(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記回転スイッチの軸方向への移動が3段階以上可能に構成され、前記回転スイッチの戻し状態と回転スイッチの引き状態が隣接する段になっていることを特徴とする請求項2または請求項3に記載の電子時計。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0013】
図1は、本発明の実施形態に係る電子時計100の外観を示す図である。電子時計100は、時計ケース1と文字板7と秒針31、分針32、時針33および回転スイッチであるりゅうず10を備えている。文字板7上で3本の指針(秒針31、分針32、時針33)が回転して、時刻表示を行う。ここで、文字板7と秒針31、分針32、時針33が表示部である。
【0014】
図2は、本発明の実施形態に係る電子時計100の内部構成を示すブロック図である。この電子時計100は、複数の指針(秒針31、分針32、時針33)と、秒針31を運針する第1モータ34と、分針32および時針33を運針する第2モータ35と、第1モータ34の回転運動を秒針に伝達するとともに、第2モータ35の回転運動を分針32および時針33に伝達する輪列機構36と、第1モータ34をステップ駆動する駆動回路37と、第2モータ35をステップ駆動する駆動回路38と、りゅうず10を操作することにより、りゅうず軸方向の位置情報とりゅうず回転情報を出力する検出部52と、標準電波を受信するアンテナANと、標準電波からタイムコードを検波する電波受信部41と、計時のために一定周期の信号を生成する発振回路44および分周回路45と、計時を行う計時回路46と、電子時計全体の制御を行うCPU(中央演算処理装置)40と、CPU40に作業用のメモリ空間を提供するRAM43(Random Access Memory)と、CPU40が実行する制御プログラムや制御データが格納されたROM42(Read Only Memory)と、アラーム音を出力するためのブザー回路47およびスピーカ48等を備えている。
【0015】
検出部52は、りゅうずの回転を検出する磁気センサ15および磁気センサ15の検出信号を処理してりゅうずの回転方向および回転角度を算出する回転検出部50と、りゅうずを戻し・引いた際の段位置を検出するスイッチ部51(接触バネ部22a、接点部25a、25b)を備えている。
【0016】
ROM42には、駆動回路37、38にパルス信号を出力して指針31〜33を回転させ、時刻を表示する時刻表示モード処理のプログラム、標準電波による時刻修正とそれに付随した処理とを行う「標準電波による修正処理」のプログラム、ならびに、「りゅうず引き/戻し処理」、「りゅうず回転処理」のプログラムなどが格納されている。
【0017】
図3は電子時計100の部分断面図であって、りゅうず部6およびその近傍を示した図である。
図4は、
図3におけるりゅうず部6を回路基板25側から見た拡大裏面図である。
図5は、
図4において回路基板を取り外した状態を示した要部の拡大裏面図である。
図6は、
図4のA−A矢視における拡大断面図である。
図7は、
図5の状態で巻真を第2の位置に引き出した状態を示した要部の拡大裏面図である。
図8は、
図7のB−B矢視における拡大断面図である。
図9は
図5において地板にオシドリ、オシドリばね、スイッチ板を配置した状態を示した要部の拡大裏面図である。
図10は
図9のスイッチ板およびこれに対応する箇所の回路基板を示し、(a)は
図9のE−E矢視における要部の拡大断面図、(b)はその回路基板の接点部を示した図である。
図11は、磁石部材の拡大断面図を示した図である。
【0018】
電子時計100の時計ケース1の上部開口部には、時計ガラス2がパッキン2aを介して取り付けられており、この時計ケースの下部には、裏蓋3が防水リング3aを介して取り付けられている。時計ケース1の内部には、
図3に示すように時計モジュール4が中枠5によって設けられている。また、文字板7の上面にはリング状の見切部材8が設けられている。
【0019】
りゅうず部6は、
図3に示すように、時計ケース1側壁部に回転可能に挿入されて外部に突出するりゅうず10と、このりゅうず10に取り付けられて時計モジュール4内の地板11に軸方向に移動操作可能で且つその軸を中心とする回転方向にも回転操作可能に設けられた巻真12と、この巻真12の軸方向における移動位置を規制する位置規制部材13と、巻真12にスライド可能に設けられて巻真12と共に回転する磁石部材14と、この磁石部材14の円周方向に位置して磁石部材14の回転を検出する磁気センサ15等で構成されている。
