(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記データ管理手段は、前記複数の測定箇所にて測定された高さの総和を算出し、この総和を前記測定箇所の数で割って得られた平均値を前記所定の値として算出し、この平均値が既定の範囲内にあるか否かを判断する
ことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の容器検査装置。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る容器検査装置及び容器検査方法の好ましい実施形態について、図面を参照して説明する。
【0015】
まず、本発明の容器検査装置及び容器検査方法の実施形態について、
図1を参照して説明する。
同図は、本実施形態の容器検査装置の構成を示す外観斜視図である。
【0016】
(容器検査装置)
同図に示すように、容器検査装置1は、圧力変更手段10と、搬送手段20と、高さ測定手段30と、データ管理手段40と、排除手段50とを備えている。
圧力変更手段10は、例えば、レトルト殺菌機を用いることができる。レトルト殺菌機は、被処理物に対して、加熱調理、加熱加圧殺菌、滅菌、冷却などを行う装置である。加熱方式としては、例えば、熱水スプレー式、ストーム式、熱水貯湯式、蒸気式などがある。
搬送手段20は、コンベアなどで構成することができ、容器を所定の位置まで搬送する。この搬送手段20は、高さ測定手段から見て、フィルム状蓋に対し相対的に移動することから、移動手段としての機能を有している。
【0017】
高さ測定手段30は、容器のフィルム状蓋の高さを検出する。この高さ測定手段30には、例えばレーザ変位センサを用いることができる。
レーザ変位センサは、発光素子と光位置検出素子(PSD:Position Sensitive Detector)とを有している。発光素子からの光は、対象物に照射される。対象物で拡散反射した光の一部は、受光レンズを介して光位置検出素子にスポットを結ぶ。対象物の移動にともなって、スポットも移動する。光位置検出素子は、そのスポットの位置に応じた値を示す検出信号をデータ管理手段40へ送る。
高さ測定手段30がレーザ変位センサの場合、検出信号の電流値がスポットの位置に対応する。つまり、検出信号の電流値を測定すれば、容器のフィルム状蓋の高さを求めることができる。
【0018】
なお、高さ測定手段30が容器のフィルム状蓋のある測定箇所について実際の高さを求める場合は、例えば高さ測定手段30とフィルム状蓋との距離を測定し、次に高さ測定の基準位置、例えば、搬送手段20の容器を載置している箇所(
図1においては、コンベアの上側上面)を基準としたときのフィルム状蓋の高さを後述の演算部45にて算出してもよい。この場合、
図8A、
図8Bを使って説明すると、(A−B)を演算することがフィルム状蓋の高さを求めることに該当する。なお、高さ測定の基準位置は適宜設定しやすいところに変更してもよい。また、高さと同等に評価可能な測定距離Bをフィルム状蓋高さの代替値としてもよいし、測定距離Bにあたる検出信号の電流値をフィルム状蓋高さの代替値としてもよい。本実施形態においては、これら高さの評価値となるものを簡潔に総称して“高さ”とする。
【0019】
この高さ測定手段30は、複数設けることができる。これら複数の高さ測定手段30は、例えば、
図2A〜
図2Eに示すように配置することができる。
具体的には、例えば、複数の高さ測定手段30は、搬送手段20の搬送方向に対して垂直方向に一列に並べることができる(
図2A)。
また、複数の高さ測定手段30は、搬送手段20の搬送方向に対して斜め方向に一列に並べることができる(
図2B,
図2C)。
さらに、複数の高さ測定手段30は、搬送手段20の搬送方向に対して垂直方向を基準に山型に並べることができる(
図2D,
図2E)。
このように、高さ測定手段30を複数設けることで、容器のフィルム状蓋における複数箇所で、該フィルム状蓋の高さを測定することができる。
【0020】
