(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5772323
(24)【登録日】2015年7月10日
(45)【発行日】2015年9月2日
(54)【発明の名称】防水層のメンテナンス方法
(51)【国際特許分類】
E04D 5/00 20060101AFI20150813BHJP
E04G 23/02 20060101ALI20150813BHJP
E04D 13/00 20060101ALI20150813BHJP
E04D 13/18 20140101ALI20150813BHJP
H02S 20/24 20140101ALI20150813BHJP
【FI】
E04D5/00 A
E04G23/02 Z
E04D13/00 L
E04D13/18ETD
H02S20/24
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2011-155494(P2011-155494)
(22)【出願日】2011年7月14日
(65)【公開番号】特開2013-19239(P2013-19239A)
(43)【公開日】2013年1月31日
【審査請求日】2013年12月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000198787
【氏名又は名称】積水ハウス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000947
【氏名又は名称】特許業務法人あーく特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤家 充朗
(72)【発明者】
【氏名】盛本 賢
(72)【発明者】
【氏名】越宗 篤史
【審査官】
五十幡 直子
(56)【参考文献】
【文献】
特開2010−236177(JP,A)
【文献】
特開2008−174998(JP,A)
【文献】
特開2004−027843(JP,A)
【文献】
特開2006−200279(JP,A)
【文献】
特開2004−190295(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04D 5/00
E04D 13/00
E04D 13/18
E04G 23/02
H02S 20/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
防水下地面上に複数個のシート固定具が適宜間隔を設けて固定され、該シート固定具を覆うようにして前記防水下地面上に合成樹脂製の防水シートが敷設され、前記各シート固定具と前記防水シートとの重合箇所が接着されることにより防水層が形成され、
前記防水シートにおける前記シート固定具との重合箇所上に、平坦な底面を有する複数個の土台固定金具が載置され、該底面が接着剤を介して前記防水シートに接着され、
前記土台固定金具を複数個、連繋するようにして、適宜の屋上設置物を支持するための土台レールが前記土台固定金具に取り付けられることにより、前記防水層上に屋上設置物を据え付けるための土台が形成された陸屋根における前記防水層のメンテナンス方法であって、
前記土台固定金具の底面を前記防水シートの上面に接着するための前記接着剤には、加熱によって接着力を喪失するように調整した変成シリコーン系弾性接着剤を用いておき、
前記防水層の更新に際しては、あらかじめ前記屋上設置物や、その支持部材及び前記土台レールを撤去した上で、
前記土台固定金具の上方からその底面に対して電磁誘導加熱を施すことにより、前記土台固定金具と前記防水シートとを接着している前記変成シリコーン系弾性接着剤の接着力を喪失させて前記土台固定金具を前記防水シートから剥取した後、
前記防水シートを増し貼り又は貼り替えることを特徴とする防水層のメンテナンス方法。
【請求項2】
請求項1に記載の防水層のメンテナンス方法において、
前記土台固定金具は、平面視略矩形の底板部と、その対向側縁から起立する一対の脚板部とを備えた上向き開口溝形断面の短尺金属部材からなり、前記両脚板部には、底板部と平行に延びる土台レール連結用長孔が形成される一方、
前記土台レールは、前記土台固定金具よりも僅かに幅広の天板部と、その対向側縁から垂下する一対の側板部とを備えた下向き開口溝形断面の長尺金属部材からなり、前記両側板部には、複数個の土台連結用丸孔が材長方向にわたり適宜間隔で形成され、