【0020】
巻真12は
図3に示すように、ほぼ丸棒状に形成され、その一端部にりゅうず10が取り付けられ、時計ケース1の側壁部に設けられた貫通孔1aに外部から挿入されている。また、巻真12は、その他端部が地板11に軸方向に移動操作可能で、且つその軸を中心とする回転方向にも回転操作可能に取り付けられている。これにより、巻真12は、りゅうず10を引き出し方向に操作すると、これに伴って軸方向に移動し、また竜頭10を回転方向に操作すると、軸回りに回転するように構成されている。
【0021】
また、この巻真12は、
図5〜
図8に示すように、そのほぼ中間部に小径の段差凹部12aが環状に設けられており、この段差凹部12aにおける時計モジュール4の内部側に位置する先端側(
図6では左端側)には、
図6および
図8に示すように、後述する磁石部材14をスライド可能に取り付けるための、断面形状が四角形状の角棒状に形成された係合軸部16が設けられている。
【0022】
さらに、この巻真12の内部側に位置する係合軸部16の先端部(
図6では左端部)には、
図6および
図8に示すように、小径の軸部12bが設けられている。この軸部12bは、丸棒状に形成され、地板11に設けられたガイド穴11a内に軸方向に移動可能で且つその軸を中心に回転可能な状態で挿入されている。これにより、巻真12は、
図6に示すように、軸方向(矢印X方向)に押し込まれて戻された第1の位置(零段の位置)と、
図8に示すように、軸方向(矢印Y方向)に引き出された第2の位置(1段の位置)とに移動するように構成されている。
【0023】
位置規制部材13は、
図5〜
図9に示すように、オシドリ20、オシドリばね21、スイッチ板22、および押え板23を備えている。オシドリ20は、
図5に示すように、平板状に形成され、地板11に設けられた支持軸17に回動可能に取り付けられ、巻真12の軸方向への移動に応じて支持軸17を中心に回動するように構成されている。
【0024】
すなわち、オシドリ20には、
図9に示すように、巻真12の段差凹部12a内に配置される連動アーム部20aと、オシドリばね21によって弾力的に位置規制される連動ピン20bと、スイッチ板22をオシドリ20と共に回動させる連結ピン20cとが設けられている。これにより、オシドリ20は、巻真12が軸方向に移動すると、巻真12の段差凹部12aの移動に伴って連動アーム部20aが揺動することにより、支持軸17を中心に回動するように構成されている。
【0025】
オシドリばね21は、
図9に示すように、板ばねであり、オシドリ20の近傍に位置する箇所の地板11に固定され、オシドリ20の連動ピン20bを弾力的に保持して位置規制することにより、オシドリ20の回動位置を規制して巻真12の軸方向の移動位置を規制するように構成されている。すなわち、このオシドリばね21は、
図9に示すように、その先端部にオシドリ20の連動ピン20bを弾力的に保持する位置規制部24が設けられている。
【0026】
この位置規制部24には、
図9に示すように、連動ピン20bを弾力的に係止する複数の係止凹部24a、24bが設けられている。これにより、オシドリばね21は、
図6に示すように、巻真12が押し込まれて戻された第1の位置状態のときに、
図5、
図9に示すように、オシドリ20の連動ピン20bを位置規制部24の一方の係止凹部24aで弾力的に係止することにより、巻真12を第1の位置(零段の位置)に規制するように構成されている。
【0027】
また、このオシドリばね21は、
図8に示すように、巻真12が軸方向に引き出された第2の位置(1段の位置)に移動するときに、
図7に示すように、オシドリ20が支持軸17を中心に回動し、これに伴って連動ピン20bが回転移動して位置規制部24を弾性変形させ、この弾性変形した位置規制部24の他方の係止凹部24bがオシドリ20の連動ピン20bを弾力的に係止することにより、巻真12を第2の位置(1段の位置)に規制するように構成されている。
【0028】
スイッチ板22は、
図9、
図10に示すように、金属板からなり、オシドリ20と共に地板11の支持軸17に回転可能に取り付けられている。このスイッチ板22には、
図10(a)に示すように、後述する回路基板25の上面に接触して摺動する接触ばね部22aが延設されている。延設されている方向は、
図9に示すように、オシドリ20の連動アーム部20aと反対側に向けられている。このスイッチ板22の所定箇所には、
図9に示すように、オシドリ20の連結ピン20cが挿入する挿入孔22bが設けられている。
【0029】
これにより、スイッチ板22は、
