特許第5772588号(P5772588)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5772588
(24)【登録日】2015年7月10日
(45)【発行日】2015年9月2日
(54)【発明の名称】空気調和装置
(51)【国際特許分類】
   F24F 11/02 20060101AFI20150813BHJP
【FI】
   F24F11/02 103C
   F24F11/02 P
【請求項の数】2
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2011-289603(P2011-289603)
(22)【出願日】2011年12月28日
(65)【公開番号】特開2013-139893(P2013-139893A)
(43)【公開日】2013年7月18日
【審査請求日】2014年3月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100077931
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100110939
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 宏
(74)【代理人】
【識別番号】100110940
【弁理士】
【氏名又は名称】嶋田 高久
(74)【代理人】
【識別番号】100113262
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 祐二
(74)【代理人】
【識別番号】100115059
【弁理士】
【氏名又は名称】今江 克実
(74)【代理人】
【識別番号】100117581
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 克也
(74)【代理人】
【識別番号】100117710
【弁理士】
【氏名又は名称】原田 智雄
(74)【代理人】
【識別番号】100124671
【弁理士】
【氏名又は名称】関 啓
(74)【代理人】
【識別番号】100131060
【弁理士】
【氏名又は名称】杉浦 靖也
(74)【代理人】
【識別番号】100131200
【弁理士】
【氏名又は名称】河部 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】100131901
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 雅典
(74)【代理人】
【識別番号】100132012
【弁理士】
【氏名又は名称】岩下 嗣也
(74)【代理人】
【識別番号】100141276
【弁理士】
【氏名又は名称】福本 康二
(74)【代理人】
【識別番号】100143409
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 亮
(74)【代理人】
【識別番号】100157093
【弁理士】
【氏名又は名称】間脇 八蔵
(74)【代理人】
【識別番号】100163186
【弁理士】
【氏名又は名称】松永 裕吉
(74)【代理人】
【識別番号】100163197
【弁理士】
【氏名又は名称】川北 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】100163588
【弁理士】
【氏名又は名称】岡澤 祥平
(72)【発明者】
【氏名】東山 伸
(72)【発明者】
【氏名】上中 俊一
【審査官】 河野 俊二
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−243051(JP,A)
【文献】 特開2003−166739(JP,A)
【文献】 特開2007−127399(JP,A)
【文献】 特開2009−041857(JP,A)
【文献】 特開平01−256749(JP,A)
【文献】 特開2008−057868(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0092570(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 11/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
運転停止中に電力供給が遮断された状態に移行する室外機(10)と、
前記室外機(10)と通信可能に接続され、且つ前記電力供給が遮断された室外機(10)に電力供給を開始する起動手段(K2R)を有する室内機(20)と、を備え、
