(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ガスボンベを筒状部から搬出するときに、ガイド部材がガスボンベと一緒に筒状部から飛び出さないようにするために飛び出し規制部が設けられていることを特徴とする請求項1記載のガスボンベ運搬装置。
【背景技術】
【0002】
毒性または可燃性の高圧ガスが充填されたガスボンベからガスの漏洩、例えばバルブ部分からガスが漏洩した場合には、カバーで覆う等の処理が行われ、ガスの外部への放出、大気への拡散の抑制が行われる。さらにガスの漏洩が大きい場合には、耐圧性のガスボンベ運搬装置が利用され、密閉空間に閉じ込めて製造元や適切な処理施設へと運搬される。
【0003】
しかしながらこれまでは、液化塩素ガス用のガスボンベ等、最高充填圧力が2Mpa以下のガスボンベに限られており、例えば液化塩化水素ガスのガスボンベなどの、より高圧のガスが充填されたガスボンベに適用するのは避けられていた。
さらにガスボンベは、25kg用のガスボンベ(長さ1400mm、外径220mm)のほかにも、5kg用の(長さ650mm、外径170mm)や1kg容器(長さ370mm、外径100mm)などの異なる大きさのものがある。そのためこのような異なる大きさのガスボンベに適用できる汎用性を持ったガスボンベ運搬装置が要請されていた。
特許文献1には簡便に漏洩ガスボンベの処理を行う装置について記載されているが、本発明のように漏洩した高圧のガスボンベを安全に運搬するものではない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明はこのような事情の下になされたものであって、その目的はガスが漏洩したガスボンベを密閉空間に収納して運搬することができ、長さ寸法が互いに異なるガスボンベに対して汎用化されたガスボンベ運搬装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のガスボンベ運搬装置は、ガスが漏洩したガスボンベを横倒しの姿勢で密閉空間に収納して運搬するガスボンベ運搬装置であって、
台車と、
前記台車に横向きに設けられると共に第1のガスボンベを収納できる大きさに形成され、その一端側がガスボンベの搬入出口をなす有底のボンベ収納用の筒状部と、
前記筒状部内に、ガスボンベの周面を支持するために取り外し自在に設けられると共にガスボンベの搬入出時に当該ガスボンベをガイドするガイド支持部材と、
前記ガイド支持部材に着脱自在に設けられ、前記第1のガスボンベよりも長さ寸法が短い第2のガスボンベの底部の位置を規制するための規制部材と、を備えとことを特徴とする。
【0007】
また本発明のガスボンベ運搬装置は、前記ガスボンベを筒状部から搬出するときに、ガイド支持部材がガスボンベと一緒に筒状部から飛び出さないようにするために飛び出し規制部が設けられていることを特徴としてもよい。
【発明の効果】
【0008】
本発明のガスボンベ運搬装置によれば、ガスボンベは、筒状部内のガイド支持部材によって、筒状部の長さ方向にガイドされるため、搬入出が容易である。またガイド支持部材に規制部材を着脱自在に設けることにより、長さ寸法の大きい第1のガスボンベを筒状部に搬入するときには、当該規制部材を外し、長さ寸法の小さい第2のガスボンベを筒状部に搬入するときには、当該規制部材をガイド支持部材に装着することにより、長さ寸法が互いに異なる複数種類のガスボンベを筒状部に搬入できる。そして長さ寸法の短いガスボンベについては筒状部の奥部へと入り込まずに搬入出口に近い領域に規制されるため、ガスボンベの搬出が容易である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明に係るガスボンベ運搬装置の外観を示す斜視図である。
【
図2】本発明の筒状部の開口部側の構成を示す斜視図である。
【
図3】本発明の筒状部の開口部側の構成を示す側断面図である。
【
図4】本発明のガイド支持部材の外観を示す斜視図である。
【
図5】前記ガイド支持部材にガスボンベを載置した状態を示す分解斜視図である。
【
図6】本発明に係るガスボンベ運搬装置の正面図である。
【
図7】本発明に係るガスボンベ運搬装置の側面図である。
【
