(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
蓋付の収納装置としては従来より種々のものが知られている。例えば、自動車の車室内にはカップホルダや収納ボックス等の収納装置が配設される。このような収納装置の蓋体の開閉機構としては、一箇所の揺動軸を中心として蓋体を本体に対して一軸的に揺動させるものがある。蓋体の揺動を一軸的に行う場合には、揺動軸を中心とした蓋体の揺動軌跡は大きいものとなり、蓋体の開閉のためのスペースを大きくとる必要がある。この場合、自動車の車室内など限られた空間では、収納装置の配置スペースの確保が困難となったり、蓋体の開閉がし難くなったりする場合がある。そこで、例えば、特許文献1及び2には、2箇所の揺動軸を中心として蓋体を本体に対して二軸的に揺動させることにより、蓋体の揺動軌跡の省スペース化が図られた蓋体の開閉機構が開示されている。
【0003】
図7は、特許文献1に開示されている蓋体の開閉機構51を備えた収納装置B1の閉状態における模式断面図を示している。収納装置B1は、自動車のセンターコンソール52に配設されているセンターコンソールボックスである。蓋体の開閉機構51は、開口53aを有する本体53と、揺動により開口53aを開閉する蓋体54との間に介在し、蓋体54の揺動軸S1、S2に直交する面に対して面対称形状に設けられる機構である。すなわち、蓋体の開閉機構51は、本体53の一側壁53L側及び一側壁53Lに対向する他側壁側(図示せず)に面対称形状に設けられており、
図7は、一側壁53L側に設けられた蓋体の開閉機構51を示している。
【0004】
図7に示すように、蓋体の開閉機構51は、一端側に形成された第一揺動軸S1と他端側に形成された第二揺動軸S2とを有し第一揺動軸S1で本体53の一側壁53Lに揺動自在に枢支された連結腕部57と、第一揺動軸S1を中心とした円弧に沿って部分円弧状に配置され本体53の一側壁53Lに固定されたラック55と、第二揺動軸S2に揺動自在に枢支されラック55と噛合する部分円弧状のピニオン56と、を備えている。蓋体54の揺動中心部側には蓋体54の閉位置において本体53の開口53a方向に延びる保持片54aが形成されており、保持片54aの先端側にピニオン56が一体に形成されている。
【0005】
図7に示す蓋体54の閉位置から、蓋体54の自由端部側を持ち上げると、保持片54aは、第二揺動軸S2を中心に連結腕部57に対して揺動する。このとき、保持片54aに設けられたピニオン56が本体53に固定されたラック55と噛合していることによって、ピニオン56の揺動が駆動されて、連結腕部57が第一揺動軸S1を中心として下方に揺動する。そして、第二揺動軸S2は本体53の下方に向けて移動する。このように、蓋体54の揺動は、第二揺動軸S2を中心とした保持片54aの連結腕部57に対する揺動と、第一揺動軸S1を中心とした連結腕部57の本体53に対する揺動との2種類の揺動が足し合わされたものとなる。
【0006】
図8は、特許文献2に開示されている蓋体の開閉機構61を備えた収納装置B2の開状態と閉状態との推移状態における模式断面図を示している。収納装置B2は、上述した収納装置B1と同様にセンターコンソールボックスである。蓋体の開閉機構61は、開口63aを有する本体63と、揺動により開口63aを開閉する蓋体64との間に介在し、蓋体64の揺動軸T1、T2に直交する面に対して面対称形状に設けられる機構である。すなわち、蓋体の開閉機構61は、本体63の一側壁側(図示せず)及び一側壁に対向する他側壁63R側に面対称形状に設けられており、
図8は、他側壁63R側に設けられた蓋体の開閉機構61を示している。
【0007】
