(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
第1の中心導体、該第1の中心導体の周囲に設けられている絶縁体であって、発泡構造又は中空構造を有する絶縁体、該絶縁体の周囲に設けられている第1の外部導体、及び、該第1の外部導体の周囲に設けられている絶縁被膜により構成されている同軸ケーブルであって、先端において該絶縁被膜が除去されて前記第1の外部導体が露出していると共に該第1の外部導体が除去されて該絶縁体が露出している同軸ケーブルに取り付けられる同軸コネクタであって、
前記同軸ケーブルが延在している延在方向に略直交する中心軸を有する円筒部、及び、該円筒部から該同軸ケーブルに沿って延在している保持部を含んでいるハウジングと、
前記ハウジングに取り付けられているブッシングと、
中心軸が延在する方向から平面視したときに前記円筒部の中心に位置し、かつ、前記ブッシングにより前記ハウジングと絶縁されているソケットであって、前記第1の中心導体と接続されるソケットと、
を備えており、
前記保持部は、
前記第1の外部導体を保持する第1のかしめ部と、
前記絶縁被膜を保持する第2のかしめ部であって、前記絶縁被膜の周囲に巻き付けられる板状部材である第2のかしめ部と、
を有しており、
前記第2のかしめ部は、前記絶縁被膜に向かって折り曲げられている折り曲げ部を含んでおり、
前記折り曲げ部は、前記円筒部から遠い方の前記第2のかしめ部の縁部に接続され、かつ、該円筒部に向かって折り曲げられていること、
を特徴とする同軸コネクタ。
【背景技術】
【0002】
従来の同軸コネクタとしては、例えば、特許文献1に記載のL型同軸コネクタが知られている。
図7は、特許文献1に記載のL型同軸コネクタ110の分解斜視図である。
【0003】
図7に示すように、ハウジング112は、外部導体222と接続されている。ブッシング114は、ハウジング112に取り付けられている。ソケット116は、ブッシング114に取り付けられ、かつ、該ブッシング114によりハウジング112と絶縁されている。ハウジング112は、折り曲げられることにより該ブッシング114に圧接しているかしめ部126と、折り曲げられることにより同軸ケーブル220の絶縁被膜221に圧接しているかしめ部130と、を含んでいる。ブッシング114は、かしめ部126からの力により、絶縁体223に圧接している。ソケット116は、ブッシング114からの力により、絶縁体223を破壊して中心導体224と接続されている。
【0004】
ところで、近年、同軸ケーブル220において、発泡構造又は中空構造を有する絶縁体223を用いることが提案されている。これにより、絶縁体223の誘電率が低くなるので、外部導体222と中心導体224とを近づけることが可能となる。その結果、中心導体224の直径を大きくすることによって、同軸ケーブル220の特性インピーダンスを所望の値から変動させることなく、同軸ケーブル220の導体損を低減することができる。
【0005】
しかしながら、発泡構造又は中空構造を有する絶縁体223が用いられた同軸ケーブル220では、同軸ケーブル220の弾性が小さくなる。そのため、かしめ部126,130により同軸ケーブル220を保持すると、同軸ケーブル220からの反発力が小さいために、同軸ケーブル220がL型同軸コネクタ110から抜けてしまうおそれがある。
【0006】
そこで、かしめ部126,130をより強い力で同軸ケーブル220に圧接させることが考えられる。ところが、発泡構造又は中空構造を有している絶縁体223は変形しやすいため、同軸ケーブル220にかしめ部126,130が圧接している部分において同軸ケーブル220が変形してしまい、同軸ケーブル220の特性インピーダンスが所望の値から変動してしまう。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明の一実施形態に係る同軸コネクタについて、図面を参照して説明する。
【0013】
(同軸コネクタの構成)
図1は、本発明の一実施形態に係る同軸コネクタ10の外観斜視図である。
図2は、同軸コネクタ10の分解斜視図である。
図3は、同軸コネクタ10の断面構造図である。
図4は、同軸コネクタ10のハウジング12の組立て途中における斜視図である。
図1ないし
図3(特に、
図2参照)において、ハウジング12、ブッシング14及びソケット16が重ねられる方向をz軸方向とする。z軸方向の正方向は、ハウジング12からソケット16へと向かう方向である。また、同軸ケーブル220が延在している方向をx軸方向とし、x軸方向とz軸方向に直交する方向をy軸方向とする。x軸方向の正方向は、同軸ケーブル220からソケット16へと向かう方向である。x軸方向は、z軸方向に直交している。
