(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0024】
<硬化性樹脂組成物>
本発明の感放射線性樹脂組成物は、[A]アルカリ可溶性樹脂、[B]重合性化合物、及び[C]化合物を含有する。また、当該硬化性樹脂組成物は、好適成分として[D]ラジカル捕捉剤、[E]着色剤を含有することができる。さらに、当該硬化性樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない限りその他の任意成分を含有してもよい。以下、各成分を詳述する。
【0025】
<[A]アルカリ可溶性樹脂>
[A]アルカリ可溶性樹脂は、エポキシ基を含むアルカリ可溶性樹脂であり、(a1)構造単位及び(a2)構造単位を含むことが好ましい。また、[A]アルカリ可溶性樹脂としては、(a1)構造単位及び(a3)構造単位を含む樹脂であることも好ましく、(a1)構造単位及び(a4)下記式(2)で表される構造単位を含む樹脂であることも好ましい。なお、[A]アルカリ可溶性樹脂は、本発明の効果を損なわない限り、(a1)構造単位〜(a4)構造単位以外の他の構造単位を含んでいてもよい。
【0026】
[A]アルカリ可溶性樹脂は、溶媒中で重合開始剤の存在下、各構造単位を与える化合物をラジカル重合することによって合成できる。以下、各構造単位を与える化合物を詳述する。なお、各化合物は2種以上を併用してもよい。
【0027】
[(a1)構造単位]
(a1)構造単位は、カルボキシル基を有する重合性化合物由来の構造単位であり、不飽和カルボン酸及び不飽和カルボン酸無水物からなる群より選択される少なくとも1種の化合物に由来する構造単位である。(a1)構造単位を与える化合物としては、例えば不飽和モノカルボン酸、不飽和ジカルボン酸、不飽和ジカルボン酸の無水物、多価カルボン酸のモノ[(メタ)アクリロイルオキシアルキル]エステル、両末端にカルボキシル基と水酸基とを有するポリマーのモノ(メタ)アクリレート、カルボキシル基を有する不飽和多環式化合物及びその無水物等が挙げられる。
【0028】
不飽和モノカルボン酸としては、例えばアクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸等が挙げられる。不飽和ジカルボン酸としては、例えばマレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、メサコン酸、イタコン酸等が挙げられる。不飽和ジカルボン酸の無水物としては、例えば上記ジカルボン酸として例示した化合物の無水物等が挙げられる。多価カルボン酸のモノ[(メタ)アクリロイルオキシアルキル]エステルとしては、例えばコハク酸モノ[2−(メタ)アクリロイルオキシエチル]、フタル酸モノ[2−(メタ)アクリロイルオキシエチル]等が挙げられる。両末端にカルボキシル基と水酸基とを有するポリマーのモノ(メタ)アクリレートとしては、例えばω−カルボキシポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。カルボキシル基を有する不飽和多環式化合物及びその無水物としては、例えば5−カルボキシビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5,6−ジカルボキシビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−カルボキシ−5−メチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−カルボキシ−5−エチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−カルボキシ−6−メチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−カルボキシ−6−エチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5,6−ジカルボキシビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン無水物等が挙げられる。
【0029】
これらのうち、モノカルボン酸、ジカルボン酸の無水物が好ましく、共重合反応性、アルカリ水溶液に対する溶解性及び入手の容易性の観点から、(メタ)アクリル酸、無水マレイン酸が、より好ましい。
【0030】
[A]アルカリ可溶性樹脂における(a1)構造単位の含有割合としては、全構造単位に対して、好ましくは5モル%〜30モル%、より好ましくは10モル%〜25モル%である。(a1)構造単位の含有割合を5モル%〜30モル%とすることで、[A]アルカリ可溶性樹脂のアルカリ水溶液に対する溶解性を最適化すると共に放射線性感度に優れる硬化性樹脂組成物が得られる。
【0031】
[(a2)構造単位]
(a2)構造単位は、エポキシ基を有する重合性化合物に由来する構造単位である。エポキシ基としては、オキシラニル基(1,2−エポキシ構造)、オキセタニル基(1,3−エポキシ構造)が挙げられる。
【0032】
オキシラニル基を有する重合性化合物としては、例えばアクリル酸グリシジル、メタクリル酸2−メチルグリシジル、メタクリル酸グリシジル、α−エチルアクリル酸グリシジル、α−n−プロピルアクリル酸グリシジル、α−n−ブチルアクリル酸グリシジル、アクリル酸−3,4−エポキシブチル、メタクリル酸−3,4−エポキシブチル、アクリル酸−6,7−エポキシヘプチル、メタクリル酸−6,7−エポキシヘプチル、α−エチルアクリル酸−6,7−エポキシヘプチル、o−ビニルベンジルグリシジルエーテル、m−ビニルベンジルグリシジルエーテル、p−ビニルベンジルグリシジルエーテル、メタクリル酸3,4−エポキシシクロへキシル等が挙げられる。
【0033】
オキセタニル基を有する重合性化合物としては、例えば
3−(アクリロイルオキシメチル)オキセタン、3−(アクリロイルオキシメチル)−2−メチルオキセタン、3−(アクリロイルオキシメチル)−3−エチルオキセタン、3−(アクリロイルオキシメチル)−2−トリフルオロメチルオキセタン、3−(アクリロイルオキシメチル)−2−ペンタフルオロエチルオキセタン、3−(アクリロイルオキシメチル)−2−フェニルオキセタン、3−(アクリロイルオキシメチル)−2,2−ジフルオロオキセタン、3−(アクリロイルオキシメチル)−2,2,4−トリフルオロオキセタン、3−(アクリロイルオキシメチル)−2,2,4,4−テトラフルオロオキセタン、3−(2−アクリロイルオキシエチル)オキセタン、3−(2−アクリロイルオキシエチル)−2−エチルオキセタン、3−(2−アクリロイルオキシエチル)−3−エチルオキセタン、3−(2−アクリロイルオキシエチル)−2−トリフルオロメチルオキセタン、3−(2−アクリロイルオキシエチル)−2−ペンタフルオロエチルオキセタン、3−(2−アクリロイルオキシエチル)−2−フェニルオキセタン、3−(2−アクリロイルオキシエチル)−2,2−ジフルオロオキセタン、3−(2−アクリロイルオキシエチル)−2,2,4−トリフルオロオキセタン、3−(2−アクリロイルオキシエチル)−2,2,4,4−テトラフルオロオキセタン等のアクリル酸エステル;
3−(メタクリロイルオキシメチル)オキセタン、3−(メタクリロイルオキシメチル)−2−メチルオキセタン、3−(メタクリロイルオキシメチル)−3−エチルオキセタン、3−(メタクリロイルオキシメチル)−2−トリフルオロメチルオキセタン、3−(メタクリロイルオキシメチル)−2−ペンタフルオロエチルオキセタン、3−(メタクリロイルオキシメチル)−2−フェニルオキセタン、3−(メタクリロイルオキシメチル)−2,2−ジフルオロオキセタン、3−(メタクリロイルオキシメチル)−2,2,4−トリフルオロオキセタン、3−(メタクリロイルオキシメチル)−2,2,4,4−テトラフルオロオキセタン、3−(2−メタクリロイルオキシエチル)オキセタン、3−(2−メタクリロイルオキシエチル)−2−エチルオキセタン、3−(2−メタクリロイルオキシエチル)−3−エチルオキセタン、3−(2−メタクリロイルオキシエチル)−2−トリフルオロメチルオキセタン、3−(2−メタクリロイルオキシエチル)−2−ペンタフルオロエチルオキセタン、3−(2−メタクリロイルオキシエチル)−2−フェニルオキセタン、3−(2−メタクリロイルオキシエチル)−2,2−ジフルオロオキセタン、3−(2−メタクリロイルオキシエチル)−2,2,4−トリフルオロオキセタン、3−(2−メタクリロイルオキシエチル)−2,2,4,4−テトラフルオロオキセタン等のメタクリル酸エステル等が挙げられる。
【0034】
これらのうち、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸2−メチルグリシジル、メタクリル酸−6,7−エポキシヘプチル、o−ビニルベンジルグリシジルエーテル、m−ビニルベンジルグリシジルエーテル、p−ビニルベンジルグリシジルエーテル、メタクリル酸3,4−エポキシシクロヘキシルが共重合反応性及び表示素子用硬化膜の耐溶媒性の向上の観点から好ましい。
【0035】
[A]アルカリ可溶性樹脂における(a2)構造単位の含有割合としては、全構造単位に対して、好ましくは5モル%〜60モル%、より好ましくは10モル%〜50モル%である。(a2)構造単位の含有割合を5モル%〜60モル%とすることで、優れた硬化性等を有する表示素子用硬化膜を形成できる。
【0036】
[(a3)構造単位]
(a3)構造単位は、上記式(4)で表される構造単位である。[A]アルカリ可溶性樹脂が(a3)構造単位を含むことで、得られる表示素子用硬化膜の硬化性を向上できる。また、[C]化合物との相溶性が向上するため[C]化合物が均一に分散し、表示素子用硬化膜形成時の感度を向上させることができる。
【0037】
上記式(4)中、R
12及びR
13は、水素原子又はメチル基である。R
14は、上記式(4−1)又は式(4−2)で表される基である。nは、1から6の整数である。式(4−1)中、R
15は、水素原子又はメチル基である。式(4−1)及び式(4−2)中、*は、隣接する酸素原子に結合する部位を示す。
【0038】
(a3)構造単位は、例えば(a1)構造単位中のカルボキシル基とエポキシ基を有する重合性化合物中のエポキシ基とが反応し、エステル結合を形成すること等により得られる。具体例を挙げて詳述すると、例えば(a1)構造単位を有する共重合体に、(a2)構造単位を与えるメタクリル酸グリシジル、メタクリル酸2−メチルグリシジル等の化合物を反応させた場合、上記式(4)中のR
14は、上記式(4−1)で表される基となる。一方、(a2)構造単位を与える化合物としてメタクリル酸3,4−エポキシシクロヘキシルメチル等の化合物を反応させた場合、上記式(4)中のR
14は、上記式(4−2)で表される基となる。
【0039】
[A]アルカリ可溶性樹脂における(a3)構造単位の含有割合としては、全構造単位に対して、好ましくは5モル%〜60モル%、より好ましくは10モル%〜50モル%である。(a3)構造単位の含有割合を5モル%〜60モル%とすることで、優れた硬化性等を有する表示素子用硬化膜を形成できる。
【0040】
[(a4)構造単位]
(a4)構造単位は、下記式(5)で表される構造単位である。[A]アルカリ可溶性樹脂が(a4)構造単位を含むことで、得られる表示素子用硬化膜の耐熱性を向上させることができる。また、[C]化合物との相溶性が向上するため、[C]化合物が均一に分散し、表示素子用硬化膜形成時の感度を高めることができる。
【0042】
上記式(5)中、R
16は、炭素数1〜12のアルキル基、シクロヘキシル基、シクロペンチル基、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基又はベンジル基である。
【0043】
上記R
16で表される炭素数1〜12のアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等が挙げられる。
【0044】
(a4)構造単位を与える化合物としては、例えばN−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−トリルマレイミド、N−ナフチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−ヘキシルマレイミド、N−ベンジルマレイミド等が挙げられる。
【0045】
これらのうち、[C]化合物との相溶性向上の観点から、N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミドが好ましい。
【0046】
[A]アルカリ可溶性樹脂における(a4)構造単位の含有割合としては、全構造単位に対して、好ましくは5モル%〜30モル%、より好ましくは10モル%〜25モル%である。(a4)構造単位の含有割合を5モル%〜30モル%とすることで、得られる表示素子用硬化膜の耐熱性の向上が可能となり、さらに[C]化合物との相溶性が向上する。
【0047】
なお、[A]アルカリ可溶性樹脂としては、(a1)構造単位及び(a2)構造単位を含む樹脂と、(a1)構造単位及び(a3)構造単位を含む樹脂とを混合しても良い。
