(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の一実施形態の裸眼立体ディスプレイ装置の全体構成を示す斜視図である。
【
図2】
図1の領域MEを拡大した図であり、本発明の一実施形態の裸眼立体ディスプレイ装置を示す平面図である。
【
図3】シリンドリカルレンズの傾斜角θを9.46°とし、水平レンズピッチLxを水平画素ピッチpxの7倍(δ=7)とした第1の比較例を示す平面図である。
【
図4】傾斜角θを9.46°とし、水平レンズピッチLxを13・px/4=3.25・px(δ=3.25)とした第2の比較例を示す平面図である。
【
図5】傾斜角θを10.23°とし、水平レンズピッチLxを水平画素ピッチpxの3.25倍とした場合の一実施形態を示す平面図である。
【
図6】色むらを抑制するために各パラメータが満たすべき条件を説明するための模式図である。
【
図7】傾斜角θと水平画素ピッチpxと垂直画素ピッチpyとがtanθ=(7-δ)・(px/py)の関係にあり、δ=5.1の場合、色及び輝度にモアレが発生するか否かのシミュレーション結果を示す図である。
【
図8】tanθ=(7-δ)・(px/py)、δ=5.2の場合、色及び輝度にモアレが発生するか否かのシミュレーション結果を示す図である。
【
図9】tanθ=(7-δ)・(px/py)、δ=5.3の場合、色及び輝度にモアレが発生するか否かのシミュレーション結果を示す図である。
【
図10】tanθ=(7-δ)・(px/py)、δ=5.4の場合、色及び輝度にモアレが発生するか否かのシミュレーション結果を示す図である。
【
図11】tanθ=(7-δ)・(px/py)、δ=5.5の場合、色及び輝度にモアレが発生するか否かのシミュレーション結果を示す図である。
【
図12】tanθ=(7-δ)・(px/py)、δ=5.6の場合、色及び輝度にモアレが発生するか否かのシミュレーション結果を示す図である。
【
図13】tanθ=(7-δ)・(px/py)の場合のシミュレーション結果のまとめを示す図である。
【
図14】傾斜角θと水平画素ピッチpxと垂直画素ピッチpyとがtanθ=0.5・(8-δ)・(px/py)の関係にあり、δ=5.1の場合、色及び輝度にモアレが発生するか否かのシミュレーション結果を示す図である。
【
図15】tanθ=0.5・(8-δ)・(px/py)、tanθ=0.5・(8-δ)・(px/py)、δ=5.2の場合、色及び輝度にモアレが発生するか否かのシミュレーション結果を示す図である。
【
図16】tanθ=0.5・(8-δ)・(px/py)、δ=5.3の場合、色及び輝度にモアレが発生するか否かのシミュレーション結果を示す図である。
【
図17】tanθ=0.5・(8-δ)・(px/py)、δ=5.4の場合、色及び輝度にモアレが発生するか否かのシミュレーション結果を示す図である。
【
図18】tanθ=0.5・(8-δ)・(px/py)、δ=5.5の場合、色及び輝度にモアレが発生するか否かのシミュレーション結果を示す図である。
【
図19】tanθ=0.5・(8-δ)・(px/py)の場合のシミュレーション結果のまとめを示す図である。
【
図20】傾斜角θと水平画素ピッチpxと垂直画素ピッチpyとがtanθ=0.5・(11-δ)・(px/py)の関係にあり、δ=8.5の場合、色及び輝度にモアレが発生するか否かのシミュレーション結果を示す図である。
【
図21】tanθ=0.5・(11-δ)・(px/py)、δ=8.6の場合、色及び輝度にモアレが発生するか否かのシミュレーション結果を示す図である。
【
図22】tanθ=0.5・(11-δ)・(px/py)、δ=8.7の場合、色及び輝度にモアレが発生するか否かのシミュレーション結果を示す図である。
【
図23】tanθ=0.5・(11-δ)・(px/py)、δ=8.8の場合、色及び輝度にモアレが発生するか否かのシミュレーション結果を示す図である。
【
図24】tanθ=0.5・(11-δ)・(px/py)、δ=8.9の場合、色及び輝度にモアレが発生するか否かのシミュレーション結果を示す図である。
【
図25】tanθ=0.5・(11-δ)・(px/py)の場合のシミュレーション結果のまとめを示す図である。
【
図26】実施例1の裸眼立体ディスプレイ装置の構成を示す平面図である。
【
図27】実施例1の裸眼立体ディスプレイ装置の各パラメータの値を示すテーブルである。
