(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎない。
【0021】
《実施形態1》
図1は、本発明の実施形態1に係る空気調和装置(1)の全体構成を示す図である。こ
の空気調和装置(1)は、複数台の室内機(20,20,…)単位で運転制御することができるマルチ型空気調和装置であり、機種仕様の異なる室外機(10)、室内機(20)、及びリモートコントローラ(以下、リモコンという)(30)を組み合わせて、空気調和動作を行うことができるように構成されている。
【0022】
空気調和装置(1)は、1台の室外機(10)と、1台の親機(20a)と、該親機(20a)に連動する3台の子機(20b,20c,20d)とから成る4台の室内機(20,20,…)と、該室内機の親機(20a)に接続された1台のリモコン(30)とを備えている。尚、室内機の子機の台数は、これに限れず、1台以上であればよい。
【0023】
室外機(10)は、運転停止中に電力供給を遮断可能な待機電力対応機種又は運転の状態に関わらず電力供給される待機電力未対応機種で構成される。
【0024】
室内機の親機(20a)は、電力供給が遮断された待機電力対応機種の室外機(10)に電力供給を開始して、該室外機(10)を起動させる起動手段を有する待機電力対応機種で構成される。
【0025】
室内機の子機(20b,20c,20d)は、上記待機電力対応機種又は上記起動手段を有しない待機電力未対応機種で構成される。
【0026】
リモコン(30)は、運転停止中に後述する液晶表示部(33)及びリモコン通信部(32)の少なくとも一方への電力供給を遮断可能な待機電力対応機種又は運転の状態に関わらず液晶表示部(33)及びリモコン通信部(32)への電力供給が行われる待機電力未対応機種で構成される。
【0027】
以下、本発明を具体的に説明していく。
【0028】
図2は、本発明の一実施例である待機電力対応機種の室外機(10)と待機電力対応機種のリモコン(30)と室内機(20,20,…)とが接続された場合の空気調和装置(1)の電装系統ブロック図である。
【0029】
この空気調和装置(1)では、室内機の子機(20b,20c,20d)として待機電力未対応機種の室内機を採用している。尚、
図2において、室内機の子機(20c,20d)は、便宜上省略している。
【0030】
空気調和装置(1)では、室外機(10)で、商用交流電源(40)から交流(この例では200Vの三相交流)を受電して室外機(10)内の回路や電動圧縮機の電力として用いる他、その三相交流の2相分を室内機(20,20,…)に給電するようになっている。また、室外機(10)と室内機の親機(20a)との間では、室内機の親機(20a)から室外機(10)を制御するため等の目的で、制御信号の送受信による通信を行うようになっている。また、室内機(20,20,…)間では、室内機の親機(20a)から室内機の子機(20b,20c,20d)を制御するため等の目的で、制御信号の送受信による通信を行うようになっている。このように、空気調和装置(1)では、室外機(10)から室内機(20,20,…)への給電と両者間の制御信号の送受信を行うために、交流電源(40) からの交流を送電する電力配線(L)と、制御信号を伝送する信号線(S)と、前記交流の送電と制御信号の伝送を共用する共通線(N)との3線(内外配線)が室外機(10) と室内機(20,20,…)間に設けられている。
【0031】
この例では、電力配線(L)は、室外機(10)において、交流電源(40)のR相に接続され、共通線(N)は、交流電源(40)のS相に接続されている。こうして、室内機(20,20,…)には、単相交流が供給されている。
【0032】
<室外機(待機電力対応機種)>
室外機(10)は、電装系統として、第1室外機電源部(14)、第2室外機電源部(12)、室外機伝送部(11)、室外機制御部(13)、室外機記憶部(15)、及びリレー(K13R,K14R,K15R,K16R)を備えている。尚、図示は省略するが、室外機(10)には、電動圧縮機、室外熱交換器、室外ファン、膨張弁などの機器が設けられている。
【0033】
−第1室外機電源部(14)−
第1室外機電源部(14)は、商用交流電源(40)から受電した3相交流を直流に変換し、いわゆるインテリジェントパワーモジュール(Intelligent Power Module、以下、IPMと称する)や室外ファンモータに供給する。尚、IPMは、入力された直流を所定の周波数及び電圧の交流に変換し、前記電動圧縮機のモータに給電する。
【0034】
−第2室外機電源部(12)−
第2室外機電源部(12)は、前記三相交流のR相及びS相の2相を直流(この例では5V)に変換し、室外機制御部(13)に供給する。
【0035】
