特許第5772627号(P5772627)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ アイシン・エィ・ダブリュ株式会社の特許一覧

<>
  • 特許5772627-車両用伝動装置 図000002
  • 特許5772627-車両用伝動装置 図000003
  • 特許5772627-車両用伝動装置 図000004
  • 特許5772627-車両用伝動装置 図000005
  • 特許5772627-車両用伝動装置 図000006
  • 特許5772627-車両用伝動装置 図000007
  • 特許5772627-車両用伝動装置 図000008
  • 特許5772627-車両用伝動装置 図000009
  • 特許5772627-車両用伝動装置 図000010
  • 特許5772627-車両用伝動装置 図000011
  • 特許5772627-車両用伝動装置 図000012
  • 特許5772627-車両用伝動装置 図000013
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5772627
(24)【登録日】2015年7月10日
(45)【発行日】2015年9月2日
(54)【発明の名称】車両用伝動装置
(51)【国際特許分類】
   F16H 61/06 20060101AFI20150813BHJP
   F16H 61/684 20060101ALI20150813BHJP
【FI】
   F16H61/06
   F16H61/684
【請求項の数】9
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2012-14378(P2012-14378)
(22)【出願日】2012年1月26日
(65)【公開番号】特開2013-155760(P2013-155760A)
(43)【公開日】2013年8月15日
【審査請求日】2014年3月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000100768
【氏名又は名称】アイシン・エィ・ダブリュ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082337
【弁理士】
【氏名又は名称】近島 一夫
(72)【発明者】
【氏名】北澤 祐輔
(72)【発明者】
【氏名】津田 耕平
【審査官】 稲垣 彰彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−214643(JP,A)
【文献】 実公昭53−5984(JP,Y1)
【文献】 特開2012−31892(JP,A)
【文献】 特開2011−231807(JP,A)
【文献】 特開2010−185526(JP,A)
【文献】 特開2010−89584(JP,A)
【文献】 特開2009−74579(JP,A)
【文献】 特開2007−16933(JP,A)
【文献】 特開2004−278767(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 59/00−61/12
61/16−61/24
61/66−61/70
63/40−63/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
摩擦板と、供給される油圧に応じてストロークすることで前記摩擦板を押圧するピストンを備えた油圧サーボと、を有し、内燃エンジンと車輪との伝達経路上に配置され、少なくとも前記内燃エンジンの駆動力を用いた発進時に係合制御されると共に、前記ピストンがストロークエンド位置になる前に車両をクリープ走行し得るクリープトルクを伝達する発進時係合摩擦要素と、
アクセル開度信号を入力し得ると共に、前記油圧を制御する指令値を出力し得る制御装置と、を備え、
前記制御装置は、前記アクセル開度信号がオフでかつ前記発進時係合摩擦要素が前記クリープトルクを伝達するように前記指令値を指令している状態から、前記アクセル開度信号がオンされた際に、前記指令値を一時的に上昇する一時的上昇制御を実行する、
ことを特徴とする車両用伝動装置。
【請求項2】
前記制御装置は、前記一時的上昇制御における前記指令値を、前記クリープトルクの伝達を指令する値から、第1所定値まで上昇し、所定時間後に前記第1所定値よりも低い第2所定値に下降させる、
ことを特徴とする請求項1記載の車両用伝動装置。
【請求項3】
前記一時的上昇制御は、ピストンを前記ストロークエンド位置まで押圧駆動するように前記指令値を一時的に上昇させる、
ことを特徴とする請求項1または2記載の車両用伝動装置。
【請求項4】
前記制御装置は、前記一時的上昇制御の実行後、前記アクセル開度信号に応じて前記車輪に前記内燃エンジンの駆動力が伝達されるように前記指令値を制御する、
ことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか記載の車両用伝動装置。
【請求項5】
前記制御装置は、油温信号を入力し得ると共に、前記一時的上昇制御を実行する所定時間の長さ及び前記指令値の上昇の大きさを、前記油温信号に応じて設定する、
ことを特徴とする請求項1ないし4のいずれか記載の車両用伝動装置。