なお、高さ測定手段30を複数設ける場合には、1つの高さ測定手段30が他の高さ測定手段30の干渉の影響を受けないように、高さ測定手段30の各間を離間して配置するか、高さ測定手段30の各間に干渉防止板を挿入するなどの干渉防止措置を施すのが望ましい。
【0021】
また、
図3Aに示すように、高さ測定手段30は、マトリックス状に複数配置することができる。すなわち、搬送手段20の搬送方向と同じ方向に、高さ測定手段30を複数配置するとともに、その搬送方向に対して直交する方向に複数配置する。これにより、それら高さ測定手段30の配置位置に対応するフィルム状蓋の複数箇所の高さを一度に測定することができる。
ただし、
図3B、
図3Cに示すように、少ない台数の高さ測定手段30を容器に対し相対的に走査させて測定する方が、効率的に多くの箇所の高さを測定することができる。また、走査ラインは、一線でもよいが、複数線とした方が、フィルム状蓋の異変を感知しやすいので、さらに好ましい。
さらに、相対走査させる手段は、高さ測定手段30又は搬送手段20のいずれに設けてもよいが、搬送手段20に設ける方が、容器の搬送と相対走査とを兼用できるので好ましい。
しかも、高さ測定手段30は、本実施形態においてはレーザ変位センサを用いることとするが、レーザ変位センサに限るものではなく、例えば、ラインセンサや、渦電流式変位センサ、スキャンによる画像解析手段などを用いることができる。
【0022】
また、高さ測定手段30に二次元レーザ変位センサを設けた場合には、フィルム状蓋の複数箇所を一台の二次元レーザ変位センサで走査して、それら複数箇所のそれぞれの高さを同時に測定することが可能となる。二次元レーザ変位センサとしては、例えば、株式会社キーエンスの二次元レーザ変位センサLJ,LJ−Gシリーズなどを用いることができる。
なお、この二次元レーザ変位センサを高さ測定手段30として用いる場合は、
図4A、
図4Cに示すように、一台の二次元レーザ変位センサにより測定される複数の測定箇所の列方向が、搬送手段20の容器搬送方向または高さ測定手段30自体の移動方向と平行にならないように、その二次元レーザ変位センサを配置し、この二次元レーザ変位センサとフィルム状蓋との間の距離を複数箇所で測定することにより、二次元的に多数の測定箇所について高さ測定を行うことができる。また、
図4Bに示すように、二次元レーザ変位センサを複数並べ、一度に複数列の測定箇所の高さを測定するようにしてもよい。
【0023】
データ管理手段40は、
図5に示すように、高さ信号入力・解析部41と、入力部42と、表示部43と、記憶部44と、演算部45と、排除指示部46とを有している。
高さ信号入力・解析部41は、高さ測定手段30から検出信号を入力すると、この検出信号を解析して、高さを特定する。
具体的には、例えば、高さ測定手段30がレーザ変位センサの場合、入力した検出信号の電流値を解析(変換)し、この電流値に対応した高さを求める。
この求められた高さは、記憶部44へ送られて記憶される。
【0024】
入力部42は、例えば複数のキーで構成することができ、例えば、密封の良否判定に用いられる閾値や、変敗の有無判定に用いられる閾値などのデータを入力する。この入力されたデータは、記憶部44へ送られて記憶される。
密封の良否や変敗の有無判定に用いる閾値とは、演算部45で算出されたフィルム状蓋の高さに関する所定の値と比較される値であって、その算出値が閾値よりも高いか低いか(あるいは、その算出値が閾値の示す範囲内にあるか否か)を判断することで、フィルム状蓋の密封状態の良否や変敗の有無を判定するものである。
例えば、密封の良否判定に用いる閾値が81.5mmであって、算出値がその閾値よりも低いときは、フィルム状蓋の密封状態が良好であると判定し、一方、算出値がその閾値よりも高いときは、密封状態が不良であると判定することができる。
また、密封の良否判定に用いる閾値が80.0mm〜81.5mmの範囲であって、算出値がその閾値の範囲内にあるときは、フィルム状蓋の密封状態が良好であると判定し、一方、算出値がその閾値の範囲外であるときは、不良であると判定することができる。