図8】前記ガイド支持部材に長さの短いガスボンベを載置した状態を示す分解斜視図である。
【
図9】前記ガイド支持部材に規制部材を設置した状態を示す斜視図である。
【
図10】前記ガイド支持部材に長さの短いガスボンベを固定した状態を示す斜視図である。
【
図11】前記ガイド支持部材に長さの短いガスボンベを固定した状態を示す縦断側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の実施の形態に係るガスボンベ運搬装置は、
図1に示すように台車6と、ガスが漏洩したガスボンベ7を収納する密閉空間を形成する円筒形状の筒状部1と、筒状部1に収納されたガスボンベ7を支持し、ガイドするためのガイド支持部材3と、を備えている。
【0011】
台車6は、例えば長さ2m、幅1mの矩形の平板状の基台60の下面側の4隅の各々に車輪62が設けられ、左右側端部に枠状の取っ手部61が設けられている。
台車6の上方側の幅方向の中心に対して左側に偏心した位置には、筒状部1が台車6の前後方向に伸びるように横倒しの状態で固定されている。筒状部1の一端側(前方側)には、ガスボンベ7の搬入出口である開口部17が形成され、開口部17にはフランジ11が形成されている。また筒状部1の後方側には、後述の蓋部2の重量に対応した錘16が設けられる。
【0012】
筒状部1の内部は、例えば内径320mm、長さ2mの空洞として形成される。
図2、3に示すように筒状部1に置けるフランジ11に囲まれる部位の口径は、筒状部1本体部分の内径よりも僅かに小さい寸法になっており、そのため筒状部1の本体部分の前端には、全周に亘って段差12が形成されることになる。段差12は、後述するガイド支持部材3の前端を係止して(規制して)外側へ滑り出るのを防ぐ、飛び出し規制部となる。
フランジ11の外周部右端には、鉛直軸周りに旋回可能な回転軸22が設けられる。回転軸22は上方に伸ばされ、更に先端が屈曲され、支持部21が形成されている。支持部21は、先端に鉤型のフック28が設けられ、当該フック28によって、上方から蓋部2を吊止する。
【0013】
蓋部2は、円板状に形成されており、蓋部2の周縁部には、の厚さ方向に穿設された複数のボルト孔26が周方向に沿って等間隔に配置されている。フランジ11にも、蓋部2のボルト孔26に対応するようにボルト孔27が設けられる。蓋部2のフランジ11と対向する面の上部及び下部には、各々ガイドピン23が設けられている。一方でフランジ11の蓋部2と対向する面の上部及び下部には、各々孔部25が設けられる。蓋部2とフランジ11は、上下のガイドピン23が、夫々上下の孔部25に挿入されることで位置合わせが行われる。筒状部1の上部の前方側には、大気導入弁13が設けられており、後方側にはガス排出弁14が設けられ、ガス排出弁14の前方側には圧力計15が設けられる。
【0014】
筒状部1は、本体部分が圧力配管用炭素鋼(STPG370−S)で構成されると共に、フランジ11及び蓋部2の各々が炭素鋼鍛鋼品(SF440A)で構成されており、密閉状態で7.5Mpa(40℃)の耐圧性を有する。筒状部1は、蓋部2が回転軸22を中心として旋回されることにより回動されて、ガスボンベ7の搬入出が行われる。
【0015】
筒状部1の内部には、ガスボンベ7をガイドし支持するためのガイド支持部材3が載置されている。このガイド支持部材3の構成について
図4〜7を用いて説明する。
図4はガイド支持部材3の斜視図を示し、
図5はガイド支持部材3にガスボンベ7を載置した状態を示し、
図6、7は、夫々ガスボンベ7を載置したガイド支持部材3を筒状部1に挿入した正面図及び側断面図である。なお図中の72は、ガスの漏洩したガスボンベ7に設置される保護キャップを示す。この例ではガイド支持部材3の後端の位置が錘16の前面により規制されるようになっており、筒状部1の前端の前記段差12と、ガイド支持部材3後端の位置を規制する規制部位と、の距離がガイド支持部材3の長さ寸法よりも大きいことから、ガイド支持部材3は筒状部1の内周面を前後に摺動できることになる。なおガイド支持部材3は、上方に持ち上げて引き出すことにより筒状部1の内部から取り出すことができる。
【0016】
ガイド支持部材3はステンレス等の腐食に耐性のある材料で構成され、外形が概ね筒状部1の内周面の下方半分に沿った形状(半割円筒形状)に形成される。
