(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
少なくとも、前記第1の入射面から入射した前記第2の偏光の色光と、前記第2の入射面から入射した前記第1の偏光の色光と、前記第3の入射面から入射した前記第2の偏光の色光とが、前記出射面から出射される、請求項1に記載の投射型表示装置。
前記第1の膜の前記第2の偏光に対するカットオフ波長は、第1および第2のカットオフ波長を含み、該第1のカットオフ波長は、黄色の波長帯域の範囲内に設定され、該第2のカットオフ波長は、青緑色の波長帯域の範囲内に設定され、
前記第2の膜の前記第2の偏光に対するカットオフ波長は、前記黄色の波長帯域の範囲内に設定され、
前記第1の入射面から入射した、前記赤色の波長帯域にピーク波長を有する前記第2の偏光の赤色の光と、前記第2の入射面から入射した、少なくとも前記青色の波長帯域にピーク波長を有する前記第1の偏光の青色の光および前記緑色の波長帯域にピーク波長を有する前記第1の偏光の緑色の光と、前記第3の入射面から入射した、前記緑色の波長帯域にピーク波長を有する前記第2の偏光の緑色の光とが、前記出射面から出射される、請求項1に記載の投射型表示装置。
前記第1の膜の前記第2の偏光に対するカットオフ波長は、第1および第2のカットオフ波長を含み、該第1のカットオフ波長は、黄色の波長帯域の波長に設定され、該第2のカットオフ波長は、青緑色の波長帯域の波長に設定され、
前記第2の膜の前記第2の偏光に対するカットオフ波長は、前記青緑色の波長帯域の波長に設定され、
前記第1の入射面から入射した、前記青色の波長帯域にピーク波長を有する前記第2の偏光の青色の光と、前記第2の入射面から入射した、少なくとも前記緑色の波長帯域にピーク波長を有する前記第1の偏光の緑色の光および前記赤色の波長帯域にピーク波長を有する前記第1の偏光の赤色の光と、前記第3の入射面から入射した、前記緑色の波長帯域にピーク波長を有する前記第2の偏光の緑色の光とが、前記出射面から出射される、請求項1に記載の投射型表示装置。
直角を成す面が互いに接合された4つの直角プリズムをさらに有し、これら直角プリズムの接合面に、前記第1および第2の膜が形成されている、請求項1から13のいずれか1項に記載の投射型表示装置。
色再現性を優先した表示を行う第1の表示モードと明るさを優先した表示を行う第2の表示モードの切り替えが可能であり、設定された表示モードに応じて前記第1乃至第3の光源の各固体光源を制御する制御手段を、さらに有し、
前記制御手段は、
前記第1の表示モードが設定された場合は、前記特定の色の固体光源を点灯しない状態で、前記第1乃至第3の光源のうちの光出力が最も小さな光源の出射光束に合わせて、残りの2つの光源の光出力を制御し、
前記第2の表示モードが設定された場合には、前記第1乃至第3の光源の各固体光源を全て点灯させ、前記特定の色の固体光源からの出射光束と前記残りの2つの光源の一方に用いられた前記特定の色に対応する固体光源からの出射光束とを足し合わせた光束に合わせて、残りの色の固体光源の光出力を制御する、請求項1から14のいずれか1項に記載の投射型表示装置。
第1の色の固体光源および前記第1の色とは異なる第2の色の固体光源からなる第1の光源からの光束を第1の表示素子に照射し、前記第2の色の別の固体光源からなる第2の光源からの光束を第2の表示素子に照射し、前記第1および第2の色とは異なる第3の色の固体光源からなる第3の光源からの光束を第3の表示素子に照射し、前記第1乃至第3の表示素子にて形成された画像を色合成光学素子を介して投射光学系により投射する投射型表示装置の表示制御方法であって、
色再現性を優先した表示を行う第1の表示モードが設定された場合は、前記第1の光源の前記第2の色の固体光源を点灯しない状態で、前記第1乃至第3の光源のうちの光出力が最も小さな光源の出射光束に合わせて、残りの2つの光源の光出力を制御し、
明るさを優先した表示を行う第2の表示モードが設定された場合には、前記第1乃至第3の光源の各固体光源を全て点灯させ、前記第2の色の固体光源からの出射光束と前記第2の色の別の固体光源からの出射光束とを足し合わせた光束に合わせて、前記第1および第3の色の固体光源の光出力を制御する、表示制御方法。
【発明を実施するための形態】
【0045】
以下、本発明における一実施形態を、図面を参照して説明する。
【0046】
本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0047】
(第1の実施形態)
図2は、本発明の第1の実施形態である色合成光学素子の構成を示す斜視図である。
【0048】
図2を参照すると、色合成光学素子1は、直角を成す面が互いに接合された4つの直角プリズム1a〜1dからなるクロスダイクロイックプリズムである。直角プリズム1a、1dの接合面と直角プリズム1b、1cの接合面により一様な第1の平面が形成されており、この第1の平面に、誘電体多層膜からなる第1のダイクロイックミラー2aが形成されている。直角プリズム1a、1bの接合面と直角プリズム1c、1dの接合面により、第1の平面と交差する一様な第2の平面が形成されており、この第2の平面に、誘電体多層膜からなる第2のダイクロイックミラー2bが形成されている。すなわち、第1のダイクロイックミラー2aと第2のダイクロイックミラー2bは互いの膜面が交差するように形成されている。
【0049】
色合成光学素子1の4つの側面の内、3つの面(直角プリズム1a、1c、1dの各面)から光を入射させ、色を合成する。S偏光(緑+青)が直角プリズム1aの面(側面)に入射し、該面に対向する直角プリズム1cの面(側面)には、S偏光(赤)が入射する。P偏光(緑)が直角プリズム1dの面(側面)に入射する。残りの1つの側面(直角プリズム1dの面に対向する直角プリズム1bの面)は、3つの側面から入射した光を合成した光が出射される出射面である。
【0050】
図3Aは、第1のダイクロイックミラー2aのP偏光およびS偏光に対する分光透過特性を示すグラフである。
図3Bは、第1のダイクロイックミラー2aのP偏光およびS偏光に対する分光反射特性を示すグラフである。
【0051】
カットオフ波長を透過率、または反射率が50%になる波長と定義する。P偏光で入射する光に対する第1のダイクロイックミラー2aのカットオフ波長は400nmである。この場合、第1のダイクロイックミラー2aは、波長が400nm以上のP偏光の光を概ね透過し、反射しない。一方、S偏光で入射する光に対する第1のダイクロイックミラー2aのカットオフ波長は580nmである。この場合、第1のダイクロイックミラー2aは、波長が580nm以上のS偏光の光を概ね透過し、反射しない。また、第1のダイクロイックミラー2aは、波長が580nmより短いS偏光の光を概ね反射し、透過しない。
【0052】
第1のダイクロイックミラー2aの特性を色光に対する作用で表現すると、第1のダイクロイックミラー2aは、青色と緑色の光に対して、P偏光の光を透過し、S偏光の光を反射する。すなわち、第1のダイクロイックミラー2aは、青色と緑色の光に対して偏光ビームスプリッタとしても作用する。また、第1のダイクロイックミラー2aは、赤色の光に対しては、P偏光とS偏光をともに透過し、何ら作用しない。
【0053】
図4Aは、第2のダイクロイックミラー2bのP偏光およびS偏光に対する分光透過特性を示すグラフである。
図4Bは、第2のダイクロイックミラー2bのP偏光およびS偏光に対する分光反射特性を示すグラフである。
【0054】
P偏光で入射する光に対する第2のダイクロイックミラー2bのカットオフ波長は700nmである。この場合、第2のダイクロイックミラー2bは、波長が700nm以下のP偏光の光を概ね透過し、反射しない。一方、S偏光で入射する光に対する第2のダイクロイックミラー2bのカットオフ波長は580nmである。この場合、第2のダイクロイックミラー2bは、波長が580nm以上のS偏光の光を概ね反射し、透過しない。また、第2のダイクロイックミラー2bは、波長が580nmより短い波長のS偏光の光を概ね透過し、反射しない。
【0055】
第2のダイクロイックミラー2bの特性を色光に対する作用で表現すると、第2のダイクロイックミラー2bは、青色と緑色の光に対しては、P偏光とS偏光をともに透過し、何ら作用しない。また、第2のダイクロイックミラー2bは、赤色の光に対してはP偏光の光を透過し、S偏光の光を反射する。すなわち、第2のダイクロイックミラー2bは赤色の光に対して偏光ビームスプリッタとしても作用する。
【0056】
第1のダイクロイックミラー2aと第2のダイクロイックミラー2bのS偏光に対するカットオフ波長を580nmの黄色の帯域に設定している点が、特許文献11に開示されているダイクロイックプリズムの分光特性(
図1Aおよび
図1B参照)と大きく異なる。この相違点により、良好なホワイトバランスをとるために、不足している色の光をエテンデューの制約内で補うことが可能となり、LED光源の光出力特性を最大限に発揮させることができる。この特徴について、以下に詳細に説明する。
【0057】
図5は、
図2に示した色合成光学素子1を用いて色光が合成される際の光路を説明するための平面図である。
【0058】
色合成光学素子1の4つの側面の内、3つの面が入射面であり、これら入射面から入射した色光を第1のダイクロイックミラー2aと第2のダイクロイックミラー2bで合成する。残りの1面が出射面であり、この出射面から合成された色光が出射される。
【0059】
図5において、矢印付きの実線で表記した直線はそれぞれの入射光束の代表的な進行方向を示すものであるが、この矢印付きの実線で表記した直線だけが入射する光線そのものを意味しているものではない。入射する光は、色合成光学素子1の入射面以下の断面積を持った光束であって、矢印付きの実線で表記した直線以外の位置、並びに角度成分を有する光線も含む。
【0060】
赤色の光としてS偏光を用いる。赤色のS偏光は、直角プリズム1cの入射面(
図5においては、図面に向かって下方に位置する面)から色合成光学素子1に入射する。第1のダイクロイックミラー2aは、赤色のS偏光に対しては何ら作用しないので、赤色のS偏光はそのまま第1のダイクロイックミラー2aを透過する。一方、第2のダイクロイックミラー2bは、赤色のS偏光を全て反射する。よって、
図5に示すように、赤色のS偏光の光束は、第2のダイクロイックミラー2bにて90度曲げられ、その後、直角プリズム1bの出射面から出射される。
【0061】
緑色の光としてP偏光およびS偏光を用いる。緑色のP偏光は、直角プリズム1dの入射面(
図5においては、図面に向かって左方に位置する面)から色合成光学素子1に入射する。第1のダイクロイックミラー2aと第2のダイックロイックミラー2bは、ともに緑色のP偏光に対しては何ら作用しないので、緑色のP偏光は、そのまま第1のダイクロイックミラー2aと第2のダイックロイックミラー2bを透過する。第1のダイクロイックミラー2aと第2のダイックロイックミラー2bを透過した緑色のP偏光は、直角プリズム1bの出射面から出射される。
【0062】
青色の光としてS偏光を用いる。青色のS偏光は、直角プリズム1aの入射面(
図5においては、図面に向かって上方に位置する面)から色合成光学素子1に入射する。この直角プリズム1aの入射面には、緑色のS偏光も、青色のS偏光と同じ方向から入射する。
【0063】
第2のダイクロイックミラー2bは、青色と緑色のS偏光に対しては何ら作用しないので、青色と緑色のS偏光はそのまま第2のダイクロイックミラー2bを透過する。一方、第1のダイクロイックミラー2aは、青色と緑色のS偏光を全て反射する。よって、青色と緑色のS偏光の光束は、
図5に示すように、第1のダイクロイックミラー2aにて90度曲げられ、その後、直角プリズム1bの出射面から出射される。
【0064】
上述のように、本実施形態の色合成光学素子1では、直角プリズム1aの入射面から入射した緑色および青色のS偏光と、直角プリズム1cの入射面から入射した赤色のS偏光と、直角プリズム1dの入射面から入射した緑色のP偏光とが、第1のダイクロイックミラー2aおよび第2のダイクロイックミラー2bにて合成されることで、白色光を得ることができる。