【0048】
[他の構造単位]
[A]アルカリ可溶性樹脂が本発明の効果を損なわない限り含んでいてもよい(a1)構造単位〜(a4)構造単位以外の他の構造単位を与える化合物としては、例えば水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸鎖状アルキルエステル、(メタ)アクリル酸環状アルキルエステル、(メタ)アクリル酸アリールエステル、不飽和芳香族化合物、共役ジエン、テトラヒドロフラン骨格等をもつ不飽和化合物が挙げられる。
【0049】
水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えばアクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、アクリル酸4−ヒドロキシブチル、アクリル酸5−ヒドロキシペンチル、アクリル酸6−ヒドロキシヘキシル、メタククリル酸2−ヒドロキシエチル、メタククリル酸3−ヒドロキシプロピル、メタククリル酸4−ヒドロキシブチル、メタククリル酸5−ヒドロキシペンチル、メタククリル酸6−ヒドロキシヘキシル等が挙げられる。
【0050】
(メタ)アクリル酸鎖状アルキルエステルとしては、例えばメタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸sec−ブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸イソデシル、メタクリル酸n−ラウリル、メタクリル酸トリデシル、メタクリル酸n−ステアリル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸sec−ブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸イソデシル、アクリル酸n−ラウリル、アクリル酸トリデシル、アクリル酸n−ステアリル等が挙げられる。
【0051】
(メタ)アクリル酸環状アルキルエステルとしては、例えばメタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸2−メチルシクロヘキシル、メタクリル酸トリシクロ[5.2.1.0
2,6]デカン−8−イル、メタクリル酸トリシクロ[5.2.1.0
2,6]デカン−8−イルオキシエチル、メタクリル酸イソボロニル、シクロヘキシルアクリレート、2−メチルシクロヘキシルアクリレート、トリシクロ[5.2.1.0
2,6]デカン−8−イルアクリレート、トリシクロ[5.2.1.0
2,6]デカン−8−イルオキシエチルアクリレート、イソボロニルアクリレート等が挙げられる。
【0052】
(メタ)アクリル酸アリールエステルとしては、例えばメタクリル酸フェニル、メタクリル酸ベンジル、フェニルアクリレート、ベンジルアクリレート等が挙げられる。
【0053】
不飽和芳香族化合物としては、例えばスチレン、α−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、ビニルトルエン、p−メトキシスチレン等が挙げられる。
【0054】
共役ジエンとしては、例えば1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン等が挙げられる。
【0055】
テトラヒドロフラン骨格を含有する不飽和化合物としては、例えばテトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、2−メタクリロイルオキシ−プロピオン酸テトラヒドロフルフリルエステル、3−(メタ)アクリロイルオキシテトラヒドロフラン−2−オン等が挙げられる。
【0056】
<[A]アルカリ可溶性樹脂の合成方法>
[A]アルカリ可溶性樹脂は、溶媒中で重合開始剤の存在下、上述した所定の単量体を共重合することによって合成できる。[A]アルカリ可溶性樹脂を合成するための重合反応に用いられる溶媒としては、例えばアルコール、グリコールエーテル、エチレングリコールアルキルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノアルキルエーテル、ジエチレングリコールジアルキルエーテル、ジプロピレングリコールジアルキルエーテル、プロピレングリコールモノアルキルエーテル、プロピレングリコールアルキルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノアルキルエーテルプロピオネート、ケトン、エステル等が挙げられる。
【0057】
[A]アルカリ可溶性樹脂を合成するための重合反応に用いられる重合開始剤としては、一般的にラジカル重合開始剤として知られているものが使用できる。ラジカル重合開始剤としては、例えば2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス−(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)等のアゾ化合物が挙げられる。
【0058】
[A]アルカリ可溶性樹脂を製造するための重合反応においては、分子量を調整するために、分子量調整剤を使用できる。分子量調整剤としては、例えばクロロホルム、四臭化炭素等のハロゲン化炭化水素類;n−ヘキシルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、チオグリコール酸等のメルカプタン類;ジメチルキサントゲンスルフィド、ジイソプロピルキサントゲンジスルフィド等のキサントゲン類;ターピノーレン、α−メチルスチレンダイマー等が挙げられる。
【0059】
[A]アルカリ可溶性樹脂の重量平均分子量(Mw)としては、1,000〜30,000が好ましく、5,000〜20,000がより好ましい。[A]アルカリ可溶性樹脂のMwを上記特定範囲とすることで、当該硬化性樹脂組成物の感度及び現像性を高めることができる。なお、本明細書における重合体のMw及び数平均分子量(Mn)は下記の条件によるゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定した。
【0060】
装置:GPC−101(昭和電工社)
カラム:GPC−KF−801、GPC−KF−802、GPC−KF−803及びGPC−KF−804を結合
移動相:テトラヒドロフラン
カラム温度:40℃
流速:1.0mL/分
試料濃度:1.0質量%
試料注入量:100μL
検出器:示差屈折計
標準物質:単分散ポリスチレン
【0061】
<[B]重合性化合物>
当該硬化性樹脂組成物に含有される[B]重合性化合物としては、エチレン性不飽和結合を有する重合性化合物であれば特に限定されないが、例えばω−カルボキシポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレート、エチレングリコール(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノキシエタノールフルオレンジ(メタ)アクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−(メタ)アクリロイロキシプロピルメタクリレート、2−(2’−ビニロキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリ(2−(メタ)アクリロイロキシエチル)フォスフェート、エチレンオキサイド変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、コハク酸変性ペンタエリスリトールトリアクリレート等の他、直鎖アルキレン基及び脂環式構造を有し、かつ2個以上のイソシアネート基を有する化合物と、分子内に1個以上の水酸基を有し、かつ3個〜5個の(メタ)アクリロイロキシ基を有する化合物とを反応させて得られるウレタン(メタ)アクリレート化合物等が挙げられる。
【0062】
[B]重合性化合物の市販品としては、例えば
アロニックスM−400、同M−402、同M−405、同M−450、同M−1310、同M−1600、同M−1960、同M−7100、同M−8030、同M−8060、同M−8100、同M−8530、同M−8560、同M−9050、アロニックスTO−756、同TO−1450、同TO−1382(以上、東亞合成社);
KAYARAD DPHA、同DPCA−20、同DPCA−30、同DPCA−60、同DPCA−120、同MAX−3510(以上、日本化薬社);
ビスコート295、同300、同360、同GPT、同3PA、同400、同802(以上、大阪有機化学工業社);
ウレタンアクリレート系化合物として、ニューフロンティア R−1150(第一工業製薬社);
KAYARAD DPHA−40H、UX−5000(以上、日本化薬社);
UN−9000H(根上工業社);
アロニックスM−5300、同M−5600、同M−5700、M−210、同M−220、同M−240、同M−270、同M−6200、同M−305、同M−309、同M−310、同M−315(以上、東亞合成社);
KAYARAD HDDA、KAYARAD HX−220、同HX−620、同R−526、同R−167、同R−604、同R−684、同R−551、同R−712、UX−2201、UX−2301、UX−3204、UX−3301、UX−4101、UX−6101、UX−7101、UX−8101、UX−0937、MU−2100、MU−4001(以上、日本化薬社);
アートレジンUN−9000PEP、同UN−9200A、同UN−7600、同UN−333、同UN−1003、同UN−1255、同UN−6060PTM、同UN−6060P(以上、根上工業社);
SH−500Bビスコート260、同312、同335HP(以上、大阪有機化学工業社)等が挙げられる。
【0063】
また、[B]重合性化合物としては、[B1]重合体が挙げられる。
【0064】
[B1]重合体は、(a3)構造単位を含む共重合体である。なお、(a3)構造単位は、上記式(4)で表される構造単位であり、[A]アルカリ可溶性樹脂における(a3)構造単位と同一の構造単位である。従って、[B1]重合体における(a3)構造単位も、[A]アルカリ可溶性樹脂における場合と同様に、例えば上記(a1)構造単位を与える単量体中のカルボキシル基と上記(a2)構造単位を与える単量体中のエポキシ基とを反応させ、エステル結合を形成すること等により得られる。なお、(a3)構造単位の詳細な説明は[A]アルカリ可溶性樹脂における(a3)構造単位の説明を適用できる。
【0065】
(a3)構成単位は、共重合体中のカルボキシル基を有する構成単位に対して、5質量%〜90質量%が好ましく、15質量%〜70質量%がより好ましい。上記範囲とすることで、共重合体との反応性、絶縁膜の硬化性等がより向上する。
【0066】
[B1]重合体は、(a3)構造単位以外のその他の不飽和単量体由来の構造単位を含んでいてもよい。上記その他の不飽和単量体由来の構造単位としては、例えばオキセタニル基を有する構造単位、アルキル基を有する構造単位、マレイミド骨格を有する構造単位、テトラヒドロフラン骨格を含有する構造単位等が挙げられる。
【0067】
オキセタニル基を有する構造単位を与える単量体としては、例えば
3−(アクリロイルオキシメチル)オキセタン、3−(アクリロイルオキシメチル)−2−メチルオキセタン、3−(アクリロイルオキシメチル)−3−エチルオキセタン、3−(アクリロイルオキシメチル)−2−フェニルオキセタン、3−(2−アクリロイルオキシエチル)オキセタン、3−(2−アクリロイルオキシエチル)−2−エチルオキセタン、3−(2−アクリロイルオキシエチル)−3−エチルオキセタン、3−(2−アクリロイルオキシエチル)−2−フェニルオキセタン等のアクリル酸エステル;
3−(メタクリロイルオキシメチル)オキセタン、3−(メタクリロイルオキシメチル)−2−メチルオキセタン、3−(メタクリロイルオキシメチル)−3−エチルオキセタン、3−(メタクリロイルオキシメチル)−2−フェニルオキセタン、3−(2−メタクリロイルオキシエチル)オキセタン、3−(2−メタクリロイルオキシエチル)−2−エチルオキセタン、3−(2−メタクリロイルオキシエチル)−3−エチルオキセタン、3−(2−メタクリロイルオキシエチル)−2−フェニルオキセタン、3−(2−メタクリロイルオキシエチル)−2,2−ジフルオロオキセタン等のメタクリル酸エステル等が挙げられる。
【0068】
アルキル基を有する構造単位を与える単量体としては、例えば
(メタ)アクリル酸鎖状アルキルエステルとして、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸sec−ブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸イソデシル、メタクリル酸n−ラウリル、メタクリル酸トリデシル、メタクリル酸n−ステアリル等が挙げられる。
メタクリル酸環状アルキルエステルとして、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸2−メチルシクロヘキシル、メタクリル酸トリシクロ[5.2.1.0
