特許第5772271号(P5772271)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5772271
(24)【登録日】2015年7月10日
(45)【発行日】2015年9月2日
(54)【発明の名称】ズームレンズ装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 7/02 20060101AFI20150813BHJP
   G02B 7/08 20060101ALI20150813BHJP
【FI】
   G02B7/02 F
   G02B7/08 C
【請求項の数】5
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2011-134098(P2011-134098)
(22)【出願日】2011年6月16日
(65)【公開番号】特開2013-3336(P2013-3336A)
(43)【公開日】2013年1月7日
【審査請求日】2014年5月21日
(31)【優先権主張番号】13/157,649
(32)【優先日】2011年6月10日
(33)【優先権主張国】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】591076235
【氏名又は名称】株式会社山野光学
(74)【代理人】
【識別番号】110000224
【氏名又は名称】特許業務法人田治米国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山野 司朗
【審査官】 荒井 良子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−039352(JP,A)
【文献】 特開平11−223757(JP,A)
【文献】 特開2002−006194(JP,A)
【文献】 特開平06−160695(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2002/0118966(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 7/02
G02B 7/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被写体側からフォーカス系レンズバリエータ系レンズ、補正系レンズ及びマスター系レンズを有し、温度センサを備えたズームレンズ装置であって、
フォーカス系レンズが、合焦用レンズと、該フォーカス系レンズの温度による焦点位置の変化を補正するための温度補正用レンズを備え、
温度補正用レンズが、温度補正用レンズ駆動機構により、合焦用レンズの位置及びバリエータ系レンズの位置と独立的に、温度センサで検出された温度に応じた光軸上の位置に移動し、
マスター系レンズの一部が、マスター系レンズ温度補正用駆動機構により、温度センサで検出された温度に応じた光軸上の位置に移動するズームレンズ装置。
【請求項2】
所定の撮像箇所に所定の倍率で合焦させるプリセット機構を備え、
温度補正用レンズ駆動機構が、プリセット機構で定まる合焦用レンズの位置及びバリエータ系レンズの位置と独立的に、温度センサで検出された温度に応じて温度補正用レンズの光軸上の位置を移動させる請求項1記載のズームレンズ装置。
【請求項3】
フォーカス系レンズの環境温度による焦点位置の変化を補正するための温度補正用レンズの位置と、温度センサで検出された環境温度との予め取得された対応関係に基づき、温度補正用レンズ駆動機構が、ズームレンズ装置の使用時に、その使用時の環境温度に対応する位置に温度補正用レンズを動かす請求項1記載のズームレンズ装置。
【請求項4】
前記温度補正用レンズの位置と環境温度との関係に基づいて定まる、ズームレンズ装置使用時の温度補正用レンズの位置が、フォーカス系レンズのハウジング内の所定の位置を基準に定められる請求項3記載のズームレンズ装置。
【請求項5】
温度補正用レンズが、フォーカス系レンズにおいて最も被写体側にある請求項1記載のズームレンズ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、環境温度に起因する焦点ずれを簡便に補正することのできるズームレンズ装置に関し、特に、プリセット機構を備えたズームレンズ装置であっても、環境温度に起因する焦点ずれを簡便に補正するズームレンズ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、監視用ビデオカメラに用いるズームレンズ装置のレンズ系は、フォーカス系レンズとバリエータ系レンズを有し(特許文献1、特許文献2)、実使用上は、被写体側からフォーカス系レンズ、バリエータ系レンズ、補正系レンズ、マスター系レンズの4群構成のものが広く使用されている。これらのレンズ系には、夜間の監視用照明に近赤外光が使用されることから、可視光と近赤外光の収差を抑制するために蛍石レンズやEDレンズが使用されている。