前記室内機(20)は、前記室外機(10)への電力供給が遮断されていることを示す遮断情報を記憶する記憶部(24)と、前記室内機(20)と室外機(10)との通信異常を検知する検知部(23)とを有し、
前記記憶部(24)は、運転停止中に前記室外機(10)への電力供給が遮断されると遮断信号を記憶し、
前記検知部(23)は、前記室内機(20)と室外機(10)との通信異常を検知した場合において、前記遮断情報が記憶部(24)に記憶されているときには、該通信異常を無効とすることを特徴とする空気調和装置。
【請求項2】
請求項1に記載の空気調和装置において、
前記検知部(23)は、前記起動手段(K2R)により前記室外機(10)に電力供給が開始されたときに、前記記憶部(24)に記憶された遮断情報をクリアすることを特徴とする空気調和装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、室内機と室外機とを備え、運転停止中に室外機への電力供給を遮断することができる空気調和装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、待機電力を低減する目的で、運転停止中に室外機への電力供給を遮断することができる空気調和装置が知られている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に開示された空気調和装置は、室内機と室外機とが通信しながら運転動作をしている。また、この空気調和装置は、室内機と室外機との通信が確立されなかったときに通信異常を検知するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−243051号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、前記特許文献1に開示されたような運転停止中に室外機への電力供給が遮断される空気調和装置においては、室外機への電力供給が遮断されているときに、室内機と室外機とが通信することができなくなる。そのため、こうした空気調和装置では、室外機への電力供給が遮断されているときに、通信異常が起きていないのにも関わらず、通信異常が検知されてしまう虞がある。
【0006】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、運転停止中に室外機への電力供給を遮断することができる空気調和装置において、室外機への電力供給が遮断されているときに室内機と室外機とが通信することができないことを通信異常と誤検知してしまうことを確実に回避することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明は、運転停止中に電力供給が遮断された状態に移行する室外機(10)と、
前記室外機(10)と通信可能に接続され、且つ前記電力供給が遮断された室外機(10)に電力供給を開始する起動手段(K2R)を有する室内機(20)と、を備えた空気調和装置を対象とし、前記室内機(20)は、前記室外機(10)への電力供給が遮断されていることを示す遮断情報を記憶する記憶部(24)と、前記室内機(20)と室外機(10)との通信異常を検知する検知部(23)とを有し、前記記憶部(24)は、運転停止中に前記室外機(10)への電力供給が遮断されると遮断信号を記憶し、前記検知部(23)は、前記室内機(20)と室外機(10)との通信異常を検知した場合において、前記遮断情報が記憶部(24)に記憶されているときには、該通信異常を無効とすることを特徴とする。
【0008】
第1の発明によれば、室外機(10)への電力供給が遮断されると、室内機(20)の記憶部(24)に遮断情報が記憶される。そして、検知部(23)が室内機(20)と室外機(10)との通信異常を検知した場合において、記憶部(24)に遮断情報が記憶されているときには、当該検知した通信異常が無効とされる。
【0009】
第2の発明は、第1の発明において、前記検知部(23)は、前記起動手段(K2R)により前記室外機(10)に電力供給が開始されたときに、前記記憶部(24)に記憶された遮断情報をクリアすることを特徴とする。
【0010】
第2の発明では、室内機(20)が起動手段(K2R)を作動させて室外機(10)に電力供給が開始されたときに、記憶部(24)に記憶された遮断情報がクリアされるため、室外機(10)に電力が供給されているときには、記憶部(24)に遮断情報が記憶されていないことになる。
【発明の効果】
【0011】
第1の発明によれば、記憶部(24)に遮断情報が記憶されているときには、検知した通信異常が無効とされるため、室外機(10)への電力供給が遮断されているときに室内機(20)と室外機(10)とが通信することができないことを通信異常と誤検知してしまうことを確実に回避することができる。