【
図28】実施例1において、各色画素がどの視差映像を提示するかを示す図である。
【
図29】43個に分割された視差映像を、シリンドリカルレンズを通して1点から観測したときの様子を示すシミュレート画像である。
【
図30】実施例2の裸眼立体ディスプレイ装置の各パラメータの値を示すテーブルである。
【
図31】実施例2において、各色画素がどの視差映像を提示するかを示す図である。
【
図32】42個に分割された視差映像を、シリンドリカルレンズを通して1点から観測したときの様子を示したシミュレート画像である。
【
図33】実施例3の裸眼立体ディスプレイ装置の各パラメータの値を示すテーブルである。
【
図34】実施例3において、各色画素がどの視差映像を提示するかを示す図である。
【
図35】138個に分割された視差映像を、シリンドリカルレンズを通して1点から観測したときの様子を示したシミュレート画像である。
【
図36】レンチキュラーレンズの境界線に平行な斜線状のノイズが発生することを説明するための図であり、色画素の配置パターンとシリンドリカルレンズとの対応位置関係を示す図である。
【
図37】レンチキュラーレンズの境界線に平行な斜線状のノイズが発生することを説明するための図であり、シリンドリカルレンズに対応する視差映像の方向を示す裸眼立体ディスプレイ装置の側面図である。
【
図38】レンチキュラーレンズの境界線に平行な斜線状のノイズが発生することを説明するための図であり、ある視差映像に対応する色画素が2つのシリンドリカルレンズの一方のみに存在することを示す図である。
【
図39】レンチキュラーレンズの境界線に平行に発生する斜線状のノイズの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。図面の記載において同一部分には同一符号を付している。
【0022】
図1及び
図2を参照して、一実施形態の裸眼立体ディスプレイ装置の構成を説明する。一実施形態の裸眼立体ディスプレイ装置は、垂直方向及び水平方向の各々に所定のピッチで色画素13が配列された二次元ディスプレイ11と、二次元ディスプレイ11の表示面上に配置されたレンチキュラーシート14とを備える。レンチキュラーシート14は、互いに平行に一次元方向に配列された複数のシリンドリカルレンズ12a,12b,12c,…からなる。色画素13は、複数のシリンドリカルレンズ12を通して視認される。シリンドリカルレンズ12の境界線BL1〜BL4は、互いに平行な直線を成し、二次元ディスプレイ11の垂直方向VLに対して傾斜している。その傾斜角をθとする。
【0023】
図2の垂直方向及び水平方向に配列された複数の矩形は、それぞれ二次元ディスプレイ11の色画素13を示している。二次元ディスプレイ11において、R,G,Bの3(=D)種類の異なる色の色画素13が水平方向に周期的に配列され、同じ色の色画素が垂直方向に配列されている。なお、シリンドリカルレンズ12の境界線BL1〜BL4に垂直な方向のレンズピッチ(以後、単にレンズピッチという)をLとし、シリンドリカルレンズ12の水平方向のレンズピッチ(以後、単に水平レンズピッチという)をLxとする。
【0024】
また、色画素13の水平方向の画素ピッチ(以後、水平画素ピッチという)をpxとし、色画素13の垂直方向の画素ピッチ(以後、垂直画素ピッチという)をpyとする。以後の説明において、py/px=3とするが、py/pxは3以外の数値であってもよい。シリンドリカルレンズ12a,12b,12c,…は、境界線BL1〜BL4に垂直な方向にのみ光を屈折させる。水平レンズピッチLxは、水平画素ピッチpxの何画素分に相当するかということを示しており、式(6)で定義される。
【0025】
Lx=δ・px …(6)
なお、L=δ・px・cosθとなる。
【0026】
次に、二次元ディスプレイ11の解像度を上げずに視差映像をより細かく分割する方法について説明する。
【0027】
図3は、シリンドリカルレンズの傾斜角θを、θ=arctan(px/(2・py))=9.46°、δ=7とし、水平レンズピッチLxをLx=7・pxとした第1の比較例を示す。ある方向から、シリンドリカルレンズを通して二次元ディスプレイ11の色画素を見ると、シリンドリカルレンズの境界線bl1,bl2から等距離にある色画素のみが見える。見ることができる色画素の境界線bl1,bl2からの距離は、見る方向に応じて変化する。境界線bl1に沿ってR,G,Bの3種類の色画素が周期的に現れ、結果的に二次元ディスプレイ11の表示面内で各色画素が均一に使用される。
