特許第5772676号(P5772676)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5772676
(24)【登録日】2015年7月10日
(45)【発行日】2015年9月2日
(54)【発明の名称】改質装置
(51)【国際特許分類】
   C01B 3/38 20060101AFI20150813BHJP
【FI】
   C01B3/38
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-67849(P2012-67849)
(22)【出願日】2012年3月23日
(65)【公開番号】特開2013-199397(P2013-199397A)
(43)【公開日】2013年10月3日
【審査請求日】2014年6月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100102819
【弁理士】
【氏名又は名称】島田 哲郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100147555
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 公一
(74)【代理人】
【識別番号】100160705
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 健太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130133
【弁理士】
【氏名又は名称】曽根 太樹
(72)【発明者】
【氏名】湯本 修士
(72)【発明者】
【氏名】久保 秀人
(72)【発明者】
【氏名】藤 敬司
(72)【発明者】
【氏名】松本 祥平
(72)【発明者】
【氏名】冨岡 雅巳
(72)【発明者】
【氏名】中西 治通
【審査官】 宮崎 園子
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2005/0089465(US,A1)
【文献】 特開2002−198083(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 3/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも水素を一構成成分として含む水素系燃料を改質して水素を生成する改質装置であって、
前記水素系燃料を改質して水素を生成する改質触媒と、
前記改質触媒よりも上流側に配設されて酸素雰囲気で酸化を行う酸化触媒と、
前記改質触媒と前記酸化触媒とを内部に収容する外装筐体であって、前記酸化触媒よりも上流側に配設された上流側通路から前記水素系燃料を空気とともに混合ガスとして取り入れる入口部と、生成された改質ガスを前記改質触媒よりも下流側に配設された下流側通路に放出する出口部と、前記改質触媒及び前記酸化触媒の外周囲を取り囲む外周壁部と備える外装筐体と、を具備する改質装置において、
前記外装筐体の出口部の内壁に出現した液体状水分を貯留しうる貯水部であって前記外装筐体の外周壁部に形成された貯水部と、前記外装筐体の出口部の内壁に出現した液体状水分を前記貯水部へと導く誘導通路であって前記外装筐体の外周壁部に形成された誘導通路とを有し、前記貯水部に貯留した液体状水分を前記酸化触媒の酸化反応にてもたらされる熱によって蒸発させ、前記出口部から外部に放出させることを特徴とする改質装置。
【請求項2】
前記貯水部は、前記外周壁部の一部分であって前記酸化触媒に隣接する一部分において前記外装筐体の径方向外側に突出する突出部として形成され、
前記誘導通路は、前記外周壁部に形成される傾斜面であって前記出口部の内壁に出現した液体状水分を前記外周壁部の内壁に沿って前記貯水部へと導きうるように傾斜された傾斜面として形成される、請求項1に記載の改質装置。
【請求項3】
前記誘導通路を介した前記貯水部からの改質ガスの前記入口部への逆流を抑制すべく、前記貯水部の所定部分に、前記改質ガスの透過を抑制しうる第1の付加的な断熱材が配設される、請求項2に記載の改質装置。
【請求項4】