【0012】
第2の発明によれば、室外機(10)に電力が供給されているときには、記憶部(24)に遮断情報が記憶されていないため、検知部(23)により通信異常を検知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施形態に係る空気調和装置の電装系統のブロック図(サスペンド状態)である。
図2】空気調和装置の状態遷移図である。
図3】平滑コンデンサに充電される回路が形成された時点のリレーの状態を示す図である。
図4】充電状態への移行が完了した後のリレーの状態を示す図である。
図5】ウエイト状態におけるリレーの状態を示す図である。
図6】運転状態におけるリレーの状態を示す図である。
図7】通信異常の有効無効に係る判断処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎない。
《実施形態》
〈全体構成〉
図1は、本発明の実施形態にかかる空気調和装置(1)の電装系統のブロック図である。この空気調和装置(1)は、運転停止中に室外機(10)への電力供給を遮断することができる空気調和装置である。
【0015】
空気調和装置(1)は、室外機(10)、室内機(20)、及びリモートコントローラ(以下、リモコンともいう)(30)を備えている。
【0016】
空気調和装置(1)では、室外機(10)で、商用交流電源(40)から交流(この例では200Vの三相交流)を受電して室外機(10)内の回路や電動圧縮機(不図示)の電力として用いる他、その三相交流の2相分を室内機(20)に給電するようになっている。また、室外機(10)と室内機(20)との間では、室内機(20)側から室外機(10)を制御するため等の目的で、通信を行うようになっている。そのため、空気調和装置(1)では、商用交流電源(40)(以下、単に交流電源とも言う)からの交流電力を送電する電力配線(L)と、前記信号を伝送する信号線(S)と、前記交流電力の送電と前記信号の伝送に共用する共通線(N)との3線(内外配線)が室外機(10)と室内機(20)との間に設けられている。この実施形態では、電力配線(L)は、室外機(10)において交流電源(40)のR相に接続され、共通線(N)は、室外機(10)において交流電源(40)のS相に接続されている。すなわち、室内機(20)は、交流電源(40)のR相及びS相に接続されて単相交流が供給されている。
【0017】
〈室外機(10)〉
室外機(10)は、電装系統として、第1室外側電源回路(14)、第2室外側電源回路(12)、室外機伝送回路(11)、室外側制御回路(13)、リレー(K13R,K14R,K15R)を備えている。尚、図示は省略するが、室外機(10)には、電動圧縮機、室外熱交換器、室外ファン、膨張弁などの機器が設けられている。
【0018】
−第1室外側電源回路(14)−
第1室外側電源回路(14)は、交流電源(40)から受電した3相交流を直流に変換し、いわゆるインテリジェントパワーモジュール(Intelligent Power Module、以下、IPMと略記する)や室外ファンモータに供給する。尚、IPMは、入力された直流を所定の周波数及び電圧の交流に変換し、前記電動圧縮機のモータに給電する。この第1室外側電源回路(14)は、ノイズフィルタ(14a)、2つのメインリレー(14b)、2つのダイオードブリッジ回路(14c)、リアクトル(14d)、及び平滑コンデンサ(14e)を有している。
【0019】
ノイズフィルタ(14a)は、コンデンサとコイルで形成されている。2つのメインリレー(14b)は、前記三相交流のR相、T相の供給ラインにそれぞれ設けられている。2つのダイオードブリッジ回路(14c)のうち、一方は、前記三相交流のR相及びS相を入力とし、もう一方は、前記三相交流のS相及びT相を入力とし、入力された交流をそれぞれ全波整流する。これらのダイオードブリッジ回路(14c)の出力は、リアクトル(14d)を介して平滑コンデンサ(14e)に入力され、平滑コンデンサ(14e)で平滑化される。平滑コンデンサ(14e)で平滑化された直流は、前記IPMや室外ファンモータに供給される。
【0020】
−第2室外側電源回路(12)−
第2室外側電源回路(12)は、前記三相交流のR相及びS相の2相を直流(この例では5V)に変換し、室外側制御回路(13)に供給する。この第2室外側電源回路(12)は、ダイオードブリッジ回路(12a)、平滑コンデンサ(12b)、及びスイッチング電源(12c)を備えている。
【0021】