なお、密封不良であると判定すべき容器のフィルム状蓋の膨出具合と、変敗有りと判定すべき容器のフィルム状蓋の膨出具合は、それぞれ異なるため、密封の良否判定に用いる閾値と、変敗の有無判定に用いる閾値は、それぞれ異なった値で、かつ適正値を設定するのが望ましい。
【0025】
また、閾値は、高さ測定手段30でフィルム状蓋の高さ測定が行われる前に、予め入力される。
この閾値の設定は、次のように行うことができる。
例えば、密封状態が良好であることがわかっている容器Aと、密封状態が不良であることがわかっている容器Bとをそれぞれ複数用意する。それら容器A及び容器Bのそれぞれのフィルム状蓋の高さを、フィルム状蓋の複数の箇所で測定し、容器ごとに測定値の総和又は平均値を算出する。これら算出した総和又は平均値をグラフ化し、その分布を見る。容器Aに関する算出値の分布と、容器Bに関する算出値の分布が離間しているときは、これらの間に閾値を設定することができる。また、容器Aに関する算出値が分布する範囲を閾値として設定することもできる。なお、変敗の有無判定に用いる閾値についても、同様の手法により設定できる。
【0026】
表示部43は、例えば液晶ディスプレイなどで構成することができ、入力部42でデータが入力される際、その入力指示や入力内容を画面表示する。また、表示部43は、高さ測定手段30での測定結果や、密封状態の良否判定の結果、変敗の有無判定の結果、容器の排除数などを表示することができる。
【0027】
記憶部44は、所定量の記憶領域を有しており、データ管理手段40の構成各部で実行される各種処理に関するデータやプログラムを記憶する。具体的には、例えば、高さ測定手段30により測定された容器のフィルム状蓋の複数箇所におけるそれぞれの高さの測定値、密封の良否判定に用いる閾値、変敗の有無判定に用いる閾値、演算部45で実行された演算処理の実行結果、閾値と算出値の比較結果、密封状態の良否判定結果などを記憶する。
【0028】
演算部45は、演算処理を実行するための電子部品を有している。この演算部45は、容器のフィルム状蓋の複数箇所におけるそれぞれの高さの測定値を記憶部44から取り出すと、これら測定値にもとづいて高さに関する所定の値を蓋材高さとして算出する。蓋材高さには、例えば、フィルム状蓋の複数の測定箇所におけるそれぞれの高さの総和と、この総和を測定箇所の数(例えば、測定した高さデータのデータ数や測定箇所のカウント数)で割った商である高さの平均値がある。
ここで、容器ごとに測定箇所の数が異なる場合(例えば、フィルム状蓋の幅一杯を測定箇所として設定したときに、高さ測定手段30がフィルム状蓋の端から外れ、測定箇所に高さ測定可能な物体がなくなり高さデータが所定数より1点以上欠損した場合など)には、フィルム状蓋の高さの平均値を蓋材高さとして算出するのが望ましい。
また、演算部45は、算出値である蓋材高さと密封の良否又は変敗の有無判定に用いる閾値とを比較する。さらに、演算部45は、比較の結果にもとづいて、容器の密封状態の良否、又は変敗の有無を判定する。これら算出値、比較の内容、判定結果は、記憶部44へ送られて記憶される。なお、判定結果には、フィルム状蓋による密封がほぼ完全であることを示す「密封良」、その密封が不完全であるかピンホールがあることを示す「密封不良」、内容物が変敗していないことを示す「変敗無」、内容物が変敗していることを示す「変敗有」がある。
【0029】
排除指示部46は、記憶部44から判定結果を取り出す。そして、取り出した判定結果が「密封不良」又は「変敗有」であるときは、排除指示部46は、排除手段50へ排除指示信号を送る。
【0030】
排除手段50は、搬送手段20で搬送されてきた容器のうち、データ管理手段40で「密封不良」又は「変敗有」と判定された容器を、良品搬送ルートから不良品搬送ルートへ排除する。この排除は、データ管理手段40から排除指示信号が送られてきたときに実行する。
この排除手段50は、例えば、
図6に示すように、排除部材51と、駆動部52とを有している装置が利用できる。
排除部材51は、容器に直接接触して、この容器を押し出し、良品搬送ルートから不良品搬送ルートへ排除する部材である。
駆動部52は、排除部材51の押し出しや引き込みを行う駆動源である。この駆動部52には、例えば、エアシリンダなどを用いることができる。
