(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
一般に、種々の電気機器等において、フレキシブル・プリンテッド・サーキット(FPC)や、フレキシブル・フラット・ケーブル(FFC)等の各種信号伝送媒体を電気的に接続するための手段として種々の電気コネクタが広く用いられている。例えば、下記の特許文献1のように印刷配線基板上に実装されて使用される電気コネクタでは、FPCやFFC等からなる信号伝送媒体が、絶縁ハウジング(インシュレータ)の前端側開口部から内部に挿入され、その後にアクチュエータ(接続操作手段)が、作業者の操作力でコネクタ前方側又は後方側の接続作用位置に向かって押し倒されるように回動される。これによって、信号伝送媒体の端末部分に設けられた係合部にロック部材の一部が落ち込んで係合状態になされ、信号伝送媒体の端末部分がロック部材により略不動状態に保持される構成になされている。
【0003】
このように、アクチュエータを備えた電気コネクタは、接続解除位置と接続作用位置との間でアクチュエータを回動操作することによってロック部材の係合・離脱を操作する構成になされているが、信号伝送媒体(FPC,FFC等)の挿入作業とは別個にアクチュエータを操作する必要があるために作業効率が問題となる場合がある。そのため、例えば下記の特許文献2及び3のように、絶縁ハウジングの内部に挿入された信号伝送媒体に対してロック部材の一部が乗り上げるようにして弾性変位し、その後に信号伝送媒体の係合部にロック部材の一部が落ち込んで係合が行われるように構成された、いわゆるワンアクションオートロック機構を備えた電気コネクタが従来から開発されている。このようなワンアクションオートロック機構を備えた電気コネクタを用いれば、電気コネクタの内部の所定位置まで信号伝送媒体を挿入するだけで、信号伝送媒体が略不動状態に保持されることとなり、作業効率の向上が図られる。
【0004】
しかしながら、従来の電気コネクタに採用されているワンアクションオートロック機構においては、上述したように信号伝送媒体(FPC,FFC等)を電気コネクタに挿入するだけでロックが行われる利点がある一方、係止ロック部の係合状態を解除するためのロック解除操作部の構成が複雑化する傾向があり、また解除の操作に手間が掛かるとともに、使用耐久性に問題を生じるおそれもある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで本発明は、簡易な構成で、ロック解除操作部の操作性及び使用耐久性を向上させることができるようにした電気コネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため本発明では、配線基板に基板接続部が半田接合されて前記配線基板上に実装されるように構成されたものであって、
絶縁ハウジングの長手方向両端部分に、板状金属部材からなる一対のロック部材が装着され、それらの各ロック部材は、当該ロック部材に突設された係止片が前記絶縁ハウジングに圧入されることによって、前記絶縁ハウジングに対する固定が行われる構成になされている一方、前記各ロック部材は、前記絶縁ハウジングの内部に挿入された信号伝送媒体の端末部分に係合して前記信号伝送媒体を略不動状態に保持する係止ロック部を備えているとともに、
前記信号伝送媒体に対する前記係止ロック部の係合状態を、ロック解除操作部の操作で解除させるように構成された電気コネクタにおいて、前記
ロック部材は、前記基板接続部から片持ち状に一体的に延出して弾性変位可能となるように配置されたロックアーム部材を有し、そのロックアーム部材の延出方向における途中位置及び自由端位置に、前記係止ロック部及び前記ロック解除操作部が弾性変位可能に一体的に設けられ
ているとともに、前記ロックアーム部材の前記基板接続部と前記係止ロック部との間には、反転して延在するように折曲げ成形された折曲げ部が設けられ、かつ前記ロック部材に突設された係止片が、所定の板幅をなして突出する2体の板状金属部材から形成されたものであって、前記2体の係止片を構成している板状金属部材の板幅方向が、互いに直交する方向に設定された構成が採用されている。