ダイオードブリッジ回路(12a)は、一方の入力が、リレー(K13R)に接続され、もう一方の入力が、前記三相交流のS相に接続されている。ダイオードブリッジ回路(12a)の出力は、平滑コンデンサ(12b)で平滑化された後に、スイッチング電源(12c)に入力されている。スイッチング電源(12c)は、例えばDC-DCコンバータで構成され、入力された直流を所定の電圧(5V)に変換して室外側制御回路(13)に出力する。
【0022】
−室外機伝送回路(11)−
室外機伝送回路(11)は、室内機伝送回路(21)との間で信号の送受信による通信を行う。この通信では、信号線(S)と共通線(N)との間の電位差に基づいて、ハイレベル及びローレベルの2値のデジタル信号の通信を行う。室内機伝送回路(21)内の通信回路(図示は省略)は、一端が共通線(N)に接続され、通信回路の他端はリレー(K14R)を介して信号線(S)に接続されている。
【0023】
−リレー(K13R)−
リレー(K13R)は、第2室外側電源回路(12)への交流供給の経路を切り替えるリレーである。リレー(K13R)は、いわゆるC接点リレーで構成されている。詳しくは、リレー(K13R)は、2つの固定接点と、ひとつの可動接点を有し、該リレー(K13R)のコイル(不図示)に通電されていない場合は、一方の固定接点(ノーマルクローズ接点とよぶ)と可動接点とが接続され、該コイルに通電されると、もう一方の固定接点(ノーマルオープン接点とよぶ)と可動接点とが接続される。リレー(K13R)の切換え(コイルへの通電の有無)は、室外側制御回路(13)が制御する。
【0024】
リレー(K13R)の可動接点は、ダイオードブリッジ回路(12a)の入力に接続されている。また、ノーマルクローズ接点は、信号線(S)に接続され、ノーマルオープン接点は、前記三相交流のR相に接続されている。すなわち、リレー(K13R)のコイルに通電されていない場合は、ノーマルクローズ接点と可動接点とが接続されて、ダイオードブリッジ回路(12a)の一方の入力は信号線(S)に接続される。リレー(K13R)のコイルに通電されると、可動接点とノーマルオープン接点とが接続されて、第2室外側電源回路(12)のダイオードブリッジ回路(12a)に交流が入力される状態になる。
【0025】
−リレー(K14R)−
リレー(K14R)は、信号線(S)と室外機伝送回路(11)との接続(オン)及び非接続(オフ)を切り替えるリレーである。リレー(K14R)のオンオフは、室外側制御回路(13)が制御する。
【0026】
−リレー(K15R)−
リレー(K15R)は、室外機伝送回路(11)への電力供給の有無を切り替えるリレーである。リレー(K15R)をオンにすれば、交流電源(40)から室外機伝送回路(11)に電力供給され、リレー(K15R)をオフにすれば、交流電源(40)から室外機伝送回路(11)への電力供給が断たれる。リレー(K15R)のオンオフは、室外側制御回路(13)が制御する。
【0027】
−室外側制御回路(13)−
室外側制御回路(13)は、マイクロコンピュータと、それを動作させるプログラムを格納したメモリを含んでいる。室外側制御回路(13)は、例えば室外機伝送回路(11)が室内機伝送回路(21)から受信した信号に応じて前記電動圧縮機等の制御を行う他、室外機(10)の起動時の制御も行う。
【0028】
〈室内機(20)〉
室内機(20)は、電装系統として、室内側電源回路(22)、室内機伝送回路(21)、室内側制御回路(23)、記憶部(24)、リレー(K2R)、第1ダイオード(D1)、及び第2ダイオード(D2)を備えている。尚、図示は省略するが、室内機(20)には、室内熱交換器、室内ファンなどの機器が設けられている。
【0029】
−室内側電源回路(22)−
室内側電源回路(22)は、ノイズフィルター(22a)、ダイオードブリッジ回路(22b)、平滑コンデンサ(22c)、及びスイッチング電源(22d)を有している。この室内側電源回路(22)は、電力配線(L)及び共通線(N)を介して交流電源(40)から供給された交流を直流(この例では5Vの直流)に変換し、室内側制御回路(23)に供給する。
【0030】
ノイズフィルター(22a)は2つのコイルで形成されている。ダイオードブリッジ回路(22b)は、ノイズフィルター(22a)を介して電力配線(L)及び共通線(N)から入力された交流を全波整流する。平滑コンデンサ(22c)は、例えば電解コンデンサで形成され、ダイオードブリッジ回路(22b)の出力を平滑化する。スイッチング電源(22d)は、例えばDC-DCコンバータなどで構成され、平滑コンデンサ(22c)が平滑化した直流を所定の電圧(5V)に変換して室内側制御回路(23)に出力する。
【0031】
−室内機伝送回路(21)−
