特許第5772220号(P5772220)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5772220
(24)【登録日】2015年7月10日
(45)【発行日】2015年9月2日
(54)【発明の名称】サーチュイン発現増強剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/05 20060101AFI20150813BHJP
   A61K 31/09 20060101ALI20150813BHJP
   A61P 3/00 20060101ALI20150813BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20150813BHJP
   C07C 39/23 20060101ALN20150813BHJP
   C07C 39/21 20060101ALN20150813BHJP
   C07C 43/23 20060101ALN20150813BHJP
【FI】
   A61K31/05
   A61K31/09
   A61P3/00
   A61P43/00 107
   !C07C39/23
   !C07C39/21
   !C07C43/23 C
【請求項の数】1
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2011-118367(P2011-118367)
(22)【出願日】2011年5月26日
(65)【公開番号】特開2012-246242(P2012-246242A)
(43)【公開日】2012年12月13日
【審査請求日】2014年4月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】390020189
【氏名又は名称】ユーハ味覚糖株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100074561
【弁理士】
【氏名又は名称】柳野 隆生
(74)【代理人】
【識別番号】100124925
【弁理士】
【氏名又は名称】森岡 則夫
(74)【代理人】
【識別番号】100141874
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 久由
(72)【発明者】
【氏名】土井 聡
(72)【発明者】
【氏名】來住 明宣
(72)【発明者】
【氏名】松川 泰治
(72)【発明者】
【氏名】野島 正朋
(72)【発明者】
【氏名】松居 雄毅
(72)【発明者】
【氏名】山田 泰正
(72)【発明者】
【氏名】山田 一郎
【審査官】 前田 亜希
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−270012(JP,A)
【文献】 特開平02−048533(JP,A)
【文献】 特開2009−191049(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/05
A61K 31/09
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1):
【化1】
、式(2):
【化2】
又は式(3):
【化3】
で示されるレスベラトロール誘導体、これらの薬学的に許容可能な塩からなる群より選ばれる1種以上の化合物を含有することを特徴とするサーチュイン発現増強剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レスベラトロール誘導体を含有するサーチュイン発現増強剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
我が国の高齢化は世界でも類をみない速度で進行している。2010年では、日本の人口の30.47%が60歳以上の高齢者であることが国連の統計調査によって示されている。高齢化社会の到来は医療費の増大など社会的負担を招き、その影響は多岐にわたる。そのような現状を鑑みて、世界では老化予防「アンチエイジング」の研究が盛んに行われている。
【0003】
アンチエイジング研究において最も進んでいるのが、酵母、線虫、ショウジョウバエのようなモデル生物を用いた研究である。これらの生物において、カロリー制限が寿命延長・老化抑制に有効な処理であることが古くから知られている。この生理現象の要因となる遺伝子の探索が行われ、酵母においてSir2遺伝子が関与していることが明らかとなった。
【0004】