【請求項6】
前記制御装置は、車両のブレーキ信号を入力し得ると共に、前記ブレーキ信号がオンからオフされた際に、前記指令値を、前記発進時係合摩擦要素が前記クリープトルクを伝達するように指令する、
ことを特徴とする請求項1ないし5のいずれか記載の車両用伝動装置。
【請求項7】
前記制御装置は、前記ブレーキ信号がオンからオフされた際に、前記油圧サーボに油を満たすファストフィル制御を実行してなり、かつ前記一時的上昇制御を実行する所定時間の長さ及び前記指令値の上昇の大きさを、前記ファストフィル制御の終了から前記一時的上昇制御の開始までの時間に応じて設定する、
ことを特徴とする請求項6記載の車両用伝動装置。
【請求項8】
前記制御装置は、車両のブレーキ信号を入力し得ると共に、前記ブレーキ信号がオンからオフされた際に、前記油圧サーボに油を満たすファストフィル制御を実行してなり、かつ前記ファストフィル制御の終了前に前記アクセル開度信号がオフからオンにされた際には、前記ファストフィル制御に続けて前記一時的上昇制御を実行する、
ことを特徴とする請求項1記載の車両用伝動装置。
【請求項9】
前記制御装置は、前記一時的上昇制御を実行する時間を、前記アクセル開度信号がオフからオンにされてから、前記内燃エンジンのエンジントルクの上昇が開始されるまでの時間に納まる長さに設定する、
ことを特徴とする請求項1ないし8のいずれか記載の車両用伝動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用伝動装置、特に駆動源としてエンジンと電気モータを有するハイブリッド車用伝動装置として好適であり、詳しくは車両の発進時にクリープトルクを有するように発進時係合摩擦要素を制御する発進制御に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、車両用伝動装置においてクリープトルクは、トルクコンバータにより発生している。また、電気モータで発進するハイブリッド車用伝動装置にあっては、電気モータによりクリープトルクを発生している。
【0003】
上記トルクコンバータ又は電気モータによりクリープトルクを発生できない車両状況、例えば1モータパラレルタイプのハイブリッド車用伝動装置において、バッテリ残量が不足している場合又はエンジンにより電気モータを回転して発電している場合等、エンジンにより発進され、この際、1速時に係合する摩擦係合要素であるB−2ブレーキをスリップ制御してクリープトルクを得ている。
【0004】
従来、ロックアップクラッチを係合して、1速時に係合するC−1クラッチをスリップ制御して発進制御する自動変速機の制御装置が提案されている。このものは、フットブレーキがONからOFFに切換わると、運転者に発進意思があるとして、C−1クラッチの油圧指令圧をファストフィル制御した後、該C−1クラッチをスリップ制御してクリープトルクを発生して車両を発進する。そして、運転者によりアクセルが低開度で踏圧され、スロットル開度が上昇すると、C−1クラッチのトルク容量を演算して、該演算されたトルク容量となるようにC−1クラッチの係合圧を上昇する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−214643号公報(特に、図8並びに[0055],[0057]参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1のものは、ファストフィルによりC−1クラッチをスリップ制御してクリープトルクを発生した状態で、C−1クラッチの係合圧をスロットル開度に応じて上昇する際、該クラッチへの係合圧(供給圧)の増加分が油圧サーボの体積変化に使用され、クラッチの伝達トルク容量の増加に遅れを生じる。特に、摩擦板(クラッチ板)にウェーブを有するディスクが用いられる場合、クリープ状態ではウェーブがつぶれない状態でクリープトルクを発生し、更に大きなトルク容量を得るためには、ウェーブをつぶして平板状態とする必要があり、このため該クラッチ用油圧サーボのピストンがストロークエンド位置までに移動するには、比較的長いピストンストロークを必要として、油圧増加分が該ピストンストロークとして体積変化に費やされ、油圧指令に対する実油圧の遅れが顕著に表われる。これにより、要求駆動力に対して、実駆動力が遅れて、かつ急激に立上り、ショックが発生する。特に、運転者が加速を要求し、スロットル開度変化が大きい時ほど、エンジントルクの増加とクラッチの伝達トルク容量の増加に隔たりができ、運転者は違和感を感じる。
【0007】
そこで、本発明は、発進時に係合摩擦要素によりクリープトルクを伝達する発進制御において、クリープ状態から発進する際に油圧サーボのガタ詰めをする一時的上昇制御を行い、もって上述した課題を解決した車両用伝動装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、摩擦板(25,21)と、供給される油圧に応じてストロークすることで前記摩擦板を押圧するピストン(30)を備えた油圧サーボ(20)と、を有し、内燃エンジン(E)と車輪(14)との伝達経路上に配置され、少なくとも前記内燃エンジンの駆動力を用いた発進時に係合制御されると共に、前記ピストンがストロークエンド位置になる前に車両をクリープ走行し得るクリープトルクを伝達する発進時係合摩擦要素(例えばB−2)と、