ガイド支持部材3は、筒状部1の内周面に沿って、円弧状に湾曲した湾曲部材33が、ガイド支持部材3の長さ方向に沿って等間隔に配置される。これら湾曲部材33同士の間には、内側の面に沿って、2本の棒状のレール部材31と、4枚の板状部材32と、が架け渡されている。2本のレール部材31は、ガイド支持部材3の底部分に隙間を介して並行に伸ばされている。板状部材32は、レール部材31の左右に2枚ずつ並行に伸ばされており、ガイド支持部材3の後方側には、ドーナツ型の平板を半分に分割し、円周部をガイド支持部材3の内周面に接するように設置された停止板34が設けられている。
【0017】
本願のガスボンベ運搬装置は、長さが互いに異なる複数種のガスボンベに適用できるように構成され、前記停止板34はこれら複数種のガスボンベの中でもっとも長いガスボンベ7の底部の位置を規制するためのものである。この例では、ガスボンベ運搬装置は第1のガスボンベである25kg用のガスボンベと、第2のガスボンベである5kg用のガスボンベとに適用できるように構成されており、25kg用のガスボンベは、停止板34によりその後方位置が規制されることになる。以下の説明では25kg用のガスボンベ、5kg用のガスボンベに対して夫々符号7a、7bを割り当て、充填量を特定しないガスボンベとして説明するときには、既述の通り符号「7」を割り当てることとする。
【0018】
図8に符号「4」で示す部材は、本発明のガスボンベ運搬装置の構成部材であり、この規制部材4は、5kg用のガスボンベ7bを筒状部1内に収納するときに、当該5kg用のガスボンベ7bの長さ寸法に応じた位置にてガイド支持部材3に取り付けられる。
規制部材4は、板状体を25kg用のガスボンベ7の周面に沿うように円弧状に湾曲した円弧状部材43からなり、円弧状部材43の後方側の円弧縁からは、上方に規制板42が伸び出す。一方、下方に向けて係止板41が伸び出している。
【0019】
図9に示すように、円弧状部材43をガイド支持部材3に設けられた2本のレール部材31に架け渡されるように配置して、係止板41が、湾曲部材33の前端部に係止されて、後方への移動が規制される。従って、5kg用のガスボンベ7bをガイド支持部材3の上に載置して奥側に押し込んだときに、当該ガスボンベ7bの底部の位置が規制される。即ち、規制部材4は、ガイド支持部材3に着脱自在に設けられることになる。
【0020】
上述のガスボンベ運搬装置を用いた、ガスの漏洩したガスボンベの処理工程について説明する。ガスボンベ7aでガス漏れが発生した場合には、まずガス漏れの抑制を試みる。ガス漏れは、多くの場合には、ガスボンベ7のバルブ部位で起こる。バルブ部位からの漏洩の場合には、バルブ部位を塞ぐように保護キャップ72を設置する。ガス漏れの抑制を試みた後、ガスボンベ運搬装置をガスボンベ7の位置まで移動させて、車輪62を車輪止めにより固定した後、蓋部2を回動させて全開にする。蓋部2は、その耐圧性のため重量が大きくなっている。筒状部1は、台車6上に偏心して配置されており、蓋部2を全開にした場合にも台車6の安定性を保てるように構成されている。しかしながら蓋部2の開閉により重心が大きく移動するため慎重に開閉する。蓋部2を開いた後は、フランジ11面を清掃する。
【0021】
25kg用のガスボンベ7aの場合には、ガスボンベ7aを横置きにして、運搬用ベルトにより持ち上げて、底部の縁を、筒状部1の内部のガイド支持部材3に設けられた2本のレール部材31に当接させる。次いで当該ガスボンベ7aをレール部材31によってガイドさせながら後方へと押し込み、徐々にガイド支持部材3上に載置して、ガスボンベ7aは、底部が停止板34にあたるまで押し込まれる。こうしてガスボンベ7aは、
図4に示すように、保護キャップ72側が前方側に向くように寝かせた姿勢で、ガイド支持部材3上に載置される。ガイド支持部材3の2本のレール部材31は、ガスボンベ7を当接して支持するため、転がりを規制する役割を有する。
【0022】
また長さの短いガスボンベ、例えば5kg用のガスボンベ7bを収納するときには、収納するガスボンベの長さに合わせて、規制部材4を設置する。まずガイド支持部材3を上方に持ち上げながら、筒状部1から半分ほど引き出す。規制部材4を、ガイド支持部材3に設けられた、例えば前方側から3番目の湾曲部材33の前端側に係止する。
