【実施例】
【0035】
(実施例1:UHA1028の生成および単離・精製)
トランス−レスベラトロール(東京化成工業(株)社製)1g、p−クマル酸(和光純薬(株)社製)1gをエタノール20mLに溶解し、ミネラルウォーター(商品名「ゲロルシュタイナー」サッポロ飲料(株)製)20mLを加えて、レスベラトロール、p−クマル酸含有溶液(pH=4.6)を得た。このレスベラトロール、p−クマル酸含有溶液をオートクレーブにて130℃、90分間加熱した。得られた反応溶液のうち1mLをメタノールにて50mLにメスアップし、このうち10μLをHPLCにより分析し、UHA1028の生成を確認した。
【0036】
HPLC分析は以下条件にて行った。
カラム:逆相用カラム「Develosil(登録商標)C−30−UG−5」(4.6mmi.d.×250mm)
移動相:A・・・H
2O(0.1%トリフルオロ酢酸(TFA)), B・・・アセトニトリル(0.1%TFA)
流速:1mL/min
注入:10μL
検出:254nm
勾配(容量%):80%A/20%Bから20%A/80%Bまで30分間、20%A/80%Bから100%Bまで5分間、100%Bで10分間(全て直線)
【0037】
得られた反応物からUHA1028を分取HPLCにより精製し、常法により乾燥したところ、褐色粉末状の物質であった。
【0038】
なお、UHA1028の分子量を高分解能電子イオン化質量分析法(Electron Ionization−Mass Spectrometry)にて測定したところ、測定値は408.4436であり、理論値との比較から、以下の分子式を得た。
理論値C24H24O6(M
+):408.4438
分子式C
24H
24O
6
【0039】
次に、前記UHA1028を核磁気共鳴(NMR)測定に供し、1H−NMR、13C−NMR及び各種2次元NMRデータの解析から、前記UHA1028が前記式(3)で表される構造を有することを確認した。
【0040】
(実施例2:UHA4002の生成および単離・精製)
トランス−レスベラトロール700mgをエタノール14mlに溶解し、2.5%NaHCO
3水溶液を14ml加えて、レスベラトロール含有溶液(pH9.9)を得た。このレスベラトロール含有溶液をオートクレーブ(SANYO LABO AUTOCLAVE)にて130℃、20分間加熱した。次いで、1回目のオートクレーブ処理にて得られた反応溶液に、エタノール14mlと5.0%NaHCO
3水溶液を14ml加え、再度、オートクレーブ(SANYO LABO AUTOCLAVE)にて130℃、20分間加熱した。得られた反応溶液のうち1mLをメタノールにて50mlにメスアップし、このうちの10μlをHPLCにより分析し、UHA4002の生成を確認した。HPLC分析は、実施例1と同様の条件で行った。
【0041】
得られた反応物からUHA4002を分取HPLCにより精製し、常法により乾燥したところ、褐色粉末状の物質であった。
【0042】
なお、実施例1と同様に高分解能電子イオン化質量分析法にてUHA4002の分子量を測定したところ、測定値は439.4803であり、理論値との比較から、以下の分子式を得た。
理論値C28H23O5(M
+):439.4792
分子式C
28H
23O
5
【0043】
次に、前記UHA4002を核磁気共鳴(NMR)測定に供し、1H−NMR、13C−NMR及び各種2次元NMRデータの解析から、前記UHA4002が前記式(1)で表される構造を有することを確認した。
【0044】
(実施例3:UHA9021の生成および単離・精製)
トランス−レスベラトロール1g、シナピン酸(和光純薬(株)社製)1gをエタノール20mLに溶解し、ミネラルウォーター20mLを加えて、レスベラトロール、シナピン酸含有溶液(pH=4.9)を得た。このレスベラトロール、シナピン酸含有溶液をオートクレーブにて130℃、90分間加熱した。得られた反応溶液のうち1mLをメタノールにて50mLにメスアップし、このうち10μLをHPLCにより分析し、UHA9021の生成を確認した。HPLC分析は、実施例1と同様の条件で行った。
【0045】
得られた反応物からUHA9021を分取HPLCにより精製し、常法により乾燥したところ、褐色粉末状の物質であった。
【0046】
なお、実施例1と同様に高分解能電子イオン化質量分析法にてUHA9021の分子量を測定したところ、測定値は348.3915であり、理論値との比較から、以下の分子式を得た。
理論値C22H20O4(M
+):348.3918
分子式C
22H
20O
4
【0047】
次に、前記UHA9021を核磁気共鳴(NMR)測定に供し、1H−NMR、13C−NMR及び各種2次元NMRデータの解析から、前記UHA9021が前記式(2)で表される構造を有することを確認した。
【0048】
(実施例4:ヒトサーチュイン活性の比較)
ヒトサーチュインSIRT1に対するレスベラトロール誘導体の活性促進作用を評価するために、SIRT1活性測定用キット「SensoLyte(登録商標)Green SIRT1 Assay Kit」(ANASPEC社製)を用いて測定を行った。