【0008】
このような構成を有する本発明によれば、基板接続部、係止ロック部及びロック解除操作部が
、ロック部材のロックアーム部材に一体に設けられているため、挿入された信号伝送媒体の保持作用及び解除作用が同一部材の動作によって行われることとなり、解除操作部の構造及び操作が容易化されるとともに、
ロック部材に設けられた2体の係止片を構成している板状金属部材の板幅方向が互いに直交していることによりロック部材が強固に固定され、使用の耐久性も向上される。
【0010】
また、本発明における前記ロックアーム部材は、前記基板接続部と前記係止ロック部との間において折り返すように折曲げ成形されていることから、電気コネクタを小型化した場合であっても、小さいスペース内でロックアーム部材の長さを十分確保することが可能となり、その分、自由端位置に設けられたロック解除操作部の操作力が小さく抑えられる一方、係止ロック部を折曲げ部側に配置することによって、当該係止ロック部により大きな保持力が確保される。
【0011】
また、本発明においては、前記絶縁ハウジングに、前記信号伝送媒体の端末部分に接触する信号伝送用の導電コンタクトが取り付けられたものであって、その導電コンタクトに設けられた基板接続部と、前記ロックアーム部材に設けられた基板接続部とが、前記絶縁ハウジングの相対向する両縁部に配置されていることが望ましい。
【0012】
このような構成を有する本発明によれば、相対向する両縁部に配置された基板接続部によって、電気コネクタの全体が両側からバランスされた状態で固定されるため、信号伝送媒体の挿入等による外力に対して強固な保持性が得られる。
【0013】
また、本発明においては、前記ロック解除操作部が、前記絶縁ハウジングにおける長手方向の両端部分にそれぞれ配置され、前記絶縁ハウジングの長手方向両端部分には、前記ロック解除操作部を外方に露出させる切欠き部が設けられていることが望ましい。
【0014】
このような構成を有する本発明によれば、信号伝送媒体の挿入が良好に行われた際に絶縁ハウジングの切欠き部から外方に露出するロック解除操作部が、信号伝送媒体の挿入が不十分な場合には絶縁ハウジングの内方に埋没したままの状態に維持されるため、信号伝送媒体の挿入動作の良否が容易に判定される。
【発明の効果】
【0015】
以上述べたように本発明にかかる電気コネクタは、配線基板に半田接合される基板接続部から片持ち状に一体的に延出して弾性変位可能な
ロック部材のロックアーム部材に、係止ロック部及びロック解除操作部を一体的に設け、基板接続部、係止ロック部及びロック解除操作部をロックアーム部材に一体に設けることによって、挿入された信号伝送媒体の保持作用及び解除作用を同一部材の動作によって行わせる
とともに、ロック部材に突設した2体の係止片の板幅方向を互いに直交させていることで固定強度を向上させるように構成したものであるから、簡易な構成で、ロック解除操作部の操作性及び使用耐久性を向上させることができ、電気コネクタの信頼性を低廉かつ大幅に向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の第1の実施形態にかかる電気コネクタを表した外観斜視説明図である。
【
図2】
図1に表された電気コネクタの平面説明図である。
【
図3】
図1及び
図2に表された電気コネクタの正面説明図である。
【
図4】
図3中の IV-IV 線に沿った横断面説明図である。
【
図5】
図1〜
図4に表された電気コネクタに用いられているロック部材を平面側から見た外観斜視説明図である。
【
図6】
図5に表されたロック部材を底面側から見た外観斜視説明図である。
【
図7】
図1〜
図4に表された電気コネクタに信号伝送媒体が差し込まれる直前の状態を示したコネクタ長手方向両端部分の横断面説明図である。
【
図8】
図7の状態から信号伝送媒体がコネクタ内部に差し込まれていく途中の状態を示したコネクタ長手方向両端部分の横断面説明図である。
【
図9】
