特許第5772294号(P5772294)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5772294
(24)【登録日】2015年7月10日
(45)【発行日】2015年9月2日
(54)【発明の名称】パワーステアリング装置
(51)【国際特許分類】
   B62D 6/00 20060101AFI20150813BHJP
   B62D 5/04 20060101ALI20150813BHJP
   B62D 5/07 20060101ALI20150813BHJP
   B62D 101/00 20060101ALN20150813BHJP
   B62D 113/00 20060101ALN20150813BHJP
【FI】
   B62D6/00
   B62D5/04
   B62D5/07 B
   B62D101:00
   B62D113:00
【請求項の数】3
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2011-143011(P2011-143011)
(22)【出願日】2011年6月28日
(65)【公開番号】特開2013-10380(P2013-10380A)
(43)【公開日】2013年1月17日
【審査請求日】2014年5月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000170
【氏名又は名称】いすゞ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100068021
【弁理士】
【氏名又は名称】絹谷 信雄
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 輝彦
【審査官】 杉▲崎▼ 覚
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−120267(JP,A)
【文献】 特開2010−143241(JP,A)
【文献】 国際公開第2006/045707(WO,A1)
【文献】 特開2006−264622(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0199865(US,A1)
【文献】 米国特許第06152254(US,A)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0188169(US,A1)
【文献】 特表2008−505795(JP,A)
【文献】 国際公開第2005/063548(WO,A1)
【文献】 特開2014−227042(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 5/00− 6/06
B62D 101/00
B62D 113/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
可変容量形ポンプから供給される作動油の油圧で操舵力をアシストするパワーステアリング装置であって、
ステアリングシャフトに設けられ、該ステアリングシャフトから伝達される回転トルクにアシストトルクを付与可能なモータと、
少なくとも車速及び操舵角を含む操舵状態を検出する操舵状態検出手段と、
検出される前記操舵状態に応じて前記可変容量形ポンプから供給される作動油の流量を制御する流量制御手段と、
前記流量制御手段による制御量に基づいて、前記可変容量形ポンプから供給される作動油の流量を推定する流量推定手段と、
推定された前記作動油の流量が下限閾値以下の場合に、該流量に応じて増加される操舵力を抑制する操舵アシスト力を演算する操舵アシスト力演算手段と、
演算された前記操舵アシスト力に基づいて、該操舵アシスト力に応じたアシストトルクが前記ステアリングシャフトの回転トルクに付与されるように前記モータの駆動を制御するモータ駆動制御手段と、を備える
ことを特徴とするパワーステアリング装置。
【請求項2】
前記操舵状態検出手段により検出される操舵角を微分した操舵角速度が所定値以上を示す急操舵であるか否かを判定する急操舵判定手段をさらに備え、
前記操舵アシスト力演算手段は、
前記急操舵判定手段により急操舵と判定された場合に、急操舵時の操舵角速度に応じて増加される操舵力を抑制する操舵アシスト力を演算する請求項1に記載のパワーステアリング装置。
【請求項3】
前記流量制御手段は、
前記可変容量形ポンプに設けられた電磁弁に前記操舵状態検出手段の検出値に応じた通電量を供給することで前記可変容量形ポンプから供給される作動油の流量を制御し、
前記流量推定手段は、