前記土台レールが前記土台固定金具に上方から被装され、前記土台レール連結用長孔と前記土台連結用丸孔とがボルトナット綴着されたことを特徴とする防水層のメンテナンス方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の防水層のメンテナンス方法において、
前記防水シートにおける前記シート固定具との重合箇所上に、前記防水シートと同材質のシート材からなる補強パッチが接着され、この補強パッチの上面に前記土台固定金具の底面が接着されたことを特徴とする防水層のメンテナンス方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防水シートによる防水層が施工され
、その上に太陽電池モジュールその他の屋上設置物を据え付けるための
土台が設けられた陸屋根における前記防水層のメンテナンス方法に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽電池モジュールを平坦な設置面上に設置するに際しては、例えば特許文献1に開示されているように、鉄筋コンクリート製の基礎構造体を設置面上の複数箇所に構築し、それらの基礎構造体上に鉄骨製の架台を組んで、その架台上に太陽電池モジュールを所定の勾配になるように設置する構造がよく採用されている。
【0003】
また、特許文献2に開示されているように、太陽電池モジュールを保持する鉄骨架台の四隅に杭状の支柱を打ち込んで、架台を設置面に固定する構造も公知である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−35849号公報
【特許文献2】特開平5−3335号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
例えば事務所ビルや中高層住宅等、陸屋根形式で施工される建物の屋上に、前記従来のようにして太陽電池モジュール、あるいはそれに類する様々な屋上設置物を据え付けようとすると、屋上設置物を支えるための基礎構造体や支柱を、建物本体と構造的に結合させた状態で設置する必要がある。新築の建物であれば、建物本体を設計・施工する際に、予め屋上設置物の位置や重量に合わせて屋根梁等を設けておき、その屋根梁等に基礎構造体や支柱を結合させることが可能であるが、場合によってはその屋根梁等が、建物全体としては過剰な構造耐力要素となるおそれもある。また、既築の建物の屋上に後から屋上設置物を設置する場合には、相当の手間やコストをかけて、基礎構造体や支柱を建物本体に施工しなければならなくなる。
【0006】
ところで、陸屋根形式の建物の屋上には通常、合成樹脂製の防水シートを張設するなどして水密的な防水層が施工される。しかし、屋上設置物を支えるための基礎構造体や支柱を、前述のように建物本体に結合させて設けるとなると、該支柱等が屋上の防水層を貫通することは避けられない。その場合、該貫通箇所周りの防水納まりが複雑になって、施工手間や材料コストが嵩んでしまう。さらに、防水層の定期的なメンテナンスにおいても、該貫通箇所周りの面倒な施工が必要になることに加え、設置された屋上設置物が屋上の作業スペースを圧迫して、メンテナンスの作業性を一層、低下させるおそれもある。
【0007】
本発明は、前述のような事情に鑑みてなされたものであって、防水シートによる防水層が施工される各種建物の陸屋根上に様々な屋上設置物を設けるにあたり、該屋上設置物を据え付けるための土台を、建物本体に対して極力、構造的負担を与えないように、かつ、防水納まりを極力、複雑化することのないように配慮しつつ、安定的に設置
した上で、その防水層の経年的なメンテナンスにあたり、前記土台を容易に撤去して、防水シートを効率良く更新することのできる防水層のメンテナンス方法を提供するものである。
【0009】
なお、本発明における「屋上設置物」とは、前述のような太陽電池モジュールのほか、太陽熱温水器、屋上緑化装置、電気設備、給水設備、空調設備、保守点検用設備その他の各種設備機器類、広告塔、あるいはそれらに類する工作物全般を包含するものとする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の
防水層のメンテナンス方法は、防水下地面上に複数個のシート固定具が適宜間隔を設けて固定され、該シート固定具を覆うようにして前記防水下地面上に合成樹脂製の防水シートが敷設され、前記各シート固定具と前記防水シートとの重合箇所が接着されることにより防水層が形成され
、前記防水層上に適宜の屋上設置物を据え付けるための土台