【0028】
しかし、
図3の第1の比較例では水平レンズピッチLxが水平画素ピッチpxの整数倍であるため、色画素を水平に走査しても、境界線bl1,bl2と二次元ディスプレイ11の色画素との相対位置を水平画素ピッチpx以下に分割することができない。
【0029】
そこで、前述したように、水平レンズピッチLxを水平画素ピッチpxの整数倍からずらすことにより、即ち、δ=Lx/pxを整数でなくすことにより、二次元ディスプレイ11の色画素との相対位置を水平画素ピッチpx以下に分割する。これにより、複数の視差映像が複数のシリンドリカルレンズにまたがって分割され、二次元ディスプレイ11の解像度を上げずに、多数の視差映像に分割することができる。
【0030】
図4は、θ=9.46°、δ=3.25とし、水平レンズピッチLx=L/cosθを13・px/4=3.25・pxとした第2の比較例を示す。各色画素に記載された数字は、13分割された視差映像の番号を示している。13個の視差映像が、2本のシリンドリカルレンズ52a〜52bにまたがって分割されている。
【0031】
しかし、第2の比較例では、シリンドリカルレンズ52a〜52dの境界線bl1〜bl5に平行な斜線状のノイズが発生するという不具合がある。
【0032】
図4を見ると、シリンドリカルレンズ52a,52cは奇数番号の視差映像のみに対応し、シリンドリカルレンズ52b,52dは偶数番号の視差映像のみに対応している。よって、シリンドリカルレンズ52b,52dには奇数番号の視差映像は表示されず、シリンドリカルレンズ52a,52cには偶数番号の視差映像は表示されない。よって、水平方向に視差を持つ視差画像SP1〜SP13を順次対応させた場合に、シリンドリカルレンズ52a〜52dの境界線bl1〜bl5に平行な斜線状のノイズが発生する。また、水平レンズピッチLxを調整し、さらに細かく視差映像を分割すると、シリンドリカルレンズ1本を見たときに、表示されない視点の割合が増えるため、斜線状のノイズは顕著となる。
【0033】
これに対して、一実施形態では、シリンドリカルレンズ52a〜52dの傾斜角θを適切に設定することにより、全ての視差画像SP1〜SP13を1本のシリンドリカルレンズ52a〜52dに必ず1度は表示させることができる。これにより、水平レンズピッチLxが水平画素ピッチpxの整数倍からずれていて、複数本のレンチキュラーレンズ52a〜52dにまたがって視差映像の提示方向を分割する場合であっても、視差画像全体として、シリンドリカルレンズ52a〜52dの境界線bl1〜bl5に平行な斜線状のノイズを抑制することができる。
【0034】
図5は、θ=10.23°、δ=3.25、Lx=3.25・pxとした場合の一実施形態を示す。
図5に示す例では、全てのシリンドリカルレンズ12a〜12dに全ての視差映像1〜13が現れている。これにより、
図4に示す第2の比較例における斜線状のノイズを抑制することができる。
【0035】
具体的には、水平画素ピッチpx、垂直画素ピッチpy、シリンドリカルレンズ12a〜12dの水平レンズピッチLx、シリンドリカルレンズ12a〜12dの境界線BL1〜BL5の傾斜角θが、式(1)、式(2)、式(3)に示す関係式を全て満たしていればよい。ここで、Ax及びAyは互いに素な整数であり、Bxは式(2)に示す数値GFが整数となる最小の自然数である。
【0036】
θ=arctan{(Ax・px)/(Ay・py)} …(1)
GF=Bx・Lx/px …(2)
Ay≧2 かつ Bx≧2 …(3)
【0037】
また、px,py,Lx,θが式(1)〜式(3)に示す関係式を満たす場合、分割可能な最大の視差映像の数Vは、式(10)により表される。ここで、{Bx,Ay}は、BxとAyの最小公倍数を示す。
【0038】
V={Bx,Ay}・Lx/px …(10)
【0039】
式(3)におけるBx≧2の条件を満たすことにより、水平レンズピッチLxを水平画素ピッチpxの整数倍からずらす(δを整数でなくす)ことができる。これにより、複数のシリンドリカルレンズ12a〜12dにまたがって視差映像に分割できるので、水平画素ピッチpxに対して水平レンズピッチLxを大きくすることなく、視差映像の分割数を増加させることができる。また、Bxは、式(2)より、水平レンズピッチLxに関連する値である。しかし、AyがBxの整数倍であれば、式(10)において、{Bx,Ay}=Ayとなり、分割される視差映像の数Vは、Bxに依存しなくなる。従って、全てのシリンドリカルレンズ12a〜12dに全ての視差映像が必ず1度は表示されることになる。