図8に表された状態から更に信号伝送媒体が差し込まれて電気コネクタに対する信号伝送媒体の差し込みが完了し、信号伝送媒体が係止ロック部により係止された状態を示した横断面説明図である。
【
図10】
図9に表されたロック状態から解除操作が行われてロック部材が押し下げられた状態を示した横断面説明図である。
【
図11】本発明の第2の実施形態にかかる電気コネクタを表した外観斜視説明図である。
【
図12】
図11に表された電気コネクタに用いられているロック部材を平面側から見た外観斜視説明図である。
【
図13】
図11に表された電気コネクタに信号伝送媒体が差し込まれ始めた状態を示したコネクタ長手方向両端部分の横断面説明図である。
【
図14】
図13の状態から信号伝送媒体がコネクタ内部に差し込まれていく途中の状態を示したコネクタ長手方向両端部分の横断面説明図である。
【
図15】
図14に表された状態から更に信号伝送媒体が差し込まれて電気コネクタに対する信号伝送媒体の差し込みが完了し、信号伝送媒体が係止ロック部により係止された状態を示した横断面説明図である。
【
図16】
図15に表されたロック状態から解除操作が行われてロック部材が押し下げられた状態を示した横断面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、フレキシブル・プリンテッド・サーキット(FPC)やフレキシブル・フラット・ケーブル(FFC)等からなる信号伝送媒体の電気接続を行うべく配線基板上に実装して使用される電気コネクタに本発明を適用した実施の形態について、図面に基づいて詳細に説明する。
【0018】
[第1の実施形態にかかる電気コネクタの全体構成について]
まず、
図1〜
図9に示されている本発明の第1実施形態にかかる電気コネクタ10は、いわゆるノン・ジフ(NON-ZIF)タイプのワンアクションオートロック機構を備えた電気コネクタからなるものであって、上述した信号伝送媒体(FPC又はFFC等)Fの端末部分を、絶縁ハウジング11の前端縁部(
図4の左端縁部)に設けられた媒体挿入口11aを通して絶縁ハウジング11の内部の所定位置まで挿入した際に、信号伝送媒体Fのロックが自動的に行われる構成になされたものである。
【0019】
[絶縁ハウジングについて]
このとき、前記絶縁ハウジング11は、細長状に延在する中空枠体状の絶縁部材から形成されているが、その絶縁ハウジング11における長手の横幅方向を、以下、「コネクタ長手方向」と呼び、また信号伝送媒体(FPC又はFFC等)Fの端末部分を挿入又は離脱させる方向を「コネクタ前後方向」と呼ぶこととする。
【0020】
その絶縁ハウジング11の前端縁部分(
図3左端縁部分)には、上述したようにフレキシブル・プリンテッド・サーキット(FPC)やフレキシブル・フラット・ケーブル(FFC)等からなる信号伝送媒体Fの端末部分が挿入される媒体挿入口11aが、コネクタ長手方向に沿って細長状をなすように設けられている。また、絶縁ハウジング11のコネクタ長手方向の両端部分であって前記媒体挿入口11aの両側外方部分には、後述するロック部材12が装着されている。さらに、絶縁ハウジング11の後端側部分(
図4の右端縁部分)、すなわち上述した媒体挿入口11aのコネクタ前後方向における反対側部分には、導電コンタクト13等を装着するための部品取付口11bが、同じくコネクタ長手方向に沿って細長状をなすように設けられている。
【0021】
[導電コンタクトについて]
導電コンタクト13は、適宜の形状をなす薄板状金属製部材により形成されていて、それら複数体の導電コンタクト13が、絶縁ハウジング11の後端側の部品取付口11bから前方側(
図4の左方側)に向かって挿入され、絶縁ハウジング11の内部においてコネクタ長手方向に適宜の間隔をなして多極状に配置されている。これらの導電コンタクト13の各々は、信号伝送用又はグランド接続用のいずれかとして、主印刷配線基板(図示省略)上に形成された導電路に対して半田接合により実装された状態で使用される。
【0022】