室内機伝送回路(21)は、既述の通り、室外機伝送回路(11)との間で信号の通信を行う。この通信では、信号線(S)と共通線(N)との間の電位差に基づいて通信を行うので、室内機伝送回路(21)の通信回路の一端は信号線(S)に接続され、通信回路の他端は共通線(N)に接続されている。
【0032】
−リレー(K2R)−
リレー(K2R)は、電力配線(L)と信号線(S)とを結ぶバイパス線に設けられており、電力配線(L)と信号線(S)との接続及び非接続を切り替えるリレーである。このリレー(K2R)は、電力供給が遮断された室外機(10)に対し電力供給を開始する起動手段として機能する。そして、リレー(K2R)をオンにすれば、電力配線(L)と信号線(S)とが接続され、リレー(K2R)をオフにすれば、電力配線(L)と信号線(S)とが切断される。リレー(K2R)のオンオフは、室内機制御部(23)が制御する。
【0033】
−第1ダイオード(D1)−
第1ダイオード(D1)は、アノードが前記バイパス線と信号線(S)との接続ノード(ND1)に接続され、カソードがリレー(K2R)に接続されている。この第1ダイオード(D1)は、室内機伝送回路(21)へ流入する方向の交流電流を阻止する機能を有する。
【0034】
−第2ダイオード(D2)−
第2ダイオード(D2)は、アノードが信号線(S)の接続ノード(ND1)に接続され、カソードが室内機伝送回路(21)における信号入力ノード(ND2)に接続されている。この第2ダイオード(D2)は、室内機伝送回路(21)から流出する方向の交流電流を阻止する機能を有する。
【0035】
−室内側制御回路(23)−
室内側制御回路(23)は、マイクロコンピュータと、それを動作させるプログラムを格納したメモリを含んでいる。また、室内側制御回路(23)は、リモコン(30)からの指令を受けて、空気調和装置(1)の運転の状態を制御する。この室内側制御回路(23)は、後述するように室外機(10)と室内機(20)との通信異常を検知する検知部を構成する。
【0036】
−記憶部(24)−
記憶部(24)は、室内側制御回路(23)に接続されている。この記憶部(24)には、詳しくは後述するが、室外機(10)への電力供給が遮断されていることを示す遮断情報が記憶される。
【0037】
〈リモートコントローラ(30)〉
リモコン(30)は、ユーザーの操作を受け付けるとともに、ユーザーの操作に応じた信号を室内側制御回路(23)に送信する。ユーザーは、例えば、リモコン(30)のボタン操作により、空気調和装置(1)の運転開始、停止、設定温度調整などを行えるようになっている。リモコン(30)は、信号線で室内側制御回路(23)と結線されたいわゆるワイヤードリモコンとして構成してもよいし、赤外線や電波を用いて室内側制御回路(23)と通信を行う、いわゆるワイヤレスリモコンとして構成してもよい。
【0038】
〈空気調和装置の動作〉
図2は、空気調和装置(1)の状態遷移図である。空気調和装置(1)は、以下に説明するサスペンド状態、充電状態、ウエイト状態、及び運転状態の4つの状態を遷移する。尚、本明細書中において、待機電力とは「機器が非使用状態、若しくは何らかの入力(命令指示等)待ちの時に定常的に消費している電力」をいう。具体的に、空気調和装置(1)では、リモコン(30)の待ち受けのみを行うのに必要な電力が待機電力である。
【0039】
(1)サスペンド状態
サスペンド状態とは、室内機(20)には電力が供給され、室外機(10)には電力が供給されていない状態である。
【0040】
本実施形態のサスペンド状態は、一例として、空気調和装置(1)全体として消費電力が最小になる状態となっている。具体的に、本実施形態のサスペンド状態では、室外機(10)は電力を受電してそれを室内機(20)へ供給はするが、室外機(10)内部の各回路や前記電動圧縮機などには電力が供給されていない状態である。即ち、サスペンド状態のときには、室外側制御回路(13)も電力供給が断たれて動作が停止する。このように、サスペンド状態では、室外機(10)の各回路への電力供給が断たれ、待機電力の低減を図ることができる。
【0041】
一方、室内機(20)でも、待機電力が最小となる状態ではあるが、室外機(10)とは異なり、室内側制御回路(23)におけるリモコン(30)からの信号受信にかかわる部分は、室内側電源回路(22)から電力を受けて動作している。
【0042】
また、リモコン(30)でも、待機電力が最小となる状態ではあるが、ユーザーのボタン操作の受け付けは可能な状態である。尚、室内機(20)及びリモコン(30)の消費電力(待機電力)の程度は、これに限られない。
【0043】
(2)充電状態
充電状態とは、室外機(10)では、第2室外側電源回路(12)の平滑コンデンサ(12b)に充電される経路が形成され、室外機伝送回路(11)と室内機伝送回路(21)の間の信号伝送が開始されるまでの期間における状態をいう。このとき、室内機(20)の電力消費は、サスペンド状態と同様である。
