(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記制御装置(180)は、前記所定電力よりも大きい電力で前記充電を行うとき、あるいは前記検出手段(150)によって検出される前記液相冷媒の量が所定量より少ないときに、前記1対の降圧スイッチング素子(Q5、Q6)の高電位側(Q5)と、前記1対の昇圧スイッチング素子(Q7、Q8)の低電位側(Q8)とを非同期でスイッチングすることを特徴とする請求項1に記載の車両用充電装置。
前記1対の昇圧スイッチング素子(Q7、Q8)の高電位側(Q7)をスイッチングさせる際に、前記リアクトル電流の変化に対するヒステリシスを持たせたスイッチングを可能とするヒステリシス制御器(181)を備えており、
前記制御装置(180)は、前記リアクトル電流を前記ヒステリシス制御器(181)によってフィードバックさせながら制御することを特徴とする請求項3に記載の車両用充電装置。
前記リアクトル(143)は、前記充電器(140)において、前記圧縮機(121)内で前記液相冷媒が溜まる位置の底部(136)に対応するように配設されていることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1つに記載の車両用充電装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記の特許文献1では、コンプレッサを加熱するための専用の加熱部を設けており、コンプレッサの体格、およびコストが増大する。また、加熱部によって冷媒を蒸発させた後に、容器の底部の温度と外気温との差が所定値以上である条件下でコンプレッサを起動するようにしているので、冷媒を蒸発させるまでにある程度の時間を要する。よって、特許文献1を車両に適用した場合、走行を開始したときにおいて、すぐに空調機能を発揮させることができない。
【0006】
本発明の目的は、上記問題に鑑み、圧縮機の体格、コストの増大を招くことなく、更に車両の走行を開始した段階ですぐに圧縮機を作動させることのできる車両用充電装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は上記目的を達成するために、以下の技術的手段を採用する。
【0008】
請求項1に記載の発明では、蓄電池(110)を備える車両に搭載される車両用充電装置であって、
圧縮機(121)、凝縮器(122)、膨張弁(124)、および蒸発器(125)を有し、圧縮機(121)によって冷媒が循環される空調用の冷凍サイクル(120)と、
外部電源(200)から蓄電池(110)に充電する充電器(140)と、
充電器(140)の作動を制御する制御装置(180)とを備え、
充電器(140)は、通電時に発生する熱が圧縮機(121)に対して伝達可能となるように圧縮機(121)に取り付けされており、
制御装置(180)は、車両が走行機能を停止しており、充電器(140)による充電を行うときに、充電器(140)から発生する熱によって圧縮機(121)内に溜まる液相冷媒を加熱する
ようになっており、
圧縮機(121)内に溜まる液相冷媒の量を検出する検出手段(150)を備えており、
充電器(140)は、外部電源(200)側で降圧回路(141a)を形成して高電位側と低電位側とに配置される1対の降圧スイッチング素子(Q5、Q6)と、蓄電池(110)側で昇圧回路(142)を形成して高電位側と低電位側とに配置される1対の昇圧スイッチング素子(Q7、Q8)と、1対の降圧スイッチング素子(Q5、Q6)と1対の昇圧スイッチング素子(Q7、Q8)との間に設けられるリアクトル(143)とを備えており、
制御装置(180)は、所定電力以下の電力で充電を行うときに、
検出手段(150)によって検出される液相冷媒の量が所定量以上であると、1対の降圧スイッチング素子(Q5、Q6)の高電位側(Q5)と、1対の昇圧スイッチング素子(Q7、Q8)の低電位側(Q8)とを同期させてスイッチングすることを特徴としている。
【0009】
車両が走行機能を停止している間では、外気温度に応じて圧縮機(121)の温度は低下していき、冷凍サイクル(120)内の冷媒が冷却されて液化し、圧縮機(121)内に液相冷媒として溜まり易い。
【0010】
請求項1に記載の発明によれば、車両が走行機能を停止しており、充電器(140)によって蓄電池(110)に充電するときに、充電器(140)から発生する熱によって圧縮機(121)内に溜まる液相冷媒を加熱して蒸発させることができる。よって、圧縮機(121)を作動させるときの液相冷媒による液圧縮を無くすことができ、次に車両が走行開始される段階で、すぐに圧縮機(121)を作動させることできる。
【0011】
そして、冷媒を加熱させるために、蓄電池(110)に充電するための充電器(140)を流用するようにしているので、従来技術のように専用の加熱部の設定による圧縮機の体格増加やコスト増加を招くことがない。
【0013】
また、高電位側の降圧スイッチング素子(Q5)と、低電位側の昇圧スイッチング素子(Q8)とを同期させてスイッチングすることで、高電位側の降圧スイッチング素子(Q5)におけるスイッチングオン時のデューティ比を小さくすることができ、リアクトル(143)に流れるリアクトル電流値を大きくすることができる。よって、リアクトル(143)からの発熱量を大きくすることができるので、効果的な冷媒の加熱が可能となる。
【0014】
また、所定電力よりも大きい電力で充電を行うときに、上記のようなスイッチング制御を行うと、リアクトル電流が過大となってしまうので、リアクトル(143)の体格を大きくする必要が発生してしまう。しかしながら、
請求項1に記載の発明では、所定電力以下の電力で充電を行うときに、上記のようなスイッチング制御を行うようにしているので、リアクトル(143)における大型化および過大電流の発生を防止しつつ、効果的な冷媒の加熱が可能となる。
【0015】
請求項2に記載の発明では、制御装置(180)は、所定電力よりも大きい電力で充電を行うとき、あるいは検出手段(150)によって検出される液相冷媒の量が所定量より少ないときに、1対の降圧スイッチング素子(Q5、Q6)の高電位側(Q5)と、1対の昇圧スイッチング素子(Q7、Q8)の低電位側(Q8)とを非同期でスイッチングすることを特徴としている。
【0016】
この発明によれば、高電位側の降圧スイッチング素子(Q5)と、低電位側の昇圧スイッチング素子(Q8)とを非同期でスイッチングすることで、それぞれのスイッチング素子(Q5、Q8)を最適な条件で作動させることができる。
請求項2に記載の発明では、