【0040】
これにより、水平レンズピッチLxが水平画素ピッチpxの整数倍からずれていて、複数本のシリンドリカルレンズ12a〜12dにまたがって視差映像を分割する場合であっても、視差画像全体として、シリンドリカルレンズ12a〜12dの境界線BL1〜BL5に平行な斜線状のノイズを抑制することができる。
【0041】
また、シリンドリカルレンズ12a〜12dを通して二次元ディスプレイ11の色画素を観察すると、色画素が拡大されて視差映像の解像感を損ねる。拡大された色画素の大きさは、レンズピッチLと1/tanθに比例する。θが小さくなると色画素の大きさが大きくなり、視差映像の解像度が低下する。そこで好ましくは、Ax/Ay≧1とすることで、Bx,Ayが大きくなった場合であっても、θが小さくなりすぎることはない。よって、解像度の低下を抑制することができる。
【0042】
さらに、レンズピッチL及び傾斜角θの値によっては、数Vに分割した各視差画像に色むらが発生してしまう場合がある。色むらを抑制する方法について以下に説明する。具体的には、式(4)を満たす整数α及びβのうち、式(5)のGHが最小となるα,βをα0及びβ0とした場合、α0がDの倍数ではないように、px,py,Lx,θの各数値を設定する。Dは、二次元ディスプレイ11が備える色画素の色の種類である。ここでは、R,G,Bの3色の色画素が周期的に配列した構成を有するので、α0が3の倍数ではなければよい。
【0043】
Lx=α・px+β・py・tanθ …(4)
GH=(α・px)
2+(β・py)
2 …(5)
【0044】
式(4)及び式(5)について、
図6を用いて説明する。
図6は、ある2つの色画素13f及び色画素13gと、シリンドリカルレンズ12の境界線BL1,BL2を示す。境界線BL1は色画素13fの中心Aを、境界線BL2は色画素13gの中心Bを通る。三角形BAC,BCDに着目すると、自然数α,βに対して式(4)を満たす必要があることが分かる。さらに、色画素13fと色画素13gの色が異なるためには、α0が3の倍数でなければよいことが分かる。
【0045】
シリンドリカルレンズ12を通して二次元ディスプレイ11の表示面を見ると、直線LABに沿って、常にR,G,B,R,…もしくはR,B,G,R,…と異なる色が順に並んで見えることになる。中心A及び中心Bを結ぶ線分の長さ(GH
1/2)は、色画素13f,13gの相対距離である。α0及びβ0はこの相対距離を最小にするように選ばれている。よって、直線ABの方向に、小さい周期(3×GH
1/2)でR,G,Bの色画素が順に配列する。よって、色むらを抑制することができる。
【0046】
また、上記のようにすれば、各色画素13f,13gは同一の視差映像を構成する色画素となる。即ち、隣り合うレンズに必ず同一の視差映像を構成する色画素が存在するため、全てのシリンドリカルレンズに全ての視差映像が必ず1度は表示されることになる。
【0047】
なお、一実施形態では、R,G,Bの3色の色画素が水平方向に周期的に配列された二次元ディスプレイ11を用いた場合を示している。しかし、さらにY(黄)を加えた4色、あるいはそれ以上の異なる種類の色画素を、水平方向に周期的に配列した場合においても、上記のα0の数値が色の数(D)の倍数でなければ、色むらを抑制することができる。
【0048】
さらに、レンチキュラーシート14(レンチキュラーレンズ)と二次元ディスプレイ11(表示装置)との物理的な相対関係によって映像にモアレが発生する場合がある。モアレは、レンチキュラーシート14と二次元ディスプレイ11内の全色画素との相対関係によって発生する。具体的には、同色の色画素とレンチキュラーシートとの関係や、二次元ディスプレイ11のブラックストライプとレンチキュラーシート14との関係でモアレが発生する。同色の色画素とは、RならR、GならG、BならBという意味である。モアレは、立体映像ではない二次元の映像を表示する場合でも同様に発生する。
【0049】
そこで、二次元ディスプレイ11の色画素がR,G,Bの3色でα0が7,8,11のいずれかである場合におけるモアレを抑制する方法について説明する。