すなわち、上述したようにして絶縁ハウジング11の内部に装着された各導電コンタクト13の配置位置は、媒体挿入口11aを通して絶縁ハウジング11の内部側に挿入される信号伝送媒体(FPC又はFFC等)Fに設けられた配線パターンに対応した設定になされている。その信号伝送媒体Fに設けられた配線パターンは、信号伝送用導電路(信号線パッド)又はシールド用導電路(シールド線パッド)を適宜のピッチ間隔で配置したものである。
【0023】
各導電コンタクト13の構成を具体的に説明すると、当該導電コンタクト13は、信号伝送媒体Fの挿脱方向(
図4の左右方向)であるコネクタ前後方向に沿って延在するように形成されており、絶縁ハウジング11のコネクタ後端部から後方側に突出する部分が、主印刷配線基板(図示省略)上に形成された信号伝送用導電路(信号線パッド)に半田接続される基板接続部13aとして形成されている。その基板接続部13aは、当該基板接続部13aから上方段部を介して前方側に延出する細長状のビーム部材からなる可撓性アーム部13bに連接されている。
【0024】
すなわち、その可撓性アーム部13bは、上述した基板接続部13aとの連接部分において略直角に立ち上がるように折り曲げ形成されているとともに、その立ち上り端において前方側に向かって更に略直角に折り曲げられており、絶縁ハウジング11における図示上方側の天井板の内壁面に沿って片持ち状をなすように延出している。このようにして導電コンタクト13に設けられた可撓性アーム部13bは、基板接続部13aとの連接部分又はその近傍を中心として、
図4の紙面内において上下の方向に揺動する構成になされている。
【0025】
そして、当該可撓性アーム部13bにおける前端側の延出部分(
図4の左端側部分)には、信号伝送媒体(FPC又はFFC等)Fに形成された信号伝送用導電路又はシールド用導電路(配線パターン)のいずれかに対応して端子接触凸部13cが図示下向きの突形状をなすように設けられている。すなわち、この導電コンタクト13に設けられた端子接触凸部13cは、上述したように信号伝送媒体Fが絶縁ハウジング11の内部に挿入されて来た際に、当該信号伝送媒体Fに設けられた配線パターン上に乗り上げる配置関係になされており、その信号伝送媒体Fが所定の最終位置まで挿入されたときに、可撓性アーム部13bの弾性力によって圧接されて電気的に接続された状態に維持されるようになっている。
【0026】
[ワンアクションオートロック機構について]
本実施形態にかかる電気コネクタ10は、前述したようにワンアクションオートロック機構を備えたものであるが、その前提として信号伝送媒体(FPC又はFFC等)Fの端末部分には、特に
図1に示されているように、幅方向両側の端縁部分に、切り欠き状の凹部からなる係合位置決め部Fa,Faが形成されている。そして、この信号伝送媒体Fに設けられた係合位置決め部Fa,Faに対応して電気コネクタ10側には一対のロック部材12,12が設けられており、それらロック部材12,12の係止作用(ロック作用)によって信号伝送媒体Fの挿入状態が保持される構成になされている。
【0027】
[ロック部材について]
上述したように両ロック部材12,12は、絶縁ハウジング11のコネクタ長手方向における両端部分に配置されており、電気コネクタ10の内部に信号伝送媒体(FPC又はFFC等)Fが差し込まれた際に、各ロック部材12の一部、より具体的には後述する係止ロック部12aが信号伝送媒体Fの表面上に乗り上げ、それによってロック部材12が下方に弾性変位した状態となり、さらにロック部材12の一部をなす係止ロック部12aが、信号伝送媒体Fの係合位置決め部Faの内部に向かって押し上げられることによって係合状態(ロック状態)になされる。
【0028】
このときの各ロック部材12は、特に
図5及び