図8に示すように、蓋体の開閉機構61は、蓋体64の仮想の第一揺動軸T1を中心とした第一円弧に沿って部分円弧状に配置され本体63の他側壁63Rに固定された第一ラック65と、第二揺動軸T2に揺動自在に枢支され第一ラック65と噛合する部分円弧状の第一ピニオン66と、前記第一円弧よりも大径で第一揺動軸T1を中心とした第二円弧に沿って部分円弧状に配置され本体63の他側壁63Rに固定された第二ラック67と、第二ラック67と噛合すると共に蓋体64の第二揺動軸T2となる第一ピニオン66の回動中心にダンパ69を介して回動自在に枢支された円弧状の第二ピニオン68と、を備えている。蓋体64の揺動中心部側には蓋体64の閉位置において本体63の開口63a方向に延びる保持片64aが形成されており、保持片64aに第一ピニオン66が固定されている。本体63の他側壁63Rの上方部に突設されたボス63cと、第一ピニオン66の下方部に形成された装着部66aとを繋ぐようにトーションスプリング70が装着されている。
【0008】
蓋体64の閉位置においては、トーションスプリング70に付勢力が蓄積された状態で図略のロック装置により蓋体64が閉位置にロックされている。蓋体64のロックを解除すると、
図8に示すように、トーションスプリング70の付勢力によって、蓋体64が開位置に向けて揺動し始める。このとき、保持片64aに固定された第一ピニオン66が本体63に固定された第一ラック65と噛合していることによって、第二揺動軸T2を中心とした第一ピニオン66の揺動が駆動されつつ、第一ピニオン66が第一揺動軸T1を中心として下方に揺動する。そして、第二揺動軸T2は本体63の下方に向けて移動する。
【0009】
このように、蓋体の開閉機構61における蓋体64の揺動は、第一揺動軸T1を中心とした第一ピニオン66の本体63に対する揺動と、第二揺動軸T2を中心とした第一ピニオン66の揺動との2種類の揺動が足し合わされたものとなる。そして、第一ピニオン66が下方に揺動しているときには、第二ラック67と第二ピニオン68とが噛合している状態となっているため、トーションスプリング70による付勢力がダンパ69によって減衰される。これにより、蓋体64は、ゆっくり開放され、静かに移動し、収納装置B2に高級感を付与することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
特許文献1に開示されている蓋体の開閉機構51においては、連結腕部57によって、本体53に対して蓋体54が蓋体54の揺動軸S1、S2方向及び揺動軸S1、S2に直交する方向に位置決めされている。これにより、蓋体54の揺動動作中、ラック55とピニオン56との噛合が揺動軸S1、S2方向にずれることがなく、また、ラック55の歯のピッチ円とピニオン56の歯のピッチ円との間隔を適正な間隔に保つことが可能となっている。しかし、蓋体54を本体53に対して二軸的に揺動させているため、蓋体の揺動を一軸的に行う蓋体の開閉機構に比べて部品点数が増加するのが難点である。具体的には、
図7に示した連結腕部57が蓋体の揺動を一軸的に行う蓋体の開閉機構に比べて増加する部品となっている。
【0012】
これに対して、特許文献2に開示されている蓋体の開閉機構61においては、本体63に固定された第一及び第二ラック65及び67と、第一及び第二ラック65及び67にそれぞれ噛合する第一及び第二ピニオン66及び68とを遊星ギヤのように組み合わせることによって、上述した連結腕部57を用いることなく、蓋体64を本体63に対して二軸的に揺動させることを可能としている。したがって、蓋体の開閉機構61においては、蓋体の揺動を一軸的に行う蓋体の開閉機構に対して、最小限の部品点数の増加により蓋体64の二軸的な揺動を可能としている。
【0013】