【0050】
式(4)はδ=Lx/pxであることから以下の式(11)のように変形することができる。
tanθ=−(α−δ)/β・(px/py) …(11)
【0051】
ここで、式(5)のGHを最小にする整数α0を、3(=D)の倍数でない値である7,8,11とした場合、レンズの傾斜角θとパラメータδ=Lx/pxとを以下の範囲とすることが好ましい。以下の範囲とすることにより、同色の色画素とレンチキュラーシートとの関係や、二次元ディスプレイ11のブラックストライプとレンチキュラーシート14との関係で発生するモアレを抑制することができる。
【0052】
α0=7とした場合の第1の好適な範囲について説明する。α0=7のとき、β0=−1となる。α0=7、β0=−1のとき、式(11)より、tanθ=(7-δ)・(px/py)となる。このとき、5.3≦δ≦5.4とする。即ち、式(7)を満たすことが好ましい。
tanθ=(7-δ)・(px/py) かつ 5.3≦δ≦5.4 …(7)
後述するシミュレーションの結果より分かるように、5.3≦δ≦5.4とすることによってモアレを抑制することができる。
【0053】
α0=8とした場合の第2の好適な範囲について説明する。α0=8のとき、β0=−2となる。α0=8、β0=−2のとき、式(11)より、tanθ=0.5・(8-δ)・(px/py)である。このとき、5.1≦δ≦5.4とする。即ち、式(8)を満たすことが好ましい。
tanθ=0.5・(8-δ)・(px/py) かつ 5.1≦δ≦5.4 …(8)
後述するシミュレーションの結果より分かるように、5.1≦δ≦5.4とすることによってモアレを抑制することができる。
【0054】
α0=11とした場合の第3の好適な範囲について説明する。α0=11のとき、β0=−2となる。α0=11、β0=−2のとき、式(11)より、tanθ=0.5・(11-δ)・(px/py)である。このとき、8.6≦δ≦8.7とする。即ち、式(9)を満たすことが好ましい。
tanθ=0.5・(11-δ)・(px/py) かつ 8.6≦δ≦8.7 …(9)
後述するシミュレーションの結果より分かるように、8.6≦δ≦8.7とすることによってモアレを抑制することができる。
【0055】
ここで、第1〜第3の好適な範囲でモアレが抑制されることをシミュレーション結果を用いて説明する。まず、
図7〜
図13を用いて第1の好適な範囲のシミュレーション結果について示す。
【0056】
図7〜
図12は、レンチキュラーシート14を介して見た複数の色画素13を拡大した状態を示している。
図7〜
図12において、(a)はR,G,Bによる色によってモアレが発生するか否かを示している。ここでは理解を容易にするため、Gを白、R,Bを黒で表している。
図7〜
図12の(a)における黒い部分はR,Bの部分またはブラックストライプの部分である。
図7〜
図12において、(b)は輝度によってモアレが発生するか否かを示している。
図7〜
図12の(b)は、カラーフィルタを取り外した状態でR,G,Bそれぞれに所定のレベルの信号を表示することによって、所定の輝度の白を表示させたものである。
図7〜
図12の(b)における黒い部分はブラックストライプの部分である。
【0057】
δ=5.0のとき、δ=Lx/pxであるから、水平レンズピッチLxが水平画素ピッチpxの整数倍となる。従って、δ=5.0は不可である。
図7はδ=5.1の場合を示している。(a)の色ではモアレは発生していないものの、(b)の輝度ではモアレが発生している。ここでは理解を容易にするためのモアレの発生の様子を波線にて示している。矢印で示す方向に沿った部分はモアレによって暗くなっている部分を示している。
図8はδ=5.2の場合を示している。
図7と同様、(a)の色ではモアレは発生していないものの、(b)の輝度ではモアレが発生している。
【0058】
図9はδ=5.3の場合を示している。
図9より分かるように、(a)の色と(b)の輝度のいずれもモアレは発生していない。
図10はδ=5.4の場合を示している。
図10より分かるように、(a)の色と(b)の輝度のいずれもモアレは発生していない。
図11はδ=5.5の場合を示している。δ=5.5では、(b)の輝度ではモアレは発生していないものの、(a)の色ではモアレが発生している。
図12はδ=5.6の場合を示している。δ=5.6では、