前記出口部の内壁に出現した液体状水分の、前記出口部の内壁から前記誘導通路への移動を可能とする空間をもたらすべく、前記出口部の内壁と前記外周壁部の内壁との境界部に、第2の付加的な断熱材が配設される、請求項3に記載の改質装置。
【請求項5】
前記貯水部は前記酸化触媒より上流側に連通している、請求項3または請求項4に記載の改質装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池や内燃機関の吸気/排気系などに供給する水素を生成すべく、少なくとも水素を一構成成分として含む燃料(以下、水素系燃料と称す)を改質して水素を生成する改質装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、水素系燃料と空気とを含む混合ガスの一部を、改質装置の上流側に備えた酸化反応を行う触媒(以下、酸化触媒という)で酸化させ、その反応熱を利用して内部から改質反応を行う触媒(以下、改質触媒という)を昇温して改質反応を促進させる、いわゆるオートサーマル方式の改質装置の開発が進められている。
【0003】
ここで、このようなオートサーマル方式の改質装置に、その入口部から水素系燃料を空気とともに混合ガスとして取り入れて、該混合ガスを酸化触媒および改質触媒に接触させることによって生成された改質ガスを出口部から放出させる場合、酸化触媒に近い上流側の改質触媒が過度に加熱される一方で、酸化触媒から遠い下流側の改質触媒の昇温が遅れる。そのために改質触媒の温度分布に偏りが生じ、この温度分布の偏りが改質反応に悪影響を及ぼす場合がありうる。このような改質反応における悪影響を抑制すべく、酸化触媒及び改質触媒の外周囲に断熱材を配設することによって両触媒からの放熱を抑制して、改質触媒における上流部と下流部との間の温度差の適正化をはかる構成を有する改質装置が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−125313号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記のようなオートサーマル方式の改質装置においては、改質装置の出口部から放出される改質ガスは高温状態にて放出されることになるが故に、継続運用している改質装置を停止する際に改質装置により生成された改質ガスの十分な掃気を行うことなく停止されるような場合、生成された改質ガスが供給される装置と改質装置の出口部とを流体連通する通路(以下、改質ガス通路と称す)の内壁や改質装置の出口部の内壁に結露が生じることが考えられうる。すなわち、改質装置の停止により、上記のような改質ガス通路や改質装置の出口部における内壁近傍にて大きな温度勾配が生じて内壁に結露がもたらされ、このことに起因して改質装置の出口部の内壁に多量の液体状水分が出現することが考えられうる。
【0006】
そして、このように液体状水分が改質装置の出口部の内壁に出現した場合においては、出現した液体状水分が改質装置の内部に侵入して、このことに起因して改質装置内に配設された触媒の性能が劣化してしまうというような事態がもたらされてしまうことがありうる。例えば、引用文献1に示されているような改質装置の構成において考えてみると、触媒の外周囲に断熱材が配設されることで、触媒自身における結露の発生は回避されうるものと考えられるが、例えば改質装置の運用が停止されて改質装置の出口部の内壁にもたらされた結露に起因して出現した液体状水分の触媒内への浸入がある場合においては、該触媒の一部が液体状水分にて浸漬状態となってしてしまい、このことに起因して触媒性能が劣化してしまうというような事態がもたらされてしまうことがありうる。
【0007】
本発明は上記課題に鑑み、改質装置の出口部の内壁に液体状水分が出現した場合においても、改質装置の外装筐体の内部に配設された触媒の性能劣化を抑制しうるような構成を有する改質装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の発明によれば、少なくとも水素を一構成成分として含む水素系燃料を改質して水素を生成する改質装置であって、前記水素系燃料を改質して水素を生成する改質触媒と、前記改質触媒よりも上流側に配設されて酸素雰囲気で酸化を行う酸化触媒と、前記改質触媒と前記酸化触媒とを内部に収容する外装筐体であって、前記