Sir2遺伝子はSIR2(silent information regulator 2)ファミリーと総称される遺伝子群に属する。酵母での研究において、Sir2はリボソームDNA(rDNA)の蓄積を抑制する酵素として見出された。ゲノム上から切り出された環状rDNAの蓄積は老化現象の1つとして認識されており、過剰な蓄積は細胞死につながる。Sir2はサイレンシングによりこの環状rDNAの蓄積を抑制する抑制因子と認識された。さらにSir2がニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD)依存性の脱アセチル化酵素をコードしていることが明らかとなり、細胞内のエネルギー代謝状態のセンサーとして機能していることが示唆された。以上のことから、Sir2遺伝子は老化抑制・寿命延長にかかわる老化抑制遺伝子として認識された。
【0005】
一方、哺乳類ではSir2ファミリーに属する遺伝子としてSIRT(sirtuin)1〜7が見出されており、サーチュインと呼ばれる。このうちSIRT1は酵母のSir2に最も相同性の高い遺伝子であり、Sir2と同様にカロリー制限によって発現が増強されることが見出されている。また、全身でSIRT1を強制発現させたトランスジェニックマウスでの解析では、老化や高脂肪食がもたらす悪影響に有意な抵抗性を示すことが明らかになっている。さらに大腸においてSIRT1を強制発現させた大腸癌モデルマウスにおいては、腫瘍の大きさ、成長率や発生率が1/4まで低下することが示されている。また、SIRT1の標的タンパク質が数多く同定されており、その中にはNF−κB、p53、FOXO、PGC−1α、PPARα、PPARγ、UCP2などの肥満、体内のエネルギー消費に関連する主要な受容体・制御因子が含まれており、ヒトにおいては、SIRT1遺伝子の一塩基多型と肥満、エネルギー消費、インスリン感受性の間に有意な相関が示されていることから、SIRT1が基本的な代謝応答を制御することが示されている。
【0006】
このようにサーチュインが老化・寿命・代謝に大きな影響を及ぼすことから、低分子の活性化剤の探索も行われている。その結果、植物性ポリフェノール化合物であるレスベラトロールが見出されている。例えば、酵母での研究において、レスベラトロールがカロリー制限に伴うシグナル伝達経路を活性化し、顕著な延命効果をもたらすことが明らかとなっている(非特許文献1)。哺乳類においては、レスベラトロールを摂取させたマウスの遺伝子発現プロファイルが、カロリー制限をしたマウスの遺伝子発現プロファイルに類似することが明らかとなり、カロリー制限を模倣した効果が期待された(非特許文献2)。また、高脂肪食を与えたマウスにレスベラトロールを摂取させることで、脂肪肝、糖尿病、心筋の炎症など肥満によるリスクを低減すること(非特許文献3)、また体重増加を有意に抑制することが示されている(非特許文献4)。さらに、糖尿病モデルマウスでは、レスベラトロールを摂取させることでインスリン感受性が改善することも見出されている(非特許文献5)。
【0007】
このような現状から、サーチュインの活性を促進する、または発現を増強する物質の探索が行われており、レスベラトロール以外にも先行技術が報告されている。例えば、フラボノイド類を有効成分とするサーチュイン活性化剤(特許文献1)、乳酸菌由来成分を有効成分とするサーチュイン発現増強剤(特許文献2)、スダチより抽出される化合物を有効成分とするNAD依存性脱アセチル化酵素活性化剤(特許文献3)、カッコンエキスを有効成分とするサーチュイン1活性化剤(特許文献4)、ε―ビニフェリンを有効成分とするサーチュイン活性促進剤(特許文献5)が知られている。
【0008】
このようにサーチュイン発現増強剤、サーチュイン活性促進剤の有用性から、このような活性を有する化合物や素材が多数提案されているが、更なる新規素材の開発が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2007−326872号公報
【特許文献2】特開2008−195673号公報
【特許文献3】特開2009−126799号公報
【特許文献4】特開2010−270012号公報
【特許文献5】特開2011−57580号公報
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Nature,2003,425(6954):191−196
【非特許文献2】Annu.Rev.Pathol.,2010,5:253−295
【非特許文献3】Nature,2006,444(7117):337−342
【非特許文献4】Cell,2006,127(6):1109−1122
【非特許文献5】Cell metab.,2007,6(4):307−319
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明者らは、サーチュイン発現増強剤およびサーチュイン活性促進剤に関する前記の状況を鑑みて、新規なサーチュイン発現増強剤およびサーチュイン活性促進剤の探索をした。その結果、新たに作製したレスベラトロール誘導体類が優れたサーチュイン発現増強剤およびサーチュイン活性促進剤を有する化合物であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