請求項1に記載の発明に対して、高電位側の降圧スイッチング素子(Q5)におけるスイッチングオン時のデューティ比は大きくなり、リアクトル電流は小さく設定されることになる。よって、所定電力よりも大きい電力で充電を行うときにおいて、リアクトル電流が過大になることがなく、また、液相冷媒の量も所定量より少ない場合であるので、液相冷媒の加熱に事足りるものとなる。
【0017】
請求項3に記載の発明では、蓄電池(110)を備える車両に搭載される車両用充電装置であって、
圧縮機(121)、凝縮器(122)、膨張弁(124)、および蒸発器(125)を有し、圧縮機(121)によって冷媒が循環される空調用の冷凍サイクル(120)と、
外部電源(200)から蓄電池(110)に充電する充電器(140)と、
充電器(140)の作動を制御する制御装置(180)と、
圧縮機(121)内に溜まる液相冷媒の量を検出する検出手段(150)とを備え、
充電器(140)は、通電時に発生する熱が圧縮機(121)に対して伝達可能となるように圧縮機(121)に取り付けされており、
制御装置(180)は、車両が走行機能を停止しており、充電器(140)による充電を行っていないときに、検出手段(150)によって検出される液相冷媒の量が所定量を超えていると、蓄電池(110)から充電器(140)に電流を流し、充電器(140)から発生する熱によって圧縮機(121)内に溜まる液相冷媒を加熱する
ようになっており、
充電器(140)は、外部電源(200)側で降圧回路(141a)を形成して高電位側と低電位側とに配置される1対の降圧スイッチング素子(Q5、Q6)と、蓄電池(110)側で昇圧回路(142)を形成して高電位側と低電位側とに配置される1対の昇圧スイッチング素子(Q7、Q8)と、1対の降圧スイッチング素子(Q5、Q6)と1対の昇圧スイッチング素子(Q7、Q8)との間に設けられるリアクトル(143)とを備えており、
制御装置(180)は、充電器(140)に電流を流す際に、1対の降圧スイッチング素子(Q5、Q6)の低電位側(Q6)を常にオンにし、1対の昇圧スイッチング素子(Q7、Q8)の高電位側(Q7)をスイッチングさせて、蓄電池(110)からリアクトル(143)に流れるリアクトル電流が直流となるように制御することを特徴としている。
【0018】
この発明によれば、車両が走行機能を停止しており、充電器(140)による蓄電池(110)への充電を行っていないとき、蓄電池(110)から充電器(140)に電流を流すことによって、充電器(140)から発生する熱によって圧縮機(121)内に溜まる液相冷媒を加熱して蒸発させることができる。よって、圧縮機(121)を作動させるときの液相冷媒による液圧縮を無くすことができ、次に車両が走行開始される段階で、すぐに圧縮機(121)を作動させることできる。
【0019】
そして、冷媒を加熱させるために、蓄電池(110)に充電するための充電器(140)を流用するようにしているので、従来技術のように専用の加熱部の設定による圧縮機の体格増加やコスト増加を招くことがない。
【0021】
また、蓄電池(110)からリアクトル(143)に流れるリアクトル電流が直流となるように制御することで、交流を流す場合に比べて電流値の実効値を大きくすることができるので、リアクトル(143)からの発熱量を大きくすることができ、効果的な冷媒の加熱が可能となる。
【0022】
請求項4に記載の発明では、1対の昇圧スイッチング素子(Q7、Q8)の高電位側(Q7)をスイッチングさせる際に、リアクトル電流の変化に対するヒステリシスを持たせたスイッチングを可能とするヒステリシス制御器(181)を備えており、
制御装置(180)は、リアクトル電流をヒステリシス制御器(181)によってフィードバックさせながら制御することを特徴としている。
【0023】
この発明によれば、高電位側の昇圧スイッチング素子(Q7)のスイッチングを行う際に、リアクトル電流の変化に対して、スイッチングのハンチングを起こすことが防止され、リアクトル(143)に対して狙いとする直流電流を安定的に流すことができる。
【0024】
請求項5に記載の発明では、検出手段(150)は、液相冷媒の温度を直接的、あるいは間接的に検出する冷媒温度センサ(150)であり、
制御装置(180)は、冷媒温度センサ(150)によって検出される液相冷媒の温度から液相冷媒の量を推定することを特徴としている。
【0025】
この発明によれば、圧縮機(121)内に溜まる液相冷媒の量は、液相冷媒の温度が低いほど増加するので、液相冷媒の温度を検出することで、容易かつ確実に液相冷媒量を推定することができる。
【0026】
請求項6に記載の発明では、検出手段(150)は、外気の温度を検出する外気温度センサであり、
制御装置(180)は、外気温度センサによって検出される外気の温度から液相冷媒の量を推定することを特徴としている。
【0027】
この発明によれば、圧縮機(121)内に溜まる液相冷媒の量は、外気温度が低いほど増加するので、外気温度を検出することで、容易かつ確実に液相冷媒量を推定することができる。
【0028】
請求項7に記載の発明では、充電器(140)は、圧縮機(121)内で液相冷媒が溜まる位置に対応する底部(136)に取り付けされたことを特徴としている。
【0029】
この発明によれば、充電器(140)は、圧縮機(121)内で液相冷媒が溜まる位置に近接して配置されることになるので、充電器(140)から発生する熱を効果的に液相冷媒に伝達させることができ、確実な液相冷媒の加熱が可能となる。
【0030】
請求項8に記載の発明では、リアクトル(143)は、充電器(140)において、圧縮機(121)内で液相冷媒が溜まる位置の底部(136)に対応するように配設されていることを特徴としている。
【0031】
この発明によれば、充電器(140)におけるリアクトル(143)は、圧縮機(121)内で液相冷媒が溜まる位置に近接して配置されることになるので、リアクトル(143)から発生する熱を効果的に液相冷媒に伝達させることができ、確実な液相冷媒の加熱が可能となる。
【0032】
請求項9に記載の発明では、リアクトル(143)は、圧縮機(121)内に配設されたことを特徴としている。
【0033】
この発明によれば、リアクトル(143)から発生する熱を直接的に液相冷媒に伝達させることができ、確実な液相冷媒の加熱が可能となる。
【0034】
請求項10に記載の発明では、圧縮機(121)を駆動する3相式のモータ(130)と、
モータ(130)の作動を制御するインバータ(141)とを備えており、
充電器(140)は、インバータ(141)のインバータスイッチング素子(Q1〜Q6)と、
インバータスイッチング素子(Q1〜Q6)とは別の1相分のスイッチング素子(Q7、Q8)と、
インバータスイッチング素子(Q1〜Q6)および1相分のスイッチング素子(Q7、Q8)との間に介在されるリアクトル(143)と、
