(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
トランスの1次巻線に接続されたスイッチング素子を有し、前記トランスの1次側に電圧が入力された場合に制御回路が前記スイッチング素子をオン/オフ制御することにより前記トランスの2次巻線に誘起される電圧を整流平滑して負荷に出力するスイッチング電源装置であって、
前記制御回路に電力を供給するコンデンサと、
前記制御回路を起動させる場合及び前記スイッチング素子がオフの場合に、前記コンデンサに電流を供給する起動回路と、
前記スイッチング素子の主電極電圧がボトムになったことを検出するボトム検出回路とを備え、
前記起動回路は、前記ボトム検出回路がボトムを検出したとき、前記ボトム検出回路からの信号に応じてワンショットパルス信号を出力するワンショットパルス回路を備え、
前記ワンショットパルス回路は、前記コンデンサの充電電圧に反比例した時間のパルス信号を出力して、前記パルス信号の時間幅に応じて、前記起動回路から前記コンデンサに電流を供給することを特徴とするスイッチング電源装置。
【背景技術】
【0002】
図6は、従来のフライバック型のスイッチング電源装置の構成を示す回路図である。
図7は、制御部50a内部の構成を示す回路図である。
図8は、起動回路57内部の構成を示す回路図である。
図6〜
図8を参照してスイツチング電源装置の動作を説明する。
【0003】
まず、交流電源1により出力された正弦波電圧は、ブリッジ整流器2で整流され、コンデンサ3を通して、トランス4の1次巻線Pを介してスイッチング素子5のDrain端子に出力される。一方、制御部50a内の起動回路57は、スイッチ81がオンであるため、Vcc端子の電圧が16.5Vを超えるまで定電流源80により電流を補助電源回路のバックアップコンデンサ12に供給して充電する。Vcc端子の電圧が16.5Vを超え、内部電源51が動作を開始して制御部50aに電力の供給を開始すると、起動回路57は、スイッチ81をオフして起動電流の供給を停止する。
【0004】
Vcc端子の電圧が16.5Vを超えて制御部50aの動作が開始すると、スイッチング素子5は、スイッチング動作を開始する。このため、トランス4の各巻線にエネルギが供給されるようになり、2次巻線S及び補助巻線Dに電流が流れる。
【0005】
2次巻線Sに流れる電流は、整流用のダイオード6と出力コンデンサ7とにより整流平滑され直流電力となり、Voutから外部の負荷に対して出力される。
【0006】
スイッチング素子5のスイッチング動作が繰り返されることで、Voutの出力電圧が徐々に上昇し、エラーアンプ8で設定された基準電圧に達すると、フォトカプラ9aのフォトダイオードに流れる電流が増加する。すると、フォトカプラ9bのフォトトランジスタに流れる電流が増加するため、抵抗60aの電圧降下により、FB端子の電圧が低下する。これにより制御部50aは、スイッチング素子5を制御してVoutの出力電圧を安定化させる。スイッチング素子5のスイッチング動作を停止している期間において、FB端子の電圧VFBは、抵抗60aからの電流がコンデンサ10を充電することにより増加する。
【0007】
補助巻線Dに流れる電流は、ダイオード11とバックアップコンデンサ12とにより整流平滑されて、制御部50aの補助電源として活用され、Vcc端子に電力を供給する。上述したように、Vcc端子が一度起動電圧(16.5V)に達すると、起動回路57内のスイッチ81はオフとなるため、起動後のVcc端子に対する電力供給は、この補助電源回路により行われる。補助巻線Dの極性は、2次巻線Sと同一であるため、Vccの電圧はVoutの出力電圧に比例する。
【0008】
Voutに接続された負荷が軽負荷になると、エラーアンプ8で設定された基準電圧に対するVout電圧の誤差に応じて、フォトカプラ9aのフォトダイオードに流れる電流が増加する。すると、フォトカプラ9bのフォトトランジスタに流れる電流が増加するため、抵抗60aの電圧降下により、FB端子の電圧は低下する。これにより、制御部50aは、フリップフロップ56がリセットされ、アンド回路65、インバータ67、バッファ68,69、スイッチング素子70,71を介してスイッチング素子5のオン/オフ制御する。さらに軽負荷になると、BSTコンパレータ55によりオア回路64にHレベルを出力してスイッチング素子5のオン/オフ制御を停止あるいはオフデューティ時間を増大させ、即ち間欠制御させる。
【0009】