したがって、本発明は、優れたサーチュイン発現増強剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の要旨は、
〔1〕下記式(1):
【0014】
【化1】
【0015】
、式(2):
【0016】
【化2】
【0017】
又は式(3):
【0018】
【化3】
【0019】
で示されるレスベラトロール誘導体、これらの薬学的に許容可能な塩からなる群より選ばれる1種以上の化合物を含有することを特徴とするサーチュイン発現増強剤に関する。
【発明の効果】
【0020】
本発明のサーチュイン発現増強剤は、公知の増強剤であるレスベラトロールと比べ優れたサーチュイン発現増強作用を有していることから、新規のサーチュイン発現増強剤として有用である
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1図1は実施例5で行ったリアルタイムRT−PCR解析の結果を示す。左から(1)DMSO、(2)レスベラトロール、(3)UHA4002、(4)UHA9021、(5)UHA1028で処理した細胞より抽出したTotal RNA中のサーチュイン発現量を相対値で表している。
図2図2は実施例6で行ったウェスタンブロット解析の結果を示す。左から、(1)DMSO、(2)レスベラトロール、(3)UHA4002で処理した細胞より抽出したタンパク質中のサーチュインを検出した結果を示している。
図3図3は実施例6で行ったウェスタンブロット解析の結果を示す。左から、(1)DMSO、(2)レスベラトロール、(3)UHA9021、(4)UHA1028で処理した細胞より抽出したタンパク質中のサーチュインを検出した結果を示している。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明のサーチュイン発現増強剤およびサーチュイン活性促進剤は、下記式(1):
【0023】
【化4】
【0024】
、式(2):
【0025】
【化5】
【0026】
又は式(3):
【0027】
【化6】
【0028】
で示されるレスベラトロール誘導体、これらの薬学的に許容可能な塩からなる群より選ばれる1種以上の化合物を含有することを特徴とする。
【0029】
本発明において、「サーチュイン発現増強剤」とは、代謝経路を包括的に制御する酵素であるサーチュインの細胞内の発現を増強することができる薬剤をいう。
また、「サーチュイン活性促進剤」とは、代謝経路を包括的に制御する酵素であるサーチュインの酵素活性を促進することができる薬剤をいう。
サーチュイン発現増強作用およびサーチュイン活性促進作用は、具体的には、後述の実施例に記載の方法により、それぞれを測定し、公知の化合物であるレスベラトロールの作用と対比することで確認することができる。
【0030】
前記レスベラトロール誘導体類において、炭素−炭素2重結合は、トランスまたはシスであってよく、シス体とトランス体との混合物を含む。
【0031】
前記レスベラトロール誘導体類の薬学的に許容可能な塩としては、例えば、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩; マグネシウム塩、カルシウム塩、バリウム塩等のアルカリ土類金属塩; アルミニウム塩;アルミニウムヒドロキシド塩等の金属ヒドロキシド塩; アルキルアミン塩、ジアルキルアミン塩、トリアルキルアミン塩、アルキレンジアミン塩、シクロアルキルアミン塩、アリールアミン塩、アラルキルアミン塩、複素環式アミン塩等のアミン塩; α−アミノ酸塩、ω−アミノ酸塩等のアミノ酸塩;ペプチド塩又はそれらから誘導される第1級、第2級、第3級若しくは第4級アミン塩等が挙げられる。これらの薬理的に許容し得る塩は、単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
【0033】
前記のレスベラトロール誘導体類はいずれも、レスベラトロールや公知のレスベラトロール誘導体に比べて、優れたサーチュイン発現増強作用を有し、レスベラトロールに比べて同程度以上のサーチュイン活性促進作用を有する。
したがって、本発明は、前記レスベラトロール誘導体類を有効成分として含有するサーチュイン発現増強剤およびサーチュイン活性促進剤を提供することができる。
【0034】
次に本発明を実施例に基いて詳細に説明するが、本発明はかかる実施例にのみ限定されるものではない。
【実施例】
【0035】
(実施例1:UHA1028の生成および単離・精製)