酸化触媒よりも上流側に配設された上流側通路から前記水素系燃料を空気とともに混合ガスとして取り入れる入口部と、生成された改質ガスを前記改質触媒よりも下流側に配設された下流側通路に放出する出口部と、前記改質触媒及び前記酸化触媒の外周囲を取り囲む外周壁部と備える外装筐体と、を具備する改質装置において、前記外装筐体の出口部の内壁に出現した液体状水分を貯留しうる貯水部であって前記外装筐体の外周壁部に形成された貯水部と、前記外装筐体の出口部の内壁に出現した液体状水分を前記貯水部へと導く誘導通路であって前記外装筐体の外周壁部に形成された誘導通路とを有する、改質装置が提供される。
【0009】
すなわち、請求項1に記載の発明では、少なくとも水素を一構成成分として含む水素系燃料を改質して水素を生成する改質装置であって酸化触媒と改質触媒とを有して構成される改質装置において、生成された改質ガスを放出する部分となる外装筐体の出口部の内壁に出現した液体状水分を貯留する貯水部と、外装筐体の出口部の内壁に出現した液体状水分を上記貯水部へと導く誘導通路とを外装筐体の外周壁部に形成するように構成することで、改質装置の外装筐体の内部に配設された酸化触媒及び改質触媒の両触媒との接触を回避しつつ外装筐体の出口部の内壁に出現した液体状水分を貯水部まで誘導することを可能として、このような液体状水分にて改質触媒や酸化触媒の一部が浸漬状態となってしまうというような事態の回避を可能とする。なお、本発明において酸化触媒と改質触媒とは明確に独立して形成されている構成に限らず、一体的に形成され上流側で酸化反応・下流側で改質反応を示す触媒をも含む。
【0010】
請求項2に記載の発明によれば、前記貯水部は、前記外周壁部の一部分であって前記酸化触媒に隣接する一部分において前記外装筐体の径方向外側に突出する突出部として形成され、前記誘導通路は、前記外周壁部に形成される傾斜面であって前記出口部の内壁に出現した液体状水分を前記外周壁部の内壁に沿って前記貯水部へと導きうるように傾斜された傾斜面として形成される、請求項1に記載の改質装置が提供される。
【0011】
請求項3に記載の発明によれば、前記誘導通路を介した前記貯水部からの改質ガスの前記入口部への逆流を抑制すべく、前記貯水部の所定部分に、前記改質ガスの透過を抑制しうる断熱材が配設される、請求項2に記載の改質装置が提供される。
【0012】
請求項4に記載の発明によれば、前記出口部の内壁に出現した液体状水分の、前記出口部の内壁から前記誘導通路への移動を可能とする空間をもたらすべく、前記出口部の内壁と前記外周壁部の内壁との境界部に、付加的な断熱材が配設される、請求項3に記載の改質装置が提供される。
【0013】
請求項5に記載の発明によれば、前記貯水部は前記酸化触媒より上流側に連通している、請求項3または請求項4に記載の改質装置が提供される。
【発明の効果】
【0014】
各請求項に記載の発明によれば、少なくとも水素を一構成成分として含む水素系燃料を改質して水素を生成する改質装置であって酸化触媒と改質触媒とを有して構成される改質装置において、改質装置内の外装筐体の内部に配設された改質触媒や酸化触媒の一部が、外装筐体の出口部の内壁における液体状水分の出現に起因して液体状水分にて浸漬状態となってしまうというような事態の回避を可能として、改質装置の出口部の内壁に液体状水分が出現した場合においても、改質装置の外装筐体の内部に配設された触媒の性能劣化を抑制することを可能にする、という共通の効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の改質装置の一実施形態を示す構成図である。
図2図1中のA−Aにおける断面図である。
図3図1中のB−Bにおける断面図である。
図4】従来技術における改質装置の一実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面を用いて本発明に係る改質装置の実施形態について説明する。図1は、本発明の改質装置の一実施形態を示す構成図である。図2は、図1におけるA−Aにての断面図である。図3は、図1におけるB−Bにての断面図である。図1から図3の各図において、1は改質装置、2は改質触媒、3は酸化触媒、4は外装筐体、5は入口部、6は出口部、7は外周壁部、8は上流側通路、9は下流側通路、10は貯水部、11は誘導通路、12〜14は断熱材、15はヒーター、16は傾斜面をそれぞれ示す。
