向かって延伸する透明電極開口部が平行に複数設けられたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明は以上のように構成されているので、LEDと保護ダイオードとが同一基板上に形成され、かつフリップチップ実装に適した構成をもつ発光素子を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態となる発光素子につき説明する。この発光素子においては、基板上にエピタキシャル成長した半導体層が用いられる。この半導体層は、この発光素子における第1の領域(発光ダイオード領域:LED領域)においては発光ダイオード(LED)として機能し、第2の領域(保護ダイオード領域)においては保護ダイオードとして機能する。第1の領域と第2の領域における半導体層は、分離溝によって電気的に分離されているが、発光ダイオードのアノード(発光ダイオードアノード電極:LEDアノード電極)と保護ダイオードのカソード(保護ダイオードカソード電極)、LEDのカソード(LEDカソード電極)と保護ダイオードのアノード(保護ダイオードアノード電極)との間は接続され、ESD等に対する耐性をもった発光素子となっている。この発光素子は、任意の形態で実装基板に実装することができるが、特にフリップチップ実装に適した構成となっている。
【0016】
図1は、本発明の形態となる発光素子10を上面側から見た平面図である。また、この平面図におけるA−A方向、B−B方向、C−C方向、D−D方向の断面図がそれぞれ
図2(a)〜(d)である。
図1において、XはLED領域、Yは保護ダイオード領域、Zは分離溝である。
【0017】
断面図である
図2の各々に示されるように、LED、保護ダイオード共通に用いられる半導体層20は、基板11上に緩衝層12を介して形成される。この半導体層20は、下側からn型GaN層(以下、n型層と略)21、MQW(Multi Quantum Well)層23、p型GaN層(以下、p型層と略)22からなる積層構造をもつ。この構成における主たる発光層はMQW層23である。また、基板11としては、例えば、サファイア等、GaNをこの上にヘテロエピタキシャル成長させることのできる絶縁性の材料を用いることができる。緩衝層12としては、サファイアとGaNとの間の格子不整合を緩和する材料として、例えばAlNバッファ層が用いられる。
図2(a)(b)に示されるように、緩衝層12、半導体層20は、分離溝Z中においては除去されている。このため、LED領域Xにおける半導体層20と保護ダイオード領域Yにおける半導体層20とは分離されている。この半導体層20の上には、透明電極30、絶縁層40、p側電極51、n側電極52が形成されている。LED領域Xにおけるp側電極51は発光ダイオード(LED)アノード電極51aとなり、LED領域Xにおけるn側電極52は発光ダイオード(LED)カソード電極52aとなる。同様に、保護ダイオード領域Yにおけるp側電極51は保護ダイオードアノード電極51bとなり、保護ダイオード領域Yにおけるn側電極52は保護ダイオードカソード電極52bとなる。
【0018】
半導体層20中のn型層21、MQW層23、p型層22は、MBE(Molecular Beam Epitaxy)法、あるいはMOCVD(Metal Organic Chemical Vapor Deposition)法によって、緩衝層12を介して基板11上にエピタキシャル成長させることができる。n型層21にはドナーとなる不純物が、p型層22にはアクセプタとなる不純物が適宜ドーピングされる。n型層21の厚さは例えば5.0μm、p型層22の厚さは例えば0.2μm程度とすることができる。また、MQW層23は、例えば数nm〜数10nmの厚さのInGaN、GaN薄膜が複数積層された構造をもち、InGaN、GaNの各層はn型層21、p型層22と同様にエピタキシャル成長により形成される。
【0019】
また、この半導体層20あるいは緩衝層12は、
図2の各々にその断面が示されるような形状に加工されている。この加工は、例えばフォトレジストをマスクとして形成した後にドライエッチングを行う方法(エッチング法)によって行うことができる。この場合、この加工端部のテーパー角は、ドライエッチング条件によって適宜設定することができる。