【0044】
(3)ウエイト状態
ウエイト状態とは、運転開始時には上記充電状態を抜けた状態であり、運転停止時には運転状態(後述)から遷移する状態であり、何れも、室外機(10)が、即時、運転状態へ移行可能な状態をいう。ウエイト状態では、室外機伝送回路(11)も室外側制御回路(13)も動作している。特に、運転停止時のウエイト状態(運転状態から遷移するウエイト状態)は、電動圧縮機における冷媒圧力を均圧させるためや、運転開始と運転停止を繰り返すスケジュール運転が設定されている場合などのために設けられており、その時間は例えば10分である。なお、室内機(20)の電力消費はサスペンド状態と同様である。
【0045】
(4)運転状態
運転状態とは、メインリレー(14b)をオンにして、電動圧縮機や室外ファンが運転可能な状態、若しくは運転している状態をいう。いわゆる欠相通電やサーモオフ状態もこれに相当する。なお、室内機(20)では、室内ファン等が運転状態となり、電力消費は、前記の各状態よりも増える。尚、この運転状態を除く、サスペンド状態、充電状態、ウエイト状態が本明細書中における「運転停止中」に相当する。
【0046】
−運転開始動作−
空気調和装置(1)では、運転開始する場合には、図2に実線矢印で示した順で、サスペンド状態から運転状態に遷移する。
【0047】
〈サスペンド状態における電装系統〉
まず、サスペンド状態における電装系統の状態を図1を参照しながら説明する。
【0048】
室外機(10)では、メインリレー(14b)がオフ状態であり、第1室外側電源回路(14)に電力供給されず、第1室外側電源回路(14)から前記IPMや室外ファンモータに電力が供給されていない。
【0049】
リレー(K14R)及びリレー(K15R)もオフ状態である。そのため、室外機伝送回路(11)は、信号線(S)との接続が断たれていると共に、電力の供給も断たれている。
【0050】
リレー(K13R)は、ノーマルクローズ接点と可動接点とが接続された状態であり、第2室外側電源回路(12)のダイオードブリッジ回路(12a)の一方の入力が信号線(S)に接続されている。この状態では、第2室外側電源回路(12)に電力供給されず、室外側制御回路(13)への給電も行われていない。このように、サスペンド状態では、室外機(10)は、電力供給が遮断されている。
【0051】
一方、室内機(20)では、リレー(K2R)がオフ状態であり、信号線(S)と電力配線(L)とが電気的に非接続状態である。
【0052】
〈サスペンド状態から充電状態への移行〉
図3は、平滑コンデンサ(12b)に充電される回路が形成された時点の各リレーの状態を示す図である。また、図4は、充電状態への移行が完了した後の各リレーの状態を示す図である。
【0053】
例えばユーザーがリモコン(30)で運転開始操作をすると、リモコン(30)から室内機(20)に運転指令信号が送信される。
【0054】
室内機(20)は、運転指令信号を受信すると、室内側制御回路(23)がリレー(K2R)をオンにする。そうすると、空気調和装置(1)では、前記三相交流のR相から、電力配線(L)、リレー(K2R)、第1ダイオード(D1)、信号線(S)、及びリレー(K13R)を介してダイオードブリッジ回路(12a)の一方の入力に到る送電経路が形成される。ダイオードブリッジ回路(12a)の他方の入力は、前記三相交流のS相に接続されているので、ダイオードブリッジ回路(12a)には、第1ダイオード(D1)で半波整流された単相交流が供給される。こうして、平滑コンデンサ(12b)に充電される回路が形成された状態になる(図3参照)。
【0055】
一方、室外機(10)では、平滑コンデンサ(12b)が充電されてスイッチング電源(12c)への入力が安定し、スイッチング電源(12c)が規定の直流電圧(この例では5V)を出力できるようになると、室外側制御回路(13)が起動する。起動した室外側制御回路(13)は、リレー(K13R)のコイルに通電させて、ノーマルオープン接点と可動接点とを接続状態とする。これにより、ダイオードブリッジ回路(12a)の一方の入力は、前記三相交流のR相に、室外機(10)内の送電経路を介して接続される。すなわち、室外側制御回路(13)は、信号線(S)を経由せずに交流電源(50)から電力供給された状態に切り換わる(図4参照)。こうして、サスペンド状態から充電状態への移行が完了する。
【0056】
〈充電状態からウエイト状態への移行〉
図5は、ウエイト状態への移行完了時における各リレーの状態を示す図である。室内機(20)では、リレー(K2R)をオンにしてから所定の時間(室外側制御回路(13)が起動するのに十分な時間)が経過した後に、リレー(K2R)をオフにする。これにより、信号線(S)を信号の送受信に使用できるようになる。