【0065】
図6Aは、第1のダイクロイックミラー2aのP偏光に対する分光透過特性と緑色のLED光源の発光スペクトルとの関係を示すグラフである。
図6Bは、第1のダイクロイックミラー2aのS偏光に対する分光反射特性と赤色、緑色、青色の各LED光源の発光スペクトルとの関係を示すグラフである。赤色のLED光源のピーク波長は630nmであり、緑色のLED光源のピーク波長は520nmであり、青色のLED光源のピーク波長は460nmである。
【0066】
図7Aは、第2のダイクロイックミラー2bのP偏光に対する分光透過特性と緑色のLED光源の発光スペクトルとの関係を示すグラフである。
図7Bは、第2のダイクロイックミラー2bのS偏光に対する分光反射特性と赤色、緑色、青色の各LED光源の発光スペクトルとの関係を示すグラフである。赤色のLED光源のピーク波長は630nmであり、緑色のLED光源のピーク波長は520nmであり、青色のLED光源のピーク波長は460nmである。
【0067】
図6Aと
図7Aから明らかなように、緑色のP偏光に対して、第1のダイクロイックミラー2aと第2のダイクロイックミラー2bのカットオフ波長は十分に離れている。したがって、カットオフ波長が入射角依存性によりシフトしても、P偏光の緑色の光がそれらダイクロイックミラー2a、2bにて反射されることはない。よって、入射角依存性による損失は生じない。
【0068】
また、
図6Bと
図7Bから明らかなように、緑色のS偏光と赤色のS偏光に対して、第1のダイクロイックミラー2aと第2のダイクロイックミラー2bのカットオフ波長は十分に離れている。したがって、カットオフ波長が入射角依存性によりシフトしても、S偏光の赤色と緑色の光を、ほとんど損失することなく、それらダイクロイックミラー2a、2bにて合成できる。
【0069】
このように、第1のダイクロイックミラー2aと第2のダイクロイックミラー2bのカットオフ波長は、色合成に使用しない黄色の帯域に設定されているので、平行光とは異なる角度で入射する光に対しても、効率よく色光を合成するこことができる。
【0070】
一般に、赤色、緑色、青色の各光源としてLEDのような半導体光源を用い、各半導体光源からの赤色、緑色、青色の光を合成してホワイトバランスに優れた白色光を得る場合、赤色、緑色、青色の光の混色比率に対して、青色の光出力が他の色に比べて大きく、緑色の光出力が他の色に比べて小さい。この場合、光出力が相対的に小さい緑色の半導体光源に合わせて、青色と赤色の半導体光源の光出力を抑制させるため、得られる白色光の光出力も小さいものになってしまう。
【0071】
本実施形態の色合成光学素子によれば、緑色の光を異なる2方向から合成することができる。しかも、光出力が相対的に大きい青色の光量を減らして、緑色の光を加える構成となっている。したがって、最適な混色比率で三原色を合成でき、ホワイトバランスに優れた白色光が得られる。加えて、3色のLEDの光出力を抑制することなく最大限に発揮させることが可能である。
【0072】
本実施形態の色合成光学素子は、緑色の光のみを異なる2方向から合成する構成に限定されるものではない。例えば、
図8に示すように、緑色および赤色のP偏光を直角プリズム1dの入射面から色合成光学素子1に入射させてもよい。
図5に示したものと同様、緑色および青色のS偏光が直角プリズム1aの入射面に入射し、赤色のS偏光が直角プリズム1cの入射面に入射する。
【0073】
図9Aは、
図8に示した色合成光学素子における、第1のダイクロイックミラー2aのP偏光に対する分光透過特性と緑色および赤色の各LED光源の発光スペクトルとの関係を示すグラフである。
図9Bは、
図8に示した色合成光学素子における、第1のダイクロイックミラー2aのS偏光に対する分光反射特性と、赤色、緑色、青色の各LED光源の発光スペクトルとの関係を示すグラフである。赤色のLED光源のピーク波長は630nmであり、緑色のLED光源のピーク波長は520nmであり、青色のLED光源のピーク波長は460nmである。
【0074】
図10Aは、
図8に示した色合成光学素子における、第2のダイクロイックミラー2bのP偏光に対する分光透過特性と
赤色および緑色の
各LED光源の発光スペクトルとの関係を示すグラフである。
図10Bは、
図8に示した色合成光学素子における、第2のダイクロイックミラー2bのS偏光に対する分光反射特性と赤色、緑色、青色の各LED光源の発光スペクトルとの関係を示すグラフである。赤色のLED光源のピーク波長は630nmであり、緑色のLED光源のピーク波長は520nmであり、青色のLED光源のピーク波長は460nmである。
【0075】
図9Aおよび
図10Aに示すように、第1のダイクロイックミラー2aと第2のダイックロイックミラー2bは、ともに緑色と赤色のP偏光に対しては何ら作用しない。よって、直角プリズム1dの入射面から入射した緑色と赤色のP偏光は、そのまま各ダイクロイックミラー2a、2bを透過し、その後、直角プリズム1bの出射面から出射される。なお、各ダイクロイックミラー2a、2bの赤色、緑色および青色のS偏光に対する作用は
図5に示したものと同様である。
【0076】
また、緑色および赤色のP偏光に対して、第1のダイクロイックミラー2aと第2のダイクロイックミラー2bのカットオフ波長は十分に離れている。したがって、カットオフ波長が入射角依存性によりシフトしても、P偏光の緑色や赤色の光がそれらダイクロイックミラー2a、2bにて反射されることはない。よって、入射角依存性による損失は生じない。
【0077】
また、
図9Bと
図10Bから明らかなように、緑色のS偏光と赤色のS偏光に対して、第1のダイクロイックミラー2aと第2のダイクロイックミラー2bのカットオフ波長は十分に離れている。したがって、カットオフ波長が入射角依存性によりシフトしても、S偏光の赤色と緑色の光を、ほとんど損失することなく、それらダイクロイックミラー2a、2bにて合成できる。
【0078】
図8に示した色合成光学素子によれば、緑色の光を異なる2方向から入射させて合成することができるとともに、赤色の光を異なる2方向から入射させて合成することができる。
【0079】
図5または
図8に示した色合成光学素子において、直角プリズム1dの入射面に、青色のP偏光をさらに入射させる構成としてもよい。この場合は、青色の光も、異なる2方向から入射させて合成することができる。
【0080】
(第2の実施形態)
図11は、本発明の第2の実施形態である色合成光学素子の構成を示す斜視図である。
【0081】
図11を参照すると、色合成光学素子11は、第1の実施形態と同様、直角を成す面が互いに接合された4つの直角プリズム11a〜11dからなるクロスダイクロイックプリズムである。直角プリズム11a〜11dの接合面に、誘電体多層膜からなる第1のダイクロイックミラー12aと第2のダイクロイックミラー12bが交差するように形成されている。
【0082】
色合成光学素子11の4つの側面の内、3つの面(直角プリズム11a、11c、11dの各面)から光を入射させ、色を合成する。S偏光(青)が直角プリズム
11aの面に入射し、該入射面に対向する直角プリズム
11cの面には、S偏光(赤+緑)が入射する。P偏光(緑)は、直角プリズム
11dの面に入射する。残りの1つの側面(直角プリズム
11dの面に対向する直角プリズム
11bの面)から、3つの側面から入射した光を合成した光が出射される。
【0083】
図2に示した第1の実施形態の色合成光学素子1では、緑色および青色のS偏光が直角プリズム1aの入射面から色合成光学素子1に入射する。これに対して、本実施形態の色合成光学素子11では、緑色のS偏光は、直角プリズム11aの入射面ではなく、該入射面と対向する直角プリズム11cの入射面から、赤色のS偏光とともに色合成光学素子11に入射する。この点で、本実施形態の色合成光学素子11は、
図2に示した第1の実施形態の色合成光学素子1と異なる。
【0084】
図12Aは、第1のダイクロイックミラー12aのP偏光およびS偏光に対する分光透過特性を示すグラフである。
図12Bは、第1のダイクロイックミラー12aのP偏光およびS偏光に対する分光反射特性を示すグラフである。
【0085】
P偏光で入射する光に対する第1のダイクロイックミラー12aのカットオフ波長は400nmである。この場合、第1のダイクロイックミラー12aは、波長が400nm以上のP偏光の光を概ね透過し、反射しない。一方、S偏光で入射する光に対する第1のダイクロイックミラー12aのカットオフ波長は490nmである。この場合、第1のダイクロイックミラー12aは、波長が490nm以上のS偏光の光を概ね透過し、反射しない。また、第1のダイクロイックミラー12aは、波長が490nmより短い波長のS偏光の光を概ね反射し、透過しない。
【0086】
第1のダイクロイックミラー12aの特性を色光に対する作用で表現すると、第1のダイクロイックミラー12aは、青色の光に対しては、P偏光の光を透過し、S偏光の光を反射する。すなわち、第1のダイクロイックミラー12aは、青色の光に対して偏光ビームスプリッタとしても作用する。一方、第1のダイクロイックミラー12aは、緑色と赤色の光に対しては、P偏光とS偏光をともに透過し、何ら作用しない。
【0087】
図13Aは、第2のダイクロイックミラー12bのP偏光およびS偏光に対する分光透過特性を示すグラフである。
図13Bは、第2のダイクロイックミラー12bのP偏光およびS偏光に対する分光反射特性を示すグラフである。
【0088】
P偏光で入射する光に対する第2のダイクロイックミラー12bのカットオフ波長は700nmである。この場合、第2のダイクロイックミラー12bは、波長が700nm以下のP偏光の光を概ね透過し、反射しない。一方、S偏光で入射する光に対する第2のダイクロイックミラー12bのカットオフ波長が490nmである。この場合、第2のダイクロイックミラー12bは、波長が490nm以上のS偏光の光を概ね反射し、透過しない。また、第2のダイクロイックミラー12bは、490nmより短い波長のS偏光の光を概ね透過し、反射しない。
【0089】
第2のダイクロイックミラー12bの特性を色光に対する作用で表現すると、第2のダイクロイックミラー12bは、青色の光に対しては、P偏光とS偏光をともに透過し、何ら作用しない。また、第2のダイクロイックミラー12bは、緑色と赤色の光に対しては、P偏光の光を透過し、S偏光の光を反射する。すなわち、第2のダイクロイックミラー12bは、緑色と赤色の光に対して偏光ビームスプリッタとしても作用する。
【0090】
本実施形態の色合成光学素子11は、第1のダイクロイックミラー12aと第2のダイクロイックミラー12bのS偏光に対するカットオフ波長を490nmの青緑(シアン)色の帯域に設定している点で、特許文献11に開示されているダイクロイックプリズムと異なる。この相違点によれば、良好なホワイトバランスをとるために、不足している色の光をエテンデューの制約内で補うことが可能であり、LED光源の光出力特性を最大限に発揮させることができる。この特徴点について、以下に詳細に説明する。
【0091】
図14は、
図11に示した色合成光学素子11を用いて色光が合成される際の光路を説明するための平面図である。
【0092】
色合成光学素子11の4つの側面の内、3つの面が入射面であり、これら入射面から入射した色光を第1のダイクロイックミラー12aと第2のダイクロイックミラー12bで合成する。残りの1面が出射面であり、この出射面から合成された色光が出射される。
【0093】
図14において、矢印付きの実線で表記した直線はそれぞれの入射光束の代表的な進行方向を示すものであるが、この矢印付きの実線で表記した直線だけが入射する光線そのものを意味しているものではない。入射する光は、色合成光学素子11の入射面以下の断面積を持った光束であって、矢印付きの実線で表記した直線以外の位置、並びに角度成分を有する光線も含む。
【0094】
青色の光としてS偏光を用いる。青色のS偏光は、直角プリズム11aの入射面(