【0014】
同軸コネクタ10は、
図1及び
図2に示すように、ハウジング12、ブッシング14及びソケット16により構成されている。同軸コネクタ10は、
図3(a)及び
図3(b)に示すように、外部導体232及び中心導体234を有するレセプタクル230に対して、着脱可能である。
【0015】
同軸ケーブル220は、
図2に示すように、絶縁被膜221、外部導体222、絶縁体223及び中心導体224により構成されている。絶縁体223は、中心導体224の周囲に設けられており、発泡構造又は中空構造を有する。したがって、絶縁体223は、低い反発力しか有しておらず、比較的容易に変形する。外部導体222は、絶縁体223の周囲に設けられている。絶縁被膜221は、外部導体222の周囲に設けられている。また、同軸ケーブル220の先端において絶縁被膜221が除去されて外部導体222が露出している。更に、同軸ケーブル220の先端において外部導体222が除去されて絶縁体223が露出している。
【0016】
ハウジング12は、1枚の金属板(例えば、ばね用りん青銅)により作製され、
図2及び
図4に示すように、円筒部20、背面部21、保持部23及び固定部24を含んでいる。
【0017】
円筒部20は、z軸方向に延在する中心軸を有しており、
図4に示すように、z軸方向の正方向側に位置する開口O1及びz軸方向の負方向側に位置する開口O2を有している。ただし、円筒部20は、一部(x軸方向の負方向側の部分)が切り欠かれている。
【0018】
背面部21は、円筒部20に接続されており、
図4の状態から90度だけ折り曲げられて、
図2に示すように、円筒部20の開口O2を覆う板状部材である。背面部21上には、ブッシング14が載置される。
【0019】
固定部24は、円筒部20に接続され、
図2に示すように、ブッシング14をy軸方向の両側から挟んでいる。固定部24は、
図4に示すように、z軸方向の正方向側から開口O1を平面視したときに、円筒部20の端部のそれぞれに設けられている。より詳細には、2つの固定部24は、円筒部20が切り欠かれることにより形成される2つの端部からx軸方向の負方向側へと延在し、互いに対向している板状部材である。
【0020】
また、固定部24には、湾曲部33が設けられている。湾曲部33は、
図4に示すように、固定部24の間隔が広がるように固定部24の一部がy軸方向の正方向側又は負方向側に湾曲させられることにより形成されている。
【0021】
保持部23は、
図1及び
図2に示すように、円筒部20から同軸ケーブル220に沿って延在しており、具体的には、背面部21のx軸方向の負方向側に接続されている。保持部23は、
図4に示すように、かしめ部26,28,30を有している。
【0022】
かしめ部26は、同軸コネクタ10の組立て前の状態において、
図2に示すように、背面部21のx軸方向の負方向側に設けられているU字状の板状部材である。かしめ部26は、
図1に示すように曲げられることにより、ブッシング14、固定部24及び絶縁体223の周囲に巻き付けられている。これにより、かしめ部26は、固定部24及び絶縁体223に圧接する。この際、ブッシング14及び固定部24は、かしめ部26に押されてブッシング14に圧接する。よって、固定部24及びかしめ部26は、ブッシング14を保持している。以上より、かしめ部26は、ブッシング14、ソケット16及び同軸ケーブル220をハウジング12に固定する役割を果たす。
【0023】
かしめ部28は、同軸コネクタ10の組立て前の状態において、
図4に示すように、かしめ部26のx軸方向の負方向側に設けられているU字状の板状部材である。かしめ部28は、
図1に示すように曲げられることにより、外部導体222の周囲に巻き付けられて、同軸ケーブル220の外部導体222を保持する。これにより、かしめ部28は、同軸ケーブル220をハウジング12に固定する役割、及び、外部導体222とハウジング12とを電気的に接続する役割を果たす。
【0024】
かしめ部30は、同軸コネクタ10の組立て前の状態において、
図4に示すように、かしめ部28のx軸方向の負方向側に設けられているU字状の板状部材である。かしめ部30は、
図1に示すように曲げられることにより、絶縁被膜221の周囲に巻き付けられて、同軸ケーブル220の絶縁被膜221を保持する。これにより、かしめ部30は、同軸ケーブル220をハウジング12に固定する役割を果たす。
【0025】
更に、かしめ部30は、
図1、
図2及び