なお、本実施形態において排除手段50は、
図6に示す構成としたが、該構成に限定されるものではなく、不良品と良品とを区別できるものであればその手法は問わない。
【0031】
また、容器検査装置1には、容器検出手段60(図示せず)を設けることができる。
容器検出手段60は、搬送手段20により搬送されてきた容器が所定の位置に達したことを検出すると検出信号を出力する。検出信号は、データ管理手段40へ送られる。
【0032】
さらに、データ管理手段40は、
図5に示すように、容器検出信号入力部47と、高さ測定制御部48とを有することができる。
容器検出信号入力部47は、容器検出手段60から検出信号を入力する。
高さ測定制御部48は、容器検出信号入力部47で検出信号が入力されると、高さ測定手段30に対して高さ測定を開始させる。
なお、容器検出手段60には、例えば、近接スイッチ、タッチスイッチ、光センサ、レーザ位置検出センサなどを用いることができる。
また、容器検出手段60および容器検出信号入力部47は省略することも可能である。その際は、高さ測定手段30そのものをデータ収集開始・終了のトリガとするよう、高さ測定手段30に高さ測定に影響のない範囲でデータ収集可能な高さ範囲を設定(例えば、高さ測定手段30からの距離について40〜50mmの範囲を測定する場合は、40〜50mmをデータ収集可能な高さ範囲とし、その範囲外の場合はデータを作成しないよう設定)し、検査中は、常に計測させておき、複数の高さ測定手段30のうち、一つでもデータが作成され高さ信号入力・解析部41に送信された場合に一つの容器に対するデータ収集を開始し、すべての高さ測定手段30からデータが送られなくなったときに一つの容器に対するデータ収集を終了するとよい。
【0033】
また、容器検査装置1の構成各部が実行する各種の動作や処理は、コンピュータにより制御することができる。コンピュータは、所定のプログラムをロードし、これを実行することで、容器検査装置1の構成各部の動作や処理を制御する。すなわち、ソフトウエアであるプログラムがコンピュータに読み込まれることにより、ソフトウエアとハードウエア資源とが協働した具体的手段によって、本実施形態の容器検査装置1の構成各部が実行する各種の動作や処理が構築される。
プログラムは、例えば、記録媒体により提供される。記録媒体としては、たとえば、磁気ディスク,光ディスク,半導体メモリ,その他コンピュータで読み取り可能な任意の手段を使用することができる。
また、記録媒体に記録されたプログラムは、記録媒体を直接コンピュータに装着して当該コンピュータに読み込ませることができ、また、通信回線を介してコンピュータに読み込ませるようにしても良い。
【0034】
(容器検査方法)
次に、本実施形態の容器検査装置の動作(容器検査方法)の概要について、
図7を参照して説明する。
同図は、本実施形態の容器検査方法の処理手順を示すフローチャートである。
なお、
図7に示す処理手順は、密封検査を実行するものである。
【0035】
まず、容器のフィルム状蓋における高さの測定範囲を設定する(ステップ10)。
この測定範囲の設定は、具体的には、例えば、容器のフィルム状蓋における走査線の位置を設定することにより行うことができる。
次いで、良否判定の閾値を設定する(ステップ11)。
【0036】
続いて、検査対象となる容器を用意する(1個でもよいし、複数個でもよい)。
用意する容器には、内容物が所定量充填されている。また、容器の開口部は、フィルム状蓋で閉塞され、内容物が密封されている。
この容器を圧力変更手段(レトルト殺菌機)10に入れて、加圧又は減圧する(圧力変更処理工程、ステップ12)。
この圧力変更処理を行った場合、ピンホールやシール不良がある容器は、ガスが容器内に出入りするため、容器内のガス量が増減する。一方、それら不良がない容器は、ガスが容器内に出入りしないため、容器内のガス量が増減しない。
【0037】
圧力変更処理が終了すると、圧力変更手段(レトルト殺菌機)10のレトルト釜の内部を大気圧に戻し、このレトルト釜から容器を取り出す。