【0017】
図1に示される実施形態における改質装置1は、少なくとも水素を一構成成分として含む水素系燃料を改質して水素を生成する改質装置であって、水素系燃料を改質して水素を生成する改質触媒2と、改質触媒2よりも上流側に配設されて酸素雰囲気で部分酸化や完全酸化などの酸化を行う酸化触媒3と、改質触媒2及び酸化触媒3を内部に収容する外装筐体4とを有して構成される。そして、外装筐体4は、酸化触媒3よりも上流側に配設された上流側通路8から水素系燃料を空気とともに混合ガスとして取り入れる入口部5と、生成された改質ガスを改質触媒2よりも下流側に配設された下流側通路9に放出する出口部6と、改質触媒2及び酸化触媒3の外周囲を取り囲む外周壁部7とを有して構成される。さらに図1に示される実施形態においては、外装筐体4の内部であって酸化触媒3の上流側に、入口部5から取り入れられた混合ガスを加熱して酸化触媒3の昇温を促進するヒーター15が配設される。
【0018】
改質触媒2は、上流側流路8から取り入れられた水素系燃料を改質して水素を生成するという役割を果たすものであり、水素系燃料を改質するための触媒粒子が配置される。本実施形態における改質触媒2は、ハニカム構造にて形成され、取り入れられた混合ガスが流れる方向に沿って形成されている複数の流路を有するものとされる。そして、改質触媒2の触媒粒子は担持体に担持されているものとされ、該担持体は、例えば酸化アルミニウムで形成される。また、取り入れられた水素系燃料を改質するための触媒粒子の金属としては、白金やルテニウム等の貴金属や、あるいは、ニッケルやコバルト等の卑金属を例示することができるが、これらに限られることはなく、取り入れられた水素系燃料の改質をもたらしうるような任意の金属から構成されることができる。
【0019】
一方で、酸化触媒3は、改質触媒2よりも上流側に配設されて酸素雰囲気で酸化を行うものであり、入口部5から水素系燃料とともに取り入れられる空気中の酸素を用いて水素系燃料の一部を燃焼して、該燃焼により生じた熱を用いて下流側に配置された改質触媒2の改質可能温度への昇温を促進する役割を果たすものであり、上流側流路8から取り入れられた水素系燃料の一部を、部分酸化や完全酸化などの酸化をさせるための触媒粒子が配置される。本実施形態における酸化触媒3は、改質触媒2と同様にハニカム構成にて形成され、取り入れられた混合ガスが流れる方向に沿って形成されている複数の流路を有するものとされる。そして、酸化触媒3の触媒粒子についても、改質触媒2と同様に担持体に担持されているものとされ、該担持体は、例えば酸化アルミニウムで形成されるものとする。取り入れられた水素系燃料を酸化するための触媒粒子の金属としては、白金等の貴金属や鉄等の卑金属を例示することができるが、これらに限られることはなく、取り入れられた燃料の酸化をもたらしうるような任意の金属から構成されることができる。
【0020】
本実施形態における改質装置においては、外装筐体4の内部であって酸化触媒3の上流側に、入口部5から取り入れられた混合ガスを加熱して酸化触媒3の昇温を促進するヒーター15が配設される。このようなヒーターとして本実施形態においては、電気加熱式触媒(EHC)が配設される。この電気加熱式触媒は、触媒コート層が形成された担体基材と、該担体基材を電気的に加熱する加熱手段とを備えて構成され、入口部5から水素系燃料とともに取り入れられる空気中の酸素を用いて水素系燃料の一部を燃焼して、該燃焼により生じた熱を用いて混合ガスを加熱して、下流側に配置された酸化触媒3や改質触媒2のそれぞれの所定温度への昇温を促進する役割を果たす。
【0021】
尚、本実施形態においては、この電気加熱式触媒15は、主として酸化触媒3が酸化可能温度となる所定温度に昇温されるまでの間において補助的に使用されるものとされ、酸化触媒3が所定温度に昇温された後においては通電が停止され、その使用が停止されるものとする。また、本実施形態においては、酸化触媒3が所定温度に昇温されるまでの間の昇温促進手段として電気加熱式触媒15を配置するが、これに限られることはなく、入口部5を介して取り入れられた混合気を、通電などすることにより加熱しうるような機能を有するヒーターであれば、どのようなヒーターが使用されてもよい。さらには、本実施形態においては、酸化触媒3の迅速な所定温度への昇温を目的として酸化触媒3の上流側に電気加熱式触媒のような昇温促進手段を配置しているが、このような昇温促進手段は配置されなくともよく、このような昇温促進手段の必要性の有無は概して酸化触媒3の性能に応じて決定される。