【0020】
透明電極30は、p型層22とオーミック接触が可能で、かつ半導体発光機能層20が発する光に対して透明な材料として、例えばITO(Indium−Tin−Oxide)やZnO(Zinc−Oxide)等で構成される。なお、p型GaN層22との間のオーミック性や密着性等を向上させるために、これらの間に、光が充分透過する程度に薄いチタン(Ti)層やニッケル(Ni)層を挿入することもできる。透明電極30のパターニングは、半導体層12の場合と同様のエッチング法、あるいは、所望の箇所以外にフォトレジスト等のマスクを形成してから全面に上記の透明電極材料を成膜し、後でマスクを除去することによって所望の箇所以外の透明電極材料を除去する方法(リフトオフ法)、のいずれかの方法を用いることができる。なお、透明電極30を構成する材料には高い光透過率が要求されるため、その導電率はp側電極51、n側電極52を構成する材料よりも低い。このため、透明電極30の電気抵抗は、一般にp側電極51、n側電極52よりも高い。
【0021】
絶縁層40は、充分な絶縁性をもち、かつこの発光素子10(半導体層20)が発する光に対して透明な材料で構成され、例えば酸化シリコン(SiO
2)で構成される。その形成は、例えばCVD(Chemical Vapor Deposition)法等を用いることにより、
図2に示される段差部においても、これを被覆性よく形成することが可能である。そのパターニングはエッチング法により行われる。
【0022】
p側電極51(発光ダイオード(LED)アノード電極51a、保護ダイオードアノード電極51b)は、金(Au)等の導電性の高い金属で形成される。n側電極52(発光ダイオード(LED)カソード電極52a、保護ダイオードカソード電極52b)は、n型GaN層21とオーミック接触がとれる材料で構成される。p側電極51、n側電極52のパターニングは、透明電極30のパターニングと同様に行うことができる。また、この発光素子10が発する光は、p側電極51、n側電極52を透過しない。p側電極51とn側電極52の厚さは同等とすることが好ましい。
【0023】
なお、後述するように、この発光素子10においては、光を基板11側(
図2(a)(b)(c)における下側から取り出すことができる。この場合には、p側電極51、n側電極52は、上側に向かって発せられた光を下側に反射させる反射層としても機能する。この場合には、p側電極51、n側電極52の材料を、この光に対する反射率が高い材料で構成することが好ましい。また、
図1等には示されていないが、p側電極51とn側電極52との間にも、電気的に接続されない形態で同様の反射層を形成することが好ましい。
【0024】
図3(a)〜(f)は、
図1の形態における、n型層21、p型層22、透明電極30、絶縁層40、p側電極51、n側電極52の形態を具体的に示す平面図である。
【0025】
ここで、
図3(a)に示されるように、n型層21は、
図1の構成における分離溝Z以外の領域全面にわたり形成されている。緩衝層12についても同様である。一方、基板11は、
図2(a)に示されるように、分離溝Zにおいても除去されず全面において残存している。このため、基板11は、この発光素子10全体の支持基板となっている。なお、
図2に示されるように、p型層22、MQW層23のパターニングに際してn型層21も
図3(a)中の破線領域においては若干エッチングされる。
【0026】
図3(b)に示されるように、n型層21上のp型層22は、LED領域Xにおける下部のLEDn側コンタクト領域71(複数)と、保護ダイオード領域Yにおける上部の保護ダイオードn側コンタクト領域81において除去されている。MQW層23についても同様である。これにより、半導体層20におけるこれらの領域ではn型層21が露出する。
【0027】
図3(c)に示されるように、透明電極30は、LED領域Xにおける下部のLEDn側コンタクト領域71以外の大部分と、保護ダイオード領域Yにおける上部の保護ダイオードn側コンタクト領域81以外の大部分においてそれぞれ形成されている。透明電極30は、p型層22と直接電気的接触をする。
【0028】