が形成された陸屋根に適用されるものである。
【0011】
前記陸屋根において、前記シート固定具と前記防水シートとの重合箇所を接着する手段としては、公知一般の接着剤による接着のほか、防水シートの材質と同等又は防水シートの材質に対して親和性の高い合成樹脂材料からなる被膜を予めシート固定具の上面に形成しておき、該被膜を有機溶剤等によって溶融させた上に防水シートを敷設して圧着する方法を採用することができる。
【0012】
また、導電層を設けたシート固定具の上面に熱可塑性を有するホットメルト接着剤を積層しておき、防水シートを敷設した後、シート固定具との重合箇所を防水シートの上から電磁誘導加熱装置(高周波加熱装置)を用いて加熱することにより、ホットメルト接着剤を溶融させて防水シートを接着する公知の方法を採用することもできる。
【0013】
さらに、本発明に係る
防水層のメンテナンス方法は、前記防水シートにおける前記シート固定具との重合箇所上に、平坦な底面を有する複数個の土台固定金具が載置され、該底面が接着剤を介して前記防水シートに接着され、前記土台固定金具を複数個、連繋するようにして、
適宜の屋上設置物を支持するための土台レールが前記土台固定
金具に取り付けられ
ていることを
前提とする。
【0014】
底面の平坦な土台固定金具を防水シートの上面に接着することにより、防水層を破らないで土台を設けることができる。さらに、土台固定金具の接着位置を、シート固定具と防水シートとの重合箇所に重ねることにより、土台に作用する外力を、土台固定金具を介して直接、陸屋根の下地に伝達させることができる。これらの構成により、土台が構造的に安定した状態で設置されるとともに、防水シートの損傷や劣化が生じにくくなり、防水層のメンテナンスも省力化される。
【0015】
前記土台固定金具の構成としては、平面視略矩形の底板部と、その対向側縁から起立する一対の脚板部とを備えた上向き開口溝形断面の短尺金属部材からなり、前記両脚板部には、底板部と平行に延びる土台レール連結用長孔が形成されたものとすることができる。
【0016】
また、前記土台固定金具に対応する前記土台レールの構成としては、前記土台固定金具よりも僅かに幅広の天板部と、その対向側縁から垂下する一対の側板部とを備えた下向き開口溝形断面の長尺金属部材からなり、前記両側板部には、複数個の土台連結用丸孔が材長方向にわたり適宜間隔で形成され、この土台レールが前記土台固定金具に被装され、前記土台レール連結用長孔と前記土台連結用丸孔とがボルトナット綴着されるものとすることができる。
【0017】
なお、これら土台固定金具及び土台レールの構成における「短尺」及び「長尺」との記載はあくまでも相対的なものであって、特にその長さを厳密に規定するものではないが、実用的な目安として、短尺部材である土台固定金具の長さは数cmないし数十cm、長尺部材である土台レールの長さは数十cmないし数mを想定している。
【0018】
そして、本発明に係る防水層のメンテナンス方法は、まず、前記土台固定金具を前記防水シートに接着するための接着材として
、加熱によって接着力を喪失するように調整した変成シリコーン系弾性接着剤を
用いておくことを特徴とする。
【0019】
建築工事分野等に利用される一般的な変成シリコーン系弾性接着剤は、変成シリコーンポリマーに充填材や硬化触媒等を加えて、常温下で適度の流動性及び初期粘着力を発揮するように調整した接着剤であり、空気中の湿気により硬化して、硬化後にも高い強度と適度のゴム弾性を保持する。本発明においては、この種の変成シリコーン系弾性接着剤を、とくに300℃程度まで加熱したときに、変成シリコーンの分子結合が分解し、充填剤の酸化劣化と炭化が起こって接着力を喪失するように調整して用いる。
【0020】
さらに、本発明に係る防水層のメンテナンス方法は、前記防水層を構成する防水シートの更新にあたり、
あらかじめ前記屋上設置物や、その支持部材及び前記土台レールを撤去した上で、前記土台固定金具の上方からその底面に対して電磁誘導加熱を施すことにより、
前記土台固定金具と
前記防水シートとを接着している
変成シリコーン系弾性接着剤
の接着力を喪失させて前記土台固定金具を前記防水シートから剥取した後、前記防水シートを増し貼り又は貼り替えることを特徴とする。これにより、土台固定金具を容易に取り除くことができる
ので、防水層のメンテナンス作業における土台の撤去作業が大幅に省力化される。
【0021】
また、前記
