(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記硬化剤が、ヘキサメチレンテトラミン、HMMM(ヘキサメトキシメチロールメラミンの部分縮合物)、PMMM(ヘキサメチロールメラミンペンタメチルエーテルの部分縮合物)、ヘキサエトキシメチルメラミン、パラ−ホルムアルデヒドのポリマーおよびメラミンのN−メチロール誘導体からなる群から選択された1種以上であることを特徴とする請求項1に記載のタイヤ用ゴム組成物。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
【0009】
図1は、乗用車用の空気入りタイヤの一例の部分断面図である。
図1において、空気入りタイヤは左右一対のビード部1およびサイドウォール2と、両サイドウォール2に連なるトレッド3からなり、ビード部1、1間に繊維コードが埋設されたカーカス層4が装架され、カーカス層4の端部がビードコア5およびビードフィラー6の廻りにタイヤ内側から外側に折り返されて巻き上げられている。トレッド3においては、カーカス層4の外側に、ベルト層7がタイヤ1周に亘って配置されている。また、ビード部1においてはリムに接する部分にリムクッション8が配置されている。
以下に説明する本発明のゴム組成物は、上記のようなタイヤ用の各種部材に使用することができ、トレッド3(とくにキャップトレッド)に好ましく使用できる。
【0010】
(ジエン系ゴム)
本発明で使用されるジエン系ゴム成分は、ガラス転移温度(Tg)が−25〜−60℃である芳香族ビニル共役ジエン共重合体を少なくとも1種含むことが必須である。当該芳香族ビニル共役ジエン共重合体を配合することにより、グリップ性能、とくにウェットグリップ性能が高まるとともに、耐摩耗性も向上する。芳香族ビニル共役ジエン共重合体としては、例えばスチレンブタジエンゴム(SBR)を例示することができる。スチレンブタジエンゴムの種類としては、上述したガラス転移温度を有するものであれば、溶液重合スチレンブタジエンゴム、乳化重合スチレンブタジエンゴムのいずれでもよい。また、スチレンブタジエンゴムは油展品でもよいが、油展SBRのガラス転移温度は、オイル成分を含まない状態におけるスチレンブタジエンゴムのガラス転移温度とする。
また本発明におけるジエン系ゴム成分としては、上記芳香族ビニル共役ジエン共重合体のほかに、任意のジエン系ゴムを用いることができる。このようなジエン系ゴムとしては、通常のゴム組成物に配合するものが挙げられ、例えば、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体ゴム(NBR)等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、その分子量やミクロ構造はとくに制限されず、アミン、アミド、シリル、アルコキシシリル、カルボキシル、ヒドロキシル基等で末端変性されていても、エポキシ化されていてもよい。
また本発明において、Tgが−25〜−60℃である芳香族ビニル共役ジエン共重合体の配合量は、ジエン系ゴム成分100質量部中、50〜80質量部が好ましい。また、Tgが−25〜−60℃であるSBRとBRを併用することも本発明の効果の点から好ましく、この場合、ジエン系ゴム成分100質量部中、Tgが−25〜−60℃であるSBRを60〜80質量部、BRを20〜40質量部配合するのが好ましい。
【0011】
(カーボンブラック)
本発明で使用されるカーボンブラックは、窒素吸着比表面積(N
2SA)が80〜140m
2/gである必要がある。80m
2/g未満では硬度が低下し、グリップ性能が悪化する。なお、窒素吸着比表面積(N
2SA)はJIS K6217−2に準拠して求めた値である。さらに好ましい窒素吸着比表面積(N
2SA)は、85〜160m
2/gである。
また、本発明で使用されるカーボンブラックは、DBP吸収量が100cm
3/100g以上である必要がある。100cm
3/100g未満では耐摩耗性と破断伸びを共に改善することができない。なお、DBP吸収量はJIS K6217−4吸油量A法に準拠して求めた値である。さらに好ましいDBP吸収量は、110〜140cm
3/100gである。
【0012】
(シリカ)