−室外機伝送部(11)−
室外機伝送部(11)は、室内機(20)の後述する室内機伝送部(21)との間で信号の送受信をして通信を行う。この通信では、信号線(S)と共通線(N)との間の電位差に基づいて、ハイレベル及びローレベルの2値のデジタル信号による通信を行う。そのため、室内機伝送部(21)内の通信回路は、一端が共通線(N)に接続され、通信回路の他端はリレー(K14R)を介して信号線(S)に接続されている。
【0036】
−室外機制御部(13)−
室外機制御部(13)は、マイクロコンピュータとそれを動作させるプログラムを含んでいる。室外機制御部(13)は、例えば室外機伝送部(11)が室内機伝送部(21)から受信した信号に応じて前記電動圧縮機等の制御を行う他、室外機(10)の起動時の制御(後述)も行う。
【0037】
−室外機記憶部(15)−
室外機記憶部(15)は、室外機制御部(13)に接続されている。
【0038】
室外機記憶部(15)には、室外機(10)が待機電力対応機種であるか否かを示す機種仕様情報(「1」、「0」のビット)が予め記憶されている。
【0039】
−リレー(K13R)−
リレー(K13R)は、第2室外機電源部(12)への交流供給の経路を切替えるリレーである。リレー(K13R)は、いわゆるC接点リレーで構成されている。詳しくは、リレー(K13R)は、2つの固定接点と、ひとつの可動接点を有し、該リレー(K13R)のコイル(不図示)に通電されていない場合は、一方の固定接点(ノーマルクローズ接点とよぶ)と可動接点とが接続され、上記コイルに通電されると、もう一方の固定接点(ノーマルオープン接点とよぶ)と可動接点とが接続される。リレー(K13R)の切換え(コイルへの通電の有無)は、室外機制御部(13)が制御する。
【0040】
この例では、リレー(K13R)の可動接点は、第2室外機電源部(12)に接続されている。また、ノーマルクローズ接点は、信号線(S)に接続され、ノーマルオープン接点は、前記三相交流のR相に接続されている。
【0041】
− リレー(K14R) −
リレー(K14R)は、信号線(S)と室外機伝送部(11)との接続及び非接続を切り替えるリレーである。リレー(K14R)を接続状態(オン)にすれば、信号線(S)と室外機伝送部(11)とが接続され、リレー(K14R)を非接続状態(オフ)にすれば、信号線(S)と室外機伝送部(11)とが切断される。このリレー(K14R)のオンオフは、室外機制御部(13)が制御する。
【0042】
−リレー(K15R)−
リレー(K15R)は、室外機伝送部(11)と前記三相交流のR相との間に設けられ、室外機伝送部(11)への電力供給の有無を切り替えるリレーである。リレー(K15R)をオンにすれば、室外機伝送部(11)は給電され、リレー(K15R)をオフにすれば室外機伝送部(11)への給電が断たれる。このリレー(K14R)のオンオフは、室外機制御部(13)が制御する。
【0043】
−リレー(K16R)−
リレー(K16R)は、前記三相交流のR相、S相の供給ラインにそれぞれ設けられている。これら2つのリレー(K16R)は、第1室外機電源部(14)への電力供給の有無を切り替えるリレーである。リレー(K16R)をオンにすれば、第1室外機電源部(14)は給電され、リレー(K16R)をオフにすれば第1室外機電源部(14)への給電が断たれる。このリレー(K16R)のオンオフは、室外機制御部(13)が制御する。
【0044】
<室内機の親機(待機電力対応機種)>
室内機の親機(20a)は、電装系統として、室内機電源部(22)と、本発明に係る送信部を構成する室内機伝送部(21)及び室内機通信部(25)と、室内機制御部(23)と、室内機記憶部(24)と、リレー(K2R)と、第1及び第2ダイオード(D1,D2)とを備えている。尚、図示は省略するが、室内機(20)には、室内熱交換器、室内ファンなどの機器が設けられている。
【0045】
−室内機電源部(22)−
室内機電源部(22)は、電力配線(L)及び共通線(N)を介して交流電源(40)から供給された交流を直流(この例では5V)に変換し、室内機制御部(23)に供給する。
【0046】
−室内機伝送部(21)−
室内機伝送部(21)は、前述したように、室外機伝送部(11)との間で信号の送受信による通信を行う。そして、信号線(S)と共通線(N)との間の電位差に基づいて、デジタル信号による通信を行うので、室内機伝送部(21)の通信回路の一端は、第2ダイオード(D2)を介して信号線(S)に接続され、通信回路の他端は、共通線(N)に接続されている。
【0047】
−リレー(K2R)−