トランス−レスベラトロール(東京化成工業(株)社製)1g、p−クマル酸(和光純薬(株)社製)1gをエタノール20mLに溶解し、ミネラルウォーター(商品名「ゲロルシュタイナー」サッポロ飲料(株)製)20mLを加えて、レスベラトロール、p−クマル酸含有溶液(pH=4.6)を得た。このレスベラトロール、p−クマル酸含有溶液をオートクレーブにて130℃、90分間加熱した。得られた反応溶液のうち1mLをメタノールにて50mLにメスアップし、このうち10μLをHPLCにより分析し、UHA1028の生成を確認した。
【0036】
HPLC分析は以下条件にて行った。
カラム:逆相用カラム「Develosil(登録商標)C−30−UG−5」(4.6mmi.d.×250mm)
移動相:A・・・H2O(0.1%トリフルオロ酢酸(TFA)), B・・・アセトニトリル(0.1%TFA)
流速:1mL/min
注入:10μL
検出:254nm
勾配(容量%):80%A/20%Bから20%A/80%Bまで30分間、20%A/80%Bから100%Bまで5分間、100%Bで10分間(全て直線)
【0037】
得られた反応物からUHA1028を分取HPLCにより精製し、常法により乾燥したところ、褐色粉末状の物質であった。
【0038】
なお、UHA1028の分子量を高分解能電子イオン化質量分析法(Electron Ionization−Mass Spectrometry)にて測定したところ、測定値は408.4436であり、理論値との比較から、以下の分子式を得た。
理論値C24H24O6(M+):408.4438
分子式C24246
【0039】
次に、前記UHA1028を核磁気共鳴(NMR)測定に供し、1H−NMR、13C−NMR及び各種2次元NMRデータの解析から、前記UHA1028が前記式(3)で表される構造を有することを確認した。
【0040】
(実施例2:UHA4002の生成および単離・精製)
トランス−レスベラトロール700mgをエタノール14mlに溶解し、2.5%NaHCO3水溶液を14ml加えて、レスベラトロール含有溶液(pH9.9)を得た。このレスベラトロール含有溶液をオートクレーブ(SANYO LABO AUTOCLAVE)にて130℃、20分間加熱した。次いで、1回目のオートクレーブ処理にて得られた反応溶液に、エタノール14mlと5.0%NaHCO3水溶液を14ml加え、再度、オートクレーブ(SANYO LABO AUTOCLAVE)にて130℃、20分間加熱した。得られた反応溶液のうち1mLをメタノールにて50mlにメスアップし、このうちの10μlをHPLCにより分析し、UHA4002の生成を確認した。HPLC分析は、実施例1と同様の条件で行った。
【0041】
得られた反応物からUHA4002を分取HPLCにより精製し、常法により乾燥したところ、褐色粉末状の物質であった。
【0042】
なお、実施例1と同様に高分解能電子イオン化質量分析法にてUHA4002の分子量を測定したところ、測定値は439.4803であり、理論値との比較から、以下の分子式を得た。
理論値C28H23O5(M+):439.4792
分子式C28235
【0043】
次に、前記UHA4002を核磁気共鳴(NMR)測定に供し、1H−NMR、13C−NMR及び各種2次元NMRデータの解析から、前記UHA4002が前記式(1)で表される構造を有することを確認した。
【0044】
(実施例3:UHA9021の生成および単離・精製)
トランス−レスベラトロール1g、シナピン酸(和光純薬(株)社製)1gをエタノール20mLに溶解し、ミネラルウォーター20mLを加えて、レスベラトロール、シナピン酸含有溶液(pH=4.9)を得た。このレスベラトロール、シナピン酸含有溶液をオートクレーブにて130℃、90分間加熱した。得られた反応溶液のうち1mLをメタノールにて50mLにメスアップし、このうち10μLをHPLCにより分析し、UHA9021の生成を確認した。HPLC分析は、実施例1と同様の条件で行った。
【0045】
得られた反応物からUHA9021を分取HPLCにより精製し、常法により乾燥したところ、褐色粉末状の物質であった。
【0046】
なお、実施例1と同様に高分解能電子イオン化質量分析法にてUHA9021の分子量を測定したところ、測定値は348.3915であり、理論値との比較から、以下の分子式を得た。
理論値C22H20O4(M+):348.3918
分子式C22204
【0047】
次に、前記UHA9021を核磁気共鳴(NMR)測定に供し、1H−NMR、13C−NMR及び各種2次元NMRデータの解析から、前記UHA9021が前記式(2)で表される構造を有することを確認した。
【0048】
(実施例4:ヒトサーチュイン活性の比較)
ヒトサーチュインSIRT1に対するレスベラトロール誘導体の活性促進作用を評価するために、SIRT1活性測定用キット「SensoLyte(登録商標)Green SIRT1 Assay Kit」(ANASPEC社製)を用いて測定を行った。
【0049】