アクセル開度信号を入力し得ると共に、前記油圧を制御する指令値を出力し得る制御装置(U)と、を備え、
前記制御装置は、前記アクセル開度信号がオフでかつ前記発進時係合摩擦要素(B−2)が前記クリープトルクを伝達するように前記指令値を指令している状態から、前記アクセル開度信号がオンされた際に、前記指令値を一時的に上昇する一時的上昇制御(F2)を実行する、
ことを特徴とする車両用伝動装置にある。
【0009】
なお、例えば図4に示すように、上記「ピストンのストロークエンド位置」とは、油圧サーボに油圧が供給されても、実質的にストロークできない位置であって、摩擦板が詰まって係合圧が作用すると直ちに車両を発進し得る位置(例えば(C)参照)であり、上記「ストロークエンド位置になる前の位置」とは、摩擦板がスリップし得るように接触してクリープトルクを発生する位置(例えば(B)参照)である。なお、摩擦板がウェーブを有するものに適用して好適であるが、これに限るものではない。また、「アクセル開度信号」とは、アクセル開度角信号に限らず、運転者が発進意図の基で駆動力要求の操作したことを検出することがオンであり、その操作を検出し得ない状況がオフである。
【0010】
例えば、図6(B)に示すように、前記制御装置は、前記一時的上昇制御における前記指令値(F2)を、前記クリープトルクの伝達を指令する値(a)から、第1所定値(b)まで上昇し、所定時間後に前記第1所定値よりも低い第2所定値(c)に下降させる。
【0011】
前記一時的上昇制御は、ピストン(30)を前記ストロークエンド位置まで押圧駆動するように前記指令値を一時的に上昇させる。
【0012】
前記制御装置は、前記一時的上昇制御(F2)の実行後、前記アクセル開度信号に応じて前記車輪に前記内燃エンジンの駆動力が伝達されるように前記指令値を制御する。
【0013】
例えば図7を参照して、前記制御装置は、油温信号を入力し得ると共に、前記一時的上昇制御を実行する所定時間の長さ及び前記指令値の上昇の大きさを、前記油温信号に応じて設定する。
【0014】
例えば図6(B)、図8図9を参照して、前記制御装置は、車両のブレーキ信号を入力し得ると共に、前記ブレーキ信号がオンからオフされた際に、前記指令値を、前記発進時係合摩擦要素(B−2)が前記クリープトルクを伝達するように指令する。
【0015】
なお、ブレーキ信号のオフとは、フットブレーキの踏圧が完全に解放されることに限らず、運転者が意図してブレーキを解放操作して所定踏み量以下になることを意味する。
【0016】
前記制御装置は、前記ブレーキ信号がオンからオフされた際に、前記油圧サーボ(20)に油を満たすファストフィル制御(F1)を実行してなり、かつ前記一時的上昇制御(F2)を実行する所定時間の長さ及び前記指令値の上昇の大きさを、前記ファストフィル制御の終了から前記一時的上昇制御の開始までの時間(例えば図7のクリープ圧待機時間参照)に応じて設定する。
【0017】
例えば図8を参照して、前記制御装置は、車両のブレーキ信号を入力し得ると共に、前記ブレーキ信号がオンからオフされた際に、前記油圧サーボに油を満たすファストフィル制御(F1)を実行してなり、かつ前記ファストフィル制御の終了前に前記アクセル開度信号がオフからオンにされた際には、前記ファストフィル制御に続けて前記一時的上昇制御を実行する。
【0018】
なお、上記「ファストフィル制御」とは、例えば図4(B)に示すように、摩擦板がスリップしてクリープトルクを発生する程度に油圧サーボに油を満たす制御を意味する。また、上記「ファストフィル制御に続けて」とは、所定圧を維持して連続することに限らず、油圧が変更されて一時的上昇制御に移行することも含む。
【0019】
前記制御装置は、前記一時的上昇制御を実行する時間を、前記アクセル開度信号がオフからオンにされてから、前記内燃エンジンのエンジントルクの上昇が開始されるまでの時間に納まる長さに設定する。
【0020】
なお、上記カッコ内の符号は、図面と対照するためのものであるが、これにより特許請求の範囲に記載した構成に何等影響を及ぼすものではない。
【発明の効果】
【0021】
請求項1に係る本発明によると、発進時係合摩擦要素によりクリープトルクを発生した状態で、運転者の駆動力要求により、直ちに一時的上昇制御が実行され、油圧サーボは、発進時係合摩擦要素を係合開始状態になるようにパック詰めされるので、発進時係合摩擦要素の油圧サーボに、油圧指令に遅れることなく実油圧が供給され、油圧遅れによるヘジテーション(モタモタ感)の発生を防止することができる。また、該油圧遅れが少なくなることにより、発進係合摩擦要素の係合による実駆動力が要求駆動力に追従して上昇し、ショックの少ない滑らかな発進が可能となる。
【0022】
請求項2に係る本発明によると、前記一時的上昇制御は、ファストフィル制御と同様な1パルスからなり、素早く油圧サーボのパック詰めを行うことができる。
【0023】
請求項3に係る本発明によると、前記一時的上昇制御は、ピストンのストロークエンド位置まで押圧駆動するので、特に摩擦板がウェーブを有するものを用いる場合、ウェーブをつぶさない状態での接触によりクリープトルクを得つつ、ウェーブをつぶしたストロークエンド位置までストロークすることにより、油圧サーボの係合油圧が直ちに摩擦板に作用して、遅れのない高い応答性による実駆動力を得ることができる。