このとき、ピンホールやシール不良がある容器は、容器内のガス量の増減に応じて、フィルム状蓋の高さが変化する。一方、それら不良がない容器は、容器内のガス量の増減がないため、フィルム状蓋の高さが変化しない。
【0038】
取り出された容器は、搬送手段20の上に載置される。
搬送手段20は、載置された容器を搬送する(搬送工程)。
搬送中の個々の容器が所定の位置に達すると、容器検出手段60は、その容器を検出する。そして、容器検出手段60は、検出信号をデータ管理手段40へ送る。
データ管理手段40の容器検出信号入力部47は、容器検出手段60からの検出信号を入力する。この検出信号の入力にもとづき、高さ測定制御部48は、高さ測定手段30を動作させ、個々の容器についての高さ測定を開始させる。
【0039】
高さ測定手段30は、高さ測定制御部48からの指示にもとづき検出光の出力を開始する。
高さ測定手段30の直下に容器がない場合(例えば、
図8A、
図8Bで測定範囲を中央の高さ測定手段30を基準としたときに、左右両側の高さ測定手段30について、測定開始直後または測定終了直前のとき。すなわち、中央の高さ測定手段30がフィルム状蓋の直径上の縁を測定の際、フィルム状蓋からはみ出している左右の高さ測定手段30について)、検出光は、搬送手段20に照射される。高さ測定手段30の直下に容器がある場合、検出光は、その容器の上面に位置するフィルム状蓋に照射される。
検出光は、フィルム状蓋に設定された測定範囲内の所定のライン上を走査する。これにより、高さ測定手段30は、その走査線における個々のフィルム状蓋の高さを連続的に検出する(蓋材高さデータ測定工程、ステップ13)。そして、高さ測定手段30は、検出した高さに応じた値を示す検出信号をデータ管理手段40へ送る。
【0040】
データ管理手段40の高さ信号入力・解析部41は、高さ測定手段30からの検出信号を入力すると、これを解析し、その検出信号を高さデータに変換して、記憶部44へ送り記憶させる。
フィルム状蓋における測定範囲内の走査が終了すると、演算部45は、取得された高さデータを記憶部44から取り出す。そして、演算部45は、取得された高さデータを用いて個々の容器についての蓋材高さを算出する(蓋材高さ算出工程、ステップ14)。
【0041】
次いで、演算部45は、個々の容器の蓋材高さと閾値とを比較する(良否判定工程、ステップ15)。
比較の結果、蓋材高さが閾値の範囲内に含まれているときは、演算部45は、その容器が良品であると判定する(ステップ16)。
一方、蓋材高さが閾値の範囲から外れているときは、演算部45は、その容器が不良品であると判定する(ステップ17)。この場合、排除指示部46は、排除信号を排除手段60へ送る。
排除手段60は、排除指示部46から排除信号を受けると、その容器を搬送手段20から排除する(ステップ18)。
なお、
図7は、容器検査装置の動作(容器検査方法)の概要を説明するため処理手順を簡潔に示したが、複数の容器について実際に測定を行う際は、例えば、蓋材高さデータ測定(ステップ13)から、良品判定(ステップ16)又は排除処理(ステップ18)までを測定する容器がなくなるまで順次繰り返し行うのが好ましい。
【0042】
このような処理を実行することで、密封容器のフィルム状蓋における密封状態の良否を精度高く判定することができる。
例えば、高さ測定手段30による測定の前に、圧力変更手段により容器を加圧し大気圧に戻すことで、ピンホールやシール不良がある容器は、容器内のガス量が増え、フィルム状蓋が膨らむ。この膨らみ具合は、ピンホールやシール不良の程度に応じて変わる。一方、ピンホール等が無い場合は、容器内のガス量の増減がないため、膨らみがない。そこで、フィルム状蓋の高さを測定することにより、そのフィルム状蓋の密封不良を検出することができる。
【0043】
また、フィルム状蓋における複数の測定箇所について高さを測定し、これら測定値を用いて高さに関する所定の値を算出し、この算出値と閾値とを比較することにより、密封状態の良否を精度高く判定することができる。