ところが、蓋体の開閉機構61においては、トーションスプリング70が第一ラック65と第一ピニオン66との噛合が外れないように保持する保持手段としての役割を兼ね備えているものの、上述した蓋体の開閉機構51に備わる連結腕部57のような蓋体64の動きを厳密に位置決めする機能を有していない。このため、本体63に対して蓋体64が蓋体64の揺動軸T1、T2方向及び揺動軸T1、T2に直交する方向にがたつく。第一ラック65及び第二ラック67の間で、第一及び第二ピニオン66及び68ががたつくと、使用者は、歯の噛み合わせ抵抗によるゴリゴリした感触を感じることとなり、これが操作フィーリングの悪化を招く虞がある。
【0014】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、開口を有する本体に対して開口を開閉する蓋体が二軸的に揺動する蓋体の開閉機構において、部品点数の増加を抑えた簡素な構成で、蓋体の揺動動作中の良好な操作フィーリングが得られる蓋体の開閉機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上述した課題を解決するために、請求項1に係る蓋体の開閉機構の発明の構成上の特徴は、開口を有する本体と揺動により該開口を開閉する蓋体との間に介在し、該蓋体の揺動軸に直交する面に対して面対称形状に設けられる蓋体の開閉機構であって、前記蓋体の仮想の第一揺動軸を中心とした第一円弧に沿うように該第一円弧の半径方向外側に向いた歯が形成され前記本体の前記開口を挟んで対向する一側部及び他側部に固定された一対の第一ラックと、各前記第一ラックと噛合すると共に前記蓋体の前記一側部側及び前記他側部側のそれぞれに固定された一対の円弧状の第一ピニオンと、前記第一円弧よりも大径で前記第一揺動軸を中心とした第二円弧に沿うように該第二円弧の半径方向内側に向いた歯が形成され前記本体の前記一側部及び前記他側部に固定された一対の第二ラックと、各前記第二ラックと噛合すると共に前記蓋体の第二揺動軸となる各前記第一ピニオンの回動中心にそれぞれ回動自在に枢支された一対の円弧状の第二ピニオンと、
前記第一揺動軸から離れるにつれて前記本体に近づくように傾斜すると共に前記第一円弧に沿うように形成され該本体の前記一側部及び前記他側部に固定された一対の第一固定テーパ部と、前記第二揺動軸から離れるにつれて前記本体から離れるように傾斜すると共に各前記第一ピニオンの歯のピッチ円に沿うように形成されかつ各該第一ピニオンに固定され、前記蓋体の揺動動作中常に各前記第一固定テーパ部に当接する一対の第一可動テーパ部と、前記第一揺動軸から離れるにつれて前記本体から離れるように傾斜すると共に前記第二円弧に沿うように形成され該本体の前記一側部及び前記他側部に固定された一対の第二固定テーパ部と、前記第二揺動軸から離れるにつれて前記本体から離れるように傾斜すると共に各前記第二ピニオンの歯のピッチ円に沿うように形成されかつ各該第二ピニオンに固定され、前記蓋体の揺動動作中常に各前記第二固定テーパ部に当接する一対の第二可動テーパ部と、を備えることである。
【0016】
なお、請求項1における「固定され」という記載は、可動状態ではなく固定状態で設けられていることを意味している。したがって、「固定され」には、別体の部材(部品)同士がネジ等で互いに固定されることと、二つの部位が一体に形成されることとの両方が含まれている。
【発明の効果】
【0017】
請求項1に係る蓋体の開閉機構によれば、蓋体の仮想の第一揺動軸を中心とした第一円弧に沿うように形成され本体に固定された第一ラックと、蓋体に固定された第一ピニオンとが噛合している。また、第一円弧よりも大径で第一揺動軸を中心とした第二円弧に沿うように形成され本体に固定された第二ラックと、蓋体の第二揺動軸となる第一ピニオンの回動中心に回動自在に枢支された第二ピニオンとが噛合している。これにより、部品点数の増加を抑えた簡素な構成で、蓋体を本体に対して二軸的に揺動させることが可能となっている。