図6に示されているような薄板金属部材の一体折曲げ構造体から構成されており、主配線基板(図示省略)上に載置される平板状の基底板12bを有しているとともに、その基底板12bに対して、主配線基板に半田接合される基板接続部12cと、信号伝送媒体Fを保持する係止ロック部12aと、係止ロック部12aの係合状態を解除するロック解除操作部12eとが一体的に設けられている。このようなロック部材12を構成する薄板金属部材の端縁部には、2体の係止片12d、12dが適宜の位置においてロック部材12からコネクタ前方方向へ突設されており、それらの係止片12d,12dが、絶縁ハウジング11に圧入されることによって、ロック部材12の固定が行われるようになっている。また、基底板12bの端縁部からコネクタ長手方向のコネクタ内方側に向かって、固定片12fが段差をなすように突設されており、当該固定片12fが絶縁ハウジング11に差し込まれることによって、ロック部材12の上下方向の位置決めが行われるようになっている。
【0029】
上述した基板接続部12cは、各ロック部材12毎に2体ずつ設けられており、そのうちの一体の基板接続部12cは、コネクタ長手方向の両端部から外方に向かって突出するように設けられている。また、他の基板接続部12cは、コネクタ後端部から後方に向かって突出するように設けられている。そして、それらの基板接続部12cが、主配線基板(図示省略)に形成された導体部分に半田接合されることによって電気コネクタ10の実装が行われる。
【0030】
また、上述した基底板12bの前端縁部、すなわち後端側に設けられた基板接続部12cと反対側の端縁部からは、ロックアーム部材12gが片持ち状をなすように一体的に延出している。このロックアーム部材12gは、後端側の基板接続部12cから基底板12bを介して連続するように形成されており、基底板12bとの連結部分には、側面略U字状をなす2体の折曲げ部12g1,12g1が介在されている。それらの各折曲げ部12g1は、上述した基底板12bの前端縁から一旦前方に突出した後に、当該基底板12bの上方側に向かって反転するように湾曲しており、当該折曲げ部12g1から連続するロックアーム部材12gの本体部分が、コネクタ後方側に向かって斜め上方に延出するように配置されている。このような片持ち構造をなすロックアーム部材12gは、上述した折曲げ部12g1及びその近傍を中心として弾性変位可能になされており、
図7の紙面内において上下の方向に揺動される構成になされている。
【0031】
また、上述した片持ち状のロックアーム部材12gの延出方向における途中位置及び自由端位置には、係止ロック部12a及びロック解除操作部12eが一体的に設けられている。そのうちの係止ロック部12aは、ロックアーム部材12gの端縁部から突出するフック状部材からなり、ロックアーム部材12gが有するコネクタ内方側の端縁部分を上方に向かって略三角形状に突出するように折曲げ形成した板状部材からなるものである。すなわち、この係止ロック部12aには、上端側の頂点部から前方側に向かって斜め下方に延在する傾斜案内辺が設けられている。
【0032】
このような構成を有する係止ロック部12aは、上述した信号伝送媒体Fに設けられた係合位置決め部Faが直上位置に配置されたときに、ロックアーム部材12gの弾性力により係合位置決め部Faの内部に向かって押し上げられて係合状態になされるように構成されており、嵌合状態となった際の係止ロック部12aの係合力によって、信号伝送媒体Fの挿入状態が保持される構成になされている。
【0033】
一方、ロック解除操作部12eは、ロックアーム部材12gの自由端部分を折曲げ形成した平面略矩形状の板状部材からなり、上述した係止ロック部12aの後方側に形成された突段部を介して上方側に突出するように連設されている。そして、そのロック解除操作部12eの平面部分に作業者の指先が載せられて下方に押圧されることによって、上述したロックアーム部材12gとともに係止ロック部12aが下方側に弾性的に変位される構成になされている。
【0034】
このとき、絶縁ハウジング11におけるコネクタ長手方向の両端部分には、当該絶縁ハウジング11の上面部分を後端側から略矩形状に切欠くように形成された切欠き部11cが設けられていて、押し下げられていない初期状態にあるロック解除操作部12eが、絶縁ハウジング11の上面部分から切欠き部11cを通して上方に突出して目視される構成になされている。
【0035】
ここで、信号伝送媒体(FPC又はFFC等)Fの挿入から係合までの状態を具体的に説明しておく。まず、