本発明で使用されるシリカは、特に限定されるものではなく、通常ゴム組成物に配合されるものを使用することができ、例えば湿式法シリカ、乾式法シリカ、表面処理シリカなどからゴム組成物用として使用されている任意のシリカを用いることができる。シリカのBET比表面積(JIS K6430付属書Eに準拠して測定)は、本発明の効果の点から、例えば100〜250m
2/g、好ましくは120〜220m
2/gであるのがよい。
【0013】
(樹脂溶液)
本発明で使用する樹脂溶液は、軟化点が84℃以上であるノボラック型フェノール系樹脂を有機溶媒に溶解してなることを特徴とする。
【0014】
ノボラック型フェノール系樹脂は、本発明の効果の観点から好ましいものとして、例えばノボラック型フェノール樹脂、ノボラック型クレゾール樹脂、ノボラック型レゾルシン樹脂、オイル変性フェノール樹脂等が挙げられる。オイル変性フェノール樹脂としては、カシュー変性フェノール樹脂が好ましい。
本発明において、本発明の効果およびゴム中への分散性という観点から、ノボラック型フェノール系樹脂の軟化点は、84℃以上が好ましい。さらに好ましくは87〜160℃である。
本発明で使用するノボラック型フェノール系樹脂は、本発明の効果およびゴム中への分散性という観点から、ノボラック型フェノール系樹脂が、ノボラック型フェノール樹脂、ノボラック型クレゾール樹脂、ノボラック型レゾルシン樹脂のいずれかあるいはそれらの混合物であることが好ましい。
また本発明で使用するノボラック型フェノール系樹脂は、市販されているものを利用することができ、例えば田岡化学工業(株)製スミカノール610、住友ベークライト(株)製PR−YR−170等が挙げられる。
【0015】
本発明で使用される有機溶媒は、SP値(溶解度パラメーター)が40以下であるものがノボラック型フェノール系樹脂の分散性の観点から好ましい。
【0016】
SP値が40以下の有機溶媒として、好適なものとして、例えばエチレングリコール(SP値=30.3)、ジエチレングリコール(SP値=26.6)、エタノール(SP値=22.4)、アセトン(SP値=17.2)、ジメチルホルムアミド(SP値=20.9)、シクロヘキサノール(SP値=21.7)、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド(SP値=19.2)、ビス(トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド(SP値=18.0)等が挙げられる。
本発明において好ましい有機溶媒の好ましいSP値は40以下16以上である。
なお、ノボラック型フェノール系樹脂の分散性の観点から、使用される有機溶媒のSP値はノボラック型フェノール系樹脂のSP値と差異が少ないことが好ましい(例えばノボラック型クレゾール樹脂のSP値=23.6)。また、ノボラック型フェノール系樹脂が0℃〜200℃の範囲で溶解できる、および作業環境への配慮から非有害性の有機溶媒が好ましいので、有機溶媒としてはエチレングリコール、ジエチレングリコールが好ましい。さらにゴムと化学結合を形成する等の親和性があるとより好ましい。ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド等がより好ましい。
【0017】
本発明で使用する樹脂溶液において、軟化点が84℃以上であるノボラック型フェノール系樹脂と有機溶媒との割合は、前者:後者(質量比)として、1:0.25〜4の範囲が好ましく、1:0.5〜3の範囲がさらに好ましい。樹脂の質量比が大きすぎると溶液の粘度が高すぎて、ゴム中での分散が良化しない。また、ゴムの粘度低下効果も不足する。樹脂の質量比が小さすぎると溶剤を多量に配合することになり、例えば硬度が下がりすぎたり、発熱が悪化してしまったりするので好ましくない。
上記割合を採用することにより、ゴム成分に対するノボラック型フェノール系樹脂の分散性が一層向上し、本発明の効果を良好に奏することができる。
【0018】
(硬化剤)
本発明のゴム組成物は、硬化剤を配合する。硬化剤としてはノボラック型フェノール系樹脂を硬化可能なものであればよく、とくに制限されないが、例えば本発明の効果の観点から、ヘキサメチレンテトラミン、HMMM(ヘキサメトキシメチロールメラミンの部分縮合物)、PMMM(ヘキサメチロールメラミンペンタメチルエーテルの部分縮合物)、ヘキサエトキシメチルメラミン、パラ−ホルムアルデヒドのポリマーおよびメラミンのN−メチロール誘導体からなる群から選択された1種以上が好ましい。
【0019】
(タイヤ用ゴム組成物の配合割合)