【0018】
また、請求項1に係る蓋体の開閉機構によれば、本体に固定された円弧状の第一固定テーパ部は、第一揺動軸から離れるにつれて本体に近づくように傾斜している。また、第一ピニオンに固定された円弧状の第一可動テーパ部は、第二揺動軸から離れるにつれて本体から離れるように傾斜している。そして、蓋体の揺動動作中常に第一固定テーパ部と第一可動テーパ部とが当接している。したがって、第一ピニオンに固定された第一可動テーパ部が第一固定テーパ部から受ける推力は、第一固定テーパ部の面に直交する方向、すなわち、蓋体の揺動動作中常に本体から離れる方向かつ第一揺動軸から離れる方向に向いている。
【0019】
また、請求項1に係る蓋体の開閉機構によれば、本体に固定された円弧状の第二固定テーパ部は、第一揺動軸から離れるにつれて本体から離れるように傾斜している。また、第二ピニオンに固定された円弧状の第二可動テーパ部は、第二揺動軸から離れるにつれて本体から離れるように傾斜している。そして、蓋体の揺動動作中常に第二固定テーパ部と第二可動テーパ部とが当接している。したがって、第二ピニオンに固定された第二可動テーパ部が第二固定テーパ部から受ける推力は、第二固定テーパ部の面に直交する方向、すなわち、蓋体の揺動動作中常に本体から離れる方向かつ第一揺動軸に近づく方向に向いている。
【0020】
すなわち、蓋体の揺動軸に直交する方向において、蓋体に固定された第一ピニオンが第一固定テーパ部から受ける推力と、第一ピニオンに枢支された第二ピニオンが第二固定テーパ部から受ける推力とは、互いに打ち消し合う方向となっている。また、蓋体の揺動軸方向において、蓋体の一側部側に固定された第一ピニオンが、一側部側の第一及び第二固定テーパ部から受ける推力と、蓋体の他側部側に固定された第一ピニオンが、他側部側の第一及び第二固定テーパ部から受ける推力とは、互いに打ち消し合う方向となっている。
【0021】
よって、請求項1に係る蓋体の開閉機構によれば、本体に対して蓋体が蓋体の揺動軸方向及び揺動軸に直交する方向に厳密に位置決めされる。よって、第一ラックの歯のピッチ円と第一ピニオンの歯のピッチ円との間隔、及び第二ラックの歯のピッチ円と第二ピニオンの歯のピッチ円との間隔を、それぞれ蓋体の揺動動作中常に適正な間隔に保つことが可能であり、蓋体の揺動動作中の良好な操作フィーリングを得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1〜6に基づき、本発明の一実施形態に係る蓋体の開閉機構について説明する。なお、説明中における上、下、左、右、前、後とは、
図1及び2に示す上、下、左、右、前、後のことであり、蓋体の自由端部側(
図1及び2における後方)に対面した使用者から見た上、下、左、右、前、後を指している。なお、
図1及び2における上下方向は紙面平行方向、前方向及び右方向は紙面奥方向、後方向及び左方向は紙面手前方向に向いている。
【0024】
図1は、本実施形態に係る蓋体の開閉機構1を備えた収納装置Bの閉状態における斜視図を示している。
図2は、収納装置Bの左半分の分解斜視図を示している。収納装置Bは、自動車のセンターコンソール2に配設されている合成樹脂製のセンターコンソールボックスである。収納装置Bは、上方に開口3aを有し矩形箱形を呈する本体3と、揺動により開口3aを開閉する蓋体4と、本体3と蓋体4との間に介在する蓋体の開閉機構1と、を備えている。
図1に示すように、蓋体の開閉機構1は、蓋体4の揺動軸A1、A2に直交する面に対して面対称形状に設けられる機構である。すなわち、蓋体の開閉機構1は、本体3の左側壁3L(一側部)側及び左側壁3Lに対向する右側壁3R(他側部)側に面対称形状に設けられている。