図3(d)に示されるように、絶縁層40は、この発光素子10の分離溝Zを含む全面にわたり形成されている。ただし、LED領域Xにおいては、図中上側のLEDp側コンタクト開口72(複数)、図中下側のLEDn側コンタクト開口73(複数)でそれぞれ除去されている。また、保護ダイオード領域Yにおいては、図中上側の保護ダイオードn側コンタクト開口82、図中下側の保護ダイオードp側コンタクト開口83(複数)でそれぞれ除去されている。LEDp側コンタクト開口72、保護ダイオードp側コンタクト開口83中ではp型層22が露出する。LEDn側コンタクト開口83、保護ダイオードn側コンタクト開口82ではp型層22、MQW層23は除去されているため、n型層21が露出する。
【0029】
図3(e)に示されるように、p側電極51は、LED領域Xにおいては全てのLEDp側コンタクト開口72を覆うLEDアノード電極51aとして形成される。また、保護ダイオード領域Yでは全ての保護ダイオードp側コンタクト開口83を覆う保護ダイオードアノード電極51bとして形成される。LEDアノード電極51aはLED領域Xにおいては図中上側、保護ダイオードアノード電極51bは図中下側に形成される。
【0030】
図3(f)に示されるように、n側電極52は、LED領域Xにおいては全てのLEDn側コンタクト開口73を覆うLEDカソード電極52aとして形成される。また、保護ダイオード領域Yでは保護ダイオードn側コンタクト開口82を覆う保護ダイオードカソード電極52bとして形成される。LEDカソード電極52aはLED領域Xにおいては図中下側、保護ダイオードカソード電極52bは図中上側に形成される。
【0031】
上記の構成により、LED領域XにおいてはLED(発光ダイオード)が形成され、保護ダイオード領域Yにおいては保護ダイオードが形成される。この際、LEDアノード電極51aと保護ダイオードカソード電極52b、LEDカソード電極52aと保護ダイオードアノード電極51bとは、分離溝Zを挟んでそれぞれ対向する。
【0032】
図2(a)は、
図1におけるA−A方向の断面であり、保護ダイオードn側コンタクト開口82から分離溝Zまでの断面を示している。また、
図2(b)は、同じくB−B方向の断面であり、保護ダイオードp側コンタクト開口83から分離溝Zまでの断面を示している。また、
図2(c)は、同じくC−C方向の断面であり、LEDn側コンタクト開口73付近の断面を示している。また、
図2(d)は、同じくD−D方向の断面であり、LEDp側コンタクト開口72からLEDn側コンタクト開口73にかけての断面を示している。
【0033】
図2より明らかなように、p側電極51とn側電極52の厚さが同等である場合には、上記の構成においては、LED領域XにおけるLEDアノード電極51a、LEDカソード電極52a、保護ダイオード領域Yにおける保護ダイオードアノード電極51b、保護ダイオードカソード電極52bの高さは同等となる。すなわち、全ての電極の高さは略同一となる。
【0034】
この発光素子10を実際に動作させる際には、
図8の回路を形成することが必要になるため、LEDアノード電極51aと保護ダイオードカソード電極52b、LEDカソード電極52aと保護ダイオードアノード電極51bとをそれぞれ電気的に接続することが必要となる。この接続は、上面から見た形態が
図4に示されるように、接続電極110、120を用いて特に容易に行われる。この場合、この発光素子10からの光は、LED領域XにおけるLEDアノード電極51aとLEDカソード電極52aの間の領域から
図2(a)(b)(c)における上側に取り出すことができる、あるいは、緩衝層12や基板11が透明である場合には、LED領域Xの全面における
図2(a)(b)(c)における下側に取り出すこともできる。
【0035】
接続電極110、120は、各アノード電極、各カソード電極と接続できる導体であれば任意の材料で構成することができ、例えばこれをボンディングワイヤとすることも可能である。この際、各アノード電極、各カソード電極の高さが略同一であるため、この接続は容易である。
【0036】
フリップチップ実装を行う場合には、この発光素子10を実装基板200に搭載することによってこの接続を行わせることもできる。