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、ジエン系ゴム100質量部に対し、上記特性を有するカーボンブラックを1〜80質量部、シリカを10〜150質量部、樹脂溶液をノボラック型フェノール系樹脂の質量として0.1〜20質量部および硬化剤を0.1〜20質量部配合し、かつ、前記カーボンブラックと前記シリカとの合計量が40〜160質量部の範囲内であることを特徴とする。
前記カーボンブラックの配合量が1質量部未満であると、耐摩耗性が悪化する。
前記カーボンブラックの配合量が80質量部を超えると、低燃費性が悪化する。
前記シリカの配合量が10質量部未満であると、湿潤路面での操縦安定性が悪化する。
前記シリカの配合量が150質量部を超えると、低燃費性が悪化する。
前記樹脂溶液の配合量が0.1質量部未満であると、添加量が少な過ぎて本発明の効果を奏することができない。
前記樹脂溶液の配合量が20質量部を超えると、破断伸びが悪化する。
前記硬化剤の配合量が0.1質量部未満であると、配合量が少な過ぎて本発明の効果を奏することができない。
前記硬化剤の配合量が20質量部を超えると、破断伸びが悪化する。
前記カーボンブラックと前記シリカとの合計量が40質量部未満では、グリップ性能が悪化する。
前記カーボンブラックと前記シリカとの合計量が160質量部を超えると、低燃費性が悪化する。
【0020】
本発明において、上記特性を有するカーボンブラックのさらに好ましい配合量は、ジエン系ゴム100質量部に対し、10〜45質量部である。
本発明において、シリカのさらに好ましい配合量は、ジエン系ゴム100質量部に対し、35〜85質量部である。
本発明において、樹脂溶液のさらに好ましい配合量は、ノボラック型フェノール系樹脂の質量としてジエン系ゴム100質量部に対し、0.4〜18質量部である。
本発明において、硬化剤のさらに好ましい配合量は、ジエン系ゴム100質量部に対し、0.4〜18質量部である。
本発明において、上記特性を有するカーボンブラックとシリカとの合計量は、ジエン系ゴム100質量部に対し、45〜115質量部である。
【0021】
本発明では、その効果向上の観点から、イオウ含有シランカップリング剤を配合するのが好ましい。イオウ含有シランカップリング剤としては、例えば3−オクタノイルチオプロピルトリエトキシシラン、3−プロピオニルチオプロピルトリメトキシシラン、ビス−(3−ビストリエトキシシリルプロピル)−テトラスルフィド、ビス−(3−ビストリエトキシシリルプロピル)−ジスルフィド、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
シランカップリング剤の配合量は、ジエン系ゴム100質量部に対し、1.5〜15質量部が好ましく、2.0〜10.0質量部がさらに好ましい。
【0022】
本発明のタイヤ用ゴム組成物には、前記した成分に加えて、加硫又は架橋剤、加硫又は架橋促進剤、各種充填剤、各種オイル、老化防止剤、可塑剤などのタイヤ用ゴム組成物に一般的に配合されている各種添加剤を配合することができ、かかる添加剤は一般的な方法で混練して組成物とし、加硫又は架橋するのに使用することができる。これらの添加剤の配合量も、本発明の目的に反しない限り、従来の一般的な配合量とすることができる。
【0023】
また本発明のタイヤ用ゴム組成物は従来の空気入りタイヤの製造方法に従って空気入りタイヤを製造するのに使用することができる。本発明のタイヤ用ゴム組成物をトレッドに使用した空気入りタイヤは、とくに、高速走行を必要とする高性能タイヤや競技用タイヤに有利に使用できる。
【実施例】
【0024】
以下、本発明を実施例および比較例によりさらに説明するが、本発明は下記例に制限されるものではない。
【0025】
実施例1〜3および比較例1〜7
サンプルの調製
表1に示す配合(質量部)において、加硫系(加硫促進剤、硫黄)と硬化剤を除く成分を1.7リットルの密閉式バンバリーミキサーで5分間混練した後、ミキサー外に放出させて室温冷却した。続いて、該組成物を同バンバリーミキサーに再度入れ、加硫系を加えて混練し、タイヤ用ゴム組成物を得た。得られたタイヤ用ゴム組成物を160℃、20分の条件でプレス加硫し、以下に示す試験法で物性を測定した。
【0026】
ムーニー粘度:JIS K6300に基づき、100℃にて測定した。結果は、比較例2の値を100として指数で示した。指数が小さいほど粘度が低く、押出しや混合工程での加工性に優れることを示す。