【0025】
蓋体の開閉機構1は、それぞれ左右一対に設けられた第一ラック5と、第一ピニオン6と、第二ラック7と、第二ピニオン8と、ダンパ9と、を備えている。また、蓋体の開閉機構1には、
図8に示した従来の蓋体の開閉機構61に備わるトーションスプリング70と同様の図略のトーションスプリングと、蓋体4を閉位置にロックする図略のロック機構とが装備されている。蓋体4は、
図1に示す第一揺動軸A1及び第二揺動軸A2を中心として本体3に対して二軸的に揺動する。
【0026】
ここで、第一揺動軸A1は、軸部材を有していない仮想の揺動軸である。蓋体の開閉機構1は、本体3の左側壁3L側及び右側壁3R側で面対称形状に設けられているため、以下の説明においては、左側壁3L側に設けられた蓋体の開閉機構1について説明し、右側壁3R側に設けられた蓋体の開閉機構1についての説明は省略する。
【0027】
第一ラック5は、第一揺動軸A1を中心とした第一円弧C1に沿うように、本体3の左側壁3Lから突出した部分円弧状のリブ状に形成されている(
図1及び2参照)。第一ラック5には、第一円弧C1の半径方向外側に向いた多数の歯5aが形成されている。第一ラック5の基端側には、第一固定テーパ部5bが形成されている。第一固定テーパ部5bは、第一揺動軸A1から離れるにつれて本体3の左側壁3Lに近づくように傾斜すると共に、第一円弧C1に沿うように第一ラック5と一体に形成されている(
図6参照)。
【0028】
第一ピニオン6は、第二揺動軸A2を中心として揺動する板状を呈する部材であり、第一揺動軸A1側に部分円弧状に配置された多数の歯6aを有している(
図1及び2参照)。蓋体4の揺動中心部側(
図1及び2における前方)には、蓋体4の閉位置において本体3の開口3a方向に延びる保持片4aが形成されており、保持片4aの先端側に第一ピニオン6が一体に形成されている。第一ピニオン6の本体3に対向する側には、第一可動テーパ部6bが形成されている。第一可動テーパ部6bは、第二揺動軸A2から離れるにつれて本体3の左側壁3Lから離れるように傾斜すると共に、第一ピニオン6の歯6aのピッチ円に沿うように第一ピニオン6と一体に形成されている(
図6参照)。
図2に示すように、第一ピニオン6には、板厚方向に貫通した丸穴6cが形成されている。
【0029】
図1及び3〜6に示すように、蓋体4の揺動動作中常に、第一ラック5の歯5aと第一ピニオン6の歯6aとが噛合している。また、蓋体4の揺動動作中常に、第一ラック5と一体に形成された第一固定テーパ部5bと、第一ピニオン6と一体に形成された第一可動テーパ部6bとが当接している。
【0030】
第二ラック7は、第一円弧C1よりも大径で第一揺動軸A1を中心とした第二円弧C2に沿うように、本体3の左側壁3Lから突出した部分円弧状のリブ状に形成されている(
図1及び2参照)。第二ラック7には、第二円弧C2の半径方向内側に向いた多数の歯7aが形成されている。第二ラック7の基端側には、第二固定テーパ部7bが形成されている。第二固定テーパ部7bは、第一揺動軸A1から離れるにつれて本体3の左側壁3Lから離れるように傾斜すると共に、第二円弧C2に沿うように第二ラック7と一体に形成されている(
図6参照)。
【0031】
第二ピニオン8は、第二揺動軸A2を中心として回動する円弧状を呈する部材である。第二ピニオン8は、蓋体4の第二揺動軸A2となる第一ピニオン6の回動中心にダンパ9を介して回動自在に枢支されている。第二ピニオン8の本体3に対向する側には、第二可動テーパ部8bが形成されている。第二可動テーパ部8bは、第二揺動軸A2から離れるにつれて本体3の左側壁3Lから離れるように傾斜すると共に、第二ピニオン8の歯8aのピッチ円に沿うように第二ピニオン8と一体に形成されている(