【0049】
試料にはレスベラトロール、活性促進作用が報告されているε−ビニフェリン(和光純薬(株)社製)、本発明品であるUHA4002の3種類を用いた。各試料をジメチルスルホキシド(DMSO、和光純薬(株)社製)に100μMの濃度で溶解させて試験に使用した。
【0050】
測定は前記測定用キットに付属の取り扱い説明書の方法に準じて行った。まず、コンポーネントA(サーチュイン基質)50μLとコンポーネントE(NAD
+)50μLをコンポーネントD(アッセイバッファー)4.9mLに混合し、サーチュイン基質溶液とした。次にコンポーネントC(リコンビナントサーチュイン)をコンポーネントDで20倍希釈し、これをサーチュイン酵素溶液とした。次にコンポーネントG(デベロッパー)500μLとコンポーネントF(ニコチンアミド)500μLにコンポーネントD 4mLに混合し、これを1×デベロッパー溶液とした。
【0051】
酵素反応は96ウェルアッセイブラックプレート(コーニングジャパン(株)社製)を用いて行った。ウェルにサーチュイン酵素溶液 40μLと試料10μLを添加した。なお、コンポーネントD 40μLと試料10μLを添加したものを化合物コントロールとした。
37℃ 10分プレインキュベートし、これにサーチュイン基質溶液を50μL添加した(試料終濃度10μM)。化合物コントロールにはコンポーネントD 50μLを添加した。穏やかに30秒程度撹拌し、37℃で60分インキュベートした。
1×デベロッパー溶液を各ウェルに50μLずつ加えた。撹拌・混合後に37℃ 10分インキュベートし、これを蛍光検出器「Thermo Fluoroskan Ascent」(サーモフィッシャーサイエンティフィック(株)製)にて励起波長485nm、測定波長538nmで測定した。得られたデータをもとに、レスベラトロールを添加した条件の活性を100%とし、各試料を添加した条件の活性を算出した。これらの結果を表1に示した。
【0052】
【表1】
【0053】
表1の結果より、UHA4002にレスベラトロール、ε―ビニフェリンよりも優れたサーチュイン活性促進作用が見られた。
また、UHA1028、UHA9021についても、同様にして調べたところ、レスベラトロールと同程度のサーチュイン活性促進作用が確認された。
【0054】
(実施例5:サーチュイン遺伝子発現量の比較)
次にヒト細胞におけるサーチュイン遺伝子SIRT1の発現増強作用を評価するために、ヒト臍帯静脈内皮細胞(Huvec)(LONZA(株)社製)を用いたリアルタイムRT−PCR解析を行った。
【0055】
試料にはレスベラトロール、本発明品であるUHA1028、UHA4002、UHA9021の4種類を用いた。各試料をDMSOに2mMの濃度で溶解させたものを試験に使用した。
【0056】
Huvecの培養には、内皮細胞添加因子セット−2(「EGM(登録商標)−2 SingleQuots」、タカラバイオ(株)社製)の内皮細胞添加因子(hEGF、ヘパリン、ヒドロコルチゾン、FBS、hFGF−B、アスコルビン酸、VEGF、R3−IGF、GA−1000)を全量添加した内皮細胞基本培地−2(「EBM(登録商標)−2」、タカラバイオ(株)社製)を使用した。培養用ディッシュには、細胞培養用コラーゲンIコート10cmディッシュ(日本BD(株)社製)を使用した。細胞は、5×10
4cell/mLに調製した培養液を10mL播種し、37℃、5%CO
2条件下で62時間培養し、80%コンフルエント以上の状態で試験に使用した。継代回数は5回の細胞を使用した。
【0057】
試験は定法に従って実施した。80%コンフルエント以上の状態の細胞に各試料を終濃度10μMとなるように添加した(DMSO持込量0.5%)。なお、溶媒であるDMSOのみを0.5%添加したものをネガティブコントロールとした。
【0058】
試料添加後、37℃、5%CO
2条件下で24時間培養し、細胞よりRNA抽出キット「NucleoSpin(登録商標)RNA II」(タカラバイオ(株)社製)を用いて全量RNAを抽出・精製した。得られたRNAを2ステップリアルタイムRT−PCR用逆転写試薬「PrimeScript(登録商標)RT Master Mix」(タカラバイオ(株)社製)の取扱説明書に準じて逆転写反応を行った。つまり5×Primescript RT Master Mix 4μL、全量RNA 1μgを混合し、RNase Free dH
2Oで20μLに調製した。PCR用サーマルサイクラー「GeneAmp(登録商標)PCR System 9700」(Applied Biosystem(株)社製)を使用して{37℃ 15分 → 85℃ 5秒}×1サイクルのプログラムにて逆転写反応を行った。逆転写反応液をリアルタイムRT−PCR用希釈試薬「EASY Dilution」(タカラバイオ(株)社製)にて10倍希釈した希釈液をリアルタイムRT−PCR解析に使用した。
【0059】