さらに、フィルム状蓋は、全体的に均一な高さとなるのが理想であるが、フィルム状蓋に、皺やうねりなどが生じることがあり、こうした部分での高さは、均一でなくなる。そこで、フィルム状蓋の高さの測定箇所を複数とし、得られた複数の高さデータを利用して閾値と比較することにより、皺やうねりなどによる部分的な特異データの影響を低減し、密封状態の良否判定の精度を高めることができる。
そして、この不良検出の精度が高まることから、正常品を不良品として無駄撥ね(排除)することがなくなり、歩留まりを高めることができる。
なお、本実施形態における容器検査方法は、密封検査を行うようにしているが、これに限るものではなく、密封検査と変敗検査の両方を行うようにすることもできる。また、変敗の有無のみを検査する場合でも、ここで示した密封検査の処理手順とほぼ同様の手順で実行することができる。
【0044】
(実施例1)
PP(Polypropylene)製の容器(高さ82.4mm、上面直径75.6mm、底面直径54mm)を5個用意した。
これらの容器に、180±0.2mlの水を各々充填し、上面開口部をフィルム状蓋で密封した。
なお、密封に使ったフィルム状蓋は、三層構造となっており、外層から、PET(9μm)、アルミニウム(20μm)、PP(30μm)の順に積層して形成されていた。
密封後、容器ヘッドスペースの空気が僅かに水に溶けたためか、フィルム状蓋は、容器内方側に僅かに撓んだ状態であった。
【0045】
高さ測定手段30は、OMRON製レーザ変位センサZX−LD40Lを用いた。このレーザ変位センサは、
図8A、
図8Bに示すように、容器上面から45mm上方に20mm間隔で3箇所に設置した。このレーザ変位センサは、搬送手段20上の容器のフィルム状蓋の高さを走査測定した。このとき、容器の搬送速度は7.6m/minとした。
測定値を収集するデータ管理手段40には、Keyence製データロガーNR−2000を用いた。また、サンプリング周期は10μmに設定した。データ管理手段40の高さ信号入力・解析部41は、レーザ変位センサから検出信号を入力し、演算部45は、フィルム状蓋の高さデータの平均値を蓋材高さとして算出した。
【0046】
次に、シリンジを用いて容器内に空気を各々2ml追加し、擬似的に、フィルム状蓋材にピンホールが生じた容器が外部からの空気加圧により空気を入れ込んでしまった状態を作り、同様にフィルム状蓋の高さを測定し、その平均値を蓋材高さとして算出した。さらに、容器内へ空気を各々2mlずつ追加していき、容器内ガス増加量とフィルム状蓋の蓋材高さの関係を求めると
図9に示すようになった。
【0047】
同図に示すように、容器内ガス増加量が大きくなると、フィルム状蓋の蓋材高さがほぼ比例して高くなることがわかった。
容器内ガスの容量の増加は、容器を加圧したときに起こる。ただし、その増加の程度は、フィルム状蓋の密封状態が良好な場合には無く、その密封状態が不良の場合には大きい。
このことから、フィルム状蓋の高さの平均値を算出することで、容器内部の気体圧力によるフィルム状蓋高さの異変を安定して感知でき、密封状態の良否判定に利用できることがわかった。
【0048】
(比較例1)
容器は、実施例1で説明した容器と同じものを、5個用意した。
これらの容器に、180±0.2mlの水を各々充填し、上面開口部をフィルム状蓋で密封した。
【0049】
高さ測定手段30は、Keyence製渦電流式変位センサEX−422を用いた。この渦電流式変位センサを容器上面から5mm上方に設置し、搬送手段20上の容器のフィルム状蓋中央の蓋材高さを測定した。
【0050】
次に、シリンジを用いて容器内に空気を各々追加し、容器内ガス増加量が7.5ml、10mlとなったときのフィルム状蓋の中央の蓋材高さを測定した。容器内ガス増加量とフィルム状蓋の蓋材高さの関係を求めると、
図10のようになった。
【0051】
同図に示すように、容器内ガス増加量が増加すると、フィルム状蓋の蓋材高さが高くなるが、蓋材高さのばらつきが大きく、容器の内部圧力によるフィルム状蓋高さの異変感知には適さず、密封状態の良否の判定に利用できないことがわかった。
【0052】
(実施例2)
容器は、実施例1で説明した容器と同じものを、38個用意した。