図10(a)に示すように、接触ばね部22aの先端部が回路基板25の上面に接触した状態で、支持軸17を中心にオシドリ20と共に回転移動し、この接触ばね部22aの先端部が回路基板25の上面に設けられた接点部25a、25bに対する接触位置を切り替えるように構成されている。押え板23は、
図5、
図7に示すように、オシドリばね21と共に地板11にねじ23aによって取り付けられて、オシドリばね21およびスイッチ板22を押え付けることにより、オシドリ20を地板11に押し付けるように構成されている。
【0030】
ここで、巻真12の軸方向の位置と、スイッチ板22の接触ばね部22aの状態との関係を説明する。
【0031】
巻真12が押し込まれて戻された状態(第1の位置:零段位置)では、既述のように、オシドリ20の連動ピン20bは位置規制部24の一方の係止凹部24aで弾力的に係止され、
図5、
図9のように、スイッチ板22が支持軸17を中心にオシドリ20と共に時計回りに回動した状態になり、
図10(b)にて接触ばね部22aが接点部25aに移動して接触する。
【0032】
一方、巻真12が軸方向に引き出された状態(第2の位置:1段位置)では、オシドリ20の連動ピン20bは位置規制部24の他方の係止凹部24bで弾力的に係止され、
図7にてスイッチ板22が支持軸17を中心にオシドリ20と共に反時計回りに回動した状態になり、
図10(b)にて接触ばね部22aが接点部25bに移動して接触する。
【0033】
図11は、磁石部材14をその中心軸に直交する面で切断した状態を示している。巻真12にスライド可能に設けられた磁石部材14は、
図6、
図8、
図11に示すように、リング状の磁石18と、この磁石18を包む樹脂部19とからなり、全体がほぼ円形板状に形成され、その中心部に巻真12の係合軸部15が挿入する断面四角形状の係合孔18aが設けられ、
図6、
図8に示すように、外周面の一部が地板11に設けられた磁石押え部26によって押え付けられた構成になっている。
【0034】
これにより、磁石部材14は、
図6、
図8に示すように、その係合孔18aに巻真12の係合軸部16がスライド可能に挿入し、この状態で巻真12が軸方向に移動しても、磁石押え部26によって押えられていることにより、巻真12に対し相対的に移動して常に一定の位置に保持され、この状態で巻真12と共に回転するように構成されている。
【0035】
一方、磁気センサ15は、
図3、
図6および
図8に示すように、地板11の裏面(
図6では下面)に設けられた回路基板25の下面における磁石部材14と対応する箇所に設けられている。これにより、磁気センサ15は、回路基板25を間に挟んで磁石部材14と対応している。この磁気センサ15は、2つの磁気検出素子、例えば2つの磁気抵抗素子15a、15b(MR素子:Magneto Resistance 素子)と、出力をデジタル化するICとを1パッケージに収めたもので、2つの磁気抵抗素子15a、15bで磁石部材14の回転に伴う磁界の変化を検出して、高い(ハイ:H)、低い(ロウ:L)の2種類の検出信号を出力するように構成されている。
【0036】
すなわち、この磁気センサ15は、2つの磁気抵抗素子15a、15bの設置位置が異なっていることにより、磁石部材14の回転に伴う磁界の変化を検出する際、出力に位相差が生じ、この位相差によって2種類の検出信号を出力することにより、磁石部材14の回転を検出するように構成されている。この場合、2種類の検出信号は、回転検出部50で解析されて、磁石部材14の回転角度および回転方向を算出する。また、磁気センサ15の周囲には、
図3、
図6および
図8に示すように、耐磁板27が配置されている。
【0037】
次に、上記のように構成された電子時計100のりゅうず引き/戻し処理に関する動作について、
図12から
図16を参照して説明する。
【0038】
図12は、りゅうず10を操作して時刻表示機能から、他機能状態表示である、標準電波受信機能(以下、標準電波受信モードという)に移行させ、受信設定のON/OFFを切り替える動作についての従来の例を示す説明図である。
【0039】
ここで、標準電波の受信設定のON状態とは、標準電波受信機能が設定されて有効になっている状態である。この状態では、たとえば、1日に1度標準電波を受信して自己の時刻を修正する。具体的には、CPU40はROM42に格納された「標準電波による修正処理」のプログラムを実行して、所定時刻(例えば午後12時)になった場合に電波受信部41を起動させて標準電波を受信してタイムコードを取り込む電波受信処理、取り込んだタイムコードを判別して計時回路47の計時データを修正する自動時刻修正処理を行う。一方、標準電波の受信設定のOFF状態とは、標準電波受信機能が解除されて無効になっている状態である。