図14においては、図面に向かって上方に位置する面)から色合成光学素子11に入射する。第2のダイクロイックミラー12bは、青色のS偏光に対しては何ら作用しないので、青色のS偏光はそのまま第2のダイクロイックミラー12bを透過する。一方、第1のダイクロイックミラー12aは、青色のS偏光を全て反射する。よって、青色のS偏光の光束は、
図14に示すように、第1のダイクロイックミラー12aにて90度曲げられ、その後、直角プリズム11bの出射面から出射される。
【0095】
緑色の光としてP偏光およびS偏光を用いる。緑色のP偏光は、直角プリズム11dの入射面(
図14においては、図面に向かって左方に位置する面)から色合成光学素子11に入射する。第1のダイクロイックミラー12aと第2のダイックロイックミラー12bは、ともに緑色のP偏光に対しては何ら作用しないので、緑色のP偏光は、そのまま各ダイックロイックミラー12a、12bを透過し、その後、直角プリズム11bの出射面から出射される。
【0096】
赤色の光としてS偏光を用いる。緑色および赤色のS偏光は、直角プリズム11cの入射面(
図14においては、図面に向かって下方に位置する面)から色合成光学素子11に入射する。第1のダイクロイックミラー12aは、緑色と赤色のS偏光に対しては何ら作用しないので、緑色と赤色のS偏光はそのまま第1のダイクロイックミラー12aを透過する。一方、第2のダイクロイックミラー12bは、緑色と赤色のS偏光を全て反射する。よって、緑色と赤色のS偏光の光束は、
図14に示すように、第1のダイクロイックミラー12bにて90度曲げられ、その後、直角プリズム11bの出射面から出射される。
【0097】
このように、本実施形態の色合成光学素子11によれば、青色のS偏光と、緑色のP偏光およびS偏光と、赤色のS偏光とが合成されて白色光を得ることができる。
【0098】
図15Aは、第1のダイクロイックミラー12aのP偏光に対する分光透過特性と緑色のLED光源の発光スペクトルとの関係を示すグラフである。
図15Bは、第1のダイクロイックミラー12aのS偏光に対する分光反射特性と赤色、緑色、青色の各LED光源の発光スペクトルとの関係を示すグラフである。赤色のLED光源のピーク波長は630nmであり、緑色のLED光源のピーク波長は530nmであり、青色のLED光源のピーク波長は450nmである。
【0099】
図16Aは、第2のダイクロイックミラー12bのP偏光に対する分光透過特性と緑色のLED光源の発光スペクトルとの関係を示すグラフである。
図16Bは、第2のダイクロイックミラー12bのS偏光に対する分光反射特性と赤色、緑色、青色の各LED光源の発光スペクトルとの関係を示すグラフである。赤色のLED光源のピーク波長は630nmであり、緑色のLED光源のピーク波長は530nmであり、青色のLED光源のピーク波長は450nmである。
【0100】
図15Aと
図16Aから明らかなように、緑色のP偏光に対して、第1のダイクロイックミラー12aと第2のダイクロイックミラー12bのカットオフ波長は十分に離れている。したがって、カットオフ波長が入射角依存性によりシフトしても、P偏光の緑色の光はそれらダイクロイックミラー12a、12bにて反射することはない。よって、入射角依存性による損失は生じない。
【0101】
図15Bと
図16Bから明らかなように、青色のS偏光と緑色のS偏光に対して、第1のダイクロイックミラー12aと第2のダイクロイックミラー12bのカットオフ波長は十分に離れている。したがって、カットオフ波長が入射角依存性によりシフトしても、S偏光の青と緑の光を、それらダイクロイックミラー12a、12bにてほとんど損失することなく合成できる。
【0102】
このように、第1のダイクロイックミラー12aと第2のダイクロイックミラー12bのカットオフ波長は、色合成に使用しない青緑(シアン)色の帯域に設定されているので、平行光とは異なる角度で入射する光に対しても、効率よく色光を合成するこことができる。
【0103】
第1の実施形態と同様に、本実施形態によれば、緑色の光を異なる2方向から合成することができる。しかも、光出力が相対的に大きな赤色の光量を減らして、緑色の光を加える構成となっている。したがって、最適な混色比率で三原色を合成でき、ホワイトバランスに優れた白色光が得られる。加えて、3色のLEDの光出力を抑制することなく最大限に発揮させることが可能になる。
【0104】
本実施形態の色合成光学素子11は、緑色の光のみを異なる2方向から合成する構成に限定されるものではない。例えば、
図11に示した色合成光学素子11において、緑色のP偏光の光が入射する直角プリズム11dの入射面に、青色または赤色のP偏光の光もしくは赤色および青色のP偏光の光をさらに入射させてもよい。これら形態の組み合わせの中から混色する色を設定できる。
【0105】
LEDの製造上の問題により、LEDのピーク波長が±10〜20nm程度ばらつくことが知られている。第1の実施形態では、黄色の波長帯域(560nm以上、600nm以下)にダイクロイックミラーのカット波長を設定しているので、緑色LEDのピーク波長が短波長側にばらついたものを使用することで、色合成時の損失をより一層低減できる。第2の実施形態では、青緑(シアン)色の波長帯域(480nm以上、500nm以下)にダイクロイックミラーのカット波長を設定しているので、緑色LEDのピーク波長が長波長側にばらついたものと、青色LEDのピーク波長が短波長側にばらついたものを使用することで、色合成時の損失をより一層低減できる。このようにLEDのピーク波長のばらつきに応じて色合成光学素子を選択してもよい。
【0106】
また、LEDの光出力特性も、製造上の問題によるばらつきが大きい。青色LEDの光出力が相対的に大きな場合には、第1の実施形態のように、青色を減らして緑色を加える。逆に、赤色LEDの光出力が相対的に大きな場合には、第2の実施形態のように、赤色を減らして緑色を加える。さらに、P偏光の緑色の光路に、赤色や青色のP偏光を加えることによって、各色の光源の組み合わせや配置を選択することができる。
【0107】
このように、各実施形態の色合成光学素子は、ピーク波長や光出力のばらつきが大きなLEDを活用することができるので有用である。
【0108】
(第3の実施形態)
図17は、本発明の第3の実施形態である色合成光学素子の構成を示す斜視図である。
【0109】
図17を参照すると、色合成光学素子111は、第1の実施形態と同様、直角を成す面が互いに接合された4つの直角プリズム111a〜111dからなるクロスダイクロイックプリズムである。直角プリズム111a〜111dの接合面に、誘電体多層膜からなる第1のダイクロイックミラー112aと第2のダイクロイックミラー112bが交差するように形成されている。
【0110】
色合成光学素子111の4つの側面の内、3つの面(直角プリズム111a、111c、111dの各面)から光を入射させ、色を合成する。S偏光(緑)が直角プリズム111aの面に入射し、該入射面に対向する直角プリズム111cの面には、S偏光(赤)が入射する。P偏光(青+緑)は、直角プリズム111dの面に入射する。残りの1つの側面(直角プリズム111dの面に対向する直角プリズム111bの面)から、3つの側面から入射した光を合成した光が出射される。
【0111】
図2に示した第1の実施形態の色合成光学素子1では、緑色および青色のS偏光が直角プリズム1aの入射面に入射し、赤色のS偏光が直角プリズム1cの入射面に入射し、緑色のP偏光が直角プリズム1dの入射面に入射する。これに対して、本実施形態の色合成光学素子111では、緑色のS偏光が直角プリズム111aの入射面に入射し、赤色のS偏光が直角プリズム111cの入射面に入射し、青色および緑色のP偏光が直角プリズム111dの入射面に入射する。すなわち、本実施形態の色合成光学素子111は、P偏光の透過光路に青色のP偏光と緑色のP偏光を入射させ、S偏光の反射光路に緑色のS偏光と赤色のS偏光をそれぞれ入射させる点で、第1の実施形態の色合成光学素子と異なる。
【0112】
図18Aは、第1のダイクロイックミラー112aのP偏光およびS偏光に対する分光透過特性を示すグラフである。
図18Bは、第1のダイクロイックミラー112aのP偏光およびS偏光に対する分光反射特性を示すグラフである。
【0113】
第1のダイクロイックミラー112aは、P偏光で入射する光のうちの可視域の光を概ね透過し、反射しない。S偏光で入射する光に対する第1のダイクロイックミラー112aのカットオフ波長は、490nmと580nmである。この場合、第1のダイクロイックミラー112aは、波長が490nm以下のS偏光の光および波長が580nm以上のS偏光の光を、概ね透過し、反射しない。また、第1のダイクロイックミラー112aは、波長が490nmを超え、580nm未満の波長域のS偏光の光を概ね反射し、透過しない。
【0114】
第1のダイクロイックミラー112aの特性を色光に対する作用で表現すると、第1のダイクロイックミラー112aは、緑色の光に対しては、P偏光の光を透過し、S偏光の光を反射する。すなわち、第1のダイクロイックミラー112aは、緑色の光に対して偏光ビームスプリッタとしても作用する。一方、第1のダイクロイックミラー112aは、青色と赤色の光に対してはP偏光とS偏光をともに透過し、何ら作用しない。
【0115】
図19Aは、第2のダイクロイックミラー112bのP偏光およびS偏光に対する分光透過特性を示すグラフである。
図19Bは、第2のダイクロイックミラー112bのP偏光およびS偏光に対する分光反射特性を示すグラフである。
【0116】
P偏光で入射する光に対する第2のダイクロイックミラー112bのカットオフ波長は700nmである。この場合、第2のダイクロイックミラー112bは、波長が700nm以下のP偏光の光を概ね透過し、反射しない。一方、S偏光で入射する光に対する第2のダイクロイックミラー112bのカットオフ波長は580nmである。この場合、第2のダイクロイックミラー112bは、波長が580nm以上のS偏光の光を概ね反射し、透過しない。逆に、第2のダイクロイックミラー112bは、580nmより短い波長のS偏光の光を概ね透過し、反射しない。
【0117】
第2のダイクロイックミラー112bの特性を色光に対する作用で表現すると、第2のダイクロイックミラー112bは、青色と緑色の光に対しては、P偏光とS偏光をともに透過し、何ら作用しない。また、第2のダイクロイックミラー112bは、赤色の光に対しては、P偏光の光を透過し、S偏光の光を反射する。すなわち、第2のダイクロイックミラー112bは、赤色の光に対して偏光ビームスプリッタとしても作用する。
【0118】
第1のダイクロイックミラー112aと第2のダイクロイックミラー112bのS偏光に対するカットオフ波長を490nmの青緑(シアン)色と580nmの黄色の帯域に設定している点が、特許文献11に開示されているダイクロイックプリズムの分光特性(
図1Aおよび
図1B参照)と大きく異なる。この相違点により、良好なホワイトバランスをとるために、不足している色の光をエテンデューの制約内で補うことが可能となり、LED光源の光出力特性を最大限に発揮させることができる。この特徴について、以下に詳細に説明する。
【0119】
図20は、
図17に示した色合成光学素子111を用いて色が合成される際の光路を説明するための平面図である。前述したように、色合成光学素子111の4つの側面の内、3つの面が入射面であり、入射面から光を入射させて第1のダイクロイックミラー112aと第2のダイクロイックミラー112bで色光を合成する。残りの1面が出射面であり、出射面から、第1のダイクロイックミラー112aと第2のダイクロイックミラー112bで合成された光が出射される。
【0120】
図20において、矢印付きの実線で表記した直線はそれぞれの入射光束の代表的な進行方向を説明するためのものであるが、この矢印付きの実線で表記した直線だけが入射する光線そのものを意味しているものではない。入射する光は、色合成光学素子111の入射面以下の断面積を持った光束であって、矢印付きの実線で表記した直線以外の位置、並びに角度成分を有する光線も含む。
【0121】
緑色の光としてS偏光を用いる。緑色のS偏光は、直角プリズム111aの入射面(