リレー(K2R)は、電力配線(L)と信号線(S)とを結ぶバイパス線(B)に設けられており、電力配線(L)と信号線(S)との接続及び非接続を切り替えるリレーである。このリレー(K2R)は、電力供給が遮断された室外機(10)に対し電力供給を開始する起動手段として機能する。そして、リレー(K2R)をオンにすれば、電力配線(L)と信号線(S)とが接続され、リレー(K2R)をオフにすれば、電力配線(L)と信号線(S)とが切断される。リレー(K2R)のオンオフは、室内機制御部(23)が制御する。
【0048】
−第1ダイオード(D1)−
第1ダイオード(D1)は、アノードがバイパス線(B)と信号線(S)との接続ノード(ND1)に接続され、カソードがリレー(K2R)に接続されている。この第1ダイオード(D1)は、室内機伝送部(21)へ流入する方向の交流電流を阻止する。
【0049】
−第2ダイオード(D2)−
第2ダイオード(D2)は、アノードが信号線(S)の接続ノード(ND1)に接続され、カソードが室内機伝送部(21)における信号入力ノード(ND2)に接続されている。この第2ダイオード(D2)は、室内機伝送部(21)から流出する方向の交流電流を阻止する。
【0050】
−室内機制御部(23)−
室内機制御部(23)は、マイクロコンピュータとそれを動作させるプログラムを含んでいる。室内機制御部(23)は、例えば室内ファンの運転制御等を行う。この室内機制御部(23)が判定部を構成する。
【0051】
−室内機記憶部(24)−
室内機記憶部(24)は、室内制御部(23)に接続されている。この室内機記憶部(24)には、室内機(20)が待機電力対応機種であるか否かを示す機種仕様情報(「1」、「0」のビット)が予め記憶されている。また、詳しくは後述するが、システム全体が待機電力対応であるか否かを示す情報が記憶される。
【0052】
−室内機通信部(25)−
室内機通信部(25)は、室内機制御部(23)に接続されている。この室内機通信部(25)は、リモコン(30)の後述するリモコン通信部(32)との間で制御信号の送受信をして、リモコン(30)と通信する。室内機通信部(25)は、リモコン(30)からの指令を受信するために、運転の状態に関わらず、室内機電源部(22)によって給電されている。
【0053】
〈室内機の子機(待機電力未対応機種)〉
室内機の子機(20b,20c,20d)は、バイパス線(B)、リレー(K2R)、及びダイオード
(D1)を備えていない点のみが室内機の親機(20a)と異なる。そのため、詳細な説明は
省略する。
【0054】
〈リモコン(待機電力対応機種)〉
リモコン(30)は、ユーザーからの操作を受け付けると共に、ユーザーの操作に応じた制御信号を室内機通信部(25)に送信する。ユーザーは、例えば、リモコン(30)のボタン操作により、空気調和装置(1)の運転開始、停止、設定温度調整などを行えるようになっている。
【0055】
リモコン(30)は、電装系統として、リモコン電源部(31)、リモコン通信部(32)、液晶表示部(33)、リモコン制御部(34)、リモコン記憶部(35)、及びリレー(36,37)を備えたワイヤードリモコンである。
【0056】
−リモコン電源部(31)−
リモコン電源部(31)は、室内機通信部(25)に接続されている。このリモコン電源部(31)は、リモコン通信部(32)、液晶表示部(33)、及びリモコン制御部(34)とも接続され、該リモコン通信部(32)、液晶表示部(33)、及びリモコン制御部(34)に給電する。
【0057】
−リモコン通信部(32)−
リモコン通信部(32)は、リモコン電源部(31)と並列に室内機通信部(25)に接続されており、該室内機通信部(25)との間で制御信号を送受信して通信する。
【0058】
−液晶表示部(33)−
液晶表示部(33)は、例えばユーザが操作する内容や運転内容を表示する。尚、表示部は、液晶画面でなくてもよいことは勿論である。
【0059】
−リモコン制御部(34)−
リモコン制御部(34)は、マイクロコンピュータとそれを動作させるプログラムを含んでいる。リモコン制御部(34)は、例えば、運転開始信号や運転停止信号をリモコン通信部(32)へ出力したり、リレー(36,37)の開閉制御をする。
【0060】
−リモコン記憶部(35)−
リモコン記憶部(35)は、リモコン制御部(34)に接続されている。このリモコン記憶部(35)には、リモコン(30)が待機電力対応機種か否かを示す機種仕様情報(「1」、「0」のビット)が予め記憶されている。
【0061】
−リレー(36)−
リレー(36)は、リモコン電源部(31)とリモコン通信部(32)との間に設けられ、リモコン通信部(32)への電力供給の有無を切り替えるリレーである。リレー(36)をオンにすれば、リモコン通信部(32)はリモコン電源部(31)から給電され、リレー(36)をオフにすればリモコン通信部(32)への給電が断たれる。
【0062】
−リレー(37)−