2,6]デカン−8−イル、メタクリル酸トリシクロ[5.2.1.0
2,6]デカン−8−イルオキシエチル、メタクリル酸イソボロニル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸sec−ブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸イソデシル、アクリル酸n−ラウリル、アクリル酸トリデシル、アクリル酸n−ステアリル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸−2−メチルシクロヘキシル、アクリル酸トリシクロ[5.2.1.0
2,6]デカン−8−イル、アクリル酸トリシクロ[5.2.1.0
2,6]デカン−8−イルオキシエチル、アクリル酸イソボロニル等が挙げられる。
(メタ)アタクリル酸鎖状アリールエステルとして、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ベンジル、アクリル酸フェニル、アクリル酸ベンジル等が挙げられる。
【0069】
マレイミド骨格を有する構造単位を与える単量体としては、例えば
マレイミド化合物として、N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−ベンジルマレイミド、N−(4−ヒドロキシフェニル)マレイミド、N−(4−ヒドロキシベンジル)マレイミド、N−スクシンイミジル−3−マレイミドベンゾエート、N−スクシンイミジル−4−マレイミドブチレート、N−スクシンイミジル−6−マレイミドカプロエート、N−スクシンイミジル−3−マレイミドプロピオネート、N−(9−アクリジニル)マレイミド等が挙げられる。
【0070】
テトラヒドロフラン骨格を含有する構造単位を与える単量体としては、例えばメタクリル酸テトラヒドロフルフリル、2−メタクリロイルオキシ−プロピオン酸テトラヒドロフルフリルエステル、3−(メタ)アクリロイルオキシテトラヒドロフラン−2−オン等が挙げられる。
【0071】
これらの単量体化合物のうち、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸n−ラウリル、メタクリル酸トリシクロ[5.2.1.0
2,6]デカン−8−イル、アクリル酸2−メチルシクロヘキシル、N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、メタクリル酸テトラヒドロフルフリルが、共重合反応性及びアルカリ水溶液に対する溶解性の点から好ましい。なお、これらの化合物は、単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。
【0072】
[B1]重合体におけるその他の不飽和単量体由来の構造単位の含有率としては、10mol%〜80mol%が好ましい。
【0073】
([B1]重合体の合成方法)
[B1]重合体は、例えばカルボキシル基を有する(a1)構造単位を与える単量体と必要に応じて他の構造単位を与える単量体とを、溶媒中で重合開始剤の存在下、重合させ、カルボキシル基を有する重合体を合成する。上記重合体溶液に、(a2)構造単位を与えるエポキシ基を含む重合性化合物等を投入し、必要に応じて適当な触媒の存在下、好ましくは重合禁止剤を含む溶液中で、加温下で所定時間攪拌する。上記触媒としては、例えば、テトラブチルアンモニウムブロミド等が挙げられる。上記重合禁止剤としては、例えば、p−メトキシフェノール等が挙げられる。反応温度は、70℃〜100℃が好ましい。反応時間は、8時間〜12時間が好ましい。
【0074】
これらのうち、[B]重合性化合物としては、[B1]重合体、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートとの混合物、コハク酸変性ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリペンタエリスリトールオクタアクリレートとトリペンタエリスリトールヘプタアクリレートとの混合物、であることが好ましい。[B]重合性化合物を上記特定化合物とすることで、当該硬化性樹脂組成物の感度及び形成される表示素子用硬化膜の耐熱性等を高いレベルで両立することができる。
【0075】
[B]重合性化合物は、単独又は2種以上を混合して使用できる。当該硬化性樹脂組成物における[B]重合性化合物の含有量としては、[A]アルカリ可溶性樹脂100質量部に対して、10質量部〜700質量部が好ましく、20質量部〜600質量部がより好ましい。[B]重合性化合物の含有量を上記特定範囲とすることで、当該硬化性樹脂組成物は低露光量においても十分な耐熱性、耐溶媒性、電圧保持率を有する表示素子用硬化膜を形成できる。
【0076】
<[C]化合物>
[C]化合物は、上記式(1)で表される化合物である。[C]化合物は、熱によって酸を発生する構造及び光によってラジカルを発生する構造を有する化合物であるため、当該硬化性樹脂組成物は、熱によっても光によっても硬化させることが可能である。これにより、当該硬化性樹脂組成物は、露光工程においてラジカル重合させた後、加熱工程により発生した酸が[A]アルカリ可溶性樹脂の硬化促進剤として機能し、さらに硬化を促進させることができる。上記酸を発生させるための加熱工程は、従来の組成物に対する硬化のための露光後加熱工程におけるような230℃以上の高温加熱を必要としない低温加熱工程であるため、省エネルギーの観点からも好ましい。
【0077】
上記式(1)中、R
1は、熱によって酸を発生する構造を有する基である。R
2は、光によってラジカルを発生する構造を有する基である。R
3及びR
4は、それぞれ独立して、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数4〜20の脂環式炭化水素基又はフェニル基である。a及びbは、それぞれ独立して、1〜5の整数である。c及びdは、それぞれ独立して、0〜4の整数である。Xは、酸素原子、硫黄原子又はセレン原子である。
【0078】
上記R
1で表される熱によって酸を発生する構造を有する基としては、光によっては開裂せず、加熱によって加水分解して酸を発生する基であれば特に限定されることはないが、上記式(2)で表される基を含むことが好ましい。
【0079】
上記式(2)中、R
5は、水素原子、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜6のフルオロアルキル基、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、アントリル基又はシクロへキシル基である。但し、上記R
5のアルキル基の有する水素原子の1つが水酸基で置換されていてもよい。R
6は、炭素数1〜12のアルカンジイル基である。R
7は、−O−、−S−、−NR
8−、−NR
8CO−、−SO
2−、−CS−、−OCO−又は−COO−である。R
8は、水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基である。
【0080】
R
5で表される炭素数1〜12のアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、へキシル基、オクチル基等が挙げられる。これらのうち、メチル基及びエチル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
【0081】
R
5で表される炭素数1〜6のフルオロアルキル基としては、例えばトリフルオロメチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、パーフルオロエチル基等が挙げられる。これらのうち、トリフルオロメチル基が好ましい。
【0082】
R
5としては、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜6のフルオロアルキル基及びフェニル基が好ましく、メチル基、エチル基、トリフルオロメチル基及びフェニル基が縒り好ましく、メチル基がさらに好ましい。
【0083】
R
6で表される炭素数1〜12のアルカンジイル基としては、例えばメチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、プロピレン基、ヘキシレン基等が挙げられる。これらのうち、メチレン基及びエチレン基が好ましく、メチレン基がより好ましい。
【0084】
R
8で表される炭素数1〜6のアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等が挙げられる。
【0086】
R
7としては、−O−、−S−、−SO
2−、−NHCO−、−SO
2−、−OCO−及び−COO−が好ましく、−O−がより好ましい。
【0087】
上記R
2で表される光によってラジカルを発生する構造を有する基としては、熱によって加水分解を起こすことはなく、表示素子用硬化膜形成における露光工程等のような光照射によりラジカルを発生する基であれば特に限定されることはないが、上記式(3)で表される基を含むことが好ましい。上記式(3)で表される基は、オキシムエステル構造を有しているため、光照射によりアルキルラジカルを発生し易い。
【0088】
上記式(3)中、R
9は、水素原子、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜6のフルオロアルキル基、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、アントリル基又はシクロへキシル基である。但し、上記R
9のアルキル基の有する水素原子の1つが水酸基で置換されていてもよい。R
10は、2価の有機基である。R
11は、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のアルコキシ基、シアノ基、ベンジル基、フェネチル基、炭素数4〜20の脂環式炭化水素基又はフェニル基である。但し、上記R
11のフェニル基が有する水素原子の一部又は全部は、炭素数1〜12のアルキル基又は炭素数1〜12のアルコキシ基で置換されていてもよい。
【0089】
R
9で表される炭素数1〜12のアルキル基及び炭素数1〜6のフルオロアルキル基としては、R
5で表される炭素数1〜12のアルキル基及び炭素数1〜6のフルオロアルキル基として例示した基と同様の基が挙げられる。
【0090】
R
9としては、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜6のフルオロアルキル基及びフェニル基が好ましく、メチル基、エチル基、トリフルオロメチル基及びフェニル基がより好ましく、メチル基がさらに好ましい。
【0091】
R
10で表される2価の有機基としては、例えば−CO−、−O−、−S−、−NR
8−、−NR
8CO−、−SO
2−、−CS−、−OCO−、−COO−等が挙げられる。これらのうち、−CO−が好ましい。
【0092】
R
11で表される炭素数1〜12のアルキル基としては、上記R
9で表される炭素数1〜12のアルキル基として例示した基と同様の基が挙げられる。これらのうち、メチル基、エチル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
【0093】
R
11で表される炭素数1〜12のアルコキシ基としては、例えばメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペントキシ基、へキシルオキシ基、オクチルオキシ基等が挙げられる。
【0094】
R
11で表される炭素数4〜20の脂環式炭化水素基としては、例えばシクロブチル基、シクロペンチル基、シクロへキシル基、シクロオクチル基、ノルボルニル基、アダマンチル基等が挙げられる。
【0095】
上記R
11のフェニル基が有する水素原子の一部又は全部が置換されてもよい炭素数1〜12のアルキル基及び炭素数1〜12のアルコキシ基としては、R
11で表されるこれらの基として例示した基と同様の基が挙げられる。
【0096】
R
11としては、炭素数1〜12のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基がより好ましく、メチル基がさらに好ましい。
【0097】
上記a及びbとしては、合成が容易であるという観点から1〜3が好ましく、1がより好ましい。上記c及びdとしては、同様に合成が容易であるという観点から、0〜2が好ましく、0がより好ましい。
【0098】
上記Xとしては、硫黄原子が好ましい。
【0099】
[C]化合物としては、上記式(2)におけるR
5と式(3)におけるR
9とが同一の基であることが好ましい。これらの基が同一であると、[C]化合物の合成において、アセチル化工程を1工程とすることができ、分離精製の手間がなく、安価に製造することができる。上記同一の基としては、メチル基、エチル基、トリフルオロメチル基、フェニル基が好ましく、メチル基がより好ましい。また、[C]化合物としては、当該硬化性樹脂組成物の硬化促進効果に優れ、また、合成が容易であるという観点から、上記式(1)におけるa及びbが1、c及びdが0、式(2)におけるR