図6参照)。
【0032】
図1及び3〜6に示すように、蓋体4の揺動動作中常に、第二ラック7の歯7aと第二ピニオン8の歯8aとが噛合している。また、蓋体4の揺動動作中常に、第二ラック7と一体に形成された第二固定テーパ部7bと、第二ピニオン8と一体に形成された第二可動テーパ部8bとが当接している。
【0033】
図6に示すように、ダンパ9は、ロータ軸9aが回動したときに、ダンパ9の内部に収容されたロータが回動し、ロータがシリコンオイルなどの粘性流体の粘性抵抗を受けることによって、減衰力を得る部品である。
図6に示すように、第二ピニオン8の中心がダンパ9のロータ軸9aに連結されている。
【0034】
図1及び2に示すように、蓋体の開閉機構1の組み立ては、次のように行う。蓋体4を閉位置の角度に保って、本体3の開口3aを塞ぐように本体3に蓋体4を取り付ける。このとき、第一ラック5及び第一ピニオン6のそれぞれに設けられた目印を見ながら、第一ラック5の所定の歯5aと、第一ピニオン6の所定の歯6aとが噛合するように本体3に蓋体4を取り付ける。そして、第二ピニオン8と連結された状態となっているダンパ9を、第一ピニオン6に形成されている丸穴6cに第二ピニオン8側から挿入した後、第一ピニオン6にダンパ9をネジ止め固定する。これにより、第一ラック5の歯5aと第一ピニオン6の歯6aとが噛合し、かつ第二ラック7の歯7aと第二ピニオン8の歯8aとが噛合して蓋体の開閉機構1の組み立てが完了する。
【0035】
図3〜5に基づき、蓋体の開閉機構1の動作について説明する。
図3は、蓋体の開閉機構1を備えた収納装置Bの閉状態における模式断面図を示している。
図4は、収納装置Bの開状態と閉状態との推移状態における模式断面図を示している。
図5は、収納装置Bの開状態における模式断面図を示している。
図3〜5は、それぞれ収納装置Bを左方から見た状態を示している。
【0036】
図3に示す収納装置Bの閉状態においては、図略のトーションスプリングに付勢力が蓄積された状態で図略のロック装置により蓋体4が閉位置にロックされている。蓋体4のロックを解除すると、
図4に示すように、図略のトーションスプリングの付勢力によって、蓋体4が開位置に向けて揺動し始める。このとき、蓋体4の保持片4aの先端側に一体に形成された第一ピニオン6が、本体3に形成された第一ラック5と噛合していることによって、第二揺動軸A2を中心とした第一ピニオン6の揺動が駆動されつつ、第一ピニオン6が第一揺動軸A1を中心として下方に揺動する。そして、第二揺動軸A2は本体3の下方に向けて移動する。
【0037】
続いて、
図4に示す収納装置Bの推移状態から、図略のトーションスプリングの付勢力によって、第一ピニオン6の揺動がさらに駆動されると、
図5に示すように、第二揺動軸A2を中心とした第一ピニオン6の揺動が駆動されつつ、第一ピニオン6が第一揺動軸A1を中心としてさらに下方に揺動する。そして、第二揺動軸A2は本体3の下方に向けてさらに移動する。
【0038】
例えば、
図3に示す収納装置Bの閉状態において、第一揺動軸A1と第二揺動軸A2とを結んだ線を線LC、
図4に示す収納装置Bの推移状態において、第一揺動軸A1と第二揺動軸A2とを結んだ線を線LM、
図5に示す収納装置Bの開状態において、第一揺動軸A1と第二揺動軸A2とを結んだ線を線LOとした場合、収納装置Bの閉状態から推移状態までに、第一ピニオン6は、第一揺動軸A1を中心として線LCと線LMとのなす角度αだけ下方に揺動し、第二揺動軸A2を中心として角度βだけ反時計回りに揺動する。また、収納装置Bの閉状態から開状態までに、第一ピニオン6は、第一揺動軸A1を中心として線LCと線LOとのなす角度α’(α’>α)だけ下方に揺動し、第二揺動軸A2を中心として角度β’(β’>β)だけ反時計回りに揺動する。