FB端子の電圧が低下してスイッチング素子5の発振が停止する間は、フォトカプラ9aのフォトダイオードに流れる電流が減少し、それに伴いフォトカプラ9bのフォトトランジスタに流れる電流が減少する。これにより、抵抗60aからコンデンサ10が充電され、FB端子の電圧は上昇する。スイッチング電源装置は、以上の動作を繰り返し、軽負荷時にはスイッチング素子のオフ時間を長くする間欠制御によって電圧を制御する。ここで、トランス4の補助巻線Dは、スイッチング素子5の動作時にバックアップコンデンサ12を充電してVcc電圧を上昇させる。
【0010】
しかしながら、スイッチング素子5の制御停止時には、バックアップコンデンサ12が放電されるため、Vcc電圧は低下する。このため、従来技術では、負荷が軽負荷で且つスイッチング素子5がオフの場合に、BSTコンパレータ55によりHレベルの信号が出力され、Hレベルの信号を出力してスイッチ81をオンさせる。起動回路57からバックアップコンデンサ12に電流を供給して充電し、Vcc端子電圧を上昇させることで、軽負荷時の制御部50aの電源電圧を安定に確保していた。
【0011】
一方、社会的背景として近年のエコ意識の高まりから、リモコン待機時の消費電力削減が急務となっている。
【0012】
なお、特許文献1は、間欠発振時に起動回路を通して制御回路に電流を供給することにより制御回路が動作停止にならないようにしていた。これは、スタンバイ等の軽負荷時には、結合の悪い補助巻線電圧が低下しやすくなり、また、スタンバイ時に間欠発振を行うので、発振が停止している間にVCC巻線電圧が低下してしまうことで、制御回路が動作停止してしまう対策を行うものである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明のスイッチング電源装置の実施の形態を図面を参照しながら詳細に説明する。
【0020】
(実施例1)
図1は、本発明の実施例1に係るスイッチング電源装置の制御回路の構成を示す回路図である。
図1に示す制御回路とダイオード11、巻線Dによる従来の制御回路電源以外の構成は、
図6に示す従来の回路と同一であるので、ここでは、
図1に示す制御回路の構成を説明する。
【0021】
まず、起動回路57は、定電流源回路80とスイッチ81aとから構成される。定電流源回路80は、高圧スイッチ82、抵抗83,85、トランジスタ84、ダイオード86、コンパレータ54とから構成される。
【0022】
制御回路50のVcc端子は、起動回路57とStartUP端子を通してスイッチング素子5のドレイン端子から入力する。
【0023】
制御部50は、従来技術の制御部50aからオア回路53を削除し、コンパレータ20と基準電圧25とコンデンサ26,27とダイオード28とDCバイアス回路29とからなるボトム検出回路、及び、アンド回路21、インバータ22、1ショットトリガ回路23、オア回路24をさらに設けている。
【0024】
ボトム検出回路は、スイッチング素子5のオフ期間に生じるドレイン電圧の自由振動のボトム点を検出するもので、コンパレータ20の非反転入力端子にコンデンサ26,27の一方の端子と、ダイオード28のカソードと、DCバイアス回路29に接続されDCバイアス回路29からの直流電圧が重畳されている。DCバイアス回路29は、直流電源30と、直流電源30の両端に接続された抵抗31と抵抗32との直列回路とで構成される。
【0025】
コンデンサ27の他端とダイオード28のアノードと直流電源30の負極と抵抗32の一端とはグランドGNDに接続されている。
【0026】
コンデンサ26の他端は制御回路50のStartUP端子に接続され、StartUP端子はスイッチング素子5のドレイン端子に接続されている。
【0027】
コンパレータ20の反転入力端子には基準電圧25の正極が接続され、基準電圧25の負極はグランドGNDに接続されている。
【0028】
コンパレータ20の出力端子はオア回路24の一方の入力端子に接続され、オア回路24の他方の入力端子には、アンド回路65の出力端子に接続されている。オア回路24の出力端子は、1ショットトリガ回路23とインバータ22を介してアンド回路21の一方の入力端子に接続されている。アンド回路21の他方の入力端子には、コンパレータ54の出力端子が接続されている。アンド回路21の出力端子は、スイッチ81aのゲート端子に接続され、スイッチ81aのドレイン端子は定電流源回路80のオンオフ制御端子に接続されている。
【0029】
図2は、実施例1に係るスイッチング電源装置の各部の動作波形を示す図である。