5がメチル基、R
6がエチレン基、R
7が−O−、式(3)におけるR
9及びR
11がメチル基、R
10がカルボニル基である化合物であることがさらに好ましい。
【0100】
[C]化合物としては、下記式で表される化合物等が挙げられる。
【0103】
上記式で表される化合物のうち、式(C−1)〜(C−3)で表される化合物が好ましく、(C−1)で表される化合物がより好ましい。
【0104】
上記式(C−1)で表される化合物(以下、「(C−1)化合物」ともいう)を例に取って、当該硬化性樹脂組成物における[C]化合物の機能を具体的に説明する。
【0106】
(C−1)化合物は、オキシムエステル結合のアセチル基(上記1)とエステル結合のアセチル基(上記2)の2つを1分子中に有している。この化合物は、下記式のように露光により、上記1のオキシムエステルのアセチル基が分解し、メチルラジカルを発生する。このラジカルがアクリル基等のラジカル架橋反応に寄与し、当該硬化性樹脂組成物の硬化を促進する。
【0108】
この化合物はさらに、ラジカル発生後、上記2の部分が加熱により加水分解され、酢酸を発生する。この酢酸が樹脂中のエポキシ基の架橋反応の硬化促進剤として機能すると考えられる。このように、(C−1)化合物は、ラジカル発生能及びエポキシの硬化促進能を有する新しいタイプの重合開始剤といえる。
【0109】
<[C]化合物の合成方法>
本発明における[C]化合物は、従来公知の方法に従って合成することができるが、例えば以下のようにして合成することができる。
【0110】
N,N−ジメチルホルムアミドに4−メルカプトフェノールを溶解させ、ここに炭酸カリウム、4−エタノイルフルオロベンゼンを加え、窒素雰囲気下40℃〜100℃で2時間〜10時間加熱攪拌して塩を得る。これをN,N−ジメチルホルムアミドに溶解し、炭酸カリウム、2−ブロロエタノールを加え、窒素雰囲気下40℃〜100℃で2時間〜10時間加熱攪拌し、有機溶媒による抽出等を行い、粗生成物を得る。この粗生成物と濃塩酸とをN,N−ジメチルホルムアミドに溶解し、亜硝酸イソブチルを加え、室温で2時間〜10時間攪拌し、[C]化合物の前駆体化合物を得ることができる。この前駆体化合物のトルエン溶液にトリエチルアミンを加え、塩化アセチル等を滴下することで[C]化合物を得ることができる。
【0111】
[C]化合物の含有量としては、[A]アルカリ可溶性樹脂100質量部に対して、0.1質量部〜15質量部が好ましく、1質量部〜10質量部がより好ましい。[C]化合物の含有量を上記特定範囲とすることで、当該硬化性樹脂組成物の感度及び得られる表示素子用硬化膜の透過率等をより向上することできる。
【0112】
<[C’]光重合開始剤>
当該硬化性樹脂組成物は、[C]化合物に加えて、[C’]光重合開始剤を1種又は2種以上含有してもよい。
【0113】
[C’]光重合開始剤としては、例えばチオキサントン系化合物、アセトフェノン系化合物、ビイミダゾール系化合物、トリアジン系化合物、O−アシルオキシム系化合物、オニウム塩系化合物、ベンゾイン系化合物、ベンゾフェノン系化合物、α−ジケトン系化合物、多核キノン系化合物、ジアゾ系化合物、イミドスルホナート系化合物等が挙げられる。これらのうち、[C’]光重合開始剤としては、チオキサントン系化合物、アセトフェノン系化合物、ビイミダゾール系化合物、トリアジン系化合物及びO−アシルオキシム系化合物からなる群より選択される少なくとも1種を含有することが好ましい。
【0114】
チオキサントン系化合物としては、例えばチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−メチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、4−イソプロピルチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン等が挙げられる。
【0115】
アセトフェノン系化合物としては、例えば2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)ブタン−1−オン、2−(4−メチルベンジル)−2−(ジメチルアミノ)−1−(4−モルフォリノフェニル)ブタン−1−オン等が挙げられる。
【0116】
ビイミダゾール系化合物としては、例えば2,2’−ビス(2−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニル−1,2’−ビイミダゾール、2,2’−ビス(2,4−ジクロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニル−1,2’−ビイミダゾール、2,2’−ビス(2,4,6−トリクロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニル−1,2’−ビイミダゾール等が挙げられる。なお、光重合開始剤としてビイミダゾール系化合物を用いる場合、水素供与体を併用することが、感度を改良することができる点で好ましい。水素供与体とは、露光によりビイミダゾール系化合物から発生したラジカルに対して、水素原子を供与することができる化合物を意味する。水素供与体としては、例えば2−メルカプトベンゾチアゾール、2−メルカプトベンゾオキサゾール等のメルカプタン系水素供与体;4,4’−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン等のアミン系水素供与体が挙げられる。本発明において、水素供与体は、単独又は2種以上を混合して使用することができるが、1種以上のメルカプタン系水素供与体と1種以上のアミン系水素供与体とを組み合わせて使用することが、より感度を改良することができる点で好ましい。
【0117】
トリアジン系化合物としては、例えば2,4,6−トリス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−メチル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−〔2−(5−メチルフラン−2−イル)エテニル〕−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−〔2−(フラン−2−イル)エテニル〕−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−〔2−(4−ジエチルアミノ−2−メチルフェニル)エテニル〕−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−〔2−(3,4−ジメトキシフェニル)エテニル〕−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4−メトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4−エトキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4−n−ブトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン等が挙げられる。
【0118】
O−アシルオキシム系化合物としては、例えば1,2−オクタンジオン、1−[4−(フェニルチオ)フェニル]−2−(O−ベンゾイルオキシム)、エタノン−1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−1−(O−アセチルオキシム)、エタノン−1−[9−エチル−6−(2−メチル−4−テトラヒドロフラニルメトキシベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−1−(O−アセチルオキシム)、エタノン−1−[9−エチル−6−{2−メチル−4−(2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラニル)メトキシベンゾイル}−9H−カルバゾール−3−イル]−1−(O−アセチルオキシム)等が挙げられる。
【0119】
[C’]光重合開始剤の含有量としては、[A]アルカリ可溶性樹脂100質量部に対して、0.01質量部〜60質量部が好ましく、1質量部〜55質量部がより好ましい。[C’]光重合開始剤の含有量を上記特定範囲とすることで、露光による硬化が十分に得られ、基板との密着性を適切に確保できる。
【0120】
<[D]ラジカル捕捉剤>
当該硬化性樹脂組成物において、ラジカル又は過酸化物による化合物の結合の解裂を防止するために、[D]ラジカル捕捉剤を含有する。このような化合物として、ヒンダードフェノール構造を有する化合物及びヒンダードアミン構造を有する化合物等のラジカル捕捉剤、及びアルキルホスファイト構造を有する化合物及びチオエーテル構造を有する化合物等の過酸化物分解剤等が挙げられる。
【0121】
当該硬化性樹脂組成物は、上記[D]ラジカル捕捉剤を含有することにより、露光時又は加熱時に発生したラジカルの捕捉、酸化によって生成した過酸化物の分解等が可能となるため、重合体分子の結合の解裂を防止することができる。その結果、当該硬化性樹脂組成物から得られる層間絶縁膜等の表示素子用硬化膜は、優れた耐光性及び耐熱性を発揮することができる。また、当該硬化性樹脂組成物は、[D]ラジカル捕捉剤として上記特定構造を有するラジカル捕捉剤又は過酸化物分解剤を用いているため、これらを添加しても、当該組成物の放射線感度を高いレベルに保ちつつ、当該組成物から得られる硬化膜の透過率及び電圧保持率の低下を防ぐことができる。
【0122】
上記ヒンダードフェノール構造を有する化合物としては、例えばペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、チオジエチレンビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、トリス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−イソシアヌレイト、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、N,N’−ヘキサン−1,6−ジイルビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオンアミド)、3,3’,3’,5’,5’−ヘキサ−tert−ブチル−a,a’,a’−(メシチレン−2,4,6−トリイル)トリ−p−クレゾール、4,6−ビス(オクチルチオメチル)−o−クレゾール、4,6−ビス(ドデシルチオメチル)−o−クレゾール、エチレンビス(オキシエチレン)ビス[3−(5−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−m−トリル)プロピオネート、ヘキサメチレンビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,3,5−トリス[(4−tert−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−キシリン)メチル]−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン、2,6−ジ−tert−ブチル−4−(4,6−ビス(オクチルチオ)−1,3,5−トリアジン−2−イルアミン)フェノール、2,5−ジ−tert−ブチルヒドロキノン、2,6−ジ−tert−ブチルヒドロキノン、2−tert−ブチルヒドロキノン、2,5−ジ−tert−ブチルフェノール、2,6−ジ−tert−ブチルフェノール、2−tert−ブチルフェノール
等が挙げられる。
【0123】
上記ヒンダードフェノール構造を有する化合物としては、市販されているものとして、例えばアデカスタブAO−20、アデカスタブAO−30、アデカスタブAO−40、アデカスタブAO−50、アデカスタブAO−60、アデカスタブAO−70、アデカスタブAO−80、アデカスタブAO−330(以上、ADEKA社製)、sumilizerGM、sumilizerGS、sumilizerMDP−S、sumilizerBBM−S、sumilizerWX−R、sumilizerGA−80(以上、住友化学社製)、IRGANOX1010、IRGANOX1035、IRGANOX1076、IRGANOX1098、IRGANOX1135、IRGANOX1330、IRGANOX1726、IRGANOX1425WL、IRGANOX1520L、IRGANOX245、IRGANOX259、IRGANOX3114、IRGANOX565、IRGAMOD295(以上、チバジャパン社製)、ヨシノックスBHT、ヨシノックスBB、ヨシノックス2246G、ヨシノックス425、ヨシノックス250、ヨシノックス930、ヨシノックスSS、ヨシノックスTT、ヨシノックス917、ヨシノックス314(以上、エーピーアイコーポレーション社製)等が挙げられる。
【0124】