図4に示すように、絶縁被膜221に向かって折り曲げられている折り曲げ部60を含んでいる。より詳細には、折り曲げ部60は、円筒部20から遠い方のかしめ部30の縁部(すなわち、x軸方向の負方向側の縁部)においてかしめ部30の本体30aに接続され、かつ、円筒部30に向かって(すなわち、x軸方向の正方向側に向かって)折り曲げられている。そして、折り曲げ部60と本体30aとのなす角度は、0度より大きく90度以下である。これにより、かしめ部30が絶縁被膜221に巻き付けられたときに、折り曲げ部60は絶縁被膜221に突き刺さる又は食い込むようになる。
【0026】
ブッシング14は、樹脂(例えば、液晶ポリマー)からなる絶縁体により構成されており、ハウジング12とソケット16とを絶縁する役割を果たしている。ブッシング14は、ハウジング12に取り付けられており、
図2に示すように、円形部36及び保持部38により構成されている。
【0027】
円形部36は、ソケット16を保持する役割を果たし、
図2に示すように、背面部39及び円筒部41により構成されている。背面部39は、z軸方向から平面視したときに、円形をなす板状部材であり、ブッシング14がハウジング12に取り付けられた際に、
図1に示すように、円筒部20内に収まっている部分である。
【0028】
円筒部41は、
図2に示すように、背面部39のz軸方向の正方向側の面上に設けられており、z軸方向に延在する中心軸を有している。円筒部41の中心軸と円筒部20の中心軸とは略一致している。
【0029】
保持部38は、ソケット16を保持する役割を果たし、
図2に示すように、背面部42及び押さえ部46により構成されている。背面部42は、円形部36の背面部39からx軸方向の負方向側に向かって延在している長方形状の板状部材である。該背面部42上には、
図2に示すように、ソケット16が載置される。
【0030】
押さえ部46は、x軸方向に垂直な板状部材であり、背面部42に設けられている。ただし、押さえ部46のz軸方向の負方向側の端部と背面部42のz軸方向の正方向側の面との間には隙間Spが設けられている。同様に、円筒部41と背面部42のz軸方向の正方向側の面との間にも隙間Spが設けられている。これにより、押さえ部46のx軸方向の負方向側の空間と円筒部41内とが隙間Spを介して連通している。
【0031】
また、ブッシング14は、
図2に示すように、2つに分離可能である。具体的には、ブッシング14は、y軸方向の正方向側の半分とy軸方向の負方向側の半分にV字型に分かれる。これにより、後述するソケット16がブッシング14に取り付けられることが可能である。
【0032】
ソケット16は、1枚の金属板(例えば、ばね用りん青銅)により作製され、
図1及び
図2に示すように、ブッシング14に取り付けられ、該ブッシング14によりハウジング12と絶縁されている。該ソケット16は、
図2に示すように、円筒部48、背面部50及び取り付け部52により構成されている。円筒部48は、
図2に示すように、背面部50のx軸方向の正方向側に接続されており、z軸方向から平面視したときに、円環の一部が切り欠かれた形状を有している。円筒部48の半径は、ブッシング14の円筒部41の半径よりも小さい。よって、円筒部48は、同軸コネクタ10が組立てられた際に、
図1に示すように、円筒部41内に収まっている。更に、円筒部48は、円筒部20の中心軸が延在する方向(z軸方向)から平面視したときに円筒部20の中心に位置している。
【0033】
背面部50は、円筒部41から隙間Spを通過するように、x軸方向の負方向側に延在している板状部材である。取り付け部52は、背面部50のx軸方向の負方向側の端部において、z軸方向の正方向側に垂直に折り曲げられることにより設けられており、同軸ケーブル220の中心導体224と接続される。より詳細には、取り付け部52は、所定の隙間を介して並ぶ2枚の切断用片52a,52bにより構成されている。そして、同軸ケーブル220の中心導体224が切断用片52a,52bの間の所定の隙間に挟まれるように、z軸方向の正方向側から負方向側へと、同軸ケーブル220がかしめ部26により切断用片52a,52bに押さえつけられる。これにより、切断用片52a,52bは、かしめ部26からの力により同軸ケーブル220の絶縁体223に圧接する。そして、切断用片52a,52bは、同軸ケーブル220の絶縁体223の一部を切断(破壊)して、中心導体224と接続される。
【0034】
以上のように構成された同軸コネクタ10は、以下に説明する手順により組立てられる。
図5及び
図6は、同軸コネクタ10の組立て途中における分解斜視図である。
【0035】
まず、
図5に示すように、ブッシング14に対してソケット16を取り付ける。より詳細には、円筒部41内に円筒部48が収まると共に、背面部50が隙間Spに収まるように、ブッシング14によりソケット16をy軸方向の両側から挟み込む。
【0036】
次に、