リレー(37)は、リモコン電源部(31)と液晶表示部(33)との間に設けられ、液晶表示部(33)への電力供給の有無を切り替えるリレーである。リレー(37)をオンにすれば、リモコン電源部(31)から液晶表示部(33)に給電され、リレー(37)をオフにすれば液晶表示部(33)への給電が断たれる。
【0063】
〈空気調和装置の動作〉
次に、空気調和装置(1)の動作について説明する。
【0064】
図3は、空気調和装置(1)の状態遷移図である。空気調和装置(1)は、以下に説明するサスペンド状態、充電状態、ウエイト状態、及び運転状態の4つの状態を遷移する。尚、本明細書中において、待機電力とは「機器が非使用状態、若しくは何らかの入力(命令指示等)待ちの時に定常的に消費している電力」をいう。具体的には、空気調和装置(1)では、リモコン(30)の待ち受け状態に必要な電力が待機電力である。
【0065】
(1)サスペンド状態
サスペンド状態とは、室内機(20)には電力が供給され、室外機(10)には電力が供給されていない状態である。
【0066】
本実施形態のサスペンド状態は、一例として、空気調和装置(1)全体として消費電力
が最小になる状態となっている。具体的に、本実施形態のサスペンド状態では、室外機(10)は電力を受電してそれを室内機(20)へ供給はするが、内部の各回路や電動圧縮機などには電力が供給されていない状態である。つまり、室外機(10)は、交流電源(40)からの電力供給が遮断されている。
【0067】
室内機(20)は、待機電力が最小となる状態であり、本実施形態では、室内機制御部(23)においてリモコン(30)からの信号受信に関わる部分は、室内機電源部(22)から電力を受けて動作している。
【0068】
リモコン(30)は、待機電力が最小となる状態であり、リモコン通信部(32)及び液晶表示部(33)への電力供給が遮断され、ユーザーの運転操作の受け付けは可能な状態である。尚、室内機(20)及びリモコン(30)の消費電力(待機電力)の程度は、これに限られない。
【0069】
(2)充電状態
充電状態とは、室外機(10)では、第2室外機電源部(12)に充電が開始され、室外機伝送部(11)と室内機伝送部(21)の間の信号伝送が開始されるまでの期間の状態をいう。
【0070】
室内機(20)の電力消費は、サスペンド状態と同様である。
【0071】
リモコン(30)では、電力供給が遮断されていたリモコン通信部(32)及び液晶表示部(33)に給電される。
【0072】
(3)ウエイト状態
ウエイト状態とは、運転開始時には上記充電状態を抜けた状態であり、運転停止時には運転状態(後述)から遷移する状態であり、何れも、室外機(10)が、即時、運転状態へ移行可能な状態をいう。ウエイト状態では、室外機伝送部(11)、及び室外機制御部(13)の動作も可能である。特に、運転停止時のウエイト状態(運転状態から遷移するウエイト状態)は、電動圧縮機における冷媒圧力を均圧させるためや、運転開始と運転停止を繰り返すスケジュール運転が設定されている場合などのために設けられており、その時間は例えば10分である。なお、室内機(20)及びリモコン(30)の電力消費は、充電状態と同様である。
【0073】
(4)運転状態
運転状態とは、第1室外機電源部(14)からIPM及びファンモータに電力供給されて、電動圧縮機や室外ファンを運転可能、若しくは運転している状態をいう。
【0074】
リモコン(30)の電力消費は、充電状態と同様である。一方、室内機(20)の電力消費は、室内ファン等が運転状態となるため、前記の各状態よりも増加する。尚、この運転状態を除く、サスペンド状態、充電状態、ウエイト状態が本明細書中における「運転停止中」に相当する。
【0075】
−運転開始動作−
空気調和装置(1)では、運転開始する場合には、
図3に実線矢印で示した順で、サスペンド状態から運転状態に遷移する。
【0076】
<サスペンド状態における電装系統>
まず、サスペンド状態における電装系統の状態を説明する。
図2は、サスペンド状態におけるリレーの状態を示している。
【0077】
室外機(10)では、リレー(K14R)及びリレー(K15R)はオフ状態である。すなわち、室外機伝送部(11)は、信号線(S)との接続が断たれるとともに、電力の供給も断たれている。また、リレー(K13R)は、ノーマルクローズ接点と可動接点とが接続された状態である。つまり、第2室外機電源部(12)は、信号線(S)に接続されている。
【0078】
室内機(20)では、リレー(K2R)はオフ状態である。すなわち、信号線(S)と電力配線(L)とは電気的に非接続状態である。
【0079】
リモコン(30)では、リレー(36)及びリレー(37)はオフ状態である。すなわち、リモコン通信部(32)及び液晶表示部(33)は、リモコン電源部(31)からの電力供給が断たれている。