土台固定金具を前記防水シートに接着する際には、前記防水シートにおける前記シート固定具との重合箇所上に、前記防水シートと同材質のシート材からなる補強パッチが接着され、この補強パッチの上面に前記土台固定金具の底面が接着されるようにしてもよい。かかる補強パッチを、土台固定金具の底面よりもやや大きく切寸して防水シートに重ね貼りし、この補強パッチを介して土台固定金具を接着する。こうすれば、防水シートの上面に直接、土台固定金具を接着する場合に比べて、土台固定金具の底面が防水シートの表面を傷めるリスクを低減して、防水層の長寿命化を図ることができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明の
防水層のメンテナンス方法が適用される陸屋根は、防水下地面上にシート固定具を介して防水シートが敷設され、シート固定具と防水シートとの重合箇所上に土台固定金具
が接着
され、その土台固定金具に土台レール
が取り付け
られているので、防水層を構成する防水シートの面的連続性を保持したまま、屋上設置物を支持するための土台
が、屋上にしっかりと、かつ簡単に設置
される。風圧等によって屋上設置物に作用する外力は、シート固定具と防水シートとの重合箇所から土台固定金具を介して陸屋根の下地に直接、伝達される。
【0027】
そして、このような土台構造によれば、防水シートを傷めることなく、狭い間隔で多数の土台固定金具を配置することができるので、屋上設置物を支持する架台等の断面寸法を簡素化しながら、屋上設置物の設置状態を安定的かつ強固なものとすることができる。屋上設置物の脚元周りの防水納まりが単純化されることにより、その施工やメンテナンスも省力化される。既築の建物に屋上設置物を設置する場合でも、防水層を破らずに施工できるので、手間やコストがかからない。
【0028】
そして、本発明の防水層のメンテナンス方法によれば、土台固定金具と防水シートとの接着に、加熱によって接着力を喪失するように調整した変成シリコーン系弾性接着剤を用いてい
るので、電磁誘導加熱を利用して
土台固定金具の底面を加熱することにより、防水シートを損傷することなく、土台固定金具を容易に防水シートから剥取・撤去することができる。これにより、防水層の経年的なメンテナンス作業が格段に省力化される。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】本発明が実施される陸屋根の防水層の一例を示す縦断面図である。
【
図2】
図1の防水層の上に土台固定金具が取り付けられる構造を示す縦断面図である。
【
図3】
図2の土台固定金具に土台レールを取り付けて構成される屋上設置物の土台構造の一例を示す側面図である。
【
図4】
図3の土台構造を、
図3に直交する方向から見た側面図である。
【
図5】
図3及び
図4の土台構造における部材の平面的な配置を示す上面図である。
【
図6】前記土台構造から土台固定金具を剥取する方法を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の実施の形態について、図を参照しつつ説明する。
【0031】
[防水層]
図1は、本発明が実施される陸屋根の防水層の一例を示す。例示の陸屋根においては、軽量気泡コンクリートパネルや鉄筋コンクリート等からなる屋根スラブ11の上面に、防水モルタル層12を施工するなどして防水下地面1が形成され、その防水下地面1上に、複数個のシート固定具2を介して防水シート3が敷設される。
【0032】
シート固定具2は、平面視略円形、或いは適宜の多角形や短冊形をなす公知の薄板状部材であって、陸屋根の防水施工に関わる分野では「ディスク」とも称される。シート固定具2の上面は概ね平坦で、該上面の一部には水抜き用の凹溝(図示せず)等が必要に応じて形成されるとともに、中心部近傍にはアンカー固定用孔(図示せず)が形成されている。シート固定具2の材質としては、鋼板その他の金属板や、該金属板の表面に合成樹脂材料からなる被膜を積層したものがよく利用されるが、合成樹脂材料等からなる薄板体の表面に導電性材料からなるフィルムや被膜を積層したものなども公知であり、本発明においてはそれらを特に限定はしない。
【0033】
このシート固定具2が、
図5に示すように、屋上設置物9の大きさや重さ等に応じて設定される所定のモジュールに沿って、例えば格子状に配置され、アンカー釘、アンカープラグ、アンカーボルトその他の埋込固定具4を介して、或いは適宜の接着剤を介して、防水下地面1に固定される。
【0034】
