特許第5772306号(P5772306)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5772306
(24)【登録日】2015年7月10日
(45)【発行日】2015年9月2日
(54)【発明の名称】モールドパッケージの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/56 20060101AFI20150813BHJP
   H01L 23/34 20060101ALI20150813BHJP
【FI】
   H01L21/56 T
   H01L23/34 B
【請求項の数】4
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2011-148305(P2011-148305)
(22)【出願日】2011年7月4日
(65)【公開番号】特開2013-16636(P2013-16636A)
(43)【公開日】2013年1月24日
【審査請求日】2013年10月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(73)【特許権者】
【識別番号】000144038
【氏名又は名称】株式会社三井ハイテック
(74)【代理人】
【識別番号】110001128
【氏名又は名称】特許業務法人ゆうあい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】荒木 誠
(72)【発明者】
【氏名】藤井 哲夫
(72)【発明者】
【氏名】梶原 義節
(72)【発明者】
【氏名】平塚 哲嗣
【審査官】 麻川 倫広
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−150216(JP,A)
【文献】 特開2008−270661(JP,A)
【文献】 特開2001−035985(JP,A)
【文献】 特開平02−306639(JP,A)
【文献】 特開2011−119335(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/56
H01L 23/28−23/48
H01L 25/00−25/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状のヒートシンク(10)の一面(11)にチップ(20)が搭載され、前記ヒートシンク(10)の前記一面(11)とは反対側の他面(12)の周縁部に、樹脂モールド時における樹脂の浸入を防ぐための突起(17)が設けられたものをモールド金型(70)内に設置し、
前記ヒートシンク(10)の被クランプ部(16)を前記一面(11)側からクランプ(73)で抑え、前記突起(17)を前記モールド金型(70)に押し当てながら、前記モールド金型(70)内に樹脂を注入することで、前記ヒートシンク(10)の前記他面(12)を露出させながら、前記ヒートシンク(10)の前記一面(11)側および前記チップ(20)を樹脂モールドするモールドパッケージの製造方法において、
前記ヒートシンク(10)として、前記チップ(20)が搭載される本体部(13)と、前記本体部(13)から外側に突出した突出片部(14)とを有する平面形状であって、前記突出片部(14)の少なくとも一部を前記クランプ(73)に抑えられる被クランプ部(16)とするものを用い、
さらに、前記ヒートシンク(10)として、前記ヒートシンク(10)の前記被クランプ部(16)を除く部分を、パンチ(62)とダイ(63)とで挟んでプレスすることで、前記本体部(13)の周縁部と、前記突出辺部(14)の前記本体部側の周縁部とに、前記突起(17)が設けられ、前記被クランプ部(16)の周縁部には前記突起(17)が設けられていないものを用いることを特徴とするモールドパッケージの製造方法。
【請求項2】
前記突出片部(14)には、リードフレーム(50)を連結するためのかしめ部(15)が設けられており、
前記被クランプ部(16)は、前記突出片部(14)のうち前記かしめ部(15)よりも外側に位置することを特徴とする請求項1に記載のモールドパッケージの製造方法。
【請求項3】
前記突起(17)は、前記本体部(13)の周縁部および前記突出片部(14)の前記かしめ部(15)よりも内側の周縁部に、連続して設けられ、
前記突出片部(14)の前記かしめ部(15)よりも内側の周縁部が前記突起(17)の形成範囲の終端となることで、前記突起(17)は、前記両周縁部に沿う2つの分離した線状の形態となっていることを特徴とする請求項2に記載のモールドパッケージの製造方法。
【請求項4】