【0024】
請求項4に係る本発明によると、一時的上昇制御の実行後、運転者の要求駆動力に対応して、直ちに発進時係合摩擦要素が所定トルク容量を備え、内燃エンジンの駆動力が正確に駆動車輪に伝達される。
【0025】
請求項5に係る本発明によると、一時的上昇制御の時間及び指令値の大きさを、油温信号により設定するので、高い精度の一時的上昇制御を行うことができる。
【0026】
請求項6に係る本発明によると、ブレーキ信号のオフにより、(第1の)ファストフィル制御が実行され、油圧サーボは、粗方詰ってクリープ圧指令により直ちにクリープトルクを得ることができる。
【0027】
請求項7に係る本発明によると、一時的上昇制御の時間及び大きさを、上記ファストフィル制御の終了からの時間により設定されるので、高い精度の一時的上昇制御を行うことができる。
【0028】
請求項8に係る本発明によると、ブレーキ信号のオフから直ちにアクセル開度信号がオンされて、(第1の)ファストフィル制御と一時的上昇制御(第2のファストフィル制御)が重なっても、該一次的上昇制御を行うことができる。
【0029】
請求項9に係る本発明によると、一時的上昇制御が、エンジントルクの上昇が開始されるまでに終了するので、一時的上昇制御がエンジントルクによる車両発進制御に干渉することがない。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】本発明に係るハイブリッド車両用伝動装置を示すスケルトン図。
図2】(A)は、上記ハイブリッド車両用伝動装置における自動変速装置の係合表、(B)は、その速度線図である。
図3】発進時係合要素であるB−2ブレーキ及びその油圧サーボを示す断面図。
図4】ウェーブを有する摩擦板を用いた係合摩擦要素を示す概略図で、(A)は解放状態、(B)はクリープ(スリップ)状態、(C)は駆動力伝達(係合)状態を示す。
図5】発進時係合摩擦要素(クラッチ)の油圧制御フローを示す図。
図6】発進時のタイムチャートで、(A)は従来の技術を適用したものの説明、(B)は本発明に係るものである。
図7】(A)、(B)は、自動変速装置によるクリープ圧待機時間に対する2ndファストフィル圧の相違を示す模式図。
図8】ブレーキOFF後すばやくアクセルペダルが踏込まれた状態の発進時のタイムチャート。
図9】P→Dガレージシフト直後にアクセルペダルが踏込まれた状態の発進時のタイムチャート。
図10】ハイブリッド車両に適用した実施の形態による車両伝動装置を示す概略図。
図11】他の実施の形態による車両伝動装置を示す概略図。
図12】他の実施の形態による車両伝動装置を示す概略図。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、図面に沿って、本発明の実施の形態について説明する。本ハイブリッド車両用伝動装置Hは、図1に示すように、駆動源として内燃エンジンEと電気モータ3とを備えており、これら駆動源からの動力が自動変速装置1を介して駆動車輪14に繋がる出力部11に伝達される、いわゆる、1モータパラレルタイプのハイブリッド駆動装置からなる。自動変速装置1の入力軸2には電気モータ3のロータ3aが連結されており、該入力軸2とエンジン出力軸5との間にはクラッチ6及びトーションダンパ7が介在している。上記電気モータ3は、車輌駆動源として、またエンジンを始動するスタータ(セルモータ)として、更にエンジン動力又は車輌の慣性力を電気エネルギに変換するオルタネータ(ジェネレータ)として機能する。
【0032】
自動変速装置1の上記入力軸2は、電気モータ3,クラッチ6及びエンジン出力軸5と同軸上に配置され、該入力軸2上において、プラネタリギヤSPと、プラネタリギヤユニットPUとが備えられている。上記プラネタリギヤSPは、サンギヤS1、キャリヤCR1、及びリングギヤR1を備えており、該キャリヤCR1に、サンギヤS1及びリングギヤR1に噛合するピニオンP1を有している、いわゆるシングルピニオンプラネタリギヤである。
【0033】
また、該プラネタリギヤユニットPUは、4つの回転要素としてサンギヤS2、サンギヤS3、キャリヤCR2、及びリングギヤR2を有し、該キャリヤCR2に、サンギヤS2及びリングギヤR2に噛合するロングピニオンLPと、サンギヤS3に噛合するショートピニオンSPとを互いに噛合する形で有している、いわゆるラビニヨ型プラネタリギヤである。
【0034】
上記プラネタリギヤSPのサンギヤS1は、固定部材であるミッションケース9に一体的に固定されている不図示のボス部に接続されて回転が固定されている。また、上記リングギヤR1は、上記入力軸2の回転と同回転(以下「入力回転」という。)になっている。さらに、上記キャリヤCR1は、上記固定されたサンギヤS1と該入力回転するリングギヤR1とにより、入力回転が減速された減速回転になるとともに、クラッチC−1及びクラッチC−3に接続されている。
【0035】
上記プラネタリギヤユニットPUのサンギヤS2は、ブレーキB−1に接続されてミッションケース9に対して固定自在となっているとともに、上記クラッチC−3に接続され、該クラッチC−3を介して上記キャリヤCR1の減速回転が入力自在となっている。また、上記サンギヤS3は、クラッチC−1に接続されており、上記キャリヤCR1の減速回転が入力自在となっている。