図5は、この際における断面構造を示す図である。この場合には、接続電極110、120は実装基板200上にパターニングされて形成されている。
図5(a)は
図4のE−E方向の断面であり、接続電極110付近の構成を示し、
図5(b)は
図4のF−F方向の断面であり、接続電極120付近の構成を示している。
図5においては、
図2(a)(b)(c)の断面図とは上下方向が逆転して示されている。この場合、接続電極110、120とp側電極51、n側電極52との間の接合は、はんだ等を用いて行うことができる。この接合により、発光素子10と実装基板200との間の機械的接続も行われる。この際、p側電極51とn側電極52の高さが同等であるため、この機械的接続の信頼性を高くすることができる。また、半導体層20においては、LEDn側コンタクト領域71と保護ダイオードn側コンタクト領域81において段差が存在しているものの、これらの段差部分は局所的に存在し、かつ、少なくとも発光素子10の周辺部にはこれらの段差部は存在しない。このため、この発光素子10を実装基板200に強固にフリップチップ接続することができる。なお、発光素子10の表面における各アノード電極、各カソード電極がある箇所以外の領域に、電気的に接続されない金属層を形成し、これを実装基板200上にはんだで固定することによって、実装基板200への接合を更に強固とすることも可能である。この場合、この金属層を前記の反射層とすることもできる。
【0037】
この構成は、光を
図2(a)(b)(c)における下側に取り出す場合に特に好ましい構成となる。この場合、この光を遮る構造物(透明でない電極やボンディングワイヤ等)は、
図5中の上側には存在しないため、面内の発光強度均一性が高く、かつ高い発光強度を得ることができる。
【0038】
このように、この発光素子10におけるLEDと保護ダイオードとの間の電気的接続は、実装基板への実装前に行うことも、実装基板へのフリップチップ接続時に行うことも容易である。あるいは、接続電極110、120の一方のみを実装前に形成し、他方を実装基板200に形成し、接続することもできる。
【0039】
すなわち、この発光素子10においては、LEDと保護ダイオードとの間の接続を極めて容易にとることができる。また、この発光素子10は、任意の形態で実装基板に実装することができるが、特にフリップチップ実装に適している。
【0040】
なお、特にLED領域Xにおける透明電極30、各電極、各コンタクト開口等の構成は、発光強度の面内均一性に大きな影響を与える。ここで、p型層22に電流が供給される箇所はLEDp側コンタクト開口72であり、n型層21に電流が供給される箇所はLEDn側コンタクト開口73である。これらの間隔が短い箇所があると、この箇所に電流が集中しやすくなり、発光の不均一性や局所的な発熱が発生する。このため、LEDp側コンタクト開口72を
図1中の上部側に集中して複数設け、LEDn側コンタクト開口73を
図1中の下側に集中して複数設けている。これらの開口の形状は、上記の例ではいずれも矩形としているが、p型層22やn型層21に対して良好な電気的接続がとれる限りにおいて、三角形、六角形等、任意の形状とすることができる。また、これらの開口の配列も、上記の例ではいずれも矩形としているが、三角形、六角形等、任意とすることができる。
【0041】
また、特にLEDn側コンタクト開口(開口)73の間隔が狭くなった場合には、電流集中が発生しやすくなり、発光面積が実質的に減少する。このため、LEDn側コンタクト開口73(開口)の間隔は、この開口サイズと同等以上とし、これを複数設けることが特に好ましい。
【0042】
また、LED領域XにおけるLEDアノード電極51aとLEDカソード電極52aの形状や面積が非対称である場合、一方の電流密度が高くなり、発熱の集中の原因となる。このため、これらの面積は同程度とすることが好ましい。また、発熱の集中を抑制するためには、これらの面積は、それぞれLED領域Xの1/3以上であることが好ましい。
【0043】
また、発光の面内均一性を高めるために、透明電極30とLEDp側コンタクト開口72の形状を前記の発光素子10から変えた構成を具備する発光素子210の上面から見た平面図を