防水シート3は、公知の合成樹脂製長尺シート材料であって、例えばポリ塩化ビニルや塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体その他の塩化ビニル系樹脂、或いはポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体その他のポリオレフィン系樹脂等によって形成される。防水シート3の芯部または裏面には、必要に応じて補強繊維層(図示せず)等が設けられていてもよい。この防水シート3が、シート固定具2を覆うようにして防水下地面1上に敷設され、シート固定具2と防水シート3との重合箇所が接着される。
【0035】
シート固定具2と防水シート3との接着手段としては、防水シート3の材質に対して親和性の良い公知の接着剤を利用することができるほか、例えば、塩化ビニル樹脂被膜鋼板によって形成したシート固定具2の被膜を有機溶剤で溶融させた上に、塩化ビニル系樹脂からなる防水シート3を敷設して、それらの重合箇所を圧着(溶着)する方法によることもできる。
【0036】
或いはまた、
図1に示したように、熱可塑性を有するホットメルト接着剤51を用いることもできる。ホットメルト接着剤51としては、塩化ビニル系樹脂からなる防水シートに対しては、それと同様の塩化ビニル系接着剤を、また、ポリオレフィン系樹脂からなる防水シートに対しては、それと同様のポリオレフィン系接着剤を、好適に利用することができる。かかるホットメルト接着剤51を予めシート固定具2の上面に一体的に積層しておき、その上に防水シート3を敷設する。防水シート3の上から電磁誘導加熱(高周波加熱)装置6を用いてシート固定具2の導電層を発熱させ、その熱によってホットメルト接着剤51を溶融させることにより、防水シート3を傷めることなく、効率的に溶着作業を行うことができる。電磁誘導加熱装置6についても公知のものが利用できるが、加熱効率の点では周波数の高いタイプが好ましく、また、作業性の点では誘導コイルと電源制御部とを別体にしたものがコンパクトで使いやすい。
【0037】
防水シート3同士の辺縁部が重なり合う箇所も、適宜公知の接着手段を利用して接合される。こうして、防水シート3に切れ目のない、面的に連続した防水層が形成される。
【0038】
[土台構造]
前述のようにして準備された防水層の上に、屋上設置物を据え付けるための土台が設けられる。
図2〜
図5は、
図1の防水層の上に設けられる屋上設置物の土台構造の一実施形態を示す。
【0039】
例示形態では、シート固定具2と防水シート3との重合箇所上に、該重合箇所を補強するための補強パッチ31が重ねて接着される。この補強パッチ31は、防水シート3の材質と同一、又は防水シート3の材質と特に親和性の高い適宜の材質からなるシート材を、後述する土台固定金具7の底面寸法よりもひと回り大きく切寸したものである。補強パッチ31を防水シート3に接着する手段としては、適宜の接着剤を利用することができるほか、両者が同一の材質である場合には、接着面に溶剤を塗布して圧着(溶着)することにより両者を一体化する方法を採用することもできる。
【0040】
土台は、複数個の土台固定金具7と、複数本の土台レール8とを組み合わせて構成される。例示の土台固定金具7は、上向きに開口する溝形断面の短尺金属部材からなり、表裏平坦な略矩形の底板部71と、その対向側縁から起立する一対の脚板部72とを備えている。両脚板部72の上部寄りには、底板部71と平行に延びる土台レール連結用長孔73が、それぞれ一ヶ所ずつ形成されている。
【0041】
この土台固定金具7が、補強パッチ31の上に載置され、底板部71の底面が補強パッチ31に接着される。土台固定金具7を防水シート3の上面に直接、接着すると、土台に大きい外力が作用した場合に、土台固定金具7の底面が防水シート3の表面を損傷するおそれもあるが、こうして防水シート3と土台固定金具7との間に補強パッチ31を介装させることにより、防水シート3の表面を損傷から保護して、防水層の長寿命化を図ることができる。
【0042】
土台固定金具7の接着手段について
、本発明では、防水層のメンテナンスに特に配慮
し、加熱によって接着力を喪失するように調整した変成シリコーン系弾性接着剤52を用い
る。この変成シリコーン系弾性接着剤52は、土台固定金具7が概ね300℃程度にまで加熱されたときに、その接着面付近における変成シリコーンの主鎖が切れて分解し、充填剤の酸化劣化と炭化が起こって接着性を喪失するように調整されている。
【0043】