インバータスイッチング素子(Q1〜Q6)、1相分のスイッチング素子(Q7、Q8)、およびリアクトル(143)への通電を断続するリレー(RY1〜RY6)とで構成されており、
1対の降圧スイッチング素子(Q5、Q6)は、インバータスイッチング素子(Q1〜Q6)のW相スイッチング素子(Q5、Q6)に対応し、
1対の昇圧スイッチング素子(Q7、Q8)は、1相分のスイッチング素子(Q7、Q8)に対応することを特徴としている。
【0035】
この発明によれば、モータ(130)用のインバータ(141)を用いて、液相冷媒の加熱を可能とする充電器(140)として形成することができる。
【0036】
請求項11に記載の発明では、充電器(140)は、インバータ(141)と一体的に形成されたインバータ一体充電器(140)であることを特徴としている。
【0037】
この発明によれば、充電器(140)とインバータ(141)とをコンパクトにすることができる。
【0038】
尚、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下に、図面を参照しながら本発明を実施するための複数の形態を説明する。各形態において先行する形態で説明した事項に対応する部分には同一の参照符号を付して重複する説明を省略する場合がある。各形態において構成の一部のみを説明している場合は、構成の他の部分については先行して説明した他の形態を適用することができる。各実施形態で具体的に組み合わせが可能であることを明示している部分同士の組み合わせばかりではなく、特に組み合わせに支障が生じなければ、明示していなくても実施形態同士を部分的に組み合せることも可能である。
【0041】
(第1実施形態)
以下、第1実施形態における車両用充電装置100について
図1〜
図7を用いて説明する。
図1は車両用充電装置100を示す概略構成図、
図2はインバータ一体充電器140を示す回路図、
図3は制御装置180が行う制御内容を示すフローチャート、
図4は加熱制御時、および通常制御時における電圧、スイッチング素子Q5、Q8の作動状態、スイッチング素子Q5のデューティ比、および平均リアクトル電流iLを示すタイムチャート、
図5は加熱制御時、および通常制御時における制御内容を示すブロック図、
図6は加熱制御時、および通常制御時におけるリアクトル電流を示すグラフ、
図7は加熱制御時、および通常制御時における損失を比較したグラフである。
【0042】
車両用充電装置100は、走行用駆動源としての走行用モータ、およびこの走行用モータ等に電力を供給する高電圧バッテリ110を備えるプラグインハイブリッド自動車や電気自動車等に搭載される充電装置であり、
図1に示すように、冷凍サイクル120の圧縮機121、モータ130、インバータ一体充電器140、温度センサ150、受電部160、ノイズフィルタ170、および制御装置180等を備えている。車両用充電装置100は、インバータ一体充電器140によって、商業電源200から高電圧バッテリ110への充電制御を行うと共に、冷凍サイクル120における圧縮機121を駆動するモータ130の作動制御を行うものである。
【0043】
高電圧バッテリ110は、電力を蓄えると共に、蓄えた電力をモータ130(インバータ一体充電器140)、および図示しない走行用モータに電力供給する蓄電池である。高電圧バッテリ110は、数百ボルト(例えば200V)の電圧を有している。
【0044】
冷凍サイクル120は、車室内の空調用(冷房用)の熱サイクルであり、圧縮機121、凝縮器122、レシーバ123、膨張弁124、および蒸発器125等を有している。
【0045】
圧縮機121は、冷凍サイクル120において、蒸発器125から流出される気相冷媒を吸入口121aから吸入して、内部の圧縮機構で高温高圧に圧縮した後に、吐出口121bから凝縮器122に吐出する流体機械である。圧縮機121の圧縮機構は、例えば固定スクロールと旋回スクロールとを有するスクロール型の圧縮機構が使用されている。スクロール型の圧縮機構では、旋回スクロールにモータ130の回転軸132が接続され、モータ130の作動によって旋回スクロールが固定スクロールに対して旋回することで、2つのスクロール間に形成される空間(圧縮室)の拡大、収縮が繰り返されて、冷媒の吸入、圧縮、吐出が行われるようになっている。圧縮機121は、軸方向が水平方向を向くように車両に搭載されて、使用されるようになっている。
【0046】
モータ130は、上記のように圧縮機121を駆動する回転電機であり、例えば3相ブラシレスモータが使用されている。モータ130は圧縮機121と一体的に形成されており、圧縮機121は電動圧縮機121Aとして形成されている。モータ130は、例えば円筒状を成すアルミニウム製のハウジング131内に、回転軸132に固定されたロータ133と、ロータ133の外周側に配設されてハウジング131の内周面に固定されたステータ134とを有している。ステータ134は、
図2に示すように、U相、V相、W相の3つの相を有している。モータ130は、ステータ134に通電されることで、ロータ133が回転軸132と共に回転し、圧縮機121(旋回スクロール)を駆動するようになっている。
【0047】
電動圧縮機121Aにおいては、冷媒が吸入される吸入口121aは、モータ130のハウジング131に設けられている。そして、冷媒はこの吸入口121aからハウジング131内に流入し、ハウジング131内を流通した後に、圧縮機121に流入して圧縮されるようになっている。よって、電動圧縮機121Aが停止された後には、例えば外気温度に応じて、電動圧縮機121Aの温度が低下されると、ハウジング131内においては、気相冷媒が冷却されて凝縮し、液相冷媒となって底壁部136の上側に溜まる場合がある(冷媒の寝込み現象)。
【0048】
凝縮器122は、例えば、複数積層された冷媒流通用のチューブと、各チューブ間に介在された波形のフィンとを備える熱交換部によって、圧縮機121から吐出される冷媒を冷却して液相冷媒にする熱交換器である。凝縮器122には、ファンモータによって作動される冷却ファン122aが設けられており、この冷却ファン122aによって送風される冷却用空気によって、上記冷媒の冷却が促進されるようになっている。冷却ファン122a(ファンモータ)は、図示しない低電圧バッテリ(例えば12V)から供給される電力によって作動されるようになっている。冷却ファン122aの作動は制御装置180によって制御されるようになっている。
【0049】
レシーバ123は、凝縮器122から流出される冷媒の気液を分離して、液相冷媒を溜めると共に、溜めた液相冷媒を膨張弁124に流出させる気液分離手段である。
【0050】