上記ヒンダードアミン構造を有する化合物としては、例えばビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)スクシネート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(N−オクトキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(N−ベンジルオキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(N−シクロヘキシルオキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)2−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2−ブチルマロネート、ビス(1−アクロイル−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)2,2−ビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2−ブチルマロネート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)デカンジオエート、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルメタクリレート、4−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]−1−[2−(3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ)エチル]−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、2−メチル−2−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)アミノ−N−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)プロピオンアミド、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、テトラキス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート等の化合物;
【0125】
N,N’,N’’,N’’’−テトラキス−[4,6−ビス−〔ブチル−(N−メチル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)アミノ〕−トリアジン−2−イル]−4,7−ジアザデカン−1,10−ジアミン、ジブチルアミンと1,3,5−トリアジン・N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−1,6−ヘキサメチレンジアミンとN−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ブチルアミンとの重縮合物、ジブチルアミンと1,3,5−トリアジンとN,N′−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ブチルアミンとの重縮合物、ポリ〔{(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル}{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}〕、1,6−ヘキサンジアミン−N,N′−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)とモルフォリン−2,4,6−トリクロロ−1,3,5−トリアジンとの重縮合物、ポリ[(6−モルフォリノ−s−トリアジン−2,4−ジイル)〔(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ〕−ヘキサメチレン〔(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ〕]等の、ピペリジン環がトリアジン骨格を介して複数結合した高分子量HALS;コハク酸ジメチルと4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジンエタノールとの重合物、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸と1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジノールと3,9−ビス(2−ヒドロキシ−1,1−ジメチルエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカンとの混合エステル化物等の、ピペリジン環がエステル結合を介して結合した化合物等の重合体タイプが挙げられる。
【0126】
上記ヒンダードアミン構造を有する化合物としては、市販されているものとして、例えばアデカスタブLA−52、アデカスタブLA57、アデカスタブLA−62、アデカスタブLA−67、アデカスタブLA−63P、アデカスタブLA−68LD、アデカスタブLA−77、アデカスタブLA−82、アデカスタブLA−87(以上、ADEKA社製)、sumilizer9A(住友化学社製)、CHIMASSORB119FL、CHIMASSORB2020FDL、CHIMASSORB944FDL、TINUVIN622LD、TINUVIN144、TINUVIN765、TINUVIN770DF(以上、チバジャパン社製)等が挙げられる。
【0127】
アルキルホスファイト構造を有する化合物としては、例えばトリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(p−tert―オクチルフェニル)ホスファイト、トリス〔2,4,6−トリス(α−フェニルエチル)〕ホスファイト、トリス(p−2−ブテニルフェニル)ホスファイト、ビス(p−ノニルフェニル)シクロヘキシルホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、ジ(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリストールジホスファイト、2,2´−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチル−1−フェニルオキシ)(2−エチルヘキシルオキシ)ホスホラス、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、4,4′−イソプロピリデ−ジフェノールアルキルホスファイト、テトラトリデシル−4,4′−ブチリデン−ビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)ジホスファイト、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,4′−ビフェニレンホスファイト、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル・フェニル・ペンタエリスリトールジホスファイト、2,6−tert−ブチル−4−メチルフェニル・フェニル・ペンタエリスリトールジホスファイト、2,6−ジ−tert−ブチル−4−エチルフェニル・ステアリル・ペンタエリスリトールジホスファイト、ジ(2,6−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、2,6−ジ−tert−アミル−4−メチルフェニル・フェニル・ペンタエリスリトールジホスファイト等が挙げられる。
【0128】
アルキルホスファイトとして構造を有する化合物としては、市販されているものとして、例えばアデカスタブPEP−4C、アデカスタブPEP−8、アデカスタブPEP−8W、アデカスタブPEP−24G、アデカスタブPEP−36、アデカスタブHP−10、アデカスタブ2112、アデカスタブ260、アデカスタブ522A、アデカスタブ1178、アデカスタブ1500、アデカスタブC、アデカスタブ135A、アデカスタブ3010、アデカスタブTPP(以上、ADEKA社製)、IRGAFOS168(チバジャパン社製)等が挙げられる。
【0129】
チオエーテル構造を有する化合物としては、例えばジラウリルチオジプロピオネート、ジトリデシルチオジプロピオネート、ジミリスチルチオジプロピオネート、ジステアリルチオジプロピオネート、ペンタエリスリトールテトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−オクタデシルチオプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−ミリスチルチオプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−ステアリルチオプロピオネート)等が挙げられる
【0130】
チオエーテル構造を有する化合物としては、市販されているものとして、例えばアデカスタブAO−412S、アデカスタブAO−503(以上、ADEKA社製)、sumilizerTPL−R、sumilizerTPM、sumilizerTPS、sumilizerTP−D、sumilizerMB(以上、住友化学社製)、IRGANOXPS800FD、IRGANOXPS802FD(以上、チバジャパン社製)、DLTP、DSTP、DMTP、DTTP(以上、エーピーアイコーポレーション社製)等が挙げられる。
【0131】
なお、これらの化合物は、単独で又は2種以上を混合して使用することができる。
【0132】
本発明の硬化性樹脂組成物において、[D]ラジカル捕捉剤の含有量は、[A]重合体100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上10質量部以下であり、より好ましくは0.5質量部以上5質量部以下であり、さらに好ましくは1.5質量部以上3質量部以下である。[A]重合体100質量部に対する[D]ラジカル捕捉剤の含有量が上記範囲内にあることによって、当該硬化性樹脂組成物の放射線感度を保ちつつ、当該硬化性樹脂組成物から得られた硬化膜等の透過率、電圧保持率、耐光性及び耐熱性をさらに向上することができる。
【0133】
<[E]着色剤>
当該硬化性樹脂組成物は、[E]着色剤をさらに含有することが好ましい。当該硬化性樹脂組成物が、[E]着色剤をさらに含有することで、例えばカラーフィルタ用着色パターン等としての表示素子用硬化膜を形成することができる。
【0134】
[E]着色剤としては着色性を有すれば特に限定されるものではなく、カラーフィルタの用途に応じて色彩や材質を適宜選択することができる。着色剤としては、例えば顔料、染料及び天然色素のいずれをも使用できるが、カラーフィルタには高い色純度、輝度、コントラスト等が求められることから、顔料、染料が好ましい。本発明において着色剤は、単独又は2種以上を混合して使用することができる。
【0135】
顔料としては、有機顔料、無機顔料のいずれでもよく、有機顔料としては、例えばカラーインデックス(C.I.;The Society of Dyers and Colourists 社発行)においてピグメントに分類されている化合物が挙げられる。具体的には、下記のようなカラーインデックス(C.I.)名が付されているものが挙げられる。
【0136】
C.I.ピグメントイエロー12、同13、同14、同17、同20、同24、同31、同55、同83、同93、同109、同110、同138、同139、同150、同153、同154、同155、同166、同168、同180、同211;
C.I.ピグメントオレンジ5、同13、同14、同24、同34、同36、同38、同40、同43、同46、同49、同61、同64、同68、同70、同71、同72、同73、同74;
C.I.ピグメントレッド1、同2、同5、同17、同31、同32、同41、同122、同123、同144、同149、同166、同168、同170、同171、同175、同176、同177、同178、同179、同180、同185、同187、同202、同206、同207、同209、同214、同220、同221、同224、同242、同243、同254、同255、同262、同264、同272;
C.I.ピグメントバイオレット1、同19、同23、同29、同32、同36、同38;
C.I.ピグメントブルー15、同15:3、同15:4、同15:6、同60、同80;
C.I.ピグメントグリーン7、同36、同58;
C.I.ピグメントブラウン23、同25;
C.I.ピグメントブラック1、同7等が挙げられる。
【0137】
また、上記無機顔料としては、例えば酸化チタン、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、亜鉛華、硫酸鉛、黄色鉛、亜鉛黄、べんがら(赤色酸化鉄(III))、カドミウム赤、群青、紺青、酸化クロム緑、コバルト緑、アンバー、チタンブラック、合成鉄黒、カーボンブラック等が挙げられる。
【0138】