【0040】
図12(A)はりゅうず10が戻し状態であり、指針は「第1の表示状態」(時刻表示機能)を示している。すなわち、秒針31、分針32、時針33は、ともに時刻を示している。
図12(B)は、りゅうず10を引いた状態(りゅうず引き状態)を示す。この場合、秒針5は、「第2の表示状態」である標準電波受信モードを表示する。
図12(B)では、秒針31が、文字板7の外周の「ON」文字を指針している。これは、標準電波受信設定が有効(以下「ON」状態という)であることを示している。一方、分針32、時針33は時刻表示を継続している。
【0041】
図12(B)において、使用者が、りゅうず10を例えば時計回転方向に90度回転させると、標準電波受信設定が有効(ON状態)から無効(以下「OFF」状態という)へ設定変更され、秒針31が32ステップ/秒の速度でON位置からOFF位置に変位する。
図12(C)は秒針31がOFF位置に変位した後の状態を示す。
【0042】
図12(C)において、使用者が、りゅうず10を押し込む場合を説明する。りゅうず10を押し込むと、
図12(D)に示すように、「第1の表示状態」(時刻表示機能)に戻る。すなわち、秒針が、指示されていた設定値(
図12(C)ではOFF位置)から現在の秒を示す位置に32ステップ/秒の速度で変位する。
【0043】
ところが、りゅうず10を押し込んで戻すときに誤って、りゅうず10が回転してしまうと、標準電波受信設定がOFFからONに変わってしまう。特に、ねじロックりゅうずの場合、一度に操作しようとして、回しながら押してしまうことがある。その場合においても、
図12(D)に示すように秒針は、「第2の表示状態」(標準電波受信モード)を表示することなく「第1の表示状態」(時刻表示機能)に戻ってしまう。したがって、戻し時にりゅうず10が回転しなかった
図12(D)の状態と、りゅうず10が回転してONに変化してしまった
図12(E)の判別がつかない。
【0044】
図13は
図12に対応した、りゅうずと指針の状況を示すタイミングチャートである。
図13の上段はりゅうずの軸方向の位置を示す。りゅうず引き状態を信号ハイ(H)、りゅうず戻し状態を信号ロウ(L)として示している。なお、スイッチ部51において、りゅうず引き状態では、接触ばね部22aが接点部25bと接触し、戻し状態では、接触ばね部22aが接点部25aと接触している。
図13の中段は、りゅうず回転の有無を示している。すなわち、回転検出部50の出力に基づき、りゅうず回転時にパルス信号が出力される。
図13下段は、指針の状況を示したものである。
【0045】
図13において、最初はりゅうず戻し状態であり、信号はLを示している。そして、指針は時刻を示している(第1の表示状態)。使用者がりゅうず10を引くと、りゅうず引き状態となり、信号はLからHに変化する。信号Hが検出されると、秒針31の表示モードは標準電波受信モードに変更され、秒を示していた秒針31は32ステップ/秒の速度で標準電波受信ON位置に変位される。そして、使用者がりゅうず10を90度時計方向に回転させると、
図1における回転検出部50の出力がHになり、秒針31はON位置からOFF位置に変位する。
【0046】
次に使用者は、りゅうず10を戻そうとする。戻そうとする際、誤って回しながら戻してしまうと、りゅうず回転信号が出力され、CPU40は、標準電波受信設定をOFFからONに設定変更する。ところが、りゅうず回転とほぼ同時にりゅうずが戻されているので、秒針31は時刻表示機能に移行してしまう。このように、りゅうず10を戻すときに誤ってりゅうず10が回転してしまうと、使用者が「誤って設定した状態」が表示されることがない。
【0047】
図14は、本発明の実施形態に係る、りゅうず10を操作して標準電波の受信設定モードに移行させ、受信設定のON/OFFを切り替える動作についての説明図である。
図14(A)〜(C)は
図12(A)〜(C)に対応している。すなわち、
図14(A)はりゅうず10が戻し状態で第1の表示状態(時刻表示機能)、
図14(B)は、秒針31が標準電波受信「ON」状態を表示、
図14(C)は、使用者が標準電波受信「ON」状態から標準電波受信「OFF」状態へ設定を変更した後の表示、をそれぞれ示している。
【0048】
ここで、使用者が、りゅうず10を戻して、時刻表示機能に移行させる場合を説明する。本実施形態では、「りゅうず引き状態」から「りゅうず戻し状態」に移行する際に約1秒間、秒針31がりゅうず引き状態における表示状態を保持するように構成されている。したがって、使用者が誤ってりゅうず10を回転してしまった場合、