膨張弁124は、レシーバ123から流出される液相冷媒を低温低圧に減圧膨張させる減圧手段である。膨張弁124は、例えば温度式の膨張弁であり、蒸発器125の出口側の冷媒の温度に応じて弁開度が調節されるようになっている。例えば蒸発器125から流出される冷媒の温度が低くなるほど弁開度が小さく絞られ、逆に冷媒の温度が高くなるほど弁開度が大きく設定されるようになっている。
【0051】
蒸発器125は、凝縮器122と同様に例えば複数積層された冷媒流通用のチューブと、各チューブ間に介在された波形のフィンとを備える熱交換部において、膨張弁124から流出される液相冷媒と送風ファン125aによって送風される空調用空気との間で熱交換する熱交換器である。蒸発器125においては、内部を流通する低温の液相冷媒によって空調用空気が冷却されるようになっている。逆に、液相冷媒は、空調用空気との熱交換によって蒸発して気相冷媒となる。送風ファン125aは、送風モータを備えており、送風ファン125a(送風モータ)は、冷却ファン122aと同様に低電圧バッテリから供給される電力によって作動されるようになっている。送風ファン125aの作動は制御装置180によって制御されるようになっている。
【0052】
インバータ一体充電器140は、外部電源としての商業電源200からの交流電力を直流電力に変換(AC/DC変換)して高電圧バッテリ110に充電する充電器に対して、高電圧バッテリの110の直流電力を3相の交流電力に変換(DC/AC変換)してモータ130に供給しモータ130を作動させるインバータ141が一体的に形成された電力変換装置である。
【0053】
インバータ一体充電器140は、例えば車両のイグニッションスイッチやスタートスイッチ等がオフにされて車両が走行機能を停止しているときに、乗員の充電要求に基づき制御装置180によって制御されて上記の充電を行う。加えて、インバータ一体充電器140は、例えば車両のイグニッションスイッチやスタートスイッチ等がオンにされて車両が走行可能としているときに、乗員の空調要求に基づき制御装置180によって制御されてモータ130への電力供給を行い、圧縮機121を駆動するものとなっている。尚、以下の説明において、便宜上、車両が走行機能を停止しているときの状態を「走行停止時」と表記し、車両が走行可能としている時の状態を「走行時」と表記する。
【0054】
インバータ一体充電器140は、例えば扁平状を成すアルミニウム製のカバー140a内に収容される制御基板S、スイッチング素子Q1〜Q8、リアクトル143、およびリレーRY1〜RY6等を備えている。インバータ一体充電器140は、モータ130のハウジング131の側面部135および底壁部136に設けられており、カバー140aがハウジング131に当接するようにして一体的に形成されている。制御基板S、スイッチング素子Q1〜Q8、およびリレーRY1〜RY6は、側面部135に対応するように配置されている。また、リアクトル143は、底壁部136に対応するように配置されている。尚、ハウジング131とカバー140aとの間には、接触抵抗を小さくするために、熱伝導性の高い熱伝導グリスや熱伝導シート等を介在させると良い。
【0055】
制御基板Sは、スイッチング素子Q1〜Q8のオン−オフによる切替え(スイッチング動作)を制御するものであり、制御装置180によって制御されるようになっている。制御基板Sおよび制御装置180は、車両の走行停止時でも高電圧バッテリ110への充電のために作動状態となり、スイッチング素子Q1〜Q8の切替え作動を制御するようになっている。
【0056】
更に、
図2に示すように、スイッチング素子Q1〜Q8のうち、スイッチング素子Q1〜Q6は、インバータ141を形成するインバータスイッチング素子となっている。スイッチング素子Q1〜Q6は、高電位側のスイッチング素子Q1、Q3、Q5と、低電位側のスイッチング素子Q2、Q4、Q6とによって、3対の直列接続体を形成している。また、高電位側のスイッチング素子Q1、Q3、Q5には逆並列にフリーホイールダイオードD1、D3、D5が接続されており、低電位側のスイッチング素子Q2、Q4、Q6には、逆並列にフリーホイールダイオードD2、D4、D6が接続されている。尚、
図2では、スイッチング素子Q1〜Q6として、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)を例示している。
【0057】
スイッチング素子Q1、Q2による直列接続体の中間部と、スイッチング素子Q3、Q4による直列接続体の中間部は、受電部160を介して商業電源200と接続可能となっている。また、スイッチング素子Q1、Q2による直列接続体の中間部と、スイッチング素子Q3、Q4による直列接続体の中間部と、スイッチング素子Q5、Q6による直列接続体の中間部は、モータ130のステータ134(U相、V相、W相)と接続されている。
【0058】
インバータ141におけるスイッチング素子Q1〜Q6のうち、スイッチング素子Q5、Q6による直列接続体は、インバータ一体充電器140が充電器として機能する際に、商業電源200からの電圧を降圧させる降圧回路141aとなっている。スイッチング素子Q5、Q6は、本発明の降圧スイッチング素子に対応し、スイッチング素子Q5は、本発明の高電位側降圧スイッチング素子に対応し、スイッチング素子Q6は、本発明の低電位側降圧スイッチング素子に対応する。
【0059】
スイッチング素子Q7、Q8は、インバータ141におけるスイッチング素子Q1〜Q6とは別に設けられた1相分の昇圧スイッチング素子であり、1対の直列接続体を形成している。スイッチング素子Q7は、本発明の高電位側昇圧スイッチング素子に対応し、スイッチング素子Q8は、本発明の低電位側昇圧スイッチング素子に対応している。また、高電位側のスイッチング素子Q7には逆並列にフリーホイールダイオードD7が接続されており、低電位側のスイッチング素子Q8には、逆並列にフリーホイールダイオードD8が接続されている。尚、
図2では、スイッチング素子Q7、Q8として、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)を例示している。
【0060】
スイッチング素子Q7、Q8は、インバータ141よりも高電圧バッテリ110側に配置されている。スイッチング素子Q7、Q8による直列接続体の高電位側、中間部、および低電位側は、スイッチング素子Q5、Q6による直列接続体の高電位側、中間部、および低電位側と、それぞれ接続されている。また、スイッチング素子Q7、Q8による直列接続体の高電位側、および低電位側は、高電圧バッテリ110と接続されている。
【0061】
スイッチング素子Q7、Q8による直列接続体は、インバータ一体充電器140が充電器として機能する際に、商業電源200からの電圧を昇圧させる昇圧回路142となっている。
【0062】