【0057】
室外機(10)では、リレー(K2R)がオフになったのを見計らって、室外側制御回路(13)は、リレー(K15R)をオンにし、室外機伝送回路(11)に電力が供給された状態にすると共に、リレー(K14R)をオンにする。これにより、室外機伝送回路(11)内の通信回路が、信号線(S)及び共通線(N)を介して室内機伝送回路(21)と接続され、室内機伝送回路(21)と通信可能な状態になる。こうして、空気調和装置(1)は、前記充電状態を抜け、即時運転状態へ移行可能なウエイト状態となる。
【0058】
〈ウエイト状態から運転状態への移行〉
図6は、運転状態における各リレーの状態を示す図である。ウエイト状態から運転状態への移行する際には、室外側制御回路(13)は、2つのメインリレー(14b)をオンにする。これにより、第1室外側電源回路(14)によって、前記IPMや室外ファンモータに電力が供給されて、電動圧縮機などが運転状態になる。そうして、空気調和装置(1)では、室外機(10)と室内機(20)とが通信しながら、冷房運転又は暖房運転が行われる。
【0059】
−運転停止動作−
運転停止する場合には、図2に破線矢印で示した順で、運転状態からサスペンド状態に遷移する。
【0060】
運転状態において、例えばユーザがリモコン(30)で運転停止操作をすると、運転状態、ウエイト状態、サスペンド状態の順に遷移する。以下、運転状態からサスペンド状態までの動作を順に説明する。
【0061】
<運転状態からウエイト状態への移行>
ユーザーがリモコン(30)で運転停止操作をすると、リモコン(30)から室内機(20)に運転停止信号が送信され、室内機(20)から室外機(10)に運転停止信号が送信される。
【0062】
室外機(10)では、運転停止信号を受信すると、室外側制御回路(13)がメインリレー(K14b)をオンからオフに切り換える。これにより、上記IPMや室外ファンモータへの電力供給が遮断されて、電動圧縮機等が停止する。こうして、運転状態からウエイト状態への移行が完了する(図5参照)。
【0063】
〈ウエイト状態からサスペンド状態への移行〉
ユーザがリモコン(30)で運転停止操作をすると、リモコン(30)では、所定のサスペンド移行禁止条件が判定される。このサスペンド移行禁止条件は、例えばユーザーがリモコン(30)で運転停止操作をした時刻がスケジューリング機能で予約された運転開始予定時刻から所定時間以内である場合には、ウエイト状態からサスペンド状態への移行を禁止するというものである。上記サスペンド移行禁止条件に該当しない場合には、リモコン(30)から室内機(20)に遮断要求信号が送信され、室内機(20)から室外機(10)に遮断要求信号が送信される。
【0064】
室外機(10)では、遮断要求信号を受信すると、室外側制御回路(13)がリレー(K14R)及びリレー(K15R)をオフにする。これにより、室外機伝送回路(11)と室内機伝送回路(21)との接続が断たれ、室外機(10)と室内機(20)が通信することができなくなる。また、室内側制御回路(13)は、リレー(K13R)をノーマルオープン接点と可動接点とが接続された状態からノーマルクローズ接点と可動接点とが接続された状態に切り換える。これにより、第2室外機電源部(12)への電力供給が遮断される。また、室外機(10)は、リレー(K13R,K14R,K15R)を作動させる直前に、室内機(20)へ遮断実施信号を送信する。こうして、サスペンド状態への移行が完了する(図1参照)。
【0065】
−通信異常の検知−
本空気調和装置(1)は、上述したように、室内機(20)側から室外機(10)を制御するために、室内機(20)と室外機(10)との間で通信を行っている。しかしながら、例えば室外機伝送回路(11)が故障したりすることにより、室内機(20)と室外機(10)とが通信することができなく場合がある。そこで、本空気調和装置(1)では、室内側制御回路(23)が室内機伝送回路(21)と室外機伝送回路(11)との通信状態を監視している。そして、室内側制御回路(23)は、室内機(20)と室外機(10)とが通信することができなくなると、通信異常を検知する。
【0066】
具体的には、室内側制御回路(23)は、室内機伝送回路(21)から室外機伝送回路(11)に制御信号を送信してから、室内機伝送回路(21)が室外機伝送回路(11)からの応答信号を所定時間以内に受信しないときに通信異常として検知する。室内機(20)では、室内側制御回路(23)が通信異常を検知すると、当該通信異常に関する情報(例えば通信エラーのコード)が記憶部(24)に記憶される。
【0067】