前記可変容量形ポンプから供給される作動油の流量を前記通電量に基づいて推定する請求項1又は2に記載のパワーステアリング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パワーステアリング装置に関し、特に可変容量形ポンプを備えるパワーステアリング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、乗用車等においては、省燃費化を図るべくパワーステアリング装置の操舵力を電動モータの駆動力でアシストするものが普及している。しかし、軸重の大きい商用車等の大型車両の場合、ステアリング装置の操舵力を電動モータの駆動力のみでアシストすることは困難な場合がある。そのため、大型車両においては、可変容量形ポンプから供給される作動油の油圧により操舵力をアシストする油圧式パワーステアリング装置が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、油圧式パワーステアリング装置において、車両の直進走行時等に可変容量形ポンプによる作動油の吐き出し流量を低減させることで低燃費化を図る技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−304139号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、可変容量形ポンプを備えるパワーステアリング装置においては、直進走行時等に可変容量形ポンプによる作動油の吐き出し流量を減少させると、油圧による操舵アシスト力も低下するため、運転者の操舵感に違和感を与える可能性がある。また、操舵アシスト力の低下により、危険回避時等の急操舵時に操舵遅れを引き起こす場合もある。
【0006】
本発明はこのような点に鑑みてなされたもので、その目的は、可変容量形ポンプによる作動油の流量低下時に操舵力の上昇を抑制して、運転者の操舵感を効果的に維持することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の目的を達成するため、本発明のパワーステアリング装置は、可変容量形ポンプから供給される作動油の油圧で操舵力をアシストするパワーステアリング装置であって、ステアリングシャフトに設けられ、該ステアリングシャフトから伝達される回転トルクにアシストトルクを付与可能なモータと、少なくとも車速及び操舵角を含む操舵状態を検出する操舵状態検出手段と、検出される前記操舵状態に応じて前記可変容量形ポンプから供給される作動油の流量を制御する流量制御手段と、前記流量制御手段による制御量に基づいて、前記可変容量形ポンプから供給される作動油の流量を推定する流量推定手段と、推定された前記作動油の流量が下限閾値以下の場合に、該流量に応じて増加される操舵力を抑制する操舵アシスト力を演算する操舵アシスト力演算手段と、演算された前記操舵アシスト力に基づいて、該操舵アシスト力に応じたアシストトルクが前記ステアリングシャフトの回転トルクに付与されるように前記モータの駆動を制御するモータ駆動制御手段とを備えることを特徴とする。
【0008】
また、前記操舵状態検出手段により検出される操舵角を微分した操舵角速度が所定値以上を示す急操舵であるか否かを判定する急操舵判定手段をさらに備え、前記操舵アシスト力演算手段は、前記急操舵判定手段により急操舵と判定された場合に、急操舵時の操舵角速度に応じて増加される操舵力を抑制する操舵アシスト力を演算してもよい。
【0009】
また、前記流量制御手段は、前記可変容量形ポンプに設けられた電磁弁に前記操舵状態検出手段の検出値に応じた通電量を供給することで前記可変容量形ポンプから供給される作動油の流量を制御し、前記流量推定手段は、前記可変容量形ポンプから供給される作動油の流量を前記通電量に基づいて推定してもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明のパワーステアリング装置によれば、可変容量形ポンプによる作動油の流量低下時に操舵力の上昇を抑制して、運転者の操舵感を効果的に維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態に係るパワーステアリング装置の構成を示すブロック図である。
図2】本発明の一実施形態に係るコントローラの構成を示すブロック図である。
図3】本発明の一実施形態に係るパワーステアリング装置の動作を示すフローチャートである。
図4】作動油の流量が低下した場合及び低下しない場合における操舵力と操舵角との関係を示す図である。
図5】電動モータによる操舵アシスト力と操舵角との関係を示す図である。
図6】作動油の流量が低下した際に電動モータによる操舵アシストを付与した場合の操舵力と操舵角との関係を示す図である。
図7】急操舵時における操舵力と時間との関係を示す図である。