【0022】
改質触媒2及び酸化触媒3の外周囲には、断熱材12が配設される。断熱材12を改質触媒2及び酸化触媒3の外周囲に配設することにより、これらの触媒からの放熱を抑制することを可能とする。尚、改質触媒2や酸化触媒3あるいは外装筐体4の設計仕様や性能仕様などの観点から、このような改質触媒2及び酸化触媒3の外周囲に配設される断熱材12は本改質装置の構成要素から排除されてもよい。
【0023】
上記のような改質触媒2と酸化触媒3とヒーター15とを有して構成される本実施形態における改質装置1においては、酸化触媒3の温度が酸化可能温度よりも低いような低温状態にあるような場合に、ヒーター15への通電がなされて酸化触媒3の酸化可能温度への迅速な昇温が行われる。そして、酸化可能温度に昇温された酸化触媒3における酸化反応による反応熱を利用して、改質反応を行う改質触媒2を昇温して改質反応を促進させる、いわゆるオートサーマル方式の改質制御が実行される。
【0024】
ところで、上記のようなオートサーマル方式の改質装置1においては、改質装置1の出口部6から放出される改質ガスは高温状態にて放出されることになるが故に、継続運用している改質装置1を停止する際に改質装置1により生成された改質ガスの十分な掃気を行うことなく停止されるような場合、生成された改質ガスが供給される装置(不図示)と改質装置1とを流体連通する下流側通路9の内壁や、改質装置1の出口部6の内壁すなわち改質装置1の外装筐体4の出口部6の内壁に結露が生じうることが考えられる。すなわち、改質装置1の停止により、上記のような改質ガス通路となる下流側通路9の内壁近傍や、改質装置1の出口部6の内壁近傍にて大きな温度勾配が生じ、このことに起因して改質装置1の出口部6の内壁に多量の液体状水分が出現することが考えられる。
【0025】
そして、このような液体状水分が改質装置の出口部の内壁に出現した場合、すなわち、このような液体状水分が改質装置の外装筐体の出口部の内壁に出現した場合、図4に示されるような従来技術における一実施形態となる改質装置101の構成においては、改質触媒102及び酸化触媒103の外周囲には断熱材112が配設されているので、これらの触媒自身における結露の発生は回避しうるものと考えられる。しかしながら、結露などに起因して改質装置101の外装筐体104の出口部106の内壁に出現した液体状水分がこれらの触媒内に浸入してしまうようなことがある場合においては、これらの触媒の一部が液体状水分にて浸漬状態となってしてしまい、このことに起因して触媒の性能劣化がもたらされてしまうというような事態がもたらされてしまうことがありうる。尚、図4において、105は入口部、107は外周壁部、108は上流側通路、109は下流側通路、112は断熱材をそれぞれ示す。
【0026】
このような事態を回避すべく、本発明の改質装置は、改質装置の出口部の内壁に液体状水分が出現した場合においても、改質装置の外装筐体の内部に配設された触媒の性能劣化を抑制しうるような構造を有して構成される。
【0027】
具体的には、本発明の改質装置1においては、生成された改質ガスを放出する部分となる外装筐体4の出口部6の内壁に出現した液体状水分を貯留する貯水部10と、外装筐体4の出口部6の内壁に出現した液体状水分を外装筐体4の外周壁部7に沿って貯水部10へと導く誘導通路11とを外装筐体4の外周壁部7に形成するように構成する。このように改質装置1を構成することにより、改質装置1の外装筐体4の内部に配設される酸化触媒3及び改質触媒2の両触媒との接触を回避しつつ外装筐体4の出口部6の内壁に出現した液体状水分を貯水部10まで誘導することを可能として、このような液体状水分にて改質触媒2や酸化触媒3の一部が浸漬状態となってしまうというような事態の回避を可能とする。
【0028】