本発明においては、顔料を再結晶法、再沈殿法、溶剤洗浄法、昇華法、真空加熱法又はこれらの組み合わせにより精製して使用することもできる。また、顔料は所望により、その粒子表面を樹脂で改質して使用してもよい。顔料の粒子表面を改質する樹脂としては、例えば、特開2001−108817号公報に記載のビヒクル樹脂、又は市販の各種の顔料分散用の樹脂等が挙げられる。カーボンブラック表面の樹脂被覆方法としては、例えば、特開平9−71733号公報、特開平9−95625号公報、特開平9−124969号公報等に記載の方法を採用することができる。また、有機顔料は、いわゆるソルトミリングにより、一次粒子を微細化して使用することが好ましい。ソルトミリングの方法としては、例えば特開平08−179111号公報に開示されている方法等が挙げられる。
【0139】
染料としては有機溶媒に可溶である限り公知の染料を使用でき、例えば油溶性染料、アシッド染料又はその誘導体、ダイレクト染料、モーダント染料等が挙げられる。具体的には、下記のようなカラーインデックス(C.I.)名が付されているものが挙げられる。
【0140】
C.I.ソルベントイエロー4、同14、同15、同23、同24、同38、同62、同63、同68、同82、同88、同94、同98、同99、同162、同179;
C.I.ソルベントレッド45、同49、同125、同130;
C.I.ソルベントオレンジ2、同7、同11、同15、同26、同56;
C.I.ソルベントブルー35、同37、同59、同67;
C.I.アシッドイエロー1、同3、同7、同9、同11、同17、同23、同25、同29、同34、同36、同38、同40、同42、同54、同65、同72、同73、同76;
C.I.アシッドレッド91、同92、同97、同114、同138、同151;
C.I.アシッドオレンジ51、同63;
C.I.アシッドブルー80、同83、同90;
C.I.アシッドグリーン9、同16、同25、同27等が挙げられる。
【0141】
[E]着色剤として染料を使用することにより、顔料単独では達成することができない高輝度化や高コントラスト化が可能となる。しかしながら、従来の感放射線性樹脂組成物に[E]着色剤として染料を使用すると、アルカリ現像性、画素の耐熱性、耐溶剤性等が著しく悪化する場合がある。当該感放射線性樹脂組成物によれば、[E]着色剤として染料を使用した場合であっても、アルカリ現像性の良好な感放射線性樹脂組成物を得ることができる。
【0142】
[E]着色剤の含有量としては、輝度が高く色純度に優れる画素、又は遮光性に優れるブラックマトリックスを形成する点から、当該硬化性樹脂組成物の固形分中に通常5質量%〜70質量%であり、好ましくは5質量%〜60質量%である。
【0143】
<その他の任意成分>
当該硬化性樹脂組成物は、[A]アルカリ可溶性樹脂、[B]重合性化合物、[C]化合物、[D]ラジカル捕捉剤、[E]着色剤以外に、本発明の効果を損なわない範囲で必要に応じて接着助剤、界面活性剤、エポキシ化合物、保存安定剤等のその他の任意成分を含有してもよい。これらのその他の任意成分は、単独で使用してもよいし2種以上を混合して使用してもよい。以下、各成分を詳述する。
【0144】
[接着助剤]
接着助剤は、得られる硬化膜と基板との接着性を向上させるために使用できる。接着助剤としては、カルボキシル基、メタクリロイル基、ビニル基、イソシアネート基、オキシラニル基等の反応性官能基を有する官能性シランカップリング剤が好ましく、例えばトリメトキシシリル安息香酸、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、γ−イソシアナートプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0145】
接着助剤の含有量としては、[A]アルカリ可溶性樹脂100質量部に対して、20質量部以下が好ましく、15質量部以下がより好ましい。接着助剤の含有量が20質量部を超えると現像残りを生じやすくなる傾向がある。
【0146】
[界面活性剤]
界面活性剤は、当該硬化性樹脂組成物の塗膜形成性をより向上させるために使用できる。界面活性剤としては、例えばフッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤等が挙げられる。
【0147】
フッ素系界面活性剤としては、末端、主鎖及び側鎖の少なくともいずれかの部位にフルオロアルキル基及び/又はフルオロアルキレン基を有する化合物が好ましい。フッ素系界面活性剤の市販品としては、例えばフタージェントFT−100、同−110、同−140A、同−150、同−250、同−251、同−300、同−310、同−400S、フタージェントFTX−218、同−251(以上、ネオス社)等が挙げられる。
【0148】
シリコーン系界面活性剤の市販品としては、例えばトーレシリコーンDC3PA、同DC7PA、同SH11PA、同SH21PA、同SH28PA、同SH29PA、同SH30PA、同SH−190、同SH−193、同SZ−6032、同SF−8428、同DC−57、同DC−190、SH 8400 FLUID)(以上、東レ・ダウコーニング・シリコーン社)等が挙げられる。
【0149】
界面活性剤の含有量としては、[A]アルカリ可溶性樹脂100質量部に対して、1.0質量部以下が好ましく、0.7質量部以下がより好ましい。[F]界面活性剤の含有量が1.0質量部を超えると、膜ムラを生じやすくなる。
【0150】
[保存安定剤]
保存安定剤としては、例えば硫黄、キノン類、ヒドロキノン類、ポリオキシ化合物、アミン、ニトロニトロソ化合物等が挙げられ、より具体的には、4−メトキシフェノール、N−ニトロソ−N−フェニルヒドロキシルアミンアルミニウム等が挙げられる。
【0151】
保存安定剤の含有量としては、[A]アルカリ可溶性樹脂100質量部に対して、3.0質量部以下が好ましく、1.0質量部以下がより好ましい。保存安定剤の含有量が3.0質量部を超えると、当該硬化性樹脂組成物の感度が低下してパターン形状が劣化する場合がある。
【0152】
<硬化性樹脂組成物の調製方法>
当該硬化性樹脂組成物は、[A]アルカリ可溶性樹脂、[B]重合性化合物及び[C]化合物の必須成分、[D]ラジカル捕捉剤、[E]着色剤等の好適成分に加え、必要に応じてその他の任意成分を所定の割合で混合することにより調製される。当該効果性樹脂組成物は、好ましくは適当な溶媒に溶解されて溶液状態で用いられる。
【0153】
当該硬化性樹脂組成物の調製に用いられる溶媒としては、[A]アルカリ可溶性樹脂、[B]重合性化合物、[C]化合物、[D]ラジカル捕捉剤、[E]着色剤及びその他の任意成分を均一に溶解又は分散し、各成分と反応しないものが用いられる。
【0154】
溶媒としては、各成分の溶解性、各成分との反応性、塗膜形成の容易性等の観点から例えば
エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノエチルエーテル等の(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテル類;
酢酸エチレングリコールモノメチルエーテル、酢酸エチレングリコールモノエチルエーテル、酢酸エチレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、酢酸エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノメチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノエチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノメチルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノエチルエーテル、酢酸3−メトキシブチル、酢酸3−メチル−3−メトキシブチル等の酢酸(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテル類;
ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等の他のエーテル類;
メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、2−ヘプタノン、3−ヘプタノン、ジアセトンアルコール(4−ヒドロキシ−4−メチルペンタン−2−オン)、4−ヒドロキシ−4−メチルヘキサン−2−オン等のケトン類;
プロピレングリコールジアセテート、1,3−ブチレングリコールジアセテート、1,6−ヘキサンジオールジアセテート等のジアセテート類;
乳酸メチル、乳酸エチル等の乳酸アルキルエステル類;
酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸i−プロピル、酢酸n−ブチル、酢酸i−ブチル、ぎ酸n−ペンチル、酢酸i−ペンチル、3−メトキシブチルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート、プロピオン酸n−ブチル、3−メトキシブチルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルプロピオネート、酪酸エチル、酪酸n−プロピル、酪酸i−プロピル、酪酸n−ブチル、ヒドロキシ酢酸エチル、エトキシ酢酸エチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、ピルビン酸n−プロピル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、2−ヒドロキシ−3−メチル酪酸メチル、2−オキソ酪酸エチル等の他のエステル類;
トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;
N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド類等が挙げられる。
【0155】
これらの溶媒のうち、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、酢酸エチレングリコールモノメチルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノメチルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノエチルエーテル、酢酸3−メトキシブチル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、シクロヘキサノン、2−ヘプタノン、3−ヘプタノン、1,3−ブチレングリコールジアセテート、1,6−ヘキサンジオールジアセテート、乳酸エチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、3−メチル−3−メトキシブチルプロピオネート、酢酸n−ブチル、酢酸i−ブチル、ぎ酸n−アミル、酢酸i−アミル、プロピオン酸n−ブチル、酪酸エチル、酪酸i−プロピル、酪酸n−ブチル、ピルビン酸エチルが好ましい。溶媒は単独又は2種以上を混合して使用できる。
【0156】
さらに、上記溶媒とともに膜厚の面内均一性を高めるため、高沸点溶媒を併用できる。高沸点溶媒としては、例えばベンジルエチルエーテル、ジ−n−ヘキシルエーテル、アセトニルアセトン、イソホロン、カプロン酸、カプリル酸、1−オクタノール、1−ノナノール、酢酸ベンジル、安息香酸エチル、シュウ酸ジエチル、マレイン酸ジエチル、γ−ブチロラクトン、炭酸エチレン、炭酸プロピレン、エチレングリコールモノフェニルエーテルアセテート等が挙げられる。高沸点溶媒は、単独又は2種以上を使用できる。
【0157】
溶媒の含有量としては限定されないが、得られる当該感放射線性樹脂組成物の塗布性、安定性等の観点から感放射線性樹脂組成物の溶媒を除いた各成分の合計濃度が、5質量%〜50質量%となる量が好ましく、10質量%〜40質量%となる量がより好ましい。当該感放射線性樹脂組成物を溶液状態として調製する場合、固形分濃度(組成物溶液中に占める溶媒以外の成分)は、使用目的や所望の膜厚の値等に応じて任意の濃度(例えば5質量%〜50質量%)に設定できる。さらに好ましい固形分濃度は、基板上への塗膜の形成法方により異なるが、これについては後述する。このようにして調製された組成物溶液は、孔径0.5μm程度のミリポアフィルタ等を用いて濾過した後、使用に供することができる。
【0158】
<表示素子用硬化膜の形成方法>
当該硬化性樹脂組成物は、表示素子用硬化膜の形成用として好ましい。また、本発明には当該光か性樹脂組成物から形成される表示素子用硬化膜が好適に含まれる。
【0159】
本発明の表示素子用硬化膜の形成方法は、
(1)当該硬化性樹脂組成物を用い、基板上に塗膜を形成する工程、
(2)上記塗膜の少なくとも一部に放射線を照射する工程、
(3)上記放射線が照射された塗膜を現像する工程、及び
(4)上記現像された塗膜を180℃以下の温度で加熱する工程
を有する。
【0160】
本発明の形成方法によると、低温加熱工程を用いても、圧縮性能、透過率、耐光性、電圧保持率、現像耐性、耐熱性及び耐溶媒性に優れる表示素子用硬化膜を形成できる。以下、各工程を詳述する。