前記本体部(13)は、一対の長辺(13a)と一対の短辺(13b)とを有する平面形状であり、
前記突出片部(14)は、一対の前記短辺(13b)のそれぞれに位置し、
前記他面(12)のうち前記本体部(13)の前記短辺(13b)側には、前記突起(17)よりも内側に、樹脂モールド時における樹脂の侵入を防ぐための溝(18)が設けられていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1つに記載のモールドパッケージの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モールドパッケージの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ヒートシンク表面を樹脂パッケージから露出したモールドパッケージの製造では、樹脂モールド時に樹脂がヒートシンク表面に侵入し、樹脂モールド後にヒートシンク周縁部表面を覆う樹脂バリとして残ってしまう。この場合、ヒートシンクの熱放出面である表面の面積が狭められ放熱性が低下するため、従来では、薬品やウォータージェットなどで、その樹脂バリを除去していた。
【0003】
しかし、このような樹脂バリの除去は、工数やコストの増加の原因となり、さらに薬品に浸漬させるということで、パッケージ内に薬品が浸透する懸念等の信頼性上の問題があった。
【0004】
そして、このような問題に関して、ヒートシンクの表面に、樹脂の侵入を防ぐための突起を形成することにより、樹脂モールド時にヒートシンク表面への樹脂の侵入を防ぐ方法が、特許文献1〜3等に開示されている。
【0005】
このうち、特許文献2には、チップが搭載される本体部と、この本体部から外側に突出し、リードフレームに連結される連結片部とを有する形状のヒートシンクにおいて、本体部の周縁部分の全周に突起を連続して設けることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平7−94635号公報
【特許文献2】特開平11−150216号公報(図2の変形例である図4図5参照)
【特許文献3】特開2008−270661号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、ヒートシンクに突起を設けずに行っていた従来の樹脂モールドの工程に対して、実際に、上述の特許文献2のように、ヒートシンクに突起部を設けて行うように変更したところ、以下に説明する問題が発生した。
【0008】
まず、図11(a)、(b)に、突起を設けない従来のヒートシンクの断面図、底面図を示し、図12に、このヒートシンクを用いた従来の樹脂モールドの工程時の断面図を示す。
【0009】
図11(a)、(b)に示すように、用いたヒートシンク10は、チップ20が搭載される本体部13と、本体部13から外側に突出している部分であって、リードフレームと連結される連結片部(吊り部)14とを有する平面形状である。この連結片部14の上面(一面)11には、リードフレームの孔に挿入されて、かしめられる凸状のかしめ部15が設けられており、連結片部14の下面(他面)12には、かしめ部15の形成によって生じた凹部が設けられている。
【0010】
また、図12に示すように、樹脂モールドの工程では、ヒートシンク10の一面11にチップ20が搭載されものを、モールド金型70内に設置する。このモールド金型70は、上型71と下型72とによって構成され、上型71には、ヒートシンク10の他面12を下型72に押し付けるためのクランプ73が設けられている。このクランプ73は、ヒートシンク10の一面11のうち、連結片部14のかしめ部15よりも外側に位置する被クランプ部16に当接する。
【0011】
そして、ヒートシンク10の被クランプ部16を一面11側からクランプ73で抑えながら、モールド金型70内に樹脂を注入する。これにより、ヒートシンク10の他面12を露出させながら、ヒートシンク10の一面11側およびチップ20を樹脂モールドする。
【0012】
図13に、このようにして樹脂モールドした後のモールドパッケージ1の底面の模式図を示す。図13に示すように、この場合では、ヒートシンク10の他面12において、本体部13の周縁近傍に樹脂バリ31ができるため、この樹脂バリ31を除去する工程が必要となる。
【0013】
次に、図14(a)、(b)に、突起を設けたときのヒートシンクの断面図、底面図を示し、図15に、そのときの突起の形成方法を示す。また、図16に、ヒートシンクに突起を設けたときの樹脂モールド工程時の断面図を示し、図17に、この樹脂モールド後のモールドパッケージの底面の模式図を示す。