【0003】
また、監視用ビデオカメラに用いるズームレンズ装置には、予め、所定の撮像箇所を所定の倍率で撮像するためのフォーカス系レンズの位置とバリエータ系レンズの位置を設定し、その撮像箇所を実際に撮像するときに、フォーカス系レンズとバリエータ系レンズを予め設定した位置に合わせるプリセット機構を備えたものがある。このようなプリセット機構を備えたズームレンズ装置において、環境温度の変化による焦点ずれの発生を防止する手法としては、ズームレンズ装置に温度センサを設け、プリセットの設定時の温度と現時点の温度に基づいて、フォーカス系レンズとバリエータ系レンズの位置をそれぞれ補正することが提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11-205655号公報
【特許文献2】特開平11-64713号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のズームレンズ装置における環境温度の変化に対する補正機構では、環境温度に応じてフォーカスレンズの光軸上の位置とズームレンズの光軸上の位置のそれぞれについて補正量を求め、プリセット機構で設定したフォーカスレンズの位置とズームレンズの位置を変化させなくてはならず、補正機構が複雑となる。
【0006】
これに対し、本発明は、単純な補正機構で環境温度の変化によるレンズ系の焦点ずれを良好に補正するズームレンズ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、高倍率ズームレンズ装置における環境温度変化による焦点ずれに関し、次の点を見出した。
(i)焦点位置の長い高倍率のズームレンズ装置では、長焦点側において、フォーカス系レンズの環境温度による形状変化が、ズームレンズ装置全体の合焦に大きく影響を与え、特にズームレンズ装置が4群構成の場合、フォーカス系レンズの形状変化がズームレンズ装置全体の合焦に大きく影響し、マスター系レンズやバリエータ系レンズ
や補正系レンズの形状変化の影響は少ないこと、
(ii)一方、短焦点側では、フォーカス系レンズの形状変化がズームレンズ装置全体の合焦へ与える影響は少ないこと、
(iii)監視用高倍率ズームレンズ装置では、一般に遠距離を監視する目的で長焦点側で使用されるから、環境温度変化による焦点ずれは、長焦点側で補正できることが有効となること、
(iv)長焦点側で環境温度変化による焦点ずれを補正する場合、(i)により、フォーカス系レンズの補正をすることが重要となるところ、その場合の補正手法としては、フォーカス系レンズの一部を温度補正用レンズとし、温度補正用レンズをフォーカス系レンズ内の他のレンズに対して別個に駆動できるようにするのが有効であること、
(v)実際に、(iv)の温度補正用レンズを用いて、フォーカス系レンズの環境温度変化による焦点ずれを補正すると、プリセット機構で予め設定したフォーカス系レンズの位置は、実際の撮像時の環境温度の如何にかかわらず、補正なしでそのまま使用しても実使用上支障がないこと、
を見出した。
【0008】
そこで、本発明は、被写体側からフォーカス系レンズとバリエータ系レンズを有し、温度センサを備えたズームレンズ装置であって、
フォーカス系レンズが、合焦用レンズと、該フォーカス系レンズの温度による焦点位置の変化を補正するための温度補正用レンズを備え、
温度補正用レンズが、温度補正用レンズ駆動機構により、合焦用レンズの位置及びバリエータ系レンズの位置と独立的に、温度センサで検出された温度に応じた光軸上の位置に移動するズームレンズ装置を提供する。
【0009】
特に、上述のズームレンズ装置であって、所定の撮像箇所に所定の倍率で合焦させるプリセット機構を備え、温度補正用レンズ駆動機構が、プリセット機構で定まる合焦用レンズの位置及びバリエータ系レンズの位置と独立的に、温度センサで検出された温度に応じて温度補正用レンズの光軸上の位置を移動させる態様を提供する。
【0010】
また、被写体側からフォーカス系レンズ、バリエータ系レンズ、補正系レンズ及びマスター系レンズを有し、マスター系レンズの一部が、マスター系レンズ温度補正用駆動機構により、温度センサで検出された温度に応じた光軸上の位置に移動する態様を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明のズームレンズ装置によれば、被写体側にあるフォーカス系レンズの一部を温度補正用レンズとし、この温度補正用レンズを動かすことによって、フォーカス系レンズの環境温度による焦点ずれを補正する。監視用ビデオカメラ等で使用される高倍率ズームレンズ装置の長焦点側での環境温度による合焦位置のずれは、殆ど被写体側のフォーカス系レンズの合焦位置のずれによるものであるため、フォーカス系レンズの温度補正を行うことにより、長焦点側では、他のレンズ系の温度補正をすることなく、合焦位置のずれを実質的に解消することができる。