図1に示される本発明の改質装置の一実施形態においては、生成された改質ガスを放出する部分となる外装筐体4の出口部6の内壁に出現した液体状水分を貯留する貯水部10は、外周壁部7の一部分であって酸化触媒3に隣接する一部分において、外装筐体4の径方向外側に突出する突出部として形成される。本実施の形態では酸化触媒3の外周部分に貯水部10が形成されている。貯水部10は酸化触媒3より上流側に第1の付加的な断熱材13を介して連通している。また、外装筐体4の出口部6の内壁に出現した液体状水分を貯水部10へと導く誘導通路11は、外周壁部7に形成される傾斜面16であって出口部6の内壁に出現した液体状水分を外周壁部7の内壁に沿って貯水部10へと導きうるように傾斜された傾斜面16として形成される。
【0029】
このような貯水部10及び誘導通路11の構成によれば、外装筐体4の出口部6の内壁に液体状水分が出現した場合においても、該液体状水分を傾斜面16に沿って貯水部10へと誘導することができる。すなわち、外装筐体4の出口部6の内壁に出現した液体状水分を、改質装置1の外装筐体6の内部に配設された酸化触媒3及び改質触媒2の両触媒との接触を回避しつつ外装筐体4の出口部6の内壁に出現した液体状水分を貯水部10まで誘導することを可能にする。
【0030】
さらに、貯水部10が、外周壁部7の一部分であって酸化触媒3に隣接する一部分において配設されることで、貯水部10に貯留した液体状水分を、次回起動させた時に酸化触媒3の酸化反応にてもたらされる熱を使用して蒸発させることができ、出口部6から外部に放出させることが可能となる。さらに、取り入れられる水素系燃料が水溶性燃料である場合には、液体状水分とともに燃料成分をも蒸発させることができ、水に溶けていた燃料成分の再使用を可能としうる。また、貯水部10が酸化触媒3より上流側に連通しているので、蒸発した燃料成分を再び改質可能である。また、たとえば液体状水分を排出する為に貯水部10に水抜き穴を設けることも考えられるが、通常運転時にはガスも漏れてしまう虞がある。それに対して、本実施形態では水抜き穴を設けなくとも、液体状水分を放出可能である。
【0031】
尚、図1から理解されうるごとく、改質触媒2及び酸化触媒3の外周囲が断熱材にて取り囲まれて構成されるような実施形態においては、これらの触媒を取り囲む断熱材12と外装筐体4の外周壁部7の内壁との間に積極的に液体状水分が通過する空間をもたらすための何らかの手段を講じると効果的である。
【0032】
このような液体状水分を通過させる空間をもたらす一手段として、改質触媒2及び酸化触媒3の外周囲を取り囲む断熱材12の一部を切り欠くことにより液体状水分を通過させる空間を形成することが考えられる。しかしながら、改質触媒2及び酸化触媒3の外周囲を取り囲む断熱材12の一部を切り欠くことは、断熱性という観点において多少なりとも支障をきたす場合もありうる。
【0033】
そこで、図1に示される実施形態においては、断熱性の維持という観点から、外装筐体4の出口部6の内壁と外周壁部7の内壁との境界部において、改質触媒2及び酸化触媒3の外周囲を取り囲む断熱材12と誘導通路11の傾斜面16との間に第2の付加的な断熱材14を配置して、液体状水分を通過させる空間を形成する。このような構成によれば、改質触媒2及び酸化触媒3の断熱性を維持しつつ、改質触媒2及び酸化触媒3の外周囲を取り囲む断熱材12と外装筐体4の外周壁部7の内壁との間の液体状水分の通過を可能とする。
【0034】
図2は、図1中のA−Aにおける断面図であり、すなわち、改質触媒2及び酸化触媒3の外周囲を取り囲む断熱材12と誘導通路11の傾斜面16との間に配設される第2の付加的な断熱材14の構成や配置を示す図である。図2から理解されうるごとく、本実施形態における第2の付加的な断熱材14は、液体状水分の通過を可能とする空間を形成すべく、改質触媒2及び酸化触媒3を取り囲む断熱材12の外周囲に等間隔に離間して配置される。
【0035】
尚、第2の付加的な断熱材14の配置や形状は、図2に示されるような形態に限られることはなく、設計仕様などに応じて適宜に決定されるものとする。たとえば、鉛直方向下側のみ液状水分の通過可能にする開口を設け、ほかの部分は第2の付加的な断熱材14で閉塞させてもよい。また、改質触媒2及び酸化触媒3とこれらの触媒の外周囲に配設される断熱材12との組立体が、サポート部材などにより外装筐体に対してその内部に中吊りにされて配置され、該組立体と外周壁部7の内壁との間に空間が既存するような場合には、上記のような液体状水分が通過する空間をもたらす手段は不要としうる。