図7及び
図8に示されているように、絶縁ハウジング11の媒体挿入口11aを通して信号伝送媒体Fが絶縁ハウジング11の内部に挿入されてくると、その信号伝送媒体Fの挿入側の先端縁部が、ロック部材12に設けられた係止ロック部12aの傾斜案内辺に当接し、当該係止ロック部12aが信号伝送媒体Fの表面上に乗り上げる。これにより、ロック部材12のロックアーム部材12gが、折曲げ部12g1及びその近傍の揺動支点を中心として下方側に押し下げられるように弾性変位し、その状態から信号伝送媒体Fの端末部分が後方側に向かって更に押し込まれると、当該信号伝送媒体Fの係合位置決め部Faが係止ロック部12aの直上位置まで移動した際に、
図9に示されているように、ロックアーム部材12gの弾性復元力によって係止ロック部12aが信号伝送媒体Fの係合位置決め部Faの内部に押し上げられるように移動される。その結果、信号伝送媒体Fの係合位置決め部Faに対して係止ロック部12aが係合状態となり、信号伝送媒体Fが抜け出すことのないように保持される。
【0036】
このように信号伝送媒体(FPC又はFFC等)Fが、ロック部材12によって係合状態(ロック状態)になされる前の途中状態においては、上述した係止ロック部12aを含むロックアーム部材12gが下方に押し下げられるように弾性変位されることとなるが、その際、ロック解除操作部12eが絶縁ハウジング11の上面部分から切欠き部11cを通してコネクタ内部に格納され、それによってロックアーム部材12gの下方側への弾性変位が確認されるようになっている。その後、信号伝送媒体Fがロック部材12により係合状態(ロック状態)になされた状態となると、それまで絶縁ハウジング11の内部に沈み込んでいたロック解除操作部12eが、再び切欠き部11cを通して絶縁ハウジング11の上表面から上方側に突出して目視される構成になされている。
【0037】
一方、前述したように係止ロック部12aが、信号伝送媒体Fの係合位置決め部Faに係合されて信号伝送媒体Fが保持された状態から、
図10に示されているようにロック解除操作部12eが押し下げられることによりロック解除操作が行われると、ロックアーム部材12gの弾性力に抗して係止ロック部12aが下方に移動し、当該係止ロック部12aが信号伝送媒体Fの係合位置決め部Faから離脱され、ロック部材12による係合状態(ロック状態)が解除される。
【0038】
このような構成を有する本実施形態にかかるロック部材12によれば、基板接続部12c、係止ロック部12a及びロック解除操作部12eが、ロックアーム部材12gに一体に設けられているため、挿入された信号伝送媒体(FPC又はFFC等)Fの保持作用及び解除作用が同一部材の動作によって行われることとなる。従って、ロック解除操作部12eを含むロック部材12の構造及び操作が容易化されるとともに、使用の耐久性も向上される。
【0039】
特に、本実施形態におけるロックアーム部材12gは、基板接続部12cと係止ロック部12aとの間において折り返すように折曲形成された折曲げ部12g1を有していることから、電気コネクタ10の全体を小型化した場合であっても、小さいスペース内でロックアーム部材12gの長さを十分確保することが可能となり、その分、自由端位置に設けられたロック解除操作部12eの操作力が小さく抑えられる一方、係止ロック部12aを折曲げ部12g1寄りに配置することによって、当該係止ロック部12aにより大きな保持力が確保される。
【0040】
また、信号伝送媒体(FPC又はFFC等)Fが挿入されてから保持状態になされるまでに係止ロック部12aとともにロック解除操作部12eが、絶縁ハウジング11の切欠き部11cから外方に露出した状態と内方に埋没した状態との間で移動されることとなるが、絶縁ハウジング11にロック解除操作部12eを外方に露出させる切欠き部11cが設けられていることから、信号伝送媒体Fの挿入が不十分な場合には、ロック解除操作部12eが絶縁ハウジング11の切欠き部11cから内方に埋没したままの状態に維持されることなり、信号伝送媒体Fの挿入動作の良否が容易に判定される。