【0014】
図14(b)に示すように、ヒートシンク10の周縁部のほぼ全域に、図15(a)〜(c)に示す方法によって、突起17を形成した。
【0015】
具体的には、突起17の位置は、本体部13の周縁部全域(連結片部14との境界を除く)および連結片部14の周縁部のうち対向する2辺の大部分である。
【0016】
また、突起17の形成は、次のようにして行った。まず、図15(a)に示すように、ヒートシンク10に対向する面に、突起17の高さに応じた突出高さを有する1つの凸部61を設けたパンチ62を用意し、ヒートシンク10の他面12をパンチ62側に向けて、ヒートシンク10をダイ63の上に設置する。パンチ62の凸部61は、ヒートシンク10の他面12よりも小さく、ヒートシンク10の他面12のうち周縁部よりも内側の領域のみに対向する大きさである。
【0017】
そして、図15(b)に示すように、ヒートシンク10をパンチ62とダイ63とで挟んでプレスする。これにより、図15(c)に示すように、ヒートシンク10の他面12のうち凸部61と対向する領域が凸部61に押されて薄くなり、凸部61と対向しない周縁部は凸部61に押されないため、凸部61と対向する領域よりも厚くなる。このようにして、周縁部に突起17が形成される。
【0018】
しかし、この場合、ヒートシンク10の被クランプ部16にも突起17を形成したため、被クランプ部16がパンチ62とダイ63とに挟まれて、図1(a)と図15(b)、(c)とを比較してわかるように、被クランプ部16の板厚がプレス前よりも薄くなってしまった。
【0019】
このため、突起形成無しのときの従来のモールド金型を使用して樹脂モールドを行ったところ、図16に示すように、クランプ性が悪くなり、すなわち、クランプ73によるヒートシンク10の押さえが不十分となり、突起17を下型72へ十分に押し当てることができず、その突起17の効果を十分に活かせず、図17に示すように、本体部13に樹脂が侵入して樹脂バリ31が発生してしまった。この結果、この場合においても、樹脂バリ31を除去する工程が必要となってしまった。
【0020】
ちなみに、この問題を解決する手法としては、モールド金型70の寸法を変更したり、ヒートシンク用の板材として、プレスによる厚さ変化を考慮して従来よりも厚いものを採用したりすることが考えられる。
【0021】
しかし、モールド金型70を新たに作製すると、金型作製には高額な費用が必要となり、製品のコストアップにつながるため、金型を新たに作製することは好ましくない。また、ヒートシンク用の板材を厚くすると、材料の価格が上昇し、製品のコストアップにつながるため、ヒートシンク用の板材の厚みを変更することも好ましくない。
【0022】
なお、ここでは、ヒートシンク10として、本体部13と一体の連結片部14を有する形状のものを使用し、樹脂モールド時において、連結片部14がクランプ73によって抑えられる場合を説明したが、連結片部14とは別に、本体部13から外側に突出した突出片部を有する平面形状であって、この突出片部の少なくとも一部を被クランプ部とするヒートシンクを用いる場合においても、上述の問題が発生する。
【0023】
また、上述のクランプ性の問題については、上記した特許文献1〜3のいずれにも開示されていない。
【0024】
本発明は上記点に鑑みて、樹脂モールド時に、突起を設けない従来と同じモールド金型を使用しても、良好なクランプ性を確保しつつ、ヒートシンクの本体部に設けた突起によって、本体部での樹脂バリの発生を抑制できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0025】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、板状のヒートシンク(10)の一面(11)にチップ(20)が搭載され、ヒートシンク(10)の一面(11)とは反対側の他面(12)の周縁部に、樹脂モールド時における樹脂の浸入を防ぐための突起(17)が設けられたものをモールド金型(70)内に設置し、
ヒートシンク(10)の被クランプ部(16)を一面(11)側からクランプ(73)で抑え、突起(17)をモールド金型(70)に押し当てながら、モールド金型(70)内に樹脂を注入することで、ヒートシンク(10)の他面(12)を露出させながら、ヒートシンク(10)の一面(11)側およびチップ(20)を樹脂モールドするモールドパッケージの製造方法において、
ヒートシンク(10)として、チップ(20)が搭載される本体部(13)と、本体部(13)から外側に突出した突出片部(14)とを有する平面形状であって、突出片部(14)の少なくとも一部をクランプ(73)に抑えられる被クランプ部(16)とするものを用い、