図11のδ=5.5と同様、(b)の輝度ではモアレは発生していないものの、(a)の色ではモアレが発生している。前述のように、
図11及び
図12の(a)はGのモアレを示しており、R,Bでも同様にモアレが発生する。
【0059】
以上の第1の好適な範囲の場合のシミュレーション結果をまとめると、
図13のようになる。5.3≦δ≦5.4が好ましいことが分かる。
【0060】
次に、
図14〜
図19を用いて第2の好適な範囲のシミュレーション結果について説明する。
図14〜
図18の(a)は、
図7〜
図12の(a)と同様、R,G,Bによる色によってモアレが発生するか否かを示しており、
図14〜
図18の(b)は、
図7〜
図12の(b)と同様、輝度によってモアレが発生するか否かを示している。
【0061】
δ=5.0のとき、水平レンズピッチLxが水平画素ピッチpxの整数倍となるため、δ=5.0は不可である。
図14〜
図17は、それぞれ、δ=5.1〜5.4の場合を示している。
図14〜
図17より分かるように、(a)の色と(b)の輝度のいずれもモアレは発生していない。
図18は、δ=5.5の場合を示している。(b)の輝度ではモアレは発生していないものの、(a)の色ではモアレが発生している。
【0062】
以上の第2の好適な範囲の場合のシミュレーション結果をまとめると、
図19のようになる。5.1≦δ≦5.4が好ましいことが分かる。
【0063】
さらに、
図20〜
図25を用いて第3の好適な範囲のシミュレーション結果について説明する。
図20〜
図24の(a)は、
図7〜
図12の(a)と同様、R,G,Bによる色によってモアレが発生するか否かを示しており、
図20〜
図24の(b)は、
図7〜
図12の(b)と同様、輝度によってモアレが発生するか否かを示している。
【0064】
図20はδ=8.5の場合を示している。(b)の輝度ではモアレは発生していないものの、(a)の色ではモアレが発生している。
図21はδ=8.6の場合、
図22はδ=8.7の場合を示している。
図21,
図22より分かるように、(a)の色と(b)の輝度のいずれもモアレは発生していない。
図23はδ=8.8の場合を示している。δ=8.8の場合には、(a)の色ではモアレは発生していないものの、(b)の輝度ではモアレが発生している。
図24はδ=8.9の場合を示している。
図23と同様、δ=8.9の場合には、(a)の色ではモアレは発生していないものの、(b)の輝度ではモアレが発生している。
【0065】
以上の第3の好適な範囲の場合のシミュレーション結果をまとめると、
図25のようになる。8.6≦δ≦8.7が好ましいことが分かる。
【0066】
第1〜第3の好適な範囲においてモアレが抑制されるのは、空間周波数が画面内において全て均一かつ高周波に分布するためである。本実施形態によれば、tanθ>(px/py)とすることにより、シリンドリカルレンズ12の拡大効果による画素サイズを小さくし、解像感を向上させることもできる。
【0067】
(実施例1)
以上を踏まえて、一実施形態の実施例1を以下に説明する。
図26は、実施例1の裸眼立体ディスプレイ装置の構成を示す平面図である。
図27は、
図26の裸眼立体ディスプレイ装置の各パラメータの値を示すテーブルである。
図1の裸眼立体ディスプレイ装置と同様に、垂直方向及び水平方向の各々に所定のピッチで色画素が配列されている。さらに、垂直方向に同色の色画素が配列され、水平方向にはR,G,Bの色画素が周期的に配列されている。
【0068】
複数のシリンドリカルレンズ12a,12b,12c,…は、互いに平行に一次元方向に配列されている。各色画素13は複数のシリンドリカルレンズ12a,12b,12c,…を通して観察される。シリンドリカルレンズ12a〜12cの境界線BL1〜BL4は、二次元ディスプレイ11の垂直方向VLに対して傾斜角θで傾斜している。なお、水平画素ピッチpxは0.1mmであり、垂直画素ピッチpyは0.3mmである。
【0069】
ここで、
図27に示すように、傾斜角θ、レンズピッチLを、θ=28.44°、L=0.473mmに設定する。式(1)において、Ax=13、Ay=8を満たし、また、レンズピッチに関するパラメータBxは、Bx=8を満たす。そのため、式(3)のAy≧2かつBx≧2の他、AyがBxの整数倍である点、Ax/Ay≧1である点も満たす。また、α0=7、β0=−1で、式(4)と式(5)を満たす。さらに、δ=Lx/px=L/(px・cosθ)より、δ=5.375となり、5.3≦δ≦5.4を満たす。