【0080】
〈サスペンド状態から充電状態への移行〉
図4は、第2室外機電源部(12)に充電される回路が形成された時点の各リレーの状態を示す図である。また、
図5は、充電状態への移行が完了した後の各リレーの状態を示す図である。例えばユーザーがリモコン(30)でボタン操作をすると、リレー(36)及びリレー(37)がオン状態になる。これにより、リモコン電源部(31)と液晶表示部(33)とが接続され、リモコン電源部(31)から液晶表示部(33)に電力が供給される。ユーザーがもう一度、リモコン(30)でボタン操作をすると、リモコン電源部(31)とリモコン通信部(32)とが接続され、リモコン電源部(31)からリモコン通信部(32)に電力が供給されると共に、リモコン(30)からリモコン通信部(32)を介して室内機の親機(20a)に運転指令信号が送信される。
【0081】
室内機の親機(20a)では、室内機制御部(23)が室内機通信部(25)介して上記運転指令信号を受信する。運転指令信号を受信した室内機制御部(23)は、リレー(K2R)をオンにする。そうすると、前記三相交流のR相から、電力配線(L)、リレー(K2R)、第1ダイオード(D1)、信号線(S)、及びリレー(K13R)を介して第2室外機電源部(12)に到る経路が形成される。これにより、第2室外機電源部(12)が充電される回路が形成される(
図4参照)。
【0082】
室外機(10)では、第2室外機電源部(12)が規定の直流(この例では5V)を出力できるようになると、室外機制御部(13)が起動する。
【0083】
室外機制御部(13)は、リレー(K13R)のノーマルオープン接点と可動接点とを接続状態とする。これにより、第2室外機電源部(12)は、信号線(S) を経由せずに交流電源(40) から電力供給された状態に切り換わる(
図5参照)。こうして、サスペンド状態から充電状態への移行が完了する。
【0084】
〈充電状態からウエイト状態への移行〉
図6は、ウエイト状態への移行完了時における各リレーの状態を示す図である。室内機(20)では、リレー(K2R)をオンにしてから所定の時間(室外機制御部(13)が起動するに十分な時間)が経過した後に、リレー(K2R)をオフにする。これにより、信号線(S)を信号の送受信に使用できるようになる。
【0085】
室外機(10)では、リレー(K2R)がオフになったのを見計らって、室外機制御部(13
がリレー(K15R)をオンにし、室外機伝送部(11)に電力が供給された状態にすると共に、リレー(K14R)をオンにする。これにより、室外機伝送部(11)内の通信回路が、信号線(S)及び共通線(N)を介して室内機伝送部(21)と接続され、室内機伝送部(21)と通信可能な状態になる。これで、空気調和装置(1)は、充電状態を抜け、即時運転状態へ移行可能なウエイト状態となる。
【0086】
〈ウエイト状態から運転状態への移行〉
図7は、運転状態における各リレーの状態を示す図である。ウエイト状態から運転状態への移行する際には、室外機(10)では、室外機制御部(13)がリレー(K16R)をオンにする。これにより、第1室外機電源部(14)への電力供給が開始される。そうして、第1室外機電源部(14)から上記IPMや室外ファンモータに電力が供給されて、電動圧縮機等が駆動する。
【0087】
室内機の親機(20a)では、室内機制御部(23)が室外機(10)と通信し、室外機(10
)が運転を開始したことを認識する。室内機制御部(23)は、室外機(10)が運転を開始したことを認識すると、上記室内ファンを作動させると共に、子機(20b,20c,20d)と通信する。これにより、子機(20b,20c,20d)の室内制御部(23)が室外機(10)が運転を開始したことを認識し、子機(20b,20c,20d)が親機(20a)と連動して運転を開始する。このようにして、空気調和装置(1)では、複数台の室内機(20,20,…)単位で運転制御される。以上のようにして、運転状態への移行が完了し、例えば冷房又は暖房運転が行われる。
【0088】
−運転停止動作−
運転停止する場合には、
図3に破線矢印で示した順で、運転状態からサスペンド状態に遷移する。
図8は、運転状態からサスペンド状態へ移行するときの信号の流れを説明するための図である。
【0089】
運転状態において、例えばユーザがリモコン(30)で運転停止操作をすると、運転状態、ウエイト状態、サスペンド状態の順に遷移する。以下、運転状態からサスペンド状態までの動作を順に説明する。
【0090】
<運転状態からウエイト状態への移行>
ユーザーがリモコン(30)で運転停止操作をすると、リモコン(30)から室内機の親機(20a)に運転停止信号が送信される。
【0091】
運転停止信号を受信した室内機の親機(20a)は、運転停止信号を室外機(10)に送信する。