図20においては、図面に向かって上方に位置する面)から色合成光学素子111に入射する。第2のダイクロイックミラー112bは、緑色のS偏光に対しては何も作用しないので、緑色のS偏光はそのまま第2のダイクロイックミラー112bを透過する。一方、第1のダイクロイックミラー112aは、緑色のS偏光を全て反射する。よって、緑色のS偏光の光路は、
図20に示すように、第1のダイクロイックミラー112aにて90度曲げられたものとなり、第1のダイクロイックミラー112aで反射された緑色のS偏光が出射面から出射される。
【0122】
赤色の光としてS偏光を用いる。赤色のS偏光は、直角プリズム111cの入射面(
図20においては、図面に向かって下方に位置する面)から色合成光学素子111に入射する。第1のダイクロイックミラー112aは、赤色のS偏光に対しては何も作用しないので、赤色のS偏光は、そのまま第1のダイクロイックミラー112aを透過する。一方、第2のダイクロイックミラー112bは、赤色のS偏光を全て反射する。よって、赤色のS偏光の光路は、
図20に示すように、第2のダイクロイックミラー112bにて90度曲げられたものとなり、第2のダイクロイックミラー112bで反射された赤色のS偏光が出射面から出射される。
【0123】
青色の光としてP偏光を用い、さらに緑色の光としてP偏光を用いる。青色および緑色のP偏光は、直角プリズム111dの入射面(
図20においては、図面に向かって左方に位置する面)から色合成光学素子111に入射する。第1のダイクロイックミラー112aと第2のダイックロイックミラー112bは、ともに青色と緑色のP偏光に対しては何も作用しないので、青色と緑色のP偏光は、そのまま第1のダイクロイックミラー112aと第2のダイックロイックミラー112bを透過し、出射面から出射される。
【0124】
上述のように、本実施形態の色合成光学素子111では、青色のP偏光と、緑色のP偏光およびS偏光と、赤色のS偏光とが合成されることで、白色光を得ることができる。
【0125】
図21Aは、第1のダイクロイックミラー112aのP偏光に対する分光透過特性と青色および緑色の各LED光源の発光スペクトルとの関係を示すグラフである。
図21Bは、第1のダイクロイックミラー112aのS偏光に対する分光反射特性と、緑色および赤色の各LED光源の発光スペクトルとの関係を示すグラフである。赤色のLED光源のピーク波長は630nmであり、緑色のLED光源のピーク波長は530nmであり、青色のLED光源のピーク波長は450nmである。
【0126】
図22Aは、第2のダイクロイックミラー112bのP偏光に対する分光透過特性と青色および緑色の各LED光源の発光スペクトルとの関係を示すグラフである。
図22Bは、第2のダイクロイックミラー112bのS偏光に対する分光反射特性と赤色および緑色の各LED光源の発光スペクトルとの関係を示すグラフである。赤色のLED光源のピーク波長は630nmであり、緑色のLED光源のピーク波長は530nmであり、青色のLED光源のピーク波長は450nmである。
【0127】
図21Aと
図22Aから明らかなように、青色と緑色のP偏光に対して、第1のダイクロイックミラー112aと第2のダイクロイックミラー112bのカットオフ波長は十分に離れている。したがって、カットオフ波長が入射角依存性によりシフトしても、P偏光の青色と緑色の光がそれらダイクロイックミラー112a、112bにて反射されることはない。よって、入射角依存性による損失は生じない。
【0128】
また、
図21Bと
図22Bから明らかなように、赤色のS偏光と緑色のS偏光に対して、第1のダイクロイックミラー112aと第2のダイクロイックミラー112bのカットオフ波長は十分に離れている。したがって、カットオフ波長が入射角依存性によりシフトしても、S偏光の赤と緑の光を、ほとんど損失することなく、それらダイクロイックミラー112a、112bにて合成できる。
【0129】
このように、第1のダイクロイックミラー112aと第2のダイクロイックミラー112bのカットオフ波長が、色合成に使用しない青緑(シアン)色と黄色の波長帯域に設定しているので、平行光とは異なる角度で入射する光に対しても、効率よく色光を合成するこことができる。
【0130】
第1の実施形態と同様に、本実施形態によれば、緑色の光を異なる2方向から合成することができる。しかも、光出力が相対的に大きい青色の光量を減らして緑色の光を加える構成となっている。したがって、望ましい混色比率で三原色を合成でき、ホワイトバランスに優れた白色光が得られる。また、3色のLEDの光出力を抑制することなく最大限に発揮させることが可能になる。
【0131】
(第4の実施形態)
図23は、本発明の第4の実施形態である色合成光学素子の構成を示す斜視図である。
【0132】
図23を参照すると、色合成光学素子121は、第1の実施形態と同様、直角を成す面が互いに接合された4つの直角プリズム121a〜121dからなるクロスダイクロイックプリズムである。直角プリズム121a〜121dの接合面に、誘電体多層膜からなる第1のダイクロイックミラー122aと第2のダイクロイックミラー122bが交差するように形成されている。
【0133】
色合成光学素子121の4つの側面の内、3つの面(直角プリズム121a、121c、121dの各面)から光を入射させ、色を合成する。S偏光(緑)が直角プリズム121aの面に入射し、該入射面に対向する直角プリズム121cの面には、S偏光(青)が入射する。P偏光(赤+緑)は、直角プリズム121dの面に入射する。残りの1つの側面(直角プリズム121dの面に対向する直角プリズム121bの面)から、3つの側面から入射した光を合成した光が出射される。
【0134】
図2に示した第1の実施形態の色合成光学素子1では、緑色および青色のS偏光が直角プリズム1aの入射面に入射し、赤色のS偏光が直角プリズム1cの入射面に入射し、緑色のP偏光が直角プリズム1dの入射面に入射する。これに対して、本実施形態の色合成光学素子121では、緑色のS偏光が直角プリズム121aの入射面に入射し、青色のS偏光が直角プリズム121cの入射面に入射し、赤色および緑色のP偏光が直角プリズム121dの入射面に入射する。すなわち、本実施形態の色合成光学素子121は、P偏光の透過光路に赤色のP偏光と緑色のP偏光を入射させ、S偏光の反射光路に緑色のS偏光と青色のS偏光をそれぞれ入射させる点で、第1の実施形態の色合成光学素子と異なる。
【0135】
図24Aは、第1のダイクロイックミラー122aのP偏光およびS偏光に対する分光透過特性を示すグラフである。
図24Bは、第1のダイクロイックミラー122aのP偏光およびS偏光に対する分光反射特性を示すグラフである。
【0136】
第1のダイクロイックミラー122aは、P偏光で入射する光のうちの可視域の光を概ね透過し、反射しない。S偏光で入射する光に対する第1のダイクロイックミラー122aのカットオフ波長は、490nmと580nmである。この場合、第1のダイクロイックミラー122aは、490nm以下、および580nm以上のS偏光の光を概ね透過し、反射しない。また、第1のダイクロイックミラー122aは、波長が490nmを超え、580nm未満の波長域のS偏光の光を概ね反射し、透過しない。
【0137】
第1のダイクロイックミラー122aの特性を色光に対する作用で表現すると、第1のダイクロイックミラー122aは、緑色の光に対しては、P偏光の光を透過し、S偏光の光を反射する。すなわち、第1のダイクロイックミラー122aは、緑色の光に対して偏光ビームスプリッタとしても作用する。青色と赤色の光に対しては、第1のダイクロイックミラー122aは、P偏光とS偏光をともに透過し、何ら作用しない。
【0138】
図25Aは、第2のダイクロイックミラー122bのP偏光およびS偏光に対する分光透過特性を示すグラフである。
図25Bは、第2のダイクロイックミラー122bのP偏光およびS偏光に対する分光反射特性を示すグラフである。
【0139】
第2のダイクロイックミラー122bのP偏光で入射する光に対するカットオフ波長は400nmである。この場合、第2のダイクロイックミラー122bは、波長が400nm以上のP偏光の光を概ね透過し、反射しない。また、第2のダイクロイックミラー122bのS偏光で入射する光に対するカットオフ波長は490nmである。この場合、第2のダイクロイックミラー122bは、波長が490nm以下のS偏光の光を概ね反射し、透過しない。また、第2のダイクロイックミラー122bは、490nmより長い波長のS偏光の光を概ね透過し、反射しない。
【0140】
第2のダイクロイックミラー122bの特性を色光に対する作用で表現すると、赤色と緑色の光に対しては、第2のダイクロイックミラー122bはP偏光とS偏光をともに透過し、何ら作用しない。青色の光に対しては、第2のダイクロイックミラー122bは、P偏光の光を透過し、S偏光の光を反射する。すなわち、第2のダイクロイックミラー122bは、青色の光に対して偏光ビームスプリッタとしても作用する。
【0141】
第1のダイクロイックミラー122aと第2のダイクロイックミラー122bのS偏光に対するカットオフ波長を490nmの青緑(シアン)色と580nmの黄色の帯域に設定している点が、特許文献11に開示されているダイクロイックプリズム(
図1Aおよび
図1B参照)とは大きく異なる。この相違点により、良好なホワイトバランスをとるために、不足している色の光をエテンデューの制約内で補うことが可能であり、LED光源の光出力特性を最大限に発揮させることができる。この特徴について、以下に詳細に説明する。
【0142】
図26は、
図23に示した色合成光学素子121を用いて色が合成される際の光路を説明するための平面図である。前述したように、色合成光学素子121の4つの側面の内、3つの面が入射面であり、入射面から光を入射させて第1のダイクロイックミラー122aと第2のダイクロイックミラー122bで色光を合成する。残りの1面が出射面であり、この出射面から、第1のダイクロイックミラー122aと第2のダイクロイックミラー122bで合成された光が出射される。
【0143】
図26において、矢印付きの実線で表記した直線はそれぞれの入射光束の代表的な進行方向を説明するためのものであるが、この矢印付きの実線で表記した直線が入射する光線そのものだけを意味しているものではない。入射する光は、色合成光学素子121の入射面以下の断面積を持った光束であって、矢印付きの実線で表記した直線以外の位置、並びに角度成分を有する光線も含む。
【0144】
緑色の光としてS偏光を用いる。緑色のS偏光は、直角プリズム121aの入射面(
図26においては、図面に向かって上方に位置する面)から色合成光学素子121に入射する。第2のダイクロイックミラー122bは、緑色のS偏光に対しては何ら作用しないので、緑色のS偏光はそのまま第2のダイクロイックミラー122bを透過する。一方、第1のダイクロイックミラー122aは、緑色のS偏光を全て反射する。よって、緑色のS偏光の光路は、
図26に示すように、第1のダイクロイックミラー122aにて90度曲げられたものとなり、第1のダイクロイックミラー122aで反射された緑色のS偏光が出射面から出射される。
【0145】
青色の光としてS偏光を用いる。青色のS偏光は、直角プリズム121cの入射面(
図26においては、図面に向かって下方に位置する面)から色合成光学素子121に入射する。第1のダイクロイックミラー122aは、青色のS偏光に対しては何ら作用しないので、青色のS偏光は、そのまま第1のダイクロイックミラー122aを透過する。一方、第2のダイクロイックミラー122bは、青色のS偏光を全て反射する。よって、青色のS偏光の光路は、
図26に示すように、第2のダイクロイックミラー122bにて90度曲げられたものとなり、第2のダイクロイックミラー122bで反射された青色のS偏光が出射面から出射される。
【0146】
赤色の光としてP偏光を用い、さらに緑色の光としてP偏光を用いる。赤色および緑色のP偏光は、直角プリズム121dの入射面(