図14(D)に示すように、秒針31は標準電波受信OFF状態から標準電波受信ON状態に変位し、約1秒経過すると、
図14(E)に示すように時計表示モードに移行する。このように、りゅうず10を戻すときに誤ってりゅうず10が回転してしまっても、使用者は「誤って設定した状態」を表示で確認することができる。
【0049】
図15は本発明の実施形態に係る、
図14に対応した、りゅうずと指針の状況を示すタイミングチャートである。
図15の中で、(A)〜(C)は、
図13の(A)〜(C)に対応している。
図15(C)の後、使用者がりゅうず10を戻そうとする際、誤って回しながら戻してしまうと、
図15中段に示すように、りゅうず回転信号が出力され、CPU40は、標準電波受信設定をOFFからONに設定変更する。
【0050】
本実施形態では、「りゅうず引き状態」から「りゅうず戻し状態」に移行する際に約1秒間、秒針31がりゅうず引き状態における表示状態を保持するように構成されている。したがって、りゅうず10を戻すときに、誤ってりゅうずが回転してしまっても、秒針31は標準電波受信モードの表示を約1秒間行い、使用者は設定した状態が変わってしまったことが確認できる。そこで、使用者は、後で設定を訂正することができる。
【0051】
図16は、本発明の実施形態に係る、りゅうず引き/戻し処理のフローチャートを示す。電子時計100の「りゅうず引き/戻し処理」に係る動作について
図16のフローチャートを参照して説明する。
【0052】
「りゅうず引き/戻し処理」が開始されると、先ずCPU40は、りゅうず10が引き状態から戻し状態に移行したかを判別する(ステップS1)。具体的には、CPU40は、スイッチ部51に由来する信号が、信号H(引き状態)から信号L(戻し状態)に変化したかを判別する。移行したと判別されれば、ステップS1で「YES」へ分岐し、秒針の表示を標準電波受信モード(第2の表示状態)のまま約1秒間保持する(ステップS2)。そして、時刻を指針させ(第1の表示状態)(ステップS3)、「りゅうず引き/戻し処理」を終了する。ここで、CPU40およびステップS1、S2が、表示状態保持手段である。また、CPU40およびステップS3が、表示制御手段である。
【0053】
一方、ステップS1で「NO」に分岐すると、CPU40は、りゅうず10が戻し状態から引き状態に移行したかを判別する(ステップS4)。移行したと判別されれば、ステップS4で「YES」へ分岐し、標準電波受信モードに移行し(ステップS5)、秒針は標準電波受信設定のON/OFFを指針する(ステップS6)。その後、「りゅうず引き/戻し処理」を終了する。ここで、CPU40およびステップS5、S6が、表示制御手段である。
【0054】
なお、ステップS4にて、りゅうず引き/戻し状態に変化がなかった場合には、「NO」に分岐し、CPU40はそのまま「りゅうず引き/戻し処理」を終了する。
【0055】
図17は、本発明の実施形態に係る、りゅうず回転処理のフローチャートを示す。電子時計100の「りゅうず回転処理」に係る動作について
図17のフローチャートを参照して説明する。
【0056】
「りゅうず回転処理」が開始されると、先ずCPU40は、現在の表示が標準電波受信モード(第2の表示状態)であるか否かを判別する(ステップS10)。現在の表示が標準電波受信モード(第2の表示状態)であると判別されれば、ステップS10で「YES」へ分岐し、りゅうず回転の有無を判別する(ステップS11)。りゅうず回転が有ったと判別されると、ステップS11で「YES」へ分岐し、CPU40は、標準電波受信設定のON/OFF状態を設定変更するとともに、秒針31を対応する指針位置に変位させる(ステップS12)。
【0057】
ステップS10またはステップS11で「NO」へ分岐すると、りゅうず回転処理を終了する。ここで、CPU40およびステップS10〜ステップS12が、設定変更制御手段である。
【0058】
以上のように、電子時計100では、りゅうずによる第2の表示状態から第1の表示状態への移行は、第2の表示状態の表示を所定期間保持した後に行われるので、誤ってりゅうずを回転させてしまっても、誤った回転に起因する第2の表示状態における設定内容を確認できる電子時計を提供することができる。
【0059】
また、表示部は、時計の文字板と指針から構成されており、第2の表示状態を表示する指針は秒針であるので、秒針で異なる機能を表示することができる。
【0060】