図8】急操舵時に電動モータによる操舵アシスト力を付与した場合の操舵力と時間との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図1〜8に基づいて、本発明の一実施形態に係るパワーステアリング装置について説明する。同一の部品には同一の符号を付してあり、それらの名称および機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明は繰返さない。
【0013】
図1に示すように、本実施形態のパワーステアリング装置10は、操舵角センサ11と、車速センサ12と、電動モータ13と、インテグラル式ステアリングユニット20と、可変容量形ポンプ30と、コントローラ70とを備えている。なお、本実施形態の操舵角センサ11と車速センサ12とは、本発明の操舵状態検出手段を構成する。
【0014】
操舵角センサ11は、ステアリングシャフト22に組み付けられており、ステアリングシャフト22の回転量を検出する。この操舵角センサ11により検出された回転量は、電気的に接続されたコントローラ70に操舵角θとして出力される。車速センサ12は、車両の速度を検出するもので、検出された速度は電気的に接続されたコントローラ70に車速Vとして出力される。
【0015】
電動モータ13は、ステアリングシャフト22に固定されたロータ14と、ロータ14の周囲に配置されたステータ15と、ステータ15を保持するハウジング16とを備えてステアリングシャフト22に取り付けられている。この電動モータ13は、コントローラ70から供給される電力で回転駆動することで、ステアリングシャフト22にアシストトルク(操舵アシスト力)を付与して運転者のステアリング操作を補助するように構成されている。
【0016】
インテグラル式ステアリングユニット20は、運転者により操作されるステアリングホイール21と、動力部としてのパワーシリンダ部24と、一端をステアリングホイール21に接続されると共に、他端をパワーシリンダ部24の入力軸であるスタブシャフト23に接続されたステアリングシャフト22と、一端をパワーシリンダ部24の出力軸であるピットマンアーム25に接続されたドラグリンク26と、一端をドラグリンク26に接続されたナックルアーム27と、パワーシリンダ部24に供給される作動油の油量を制御するコントロールバルブ29と、パワーシリンダ部24に供給される作動油を貯留するリザーバタンク19とを備えている。このインテグラル式ステアリングユニット20は、運転者による操舵操作の際に、ステアリングホイール21の操舵トルクに応じた油圧がパワーシリンダ部24内に作用することで、運転者の操舵操作を補助するように構成されている。
【0017】
可変容量形ポンプ30は、ポンプハウジング内に回転自在に支持されると共に、エンジン90の駆動力で回転駆動される図示しない駆動軸と、ポンプハウジング内に嵌装された図示しない円環状のアダプタリングと、アダプタリングの内周側に駆動軸の軸心に対して偏心可能に設けられた図示しない円環状のカムリングと、カムリングの内周側に設けられ、駆動軸により回転駆動される図示しないポンプ要素と、ポンプ要素が1回転することで吐き出される作動油の吐き出し流量を制御する制御弁40と、制御弁40の一部を構成する図示しない弁体の移動量を制御する電磁弁50とを備えている。
【0018】
円環状のアダプタリングの内周部には、カムリングの揺動支点を構成する図示しない支点ピンが設けられている。また、支点ピンと対向するアダプタリングの内周部には、図示しないシール部材が配置されている。アダプタリングとカムリングとの間には、これら支点ピンとシール部材とによって第1流体圧室及び第2流体圧室が区画形成されている。さらに、この第2流体圧室には、カムリングをポンプ室の容積が最大となる方向に常時付勢するスプリングが設けられている。
【0019】
ポンプ要素は、駆動軸の外周面に固定されてカムリングの内周側に回転自在に収容された図示しないロータと、ロータの外周部に径方向に放射状に設けられた図示しない複数のベーンとを備えている。すなわち、カムリングとロータとの間の空間には、隣接する2枚のベーンによって複数のポンプ室が区画形成されている。このポンプ室の容積は、カムリングが支点ピンを支点に揺動することで増減されるように構成されている。
【0020】
ポンプ室は、吸入通路61を介してリザーバタンク19に接続されており、リザーバタンク19内の作動油がこの吸入通路61を通って供給されるように構成されている。また、ポンプ室には、作動油を後述する制御弁40の図示しない高圧室に導入する第1接続通路62が接続されている。さらに、ポンプ室には、作動油をコントロールバルブ29に導入する第2接続通路63が接続されている。
【0021】