【0036】
さらに、上記キャリヤCR2は、入力軸2の回転が入力されるクラッチC−2に接続され、該クラッチC−2を介して入力回転が入力自在となっており、また、発進時係合要素であるブレーキB−2に接続されて、該ブレーキB−2を介して回転が固定自在となっている。そして、上記リングギヤR2は、出力部であるカウンタギヤ11に接続されており、該カウンタギヤ11は、カウンタシャフト12のカウンタドリブンギヤ12aに噛合している。更に、カウンタシャフト12の回転は、ピニオンギヤ12b及びデフマウントギヤ13aを介してディファレンシャル装置13に伝達され、左右の車軸13l,13rを介して駆動車輪14,14に伝達される。
【0037】
また、本ハイブリッド駆動装置Hは、油圧回路A及び制御装置Uを備えており、油圧回路Aは、自動変速装置1を操作するバルブボディ及び電気モータ3の潤滑部に連通しており、かつ制御装置Uは、自動変速装置1、電気モータ3、内燃エンジンE及び油圧回路Aに電気的に入力及び出力方向に接続している。
【0038】
上記構成の自動変速装置1は、図1のスケルトンに示す各クラッチC−1〜C−3、ブレーキB−1,B−2が、図2(A)の係合表に示す組み合わせで係脱されることにより、図2(B)の速度線図に示すように前進1速段(1st)〜前進6速段(6th)、及び後進1速段(Rev)を達成している。
【0039】
前記ブレーキB−2は、1速及びリバース時に作動するブレーキであり、発進時に係合すると共に、電気モータ3によるエンジンの始動時にスリップ制御する。即ち、車両は、クラッチC−1を係合すると共にブレーキB−2を係合することにより1速状態となる。該1速状態にあっては、クラッチC−1の係合により、入力軸2の回転が減速されてプラネタリギヤPUのサンギヤS3に伝達され、ブレーキB−2によりキャリヤCR2が停止していることにより、更に減速されてリングギヤR2からカウンタギヤ11に出力される。該1速による車輌の発進時、通常、クラッチ6が切断されると共にエンジンは停止しており、電気モータ3により駆動される。
【0040】
そして、該車輌発進後の上記1速状態でエンジンEが始動される。この際、ブレーキB−2をスリップ制御して、自動変速装置1の入出力軸間の回転差を吸収した状態で、電気モータ3のトルクを上げると共に、クラッチ6を繋いで内燃エンジンEを回転する。
【0041】
一方、バッテリ残量が不足している場合、又はクラッチ6を接続してエンジンEにより電気モータ3を駆動して、該電気モータをジェネレータとしてバッテリを充電している場合等、電気モータ3で発進できない場合がある。この状態では、エンジンEにより車両が発進され、この際1速時で係合する上記ブレーキB−2を発進クラッチとして用い、該ブレーキB−2は、スリップ制御されてクリープトルクを発生し、この状態で係合圧が供給されて係合して1速状態となって発進する。
【0042】
前記発進時係合要素となるブレーキB−2及びその油圧サーボ20を、図3に沿って説明する。ブレーキB−2は、多板湿式摩擦板からなり、ケース9の内スプライン9aに係合する歯を外周面に有する外摩擦板(セパレータプレート)21と、ハブ22のスプライン22aに係合する歯を内周面に有する内摩擦板(ディスク)25とが交互に軸方向に並んで配置されており、これら外摩擦板21はその先端がスナップリング26で抜止めされたエンドプレート21aとなっていると共に、油圧ピストン側にプレッシャプレート21bが配置されている。
【0043】
ハブ22は、前記キャリヤCR2のケース27に溶接等により一体に固着されており、これらハブ22及びケース27内には前記プラネタリギヤユニットPUが配置されている。また、前記キャリヤケース27と前記入力軸2から延びているドラム29との間に多板湿式クラッチからなる前記クラッチC−2が配置されている。前記ケース9の前端側面内側には、前記油圧サーボ20を構成するシリンダ20aが形成されており、該シリンダ20aにピストン30が油密状に嵌合しており、該ピストン30から前記ブレーキB−2のプレッシャプレート21bに向けて延びるようにピストンロッド30aが一体に形成されている。該ピストンロッド30aは櫛歯状に形成されており、該櫛歯の間にリターンスプリング31がケース9に抜止めされたスナップリング32との間に配置されている。
【0044】
前記ブレーキB−2は、図4に概略を示すように、その内摩擦板(ディスク)25がウェーブを形成されて、外摩擦板(セパレータプレート)21の間に配置されている。従って、図4(A)に示すように、解放された非駆動状態(クリープカット状態)では、ディスク25が自然状態であるウェーブ形状からなり、セパレータプレート21と離れて(無圧状態)となって、トルク容量は0である。図4(B)に示すように、油圧サーボ20にクリープ圧が供給され、ピストン30が所定位置にストロークして、ディスク25がウェーブ形状を維持した状態でセパレータプレート21と所定圧で接触する。この状態では、ディスク25がウェーブ状態でセパレータプレート21に接触するスリップ制御となって、クリープトルクに相当する所定トルク容量を有するクリープ状態となる。
【0045】