図2において、スイッチング素子5のドレイン−ソース間の電圧波形をVds、コンパレータ20の非反転入力端子電圧(コンパレータ入力(+))、コンパレータ55の出力端子電圧(コンパレータ出力)、1ショットトリガ回路23の出力であるボトム信号、及びスイッチング素子5のゲート駆動信号であるドライブ信号を示す。
【0030】
図2において、コンパレータ20のコンパレータ入力(+)は、スイッチング素子5のドレイン−ソース間電圧波形Vdsと相関しかつ電圧波形Vdsに対して位相が進んだ波形になっている。このコンパレータ入力(+)の電圧は、制御部50のStartUP端子を介してスイッチング素子5のドレイン端子に接続されているコンデンサ26を介してコンデンサ26の微分電流を抵抗31と抵抗32に流すことで電圧に変換し、かつ、DCバイアス回路29からの直流電圧バイアスを重畳させることで得られる。なお、コンデンサ27は、ノイズ成分を取り除くフィルターとして接続している。
【0031】
コンパレータ20は、コンパレータ入力(+)の電圧と反転入力端子に接続された基準電圧25(
図2のVref)とを比較する。時刻t1において、スイッチング素子5のドレイン−ソース間の電圧波形Vdsがボトムになると、コンパレータ20の出力からHレベルの信号が出力される。
【0032】
1ショットトリガ回路23は、コンパレータ20の出力信号の立ち上がりエッジのタイミングで、所定のパルス幅の信号、即ち、ボトム信号をインバータ22に出力する。インバータ22は、ボトム信号を反転させてアンド回路21に出力する。
【0033】
ここで、アンド回路21の出力がHレベルであるとき、スイッチ81aをオンさせて定電流源回路80をオフ状態にしている。従って、アンド回路21の出力がLレベルである場合には、スイッチ81aはオフして定電流源回路80がオンし、定電流源回路80、Vcc端子を介してバックアップコンデンサ12へ充電が行われる。
【0034】
このように、実施例1のスイッチング電源装置によれば、制御回路50は、スイッチング素子5がオフし、スイッチング素子5のドレイン電圧のボトム点近傍のみ、一定時間だけ起動回路57のスイッチ81aをオフして、Vcc端子に接続されたバックアップコンデンサ12を充電し、それ以外の時はバックアップコンデンサ12の電圧でVcc電圧を持たせる。
【0035】
これにより、スイッチング素子5がオフしたとき、スイッチング素子5のドレイン電圧が自由振動の低いボトムになった時だけ、Vccラインを充電できるので、補助巻線Dを設けずに従来回路よりも起動回路の損失を大幅に減らすことができる。
【0036】
一方、国内で一般消費者向けに販売されている中大型LCD−TVは、画面OFF待機(リモコン待機)電力時に0.1W以下が一般的である。この限度値には、リモコン待機するためのマイコン電力等が含まれており、これがない場合のスイッチング電源としての無負荷時消費電力はさらに低く0.02W〜0.05W以下に抑える必要がある。なお、この限度値は、エコロジー政策の推進や消費者エコ意識の高まりから、さらに下がることが予想される。
【0037】
これに対して、実施例1の消費電力低減効果は、以下の通りである。例えば、補助巻線Dを設けずに起動回路57から全てのコントローラICを供給する場合には、スイッチング電源用の制御回路50に供給される電圧(VCC)を15V、スイッチング電源用の制御回路50の消費電流が300μA程度とすると、この電流を起動回路57から供給することになる。
図2から、ドレイン−ソース間電圧Vdsは一番高い電圧で約560V、一番低い電圧(ボトム)で100V程度となるので、ボトム電圧を用いることで電圧Vdsを約1/6に低減することができる。
【0038】
従来回路の起動回路の損失は、最悪条件として、(560−15)V×300μA=0.1635Wとなる。実施例1の起動回路の損失は、電圧がドレイン電圧のボトム部分であるので、(100−15)V×300μA=0.0255Wとなる。従って、実施例1のスイッチング電源装置によれば、市場要求のリモコン低待機電力を達成することができる。
【0039】
(実施例2)
図3は、本発明の実施例2に係るスイッチング電源装置の制御回路の主要部の構成を示す回路図である。
図3に示す制御回路は、
図1に示す制御回路50に、さらに、オア回路34、コンパレータ35とを設けたことを特徴とする。コンパレータ35は、非反転入力端子がダイオード86のカソードとコンパレータ54の非反転入力端子とに接続され、反転入力端子が基準電圧36に接続され、出力端子がオア回路34の一方の入力端子に接続される。