リアクトル143は、電流の平滑化を図ると共に、電流の短絡化を防止する巻線であり、スイッチング素子Q5、Q6による直列接続体の中間部と、スイッチング素子Q7、Q8による直列接続体の中間部とを接続する電力線に設けられている。そして、リアクトル143の設けられた電力線には、リアクトル143に対して直列に配置されて、リアクトル143を流れる電流値を検出する電流検出部143aが設けられている。
【0063】
リレーRY1〜RY6は、インバータ一体充電器140において、スイッチング素子Q1〜Q8、リアクトル143、およびモータ130に対する通電を断続する断続手段である。リレーRY1〜RY6は、制御装置180によって、接点部の接続状態、あるいは切断状態が切替えられるようになっている。
【0064】
リレーRY1、RY2は、インバータ141と受電部160との間に設けられている。また、リレーRY3、RY4は、モータ130とインバータ141との間に設けられている。また、リレーRY5は、降圧回路141aの高電位側と、昇圧回路142の高電位側との間に設けられている。また、リレーRY6は、降圧回路141aの中間部と、リアクトル143との間に設けられている。
【0065】
尚、受電部160とリレーRY1、RY2との間には、商業電源200の電圧値を検出する電圧検出部144が設けられている。また、高電圧バッテリ110と昇圧回路142との間には、電力の変動成分を低減する蓄電部としてのコンデンサ145が設けられている。また、高電圧バッテリ110と昇圧回路142との間には、高電圧バッテリ110の電圧値を検出する電圧検出部146が設けられている。更に、高電圧バッテリ110とコンデンサ145との間には、メインリレーSMR1、SMR2が設けられている。メインリレーSMR1、SMR2は、制御装置180によって、接点部の接続状態、あるいは切断状態が切替えられることで、高電圧バッテリ110からインバータ一体充電器140への電力供給あるいは電力供給停止が切替えられるようになっている。
【0066】
上記で説明したスイッチング素子Q1〜Q8、およびリアクトル143は、インバータ一体充電器140の作動時において、電力ロスによって発熱する発熱体となっている。インバータ一体充電器140のカバー140aは、ハウジング131の側面部135および底壁部136に当接するように設けられており、また、ハウジング131、カバー140aは熱伝導性に優れるアルミニウム製であることから、スイッチング素子Q1〜Q8、およびリアクトル143から発生する熱は、側面部135、および底壁部136に効率良く伝わるようになっている。
【0067】
温度センサ150は、ハウジング131における底壁部136の温度を検出することでハウジング131内の液相冷媒の温度を間接的に検出する冷媒温度センサであり、この温度センサ150によって検出される温度信号は制御装置180に出力されるようになっている。ハウジング131内に溜まる液相冷媒の量は、底壁部136の温度が低いほど多くなるという関係を有していることから、制御装置180は、温度センサ150によって検出される温度をもとにハウジング131内に溜まる液相冷媒量を推定するものとなっている。よって、制御装置180は、温度センサ150によって検出される温度が予め定めた所定温度以下であると、液相冷媒量が所定量以上溜まったものと判定できるようになっている。
【0068】
受電部160は、商業電源200からの電力を受ける受電手段であり、例えば、一端側に商業電源200のコンセントに接続可能なプラグや、商業電源200に接続可能なコネクタ等を備える電力線として形成されている。電力線の他端側は、インバータ一体充電器140に接続されている。
【0069】
ノイズフィルタ170は、電気的ノイズを除去するフィルタであり、受電部160の近傍に設けられている。ノイズフィルタ170は、スイッチング素子Q1〜Q8、およびリアクトル143のような発熱体となるものではなく、また、スイッチング素子Q1〜Q8、およびリアクトル143等から発生する電磁界の影響を受けてフィルタリング効果が低下することから、インバータ一体充電器140から離れた部位に配置されることが好ましい。
【0070】
制御装置180は、車両用充電装置100における制御手段である。制御装置180は、インバータ一体充電器140の作動(スイッチング素子Q1〜Q8、リレーRY1〜RY6、メインリレーSMR1、SMR2)を制御することで、冷凍サイクル120による空調制御、および高電圧バッテリ110への充電制御を行うようになっている。制御装置180による制御内容の詳細については後述する。
【0071】
次に、上記構成に基づく車両用充電装置100の作動について、
図3〜
図5を加えて説明する。
【0072】
1.冷凍サイクルの制御
車両走行時においては、制御装置180によってメインリレーSMR1、SMR2がオンされ、また、リレーRY3、RY4、RY5がオンされる。制御装置180は、乗員の空調要求に基づき、インバータ一体充電器140をインバータとして機能するように作動制御する。つまり、制御装置180は、インバータ141におけるスイッチング素子Q1〜Q6のスイッチング切替えを行うことによって高電圧バッテリ110の直流電力を交流電力に変換して、モータ130に供給し、モータ130を作動させて、圧縮機121を駆動させる。また、制御装置180は、冷却ファン122a、送風ファン125aを作動させる。
【0073】
上記により冷凍サイクル120が作動され、圧縮機121から吐出される冷媒は凝縮器122で冷却され、レシーバ123で気液分離される。気液分離された冷媒のうち液相冷媒が膨張弁124で低温低圧に減圧され、蒸発器125では低温低圧の冷媒によって送風ファン125aによって送風される空調用空気が冷却される。このとき、空調用空気の温度が乗員の要求する要求温度となるように、圧縮機121の作動回転数が制御される。そして、蒸発器125から流出される冷媒は、主に気相冷媒となって、モータ130のハウジング131内に流入し、圧縮機121に吸入される。
【0074】
インバータとして制御されるインバータ一体充電器140においては、作動されることによって特にスイッチング素子Q1〜Q6が発熱していくことになるが、スイッチング素子Q1〜Q6は、ハウジング131内を流通する気相冷媒によって冷却されることになる。
【0075】
2.高電圧バッテリへの充電制御
車両走行停止時においては、乗員によって受電部160が商業電源200に接続されて、乗員からの充電要求があると、制御装置180は、インバータ一体充電器140によって高電圧バッテリ110への充電を行う。このとき、制御装置180によってメインリレーSMR1、SMR2がオンされ、また、リレーRY1、RY2、RY6がオンされる。本実施形態では、この充電の間に、ハウジング131内に溜まった液相冷媒が加熱されるようになっている。