【0070】
実施例1における、各色画素13とレンチキュラーシート14(シリンドリカルレンズ12a〜12c)の相対位置と、各色画素13がどの視差映像を提示するかを
図28に示す。1本のシリンドリカルレンズに全ての視差映像(1〜43)が提示されることが確認できる。即ち、斜線状のノイズを抑制可能である。また、隣り合うレンズで同一の視差映像となる色画素が存在すること、隣り合うシリンドリカルレンズで同一の視差映像に対応する色画素13は水平で7画素離れており、色が異なることが確認できる。よって、隣り合うシリンドリカルレンズの間において、同一の視差映像に対応する色画素13のうち、異なる色の色画素13が、同色の色画素13よりも近くに配列され、色むらのない均一な画質が実現できる。
【0071】
さらに、式(7)を満たすため、モアレを抑制することができる。
【0072】
図29は、
図39と同様に、43個に分割された視差映像を、シリンドリカルレンズ12を通して1点から観測したときの様子を示すシミュレート画像である。
図29の(a)は、レンズピッチLを0.473mmとして、視差映像をシリンドリカルレンズ12を通して観測した場合を示している。
図29の(a)より、色むらや斜線状のノイズが表れていないことが分かる。また、
図29の(b)は、レンズピッチLが0.5%膨張したことを考慮して、シリンドリカルレンズ12と色画素13との相対位置に従って再構築した視差映像を、シリンドリカルレンズ12を通して観測した場合を示している。視差映像を再構築したにもかかわらず、
図39に現れた斜線状のノイズが
図29(b)には発生していないことが分かる。
【0073】
以上のように、実施例1によれば、シリンドリカルレンズ12の水平レンズピッチLxを水平画素ピッチpxの整数倍からずらし、レンズピッチLを大きくすることなく視差映像の分割数を多くした場合であっても、斜線状のノイズや色むらの発生を抑えることができる。さらに、レンズピッチLの変化に合わせて視差映像を再構築した場合であっても、斜線状のノイズを抑制することができる。さらに、モアレを抑制することができる。
【0074】
(実施例2)
実施例2の裸眼立体ディスプレイ装置の構成は、
図26と同様である。
図30は、実施例2による裸眼立体ディスプレイ装置の各パラメータの値を示すテーブルである。
図30に示すように、実施例2では、傾斜角θ、レンズピッチLを、θ=24.62°、L=0.477mmとしている。(1)式において、Ax=11、Ay=8を満たし、また、レンズピッチに関するパラメータBxは、Bx=4を満たす。そのため、式(3)のAy≧2かつBx≧2)の他、AyがBxの整数倍である点、Ax/Ay≧1である点も満たす。また、α0=8、β0=−2で、式(4)及び式(5)を満たす。さらに、δ=Lx/px=L/(px・cosθ)より、δ=5.25となり、5.1≦δ≦5.4式を満たす。
【0075】
実施例2における、各色画素13とレンチキュラーシート14(シリンドリカルレンズ12a〜12c)の相対位置と、各色画素13がどの視差映像を提示するかを
図31に示す。1本のシリンドリカルレンズに全ての視差映像(1〜42)が提示されることが確認できる。即ち、斜線状のノイズを抑制可能である。また、隣り合うレンズで同一の視差映像となる色画素が存在すること、隣り合うシリンドリカルレンズで同一の視差映像に対応する色画素13は水平で8画素離れており、色が異なることが確認できる。よって、隣り合うシリンドリカルレンズの間において、同一の視差映像に対応する色画素13のうち、異なる色の色画素13が、同色の色画素13よりも近くに配列され、色むらのない均一な画質が実現できる。
【0076】
さらに、式(8)を満たすため、モアレを抑制することができる。
【0077】
図32は、
図39と同様に、42個に分割された視差映像を、シリンドリカルレンズ12を通して1点から観測したときの様子を示したシミュレート画像である。
図32の(a)は、レンズピッチLを0.477mmとして、視差映像をシリンドリカルレンズ12を通して観測した場合を示している。
図32の(a)より、色むらや斜線状のノイズが表れていないことが分かる。また、