さらに、ヒートシンク(10)として、ヒートシンク(10)の被クランプ部(16)を除く部分を、パンチ(62)とダイ(63)とで挟んでプレスすることで、本体部(13)の周縁部と、突出辺部(14)の本体部側の周縁部とに、突起(17)が設けられ、被クランプ部(16)の周縁部には突起(17)が設けられていないものを用いることを特徴とする。
【0026】
これによれば、ヒートシンクの被クランプ部(16)を除く部分をプレスして突起(17)を設け、被クランプ部(16)の周縁部には突起(17)を設けないこととしたので、ヒートシンク用の板材の厚さを、突起を設けない従来よりも厚くしなくても、被クランプ部の板厚を、突起を設けない従来と同じ厚さにできる。
【0027】
したがって、樹脂モールド時に、突起を設けない従来のモールド金型を使用しても、良好なクランプ性を確保でき、本体部に設けた突起の効果を十分に発揮させることができ、本体部での樹脂バリの発生を抑制することができる。
【0028】
ちなみに、本発明では、突出片部の被クランプ部に突起を設けないので、樹脂モールド時に、突出片部の他面側に樹脂が侵入する場合がある。しかし、本発明では、本体部の外側に突出する突出片部に被クランプ部を設け、その被クランプ部をクランプで抑えるので、突出片部に樹脂が侵入したとしても、樹脂を突出片部の周縁近傍にとどめて、本体部まで樹脂が侵入するのを抑制でき、本体部での樹脂バリの発生を抑制することができる。
【0029】
請求項1に記載の発明においては、例えば、請求項2に記載のように、ヒートシンク(10)として、被クランプ部(16)が、突出片部(14)のうちかしめ部(15)よりも外側に位置するものを用いることができる。
【0030】
また、この場合、請求項3に記載のように、突起(17)は、本体部(13)の周縁部および突出片部(14)のかしめ部(15)よりも内側の周縁部に、連続して設けられ、突出片部(14)のかしめ部(15)よりも内側の周縁部が突起(17)の形成範囲の終端となることで、突起(17)は、前記両周縁部に沿う2つの分離した線状の形態となっていることが好ましい。
【0031】
また、請求項1〜3に記載の発明においては、例えば、請求項4に記載のように、ヒートシンクとして、本体部(13)が、一対の長辺(13a)と一対の短辺(13b)とを有する平面形状であり、突出片部(14)が、一対の短辺(13b)のそれぞれに位置し、さらに、ヒートシンクの他面(12)のうち本体部(13)の短辺(13b)側には、突起(17)よりも内側に、樹脂モールド時における樹脂の侵入を防ぐための溝(18)が設けられているものを用いることが好ましい。
【0032】
なお、この欄および特許請求の範囲で記載した各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示す一例である。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】(a)、(b)、(c)は、第1実施形態におけるモールドパッケージの平面図、A−A’断面図、B−B’断面図である。
図2図1のモールドパッケージの製造工程を示す断面図である。
図3】第1実施形態におけるヒートシンクの底面図である。
図4】(a)、(b)は、図3中のC−C’断面図、D−D’断面図である。
図5】第1実施形態におけるヒートシンクの突起の形成工程を示す断面図である。
図6】第1実施形態の製造方法により実際に製造したときのモールドパッケージの底面の模式図である。
図7】第2実施形態におけるヒートシンクの底面図である。
図8】他の実施形態におけるヒートシンクの底面図である。
図9】他の実施形態における突起形成に用いるパンチの斜視図である。
図10】他の実施形態におけるヒートシンクの底面図である。
図11】(a)、(b)は、突起を設けない従来のヒートシンクの断面図、底面図である。
図12図11のヒートシンクを用いた従来の樹脂モールド時の断面図である。
図13】従来の樹脂モールド後のモールドパッケージの底面の模式図である。
図14】(a)、(b)は、従来のヒートシンクに対して、突起を設けたときのヒートシンクの断面図、底面図である。
図15】突起の形成工程を示す断面図である。
図16図14のヒートシンクを用いた樹脂モールド時の断面図である。
図17図14のヒートシンクを用いての樹脂モールド後のモールドパッケージの底面の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、各図において、互いに同一もしくは均等である部分には、説明の簡略化を図るべく、図中、同一符号を付してある。