【0092】
運転停止信号を受信した室外機(10)では、室外機制御部(13)がリレー(K16R)をオンからオフに切り換える。これにより、上記IPMや室外ファンモータへの電力供給が遮断されて、電動圧縮機等が停止する。こうして、運転状態からウエイト状態への移行が完了する(
図6参照)。
【0093】
〈ウエイト状態からサスペンド状態への移行〉
ユーザがリモコン(30)で運転停止操作をすると、リモコン(30)では、所定のサスペンド移行禁止条件が判定される。このサスペンド移行禁止条件は、例えばユーザーがリモコン(30)で運転停止操作をした時刻がスケジューリング機能で予約された運転開始予定時刻から所定時間以内である場合には、ウエイト状態からサスペンド状態への移行を禁止するというものである。上記サスペンド移行禁止条件に該当しない場合には、
図8に示すように、リモコン(30)から室内機の親機(20a)にサスペンド移行信号としての遮断要求信号が送信される。
【0094】
遮断要求信号を受信した室内機の親機(20a)は、室内機伝送部(21)を介して遮断要求信号を室外機(10)に送信する。
【0095】
遮断要求信号を受信した室外機(10)では、室外機制御部(13)がリレー(K13R)のノーマルクローズ接点と可動接点とが接続された状態にする。これにより、第2室外機電源部(12)への電力供給が遮断される。また、室外機制御部(13)は、リレー(K14R)及びリレー(K15R)をオフにする。ここで、室外機制御部(13)は、リレー(K13R,K14R,K15R)を動作させる直前に、室外機(10)から室内機の親機(20a)にサスペンド移行信号としての遮断実施信号を送信する。
【0096】
遮断実施信号を受信した室内機の親機(20a)は、室内機通信部(25)を介して遮断実施信号をリモコン(30)に送信する。
【0097】
遮断実施信号を受信したリモコン(30)では、リモコン制御部(34)がリレー(36,37)をオフにする。これにより、リモコン電源部(31)からリモコン通信部(32)及び液晶表示部(33)への電力供給が遮断される。こうして、サスペンド状態への移行が完了する(
図2参照)。
【0098】
<サスペンド状態への移行可否判定>
図9は、待機電力未対応機種の室外機と、待機電力対応機種のリモコンと、室内機とが接続された場合の空気調和装置の電装系統ブロック図である。
図10は、待機電力対応機種の室外機と、待機電力未対応機種のリモコンと、室内機とが接続された場合の空気調和装置の電装系統ブロック図である。
【0099】
本空気調和装置(1)は、前述したように、室内機(20)と待機電力未対応機種の室外機(10)や待機電力未対応機種のリモコン(30)とを組み合わせて利用することができる。しかしながら、待機電力未対応機種の室外機(10)は、前記待機電力対応機種の室外機(10)と異なりリレー(K13R,K14R,K15R)を備えておらず、第2室外機電源部(12)への電力供給を遮断することができない。そのため、室内機の親機(20a)から遮断要求信号が室外機(10)に送信されて、該遮断要求信号を室外機(10)が受信すると、システム障害(通信エラー)が生じる虞がある。また、待機電力未対応機種のリモコン(30)は、前記待機電力対応機種のリモコン(30)と異なりリレー(36,37)を備えておらず、液晶表示部(33)及びリモコン通信部(32)への電力供給を遮断することができない。そのため、室内機の親機(20a)から遮断実施信号がリモコン(30)に送信されて、該遮断実施信号をリモコン(30)が受信すると、システム障害(通信エラー)が生じる虞がある。
【0100】
そこで、本空気調和装置(1)では、以下のようなサスペンド状態への移行可否判定を行っている。
【0101】
具体的には、空気調和装置(1)の室外機(10)と室内機(20,20,…)とリモコン(30)とを接続して、初めて起動させたときに、室内機の親機(20a)の室内機制御部(23)が
図11のフローチャートに示すような起動時チェックを実行する。
【0102】
具体的に、まずステップS1では、室内機制御部(23)は、室外機記憶部(15)及びリモコン記憶部(35)から室外機(10)及びリモコン(30)の機種仕様情報を取得する。
【0103】
続くステップS2では、室内機制御部(23)は、機種仕様情報に基づいて、室外機(10)、室内機の親機(20a)、及びリモコン(30)が待機電力対応機種であるか否かを判定する。ここで、室内機の親機(20a)自身の機種仕様情報は判定しなくてもよいことは勿論である。そして、室外機(10)、室内機の親機(20a)、及びリモコン(30)が全て待機電力対応機種である場合には、ステップS3に移行する一方、室外機(10)、室内機の親機(20a)、及びリモコン(30)の何れかが待機電力対応機種でない場合には、ステップS4に移行する。