【0076】
図3に示すように、制御装置180は、ステップS100で充電の制御を開始するにあたって、充電条件が満足されているか否かを判定する。制御装置180は、充電条件について、例えば受電部160が商業電源200に接続されていること、高電圧バッテリ110は満充電状態ではないこと等によって充電条件が満足されていることを判定する。
【0077】
ステップS100で充電条件が満足されていると判定すると、制御装置180は、スッテップS110で、要求充電電力量が所定電力以下であるか否かを判定する。通常、高電圧バッテリ110に充電を行う際には、充電の初期には最大電力定格で充電を行っていき、終盤で電力を絞りながら(いわゆる押込み充電しながら)満充電とし、充電を終了する。上記の「要求充電電力量が所定電力以下である」という意味は、ここでは充電の形態が「押込み充電である」ことを意味しており、逆に「要求充電電力量が所定電力より大きい」場合は、充電の形態が「最大電力定格での充電」を意味している。
【0078】
ステップS110で要求充電電力量が所定電力以下であると判定すると、制御装置180は、ステップS120で、温度センサ150によって得られる底壁部136の温度が、所定温度以下であるか否かを判定する。底壁部136の温度が所定温度以下であるということは、上記で説明したように、ハウジング131内に液相冷媒量が所定量以上溜まっていることを意味している。つまり、車両走行停止時においては、冷凍サイクル120が作動された後であって、例えば外気温度が低いとハウジング131内の気相冷媒が冷却されて、液相冷媒となって溜まる場合があり、底壁部136の温度が所定温度以下であると、液相冷媒量が所定量以上溜まっていると判定されるのである。
【0079】
ステップS120で底壁部136の温度が、所定温度以下であると判定すると、制御装置180は、ステップS130で、加熱制御を実施する。ここで、インバータ一体充電器140によって充電する際には、降圧回路141aの高電位側のスイッチング素子Q5と、昇圧回路142の低電位側のスイッチング素子Q8とをスイッチングのオン−オフ切替えすることで、商業電源200からの入力電力|Vin|を昇降圧制御して、出力電圧Voutとし、充電していく。なお、このときスイッチング素子Q1〜Q4、Q6、Q7はすべてオフとし、フリーホイールダイオードD1〜D4、D6、D7を用いる。ステップS130の加熱制御においては、
図4(a)に示すように、スイッチング素子Q5、Q8のスイッチング切替えにおけるオンとオフのタイミングを同期させるようにしている。このとき、スイッチング素子Q5のデューティ比(以下、Q5duty1)は、以下の数式1によって算出されるものとなる。
【0080】
(数1)
Q5duty1=Vout/(|Vin|peak+Vout)
ここで、|Vin|peakは、入力電力|Vin|のピーク値である。
【0081】
ステップS130の加熱制御におけるQ5duty1は、後述するステップS140の通常制御におけるQ5duty2よりも小さく設定することができる。更に、リアクトル143に流れるリアクトル電流iL1は、以下の数式2によって算出される。
【0082】
(数2)
iL1=iac/Q5duty1
=iac×(|Vin|peak+Vout)/Vout
ここで、iacは、入力電流である。
【0083】
尚、
図5(a)に示すように、ステップS130の加熱制御においては、目標とする入力電流iac*から得られる目標リアクトル電流iL*に対して、上記数式2によって得られる実際のリアクトル電流iL1をフィードバックさせて、Q5duty1、Q8duty1を算出するようにしている。尚、Q8duty1は、スイッチング素子Q8のデューティ比であり、ここでは、Q5duty1と等しい。
【0084】
このように、ステップS130の加熱制御では、意図的にスイッチング素子Q5、Q8のスイッチング切替えのタイミングを同期させることで、Q5duty1を通常制御時よりも小さくして、その分、リアクトル電流iL1を大きくするようにしている。よって、リアクトル143における発熱量を大きくして、この熱によってハウジング131内の液相冷媒を加熱する。
【0085】
一方、ステップS110、およびステップS120で否定判定すると、即ち、要求充電電力量が所定量よりも大きい最大電力定格の充電時であるとき、あるいは、押込み充電時であってもハウジング131内に溜まった液相冷媒量が所定量より少ない場合に、制御装置180は、ステップS140で、通常制御を実施する。
【0086】
ステップS140の通常制御においては、制御装置180は、
図4(b)に示すように、スイッチング素子Q5、Q8のスイッチング切替えにおけるオンとオフのタイミングを非同期となるようにしている。つまり、昇降圧制御するにあたって、本来、スイッチング素子Q5、Q8のそれぞれに必要とされるスイッチング切替えの最適なデューティ比(Q5duty2、Q8duty2)を採用するようにしている。このとき、スイッチング素子Q5のQ5duty2は、以下の数式3によって決定されるものとなる。
【0087】
(数3)
Q5duty2=Vout/|Vin|peak
更に、リアクトル143に流れるリアクトル電流iL2は、以下の数式4によって算出される。
【0088】
(数4)
iL2=iac/Q5duty2
=iac×(|Vin|peak)/Vout
尚、
図5(b)に示すように、ステップS140の通常制御においては、目標とする入力電流iac*から得られる目標リアクトル電流iL*に対して、上記数式4によって得られる実際のリアクトル電流iL2をフィードバックさせて、Q8duty2を算出するようにしている。また、Q5duty2については、上記数式3によって算出するようにしている。
【0089】
このように、ステップS140の通常制御では、スイッチング素子Q5、Q8のスイッチング切替えのタイミングを非同期とすることで、昇降圧制御に最適なデューティ比を確保して、リアクトル電流iL2を得るようにしている。そして、この熱によってハウジング131内の液相冷媒を加熱する。
【0090】
上記充電を行う中で、高電圧バッテリ110がフル充電され、また、受電部160が商業電源から外され、ステップS100における充電条件を満足しないと判定すると、制御装置180は、ステップS150で充電を停止し、ステップS160で本制御を終了する。
【0091】
以上のように、本第1実施形態では、車両の走行停止時に、インバータ一体充電器140を充電器として機能させて、高電圧バッテリ110への充電を行う際に、インバータ一体充電器140(主にリアクトル143)から発生する熱によって、ハウジング131内に溜まる液相冷媒を加熱するようにしている。