【0041】
[第2の実施形態にかかる電気コネクタについて]
一方、上述した第1の実施形態と同一の構成部材に対して同一の符号を付した
図11〜
図16に表された本発明の第2の実施形態にかかる電気コネクタ20では、ロック部材22が、直線状に延在する帯板状部材を適宜に折曲げ形成した構造を有しており、前端部分に配置された基板接続部22cから後方側に延出するロックアーム部材22gが、後端側の自由端縁部分に配置されたロック解除操作部22eまで略一定幅の帯状をなすように延在している。
【0042】
また、このようなロックアーム部材22gにおける延在方向の途中位置には、信号伝送媒体(FPC又はFFC等)Fの係合位置決め部Faに対応する係止ロック部22aが設けられている。本実施形態における係止ロック部22aは、上述した基板接続部22cの後方側に上方段部を介して斜め上方に延出するように配置されており、側面略三角形状をなすように折曲げ成形された構成になされている。
【0043】
上述したように本実施形態において、ロックアーム部材22gの前端部分に設けられた基板接続部22cは、コネクタ前端縁部分に配置されていて、導電コンタクト13の基板接続部13aと反対側に配置されている。すなわち、このような配置関係によって、導電コンタクト13に設けられた基板接続部13cと、ロックアーム部材22gに設けられた基板接続部22cとが、絶縁ハウジング11の相対向する両縁部に配置されることとなり、絶縁ハウジング11の相対向する両縁部に両基板接続部13a,22cが配置されていることによって、電気コネクタ10の全体が、両側からバランスされた状態で固定され、信号伝送媒体の挿入等による外力に対して強固な保持性が得られる。
【0044】
さらに、本実施形態におけるロック解除操作部22eは、ロックアーム部材22gの自由端側に配置された上方側突段部を介して連設された板状部材から形成されているが、そのようなロック解除操作部22eに対応して、絶縁ハウジング11の後端部分におけるコネクタ長手方向の両端部分には、一対のロック操作カバー部11d,11dが設けられている。それらの各ロック操作カバー部11dは、ロック部材22に設けられたロック解除操作部22eの直上位置において絶縁ハウジング11の後端部から後方に向かって延出しており、ロック解除操作部22eに重合する配置関係になされている。それらの各ロック操作カバー部11dは、比較的幅広をなす板状部材から形成されており、その比較的幅広になされたロック操作カバー部11dが、幅狭な板厚を有するロック解除操作部22eの上面を上方側から覆うような配置関係になされている。
【0045】
このようなロック操作カバー部11dの上表面には、凹凸状の滑り止め部が形成されており、当該ロック操作カバー部11dが作業者の指先等により下方に押し下げられることで、上述したロック部材22のロック解除操作部22eも同様に下方に押し下げられ、それによって当該ロック解除操作部22eに連設されたロックアーム部材22gおよび係止ロック部22aが下方に押し下げられる。その結果、それまで信号伝送媒体(FPC又はFFC等)Fの係合位置決め部Faに係合されていた係止ロック部22aが係合位置決め部Faから下方に離脱し、信号伝送媒体Fが自由状態となって前方側へ向かって抜去可能な状態になされる。
【0046】
以上、本発明者によってなされた発明を実施形態に基づき具体的に説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変形可能であるというのはいうまでもない。
【0047】
例えば、上述した各実施形態では、電気コネクタに固定される信号伝送媒体として、フレキシブル・プリンテッド・サーキット(FPC)、及びフレキシブル・フラット・ケーブル(FFC)を採用しているが、その他の信号伝送用媒体等を用いた場合に対しても本発明は同様に適用することができる。
【0048】
さらに、上述した実施形態にかかる電気コネクタには、同一形状の導電コンタクトが用いられているが、異なる形状の導電コンタクトを交互に配置した構造であっても本発明は同様に適用することが可能である。