【0104】
ステップS3では、システム全体が待機電力対応であることを示す待機電力対応情報が室内機記憶部(24)に記憶される。具体的には、例えば室内機記憶部(24)の所定のアドレスのビットを「1」にする。
【0105】
ステップS4では、システム全体が待機電力対応ではないことを示す待機電力未対応情報が室内機記憶部(24)に記憶される。具体的には、例えば室内機記憶部(24)の上記所定のアドレスのビットを「0」にする。
【0106】
そうして、前記のようにリモコン(30)から室内機の親機(20a)に遮断要求信号が送信されて、該遮断要求信号を室内機の親機(20a)が受信すると、室内機の親機(20a)では、室内機制御部(23)が、室内機記憶部(24)に待機電力対応情報が記憶されているときに、サスペンド状態へ移行可能と判定して、遮断要求信号を室外機(10)に送信する一方、室内機記憶部(24)に待機電力対応情報が記憶されていないとき(換言すれば、待機電力未対応情報が記憶されているとき)には、サスペンド状態へ移行不可と判定して、遮断要求信号を室外機(10)に送信しない。従って、空気調和装置(1)に待機電力未対応機種の室外機(10)や待機電力未対応機種のリモコン(30)が含まれているときには、室外機(10)が遮断要求信号を受信することはない。この場合、遮断要求信号を室外機(10)が受信することはないから、室外機(10)から室内機の親機(20a)に遮断実施信号が送信されない。その結果、室内機の親機(20a)からリモコン(30)に遮断実施信号が送信されず、該遮断実施信号をリモコン(30)が受信することはない。尚、このように空気調和装置(1)に待機電力未対応機種の室外機(10)や待機電力未対応機種のリモコン(30)が含まれているときには、室内機の親機(20a)から室外機(10)に遮断要求信号に送信されないから、空気調和装置(1)は、サスペンド状態にはならず、ウエイト状態と運転状態との2つの状態にのみなり得る。
【0107】
<実施形態1の効果>
本実施形態1によれば、室内機の親機(20a)と子機(20b,20c,20d)のうち、親機(20a)にのみに運転開始要求がされ、該親機(20a)が待機電力対応機種で構成されているから、電力供給が遮断された室外機(10)は室内機の親機(20a)により確実に起動される。そのため、室内機の子機(20b)に待機電力未対応機種が含まれていても作動する。
【0108】
また、待機電力対応機種の室内機(20)と待機電力未対応機種の室外機(10)とが組み合わされた場合において、仮に待機電力機種の室内機(20)から待機電力未対応機種の室外機(10)に遮断要求信号が送信され、該遮断要求信号を待機電力未対応機種の室外機(10)が受信したときには、室外機(10)が電力供給を遮断することができるように構成されていないため、システム障害が発生し得るところ、本空気調和装置(1)では、室外機(10)、室内機の親機(20a)、及びリモコン(30)が全て待機電力対応機種である場合にのみ、室内機の親機(20a)から室外機(10)に遮断要求信号を送信するように構成されているため、待機電力未対応機種の室外機(10)が遮断要求信号を受信することはない。そのため、本空気調和装置(1)では、上記のようなシステム障害は発生しない。
【0109】
従って、待機電力対応機種の室内機(20)と待機電力未対応機種の室外機(10)とを組み合わせてもシステム障害が発生せず、室内機(20,20,…)に待機電力対応機種と待機電力未対応機種とが混在していても作動するマルチ型の空気調和装置を提供することができる。
【0110】
さらに、待機電力対応機種の室内機(20)と待機電力未対応機種のリモコン(30)とが組み合わされた場合において、仮に待機電力機種の室内機(20)から待機電力未対応機種のリモコン(30)に遮断実施信号が送信され、該遮断実施信号を待機電力未対応機種のリモコン(30)が受信したときには、リモコン(30)がリモコン通信部(32)及び液晶表示部(33)への電力供給を遮断することができるように構成されていないため、システム障害が発生し得るところ、本空気調和装置(1)では、室外機(10)、室内機の親機(20a)、及びリモコン(30)が全て待機電力対応機種である場合にのみ、室内機の親機(20a)から室外機(10)に遮断要求信号を送信するように構成されているため、リモコン(30)が待機電力未対応機種である場合には、室内機の親機(20a)から室外機(10)に遮断要求信号が送信されない。その結果、遮断実施信号を待機電力未対応機種のリモコン(30)が受信することはない。そのため、本空気調和装置(1)では、上記のようなシステム障害は発生しない。
【0111】