【0092】
これにより、電動圧縮機121A内(モータ130のハウジング131内)に溜まる液相冷媒を充電時に加熱して蒸発させることができる。よって、圧縮機121を作動させるときの液相冷媒による液圧縮を無くすことができ、次に車両が走行開始される段階で、すぐに圧縮機121を作動させることできる。
【0093】
そして、冷媒を加熱させるために、高電圧バッテリ110に充電するためのインバータ一体充電器140を流用するようにしているので、従来技術のように専用の加熱部の設定による圧縮機の体格増加やコスト増加を招くことがない。
【0094】
また、所定電力以下の電力で充電を行う押込み充電のときに、ハウジング131内の液相冷媒の量が所定量以上であると、ステップS130の加熱制御によって、スイッチング素子Q5と、スイッチング素子Q8とを同期させてスイッチングするようにしている。
【0095】
これにより、スイッチング素子Q5におけるスイッチングオン時のデューティ比(Q5duty1)を小さくすることができ、リアクトル143に流れるリアクトル電流値iL1を大きくすることができる。
図6に示すように、加熱制御時のリアクトル電流iL1(
図6(a))は、通常制御時のリアクトル電流iL2(
図6(b))に対して約2倍に増加されている。よって、リアクトル143からの発熱量を大きくすることができるので、効果的な冷媒の加熱が可能となる。
【0096】
また、
図7に示すように、加熱制御時によって、フリーホイールダイオードD1〜D4の導通損失、スイッチング素子Q5、Q8の導通損失、スイッチング素子Q5、Q8のスイッチング損失、フリーホイールダイオードD6、D7の導通損失、リアクトル143のリアクトル損失を通常制御時よりも大きくすることができ、効果的な冷媒の加熱が可能となる。
【0097】
また、所定電力よりも大きい電力で充電を行うときに、上記のようなスイッチング素子Q5、Q8を同期させるスイッチング制御を行うと、リアクトル電流が過大となってしまうので、リアクトル143の体格を大きくする必要が発生してしまう。しかしながら、本実施形態では、所定電力以下の電力で充電を行うときに、上記のようなスイッチング素子Q5、Q8を同期させるスイッチング制御を行うようにしているので、リアクトル143における大型化および過大電流の発生を防止しつつ、効果的な冷媒の加熱が可能となる。
【0098】
また、所定電力よりも大きい電力で充電を行うとき、あるいは液相冷媒の量が所定量より少ないときにおいては、ステップS140の通常制御によって、スイッチング素子Q5と、スイッチング素子Q8とを非同期でスイッチングするようにしている。
【0099】
これにより、それぞれのスイッチング素子Q5、Q8を最適な条件で作動させることができる。この場合、上記のようにスイッチング素子Q5、Q8を同期させてスイッチングする場合に対して、スイッチング素子Q5におけるスイッチングオン時のデューティ比は大きくなり、リアクトル電流iLは小さく設定されることになる。よって、所定電力よりも大きい電力で充電を行うときにおいて、リアクトル電流が過大になることがなく、また、液相冷媒の量も所定量より少ない場合であるので、液相冷媒の加熱に事足りるものとなる。
【0100】
また、ハウジング131内の液相冷媒の量を推定するために、温度センサ150を用いるようにしている。ハウジング131内に溜まる液相冷媒の量は、液相冷媒の温度が低いほど増加するので、液相冷媒の温度を検出することで、容易かつ確実に液相冷媒量を推定することができる。
【0101】
また、リアクトル143は、インバータ一体充電器140において、ハウジング131内で液相冷媒が溜まる位置の底壁部136に対応するように配設されている。
【0102】
これにより、インバータ一体充電器140におけるリアクトル143は、ハウジング131内で液相冷媒が溜まる位置に近接して配置されることになるので、リアクトル143から発生する熱を効果的に液相冷媒に伝達させることができ、確実な液相冷媒の加熱が可能となる。
【0103】
また、インバータ一体充電器140においては、モータ130用のインバータ141のスイッチング素子Q5、Q6を活用して、液相冷媒の加熱を可能とする充電器を形成可能としている。
【0104】
そして、充電器は、インバータ141と一体的に形成されたインバータ一体充電器140としているので、充電器とインバータ141とをコンパクトにすることができる。
【0105】
(第2実施形態)
第2実施形態の車両用充電装置100Aを
図8に示す。第2実施形態は上記第1実施形態に対して、インバータ一体充電器140を、別体で形成される充電器140Aとインバータ141としたものである。
【0106】
充電器140Aは、ハウジング131の底壁部136に当接するように設けられている。また、インバータ141は、ハウジング131の側面部135に当接するように設けられている。制御装置180による制御内容は、上記第1実施形態の
図3〜
図5で説明した内容と同一である。
【0107】
このように、インバータ一体充電器140は、充電器140Aとインバータ141とが別体で形成されるものでも良く、第2実施形態は上記第1実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0108】
(第3実施形態)
第3実施形態について、
図9〜
図13を用いて説明する。第3実施形態は、上記第1、第2実施形態に対して、車両用充電装置100、100Aの構成は同一としつつも、制御装置180による冷媒加熱時の要領を変更している。
【0109】
第3実施形態では、車両停止時で、圧縮機121が停止されており、且つ、インバータ一体充電器140、あるいは充電器140Aが停止されているときに(充電を行っていないときに)、高電圧バッテリ110の電力を用いて、ハウジング131内に溜まる液相冷媒の加熱を行うようにしている。本実施形態の液相冷媒加熱のための制御は、車両停止時に高電圧バッテリ110への充電が成された後で、車両の次の走行が開始されるまでの間で実施されるのが好ましい。
【0110】
以下、制御装置180が実施する制御内容について、詳細に説明する。
【0111】
まず、
図9に示すステップS200で、制御装置180は、温度センサ150によって得られる底壁部136の温度が、所定温度以下であるか否かを判定する。つまり、ハウジング131内に液相冷媒量が所定量以上溜まっているか否かを判定する。
【0112】
ステップS200で液相冷媒が所定量以上溜まっていると判定すると、制御装置180は、ステップS210で、リアクトル電流直流化による液相冷媒の加熱を実施する。この制御は、高電圧バッテリ110からリアクトル143に直流電流を流し、リアクトル143を発熱させて、液相冷媒を加熱するものである。