【0012】
したがって、本発明のズームレンズ装置によれば、被写体側のフォーカス系レンズの一部を温度に応じて動かすだけという簡便な構成で、高倍率ズームレンズ装置の環境温度による長焦点側での焦点ずれを実使用上解消することができる。
【0013】
特に、ズームレンズ装置がプリセット機構を備えたものである場合には、プリセット値として設定された各レンズ系の位置を、環境温度の如何に関わらず使用することができる。したがって、プリセット機構に温度補正機構を組み込むことが不要となる。
【0014】
また、ズームレンズ装置のレンズ構成を、被写体側からフォーカス系レンズ、バリエータ系レンズ、補正系レンズ及びマスター系レンズを備える4群構成とする場合に、マスター系レンズの一部を温度センサで検出された温度に応じて動かすと、環境温度による短焦点側での焦点ずれも実用上解消することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】実施例のズームレンズ装置を備えたカメラの概略断面図である。
図2】ズーム動作時における各レンズの動作の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しつつ本発明を詳細に説明する。なお、各図中、同一符号は同一又は同等の構成要素を表している。
【0017】
図1は、本発明の一実施例のズームレンズ装置1のブロック図である。この実施例のズームレンズ装置1は、高いズーム倍率で遠方を監視する監視用カメラなどの用途に好適なズームレンズ装置である。
【0018】
ズームレンズ装置1は4群のレンズ構成となっており、より具体的には、被写体側から順次、合焦を行うフォーカス系レンズ2、変倍機能を担うバリエータ系レンズ3、バリエータ系レンズ3の移動に伴う焦点移動を補正する補正系レンズ4、及び虚像を実像にするマスター系レンズ5を備え、補正系レンズ4とマスター系レンズ5との間には絞り(図示せず)を備えている。なお、これらフォーカス系レンズ2、バリエータ系レンズ3、補正系レンズ4及びマスター系レンズ5は、それぞれ組み合わせレンズで構成されている。
【0019】
これらのレンズのうち、フォーカス系レンズ2には、色収差を抑えるために、特殊低分散ガラスで形成されたEDレンズ又は蛍石レンズが使用されている。そのため、フォーカス系レンズ2は他のレンズ3、4、5に比べると熱膨張率が高いことにより環境温度によって形状が変化しやすく、それにより焦点位置が変化しやすい。
【0020】
フォーカス系レンズ2を支持するハウジングには、フォーカス系レンズ2の環境温度を検出するために温度センサ10が設けられている。
【0021】
本発明においては、フォーカス系レンズ2が、該フォーカス系レンズ2の温度による焦点位置の変化を補正するための温度補正用レンズ2Aと、専ら合焦機能を担う合焦用レンズ2Bからなり、温度補正用レンズ2Aが、合焦用レンズ2Bや、フォーカス系レンズ2以外のレンズ(即ち、バリエータ系レンズ3、補正系レンズ4、マスター系レンズ5)と独立的に、温度補正用レンズ駆動機構11によって光軸L0上を移動可能であることが特徴的である。
【0022】
温度補正用レンズ駆動機構11は、位置制御用センサ、ステッピングモータ等を有し、温度補正用コントローラ20に接続されている。温度補正用コントローラ20には、フォーカス系レンズ2の環境温度による焦点位置の変化を補正するための温度補正用レンズ2Aの光軸L0上の位置と、温度センサ10で検出された温度との対応関係が予め調べられ、記憶されている。この温度補正用コントローラ20は、ズームレンズ装置1の使用時に、上述の対応関係に従い、温度センサ10で検出された温度に対応する光軸L0上の位置に、温度補正用レンズ2Aが移動するように温度補正用レンズ駆動機構11を制御する。
【0023】
ここで、温度補正用レンズ2Aの光軸L0上の位置は、合焦用レンズ2Bに対する相対的な位置ではなく、フォーカス系レンズ2における絶対的な位置として調べられ、温度補正用コントローラ20に記憶される。例えば、フォーカス系レンズ2が或る温度で所定の焦点位置をもつ場合に、任意の温度でフォーカス系レンズ2がその焦点位置を維持するように、温度補正用レンズ2Aの位置が、フォーカス系レンズ2のハウジング内の所定の位置を基準に調べられ、温度補正用コントローラ20に記憶される。一方、そのフォーカス系レンズ2が他のレンズと共にズームレンズ装置1のハウジングに取り付けられ、ズームレンズ装置として使用される時には、図2に示すように、合焦用レンズ2Bは合焦のために光軸L0上を移動し、バリエータ系レンズ3及び補正系レンズ4は、所定のズーム倍率に応じて長焦点(TELE)側から短焦点(WIDE)側までの間の位置をとるが、温度補正用レンズ2Aは、これら合焦用レンズ2B、バリエータ系レンズ3及び補正系レンズ4の位置にかかわらず、フォーカス系レンズ2のハウジングを基準に、温度との関係で定まる光軸L0上の位置に移動する。