【0036】
また、図1から理解されうるごとく、貯水部10が外装筐体4の外周壁部7の一部分に形成され、外装筐体4の出口部6の内壁に出現した液体状水分を外周壁部の内壁に沿って導くように誘導通路11が外周壁部7の内壁に形成されるような実施形態においては、誘導通路11を介した貯水部10からの改質ガスの入口部5への逆流または、改質装置1の運転中に未改質ガスが貯水部10→誘導通路11→出口部6を通過するバイパス流を抑制しうるような何らかの手段を講じる必要がある。
【0037】
そこで、図1に示される実施形態においては、貯水部10における入口部5側の部分であって設計仕様などから決定される所定部分において、改質触媒2及び酸化触媒3の外周囲を取り囲む断熱材12と外装筐体4の内壁との間に第1の付加的な断熱材13が配置され、また、該第1の付加的な断熱材13は、改質ガスの透過を抑制しうるような材質にて形成されるものとする。このような構成によれば、生成された改質ガスが誘導通路11に沿って貯水部10に侵入するような場合においても、第1の付加的な断熱材13により改質ガスの入口部5への逆流を抑制することを可能とする。また、未改質ガスが流れてしまうバイパス流を抑制することも可能である。つまり、第1の付加的な断熱材13は酸化触媒3や改質触媒2のセル通路に比べ十分小さいので第1の付加的な断熱材13の流路抵抗は大きく、ガスが流れることを抑制しつつも、液体状水分は通過可能である。
【0038】
図3は、図1中のB−Bにおける断面図であり、すなわち、貯水部10における所定部分において、改質触媒2及び酸化触媒3の外周囲を取り囲む断熱材12と外装筐体7の内壁との間に配置される第1の付加的な断熱材13の構成や配置を示す図である。図3から理解されうるごとく、本実施形態における第1の付加的な断熱材13は、誘導通路11を介した貯水部10からの改質ガスの入口部5への逆流を抑制すべく、貯水部10における入口部5側の所定部分において、貯水部10の内壁の全周にわたり、改質触媒2及び酸化触媒3の外周囲を取り囲む断熱材12と外周壁部7の内壁との間に配置される。
【0039】
尚、第1の付加的な断熱材13の配置や形状は、図3に示されるような形態に限られることはなく、設計仕様などに応じて適宜に決定されるものとする。また、改質触媒2及び酸化触媒3の組立体との外周壁部7の内壁の全周にわたる接触部分が既存し、該接触部分が、逆流を抑制する機能を果たしうるものであれば、上記のような誘導通路11を介した貯水部10からの改質ガスの入口部5への逆流を抑制する手段は不要としうる。また、本実施の形態においては貯水部10と、ヒーター15と酸化触媒3との間の空間は第1の付加的な断熱材13を介しているが、第1の付加的な断熱材13をもっと出口部6側に配置して、貯水部10と、ヒーター15と酸化触媒3との間の空間を連通させても良い。この場合、第1の付加的な断熱材13を介さないので、貯水部10に貯留した液体状水分を、次回起動させた時に酸化触媒3の酸化反応にてもたらされる熱を使用して蒸発させることがより効率的にでき、出口部6から外部に放出させることが可能となるし、取り入れられる水素系燃料が水溶性燃料である場合には、液体状水分とともに燃料成分をも蒸発させて、水に溶けていた燃料成分を酸化触媒3の前段から導入することができる。さらにヒーター15からの熱も蒸発に効果的に利用できる。
【0040】
以上の説明から理解されうるごとく、上述したような本発明の改質装置によれば、外装筐体の出口部の内壁における液体状水分の出現に起因して、改質装置の外装筐体の内部に配設された改質触媒や酸化触媒の一部が液体状水分にて浸漬状態となってしまうというような事態の回避を可能とし、これにより、改質装置の出口部の内壁に液体状水分が出現した場合においても、改質装置の外装筐体の内部に配設された触媒の性能劣化を抑制することを可能にする。
【符号の説明】
【0041】
1 改質装置
2 改質触媒
3 酸化触媒
4 外装筐体
5 入口部
6 出口部
7 外周壁部
8 上流側通路
9 下流側通路
10 貯水部
11 誘導通路
図1
図2
図3
図4