加えて、待機電力対応機種の室外機(10)と待機電力対応機種のリモコン(30)とを組み合わせた場合には、リモコン(30)のリモコン通信部(32)及び液晶表示部(33)への電力供給が遮断されるため、待機電力をより効果的に低減することができる。
【0112】
《実施形態2》
次に本発明の実施形態2に係る空気調和装置について説明する。
【0113】
この実施形態2に係る空気調和装置(1)では、
図12に示すように、運転停止動作において、リモコン(30)から室内機の親機(20a)に遮断要求信号が送信されない。この点が上記実施形態1と異なる。そこで、実施形態2に係る空気調和装置(1)の運転停止動作について説明する。
【0114】
運転状態において、例えばユーザがリモコン(30)で運転停止操作をすると、リモコン(30)から室内機の親機(20a)に運転停止信号が送信される。ここで、リモコン(30)では、前記実施形態1のようなサスペンド移行禁止条件は判定されない。
【0115】
運転停止信号を受信した室内機の親機(20a)では、室内機制御部(23)が、室内機記憶部(24)に待機電力対応情報が記憶されているときには、サスペンド状態へ移行可能と判定して、室内機伝送部(21)を介して運転停止信号及び遮断要求信号を室外機(10)に送信する一方、室内機記憶部(24)に待機電力対応情報が記憶されていないとき(換言すれば、待機電力未対応情報が記憶されているとき)には、サスペンド状態へ移行不可と判定して、室内機伝送部(21)を介して運転停止信号及び遮断要求信号のうちの運転停止信号のみを室外機(10)に送信する。その後の運転停止動作は、上記実施形態1と同様であるため、説明は省略する。
【0116】
<実施形態2の効果>
本実施形態2によれば、前記実施形態1と同様の効果を奏する。
【0117】
《その他の実施形態》
本発明は、上記実施形態について、以下のような構成としてもよい。
【0118】
即ち、上記実施形態では、室外機(10)を1台としたが、
図13に示すように複数台としてもよい。このときには、室外機(10,10,…)に待機電力対応機種と待機電力未対応機種とが混在する場合がある。そこで、
図11に示す起動時チェックのステップS2において、リモコン(30)と室外機(10,10,…)の少なくとも1台が待機電力対応機種であるか否かを判定し、リモコン(30)と室外機(10,10,…)の少なくとも1台が待機電力対応機種である場合に、ステップS3に移行するように構成する。そして、ステップS3では、待機電力対応情報に加えて、待機電力対応機種の室外機(10)が何れの室外機(10)であるかを示す室外機情報も室内機記憶部(24)に記憶しておく。仮に室外機(10a,10b)が待機電力対応機種であり、室外機(10c)が待機電力未対応機種であるとすると、空気調和装置(1)の運転停止動作時には、室外機制御部(23)が、上記室外機情報に基づいて待機電力対応機種である室外機(10)を判別し、室内機の親機(20a)から待機電力対応機種である室外機(10a,10b)に遮断要求信号を送信するように構成する。
【0119】
また、室内機の子機(20b,20c,20d)を全て待機電力未対応機種としたが、これに限られず、待機電力対応機種と待機電力未対応機種とを混在させてもよいし、全て待機電力対応機種としてもよい。この場合、共通線(N)と信号線(S)との間に電源電圧が印加され、通信異常となるのを回避するために、待機電力対応機種で構成された室内機の子機(20b,20c,20d)がリレー(K2R)をオンにしないように構成することが好ましい。
【0120】
さらに、待機電力対応機種のリモコン(30)をリモコン通信部(32)及び液晶表示部(33)への電力供給を遮断可能に構成したが、これに限られず、例えばリモコン通信部(32)及び液晶表示部(33)の一方への電力供給を遮断可能に構成してもよい。
【0121】
加えて、待機電力未対応機種の室外機(10)と、待機電力未対応機種のリモコン(30)と、室内機(20,20,・・・)とを組み合わせてもよい。
【0122】
また、待機電力未対応機種のリモコン(30)のみしか組み合わせることができない空気調和装置を構成してもよく、この場合には、
図11に示す起動時チェックのステップS1においてリモコン(30)の機種仕様情報を取得せずに室外機(10)の機種仕様情報のみを取得し、ステップS2において、室外機(10)が待機電力対応機種であるか否かを判定するようにする。
【0123】
さらに、空気調和装置(1)では、室外機(10)にサスペンド移行信号(遮断要求信号)を送信する通信回路(室内機伝送部(21))と、リモコン(30)にサスペンド移行信号(遮断実施信号)を送信する通信回路(室内機通信部(25))とを別々に設けたが、1つの通信回路で室外機(10)及びリモコン(30)の双方にサスペンド移行信号を送信するようにしてもよい。