なお、本発明は、上記実施の形態に限られるものではなく、様々な変更が可能である。例えば、本実施形態では、表示部において、「第2の表示状態」を表示するのは秒針であったが、それには限定されない。分針でもよいし、時針であってもよい。また、表示部は、針式でなく、液晶表示や、有機EL表示等の表示素子から構成される表示部であってもよい。この場合、表示部は、「りゅうず戻し状態」と、「りゅうず引き状態」に対応して「第1の表示状態」と「第2の表示状態」を時間順次に表示部に表示する構成を有する。
【0061】
この場合、表示部への表示を、液晶表示素子で行わせることもできるので、デジタル表示においてもりゅうずを活用することができる。
【0062】
また、本実施形態では、りゅうず10の段位置が、2つ、すなわち、りゅうず引き状態(1段引き状態)、りゅうず戻し状態(零段状態)であるが、3段階以上の状態を有していても良い。この場合、本実施形態に対応するりゅうずの戻し状態とりゅうずの引き状態とは隣接する段になっていれば良い。
【0063】
この場合、りゅうずの軸方向への移動が3段階以上可能に構成され、りゅうずの戻し状態とりゅうずの引き状態が隣接する段になっていればよいので、りゅうずの機能をさらに追加することも可能となる。
【0064】
また、本実施形態では、「第2の表示状態」の1例として標準電波受信設定について説明したが、りゅうずによる「第2の表示状態」はそれに限定されず、例えば、アラームON/OFFの設定であってもよい。この場合、アラーム機能が他機能であり、有効とは、アラーム設定がONになっていることをいい、無効とはアラーム設定がOFFになっている状態をいう。また、それ以外の機能であっても、選択的に切り替えることができる機能であれば本発明の他機能として適用可能である。
【0065】
この場合、他機能として、標準電波受信機能または、アラーム報知機能であるので、それらの機能を第2の表示状態として、誤った回転に起因する第2の表示状態における設定内容を確認できる電子時計を提供することができる。
【0066】
また、本実施形態では、りゅうず10の回転検出部50は、りゅうず回転は一方向だけ(パルスの極性はプラスのみ)で、りゅうずが90度回転すると1パルス出力し、設定がたとえばONになり、さらに90度回して180度回転したときにさらにパルスが発生し、設定がたとえばOFFになるが、1パルス出力するための回転角は90度でなくてよく、例えば45度でもよい。また、それ以外の構成として、例えば、時計回転方向に所定角度回転すると、設定が例えばOFFからONに変化し、反時計方向に回転したとき例えば、設定がONからOFFに変化するように構成することもできる。
【0067】
また、本実施形態では、りゅうず部6として、りゅうず10の回転を磁気で検出する場合を示したが、それには限定されない。たとえば、フォトインタラプタにより光学的にりゅうず10の回転を検出しても良い。さらには機構的な接点を利用してりゅうず10の回転を検出しても良い。
【0068】
本発明の実施形態を説明したが、本発明の範囲は上述の実施の形態に限定するものではなく、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。以下に、本願出願の当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[付記]
<請求項1>
軸方向への引き・戻し操作と引き状態での回転操作が可能な回転スイッチと、
前記回転スイッチの操作による移動位置情報と回転情報を検出する検出部と、
回転スイッチ戻し状態で、表示部に時刻表示する第1の表示状態とし、回転スイッチ引き状態で、前記表示部に時刻表示以外の機能の状態を表示する第2の表示状態とする表示制御手段と、
前記第2の表示状態において、前記回転スイッチの回転操作による前記検出部の回転情報に基づき、前記機能の有効、無効の設定変更を行わせ、当該設定変更後の状態表示を行わせる設定変更制御手段と、
前記第2の表示状態から前記第1の表示状態への移行は、第2の表示状態の表示を所定期間保持した後に行わせる表示状態保持手段と、
を備えることを特徴とする電子時計。
<請求項2>
前記表示部は、時計の文字板と指針から構成されており、前記第2の表示状態を表示する指針は秒針であることを特徴とする請求項1記載の電子時計。
<請求項3>
前記表示部は、表示素子で構成されていることを特徴とする請求項1記載の電子時計。
<請求項4>
前記回転スイッチの軸方向への移動が3段階以上可能に構成され、前記回転スイッチの戻し状態と回転スイッチの引き状態が隣接する段になっていることを特徴とする請求項2または請求項3に記載の電子時計。
<請求項5>
前記機能は、標準電波受信機能または、アラーム報知機能であることを特徴とする請求項2〜請求項4のいずれか一項に記載の電子時計。