図6に示す。また、この発光素子210における透明電極30の平面図、絶縁層40の平面図を
図7(a)(b)にそれぞれ示す。
図7(a)(b)はそれぞれ
図3(c)(d)に対応しており、n型層21、p型層22、p側電極51、n側電極52の構成は発光素子10と同様である。また、保護ダイオード領域Y中の構成は発光素子10と同様であり、LED領域Xにおける形態のみが異なる。
【0044】
この発光素子210においては、
図7(a)に示されるように、LED領域X中のp側のコンタクトがとられる側(
図6、7中の上側)からn側のコンタクトがとられる側(同、下側)のLEDn側コンタクト開口73に向かって、透明電極30中に、細長い透明電極開口部31が平行に6本設けられている。また、これに対応して、
図6、7中の上側における単一のLEDp側コンタクト開口72においては、下側に向かって延伸したLEDp側コンタクト開口延伸部721が設けられている。
【0045】
この場合、透明電極30中の透明電極開口部31からp型層22には電流が注入されにくいため、透明電極開口部31の直下においてはp型層22にも電流が流れにくくなる。このため、LEDp側コンタクト開口72・LEDn側コンタクト開口73間で流れる電流の方向は制限され、電流は透明電極30直下の領域において主に
図6、7の上下方向に沿って流れやすくなる。また、LEDp側コンタクト開口延伸部721の先端からp型層22へ電流が注入されやすくなる。こうした構成により、主たる発光領域における電流分布を調整することができ、面内の発光強度分布を調整し、発光強度を面内で均一化することができる。透明電極開口部31の幅、本数等は、LEDn側コンタクト開口73の大きさや数と共に適宜設定することができる。LEDp側コンタクト開口延伸部721についても同様である。
【0046】
こうした構成をとる場合においても、LED領域Xと保護ダイオード領域Yにおいて各電極の高さを同等とすることができることは明らかである。このため、発光素子10と同様に、LEDと保護ダイオードの接続を容易に行うことができることは明らかである。
【0047】
このように、上記の実施の形態に係る発光素子においては、透明電極の形状を調整してLEDにおける面内の電流分布の調整を行った場合でも、LEDと保護ダイオードの接続を容易に行うことができる。特に、この構成はフリップチップ実装を行う際に有効である。
【0048】
なお、上記の例においては、n型層21、MQW層23、p型層22からなる同一の半導体層20を2つの領域(LED領域X、保護ダイオード領域Y)において用いていたが、例えば一方の領域においてのみイオン注入等を施すことによって、半導体層20の特性をこれらの領域で異ならせることもできる。これにより、発光素子としてのより良好な特性を得ることもできる。
【0049】
また、上記の構成においては、半導体層20として、基板11上に緩衝層12を介して、n型GaN層21、発光層となるMQW層23、p型GaN層22が形成された例につき記載した。しかしながら、MQW層23を用いない場合でも、単純なpn接合を用いた発光ダイオード(LED)として動作することは明らかである。あるいは、発光層として上記の構成のMQW層以外の構成のものを用いることもできる。緩衝層12を用いなくとも良質の半導体層20が得られる場合には緩衝層12は不要である。また、GaN以外の材料で半導体層を構成することもできる。この場合、発光波長に応じて半導体材料を設定することができる。これを用いて保護ダイオードが同様に構成できることも明らかである。
【0050】
また、上記の例では、半導体層20における基板11側にn型層を、その上にp型層を形成したが、これらの導電型が逆であっても同様の効果を奏することは明らかである。この場合、透明電極は、半導体層における上側における層と接続される。
【0051】
また、上記の例では、半導体層等の端部や分離溝の断面をテーパー形状とし、これを絶縁層で覆う形態とした。しかしながら、これらの箇所において、絶縁層によって半導体層と接続電極等との間の絶縁性が保たれる場合であれば、特にテーパー形状とする必要はない。
【0052】
また、上記の例では、発光素子を矩形形状であるとしたが、上記の構成が実現できる限りにおいて、その形状は任意である。