【0023】
ガスボンベ7bは、前述の25kg用のガスボンベ7aと同様に、底部が後方側になるように横倒しにされ、規制部材4の前方側に載置される。ガスボンベ7bは、底部を規制板42に当たるようにガイド支持部材3上に載置されて、後方側への移動が規制される。ガスボンベ7bをガイド支持部材3上に載置した後に、
図10、
図11に示すようにガスボンベ7bの胴部、及び首部を固定具であるベルト5によって固定する。胴部を固定するベルト5は、ガスボンベ7bを板状部材32のうち下方側の2枚に固定する。一方で首部を固定するベルト5は、首部に巻きつけた後、ガスボンベ7bの下方を引き回して、レール部材31の湾曲部材33の後方側に掛止して、ガスボンベ7bの前方側への移動を規制する。ガスボンベ7bは、ガイド支持部材3に載置された後、ガイド支持部材3と共に筒状部1に挿入される。ガイド支持部材3は、錘16の前面に当たるまで挿入され、前端部が段差12に掛止されて、前後の移動が規制される。
【0024】
続いて蓋部2を閉める。蓋部2を回転軸22を中心に鉛直軸周りに旋回して、フランジ11と対向する位置まで移動させる。蓋部2とフランジ11とは、ガイドピン23により位置調整をした後、10mm程度の隙間を開けて配置される。蓋部2とフランジ11とは、当該隙間にガスケット29を挿入した後、ボルト孔26、27に止め具24を挿入され、周縁部に均等に力が加わるように固定される。蓋部2を固定した後、筒状部1からのガス漏れの有無を圧力計15の値や発泡液などにより確認する。ガスボンベ運搬装置は、ガス漏れがないことを確認した後、製造元や適切な処理施設へと移動される。
【0025】
処理施設へと運搬されたガスボンベ運搬装置は、蓋部2を閉じたまま、ガス排出弁14を処理施設のガス処理装置と接続し、内部に充満している有毒ガスが排出される。筒状部1は、内圧が低下した後に、大気導入弁13が開かれて大気が流入される。筒状部1内部の有毒ガスは、大気によって濃度が徐々に下げられながら、ガス排出弁14側から真空ポンプによって吸引されてガス処理装置へと導入され、処理が行われる。
【0026】
ガスボンベ7は、ガスの処理の終了後に筒状部1から搬出される。ガスボンベ7aの場合には、蓋部2を回動して開いた後、ガスボンベ7aを引き出す。その際にガイド支持部材3も、ガスボンベ7aの重量による摩擦力のため、ガスボンベ7aと共に引き出される方向に力が加えられる。ガイド支持部材3は、筒状部1に設けられた段差12により前方への移動が規制されるため、筒状部1内に留まる。そのためガスボンベ7aをガイド支持部材3に設けられたレール部材31上を摺動させて搬出することができる。
【0027】
一方で5kg用のガスボンベ7bを搬出する場合には、ガイド支持部材3と、ガイド支持部材3に固定された5kg用のガスボンベ7bと、を共に上方に持ち上げて引き出す。ガイド支持部材3を半分ほど引き出した後、5kg用のガスボンベ7bは、首部及び周胴部を固定しているベルト5がはずされ、ガイド支持部材3から取り上げられる。
【0028】
本発明の実施の形態では、2種類のガスボンベ7を例として用いたが、3種類以上のガスボンベ7に用いる場合も、ガスボンベ7の長さに応じて、ガイド支持部材3上の規制部材4の設置位置を変更することにより適用できる。ガイド支持部材3上の規制部材4の設置位置は、ガイド支持部材3上の湾曲部材33の設置間隔や数によって変更可能であり、様々な大きさのガスボンベ7に適用することができる。
【0029】
上述のガスボンベ運搬装置によれば、ガスボンベ7は、筒状部1内のガイド支持部材3によって、筒状部1の長さ方向にガイドされるため、搬入出が容易である。またガイド支持部材3に規制部材4を着脱自在に設けることにより、長さ寸法の大きい第1のガスボンベ7aを筒状部1に搬入するときには、当該規制部材4を外し、長さ寸法の小さい第2のガスボンベ7bを筒状部1に搬入するときには、当該規制部材4をガイド支持部材3に装着することにより、長さ寸法が互いに異なる複数種類のガスボンベ7を筒状部1に搬入できる。そして長さ寸法の短いガスボンベ7bについては筒状部1の奥部へと入り込まずに搬入出口に近い領域に規制されるため、ガスボンベ7bの搬出が容易である。