図26においては、図面に向かって左方に位置する面)から色合成光学素子121に入射する。第1のダイクロイックミラー122aと第2のダイックロイックミラー122bは、ともに赤色と緑色のP偏光に対しては何ら作用しないので、赤色と緑色のP偏光は、そのまま第1のダイクロイックミラー122aと第2のダイックロイックミラー122bを透過し、出射面から出射される。
【0147】
上述のように、本実施形態の色合成光学素子121では、赤色のP偏光と、緑色のP偏光およびS偏光と、青色のS偏光とが合成されることで、白色光を得ることができる。
【0148】
図27Aは、第1のダイクロイックミラー122aのP偏光に対する分光透過特性と緑色および赤色の各LED光源の発光スペクトルとの関係を示すグラフである。
図27Bは、第1のダイクロイックミラー122aのS偏光に対する分光反射特性と青色および緑色の各LED光源の発光スペクトルとの関係を示すグラフである。赤色のLED光源のピーク波長は630nmであり、緑色のLED光源のピーク波長は530nmであり、青色のLED光源のピーク波長は450nmである。
【0149】
図28Aは、第2のダイクロイックミラー122bのP偏光に対する分光透過特性と赤色および緑色の各LED光源の発光スペクトルとの関係を示すグラフである。
図28Bは、第2のダイクロイックミラー122bのS偏光に対する分光反射特性と青色および緑色のLED光源の発光スペクトルとの関係を示すグラフである。赤色のLED光源のピーク波長は630nmであり、緑色のLED光源のピーク波長は530nmであり、青色のLED光源のピーク波長は450nmである。
【0150】
図27Aと
図28Aから明らかなように、赤色と緑色のP偏光に対して、第1のダイクロイックミラー122aと第2のダイクロイックミラー122bのカットオフ波長は十分に離れている。したがって、カットオフ波長が入射角依存性によりシフトしても、P偏光の
赤色と緑色の光は、それらダイクロイックミラー122a、122bにて反射することはない。よって、入射角依存性による損失は生じない。
【0151】
また、
図27Bと
図28Bから明らかなように、青色のS偏光と緑色のS偏光に対して、第1のダイクロイックミラー122aと第2のダイクロイックミラー122bのカットオフ波長は十分に離れている。したがって、カットオフ波長が入射角依存性によりシフトしても、S偏光の青と緑の光を、ほとんど損失することなく、それらダイクロイックミラー122a、122bにて合成できる。
【0152】
このように、第1のダイクロイックミラー122aと第2のダイクロイックミラー122bのカットオフ波長が、色合成に使用しない青緑(シアン)色と黄色の波長帯域に設定しているので、平行光とは異なる角度で入射する光に対しても、効率よく色光を合成することができる。
【0153】
第1の実施形態と同様に、本実施形態によれば、緑色の光を異なる2方向から合成することができる。しかも、光出力が相対的に大きい赤色の光量を減らして緑色の光を加える構成となっている。したがって、望ましい混色比率で三原色を合成でき、ホワイトバランスに優れた白色光が得られる。また、3色のLEDの光出力を抑制することなく最大限に発揮させることが可能になる。
【0154】
(第5の実施形態)
図29は、本発明の第5の実施形態である投射型表示装置の構成を示すブロック図である。
【0155】
本実施形態の投射型表示装置は、3つの光源20a〜20c、色合成光学素子21、赤用表示素子22a、緑用表示素子22b、青用表示素子22c、および投射レンズ23を有する。
【0156】
色合成光学素子21は、第1の実施形態と同様のクロスダイクロイックプリズムであって、直角を成す面が互いに接合された4つの直角プリズム21a〜21dを有する。直角プリズム21a〜21dの接合面に、誘電体多層膜からなる第1のダイクロイックミラー24aと第2のダイクロイックミラー24bが交差するように形成されている。
【0157】
光源20aは赤色の光を出力する。光源20bは緑色の光を出力する。光源20cは緑色および青色の光を出力する。ここで、赤色、緑色、青色は、光の三原色に対応する。
【0158】
赤用表示素子22aは、光源20aからの光束(赤色)の進行方向に設けられている。光源20aからの光束(赤色)が赤用表示素子22aに照射される。赤用表示素子22aは、S偏光の画像光(赤色)を生成する。赤用表示素子22aからのS偏光の画像光(赤色)の進行方向に、色合成光学素子21の直角プリズム21cが配置されている。
【0159】
緑用表示素子22bは、光源20bからの光束(緑色)の進行方向に設けられている。光源20bからの光束(緑色)が緑用表示素子22bに照射される。緑用表示素子22bは、P偏光の画像光(緑色)を生成する。緑用表示素子22bからのP偏光の画像光(緑色)の進行方向に、色合成光学素子21の直角プリズム21dが配置されている。
【0160】
青用表示素子22cは、光源20cからの光束(緑色+青色)の進行方向に設けられている。光源20cからの光束(緑色+青色)が青用表示素子22cに照射される。青用表示素子22cは、S偏光の画像光(緑色+青色)を生成する。青用表示素子22cからのS偏光の画像光(緑色+青色)の進行方向に、色合成光学素子21の直角プリズム21aが配置されている。
【0161】
色合成光学素子21の4つの側面の内、直角プリズム21a、21c、21dの面が入射面であり、直角プリズム21bの面が出射面である。これら入出射面に、誘電体多層膜からなる反射防止膜を設けてもよい。
【0162】
赤用表示素子22aからのS偏光の画像光(赤色)は、直角プリズム21c側の入射面から色合成光学素子21に入射する。緑用表示素子22bからのP偏光の画像光(緑色)は、直角プリズム21d側の入射面から色合成光学素子21に入射する。青用表示素子22cからのS偏光の画像光(緑色+青色)は、直角プリズム21a側の入射面から色合成光学素子21に入射する。
【0163】
第1のダイクロイックミラー24aのP偏光およびS偏光に対する分光透過特性および分光反射特性は、
図3Aおよび
図3Bに示した通りである。
【0164】
第2のダイクロイックミラー24bのP偏光およびS偏光に対する分光透過特性および分光反射特性は、
図4Aおよび
図4Bに示した通りである。
【0165】
色合成光学素子21では、直角プリズム21a、21c、21dの各入射面から入射したS偏光の画像光(赤色)、P偏光の画像光(緑色)およびS偏光の画像光(緑色+青色)は、第1のダイクロイックミラー24aと第2のダイクロイックミラー24bで色合成される。この色合成された画像光は、直角プリズム21bの出射面から出射される。
【0166】
色合成光学素子21の出射面から出射された光束(画像光)の進行方向に、投射レンズ23が設けられている。各表示素子22a〜22cに表示された画像(または映像)が、投射レンズ23によって、不図示のスクリーン上に投影される。
【0167】
次に、赤用表示素子22a、緑用表示素子22bおよび青用表示素子22cの構成について具体的に説明する。
【0168】
図30は、赤用表示素子22a、緑用表示素子22bおよび青用表示素子22cとして用いられる表示素子の構成を示すブロック図である。
【0169】
図30を参照すると、表示素子は、液晶ライトバルブ40を有する。液晶ライトバルブ40の入射面側(光源側)には、偏光子41が取り付けられ、液晶ライトバルブ40の出射面側(色合成光学素子側)には検光子42が取り付けられている。
【0170】
液晶ライトバルブ40は、画素を構成する透明電極膜が形成された二枚のガラス基板を備え、これらガラス基板間に液晶が封入されている。液晶として、例えばツイステッド・ネマッティック(TN)液晶が用いられる。液晶の駆動方式として、画素毎に設けられたスイッチング素子である薄膜トランジスタ(TFT)を制御するアクティブマトリクス(AM)方式が用いられる。
【0171】
入力映像信号が、映像信号処理回路44に供給される。映像信号処理回路44は、明るさ補正や色補正などの映像信号処理を行う。映像信号処理が施された信号が、映像信号処理回路44から駆動回路43に供給される。
【0172】
駆動回路43は、映像信号処理回路44からの信号に液晶ライトバルブ40を駆動するためのD/A変換や極性変換などの処理を施し、各画素に設けられたTFTに駆動信号を供給する。
【0173】
液晶ライトバルブ40では、駆動回路43からの駆動信号に応じて各画素に印加された電圧により液晶の状態が変化し、この液晶の状態変化に応じて、偏光子41を透過した照明光の偏光状態が変化する。この結果、検光子42を通過した照明光は、入力映像信号に基づく画像に応じた強度変調が施されたものとなる。
【0174】
なお、液晶のモードはTNタイプに限定されることはなく、駆動方式もAM方式に限らない。ただし、検光子42から出射する光の偏光方向は、
図29に示した色合成光学素子で利用する偏光方向に規定される。この点を考慮した上で、液晶のモードに応じて偏光子41を透過する光の偏光方向が規定される。このような規定に基づき、偏光子41および検光子42の偏光軸の方向が決定される。
【0175】
図30に示した表示素子を用いて、
図29に示した各色用の表示素子22a〜22cを形成する。各色の表示画像がスクリーン上で一致するように、各色用の液晶ライトバルブから投射レンズ23までの光路長、および各色用の液晶ライトバルブの光軸に垂直な面内における位置が、微調機構を用いて調整されている。各色用の液晶ライトバルブの部品は、色合成光学素子21との相対位置がずれないように固定されている。
【0176】
次に、
図29に示した光源20a〜20cの構成について具体的に説明する。
【0177】
図31は、光源20a〜20cとして用いられる光源の基本的な構成を示すブロック図である。
図31を参照すると、光源は、基板上に発光部51であるLEDが実装されたLEDモジュール50を有する。基板は、放熱板としての機能を兼ね備えており、不図示のヒートシンクが取り付けられている。さらに、LEDモジュール50に強制冷却装置を設けて、LEDの発光特性が安定するように温度制御を行う。
【0178】
投射型表示装置の電源のスイッチが入れられると、駆動回路53が、発光部(LED)51に駆動電流を供給する。電流が発光部(LED)51に流れると、発光部(LED)51が発光する。発光部(LED)51からの光は、集光光学系52により集光される。この集光光学系52からの光束が表示素子に照射される。
【0179】
なお、集光光学系として、
図31ではレンズ形状の光学素子を用いているが、リフレクタのような反射型の光学素子を用いても構わない。また、表示素子に照射される光を均一にするためのインテグレータとして、フライアイレンズやガラスロッドを用いても良い。さらに、表示素子の偏光子で一方の偏光成分が損失するのを防止するために、偏光ビームスプリッタと1/2波長板を用いた偏光変換光学系など、一方の偏光成分を再利用する光学系を用いても良い。もちろん、LEDモジュール50の発光部51が偏光光を発生する光源であっても良く、あるいは発光部51に偏光変換機能を設けて、発光部51から偏光光が発生するように構成してもよい。いずれの形態も、既存の技術を組み合わせて任意に構成可能である。
【0180】
次に、光源20a〜20cのLEDモジュールの具体的な構成について説明する。
【0181】
図32Aは、光源20aに用いられる赤用LEDモジュール60の構成を示す模式図である。
図32Aを参照すると、赤用LEDモジュール60は、4つのLEDチップ61a〜61dからなる発光部61を有する。LEDチップ61a〜61dはいずれも、ピーク波長が630nmである赤色LEDよりなり、それらのチップ面積はほぼ同じである。
【0182】
図32Bは、光源20bに用いられる緑用LEDモジュール70の構成を示す模式図である。
図32Bを参照すると、緑用LEDモジュール70は、4つのLEDチップ71a〜71dからなる発光部71を有する。LEDチップ71a〜71dはいずれも、ピーク波長が520nmである緑色LEDよりなり、それらのチップ面積はほぼ同じである。
【0183】
図32Cは、光源20cに用いられる青用LEDモジュール80の構成を示す模式図である。