図6に示すように、ハウジング12に対してブッシング14を取り付ける。より詳細には、円筒部20内に円形部36が収まると共に、固定部24間に保持部38が収まるように、z軸方向の正方向側からブッシング14をハウジング12に対して押し込むようにして取り付ける。
【0037】
次に、
図6に示すように、同軸ケーブル220を取り付け部52上に載置する。この際、同軸ケーブル220は、先端において、外部導体222及び絶縁体223が露出するように加工されている。ただし、中心導体224は、露出していない。絶縁体223が取り付け部52上に位置し、外部導体222がかしめ部28間に位置し、絶縁被膜221がかしめ部30間に位置するように、同軸ケーブル220をソケット16に載置する。
【0038】
同軸ケーブル220を載置すると、かしめ部26,28,30のかしめ工程を行う。かしめ部26のかしめ工程では、かしめ部26を折り曲げることにより、絶縁体223を切断用片52a,52bに押し付ける。この際、絶縁体223の一部が切断用片52a,52bにより切断され、切断用片52a,52bと中心導体224とが接続される。
【0039】
また、かしめ部28のかしめ工程では、かしめ部28を折り曲げることにより、かしめ部28を外部導体222に巻き付ける。同様に、かしめ部30のかしめ工程では、かしめ部30を折り曲げることにより、かしめ部30を絶縁被膜221に巻き付ける。以上の工程を経て、同軸コネクタ10は、
図1に示すような構成を有するようになる。
【0040】
次に、同軸コネクタ10のレセプタクル230への着脱について説明する。レセプタクル230は、
図3に示すように、外部導体232及び中心導体234により構成されている。外部導体232は、円筒形状の電極である。中心導体234は、外部導体232の中心においてz軸方向の負方向側に突出している電極である。
【0041】
前記同軸コネクタ10をレセプタクル230に装着する際には、
図3(a)及び
図3(b)に示すように、外部導体232を開口O1から円筒部20に挿入する。これにより、円筒部20の内周面と外部導体232の外周面とが接触し、同軸ケーブル220の外部導体222とレセプタクル230の外部導体232とがハウジング12を介して電気的に接続されるようになる。この際、円筒部20は、外部導体232により押し広げられる。これにより、円筒部20の内周面が、外部導体232の外周面に圧接するようになり、同軸コネクタ10がレセプタクル230から容易に外れることが防止されている。
【0042】
また、外部導体232が円筒部20に挿入されると同時に、
図3(a)及び
図3(b)に示すように、中心導体234がソケット16の円筒部48に挿入される。これにより、中心導体234の外周面と円筒部48の内周面とが接触し、同軸ケーブル220の中心導体224とレセプタクル230の中心導体234とがソケット16を介して電気的に接続されるようになる。
【0043】
(効果)
以上のように構成された同軸コネクタ10によれば、発泡構造又は中空構造を有する絶縁体223を有する同軸ケーブル220から脱落することを抑制できる。より詳細には、発泡構造又は中空構造を有する絶縁体223が用いられた同軸ケーブル220では、同軸ケーブル220の弾性が小さくなる。そのため、かしめ部126,130により同軸ケーブル220を保持すると、同軸ケーブル220からの反発力が小さいために、同軸ケーブル220がL型同軸コネクタ110から抜けてしまうおそれがある。
【0044】
そこで、同軸コネクタ10では、かしめ部30は、
図1、
図2及び
図4に示すように、絶縁被膜221に向かって折り曲げられている折り曲げ部60を含んでいる。これにより、かしめ部30が絶縁被膜221に巻き付けられたときに、折り曲げ部60は絶縁被膜221に突き刺さる、又は食い込むようになる。その結果、かしめ部30と絶縁被膜221との間の摩擦力及び引っ掛かりによる力が大きくなる。すなわち、かしめ部30によって絶縁被膜221を強くかしめなくても、かしめ部30と絶縁被膜221との間に十分に大きな摩擦力及び引っ掛かりによる力が発生する。よって、発泡構造又は中空構造を有する絶縁体223を有する同軸ケーブル220から同軸コネクタ10が脱落することが抑制される。
【0045】
更に、同軸コネクタ10では、折り曲げ部60は、円筒部20から遠い方のかしめ部30の縁部においてかしめ部30の本体30aに接続され、かつ、円筒部30に向かって折り曲げられている。更に、また、折り曲げ部60と本体30aとのなす角度は0度より大きく90度以下である。これにより、ケーブル220が同軸コネクタ10から引き抜かれる方向に力を受けると、折り曲げ部60は、より深く絶縁被膜221に突き刺さるようになる。その結果、同軸ケーブル220から同軸コネクタ10が脱落することがより効果的に抑制される。
【0046】
なお、折り曲げ部60の先端はとがっていることが好ましい。