【0040】
オア回路34は、コンパレータ35の出力とインバータ22の出力との論理和をアンド回路21に出力する。
【0041】
このような構成の実施例2のスイッチング電源装置によれば、16.5V/10Vのコンパレータ54により電源起動させる。電源起動時には、ボトムオン信号が入力されて来ないので、ボトムオン信号に関係無しに高圧スイッチ82をオンさせてVcc端子を16.5Vまで充電させる。
【0042】
その後、コンパレータ54の基準電圧は、10Vに切り替わり、Power-Good信号が出て発振動作を開始させて通常動作となり電圧波形Vdsの振幅が大きくなり、
図1に示すボトム検出回路により、ボトムオン信号が検出できるようになる。同時にトランス4の2次側に既定の負荷電力が供給されて、通常動作となる。
この時、コンパレータ35の非反転入力端子に印加されるVcc電圧が基準電圧36(例えば12V)以上である場合には、コンパレータ35は、Hレベルをオア回路34に出力するので、スイッチ81aがオンして、起動回路57が停止される。
【0043】
一方、Vcc電圧が基準電圧36(12V)以下になり、且つボトムオン信号がインバータ22から入力されて来た時には、オア回路34の出力は、Lレベルとなるので、スイッチ81aがオフして、起動回路57がオンされる。このため、Vcc端子が充電される。この充電によりVcc端子が12V以上充電された場合には、起動回路57をオフする。
これにより、通常動作時は、起動回路57をボトムオン動作させながら、Vcc端子は約12V程度に維持される。
【0044】
このように、通常動作時と間欠動作時に、Vcc端子電圧に、適切な電圧がボトムオン信号により低損失で供給することができる。
【0045】
また、制御回路50は、Vcc端子の電圧を監視して、Vcc端子の電圧が基準電圧以上である場合には、バックアップコンデンサ12への充電を停止させるので、必要以上にバックアップコンデンサ12へ充電することがなくなり、高効率を図ることができる。さらに、Vcc端子に高い電圧が充電されないので、素子の破壊や回路電流増大を回避できる。
【0046】
また、電源がオフした時には、スイッチング素子5のドレイン端子電圧が0Vまで下がるので、Vcc端子への充電ができなくなり、コンパレータによりVcc端子が10V以下になると安全に動作停止する。
【0047】
(実施例3)
図4は、本発明の実施例3に係るスイッチング電源装置内の制御回路のワンショットパルス回路の構成を示す回路図である。
図1に示す実施例1のワンショットトリガ回路23に代えて、
図4に示す実施例3は、ワンショットパルス回路を用いたことを特徴とする。
図4に示すその他の構成は、
図1に示す構成と同一である。
【0048】
ワンショットパルス回路において、電源Vccの正極は抵抗Rtを介してN型のトランジスタQn1のコレクタに接続されている。トランジスタQn1のエミッタは、P型のトランジスタQp2のエミッタとコンデンサCtの一端とインバータINV1の入力端子とに接続されている。トランジスタQp2のコレクタはコンデンサCtの他端に接続される。トランジスタQn1,Qp2のベースはアンド回路AND1の一方の入力端子に接続され、ボトム信号が入力される。インバータINV1の出力はアンド回路AND1の他方の入力端子に接続される。
【0049】
次に、ワンショットパルス回路の動作を説明する。まず、ボトム信号が入力されると、アンド回路AND1の一方の入力端子にHレベルが入力され、アンド回路AND1の他方の入力端子にはインバータINV1のHレベル信号が入力されているので、アンド回路AND1の出力はHレベルを出力する。
【0050】
また、ボトム信号が入力されると、トランジスタQn1がオンしてコンデンサCtに抵抗Rtを介して充電が開始される。コンデンサCtの電圧がインバータINV1の入力しきい電圧に達すると、インバータINV1を介してLレベルがアンド回路AND1に出力され、アンド回路AND1の出力はLレベル出力になる。
【0051】
ここで、抵抗RtはVcc電圧に接続されているので、コンデンサCtの充電時間はVcc電圧に比例して早くなる。即ち、アンド回路AND1の出力パルス幅は、
図5に示すように、Vcc電圧の上昇に対してパルス幅が狭くなる。これにより、Vcc電圧が高い時には、充電時間が短くするので、必要以上にVcc電圧を上昇させることなく損失を低減することができる。