第2接続通路63は、後述する制御弁40の図示しない中圧室に接続された副油通路64と、コントロールバルブ29に接続された主油通路65とを備えている。また、副油通路64には図示しない可変オリフィスが設けられている。
【0022】
制御弁40は、筒状のバルブ本体の一端開口部を閉鎖する図示しないプラグと、バルブ本体の筒内に摺動自在に収容された図示しない弁体と、弁体をプラグに向けて付勢する図示しないバルブスプリングと、第1接続通路62を介して可変容量形ポンプ30のポンプ室内にある作動油の一部が導入される図示しない高圧室と、バルブスプリングを収容すると共に、第2接続通路63の副油通路64を介して可変容量形ポンプ30のポンプ室内にある作動油の一部が導入される図示しない中圧室と、弁体の外周側に形成された図示しない低圧室とを備えている。この制御弁40は、高圧室と中圧室との差圧が所定値以上になると、弁体がバルブスプリングの付勢力に抗して中圧室側に移動され、高圧室と可変容量形ポンプ30の第1流体圧室とが連通することで、この第1流体圧室に高圧の作動油が導入されるように構成されている。
【0023】
一方、弁体がバルブスプリングの付勢力により高圧室側に移動された場合、第1流体圧室は低圧室と連通する。この低圧室には、吸入通路61から分岐形成された図示しない低圧通路が接続されており、第1流体圧室と低圧室とが連通すると、吸入通路61からの低圧の作動油が低圧通路を介して可変容量形ポンプ30の第1流体圧室に導入されるように構成されている。
【0024】
電磁弁50は、ケーシング内に摺動可能に収容された図示しないプランジャと、ケーシング内に設けられてプランジャを常時付勢する図示しないスプリングと、ケーシングの内周側に収容された図示しない電磁コイルとを備える。この電磁弁50の駆動は、操舵角センサ11の検出値及び車速センサ12の検出値に応じて設定される通電量が、コントローラ70から電磁コイルに出力されることで制御される。例えば、パワーステアリング装置10は操舵角が大きいほど操舵アシスト力を必要とするため、電磁弁50の電磁コイルへの通電量は操舵角センサ11の検出値に応じて大きくなるように設定される。また、パワーステアリング装置10は車両の低速走行時ほど操舵アシスト力を必要とするため、電磁弁50の電磁コイルへの通電量は車速センサ12の検出値の減少に応じて大きくなるように設定される。
【0025】
電磁弁50は、電磁コイルに励磁電流が通電されない非通電状態では、プランジャがスプリングの付勢力により移動されて副油通路の可変オリフィスを閉鎖(閉弁)する。このように副油通路の可変オリフィスが閉鎖されると、制御弁40の高圧室と中圧室との差圧は大きくなり、弁体は高圧室の内圧によりバルブスプリングの付勢力に抗して中圧室側へ移動され、第1流体圧室に高圧となるポンプ吐出圧が導入される。その結果、第1流体圧室の内圧は高まり、カムリングのロータに対する偏心量が減少する方向へ揺動することで、可変容量形ポンプ30のポンプ吐出量も減少するように構成されている。
【0026】
一方、電磁弁50は、電磁コイルに励磁電流が通電された場合には、電磁吸引力によりプランジャがスプリングの付勢力に抗して移動されて副油通路64の可変オリフィスを開放(開弁)する。このように副油通路64の可変オリフィスが開放されると、制御弁40の高圧室と中圧室との差圧は小さくなり、弁体はバルブスプリングの付勢力により高圧室側へ移動され、第1流体圧室に低圧となるポンプ吸入圧が導入される。その結果、第1流体圧室の内圧は低下し、カムリングのロータに対する偏心量が増大する方向へ揺動することで、可変容量形ポンプ30のポンプ吐出量も増大するように構成されている。
【0027】
コントローラ70は、パワーステアリング装置10の各種制御を行うもので、公知のCPUやROM、RAM、入力ポート、出力ポート等を備え構成されている。この各種制御を行うために、コントローラ70には、操舵角センサ11、車速センサ12等の各種センサの出力信号がA/D変換された後に入力される。また、コントローラ70は、図2に示すように、作動油流量制御部71と、作動油流量推定部72と、急操舵判定部73と、操舵アシスト力演算部74と、モータ駆動制御部75とを一部の機能要素として有する。これら各機能要素は、本実施形態では一体のハードウェアであるコントローラ70に含まれるものとして説明するが、これらのいずれか一部を別体のハードウェアに設けることもできる。
【0028】