図32の(b)は、レンズピッチLが0.5%膨張したことを考慮して、シリンドリカルレンズ12と色画素13との相対位置に従って再構築した視差映像を、シリンドリカルレンズ12を通して観測した場合を示している。視差映像を再構築したにもかかわらず、
図39に現れた斜線状のノイズが
図32(b)には発生していないことが分かる。
【0078】
以上のように、実施例2によれば、シリンドリカルレンズ12の水平レンズピッチLxを水平画素ピッチpxの整数倍からずらし、レンズピッチLを大きくすることなく視差映像の分割数を多くした場合であっても、斜線状のノイズや色むらの発生を抑えることができる。さらに、レンズピッチLの変化に合わせて視差映像を再構築した場合であっても、斜線状のノイズを抑制することができる。さらに、モアレを抑制することができる。
【0079】
(実施例3)
実施例3の裸眼立体ディスプレイ装置の構成は、
図26と同様である。
図33は、実施例3による裸眼立体ディスプレイ装置の各パラメータの値を示すテーブルである。
図33に示すように、実施例3では、傾斜角θ、レンズピッチLを、θ=21.60°、L=0.802mmとしている。(1)式において、Ax=19、Ay=16を満たし、また、レンズピッチに関するパラメータBxは、Bx=8を満たす。そのため、式(3)のAy≧2かつBx≧2)の他、AyがBxの整数倍である点、Ax/Ay≧1である点も満たす。また、α0=11、β0=−2で、式(6)及び式(7)を満たす。さらに、δ=Lx/px=L/(px・cosθ)より、δ=8.625となり、8.6≦δ≦8.7を満たす。
【0080】
実施例3における、各色画素13とレンチキュラーシート14(シリンドリカルレンズ12a〜12c)の相対位置と、各色画素13がどの視差映像を提示するかを
図34に示す。実施例3では分割する視差映像の数Vが138であり、図が煩雑になるのを避けるため、
図34では、隣り合う色画素間の数字のジャンプ幅を示している。
【0081】
1本のシリンドリカルレンズに全ての視差映像(1〜138)が提示されることが確認できる。即ち、斜線状のノイズを抑制可能である。また、隣り合うレンズで同一の視差映像となる色画素が存在すること、隣り合うシリンドリカルレンズで同一の視差映像に対応する色画素13は水平で11画素離れており、色が異なることが確認できる。よって、隣り合うシリンドリカルレンズの間において、同一の視差映像に対応する色画素13のうち、異なる色の色画素13が、同色の色画素13よりも近くに配列され、色むらのない均一な画質が実現できる。
【0082】
さらに、式(9)を満たすため、モアレを抑制することができる。
【0083】
図35は、
図39と同様に、138個に分割された視差映像を、シリンドリカルレンズ12を通して1点から観測したときの様子を示したシミュレート画像である。
図35の(a)は、レンズピッチLを0.802mmとして、視差映像をシリンドリカルレンズ12を通して観測した場合を示している。
図35の(a)より、色むらや斜線状のノイズが表れていないことが分かる。また、
図35の(b)は、レンズピッチLが0.5%膨張したことを考慮して、シリンドリカルレンズ12と色画素13との相対位置に従って再構築した視差映像を、シリンドリカルレンズ12を通して観測した場合を示している。視差映像を再構築したにもかかわらず、
図39に現れた斜線状のノイズが
図35(b)には発生していないことが分かる。
【0084】
以上のように、実施例3によれば、シリンドリカルレンズ12の水平レンズピッチLxを水平画素ピッチpxの整数倍からずらし、レンズピッチLを大きくすることなく視差映像の分割数を多くした場合であっても、斜線状のノイズや色むらの発生を抑えることができる。さらに、レンズピッチLの変化に合わせて視差映像を再構築した場合であっても、斜線状のノイズを抑制することができる。さらに、モアレを抑制することができる。
【0085】
本発明は、以上説明した本実施形態及び実施例1〜3に限定されることはなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変更可能である。二次元ディスプレイ11として、液晶ディスプレイ(LCD)パネル及びカラーLCD表示装置を例示したが、これ以外の二次元ディスプレイ、例えば、ブラウン管(CRT)、プラズマディスプレイ、電子ペーパー、EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイ、プロジェクタなどを用いても構わない。