そして、該クリープ状態から、ピストン30をストロークエンド位置まで移動した状態を図4(C)に示す。この状態では、ディスク25のウェーブ形状はつぶされて、セパレータプレート21の間で平板状態となり、ピストン30に作用する係合圧に応じたトルク容量を有する駆動力伝達状態(係合状態)となる。上記図4(A)の解放状態から図4(B)のクリープ状態までのピストンストロークが、後述する第1の(1st)ファストフィル(制御)に相当し、上記図4)の駆動力伝達状態までのピストンストロークが、後述する第2の(2nd)ファストフィル(制御)に相当する。
【0046】
ついで、図5及び図6に沿って、エンジンEを駆動源として発進する際の発進制御について説明する。まず、運転者がフットブレーキを踏込んで車両が停止している場合、Dレンジにあって1速状態の指令があっても、クラッチC−1は、係合状態にあるが、発進時係合要素であるブレーキB−2は、そのクラッチ油圧指令(ブレーキであっても係合摩擦要素との意味でクラッチと称すこともある;以下同様)は解放状態(0[KPa])にある(S−1)。この状態から、車両が10rpm以下、即ち停車状態にあって、かつ運転者が踏込んでいたフットブレーキの踏圧を解除して、ブレーキ踏み量が20%以下となると、運転者が発進を準備したと判断する。即ち、ブレーキB−2が図4(A)の解放状態であるクリープカット状態が解除されたと判定する(S−2;YES)。
【0047】
そして、制御装置Uにて、第1の(1st)ファストフィル圧及びその作動時間が演算され(S−3)、パルス状の該ファストフィル指令圧が油圧回路Aのリニアソレノイドバルブに出力される(S−4)。該第1の(1st)ファストフィル圧及び時間は、クリープカット継続時間及び油温によってマップにより決定される。
【0048】
ついで、第2の(2nd)ファストフィル判断されるが(S−5)、ブレーキOFFからアクセルONまで所定時間がある図6に示す発進状況では、上記ステップS−5はNOと判断される。従って、上記ステップS−4で設定された第1の(1st)ファストフィルの時間が経過したか判断される(S−6)。該1stファストフィル時間中では、上記ファストフィル指令圧が保持され、油圧サーボ20にファストフィル圧が供給され、油圧サーボ20にオイルが満たされる。これにより、図4(B)に示すように、ウェーブディスク25がウェーブ状態のままでセパレータプレート21と接触するように、ピストン30が所定量ストロークする。上記1stフィルタイマーが経過すると(S−6;YES)、制御装置Uからクリープ圧a[図6(B)参照]が指令され、油圧回路Aのリニアソレノイドバルブが上記油圧サーボ20に出力してクリープトルクを発生する(S−7)。
【0049】
これにより、ブレーキB−2は、図4(B)に示す状態において、上記クリープ圧によりウェーブディスク25とセパレータプレート21が部分接触してクリープトルクを発生し、車両がクリープ走行し得る状態(クリープ状態)となり、運転者がアクセルペダルを踏むまで、該クリープ状態が保持される。そして、運転者がアクセルペダルを踏むと(アクセルON)(S−8;YES)、第2の(2nd)ファストフィル(制御)が判断される(S−9)。なお、アクセルONは、アクセル開度が0から外れたことにより判断しても、アクセルペダルによりON−OFFにより切換えられるスイッチで判断してもよく、いずれの場合でも、アクセル開度信号のオン、オフと定義する。
【0050】
上記ステップS−7及びS−9の2ndファストフィル(一時的上昇制御)の判断は、アクセル踏込み前の要求駆動力、過去の実行判定履歴及びアクセル踏込みによる要求駆動変化率を用いて判断される。具体的には、要求駆動力が50[Nm]以下であること、即ちピストンストロークが詰まりきらないトルク以下であること、過去12秒間にファストフィル履歴がないこと、即ち制御ハンチングが起らない時間であること、及び要求駆動力勾配が200[Nm/s]以下であること、即ちアクセルの踏込みを判断し得る勾配であること、により判断される。なお、該2ndファストフィル判断は、上記3個の要件を必ずすべて満たすものでなくてもよく、上記要求駆動力勾配だけでもよい。更に、該要求駆動力勾配は、一般にアクセル開度角信号により判断されるが、必ずしも要求駆動力勾配に限らず、ステップS−8と同様にアクセルペダルの踏込みを検知するON,OFFスイッチでもよく、またはアクセルペダル以外の操作でもよく、要は、運転者が発進意図の基で駆動力要求の操作したことを検出して判定すればよい。該ステップS−9にてYESと判断されると、制御装置Uは、2ndファストフィル指令圧及び時間を、クリープ圧待機時間及び油温によってマップにより設定される(S−10)。具体的には、2ndファストフィル圧は、油温が高くなる程低く、かつクリープ待機時間が長くなる程低くなるように設定され、ファストフィル時間は、油温が高くなる程短く設定される。なお、該2ndファストフィル圧及び時間の設定は、上記に限らず、ファストフィル圧及び時間を共にクリープ待機時間及び油温により設定してもよく、またいずれか一方のみにより設定してよい。また、ファストフィル圧は、クリープ待機時間が長い程高くなるように設定してもよい。
【0051】