【0161】
[工程(1)]
本工程では、透明基板の片面に透明導電膜を形成し、この透明導電膜の上に当該硬化性樹脂組成物の塗膜を形成する。透明基板としては、例えばソーダライムガラス、無アルカリガラス等のガラス基板、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネート、ポリイミド等のプラスチックからなる樹脂基板等が挙げられる。
【0162】
透明基板の一面に設けられる透明導電膜としては、酸化スズ(SnO
2)からなるNESA膜(米国PPG社の登録商標)、酸化インジウム−酸化スズ(In
2O
3−SnO
2)からなるITO膜等が挙げられる。
【0163】
塗布法により塗膜を形成する場合、上記透明導電膜の上に当該硬化性樹脂組成物の溶液を塗布した後、好ましくは塗布面を加熱(プレベーク)することにより、塗膜を形成することができる。塗布法に用いる当該硬化性樹脂組成物溶液の固形分濃度としては、5質量%〜50質量%が好ましく、10質量%〜40質量%がより好ましく、15質量%〜35質量%が特に好ましい。当該硬化性樹脂組成物の塗布方法としては、例えばスプレー法、ロールコート法、回転塗布法(スピンコート法)、スリット塗布法(スリットダイ塗布法)、バー塗布法、インクジェット塗布法等の適宜の方法が採用できる。これらのうち、スピンコート法又はスリット塗布法が好ましい。
【0164】
上記プレベークの条件としては、各成分の種類、配合割合等によって異なるが、70℃〜120℃が好ましく、1分〜15分間程度である。塗膜のプレベーク後の膜厚は、0.5μm〜10μmが好ましく、1.0μm〜7.0μm程度がより好ましい。
【0165】
[工程(2)]
本工程では、形成された塗膜の少なくとも一部に放射線を照射する。このとき、塗膜の一部にのみ照射する際には、例えば所定のパターンを有するフォトマスクを介して照射する方法によることができる。
【0166】
照射に使用される放射線としては、可視光線、紫外線、遠紫外線等が挙げられる。このうち波長が250nm〜550nmの範囲にある放射線が好ましく、365nmの紫外線を含む放射線がより好ましい。
【0167】
放射線照射量(露光量)は、照射される放射線の波長365nmにおける強度を照度計(OAI model 356、Optical Associates Inc.製)により測定した値として、100J/m
2〜5,000J/m
2が好ましく、200J/m
2〜3,000J/m
2がより好ましい。
【0168】
当該硬化性樹脂組成物は、従来知られている組成物と比較して感度が高く、上記放射線照射量が700J/m
2以下、さらには600J/m
2以下であっても所望の膜厚、良好な形状、優れた密着性及び高い硬度の表示素子用硬化膜を得ることがきる。
【0169】
[工程(3)]
本工程では、放射線照射後の塗膜を現像することにより、不要な部分を除去して、所定のパターンを形成する。現像に使用される現像液としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム等の無機アルカリ、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド等の4級アンモニウム塩等のアルカリ性化合物の水溶液が挙げられる。上記アルカリ性化合物の水溶液には、メタノール、エタノール等の水溶性有機溶媒及び/又は界面活性剤を適当量添加してもよい。
【0170】
現像方法としては、液盛り法、ディッピング法、シャワー法等のいずれでもよく、現像時間は、常温で10秒〜180秒間程度が好ましい。現像処理に続いて、例えば流水洗浄を30秒〜90秒間行った後、圧縮空気や圧縮窒素で風乾することによって所望のパターンが得られる。
【0171】
[工程(4)]
本工程では、得られたパターン状塗膜をホットプレート、オーブン等の適当な加熱装置により加熱することにより表示素子用硬化膜を得る。加熱温度としては、通常250℃以下であり、200℃以下が好ましく、180℃以下がより好ましく、150℃以下がさらに好ましい。当該形成方法によると、このような低温加熱工程を用いた場合でも、[C]化合物から発生する酸の作用により十分な硬化が起こるため、耐熱性、耐溶媒性等に優れた表示素子用硬化膜を形成することができる。加熱時間としては、例えばホットプレート上では5分〜30分間、オーブンでは30分〜180分間程度である。
【0172】
<表示素子の製造方法>
本発明には、当該表示素子用硬化膜を備える表示素子も好適に含まれる。表示素子の製造方法としては、まず片面に透明導電膜(電極)を有する透明基板を一対(2枚)準備し、そのうちの一枚の基板の透明導電膜上に、当該感放射線性樹脂組成物を用いて、上記した方法に従ってスペーサー若しくは保護膜又はその双方を形成する。続いて、これらの基板の透明導電膜及びスペーサー又は保護膜上に液晶配向能を有する配向膜を形成する。これら基板を、その配向膜が形成された側の面を内側にして、それぞれの配向膜の液晶配向方向が直交又は逆平行となるように一定の間隙(セルギャップ)を介して対向配置し、基板の表面(配向膜)及びスペーサーにより区画されたセルギャップ内に液晶を充填し、充填孔を封止して液晶セルを構成する。そして、液晶セルの両外表面に、偏光板を、その偏光方向が当該基板の一面に形成された配向膜の液晶配向方向と一致又は直交するように貼り合わせることにより、本発明の表示素子が得られる。
【0173】
他の方法としては、上記方法と同様にして透明導電膜と、層間絶縁膜、保護膜又はスペーサー又はその双方と、配向膜とを形成した一対の透明基板を準備する。その後一方の基板の端部に沿って、ディスペンサーを用いて紫外線硬化型シール剤を塗布し、次いで液晶ディスペンサーを用いて微小液滴状に液晶を滴下し、真空下で両基板の貼り合わせを行う。そして、上記のシール剤部に、高圧水銀ランプを用いて紫外線を照射して両基板を封止する。最後に、液晶セルの両外表面に偏光板を貼り合わせることにより、本発明の表示素子が得られる。
【0174】
上記の各方法において使用される液晶としては、例えばネマティック型液晶、スメクティック型液晶等が挙げられる。また、液晶セルの外側に使用される偏光板としては、ポリビニルアルコールを延伸配向させながら、ヨウ素を吸収させた「H膜」と呼ばれる偏光膜を酢酸セルロース保護膜で挟んだ偏光板、又はH膜そのものからなる偏光板等が挙げられる。
【実施例】
【0175】
以下、実施例に基づき本発明を詳述するが、この実施例により本発明が限定的に解釈されるものではない。
【0176】
<[A]アルカリ可溶性樹脂の合成>
[合成例1]
冷却管及び撹拌機を備えたフラスコに、2,2’−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)5質量部及びジエチレングリコールメチルエチルエーテル220質量部を仕込み、引き続き(a1)構造単位を与えるメタクリル酸12質量部、(a2)構造単位を与えるメタクリル酸グリシジル40質量部、他の構造単位を与えるスチレン20質量部及びメタクリル酸トリシクロ[5.2.1.0
2,6]デカン−8−イル28質量部を仕込み窒素置換し、緩やかに攪拌しつつ、溶液の温度を70℃に上昇し、この温度を5時間保持して重合することにより、共重合体(A−1)を含有する溶液を得た(固形分濃度=31.3%)。共重合体(A−1)は、Mw=12,000であった。
【0177】
<[B]重合性化合物の合成;式(4)の構造単位を含む重合体の合成>
[合成例2]
冷却管及び撹拌機を備えたフラスコに、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル4質量部及びジエチレングリコールメチルエチルエーテル300質量部を仕込み、引き続き(a1)構造単位を与えるメタクリル酸23質量部、他の構造単位を与えるスチレン10質量部、メタクリル酸ベンジル32質量部及びメタクリル酸メチル35質量部、並びに分子量調節剤としてのα−メチルスチレンダイマー2.7質量部を仕込み、緩やかに攪拌しつつ、溶液の温度を80℃に上昇し、この温度を4時間保持した後、100℃に上昇させ、この温度を1時間保持して重合することにより共重合体を含有する溶液を得た(固形分濃度=24.9%)。得られた共重合体のMwは、12,500であった。次いで、共重合体を含む溶液に、テトラブチルアンモニウムブロミド1.1質量部、重合禁止剤としての4−メトキシフェノール0.05質量部を加え、空気雰囲気下90℃で30分間攪拌後、メタクリル酸グリシジル16質量部を入れて90℃のまま10時間反応させることにより、共重合体(B−1)を得た(固形分濃度=29.0%)。共重合体(B−1)のMwは、14,200であった。共重合体(B−1)をヘキサンに滴下することで再沈殿精製を行い、再沈殿した樹脂固形分について、
1H−NMR分析によりメタクリル酸グリシジルの反応率((a3)構造単位の生成率)を算出した。6.1ppm付近及び5.6ppm付近にメタクリル酸グリシジルのメタクリル基に由来するピークと共重合体のメタクリル酸ベンジルの構造単位に由来する6.8ppm〜7.4ppm付近の芳香環のプロトンとの積分比の比較から、メタクリル酸グリシジルと共重合体中のカルボキシル基との反応率を算出した。結果、反応させたメタクリル酸グリシジルの96モル%が共重合体中のカルボキシル基と反応した。
【0178】
<[C]化合物の合成;C−1>
[合成例3]
(ステップ(1))
200mL三口フラスコに4−メルカプトフェノールを5.0g(39.6mmol)を量り取り、N,N−ジメチルホルムアミド30mLに溶解させた。ここに炭酸カリウム8.3g(60mmol)を加え攪拌した。次いで、4−エタノイルフルオロベンゼンを4.0g(26.2mmol)を加え、窒素雰囲気下60℃で4時間加熱攪拌した。反応液温度が室温になるまで冷却し、ここに蒸留水を加え、生成した塩を溶解させた後、反応液を分液ロートに移し、トルエン100mLで3回抽出し、この抽出液を分液ロートに集め、蒸留水100gで1回洗浄した後、有機溶媒を減圧留去し、粗生成物を得た。この粗生成物をn−ヘキサンで再結晶精製し、前駆体化合物(1)を6.4g(収率70%)得た。
【0179】
(ステップ(2))
200mL三口フラスコにステップ(1)で得られた前駆化合物(1)を4.5g(17.4mmol)量り取り、N,N−ジメチルホルムアミド30mLに溶解させた。ここに炭酸カリウム5.5g(40mmol)を加え攪拌した。次いで、2−ブロロエタール 2.49g(20mmol)を加え、窒素雰囲気下60℃で4時間加熱攪拌した。反応液温度が室温になるまで冷却し、ここに蒸留水を加え、生成した塩を溶解させた後、反応液を分液ロートに移し、トルエン100mLで3回抽出し、この抽出液を分液ロートに集め、蒸留水100gで1回洗浄した後、有機溶媒を減圧留去し、粗生成物を得た。この粗生成物をn−ヘキサンで再結晶精製を行い、前駆体化合物(2)を3.8g(収率83%)得た。
【0180】
(ステップ(3))
200mL三口フラスコにステップ(2)で得られた前駆化合物(2)を3.8g(12.6mmol)と1.3g(12.6mmol)の濃塩酸をN,N−ジメチルホルムアミド30mLに溶解させた。亜硝酸イソブチル1.93g(18.7mmol)を加え、室温で3.5時間攪拌した。攪拌後、反応液に、酢酸エチルと水を加え油水分離し、有機層を水で洗浄した。固体の析出した有機層にヘキサンを加え、ろ過した。得られた固体を減圧乾燥し、前駆体化合物(3)を3.5g(収率92%)得た。
【0181】
(ステップ(4))
温度計と滴下ロートを備えた200mL三口フラスコにステップ(3)で得られた前駆化合物(3)3.5g(10.6mmol)を量り取り、トルエン100mLを加え溶解させた。次いで、この反応液にトリエチルアミン4.0g(40mmol)を加え攪拌し、液温0℃にした。窒素雰囲気下、滴下ロートを通じて、塩化アセチル2.34(30mmol)を10分間かけ滴下した。滴下終了後、22℃で3時間攪拌した。反応液に蒸留水を加え、トルエン100mLで3回抽出し、この抽出液を分液ロートに集め、蒸留水100gで1回洗浄した後、有機溶媒を減圧留去し、粗生成物を得た。この粗生成物をメタノールで再結晶精製を行い、上記式(C−1)で表される最終生成物(C−1)を12.8g(収率96%)得た。
最終生成物(C−1)の
1H−NMR測定(ブルカー製、AVANCE500型)を行い、目的の化合物が得られていることを確認した。分析結果は以下の通りであった。
1H−NMR(溶媒:CDCl
3)
化学シフトσ:
7.64ppm(ベンゼン環上水素、2H)、
7.32ppm(ベンゼン環上水素、2H)、
7.05ppm(ベンゼン環上水素、2H)、
6.50ppm(ベンゼン環上水素、2H)、
4.53ppm(−C
H2―CH
2−O―、2H)、
4.25ppm(−CH
2―
CH2−O―、2H)、
2.10ppm(−O−C(=O)―
CH3、3H)
2.04ppm(−O−C(=O)―
CH3、3H)
1.88ppm(−C(=N)―
CH3、3H)
【0182】
[合成例4]
ステップ(4)において塩化アセチルの代わりに塩化ベンゾイルを用いた以外は合成例3と同様に操作して、上記式(C−2)で表される化合物(C−2)を得た。
【0183】