【0024】
本発明のズームレンズ装置において、合焦用レンズ2B、バリエータ系レンズ3、補正系レンズ4、マスター系レンズ5は、公知の4群構成のズームレンズと同様に構成することができるが、本実施例のズームレンズ装置1では、マスター系レンズ5が、上述のフォーカス系レンズ2の温度補正用レンズ2Aと同様に、温度補正用レンズ5Aとそれ以外のレンズ5Bとからなり、温度補正用レンズ5Aが他のレンズ5Bに対して独立的に移動することができる。
【0025】
マスター系レンズ5の温度補正用レンズ5Aの駆動機構12も位置制御用センサ、ステッピングモータ等を備え、温度補正用コントローラ20に接続している。温度補正用コントローラ20には、上述のフォーカス系レンズ2の温度補正用レンズ2Aの場合と同様に、マスター系レンズ5の環境温度による焦点位置の変化を補正するための温度補正用レンズ5Aの光軸L0上の位置と、温度センサ10で検出された温度との対応関係が予め調べられて登録されている。温度補正用コントローラ20は、この対応関係に基づき、温度センサ10で検出された温度で定まる光軸L0上の位置に温度補正用レンズ5Aが移動するように、駆動機構12を制御する。
【0026】
環境温度の変化による短焦点側での焦点位置のずれには、マスター系レンズ5の焦点位置のずれが大きく影響するため、マスター系レンズ5の一部を、マスター系レンズ5の温度補正用レンズ5Aとして、温度センサ10で検出された温度に応じて動かすことにより、短焦点側での環境温度による焦点位置のずれを実質上解消することができる。本発明においてこのようなマスター系レンズ5の温度補正機構は、ズームレンズ装置1の用途等に応じて必要に応じて設けられる。
【0027】
一方、本実施例のズームレンズ装置1において、合焦用レンズ2B、バリエータ系レンズ3、補正系レンズ4には、プリセット機構を備えた駆動機構が取り付けられている。より具体的には、これらのレンズは、カム溝が加工された円筒状の部材に取り付けられ、光軸L0上を移動できるように構成されている。この場合、バリエータ系レンズ3と補正系レンズ4は、機械的に連動しており、図2に示すように長焦点側(TELE)ないし短焦点側(WIDE)の配置をとる。
【0028】
また、合焦用レンズ2Bには位置制御用センサとステッピングモータを備えた合焦用レンズ駆動機構13が取り付けられ、バリエータ系レンズ3と補正系レンズ4にも位置制御用センサとステッピングモータを備えたズーム用駆動機構14が取り付けられ、これらの駆動機構13、14がプリセットを制御するプリセット用コントローラ21に接続される。
【0029】
プリセット用コントローラ21では、プリセット値の設定が行われる。即ち、所定の撮像箇所を所定の撮像倍率で撮像するために必要とされる各レンズの光軸L0上の位置が予め調べられ、プリセット用コントローラ21に記憶される。また、プリセット用コントローラ21には、ズームレンズ装置1の水平方向(パン)や垂直方向(チルト)を制御するパン・チルト駆動機構も接続され、所定の方向にある撮像箇所を撮像するために必要とされる、パン・チルト角度がプリセット用コントローラ21に記憶される。
【0030】
そして、プリセットした所定の撮像箇所を実際に撮像する時には、プリセット用コントローラ21の制御により、ズームレンズ装置1は、プリセットした方向に向けられ、ズームレンズ装置内の合焦用レンズ2B、バリエータ系レンズ3及び補正系レンズ4が、プリセットした位置に移動する。
【0031】
次に、図1のズームレンズ装置1の使用方法を説明する。
【0032】
(ステップ1)
まず、ズームレンズ装置1には、その初期設定として、温度補正用コントローラ20に、フォーカス系レンズ2の温度による焦点位置の変化を補正するために必要な温度補正用レンズ2Aの位置とその環境温度との対応関係が記憶される。また、温度補正用コントローラ20には、マスター系レンズ5の温度による焦点位置の変化を補正するために必要な温度補正用レンズ5Aの位置とその環境温度との対応関係も記憶される。
【0033】
(ステップ2)
ズームレンズ装置1をカメラに取り付け、撮像するときには、上述の温度補正用コントローラ20で制御される温度補正用レンズ駆動機構11を駆動し、温度補正用レンズ2Aの位置と環境温度との対応関係に基づき、温度補正用レンズ2Aの位置を、温度センサ10で検出された当該撮像時の温度に対応する位置に移動させる。同様に、温度補正用コントローラ20でマスター系レンズ5の温度補正用レンズ駆動機構12を駆動し、マスター系レンズ5の温度補正用レンズ5Aの位置を温度センサ10で検出された当該撮影時の温度に対応する位置に移動させる。