試料にはレスベラトロール、活性促進作用が報告されているε−ビニフェリン(和光純薬(株)社製)、本発明品であるUHA4002の3種類を用いた。各試料をジメチルスルホキシド(DMSO、和光純薬(株)社製)に100μMの濃度で溶解させて試験に使用した。
【0050】
測定は前記測定用キットに付属の取り扱い説明書の方法に準じて行った。まず、コンポーネントA(サーチュイン基質)50μLとコンポーネントE(NAD+)50μLをコンポーネントD(アッセイバッファー)4.9mLに混合し、サーチュイン基質溶液とした。次にコンポーネントC(リコンビナントサーチュイン)をコンポーネントDで20倍希釈し、これをサーチュイン酵素溶液とした。次にコンポーネントG(デベロッパー)500μLとコンポーネントF(ニコチンアミド)500μLにコンポーネントD 4mLに混合し、これを1×デベロッパー溶液とした。
【0051】
酵素反応は96ウェルアッセイブラックプレート(コーニングジャパン(株)社製)を用いて行った。ウェルにサーチュイン酵素溶液 40μLと試料10μLを添加した。なお、コンポーネントD 40μLと試料10μLを添加したものを化合物コントロールとした。
37℃ 10分プレインキュベートし、これにサーチュイン基質溶液を50μL添加した(試料終濃度10μM)。化合物コントロールにはコンポーネントD 50μLを添加した。穏やかに30秒程度撹拌し、37℃で60分インキュベートした。
1×デベロッパー溶液を各ウェルに50μLずつ加えた。撹拌・混合後に37℃ 10分インキュベートし、これを蛍光検出器「Thermo Fluoroskan Ascent」(サーモフィッシャーサイエンティフィック(株)製)にて励起波長485nm、測定波長538nmで測定した。得られたデータをもとに、レスベラトロールを添加した条件の活性を100%とし、各試料を添加した条件の活性を算出した。これらの結果を表1に示した。
【0052】
【表1】
【0053】
表1の結果より、UHA4002にレスベラトロール、ε―ビニフェリンよりも優れたサーチュイン活性促進作用が見られた。
また、UHA1028、UHA9021についても、同様にして調べたところ、レスベラトロールと同程度のサーチュイン活性促進作用が確認された。
【0054】
(実施例5:サーチュイン遺伝子発現量の比較)
次にヒト細胞におけるサーチュイン遺伝子SIRT1の発現増強作用を評価するために、ヒト臍帯静脈内皮細胞(Huvec)(LONZA(株)社製)を用いたリアルタイムRT−PCR解析を行った。
【0055】
試料にはレスベラトロール、本発明品であるUHA1028、UHA4002、UHA9021の4種類を用いた。各試料をDMSOに2mMの濃度で溶解させたものを試験に使用した。
【0056】
Huvecの培養には、内皮細胞添加因子セット−2(「EGM(登録商標)−2 SingleQuots」、タカラバイオ(株)社製)の内皮細胞添加因子(hEGF、ヘパリン、ヒドロコルチゾン、FBS、hFGF−B、アスコルビン酸、VEGF、R3−IGF、GA−1000)を全量添加した内皮細胞基本培地−2(「EBM(登録商標)−2」、タカラバイオ(株)社製)を使用した。培養用ディッシュには、細胞培養用コラーゲンIコート10cmディッシュ(日本BD(株)社製)を使用した。細胞は、5×104cell/mLに調製した培養液を10mL播種し、37℃、5%CO2条件下で62時間培養し、80%コンフルエント以上の状態で試験に使用した。継代回数は5回の細胞を使用した。
【0057】
試験は定法に従って実施した。80%コンフルエント以上の状態の細胞に各試料を終濃度10μMとなるように添加した(DMSO持込量0.5%)。なお、溶媒であるDMSOのみを0.5%添加したものをネガティブコントロールとした。
【0058】
試料添加後、37℃、5%CO2条件下で24時間培養し、細胞よりRNA抽出キット「NucleoSpin(登録商標)RNA II」(タカラバイオ(株)社製)を用いて全量RNAを抽出・精製した。得られたRNAを2ステップリアルタイムRT−PCR用逆転写試薬「PrimeScript(登録商標)RT Master Mix」(タカラバイオ(株)社製)の取扱説明書に準じて逆転写反応を行った。つまり5×Primescript RT Master Mix 4μL、全量RNA 1μgを混合し、RNase Free dH2Oで20μLに調製した。PCR用サーマルサイクラー「GeneAmp(登録商標)PCR System 9700」(Applied Biosystem(株)社製)を使用して{37℃ 15分 → 85℃ 5秒}×1サイクルのプログラムにて逆転写反応を行った。逆転写反応液をリアルタイムRT−PCR用希釈試薬「EASY Dilution」(タカラバイオ(株)社製)にて10倍希釈した希釈液をリアルタイムRT−PCR解析に使用した。
【0059】