図32Cを参照すると、青用LEDモジュール80は、4つのLEDチップ81a〜81dからなる発光部81を有する。LEDチップ81a〜81cはいずれも、ピーク波長が460nmである青色LEDよりなる。LEDチップ81dは、ピーク波長が520nmである緑色LEDよりなる。LEDチップ81a〜81dのチップ面積はほぼ同じである。
【0184】
上記のLEDチップ61a〜61d、71a〜71d、81a〜81dを構成する赤色、緑色および青色のLEDの発光スペクトルは、
図6Bに示したものと同様である。
【0185】
各発光部61、71、81の面積は、基本的に、前述のエテンデューの制約に基づき、表示素子の面積や投射レンズのFナンバーによって決まるが、その面積決定に際しては、製造上の位置合わせマージンや照明光の照度分布の均一性を考慮する。
【0186】
赤用LEDモジュール60、緑用LEDモジュール70および青用LEDモジュール80において、発光部を構成するLEDチップは電流に対する発光特性が異なるので、その発光特性に応じて、
図31に示した駆動回路53により発光部51(LEDチップ)への電流量を制御する。
【0187】
また、定格駆動時における各色のLEDの特性は、次のとおりである。赤色LEDの色度は、xy色度座標において(0.700,0.300)で与えられ、その出射光束は、1チップあたり455lmである。緑色LEDの色度は、xy色度座標上で(0.195,0.700)で与えられ、その出射光束は、1チップあたり1000lmである。青色LEDの色度は、xy色度座標上で(0.140,0.046)で与えられ、その出射光束は、1チップあたり133lmである。
【0188】
以上の構成要素からなる本実施形態の投射型表示装置の動作を、
図29を参照して説明する。
【0189】
光源20aは
図32Aに示した赤用LEDモジュール60よりなり、この赤用LEDモジュール60から出射した光は、
図6Bに示したような赤色LEDの発光スペクトルを有する。光源20aからの光(赤)が赤用表示素子22aに照射される。
【0190】
光源20aからの光(赤)は、赤用表示素子22aにて入力映像信号に基づく画像(赤用)に応じた強度変調を受けた後、赤用表示素子22aからS偏光の画像光(赤)として色合成光学素子21に入射する。
【0191】
第1のダイクロイックミラー24aは
図6Bに示したようなS偏光に対する反射特性を有するので、赤用表示素子22aからのS偏光の画像光(赤)は、第1のダイクロイックミラー24aを透過する。第2のダイクロイックミラー24bは、
図7Bに示したようなS偏光に対する反射特性を有するので、赤用表示素子22aからのS偏光の画像光(赤)は、第2のダイクロイックミラー24bで、その光路が90度曲げられるように反射される。第2のダイクロイックミラー24bで反射されたS偏光の画像光(赤)は、色合成光学素子21の光出射面から出射される。
【0192】
光源20bは
図32Bに示した緑用LEDモジュール70よりなり、この緑用LEDモジュール70から出射した光は、
図6Bに示したような緑色LEDの発光スペクトルを有する。光源20bからの光(緑)が緑用表示素子22bに照射される。
【0193】
光源20bからの光(緑)は、緑用表示素子22bにて入力映像信号に基づく画像(緑用)に応じた強度変調を受けた後、緑用表示素子22bからP偏光の画像光(緑)として色合成光学素子21に入射する。
【0194】
第1のダイクロイックミラー24aは
図6Aに示したようなP偏光に対する透過特性を有するので、緑用表示素子22bからのP偏光の画像光(緑)は、そのまま第1のダイクロイックミラー24aを透過する。第2のダイクロイックミラー24bは
図7Aに示したようなP偏光に対する透過特性を有するので、緑用表示素子22bからのP偏光の画像光(緑)は、そのまま第2のダイクロイックミラー24bを透過する。両ダイクロイックミラー24a、24bを透過したP偏光の画像光(緑)は、そのまま色合成光学素子21の出射面から出射される。
【0195】
光源20cは
図32Cに示した青用LEDモジュール80よりなり、この青用LEDモジュール80から出射した光は、
図6Bに示したような青色および緑色のLEDの発光スペクトルを有する。光源20cからの光(緑+青)が青用表示素子22cに照射される。
【0196】
光源20cからの光(緑+青)は、青用表示素子22cにて入力映像信号に基づく画像(青用)に応じた強度変調を受けた後、青用表示素子22cからS偏光の画像光として色合成光学素子21に入射する。
【0197】
第
2のダイクロイックミラー24
bは、図
7Bに示したようなS偏光に対する反射特性を有するので、青用表示素子22cからのS偏光の画像光(緑+青)は、第
2のダイクロイックミラー24
bを透過する。第
1のダイクロイックミラー24
aは、図
6Bに示したようなS偏光に対する反射特性を有するので、青用表示素子22cからのS偏光の画像光(緑+青)は、第
1のダイクロイックミラー24
aで、その光路が90度曲げられるように反射される。第
1のダイクロイックミラー24
aで反射されたS偏光の画像光(緑+青)は、色合成光学素子21の出射面から出射される。
【0198】
光源20aから出射し、赤用表示素子22aに入射する光は、±15度程度の角度広がりを有している。同様に、光源20bから出射し、緑用表示素子22bに入射する光、および光源20cから出射し、青用表示素子22cに入射する光も、±15度程度の角度広がりを有している。本実施形態によれば、緑色のP偏光に対して、第1のダイクロイックミラー24aと第2のダイクロイックミラー24bのカットオフ波長は十分に離れている。したがって、カットオフ波長が入射角依存性によりシフトしても、P偏光の緑色の光はそれらダイクロイックミラー24a、24bで反射することはない。よって、入射角依存性による損失は生じない。
【0199】
同様に、青色と緑色のS偏光と赤色のS偏光に対して、第1のダイクロイックミラー24aと第2のダイクロイックミラー24bのカットオフ波長は十分に離れている。したがって、カットオフ波長が入射角依存性によりシフトしても、青色、緑色および赤色のS偏光の光を、それらダイクロイックミラー24a、24bにより、ほとんど損失することなく合成できる。
【0200】
上述のように、色合成光学素子21は、赤用表示素子22a、緑用表示素子22bおよび青用表示素子22cの3方向から入射した光を1つの光束に合成する。色合成光学素子21で合成された光は、投射レンズ23に入射する。投射レンズ23によって
、赤用表示素子22a、緑用表示素子22bおよび青用表示素子22cのそれぞれで表示された画像(映像)が、不図示のスクリーン上に投影される。
【0201】
次に、本実施形態の投射型表示装置の効果を説明する。
【0202】
例えば、青用LEDモジュールの発光部を4つの青色LEDチップで構成し、緑用LEDモジュールの発光部を4つの緑色LEDチップで構成し、赤用LEDモジュールの発光部を4つの赤色LEDチップで構成する。このような青用、緑用、赤用の各LEDモジュールからの光束を合成した場合の、合成された全光束は、6352lm(=(455+1000+133)×4)である。
【0203】
ところが、上記の合成された白色の色度は(0.299,0.271)となり、標準イルミナントD65の白色色度(0.313,0.329)から青紫色の方向に大きくずれることになる。この原因は、良好な白色を得るための光量比率に対して、緑色LEDの光出力が相対的に弱く、青色LEDの光出力が相対的に強いからである。
【0204】
ホワイトバランスをとるためには、緑の出射光束を増やす必要がある。定格の範囲内であれば、LEDに流れる電流を増大することで、出射光束を増やすことができる。しかし、緑色LEDからの出射光束を1000lmとした状態において、電流量を増大すると、定格を超えてLEDを駆動することとなり、その場合、電流量の増大に応じた光束の増加は望めない。また、定格を超えてLEDを駆動すると、LEDの寿命が短くなるだけでなく、場合によっては、LEDを破壊してしまう。
【0205】
上記のことから、通常は、緑色LEDチップの出射光束に合わせて、青色LEDチップの出射光束を133lmから80lmに抑制するとともに赤色LEDチップの出射光束を455lmから364lmに抑制している。この場合、全光束は5776lmとなり、明るさが9%低下することになる。
【0206】
一方、本実施形態の投射型表示装置では、
図32Cに示したように、青用LEDモジュール80は、青色を発光する3個のLEDチップ81a〜81cと、緑色を発光する1個のLEDチップ81dとから構成される。すなわち、この青用LEDモジュール80では、上述の4つの青色LEDチップで構成される青用LEDモジュールと比較して、青色LEDチップの数を1個減らし、その代わりに、緑色を発光するLEDチップが1個配置されている。
【0207】
また、本実施形態の投射型表示装置では、
図32Aに示したように、赤用LEDモジュール60は、赤色を発光する4個のLEDチップ61a〜61dからなり、
図32Bに示したように、緑用LEDモジュール70は、緑色を発光する4個のLEDチップ71a〜71dからなる。したがって、緑色LEDチップの数は、緑用LEDモジュール70に設けられた4個のLEDチップ71a〜71dと、青用LEDモジュール80に用いられた1個のLEDチップ81dとの合計5個となる。また、青色LEDチップの数は3個となり、赤色LEDチップの数は4個となる。これら赤色、緑色および青色の各LEDを全て定格で駆動した場合に、白色色度は、標準イルミナントD65の白色色度(0.313,0.329)が得られる。しかも、全光束は7219lmとなり、上述の5776lmに対し25%向上できる。
【0208】
図32Cに示した青用LEDモジュールを備える光源20cから出射された色光の色度は、xy色度座標の(0.148、0.139)で与えられる。これは、原色の青から少し明るい青にシフトすることを意味する。ただし、明るい視環境では、そのような色度のシフトによる影響は気にならない。また、映像信号処理時に、色補正すれば、中間色の色度変化の影響を小さくすることができる。
【0209】
以上説明したように、本実施形態によれば、LEDの光出力性能を最大限に発揮させ、混色時の光利用効率が高く、しかもホワイトバランスに優れた白色光を得ることが可能な色合成光学素子を用いて、明るい投射画像を表示できる投射型表示装置を得られる。
【0210】
本実施形態では、色合成光学素子として第1の実施形態に示したクロスダイクロイックプリズムを用いたが、赤色LEDの光出力特性が青色LEDよりも優れている場合には、第2の実施形態に示したクロスダイクロイックプリズムを用いてもよい。この場合は、緑色を発光する4個のLEDチップが緑用LEDモジュールに実装され、青色を発光する4個のLEDチップが青用LEDモジュールに実装され、赤色を発光する3個のLEDチップと緑色を発光する1個のLEDチップが赤用LEDモジュールに実装される。
【0211】
この他にも、緑用LEDモジュールにおいて、緑色LEDの数を減らし、赤色や青色のLEDを加えても良い。
【0212】
図32Cに示した青用LEDモジュールは、3個の青色のLEDチップ81a〜81cと1個の緑色のLEDチップ81dが基板に実装されたものとされているが、この構成に限定されない。チップ面積が1/4である4個の緑色LEDを用い、これらを発光部の四隅など、対称形になるように配置してもよい。これにより、出射光の混色がより良好になる。
【0213】
また、
図32A〜
図32Cに示した各色用のLEDモジュールはいずれも、4個のLEDチップを基板に実装したものであるが、これに限定されない。単一の色光を発生するLEDモジュールに実装されるLEDチップは、面積が4倍の1個のLEDチップを実装しても良い。2色の色光を発生するLEDモジュールに実装されるLEDチップの数は2個以上であればよい。重要なのは、LEDチップの数ではなく、チップ面積である。混色比率との兼ね合いで、LEDモジュールに実装されるLEDチップのチップ面積を設定することが望ましい。面積が小さなLEDチップを用いることで、より細かい混色比率でチップ面積を設定できる。