リアルタイムRT−PCR解析は定法に従って行った。解析には「ECO Realtime RT―PCR system」(イルミナ(株)製)を使用した。プライマーには、サーチュインフォワードプライマー;(プライマーID:HA132648−F)、サーチュインリバースプライマー;(プライマーID:HA132648−R)を使用した。細胞内遺伝子の内部標準はβ−アクチンとし、そのプライマーとして、ACTBフォワードプライマー;(プライマーID:HA067803−F)、ACTBリバースプライマー;(プライマーID:HA067803−R)(いずれもタカラバイオ(株)社製)を使用した。反応にはリアルタイムRT−PCR試薬「SYBR(登録商標)Premix EX taq II」(Tli RNaseH Plus)(タカラバイオ(株)社製)を使用した。反応液は48ウェルPCRプレート(イルミナ(株)製)中に2×SYBR Premix EX taq II(Tli RNaseH Plus)5μL、フォワードプライマー(50μM)0.08μL、リバースプライマー(50μM)0.08μL、逆転写反応液 2μL、dH
2O 2.84μL(総量10μL)を混合して[95℃ 30秒 → {95℃ 15秒 → 60℃ 1分}×40サイクル → 95℃ 15秒 → 55℃ 15秒 → 95℃ 15秒]のプログラムにてPCR反応を行った。
【0060】
得られた各細胞中のβ−アクチンとサーチュイン(SIRT1)のCt値(Threshold Cycle:一定の増幅量(閾値)に達するサイクル数)からサーチュイン発現量の相対値を算出した。結果を
図1に示した。
【0061】
図1の結果より、UHA1028、UHA4002、UHA9021いずれにおいても、レスベラトロールよりもメッセンジャーRNAレベルにおいて強いサーチュイン発現増強作用が確認された。
【0062】
(実施例6:サーチュインタンパク質発現量の比較)
次にヒト細胞におけるサーチュインタンパク質発現増強作用を評価するために、Huvecを用いたウェスタンブロット解析を行った。
【0063】
試料にはレスベラトロール、本発明品であるUHA1028、UHA4002、UHA9021の4種類を用いた。各試料をDMSOに溶解し、10mMの濃度で溶解させたものを試験に使用した。
【0064】
Huvecの培養は、実施例3と同様の方法で行った。また、継代回数は4回の細胞を使用した。
【0065】
試験は定法に従って実施した。つまり、80%コンフルエント以上の状態の細胞に各試料を終濃度50μMとなるように添加した(DMSO持込量0.5%)。なお、溶媒であるDMSOのみを0.5%添加したものをネガティブコントロールとした。
UHA4002の場合、試料添加後に37℃、5%CO
2条件下で2時間培養して細胞を回収した。UHA1028、UHA9021の場合には、試料添加後に37℃、5%CO
2条件下で8時間培養して細胞を回収した。
プロテアーゼインヒビターカクテル錠「Complete Mini,EDTA−free」(ロシュ・ダイアグノスティックス(株)製)1錠をリン酸緩衝液PBS(Phosphate Buffered Saline)1.5mLに溶解させ、これをプロテアーゼインヒビター溶液とした。PBS850μLにプロテアーゼインヒビター溶液150μLを混合して細胞破砕液を調整した。
【0066】
回収した細胞に細胞破砕液100μLを添加し、超音波処理と遠心分離により粗タンパク質溶液を調製した。得られたタンパク質溶液は、「Protein Assay」(バイオ・ラッド・ラボラトリーズ(株)製)ブラットフォード法によりタンパク質濃度の定量を行った。
【0067】
タンパク質のSDS−ポリアクリルアミド電気泳動に供するタンパク質サンプルは、タンパク質4μg相当に1/5量のLaemmliサンプルバッファー(10%ドデシル硫酸ナトリウム、100mMジチオトレイトール、30%グリセロール、50mMTris−HCl、pH6.8)を添加して96℃で5分間加熱変性させたものを使用した。ゲルには「ミニプロティアンTGX7.5%Gel」(バイオ・ラッド・ラボラトリーズ(株)製)を使用した。
変性させたタンパク質サンプルを全量ゲルに供し、200V、30分間電気泳動した。
電気泳動後、セミドライ式ブロッティング装置「TRANS−BLOT S−D SEMI−DRY TRANSFER CELL」(バイオ・ラッド・ラボラトリーズ(株)製)でPVDF膜(ミリポア(株)社製)にブロッティングした。ここから、「Anti−SIRT1 Rabbit monoclonal Antibody」(一次抗体、abcam社製)、「Anti−Rabbit IgG,HRP−linked Antibody」(二次抗体、Cell Signaling社製)を用いた抗体反応によってサーチュインの検出を行った。これらの結果を
図2、
図3に示した。
【0068】
図2、
図3の結果より、UHA1028、UHA4002、UHA9021いずれにおいてもレスベラトロールよりもサーチュインタンパク質発現量が増強されたことがわかる。