作動油流量制御部71は、操舵角センサ11の検出値(以下、操舵角θ)や車速センサ12の検出値(以下、車速V)に応じた電磁弁50の電磁コイルへの通電量を設定すると共に、設定した通電量を電磁弁50の電磁コイルに出力して可変容量形ポンプ30の吐出流量を制御する。例えば、パワーステアリング装置10は操舵角θが大きいほど操舵アシスト力を必要とするため、電磁コイルへの通電量は操舵角θの増加に伴い大きくなるように設定される。また、パワーステアリング装置10は車両の低速走行時ほど操舵アシスト力を必要とするため、電磁コイルへの通電量は車速Vの減少に伴い大きくなるように設定される。一方、車速Vがゼロを示す車両の停車時や、操舵角θが所定の閾値以下を示す車両の直進走行時は、可変容量形ポンプ30の駆動源であるエンジン90の燃費向上を図るべく、電磁コイルへの通電量は小さく設定される。すなわち、車両の停車時や直進走行時は、可変容量形ポンプ30からインテグラル式ステアリングユニット20のコントロールバルブ29に供給される作動油の流量は低減され、油圧による操舵アシスト力も減少するように構成されている。
【0029】
作動油流量推定部72は、作動油流量制御部71により設定された電磁弁50の電磁コイルへの通電量に基づいて、可変容量形ポンプ30からインテグラル式ステアリングユニット20のコントロールバルブ29に供給される作動油の流量を推定する(以下、推定流量Fという)。このコントローラ70には、予め実験等で求められた作動油の流量と電磁コイルへの通電量との関係を示す図示しない流量マップが記憶されており、推定流量Fはこの流量マップと通電量とに基づいて算出される。
【0030】
急操舵判定部73は、操舵角センサ11から出力される操舵角θを微分して得られる操舵角速度ωに基づいて、運転者による急操舵の有無を判定する。例えば、操舵角速度ωが所定の上限閾値以上の場合、運転者による急操舵は「有り」と判定される一方、操舵角速度ωが所定の上限閾値よりも小さい場合、運転者による急操舵は「無し」と判定される。
【0031】
操舵アシスト力演算部74は、作動油の流量低下時に増加される操舵力(運転者がステアリングホイール21を回動操作、すなわち操舵輪28を転舵させるのに必要となる操舵トルク)を補助する操舵アシスト力TFを演算する。具体的には、コントローラ70には、実験等で求めた作動油の流量と操舵力との関係を示す流量操舵力マップ(不図示)が予め記憶されている。操舵アシスト力演算部74は、推定流量Fが所定の下限閾値以下の場合に、この流量操舵力マップ(不図示)と推定流量Fとに基づいて、作動油の流量低下時に必要となる操舵アシスト力TFを演算する。
【0032】
また、操舵アシスト力演算部74は、運転者による急操舵が「有り」と判定された場合に、急操舵時に必要となる操舵アシスト力TDを演算する。この急操舵時の操舵アシスト力TDすなわち電動モータ13への指示トルクは、次式(1)に基づいて演算される。
D=ω×A×(0.5−t)/0.5…(1)
なお、式1中において、ωは操舵角速度、Aはゲイン(例えば0.01)、tは急操舵開始からの経過時間を示す。また、式1中のTDは0(ゼロ)よりも小さい場合(TD<0)は0(ゼロ)に設定され、ゲイン(例えば0.01)や0.5の数値は可変容量形ポンプ30の性能や流量設定に応じて適宜変更される。
【0033】
モータ駆動制御部75は、操舵アシスト力演算部74により演算された流量低下時の操舵アシスト力TFや急操舵時の操舵アシスト力TDに基づいて、これら操舵アシスト力TF,TDに応じたアシストトルクがステアリングシャフト22の回転トルクに付与されるように電動モータ13の駆動を制御する。具体的には、このモータ駆動制御部75は、予めコントローラ70に記憶された操舵アシスト力と目標電流との関係を示す図示しないマップに基づいて目標電流を設定すると共に、設定した目標電流を電動モータ13に出力するように構成されている。
【0034】
次に、図3のフローチャートを参照して、本実施形態のパワーステアリング装置10の動作について説明する。本制御は作動油流量制御部71による作動油の流量制御と同時にスタートする。
【0035】
ステップ(以下、ステップを単にSと記載する)100では、急操舵判定部73により、運転者による急操舵の有無が判定される。操舵角速度ωが所定の上限閾値よりも小さい場合、運転者による急操舵は「無し」と判定されてS110へ進む。一方、操舵角速度ωが所定の上限閾値以上の場合、運転者による急操舵は「有り」と判定されてS200へ進む。
【0036】
S200では、操舵アシスト力演算部74により急操舵時に必要となる操舵アシスト力TDが演算され、S110へと進む。
【0037】
S110では、作動油流量推定部72により、電磁弁50の電磁コイルへの通電量に基づいて推定流量Fが算出されると共に、この推定流量Fが所定の下限閾値以下であるか否かが確認される。推定流量Fが所定の下限閾値以下の低流量、すなわち作動油の油圧による操舵アシスト力が低下している場合は、電動モータ13を駆動させるべくS120へと進む。一方、推定流量が所定の下限閾値以上、すなわち上述のS100で急操舵も無く、かつ油圧による操舵アシスト力も十分な場合は、S120をスキップしてS130へと進む。
【0038】