これらの容器に、180±0.2mlの水を各々充填し、上面開口部をフィルム状蓋で密封した。38個の容器のうち、18個には、フィルム状蓋に実際にピンホールを一つ穿設した。ここで、18個を三個ずつに分け、それら三個ごとに異なる直径のピンホール(直径10μm、30μm、50μm、100μm、300μm、500μm)を穿設した。
残る20個の容器には、ピンホールを穿設しなかった。
【0053】
前述した38個の容器をそれぞれ圧力変更手段10に入れ、レトルト殺菌後に、加圧処理を行った。
加圧は、0.1MPaの圧力により、エア加圧を3分間行った。
大気圧に戻した後、各容器を圧力変更手段10から取り出し、搬送手段20に載置し、搬送させた。
【0054】
高さ測定手段30は、OMRON製レーザ変位センサZX−LD40Lを用いた。このレーザ変位センサは、
図8A、
図8Bに示すように、容器上面から45mm上方に20mm間隔で3箇所に設置した。このレーザ変位センサは、搬送手段20上の容器のフィルム状蓋の高さを走査測定した。このとき、容器の搬送速度は7.6m/minとした。
測定値を収集するデータ管理手段40には、Keyence製データロガーNR−2000を用いた。また、サンプリング周期は10μmに設定した。データ管理手段40の高さ信号入力・解析部41は、レーザ変位センサから検出信号を入力し、演算部45は、フィルム状蓋の高さデータの平均値を蓋材高さとして算出した。
【0055】
ピンホール径とフィルム状蓋の蓋材高さを
図11に示す。
同図は、横軸がピンホールの直径の対数[μm]、縦軸がフィルム状蓋の蓋材高さ[mm]を示す。なお、良品については、フィルム状蓋材に穴が開いていないためピンホール径が実質0[μm](穴なし)のため、本来この対数グラフ上に掲載できないが、便宜上、Y軸上(X=1[μm]上)にプロットした。
同図に示すように、ピンホールを穿設しなかった容器(良品)とピンホールを穿設した容器(不良品)とを比較すると、良品は、フィルム状蓋の変位が81.5mm以下に集中しているのに対し、不良品は、81.5mm越えの高さに分散していた。このことから、密封の良否判定に用いる閾値は、81.5mmに設定すればよいことがわかった。
そして、検査対象となる容器のフィルム状蓋の変位を測定した場合、この測定値が81.5mm以下であれば良品であると判断し、一方、81.5mm越えであれば不良品であると判断できることがわかった。
なお、検出対象として想定されるピンホール径が予め全般に大きいと分かっている場合は、エア加圧により容器内に入り込んだエアが大きいピンホールから漏出しやすいため、エア加圧後なるべく早急に測定することが好ましい。
また、想定されるピンホール径が全般に小さいと予め分かっている場合は、小さいピンホールから容器内にエアが侵入しにくく、蓋材高さの変化量が小さいため、なるべく長い時間、なるべく高い圧力でエア加圧し、蓋材高さの変化量を大きくしておくのが好ましい。
【0056】
また、同じ取得データを用いて、容器内総容量に対する蓋材高さをグラフ化すると
図12に示すようになる。
同図は、横軸に容器内総容量(内容量+ガス量)[ml]を表し、縦軸に蓋材高さ[mm]を表している。なお、容器内総容量は、内容量(水)と、ガス量とを加算した値である。
同図に示すように、容器内総容量と蓋材高さとは比例関係になることがわかった。
また、この図からも、蓋材変位の閾値に81.5mmを設定することで、密封不良の有無を検出できることがわかった。
なお、高さ測定は、密封容器の加圧を行ってから15分以内に行うと、フィルム状蓋材にピンホールの開いた容器に侵入した空気が過剰に抜ける前に測定ができるので好ましい。
また、上記の実施例のように、アルミニウム層(アルミ箔)や、ナイロン(登録商標)等のポリアミド層など、硬めの材料を含むフィルム状蓋材に適用すると、蓋材高さが容器の内圧による膨らみによって変化した場合、その膨らんだ状態が内圧が抜けても続きやすいので好適である。
【0057】
(実施例3)
容器は、実施例1で説明した容器と同じものを、12個用意した。
これらの容器に、180±0.2mlの培地を各々充填し、上面開口部をフィルム状蓋で密封し、レトルト殺菌を行った。12個の容器のうち、6個には、容器内に10