図7は、自動変速装置の機種又は個性により、上記2ndファストフィル圧の設定が異なることを示す図である。図7(A)は、油圧サーボのオイル漏れの多い自動変速装置であって、クリープ圧待機時間が長くなる程、上記油圧サーボからのオイル漏れを補填するため、2ndファストフィル圧が高くなるように設定する。図7(B)は、油圧サーボのオイル漏れの少い自動変速装置であって、クリープ圧待機時間が長くなる程、クリープ圧の油圧サーボへの供給により該油圧サーボが満たされるので、2ndファストフィル圧を低く設定する。なお、どちらの場合も、制御装置には、油温センサからの油温信号が入力されており、油温が高い程、2ndファストフィル圧が低くなるように設定される。
【0052】
上記ステップS−10に設定された指令値は、制御装置Uから油圧回路Aのリニアソレノイドバルブに出力され(S−11)、上記ステップS−10で演算された時間が経過するまで、2ndファストフィル圧が保持される。該2ndファストフィル圧により、図4(C)に示すように、ピストン30は、ウェーブディスク25がセパレータプレート21の間でつぶされて平板状になるストロークエンド位置までストロークする。なお、上記2ndファストフィル制御(一時的上昇制御)F2[図6(B)参照]の指令値は、クリープトルクの伝達を指令する値(クリープトルク圧)aから第1の所定値bまで瞬時に上昇し、上記所定時間後(2ndファストフィルタイマーの経過)、上記所定値bよりも低い第2所定値cに瞬時に下降する、1パルス形状からなる。上記第2所定値cは、上記ウェーブディスク25のウェーブがつぶれて平板状態となるが、車両を発進する駆動力を得る直前のトルク容量に相当するものである。また、駆動力要求立上りから駆動力源(エンジン)が駆動力を発生するまでの間に、2ndファストフィルが終了するように設定される。そして、ステップS−12にて、タイマーにより計時された2ndファストフィル時間が経過すると(YES)、要求駆動力に基づくクラッチ(ブレーキ)係合圧が指令されて、要求駆動力を発生する油圧によりブレーキB−2を係合して、車両は、1速状態で発進する(S−13)。
【0053】
図6は、発進制御を示すタイムチャートであり、(A)は、従来の技術を本ハイブリッド車用伝動装置に適用したものであり、(B)は、上述したフローチャートに基づくものである。両者は、第2の(2nd)ファストフィル制御F2が存在するかしないかで相違している。従来の技術に基づく図6(A)では、第1の(1st)ファストフィル制御F1により、クリープ圧は素早く立上り、所定クリープトルクは得られるが、第2の(2nd)ファストフィル制御F2が存在しないため、制御装置Uからの要求駆動力に基づく油圧指令に対して、油圧回路AからのブレーキB−2への実油圧は、大きな遅れD1を発生し、かつ実駆動レートE1が急激な立上りとなる。即ち、図4(B)から図4(C)に移動するまで、ウェーブディスク25のウェーブをつぶすためにピストン30をストロークエンド位置まで移動に要する油圧サーボの体積変化分の油圧遅れを生じ、この分、モタモタした感じとなるヘジテーションを発生する。また、上記遅れD1により、実駆動力レートEは、要求駆動力に近づくために急激に立上り、ショックを感じる。
【0054】
これに対し、図6(B)に示す本発明による発進制御にあっては、第2の(2nd)ファストフィル制御F2があるため、図4(C)に示すように、ウェーブディスク25がセパレータプレート21の間でつぶれて平板状になるストロークエンド位置まで、上記ファストフィル制御F2によりパック詰めされ、従って油圧サーボ20に作用する油圧上昇は直ちにブレーキB−2の係合力による駆動力となり、エンジンの応答遅れに基づく僅かな遅れD2により実油圧は素早く立上る。これにより、駆動力も、要求駆動力に追従して滑らかに立上り、ショックやヘジテーションを生ずることなく、車両は、違和感のない状態で滑らかに発進する。
【0055】
図8は、フットブレーキのOFF直後にアクセルペダルが素早く踏まれ、その結果第1の(1st)ファストフィル(制御)と第2の(2nd)ファストフィル(制御)が重なる場合を示すタイムチャートである。図5において、ステップS−4にて1stファストフィルの指令中、即ちステップS−6による1stフィルタイマにより計時が終了していない状態においてステップS−5による2ndファストフィル判断でYESと判断される。即ち、フットブレーキの踏込み量が20%以下となって、1stファストフィルF1によりクリープ圧を発生した直後に、運転者は、アクセルペダルを踏込んで、要求駆動力勾配が200[Nm/s]以上になると、1stファストフィル制御中に、2dnファストフィル制御が実行される。
【0056】
ステップS−5のYESによりステップS−10に流れ、制御装置Uにより2ndファストフィル圧及び時間が設定される。この際、前述したマップにより設定される予定2ndファストフィルF2’(図8のB−2油圧に点線で表示)に対して、上記1stファストフィルF1と予定2ndファストフィルF2’の重なり時間T1により、2ndファストフィルF2(実線で表示)の油圧が変更される。該2ndファストフィルF2は、その終了時刻は前述したマップにより設定される予定ファストフィルF2’と同じに設定されており、従って該2ndファストフィルF2は、上記重なり時間T1だけ短くなるため、その分予定ファストフィルによる油圧より所定量h高く設定される。これにより、該1stファストフィルF1と2ndファストフィルF2が重なった場合でも、2ndファストフィルF2により、B−2油圧サーボは、図4)に示すストロークエンド位置までストロークして、ブレーキB−2は、油圧指令値に応じて実油圧を素早く上昇し得る。従って、実駆動力も要求駆動力に追従して、滑らかに上昇して、車両を発進する。