【0035】
(第1実施形態)
図1(a)、(b)、(c)に、本実施形態におけるモールドパッケージ1の平面図、A−A’断面図、B−B’断面図を示す。なお、図1(a)では、リードを省略している。
【0036】
本実施形態のモールドパッケージ1は、板状のヒートシンク10の一面11にチップ20が搭載され、ヒートシンク10の一面側とチップ20とがモールド樹脂30にてモールド(封止)されているとともに、ヒートシンク10の一面11とは反対側の他面12がモールド樹脂30から露出しているものである。
【0037】
チップ20は、ICチップ等のチップ状の電子部品であり、例えば、1つのICチップで構成されていたり、ICチップと配線基板とが積層されて1つのチップ20が構成されていたりしても良い。
【0038】
ヒートシンク10は、チップ20の熱を放出する板状のものであり、放熱性に優れた銅、モリブデン、アルミニウム、鉄などの材料よりなる。ヒートシンク10の平面形状は、「発明が解決しようとする課題」の欄で説明した図11(b)に示す形状と同じである。また、ヒートシンク10の他面12の周縁部には、図1には示されていないが、樹脂モールド時における樹脂の浸入を防ぐための突起が設けられている。なお、突起の形成位置については、後述する。
【0039】
チップ20は、導電性接着剤41によって、ヒートシンク10に接着されている。導電性接着剤41としては、Ag等の導電性ペーストや半田等が採用される。また、チップ20は、ボンディングワイヤ42を介して、銅等の金属よりなるリード51と電気的に接続されている。
【0040】
モールド樹脂30としては、この種のモールドパッケージに用いられる一般的なモールド材料、例えばエポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂などが採用される。
【0041】
本実施形態では、図1(a)に示すように、ヒートシンク10の一面11においても、一部16がモールド樹脂30から露出している。この露出している部分16は、後述の樹脂モールドする工程で、クランプ73によって抑えられた被クランプ部である。
【0042】
次に、本実施形態のモールドパッケージ1の製造方法を説明する。図2(a)〜(e)に、モールドパッケージ1の製造工程を示す。
【0043】
まず、図2(a)に示すように、ヒートシンク10が連結されたリードフレーム50を用意する工程を行う。このヒートシンク10の他面12には、予め、突起が設けられている。リードフレーム50は、複数のリード51と連なる枠部52を有している。
【0044】
ここで、図3に、ヒートシンク10の底面図を示す。また、図4(a)、(b)に、図3中のC−C’断面図、D−D’断面図を示す。
【0045】
図3に示すように、本実施形態で用いるヒートシンク10は、チップ20が搭載される本体部13と、本体部13から外側に突出し、リードフレーム50と連結される連結片部(吊り部)14とを有する平面形状のものである。
【0046】
より具体的には、本体部13は、一対の長辺13aと一対の短辺13bとを有する略長方形である。連結片部14は、本体部13よりも面積が小さい部分であり、本体部13の一対の短辺13bの中央部にそれぞれ連なっている。図4(a)に示すように、連結片部14にはかしめ部15が設けられており、このかしめ部15は他面12側を凹ませて一面側を凸状としたものである。また、図3に示すように、連結片部14のかしめ部15よりも外側の領域が、樹脂モールド時にクランプ73によって抑えられる被クランプ部16である。
【0047】
そして、図3に示すように、ヒートシンク10の他面12において、突起17を、本体部13の周縁部と連結片部14のかしめ部15よりも内側(本体部側)の周縁部とに連続して設けている。より具体的には、本体部13では、長辺13aの全範囲と短辺13bのうちその中央部を除く範囲とに突起17を連続して設けており、連結片部14では、かしめ部15よりも内側の周縁部に突起17を連続して設けているが、かしめ部15および被クランプ部16の周縁部には突起17を設けていない。
【0048】
この突起17は、図4(b)に示すように、ヒートシンク10の端に設けられており、高さが3〜25μm程度のものである。
【0049】
また、この突起17は、「発明が解決しようとする課題」の欄で説明したように、パンチ62とダイ63とでヒートシンク10をプレスすることで、ヒートシンク10に形成される。図5(a)〜(c)に、この突起の形成工程を示す。
【0050】
図5(a)に示すように、ヒートシンク10に対向する面に、突起17の高さに応じた突出高さを有する1つの凸部61を設けたパンチ62を用意するとともに、ヒートシンク10の他面12をパンチ62側に向けてヒートシンク10をダイ63の上に設置する。