リアルタイムRT−PCR解析は定法に従って行った。解析には「ECO Realtime RT―PCR system」(イルミナ(株)製)を使用した。プライマーには、サーチュインフォワードプライマー;(プライマーID:HA132648−F)、サーチュインリバースプライマー;(プライマーID:HA132648−R)を使用した。細胞内遺伝子の内部標準はβ−アクチンとし、そのプライマーとして、ACTBフォワードプライマー;(プライマーID:HA067803−F)、ACTBリバースプライマー;(プライマーID:HA067803−R)(いずれもタカラバイオ(株)社製)を使用した。反応にはリアルタイムRT−PCR試薬「SYBR(登録商標)Premix EX taq II」(Tli RNaseH Plus)(タカラバイオ(株)社製)を使用した。反応液は48ウェルPCRプレート(イルミナ(株)製)中に2×SYBR Premix EX taq II(Tli RNaseH Plus)5μL、フォワードプライマー(50μM)0.08μL、リバースプライマー(50μM)0.08μL、逆転写反応液 2μL、dH2O 2.84μL(総量10μL)を混合して[95℃ 30秒 → {95℃ 15秒 → 60℃ 1分}×40サイクル → 95℃ 15秒 → 55℃ 15秒 → 95℃ 15秒]のプログラムにてPCR反応を行った。
【0060】
得られた各細胞中のβ−アクチンとサーチュイン(SIRT1)のCt値(Threshold Cycle:一定の増幅量(閾値)に達するサイクル数)からサーチュイン発現量の相対値を算出した。結果を図1に示した。
【0061】
図1の結果より、UHA1028、UHA4002、UHA9021いずれにおいても、レスベラトロールよりもメッセンジャーRNAレベルにおいて強いサーチュイン発現増強作用が確認された。
【0062】
(実施例6:サーチュインタンパク質発現量の比較)
次にヒト細胞におけるサーチュインタンパク質発現増強作用を評価するために、Huvecを用いたウェスタンブロット解析を行った。
【0063】
試料にはレスベラトロール、本発明品であるUHA1028、UHA4002、UHA9021の4種類を用いた。各試料をDMSOに溶解し、10mMの濃度で溶解させたものを試験に使用した。
【0064】
Huvecの培養は、実施例3と同様の方法で行った。また、継代回数は4回の細胞を使用した。
【0065】
試験は定法に従って実施した。つまり、80%コンフルエント以上の状態の細胞に各試料を終濃度50μMとなるように添加した(DMSO持込量0.5%)。なお、溶媒であるDMSOのみを0.5%添加したものをネガティブコントロールとした。
UHA4002の場合、試料添加後に37℃、5%CO2条件下で2時間培養して細胞を回収した。UHA1028、UHA9021の場合には、試料添加後に37℃、5%CO2条件下で8時間培養して細胞を回収した。
プロテアーゼインヒビターカクテル錠「Complete Mini,EDTA−free」(ロシュ・ダイアグノスティックス(株)製)1錠をリン酸緩衝液PBS(Phosphate Buffered Saline)1.5mLに溶解させ、これをプロテアーゼインヒビター溶液とした。PBS850μLにプロテアーゼインヒビター溶液150μLを混合して細胞破砕液を調整した。
【0066】
回収した細胞に細胞破砕液100μLを添加し、超音波処理と遠心分離により粗タンパク質溶液を調製した。得られたタンパク質溶液は、「Protein Assay」(バイオ・ラッド・ラボラトリーズ(株)製)ブラットフォード法によりタンパク質濃度の定量を行った。
【0067】
タンパク質のSDS−ポリアクリルアミド電気泳動に供するタンパク質サンプルは、タンパク質4μg相当に1/5量のLaemmliサンプルバッファー(10%ドデシル硫酸ナトリウム、100mMジチオトレイトール、30%グリセロール、50mMTris−HCl、pH6.8)を添加して96℃で5分間加熱変性させたものを使用した。ゲルには「ミニプロティアンTGX7.5%Gel」(バイオ・ラッド・ラボラトリーズ(株)製)を使用した。
変性させたタンパク質サンプルを全量ゲルに供し、200V、30分間電気泳動した。
電気泳動後、セミドライ式ブロッティング装置「TRANS−BLOT S−D SEMI−DRY TRANSFER CELL」(バイオ・ラッド・ラボラトリーズ(株)製)でPVDF膜(ミリポア(株)社製)にブロッティングした。ここから、「Anti−SIRT1 Rabbit monoclonal Antibody」(一次抗体、abcam社製)、「Anti−Rabbit IgG,HRP−linked Antibody」(二次抗体、Cell Signaling社製)を用いた抗体反応によってサーチュインの検出を行った。これらの結果を図2図3に示した。
【0068】
図2図3の結果より、UHA1028、UHA4002、UHA9021いずれにおいてもレスベラトロールよりもサーチュインタンパク質発現量が増強されたことがわかる。
図1
図2
図3