【0057】
図9は、PレンジからDレンジにシフトされるガレージシフトの直後に、アクセルペダルが踏込まれる、PDガレージシフトと発進制御が重なる場合のタイムチャートである。運転者は、Pレンジにある車両を、フットブレーキの解放操作と共にR,Nレンジを経てDレンジまで素早く操作する。この状態では、自動変速装置1は、P又はNレンジからDレンジ1速状態になるため、ブレーキB−2と共にクラッチC−1に油圧が供給されることになる。この際、B−2ブレーキ用とC−1クラッチ用の両油圧サーボにファストフィルを行うことが求められるが、オイルポンプの流量に制約があるため、両油圧サーボを同時にファストフィル制御することはできない。
【0058】
このため、上記P→Dレンジのシフト操作直後に、まずクラッチC−1のファストフィル制御して、クラッチC−1のパック詰め操作を行う。この際、要求駆動力は、アクセルペダルが踏まれていても、上記クラッチC−1が所定の油圧指令Jに達するまで駆動力を制限する。なお、クリープトルク要求は出力されており、ブレーキB−2には、1stファストフィルがない状態で、僅かな油量で可能なクリープ圧指令が出力する。そして、上記クラッチC−1のファストフィル制御(パック詰め)Gが終了判断されると(J)、上記駆動力制限が解除される。該駆動力制限の解除された状態で、前述したブレーキB−2用の2ndファストフィル判断されると、前述と同様にファストフィル圧及び時間により、2ndファストフィルF2が制御される。
【0059】
これにより、該PDガレージシフトと発進制御が重なる場合でも、車両は、ヘジテーション及びショックを伴うことなく滑らかに発進する。
【0060】
図10は、上述したハイブリッド車伝動装置Hの模式図である。エンジンEと電気モータ3との間に切り離し用クラッチ6が介在し、電気モータ3から自動変速装置1を介して駆動車輪14に繋がっている。エンジンEには、その出力軸回転数センサ36が配置されており、電気モータ3には、その出力軸回転センサ37が配置されており、自動変速装置1には、インプット回転数センサ33とアウトプット回転数センサ35が配置されている。
【0061】
エンジンEを制御するエンジン制御装置UEと、電気モータ3を制御するM/G制御装置UMと、自動変速装置1及び切り離しクラッチ6を制御するAT制御装置・油圧制御装置UAを備えており、これら各制御装置が車両制御装置Uに繋がって統合制御される。
【0062】
前述した実施の形態では、自動変速装置1の1速時に係合するブレーキB−2が発進時係合摩擦要素(発進クラッチ)となることにより説明したが、上記切り離しクラッチ6を、発進クラッチとして、上記ブレーキB−2による発進制御をそのままクラッチ6に適用してもよい。
【0063】
図11は、電気モータを備えない通常のエンジンによる車両用伝動装置B1を示す。該車両用伝動装置B1は、自動変速装置1と駆動車輪14との間に発進クラッチ61を介在している。該車両用伝動装置B1にあっても、前記自動変速装置1の1速時に係合する係合摩擦要素、例えばブレーキB−2を発進時係合摩擦要素として、又は発進クラッチ61を発進時係合摩擦要素として前述した発進制御を同様に適用可能である。なお、自動変速装置1の係合摩擦要素(例えばブレーキB−2)とした場合、上記発進クラッチ61はなくてもよい。
【0064】
図12は、同じく電気モータを有さない車両用伝動装置B2を示す模式図で、エンジンEと自動変速装置1との間に、ロックアップクラッチ62を有するトルクコンバータ40を配置している。該車両用伝動装置B2において、スポーツモード等によりロックアップクラッチ62を接続したまま発進制御する場合、前述したように、自動変速装置1の1速時に係合する係合摩擦要素、例えばブレーキB−2を発進時係合摩擦要素として前述と同様に発進制御を適用可能である。また、ロックアップクラッチ62を、エンジンの吹上がりを防止し、燃費低減を図ると共に、直結感を得る目的でスリップ制御して発進する場合、該ロックアップクラッチ62を発進時係合摩擦要素として同様に前述した発進制御を適用可能である。
【0065】
なお、上述した実施の形態は、発進時係合摩擦要素が、ウェーブを有する摩擦板からなるものとして説明したが、該ウェーブを有しない摩擦板からなる発進時係合摩擦要素にも同様に適用可能である。
【符号の説明】
【0066】
1 自動変速装置
3 電気モータ
E 内燃エンジン
U 制御装置
H ハイブリッド車両用伝動装置
B1,B2 車両用伝動装置
B−2 発進時係合摩擦要素
14 駆動車輪
20 油圧サーボ
21 (外)摩擦板(セパレータプレート)
25 (内)摩擦板(ウェーブディスク)
30 ピストン
30a ピストンロッド
F1 (第1の)(1st)ファストフィル制御
F2 一時的上昇制御[(第2の)(2nd)ファストフィル制御]
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12