[合成例5]
ステップ(5)において塩化アセチルの代わりに無水トリフルオロ酢酸を用いた以外は合成例3と同様に操作して、上記式(C−3)で表される化合物(C−3)を得た。
【0184】
<硬化性樹脂組成物の調製>
実施例及び比較例で用いた各成分の詳細を以下に示す。
【0185】
<[B]重合性化合物>
(B−1):合成例2で合成した化合物(上記式(4)で表される構造単位を含む共重合体)
(B−2):ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートとの混合物(KAYARAD DPHA、日本化薬社)
(B−3):コハク酸変性ペンタエリスリトールトリアクリレート(アロニックスTO−756、東亞合成社)
(B−4):トリメチロールプロパントリアクリレート
(B−5):ビスコート802(トリペンタエリスリトールオクタアクリレートとトリペンタエリスリトールヘプタアクリレートとの混合物、大阪有機化学工業社)
【0186】
<[C]化合物>
上記式(C−1)〜(C−3)で表される化合物
【0187】
<[C’]光重合開始剤>
(C’−1):2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン(イルガキュア907、チバ・スペシャルティー・ケミカルズ社)
(C’−2):エタノン−1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−1−(O−アセチルオキシム)(イルガキュアOXE02、チバ・スペシャルティー・ケミカルズ社)
(C’−3):1,2−オクタンジオン−1−[4−(フェニルチオ)−2−(O−ベンゾイルオキシム)](イルガキュアOXE01、チバ・スペシャルティー・ケミカルズ社)
(C’−4):2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)ブタン−1−オン
【0188】
<[D]ラジカル捕捉剤>
(D−1):2,5−ジ−tert−ブチルヒドロキノン、
(D−2):1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン(アデカ社製「アデカスタブAO−330」)
(D−3):2,2´−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチル−1−フェニルオキシ)(2−エチルヘキシルオキシ)ホスホラス(アデカ社製の「アデカスタブHP−10」)
(D−4):ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト(アデカ社製の「アデカスタブPEP−8」)
(D−5):ペンタエリスリトールテトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)(アデカ社製の「アデカスタブAO−412S」)
【0189】
<[E]着色剤>
(E−1):C.I.ソルベントレッド45
(E−2):C.I.ソルベントイエロー82
【0190】
<[F]接着助剤>
(F−1):γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン
【0191】
<[G]界面活性剤>
(G−1):シリコーン系界面活性剤(東レ・ダウコーニング・シリコーン社、SH 8400 FLUID)
(G−2):フッ素系界面活性剤(ネオス社製の「フタージェントFTX−218」)
【0192】
[実施例1]
[A]アルカリ可溶性樹脂としての共重合体(A−1)を固形分換算で100質量部、[B]重合性化合物としての(B−2)100質量部、[C]化合物としての(C−1)5質量部、[F]接着助剤としての(F−1)5質量部、並びに[G]界面活性剤としての(G−1)0.5質量部を混合し、固形分濃度が30質量%となるように、酢酸プロピレングリコールモノメチルエーテルを加えた後、孔径0.5μmのミリポアフィルタでろ過することにより、硬化性樹脂組成物を調製した。
【0193】
[実施例2〜8及び比較例1〜3]
表1に示す種類、含有量の各成分を混合したこと以外は実施例1と同様に操作して各硬化性樹脂組成物を調製した。なお、表1中の「−」は該当する成分を使用しなかったことを表す。
【0194】
[実施例9]
[A]アルカリ可溶性樹脂としての共重合体(A−1)を固形分換算で50質量部、[B]重合性化合物としての(B−4)55質量部、[C]化合物としての(C−1)5質量部、(C’−4)20質量部及び(C’−5)5質量部、[E]着色剤としての(E−1)27質量部及び(E−2)8質量部、[F]接着助剤としての(F−1)5質量部、[G]界面活性剤としての(G−2)0.5質量部を混合し、固形分濃度が20質量%となるように、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを加えて、硬化性樹脂組成物を調製した。
【0195】
[実施例10〜11]
表1に示す種類、含有量の各成分を混合したこと以外は実施例9と同様に操作して各硬化性樹脂組成物を調製した。なお、表1中の「−」は該当する成分を使用しなかったことを表す。
【0196】
【表1】
【0197】
<評価>
各硬化性樹脂組成物を用いて以下の評価を実施した。詳細には、実施例1〜4及び比較例1については、各硬化性樹脂組成物を用いて、表1に記載のポストベーク条件にて表示素子用硬化膜を形成し、スペーサーとしての解像度、感度及び圧縮性能を評価した。実施例5〜8及び比較例2については、各硬化性樹脂組成物を用いて表示素子用硬化膜を形成し、絶縁膜としての透過率、耐光性及び電圧保持率を評価した。実施例9〜11及び比較例3については、各硬化性樹脂組成物を用いて表示素子用硬化膜を形成し、着色パターンとしての現像耐性、耐熱性及び耐溶媒性を評価した。また、実施例12及び比較例4として、それぞれ実施例1及び比較例1で調製した硬化性樹脂組成物を用い、表1に記載の180℃、30分間の低温ポストベーク条件にて表示素子用硬化膜を形成し、スペーサーとしての解像度、感度及び圧縮性能を評価した。これらの結果を表2に示す。
【0198】
[解像度(μm)]
無アルカリガラス基板上に、各硬化性樹脂組成物溶液をスピンナーにより塗布した後、100℃のホットプレート上で2分間プレベークすることにより膜厚4.0μmの塗膜を形成した。次いで、得られた塗膜に直径8μm〜20μmの範囲の異なる大きさの複数の丸状残しパターンを有するフォトマスクを介し、高圧水銀ランプを用いて露光量を200J/m
2〜1,000J/m
2の範囲で変量して放射線照射を行った。その後、23℃の0.40質量%水酸化カリウム水溶液を現像液として、現像圧1kgf/cm
2、ノズル径1mmで吐出することによりシャワー現像を行い、純水洗浄を1分間行った。さらにオーブン中230℃にて30分間ポストベークすることにより、スペーサーパターンを形成した。この時、12μm以下のフォトマスクにおいて、パターンが形成されていれば、解像度が良好と判断した。なお、実施例12及び比較例4においては、180℃にて30分間のポストベークを行った以外は、上記と同様の条件で、パターンを形成した。
【0199】
[感度(J/m
2)]
直径15μmの丸状残しパターンを複数有するフォトマスクを使用したこと以外は、上記解像度の評価と同様に操作して、基板上に丸状残しパターンを形成した。丸状残しパターンの現像前と現像後の高さを、レーザー顕微鏡(VK−8500、キーエンス社)を用いて測定した。この値と下記式から残膜率(%)を求めた。
残膜率(%)=(現像後高さ/現像前高さ)×100
この残膜率が90%以上になる最小の露光量を感度(J/m
2)とした。露光量が700J/m
2以下の場合、感度が良好と判断した。
【0200】
[圧縮性能]
上記感度の評価と同様に操作して、残膜率が90%以上になる露光量で基板上に丸状残しパターンを形成した。このパターンを微小圧縮試験機(フィッシャースコープH100C、フィッシャーインストルメンツ社)で50μm角状の平面圧子を用い、40mNの荷重により圧縮試験を行い、荷重に対する圧縮変位量(μm)の変化を測定した。また、40mNの荷重時の変位量と40mNの荷重を取り除いた時の変位量から回復率(%)を算出した。回復率が90%以上であり、かつ40mNの荷重時の変位量が0.15μm以下の場合、圧縮性能が良好と判断した。
【0201】
[透過率(%)]
フォトマスクを介さず800J/m
2の露光量で露光したこと以外は、上記解像度の評価と同様に操作して得られた表示素子用硬化膜について、波長400nmにおける透過率を、分光光度計(150−20型ダブルビーム、日立製作所社)を用いて透過率(%)を測定した。透過率が90%以上の場合、透明性が良好と判断した。
【0202】
[耐光性(%)]
上記透過率の評価と同様に操作して表示素子用硬化膜を形成した。得られた表示素子用硬化膜について、UV照射装置(UVX−02516S1JS01、USHIO社、ランプ;UVL−4001M3−N1)にて、500kJ/m
2のUV光を照射し、照射前後の残膜率を求めることにより評価した。残膜率が95%以上の場合、耐光性(%)が良好と判断した。
【0203】
[電圧保持率(%)]
表面にナトリウムイオンの溶出を防止するSiO
2膜が形成され、さらにITO(インジウム−酸化錫合金)電極を所定形状に蒸着したソーダガラス基板上に、各硬化性樹脂組成物を、スピンコートした後、90℃のクリーンオーブン内で10分間プレベークを行って、膜厚2.0μmの塗膜を形成した。次いで、フォトマスクを介さずに、塗膜に500J/m
2の露光量で露光した。その後、この基板を23℃の0.04質量%の水酸化カリウム水溶液からなる現像液に1分間浸漬して、現像した後、超純水で洗浄して風乾し、さらに230℃で30分間ポストベークを行い、塗膜を硬化させて、永久硬化膜を形成した。次いで、この画素を形成した基板とITO電極を所定形状に蒸着しただけの基板とを、0.8mmのガラスビーズを混合したシール剤で貼り合わせた後、メルク製液晶(MLC6608)を注入して、液晶セルを作製した。次いで、液晶セルを60℃の恒温層に入れて、液晶セルの電圧保持率を液晶電圧保持率測定システム(VHR−1A型、東陽テクニカ社)により測定した。このときの印加電圧は5.5Vの方形波、測定周波数は60Hzである。ここで電圧保持率とは、(16.7ミリ秒後の液晶セル電位差/0ミリ秒で印加した電圧)の値である。液晶セルの電圧保持率が90%以下であると、液晶セルは16.7ミリ秒の時間、印加電圧を所定レベルに保持できず、十分に液晶を配向させることができないことを意味し、残像等の「焼き付き」を起こすおそれが高い。
【0204】
<着色パターンの形成>
表面にナトリウムイオンの溶出を防止するSiO
2膜が形成されたソーダガラス基板上に、各硬化性樹脂組成物を、スピンコーターを用いて塗布した。次いで90℃のホットプレートで2分間プレベークを行って、プレベーク後の膜厚が2.5μmの塗膜を形成した。これらの基板を室温に冷却した後、高圧水銀ランプを用い、フォトマスクを介して、塗膜に365nm、405nm及び436nmの各波長を含む放射線を100J/m
2、300J/m
2、500J/m
2、700J/m
2及び1,000J/m
2の露光量で露光した。その後、これらの基板に対して現像液(23℃の0.04質量%水酸化カリウム水溶液)を現像圧1kgf/cm
2、ノズル径1mmで吐出することにより、シャワー現像を行い基板上に200×200μmの着色パターンを形成した。さらに、230℃で30分間ポストベークを行って着色パターンを形成した。
【0205】
[現像耐性]
上記着色パターンの形成における現像前後の膜厚比を下記式から算出した。
現像前後の膜厚比=(現像後の膜厚/現像前の膜厚)×100
この値を現像耐性とし、95%以上である場合を「A」(良好と判断)、95%未満である場合又は着色パターンの一部に欠けが認められる場合を「B」(やや不良と判断)、パターンが全て基板から剥がれる場合を「C」(不良と判断)とした。
【0206】
[耐熱性]
1,000J/m
2の露光量で露光した以外は上記着色パターンの形成と同様に操作して、着色パターンを形成した。さらに180℃で30分間追加加熱した。追加加熱前後の色変化ΔEab
*を求めた。この値を耐値性とし、ΔEab
*が3未満である場合を「A」(良好と判断)、3以上5未満である場合を「B」(やや良好と判断)、5以上である場合を「C」(不良と判断)とした。
【0207】
[耐溶媒性]
上記耐熱性の評価と同様に操作して着色パターンを形成した。この基板を60℃のN−メチルピロリドンに30分間浸漬した。浸漬後に着色パターンが保持されており、かつ浸漬後のN−メチルピロリドンが全く着色しなかった場合を「A」(良好と判断)、浸漬後に着色パターンが保持されているものの浸漬後のN−メチルピロリドンが若干着色した場合を「B」(やや良好と判断)、浸漬後に基板から剥離する着色パターンが観察されると共に浸漬後のN−メチルピロリドンが着色した場合を「C」(不良と判断)とした。
【0208】
【表2】
【0209】
表2の結果から明らかなように、当該硬化性樹脂組成物は良好な解像度、感度、圧縮性能、透過率、耐光性、電圧保持率、現像耐性、耐熱性及び耐溶媒性を有することがわかった。