【0034】
(ステップ3)
次に、所定の撮像箇所に対してプリセット値を設定するときには、ステップ2のように、フォーカス系レンズの温度補正用レンズ2A及びマスター系レンズ5の温度補正用レンズ5Aの位置がそれぞれ補正される状態にしておく。そして、所定の撮像箇所を所定の倍率で撮像するために必要な、フォーカス系レンズ2(より具体的には合焦用レンズ2B)、バリエータ系レンズ3、補正系レンズ4及びマスター系レンズ5がとるべき位置を調べ、プリセット機能を制御するプリセット用コントローラ21に記憶させる。このようなプリセット値の設定は、複数の撮像箇所に対して行うことができる。
【0035】
(ステップ4)
プリセットした撮像箇所を実際に撮像する場合にも、ステップ2のようにフォーカス系レンズ2の温度補正用レンズ2Aの位置と、マスター系レンズ5の温度補正用レンズ5Aの位置とが補正される状態にしておく。そして、フォーカス系レンズ2、バリエータ系レンズ3、補正系レンズ4、及びマスター系レンズ5の位置を、それぞれプリセットした位置に移動させる。
【0036】
このように、本発明のズームレンズ装置によれば、ズームレンズ装置1で撮像するときに、温度補正用レンズ2Aの移動によりフォーカス系レンズ2の温度による焦点位置のずれが補正される。この補正における温度補正用レンズ2Aの位置は、ステップ1で取得した、補正に必要な温度補正用レンズ2Aの位置とその環境温度との対応関係によって定まり、ズームレンズ装置1を使用しているときの合焦用レンズ2Bやバリエータ系レンズ3等の位置には依存しない。
【0037】
したがって、ズームレンズ装置1の温度変化による焦点ずれを簡便な機構で補正することができる。また、プリセット値の設定時の環境温度と、実際に撮像するときの環境温度に差異があっても、実際の撮像時には、プリセットした位置にフォーカス系レンズ2(より具体的には合焦用レンズ2B)やバリエータ系レンズ3等を合わせればよく、環境温度に応じてプリセット値を設定しなおすなどの煩雑な作業が不要となる。
【0038】
なお、以上のように温度補正用レンズ2Aを用いる補正は、高倍率のズームレンズ装置1が長焦点側にあるとき、具体的には、20倍以上、好ましくは34倍以上の高倍率であるときに、特に有効であり、短焦点側では、マスター系レンズ5の温度補正用レンズ5Aを用いることが有効である。ただし、ズームレンズ装置が監視用カメラ等に搭載される場合、一般に高倍率の長焦点側で多用されるので、マスター系レンズ5の温度補正用レンズ5Aは必要に応じて設ければ良い。また、マスター系レンズ5の温度補正方法としては、上述のように、マスター系レンズ5の一部を温度補正用レンズ5Aとして使用することに限られず、マスター系レンズ5を全体として位置補正してもよい。この場合の補正は、環境温度による焦点ずれを低減又は解消することのできるマスター系レンズ5の位置と、その環境温度との対応関係を予め取得しておくことにより行う。
【0039】
本発明において、ズームレンズ装置1は、上述した例に限らず、種々の態様をとることができる。例えば、温度補正用レンズ2Aは、フォーカス系レンズ2を構成するレンズのうち被写体側のレンズとすることが好ましいが、バリエータ系レンズ3側のレンズとしてもよい。
【0040】
また、バリエータ系レンズ3と補正系レンズ4の駆動機構を別個に設け、バリエータ系レンズ3と補正系レンズ4の位置を独立的に調整可能としてもよい。
さらに、ズームレンズ装置1は、4群以外のレンズ構成であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明のズームレンズ装置1は、監視用ビデオカメラ、家庭用ビデオカメラなど種々の用途のカメラに搭載することができる。そして、プリセット機構が多用され、高倍率のズーム機能が必要とされ、昼夜だけでなく夜間も撮影するためにレンズ系に蛍石レンズやEDレンズが使用されている監視用カメラにおいて、特に有用である。
【符号の説明】
【0042】
1 ズームレンズ装置
2 フォーカス系レンズ
2A 温度補正用レンズ
2B 合焦用レンズ
3 バリエータ系レンズ
4 補正系レンズ
5 マスター系レンズ
5A マスター系レンズの温度補正用レンズ
5B マスター系レンズの温度補正用レンズ以外のレンズ
10 温度センサ
11 温度補正用レンズ駆動機構
12 マスター系レンズの温度補正用レンズ駆動機構
13 合焦用レンズ駆動機構
14 ズーム用駆動機構
20 温度補正用コントローラ
21 プリセット用コントローラ
L0 光軸
図1
図2