ところが、本空気調和装置(1)では、サスペンド状態において、室外機(10)への電力供給が遮断されているため、室内機(20)と室外機(10)とが通信することができなくなる。そのため、サスペンド状態では、室内側制御回路(23)が、通信異常が起きていないのにも関わらず、通信異常を検知してしまう虞がある。
【0068】
そこで、本空気調和装置(1)では、サスペンド状態において、室内側制御回路(23)が通信異常を検知しても無効とする処理を行っている。この通信異常の有効無効の判断処理について、具体的に説明する。
【0069】
室内側制御回路(23)は、上記ウエイト状態からサスペンド状態に移行するときに室外機(20)から送信された遮断実施信号を室内機伝送回路(21)が受信すると、室外機(10)への電力供給が遮断されていることを示す遮断情報を記憶部(24)に記憶させる。具体的には、記憶部(24)の所定のアドレスのビットを「0」から「1」に書き換える。
【0070】
室内側制御回路(23)は、図7に示すように、通信異常を検知する(ステップS1)と、記憶部(24)に遮断情報が記憶されているか否かを判定する(ステップS2)。記憶部(24)に遮断情報が記憶されている場合には、通信異常を無効とする(ステップS3)。一方、記憶部(24)に遮断情報が記憶されていない場合には、通信異常を有効とし、該通信異常に関する情報を記憶部(24)に記憶する(ステップS4)。
【0071】
そうして、室内側制御回路(23)は、リレー(K2R)をオンにしたとき(即ち、サスペンド状態から充電状態に移行するとき)に、記憶部(24)に記憶された遮断情報をクリアする。具体的には、記憶部(24)の所定のアドレスのビットを「1」から「0」に書き換える。
【0072】
<実施形態の効果>
本実施形態によれば、ウエイト状態からサスペンド状態に移行するときに、室内機(20)の記憶部(24)に遮断情報が記憶される。そして、室内側制御回路(23)が室内機(20)と室外機(10)との通信異常を検知した場合において、記憶部(24)に遮断情報が記憶されているときには、当該検知した通信異常が無効とされる。従って、室外機(10)への電力供給が遮断されているときに室内機(20)と室外機(10)とが通信することができないことを通信異常と誤検知してしまうことを確実に回避することができる。
【0073】
こうした通信異常の誤検知を回避する方法としては、例えばサスペンド状態において、室内側制御回路(23)の通信異常の検知自体を行わないようにすることも考えられるが、こうした処理には、空気調和装置(1)の運転の状態によって室内側制御回路(23)が室内機伝送回路(21)と室外機伝送回路(11)との通信状態を監視するか否かを制御するための複雑な制御が要求される。これに対し、本空気調和装置(1)では、室内側制御回路(11)がサスペンド状態では通信異常を検知しても無効とするだけであるので、簡単なソフトウェア開発だけで済む。
【0074】
また、室内制御回路(23)がリレー(K2R)をオンにしたときに、記憶部(24)に記憶された遮断情報がクリアされるため、室外機(10)に電力が供給されているときには、記憶部(24)に遮断情報が記憶されていないことになる。従って、充電、ウエイト、サスペンド状態では、室内制御回路(23)により通信異常を確実に検知することができる。
《その他の実施形態》
本発明は、上記実施形態について、以下のようにしてもよい。
【0075】
上記実施形態では、上記ウエイト状態からサスペンド状態に移行するときに室外機(10)から室内機(20)に遮断実施信号を送信し、該遮断実施信号を室内機伝送回路(21)が受信したときに、室内制御回路(23)が室外機(10)への電力供給が遮断されたことを認識し、記憶部(24)に遮断情報が記憶されるように構成したが、これに限られず、室外機(10)と室内機(20)との通信信号がハイレベルからローレベルになったことに基づいて、室内制御回路(23)が室外機(10)への電力供給が遮断されたことを認識し、記憶部(24)に遮断情報が記憶されるように構成してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明は、運転停止中に室外機への電力供給を遮断することができる空気調和装置において、室外機への電力供給が遮断されているときに室内機と室外機とが通信することができないことを通信異常と誤検知してしまうことを確実に回避することができる点で有用である。
【符号の説明】
【0077】
1 空気調和装置
10 室外機
20 室内機
23 室内側制御回路(検知部)
24 記憶部
K2R リレー(起動手段)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7