【0113】
具体的には、制御装置180は、メインリレーSMR1、SMR2をオンにし、スイッチング素子Q1〜Q8にうち、スイッチング素子Q6、Q7を対象にスイッチングオン−オフの切替えの制御を行う。制御装置180は、
図10に示すように、スイッチング素子Q6については、本制御中は常時オンとする。そして、スイッチング素子Q7をオン−オフさせることで、高電圧バッテリ110からリアクトル143に流れるリアクトル電流iLが、ほぼ狙い値iL*となるように(ほぼ一定となるように)制御する。
【0114】
スイッチング素子Q7がオンにされると、リアクトル電流iLの値は増加していく。逆に、スイッチング素子Q7がオフされると、リアクトル電流iLの値は減少していく。ここで、狙い値iL*を基にして、スイッチング素子Q7のオン−オフを制御すると、ハンチングを起こすおそれが生ずるため、制御装置180は、
図11に示すヒステリシス制御器181によって、実際のリアクトル電流iLの値をフィードバックさせながら制御することで、ハンチングを防止するようにしている。
【0115】
即ち、制御装置180は、リアクトル電流iLが、狙い値iL*+ΔiL/2を超えたとき、スイッチング素子Q7をオフにする。このとき、リアクトル143には、
図12中の実線矢印のようにリアクトル電流iLが流れる。また、制御装置180は、リアクトル電流iLが、狙い値iL*−ΔiL/2を下回ったとき、スイッチング素子Q7をオフにする。このとき、リアクトル143には、
図12中の破線矢印のようにリアクトル電流iLが流れる。
【0116】
上記の制御により、
図10に示すように、リアクトル電流iLは、のこぎりの刃のような増加減少を持つものの、狙い値iL*±ΔiL/2の間で、ほぼ一定となる電流値に制御される。
【0117】
本実施形態においては、車両の走行停止時に、圧縮機121が停止されており、インバータ一体充電器140(あるいは充電器140A)による高電圧バッテリ110への充電が行われていないとき、高電圧バッテリ110からインバータ充電器140のリアクトル143に電流を流すことによって、リアクトル143から発生する熱によってハウジング131内に溜まる液相冷媒を加熱して蒸発させることができる。よって、圧縮機121を作動させるときの液相冷媒による液圧縮を無くすことができ、次に車両が走行開始される段階で、すぐに圧縮機121を作動させることできる。
【0118】
そして、冷媒を加熱させるために、高電圧バッテリ110に充電するためのインバータ一体充電器140を流用するようにしているので、従来技術のように専用の加熱部の設定による圧縮機の体格増加やコスト増加を招くことがない。
【0119】
また、リアクトル143に直流電流が流れるように制御しているので、交流を流す場合に比べて電流値の実効値を大きくすることができ、リアクトル143からの発熱量を大きくすることができ、効果的な冷媒の加熱が可能となる。直流電流の実効値を1としたとき、交流電流の平均実効値は、1/√2であり、発熱量は電流の2乗に比例することから、
図13に示すように、リアクトル電流直流化制御時の損失は、上記第1、第2実施形態での加熱制御時の交流電流での損失と比べると、約2倍の損失とすることができる。
【0120】
また、制御装置180は、ヒステリシス制御器181を備え、リアクトル電流iLをヒステリシス制御器181によってフィードバックさせながら制御するようにしているので、スイッチング素子Q7のスイッチングを行う際に、リアクトル電流iLの変化に対して、スイッチングのハンチングを起こすことが防止され、リアクトル143に対して狙いとする直流電流を安定的に流すことができる。
【0121】
(第4実施形態)
第4実施形態の電動圧縮機121B、121Cを
図14に示す。第4実施形態は、上記第1〜第3実施形態に対して、リアクトル143の設定位置を変更したものである。
【0122】
リアクトル143は、電動圧縮機121B、121C内に設けられている。具体的には、リアクトル143は、モータ130のハウジング131内に設けられている。リアクトル143の外側には、外鉄芯としてのダストコア143bが設けられている。ダストコア143bは、例えば、鉄粉が固められて形成されたものである。更に、ダストコア143bの外側には、鉄材あるいはアルミニウム材等の金属材から形成されたリアクトルケース143cが設けられている。上記のようにリアクトル143を収容するリアクトルケース143cは、ハウジング131の内周面に焼き嵌めによって固定されている。リアクトルケース143cは、
図14(a)に示すように、ハウジング131内で圧縮機121とは反対側に配置されている。尚、リアクトルケース143cは、
図14(b)に示すように、ハウジング131内で圧縮機121側に配置されるようにしても良い。
【0123】
リアクトルケース143cの中心部は、中空となっており、モータ130の回転軸132が挿通されて、リアクトルケース143cと回転軸132との間には、中空部143dが形成されており、リアクトルケース143cによってモータ130の回転作動が妨げられないようになっている。
【0124】
尚、本実施形態では、ハウジング131の上側には、インバータカバー141bが形成されており、インバータ141は、インバータカバー141b内に収容されている。
【0125】
本実施形態においては、リアクトル143を電動圧縮機121B、121Cの内部に設けるようにしたので、リアクトル143から発生する熱を直接的に液相冷媒に伝達させることができ、確実な液相冷媒の加熱が可能となる。
【0126】
(その他の実施形態)
上記各実施形態では、圧縮機121(電動圧縮機121A〜121C)内の液相冷媒の温度をハウジング131の底壁部136に設けられた温度センサ150によって間接的に検出するようにしたが、温度センサ150は、ハウジング131内で液相冷媒の温度を直接的に検出するものとしても良い。
【0127】
また、温度センサ150を、外気温度を検出する外気温度センサとし、制御装置180は、検出された外気温度から液相冷媒の量を推定するようにしても良い。
【0128】
また、圧縮機121としてスクロール型の圧縮機構を使用するものとして説明したが、これに限らず、他のピストン型やロータリー型等の圧縮機構を使用するものとしても良い。
【0129】
また、制御装置180は、1つの制御装置として説明したが、これに限らず、空調用の制御部と充電用の制御部とに分かれており、それぞれの制御部が互いに通信手段で結ばれたものとしても良い。
【0130】
また、上記各実施形態では、商用電源200から高電圧バッテリ(蓄電池)110を充電する充電動作の場合について記載したが、高電圧バッテリ(蓄電池)110から商用電源200に放電する逆潮流動作の場合であっても良い。