硬度(20℃):JIS K6253に基づき、20℃にて測定した。結果は、比較例2の値を100として指数で示した。指数が大きいほど硬度が高く、操縦安定性に優れることを示す。
破断伸び:JIS K6251に基づき、室温にて引張試験を実施し、破断時の伸びを求めた。結果は、比較例2の値を100として指数で示した。指数が大きいほど破断伸びが高く、グリップ性能が向上し、また、グルーヴクラックやブロックの欠けが抑制されることを示す。
結果を表1に併せて示す。
【0027】
【表1】
【0028】
*1:SBR−1(日本ゼオン(株)製Nipol NS460、Tg=−27℃、油展量=SBR100質量部に対し37.5質量部)
*2:SBR−2(日本ゼオン(株)製Nipol 9529Tg=−20℃、油展量=SBR100質量部に対し50質量部)
*3:BR(日本ゼオン(株)製BR1220)
*4:シリカ(エボニックデグッサジャパン(株)製ULTRASIL 7000GR、BET比表面積=158m
2/g)
*5:カーボンブラック−1(東海カーボン(株)社製シースト6、N
2SA=119m
2/g、DBP吸収量=114cm
3/100g)
*6:カーボンブラック−2(キャボットジャパン(株)製ショウブラックN330、N
2SA=75m
2/g、DBP吸収量=102cm
3/100g)
*7:カーボンブラック−3(キャボットジャパン(株)製ショウブラックN326、N
2SA=81m
2/g、DBP吸収量=75cm
3/100g)
*8:シランカップリング剤(エボニックデグッサジャパン(株)製Si69)
*9:酸化亜鉛(正同化学工業(株)製、酸化亜鉛3種)
*10:ステアリン酸(日油(株)製ビーズステアリン酸)
*11:老化防止剤(FLEXSYS社製6PPD)
*12:ノボラック型クレゾール樹脂(田岡化学工業(株)製スミカノール610、軟化点=96℃)
*13:樹脂溶液−1(上記ノボラック型クレゾール樹脂をジエチレングリコールに溶解したもの。樹脂:有機溶媒(質量比)として、1:1。なお表中の数値は樹脂溶液全体の質量部を表す)
*14:樹脂溶液−2(上記ノボラック型クレゾール樹脂をビス(トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド(エボニックデグッサ(株)製Si75)に溶解したもの。樹脂:有機溶媒(質量比)として、1:1。なお表中の数値は樹脂溶液全体の質量部を表す)
*15:PMMM(田岡化学工業(株)製スミカノール507A)
*16:アロマオイル(昭和シェル石油(株)製エキストラクト4号S)
*17:硫黄(鶴見化学工業(株)製金華印油入微粉硫黄)
*18:加硫促進剤−1(大内新興化学工業(株)製ノクセラーCZ−G)
*19:加硫促進剤−2(住友化学工業(株)製ソクシノールD−G)
なおジエチレングリコールとしては丸善石油化学(株)製のものを用いた。
【0029】
上記の表1から明らかなように、実施例1〜3で調製されたタイヤ用ゴム組成物は、特定の組成のジエン系ゴムに特定の特性を有するカーボンブラックの特定量、シリカの特定量、特定の樹脂溶液の特定量および特定の硬化剤を特定量を配合しているので、従来の代表的な比較例1に対し、高硬度化が達成され優れたグリップ性能を有するとともに、破断伸びが向上し、グルーヴクラックやブロックの欠けを抑制し、かつ加工性の改善が可能であることが明らかになった。
これに対し、比較例2は、ノボラック型クレゾール樹脂を有機溶剤に溶解させることなく添加した例であり、所望の硬度および破断伸びが得られず、かつ加工性も改善されなかった。
比較例3は、ジエチレングリコールだけを添加した例であり、低粘度化による加工性改善は見られるものの、所望の硬度および破断伸びが得られなかった。
比較例4は、ノボラック型クレゾール樹脂を有機溶媒に溶解させることなく、両者をそれぞれ1:1(質量比)として別々に添加した例であり、所望の硬度および破断伸びが得られなかった。
比較例5は、SBRのTgが本発明で規定する上限を超えているので、所望の硬度および破断伸びが得られなかった。
比較例6は、カーボンブラックのN
2SAが本発明で規定する下限未満であるので、加工性は改善されたものの、硬度に改善が見られなかった。
比較例7は、カーボンブラックのN
2SAは本発明で規定内であるが、DBP吸収量が本発明で規定する下限未満であるので、加工性は改善されたものの、硬度が悪化した。