3個/mlの大腸菌の懸濁液を定量添加し、30℃で7日間保管することによって、内容物の培地を変敗させた変敗品を作成した。残りの6個は、変敗がない良品とした。これら12個の容器を搬送手段20に載置し、搬送させた。
【0058】
高さ測定手段30には、オムロン株式会社製のレーザ変位センサZX−LD40Lを用いた。このレーザ変位センサは、
図8A、
図8Bに示すように、容器上面から45mm上方に20mm間隔で3箇所に設置した。このレーザ変位センサにより、搬送手段20上の容器のフィルム状蓋の高さを走査測定した。このとき、搬送手段20による容器の搬送速度は、7.6m/minとした。
測定値を収集するデータ管理手段40には、株式会社キーエンス製のデータロガーNR−2000を用いた。また、サンプリング周期は、10μmに設定した。データ管理手段40の高さ信号入力・解析部41は、レーザ変位センサから検出信号を入力し、演算部45は、フィルム状蓋の高さデータの平均値を蓋材高さとして算出した。
【0059】
良品と変敗品の蓋材高さの算出値を
図13に示す。
同図に示すように、変敗しなかった容器(良品)と変敗した容器(変敗品)とを比較すると、良品は、フィルム状蓋の変位が81.0mmの近傍に集中しているのに対し、不良品は、82.0mmを越える高さに分散していた。このことから、変敗の有無判定に用いる閾値は、82.0mmに設定すればよいことがわかった。
そして、検査対象となる容器のフィルム状蓋の変位を測定した場合、この測定値が82.0mm以下であれば良品であると判定し、一方、82.0mmを越えていれば変敗品であると判定できることがわかった。
【0060】
以上説明したように、本実施形態の容器検査装置及び容器検査方法によれば、フィルム状蓋の高さを複数箇所測定し、これら測定値にもとづいて蓋材高さを算出し、この蓋材高さと閾値とを比較することとしたので、測定値のばらつきの影響を低減して、精度の高い不良検出を行うことができる。
また、高さ測定手段による高さ測定の前に、容器の圧力変更処理を行うため、密封不良の検出効果を高めることができる。つまり、密封が良好な容器は、圧力変更処理を行っても容器内ガス量の変化が無いものの、密封不良を起こしている容器は、圧力変更処理により、容器内ガス量が変化するので、大気圧下ではフィルム状蓋が変化した状態となる。この相違をフィルム状蓋の高さとして検出するので、密封不良の判定が容易かつ確実なものとなる。
【0061】
さらに、フィルム状蓋における走査線の設定が、密封容器の搬送方向と同じ方向に設定されるため、その容器を搬送している最中に高さ測定を行うことができ、簡便な測定が可能となる。
しかも、データ算出手段が高さに関する所定の値を所定の閾値と比較する場合に、この所定の閾値に密封検査用の閾値を用いたときは、密封不良の有無を判断でき、また、変敗検査用の閾値を用いたときは、変敗の有無を判断できる。そして、密封検査と変敗検査のいずれの場合でも、容器のフィルム状蓋の複数箇所におけるそれぞれの高さを測定し、これら測定した結果にもとづいて高さに関する所定の値を算出し、この算出した値にもとづいて密封不良又は内容物の変敗の評価を行うこととしたので、高さの測定値に生じるばらつきを算出値により吸収して、精度の高い検査を行うことができる。
【0062】
以上、本発明の密封容器の容器検査方法及び容器検査装置の好ましい実施形態について説明したが、本発明に係る密封容器の容器検査方法及び容器検査装置は上述した実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の範囲で種々の変更実施が可能であることは言うまでもない。
例えば、上述した実施形態では、搬送される容器の数が一個ずつとなっているが、一個ずつに限るものではなく、複数搬送することもできる。この場合、高さ測定手段を多数備え、複数まとめてフィルム状蓋の高さ測定を行うこともできる。
また、高さ測定を行う前の加圧処理や減圧処理を省く場合でも、容器内圧がもとから陽圧状態又は陰圧状態であるときが正常である密封容器に対しても、閾値を適宜設定することで適用可能である。