【0051】
このとき、ヒートシンク10のうち突起17を設ける部分である本体部13等をパンチ62とダイ63とによってプレスし、ヒートシンク10のうち突起17を設けない部分である連結片部14の被クランプ部16をパンチ62とダイ63とによってプレスしないように、ダイ63の大きさをヒートシンク10のうち突起17を設ける部分に対応する大きさに変更している。
【0052】
そして、図5(b)、(c)に示すように、ヒートシンク10をパンチ62とダイ63とで挟んでプレスする。これにより、ヒートシンク10の他面12のうちパンチ62の凸部61と対向する領域が凸部61に押されて薄くなり、凸部61と対向しない周縁部が突起17となる。このため、本実施形態で用いるヒートシンク10は、突起17が形成されていない連結片部14の被クランプ部16の板厚が、突起17が形成されている本体部13よりも厚くなっている。
【0053】
このようにして突起17が形成されたヒートシンク10は、図示しないが、凸状のかしめ部15がリードフレーム50の孔に挿入されてかしめられることにより、リードフレーム50と連結される。
【0054】
続いて、図2(b)に示すように、チップ20をヒートシンク10の一面11に搭載し、チップ20とヒートシンク10とを接着する工程を行う。
【0055】
続いて、図2(c)に示すように、リードフレーム50の各リード51とチップ20の各パッドとをボンディングワイヤ42で接続する工程を行う。
【0056】
続いて、図2(d)に示すように、ヒートシンク10の一面11側およびチップ20を樹脂モールドする工程を行う。
【0057】
この工程では、「発明が解決しようとする課題」の欄で説明したように、ヒートシンク10およびチップ20をモールド金型70内に設置し、ヒートシンク10の被クランプ部16を一面11側からクランプ73で抑え、ヒートシンク10の他面12に設けられた突起17をモールド金型70に押し当てながら、モールド金型70内に樹脂を注入し、樹脂を硬化させる。これにより、ヒートシンク10の他面12を露出させながら、ヒートシンク10の一面11側およびチップ20を樹脂モールドする。なお、突起17は完全には潰されず、樹脂モールド後も残っている。
【0058】
そして、樹脂が硬化した後、図2(e)に示すように、リードフレーム50を切断し、リード51を成形する工程を行う。このようにして、本実施形態のモールドパッケージ1が製造される。
【0059】
以上の説明の通り、突起17の形成位置を、図14(b)では、ヒートシンク10の周縁部のほぼ全域としていたのに対して、本実施形態では、図3に示すように、ヒートシンク10の本体部13の周縁部と連結片部14の被クランプ部16を除く周縁部とに変更している。
【0060】
そして、本実施形態では、図5(a)〜(c)に示すように、ヒートシンク10の被クランプ部16を除く部分を、パンチ62とダイ63とで挟んでプレスすることで、ヒートシンク10の本体部13の周縁部と、連結片部14の被クランプ部16を除く周縁部とに、突起17を設けるようにしている。
【0061】
これによれば、ヒートシンク10の被クランプ部16がパンチ62とダイ63とでプレスされないようにしたので、ヒートシンク用の板材全体の厚さを、突起を設けない従来よりも厚くしなくても、被クランプ部16の板厚を、プレス前の板厚のままにでき、すなわち、突起を設けない従来と同じ厚さにできる。
【0062】
したがって、図2(d)に示すように、樹脂モールドする工程において、突起を設けない従来のモールド金型70を使用しても、良好なクランプ性を確保でき、本体部13に設けた突起17の効果を十分に発揮させることができ、本体部13での樹脂バリの発生を抑制することができる。
【0063】
また、本実施形態では、連結片部14の大部分に突起を設けないので、樹脂モールドする工程において、連結片部14の他面12側に樹脂が侵入する場合がある。しかし、本実施形態では、本体部13の外側に突出する連結片部14に被クランプ部16を設け、その被クランプ部16をクランプ73で抑えるので、連結片部14に樹脂が侵入したとしても、樹脂を連結片部14の周縁近傍にとどめて、本体部13まで樹脂が侵入するのを抑制でき、本体部13での樹脂バリの発生を抑制することができる。
【0064】
参考として、図6に、本実施形態の製造方法により実際にモールドパッケージを製造したときのモールドパッケージの底面の模式図を示す。図6に示すように、本実施形態の製造方法によれば、ヒートシンク10の連結片部14の周縁近傍に樹脂バリ31が見られたが、ヒートシンク10の本体部13では、樹脂バリ31がほとんどなく、従来の樹脂バリを除去する工程を省略することができた。