土台レール8は、下向きに開口する溝形断面の長尺金属部材からなり、平坦な天板部81と、その対向側縁から垂下する一対の側板部82とを備えている。両側板部82の対向間隔は、土台固定金具7の幅よりも僅かに大きい。両側板部82には、複数個の土台連結用丸孔83が、材長方向にわたり適宜間隔で形成されている。この土台レール8が、複数個の土台固定金具7を連繋するようにして土台固定金具7に被せられる。土台レール8の両側板部82の間に土台固定金具7が挟み込まれ、土台レール連結用長孔73と土台連結用丸孔83とがボルトナット84で綴着される。例示の形態では、
図5に示したように、複数本の土台レール8が略等間隔で平行に配置されている。
【0044】
こうして固定された土台レール8には、屋外設置物(例示形態では太陽電池モジュール)9を据え付けるための支持部材が適宜、取り付けられる。例示の形態では、土台レール8の天板部81に略L字形のブラケット91が適宜間隔で取り付けられ、それらのブラケット91を介して、土台レール8と交差する方向にアングル材等からなる架台フレーム92が取り付けられている。これらの支持部材は、屋外設置物9の種類や形状、構造等に応じて適宜、設計されるものである。
【0045】
[土台施工方法]
前述のように構成される土台構造の施工手順をまとめると、次の通りである。
(1)陸屋根の防水下地面1上にシート固定具2を固定する。シート固定具2と防水シート3との接着にホットメルト接着剤51を利用する場合は、予めシート固定具2の上面にホットメルト接着剤51を積層しておく。そのシート固定具2を覆うようにして、防水下地面1上に合成樹脂製の防水シート3を敷設し、シート固定具2との重合箇所を接着する。
(2)シート固定具2と防水シート3との重合箇所上に補強パッチ31を接着する。さらに、その上に土台固定金具7を配置し、土台固定金具7の底面を防水シート3の上面に、加熱によって接着力を喪失するように調整した変成シリコーン系弾性接着剤52を介して固定する。
(3)複数個の土台固定金具7を連繋するようにして、土台固定金具7に土台レール8を被せる。
(4)土台レール8を位置決めして、土台固定金具7にボルトナット綴着する。
【0046】
こうして、前述した土台構造を効率よく施工することができる。
【0047】
[メンテナンス方法]
前述のような屋上設置物の土台構造を具備する陸屋根において、土台固定金具7が、加熱によって接着力を喪失するように調整した変成シリコーン系弾性接着剤52を介して防水層上に接着されている
ので、防水層の経年的なメンテナンスにあたり、以下のようにして防水シート3を更新することができる。
【0048】
すなわち、防水シート3の更新に先立ち、屋上設置物や、その支持部材及び土台レール8をできる限り解体して撤去しておく。そして、
図6に示すように、防水シート3又は補強パッチ31上に接着状態で残されている土台固定金具7に上方から電磁誘導加熱装置6を当てがい、土台固定金具7の底板部71を発熱させる。電磁誘導加熱装置6は、ホットメルト接着剤51を用いて防水シート3とシート固定具2とを接着する際に利用されるものと同様のものである。
【0049】
本発明において用いる変成シリコーン系弾性接着剤は、土台固定金具7が概ね300℃程度にまで加熱されたときに、その接着面付近における変成シリコーンの主鎖が切れて分解し、充填剤の酸化劣化と炭化が起こって接着性を喪失するように調整されている。かかる作用を利用して、土台固定金具7を容易に剥取することができる。なお、このとき、電磁誘導による加熱作用は、下層のホットメルト接着剤51やシート固定具2にまでは及ばない。防水シート3は伝導熱によって多少、軟化したり、伸びて皺になったりするが、メンテナンスの面では特に差し支えない。
【0050】
土台固定金具7が撤去されたら、続いて、従来公知の方法等により防水シート3を更新する。通常は、旧い防水シート3の上に新しいシート固定具を取り付け、その上に新しい防水シートを増し貼りする。事情によっては、旧い防水シート3を剥がして、新しい防水シートを同様の方法で貼り直すこともできる。
【0051】
こうして、防水層のメンテナンスにおいて特に面倒な土台の解体撤去作業を、きわめて効率的に実施することができる。
【符号の説明】
【0052】
1 防水下地面
2 シート固定具
3 防水シート
31 補強パッチ
51 ホットメルト接着剤
52 変成シリコーン系弾性接着剤
6 電磁誘導加熱装置
7 土台固定金具
71 底板部
72 脚板部
73 土台レール連結用長孔
8 土台レール
81 天板部
82 側板部
83 土台連結用丸孔
9 屋上設置物