【0214】
もちろん、青色LEDの光出力特性がさらに高ければ、
図32Cに示した青用LEDモジュールにおいて、2個の青色のLEDチップを2個の緑色のLEDチップで置き換えてもよい。このように、使用するLEDの光出力特性に応じて、LEDモジュールを適宜設計することが望ましい。
【0215】
また、1つの基板に複数のLEDチップを実装するのではなく、1つずつ実装したものを複数個用いて、導光板などの光学的手段を用いて合成しても良い。
【0216】
さらに、絶対光量を増加させるために、背景技術で説明したダイクロイックミラーやホログラムを用いてピーク波長の異なる複数の色光を合成する手段を併用しても良い。
【0217】
以上の説明では簡単のために、各色の表示素子、色合成光学素子、投射レンズに、波長に依存した損失が生じないものとして、各光源から出射する光束の光量の比率を用いて説明した。実際には、色によって透過特性が異なる構成部品もあるので、全白画面を表示したときに、投射レンズから出射する各色の光束の光量比率で、LEDチップの面積比率を設定するのが望ましい。
【0218】
(第6の実施形態)
図33は、本発明の第6の実施形態である投射型表示装置の構成を示すブロック図である。本実施形態の投射型表示装置は、第5の実施形態の投射型表示装置の構成に制御手段90を加えたものである。光学系に関わる構成要素は、全て第5の実施形態と同じである。
【0219】
本実施形態の投射型表示装置は、色再現性を優先したカラー画像表示を行う第1の表示モードと、明るさを優先したカラー画像表示を行う第2の表示モードとの切り替えが可能とされている。制御手段90は、第1および第2の表示モードのうちから設定された表示モードに応じたカラー画像表示を実行する。
【0220】
第1の表示モード(色再現性を優先したカラー画像表示)では、制御手段90は、青用LEDモジュール80に実装されたLEDチップ81a〜81c(青色LEDチップ)およびLEDチップ81d(緑色LEDチップ)のうち、LEDチップ81a〜81cは点灯させるが、LEDチップ81dは点灯させない。また、制御手段90は、緑用LEDモジュール70に実装されたLEDチップ71a〜71dおよび赤用LEDモジュール60に実装されたLEDチップ61a〜61dをそれぞれ点灯させ、緑用LEDモジュール70に実装されたLEDチップ71a〜71dの出射光束に合わせて、青用LEDモジュール80に実装されたLEDチップ81a〜81cおよび赤用LEDモジュール60に実装されたLEDチップ61a〜61dのそれぞれの光出力を抑制してホワイトバランスをとる。この状態で、制御手段90は、各色用のLEDモジュールからの出射光束を用いた画像表示を行わせる。
【0221】
第1の表示モードにおける赤、緑、青の各色の色度および光束は、例えば次のような値となる。赤の色度は(0.700,0.300)であり、赤用LEDモジュール60からの出射光束は、当該モジュールに実装されたLEDチップ61a〜61d全体で1456lmである。緑の色度は(0.195,0.700)であり、緑用LEDモジュール70からの出射光束は、当該モジュールに実装されたLEDチップ71a〜71d全体で4000lmである。青の色度は(0.140,0.046)であり、青用LEDモジュール80からの出射光束は、当該モジュールに実装されたLEDチップ81a〜81c全体で320lmである。このような条件で白表示を行った場合、色度(0.313,0.329)が得られ、各色用のLEDモジュールからの全光束は5776lmである。このように、第1の表示モードによれば、三原色の色は優れているが、明るさが低い。
【0222】
一方、第2の表示モード(明るさを優先したカラー画像表示)では、制御手段90は、青用LEDモジュール80に実装されたLEDチップ81a〜81c(青色LEDチップ)およびLEDチップ81d(緑色LEDチップ)、緑用LEDモジュール70に実装されたLEDチップ71a〜71d、および赤用LEDモジュール60に実装されたLEDチップ61a〜61dを全て点灯させる。また、制御手段90は、緑用LEDモジュール70に実装された各LEDチップ71a〜71dからの出射光束と青用LEDモジュール80に実装されたLEDチップ81dからの出射光束とを含む緑色の全光束に合わせて、青用LEDモジュール80に実装された各LEDチップ81a〜81cおよび赤用LEDモジュール60に実装された各LEDチップ61a〜61dのそれぞれの光出力が、ホワイトバランスをとることが可能な最大出力となるように制御する。この状態で、制御手段90は、各色用のLEDモジュールからの出射光束を用いた画像表示を行わせる。
【0223】
第2の表示モードにおける赤、緑、青の各色の色度および光束は、例えば次のような値となる。赤の色度は(0.700,0.300)であり、赤用LEDモジュール60からの出射光束は、当該モジュールに実装されたLEDチップ61a〜61d全体で1820lmである。緑の色度は(0.195,0.700)であり、緑用LEDモジュール70からの出射光束は、当該モジュールに実装されたLEDチップ71a〜71d全体で4000lmである。青の色度は(0.148、0.139)であり、青用LEDモジュール80からの出射光束は、当該モジュールに実装されたLEDチップ81a〜81c全体で得られる399lmに、当該モジュールに実装されたLEDチップ81dで得られる1000lmを加えた1399lmである。このような条件で白表示を行った場合、色度(0.313,0.329)が得られ、各色用のLEDモジュールからの全光束は7219lmである。このように、第2の表示モードによれば、青色の原色は劣化するが、明るい画像が得られる。
【0224】
次に、制御手段90の構成を具体的に説明する。
【0225】
図34は、制御手段90の構成を示すブロック図である。なお、
図34においては、便宜上、制御手段90の他に、光源100および表示素子200が示されている。光源100は、
図33に示した光源20a〜20cとして用いられるものであり、表示素子200は、
図33に示した表示素子22a〜22cとして用いられるものである。
【0226】
光源100は、LEDモジュール101および集光光学系102を有する。LEDモジュール101の発光部101aからの光は集光光学系102にて集光され、この集光された光束で表示素子200が照明される。この光源100の構成は、
図31に示した光源と同様である。
【0227】
表示素子200は、液晶ライトバルブ202と、液晶ライトバルブ202の入射面側(光源側)に設けられた偏光子201と、液晶ライトバルブ40の出射面側(色合成光学素子側)に設けられた検光子203とを有する。この表示素子200の構成は、
図30に示した表示素子と同様である。
【0228】
制御手段90は、表示モード決定回路91、検出手段92、入力手段93、映像信号処理回路94および駆動回路95、96を有する。
【0229】
入力映像信号が、映像信号処理回路94に供給される。映像信号処理回路94は、明るさ補正や色補正などの映像信号処理を行う。映像信号処理が施された信号が、映像信号処理回路94から駆動回路96に供給される。
【0230】
駆動回路96は、映像信号処理回路94からの信号に液晶ライトバルブ202を駆動するためのD/A変換や極性変換などの処理を施し、各画素に設けられたTFTに駆動信号を供給する。
【0231】
表示モード決定回路91は、検出手段92、入力手段93および映像信号処理回路94からの信号に基づいて表示モード決定処理を行う。駆動回路95は、表示モード決定回路91にて決定された表示モードに応じてLEDモジュール101を駆動する。
【0232】
表示モード決定回路91による表示モード決定処理には、マニュアル入力に基づく表示モード決定処理と、設置環境適応型の表示モード決定処理と、画像内容適応型の表示モード決定処理の3つがある。
【0233】
(1)マニュアル入力:
入力手段93は、複数の操作ボタンを有する。本実施形態の投射型表示装置では、表示モードを選択するためのモード選択画面情報が不図示の記憶装置に格納されており、電源投入後、または、入力手段93にて所定の操作ボタンが押された場合に、制御手段90が、その記憶装置に格納されたモード選択画面情報に基づく画面をスクリーン上に投射させるための表示制御を行う。操作者は、入力手段93を通じて、スクリーン上に投射されたモード選択画面上で第1および第2の表示モードのいずれかを選択することができる。
【0234】
入力手段93にて表示モードを選択するための入力操作が行われると、その入力操作に応じたモード選択信号が、入力手段93から表示モード決定回路91に供給される。表示モード決定回路91は、入力手段93からのモード選択信号に基づいて、第1および第2の表示モードのうちから表示モードを決定する。
【0235】
(2)設置環境適応型:
検出手段92は、部屋の明るさを検出する第1のセンサー(光センサー)、または、スクリーンに表示された白画面または黒画面の明るさもしくは両画面の明るさを検出する第2のセンサーを有する。
【0236】
表示モード決定回路91は、第1のセンサーの検出値と基準値を比較する。第1のセンサーの検出値が基準値より小さい場合は、表示モード決定回路91は、部屋が暗いと判定し、色再現性を優先したカラー画像表示が行われる第1の表示モードに決定する。第1のセンサーの検出値が基準値以上である場合は、表示モード決定回路91は、部屋が明るいと判定し、明るさを優先したカラー画像表示が行われる第2の表示モードに決定する。
【0237】
また、表示モード決定回路91は、第2のセンサーの検出値に基づき、投射画面の明るさを判定する。具体的には、表示モード決定回路91は、第2のセンサーの検出値(白画面または黒画面の明るさ)と基準値を比較する。
【0238】
まず、色再現性を優先したカラー画像表示を行う第1の表示モードで、スクリーン上に白画面と黒画面を表示する。第2のセンサーで黒画面の明るさを測定した検出値が基準値より小さい場合は、部屋の明るさが暗いと判定し、色再現性を優先したカラー画像表示が行われる第1の表示モードに決定する。次に、黒画面の明るさを測定した検出値が基準値より大きい場合は、部屋の明るさが明るい場合であり、この場合、白画面の明るさを測定した検出値も参照する。投射画像の拡大倍率が小さい場合は、投射画面は明るくなる。すなわち、白画面の明るさを測定した検出値と黒画面の明るさを測定した検出値との差、あるいは比が基準値より大きければ投射画面は十分に明るいと判定し、色再現性を優先したカラー画像表示が行われる第1の表示モードに決定する。逆に、白画面の明るさを測定した検出値と黒画面の明るさを測定した検出値との差、あるいは比が基準値より小さければ投射画面は暗いと判定し、明るさを優先したカラー画像表示が行われる第2の表示モードに決定する。
【0239】
一般に、投射型表示装置では、スクリーンに拡大する倍率が大きいと、投射画面は暗くなり、反対に、拡大倍率が小さいと、投射画面は明るくなる。したがって、拡大倍率に基づいて表示モードを決定してもよい。具体的には、投射レンズの拡大倍率(ズーム倍率)を検出する手段を設け、表示モード決定回路91は、その検出された拡大倍率と基準値を比較する。拡大倍率が基準値より大きい場合は、表示モード決定回路91は、投射画面が暗いと判定し、明るさを優先したカラー画像表示が行われる第2の表示モードに決定する。拡大倍率が基準値以下である場合は、表示モード決定回路91は、投射画面が明るいと判定し、色再現性を優先したカラー画像表示が行われる第1の表示モードに決定する。
【0240】
なお、黒画面の明るさは部屋の明るさと等価であるが、スクリーンの近くだけ部屋を暗くする場合があるので、スクリーン面の明るさで表示モードを決定することが好ましい。
【0241】
また、投射レンズのズーム倍率とフォーカス位置(すなわち投射距離)を検出する手段を設け、表示モード決定回路91が、それらの検出結果に基づいて、投射画面サイズを推定し、この推定値を用いて、画面の明るさを特定しても良い。
【0242】
(3)画像内容適応型:
また、映像信号処理回路94は、入力映像信号から画像データのヒストグラムをとり、そのヒストグラムに基づいて、暗い画面が多い、または、明るい画面が多いかを判定し、その判定結果を表示モード決定回路91に供給する。画面が暗いか、明るいかの判断は、例えば、次のようにして行う。ヒストグラムの横軸(輝度レベル)の基準輝度レベル(例えば、最大輝度レベルと最小輝度レベルの中間の輝度レベル)に基づいて、ヒストグラムを基準輝度レベルよりも低い部分と、基準輝度レベルよりも高い部分に分け、どちらの部分が多いかを調べることで、画面が暗いか、明るいかの判断を行う。
【0243】
表示モード決定回路91は、映像信号処理回路94から、暗い画面が多い旨を示す信号を受信した場合は、映画などフルカラー映像が要求される画面であると判定し、色再現性を優先したカラー画像表示が行われる第1の表示モードに決定する。また、表示モード決定回路91は、映像信号処理回路94から、明るい画面が多い旨を示す信号を受信した場合は、会議などにおけるプレゼンテーション画面であると判定し、明るさを優先したカラー画像表示が行われる第2の表示モードに決定する。
【0244】
また、映像信号処理回路94は、入力映像信号が動画と静止画のいずれのものであるかを判定し、その判定結果を表示モード決定回路91に供給してもよい。この場合、表示モード決定回路91は、入力映像信号が動画である旨の判定結果(信号)を映像信号処理回路94から受信すると、色再現性を優先したカラー画像表示が行われる第1の表示モードに決定する。表示モード決定回路91は、入力映像信号が静止画である旨の判定結果(信号)を映像信号処理回路94から受信すると、明るさを優先したカラー画像表示が行われる第2の表示モードに決定する。
【0245】
また、映像信号処理回路94は、入力映像信号に基づく画像が、赤、緑、青の原色のうちの特定の色の原色(例えば青色の原色)が多く含まれている画像であるか否かを調べ、その結果を表示モード決定回路91に供給する。特定の色の原色(例えば青色の原色)が多く含まれているか否かの判定は、特定の色のヒストグラムと他の色のヒストグラムを比較することで判断することができる。具体的には、映像信号処理回路94は、入力映像信号から画像データのヒストグラムを赤、緑、青の各色についてとり、これらの色のうち、特定の色のヒストグラムの輝度レベルが他の色のヒストグラムの輝度レベルより高い場合に、画像データに基づく画像が、特定の色を多く含むと判定する。
【0246】
表示モード決定回路91は、特定の色の原色(例えば青色の原色)が多く含まれている画像である旨の信号を映像信号処理回路94から受信した場合は、色再現性を優先したカラー画像表示が行われる第1の表示モードに決定する。表示モード決定回路91は、特定の色の原色(例えば青色の原色)が多く含まれている画像でない旨の信号を映像信号処理回路94から受信した場合は、明るさを優先したカラー画像表示が行われる第2の表示モードに決定する。
【0247】
上述のヒストグラムに基づく画面の判定(画面の明るさや原色の判定)は、表示シーンが変わったとき、すなわち画像データのヒストグラムが大きく変わったときに行う。
【0248】
上述の表示モードを決定する方法は一例であって、適宜設定することが可能である。
【0249】
表示モードが決定されると、表示モード決定回路91は、決定された表示モードに基づく制御信号を駆動回路95および映像信号処理回路94に送る。駆動回路95は、表示モード決定回路91からの制御信号に従ってLEDモジュール101を駆動する電流値を変更する。同時に、映像信号処理回路94は、表示モード決定回路91からの制御信号に従って色補正処理などの画像処理を変更する。
【0250】
図34に示した構成において、光源100、表示素子200および駆動回路95、96は、赤、緑、青の色毎に3つ設けられる。この場合、表示モード決定回路91は、決定された表示モードに基づく制御信号を各色の駆動回路95に供給する。映像信号処理回路94は、表示モード決定回路91からの制御信号に従って色補正処理などの画像処理を変更し、変更後の画像処理に従った駆動信号を各色の駆動回路96に供給する。
【0251】
上記の説明において、表示モードは、色再現性を優先したカラー画像表示と、明るさを優先したカラー画像表示の2つのモードであるが、それらの中間のモードを複数設けても構わない。
【0252】
上述した各実施形態による本発明によれば、以下のような作用効果を奏する。以下では、前述した特許文献1〜11の技術における問題点とともに本発明の作用効果を説明する。
【0253】
特許文献1に開示されている、色再現性を優先したカラー画像の表示モードと、明るさを優先したカラー画像の表示モードとを切替えることが可能な表示装置において、光源に高圧水銀灯のような放電ランプの白色光源ではなく、LEDのような固体光源を用いる場合、以下のような課題がある。
【0254】
白色光を発生する白色LED光源には、黄色の光を発光する蛍光体を青色の光で励起して、青色と黄色の光で白色光を得るタイプのものと、赤色、緑色、青色の光を発光する蛍光体を紫外光で励起して白色光を得るタイプのものがある。
【0255】
前者のタイプの白色光源を用いる場合、緑色と赤色の光量が青色や黄色に比べて相対的に小さいので、色再現性を優先したカラー画像の表示モードのときに、投射画像が極端に暗くなってしまう。
【0256】
後者のタイプの白色光源を用いる場合、黄色の光量が少ないので、明るさ優先モードにおいて、明るさ向上効果が得られない。
【0257】
さらに、色選択素子を機械的に移動しなければならないことから、構成部品が増加し、構成が複雑になるばかりでなく、コストアップの要因になる。
【0258】
特許文献2や特許文献3のように、副の照明光を用いて明るさを補う場合には、置き換えた基の光は利用されないことに加えて、置き換える際に光損失が発生するので、光利用効率が必ずしも向上しない。
【0259】
白色LED光源ではなく、赤、緑、青の三原色の光をそれぞれ発光する3種類のLED光源を使う場合、色再現性優先モードでは、優れた色再現性が得られるが、明るさ優先モードにおいて、加えるべき黄色の光を発光するLEDを別途配置しなければならない。
【0260】
また、特許文献5〜8に示されているように、白色光の帯域内の4色、あるいは6色の光を合成する場合も、同様に、明るい光束を得ようとする場合には、平行光束以外の光が発生するため、入射角依存性や偏光依存性による光の合成効率が低下する。しかも、角度成分によって複数の色の合成される比率が異なると、投射画面上で色むらとなって現れる。
【0261】
特に、特許文献5や特許文献7、8のように、2種類の色のLEDからの光が同一方向から供給される場合には、平行光束のままでは、色光が混ざらないので、それぞれの色を均一に混色させるために、角度広がりを持たせなければならい。しかし、逆に角度広がりを持たせると、ダイクロイックミラーの入射角依存性により、他の方向から入射する光と混色する際の損失が生じる。このように、それぞれの色を均一に混色させるために、角度広がりを持たせる必要がある一方で、角度広がりを持たせると、入射角依存性による損失が生じるというトレードオフが生じる。
【0262】
本発明の一態様による色合成光学素子は、
出射面と、
第1乃至第3の入射面と、
互いの膜面が交差するように設けられ、入射光をその波長に応じて選択的に反射または透過する第1および第2の膜と、を有し、
前記第1の膜は、第1の偏光の可視光のうち、特定の波長帯域の光を少なくとも透過し、前記第1の偏光とは偏光状態が異なる第2の偏光の可視光のうち、前記特定の波長帯域の光を少なくとも反射し、
前記第2の膜は、前記第1の偏光の可視光のうち、前記特定の波長帯域の光を少なくとも透過し、前記第2の偏光の可視光のうち、前記特定の波長帯域の光を少なくとも透過し、
前記第1および第2の膜の前記第2の偏光に対するカットオフ波長が、光の三原色である赤色、緑色、青色の波長帯域以外の帯域の範囲内に設定され、
前記第1の偏光の前記特定波長帯域の光と前記第2の偏光の前記特定波長の光が前記第1乃至第3の入射面の異なる入射面から入射して前記第1および第2の膜を介して前記出射面から出射される。
【0263】
上記の構成によれば、例えば、緑色のP偏光に対して、第1の膜(例えばダイクロイックミラー)と第2の膜(例えばダイクロイックミラー)のカットオフ波長が十分に離れた構成を提供することができる。したがって、カットオフ波長が入射角依存性によりシフトしても、P偏光の緑色の光がそれら膜にて反射されることはない。よって、入射角依存性による損失は生じない。
【0264】
また、例えば、緑色のS偏光と赤色のS偏光に対して、第1の膜と第2の膜のカットオフ波長が十分に離れた構成を提供することができる。したがって、カットオフ波長が入射角依存性によりシフトしても、S偏光の赤色と緑色の光を、ほとんど損失することなく、それら膜にて合成できる。
【0265】
したがって、平行光とは異なる角度で入射する光に対しても、効率よく色光を合成するこことができる。
【0266】
一般に、赤色、緑色、青色の各光源としてLEDのような半導体光源を用い、各半導体光源からの赤色、緑色、青色の光を合成してホワイトバランスに優れた白色光を得る場合、赤色、緑色、青色の光の混色比率に対して、青色の光出力が他の色に比べて大きく、緑色の光出力が他の色に比べて小さい。この場合、光出力が相対的に小さい緑色の半導体光源に合わせて、青色と赤色の半導体光源の光出力を抑制させるため、得られる白色光の光出力も小さいものになってしまう。
【0267】
本発明の色合成光学素子によれば、緑色の光を異なる2方向から合成することができる。しかも、光出力が相対的に大きい青色の光量を減らして、緑色の光を加える構成となっている。したがって、最適な混色比率で三原色を合成でき、ホワイトバランスに優れた白色光が得られる。加えて、3色のLEDの光出力を抑制することなく最大限に発揮させることが可能である。
【0268】
このように、本発明によれば、LEDの光出力性能を最大限に発揮させ、混色時の光利用効率を高くすることができ、しかもホワイトバランスに優れた白色光を得ることができる。
【0269】
また、本発明の色合成光学素子を用いることで、明るい投射画像が得られる投射型表示装置を提供することができる。
【0270】
さらには、本発明の色合成光学素子を用いることで、色再現性を優先したカラー画像表示と、明るさを優先したカラー画像表示とを切替えることが可能な、利便性に優れた投射型表示装置を提供することができる。
【0271】
以上説明した各実施形態の色合成光学素子およびそれを用いた投射型表示装置は、本発明の一例であって、その構成および動作は、発明の趣旨を逸脱しない範囲で当業者が理解し得る様々な変更を行うことができる。
【0272】
例えば、第3および第4の実施形態の色合成光学素子を第5または第6の実施形態の投射型表示装置に適用してもよい。
【0273】
また、第1から第6の実施形態において、P偏光とS偏光の関係を反対の関係(P偏光の記載をS偏光の記載とし、S偏光の記載をP偏光の記載とする)としてもよい。
【0274】
第1のダイクロイックミラーと第2のダイクロイックミラーは、誘電体多層膜に限らず、ホログラムなどの波長選択性や偏光選択性のある光学膜でもよい。
【0275】
また、第1のダイクロイックミラーと第2のダイクロイックミラーの交差角度は90度に限らない。さらにプリズムの形状ではなく、板状のガラス等に膜を形成してもよい。
【0276】
さらに、第1から第6の実施形態において、LEDに代えて半導体レーザー等の別の固体光源を用いてもよい。
【0277】
さらに、第1から第6の実施形態において、表示素子は液晶ライトバルブ以外のもの、例えば、デジタルミラーデバイスを用いた表示素子であってもよい。
【0278】
また、第1から第4の実施形態の色合成光学素子は、第5および第6の実施形態のような3板式のプロジェクタだけでなく、単板式のプロジェクタにも適用することが可能である。
【0279】
この出願は、2009年9月28日に出願された日本出願特願2009−222355を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。