【0065】
また、本実施形態のモールドパッケージ1は、図1(b)に示すように、ヒートシンク10の本体部13の板厚が、パンチ62とダイ63とのプレスによって薄くなり、突起を形成しない従来のものと比較して、本体部13の一面11からモールド樹脂30の上面までの距離が大きくなるため、より厚いチップ20が搭載可能となる。
【0066】
なお、本実施形態では、突起17をヒートシンク10の端に設けたが、突起17をヒートシンク10の端よりも内側に設け、端に段差(凹み)を設けても良い。これにより、ヒートシンク10とモールド樹脂30との接触面積を大きくして、ヒートシンク10とモールド樹脂30との剥離を防止できる。
【0067】
(第2実施形態)
図7(a)、(b)に、それぞれ、本実施形態のヒートシンク10の底面図を示す。
【0068】
第1実施形態のように、ヒートシンク10の本体部13が略長方形の場合、プレスで突起17を形成すると、本体部13の短辺13b側に形成される突起17は、長辺13a側に形成される突起17よりも低くなる傾向がある。
【0069】
そこで、図7(a)、(b)に示すように、ヒートシンク10の本体部13の短辺13b側において、突起17よりもチップ20(本体部13の中心)側に、樹脂浸入抑制用の溝18を設けることが好ましい。この溝18は、ヒートシンク10をエッチングすることにより、形成可能である。これにより、樹脂モールドの工程において、本体部13の短辺13b側での樹脂の浸入をより確実に抑制することができる。
【0070】
(他の実施形態)
(1)上述の実施形態では、図3に示す形状のヒートシンク10を用いていたが、他の形状のヒートシンクを用いても良い。
【0071】
図8(a)、(b)に、それぞれ、他の実施形態におけるヒートシンクの底面図を示す。図8(a)、(b)に示すように、連結片部14の形状や、連結片部14の本体部13に対する位置が第1実施形態と異なるヒートシンク10においても、本発明の適用が可能である。
【0072】
具体的には、図8(a)に示すヒートシンク10では、1つの連結片部14に2つのかしめ部15が設けられており、この2つのかしめ部15よりも外側(本体部から離れた側)に位置する部分が被クランプ部16とされる。
【0073】
図8(b)に示すヒートシンク10では、略長方形の本体部13の四隅にそれぞれ連結片部14が位置しており、1つの連結片部14に1つのかしめ部15が設けられている。そして、この場合においても、連結片部14のかしめ部15よりも外側に位置する部分が被クランプ部16とされる。
【0074】
そして、どちらのヒートシンク10においても、本体部13の周縁部全域と連結片部14のうちかしめ部15よりも内側の周縁部に突起17を設けている。
【0075】
(2)上述の実施形態では、ヒートシンク10の本体部13の周縁部全域と連結片部14のかしめ部15よりも内側の周縁部に突起17を設けていたが、本体部13の周囲を全て囲むように突起17を設け、連結片部14に突起13を設けないようにしても良い。
【0076】
ちなみに、上述の実施形態では、パンチ62のヒートシンク10に対向する面に、1つの凸部61のみを設けていたので、ヒートシンク10の本体部13と連結片部14との境界には、突起17が形成されなかったが、図9に示すように、パンチ62に複数の凸部64、65、66を設けることで、図10に示すように、本体部13の全周囲のみに突起17を形成することもできる。
【0077】
(3)上述の実施形態では、ヒートシンク10の被クランプ部16が連結片部14に設けたられていたが、連結片部14とは別に、本体部13から外側に突出した突出片部を有する平面形状であって、この突出片部の少なくとも一部を被クランプ部とするヒートシンクを用いる場合においても、本発明の適用が可能である。
【0078】
(4)上述の実施形態では、ヒートシンク10の本体部13の平面形状が、略長方形であったが、長方形に限られず、正方形でも良く、円、多角形等の他の形状でも良い。
【0079】
(5)上述の各実施形態を実施可能な範囲で組み合わせても良い。
【符号の説明】
【0080】
1 モールドパッケージ
10 ヒートシンク
11 一面
12 他面
13 本体部
14 連結片部(突出片部)
15 かしめ部
16 被クランプ部
17 突起
18 溝
20 チップ
30 モールド樹脂
50 リードフレーム
62 パンチ
63 ダイ
70 モールド金型
73 クランプ
図1
図2
図3
図4
図5
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