S120では、操舵アシスト力演算部74により、上述のS110で算出された推定流量Fと流量操舵力マップとに基づいて、流量低下時に必要となる操舵アシスト力TFが演算される。
【0039】
その後、S130では、モータ駆動制御部75により、電動モータ13の駆動が、流量低下時の操舵アシスト力TFに急操舵時に必要となる操舵アシスト力TDを加算したアシストトルクをステアリングシャフト22の回転トルクに付与するように制御されて、本制御はリターンされる。
【0040】
次に、本実施形態のパワーステアリング装置10による作用効果について説明する。
【0041】
運転者がステアリングホイール21を回動操作すると、この回動操作はステアリングシャフト22、パワーシリンダ部24及び、ドラグリンク26を介してナックルアーム27に伝達されて操舵輪28が転舵される。これと同時に、例えば車両の停車時や直進走行時等、作動油の流量低下時には、ステアリングシャフト22に付与される操舵アシスト力TFが演算されると共に、この操舵アシスト力TFに応じたアシストトルクがステアリングシャフト22の回転トルクに付与されるように電動モータ13を駆動させ、操舵輪28は電動モータ13の駆動力によりアシストされながら転舵される。
【0042】
すなわち、本実施形態のパワーステアリング装置10によれば、図4に示す作動油の流量低下時における操舵力の上昇は、図5に示す電動モータ13の操舵アシスト力の付与により抑制されるので、流量低下時の操舵力と流量が低下していない時の操舵力とは同等に維持される(図6参照)。
【0043】
したがって、電動モータ13の駆動力によるアシストで作動油の流量低下時における操舵力の上昇を効果的に抑制することが可能となり、運転者の操舵感を維持することができる。また、車両の停車時や直進走行時にエンジン90を駆動源とする可変容量形ポンプ30の吐出流量を低減しても運転者の操舵感が維持されるので、燃費向上と操舵感の安定性との両立を図ることができる。
【0044】
また、運転者によりステアリングホイール21が急激に回動操作される急操舵時には、ステアリングシャフト22に付与される急操舵時の操舵アシスト力TDが演算されると共に、この急操舵時の操舵アシスト力TDに応じたアシストトルクがステアリングシャフト22の回転トルクに付与されるように電動モータ13が駆動される。
【0045】
すなわち、急操舵時において、通常は可変容量形ポンプ30の応答遅れにより作動油の流量が不足し、図7に示すように操舵開始初期に操舵力の急激な上昇を引き起おこす懸念があるが、本実施形態のパワーステアリング装置10によれば、急操舵時に電動モータ13の操舵アシスト力TDが付与されるので、図8に示すように操舵力の急激な上昇は効果的に抑制される。
【0046】
したがって、電動モータ13のアシストにより、急操舵時の可変容量形ポンプ30の応答遅れを補償しつつ、操舵力の急激な上昇を効果的に抑制することが可能となり、引っ掛かり感の無いスムーズな操舵感を維持することができる。
【0047】
また、可変容量形ポンプ30からコントロールバルブ29に供給される作動油の流量は、電磁弁50の電磁コイルへの通電量に基づいて推定される。
【0048】
したがって、作動油の流量を流量センサ等で直接検出しなくても、可変容量形ポンプ30の応答遅れ等の影響を効果的に排除することができる。
【0049】
なお、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜変形して実施することが可能である。
【0050】
例えば、急操舵時の操舵アシスト力は必ずしも上述の式1で演算される必要はなく、実験等で求めた操舵角速度ωと操舵アシスト力との関係を示す急操舵時マップ(不図示)を予め記憶しておき、この急操舵時マップに基づいて急操舵時の操舵アシスト力を演算してもよい。
【0051】
また、作動油流量制御部71は車両の停車時及び直進走行時に作動油の流量を低下させるものとして説明したが、何れか一方の走行状態の場合にのみ作動油の流量を低下させるようにしてもよい。
【0052】
この場合も上述の実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
【符号の説明】
【0053】
10 パワーステアリング装置
11 操舵角センサ(操舵状態検出手段)
12 車速センサ(操舵状態検出手段)
13 電動モータ(モータ)
22 ステアリングシャフト
30 可変容量形ポンプ
70 コントローラ
71 作動油流量制御部(流量制御手段)
72 作動油流量推定部(流量推定手段)
73 急操舵判定部(急操舵判定手段)
74 操舵アシスト力演算部(操舵アシスト力演算手段)
75 モータ駆動制御部(モータ駆動制御手段)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8