【0039】
このように、蓋体の開閉機構1における蓋体4の揺動は、第一揺動軸A1を中心とした第一ピニオン6の本体3に対する揺動と、第二揺動軸A2を中心とした第一ピニオン6の揺動との2種類の揺動が足し合わされたものとなる。こうして、蓋体4の自由端部側の揺動軌跡の上方への張り出しを抑えつつ、蓋体4を揺動させることが可能となっている。また、蓋体4の揺動動作中常に、第二ラック7の歯7aと第二ピニオン8の歯8aとが噛合している状態となっているため、図略のトーションスプリングによる付勢力がダンパ9によって減衰される。これにより、蓋体4は、ゆっくり開放され、静かに移動し、収納装置Bに高級感を付与することができる。
【0040】
上述したとおり、蓋体4の揺動動作中常に、第一固定テーパ部5bと、第一可動テーパ部6bとが当接している。また、蓋体4の揺動動作中常に、第二固定テーパ部7bと、第二可動テーパ部8bとが当接している。したがって、
図6に示すように、蓋体4の揺動動作中常に、第一可動テーパ部6bには、第一固定テーパ部5bの面に直交する方向への推力R1が作用する。推力R1は、本体3から離れる方向かつ第一揺動軸A1から離れる方向に向いている。また、蓋体4の揺動動作中常に、第二可動テーパ部8bには、第二固定テーパ部7bの面に直交する方向への推力R2が作用する。推力R2は、本体3から離れる方向かつ第一揺動軸A1に近づく方向に向いている。
【0041】
このような本実施形態の構成によると、蓋体4の仮想の第一揺動軸A1を中心とした第一円弧C1に沿うように形成され本体3に固定された第一ラック5と、蓋体4に固定された第一ピニオン6とが噛合している。また、第一円弧C1よりも大径で第一揺動軸A1を中心とした第二円弧C2に沿うように形成され本体3に固定された第二ラック7と、蓋体3の第二揺動軸A2となる第一ピニオン6の回動中心に回動自在に枢支された第二ピニオン8とが噛合している。これにより、部品点数の増加を抑えた簡素な構成で、蓋体4を本体3に対して二軸的に揺動させることが可能となっている。
【0042】
また、本実施形態の構成によると、本体3に固定された円弧状の第一固定テーパ部5bは、第一揺動軸A1から離れるにつれて本体3に近づくように傾斜している。また、第一ピニオン6に固定された円弧状の第一可動テーパ部6bは、第二揺動軸A2から離れるにつれて本体3から離れるように傾斜している。そして、蓋体4の揺動動作中常に第一固定テーパ部5bと第一可動テーパ部6bとが当接している。したがって、第一可動テーパ部6bは、第一固定テーパ部5bから、本体3から離れる方向かつ第一揺動軸A1から離れる方向に向いている推力R1を受ける。
【0043】
また、本実施形態の構成によると、本体3に固定された円弧状の第二固定テーパ部7bは、第一揺動軸A1から離れるにつれて本体3から離れるように傾斜している。また、第二ピニオン8に固定された円弧状の第二可動テーパ部8bは、第二揺動軸A2から離れるにつれて本体3から離れるように傾斜している。そして、蓋体4の揺動動作中常に第二固定テーパ部7bと第二可動テーパ部8bとが当接している。したがって、第二可動テーパ部8bは、第二固定テーパ部7bから、本体3から離れる方向かつ第一揺動軸A1に近づく方向に向いている推力R2を受ける。
【0044】
すなわち、蓋体4の揺動軸A1、A2に直交する方向において、蓋体4に固定された第一ピニオン6が第一固定テーパ部5bから受ける推力R1と、第一ピニオン6に枢支された第二ピニオン8が第二固定テーパ部7bから受ける推力R2とは、互いに打ち消し合う方向となっている。また、蓋体4の揺動軸A1、A2方向において、蓋体4の左側壁3L側に固定された第一ピニオン6が、左側壁3L側の第一及び第二固定テーパ部5b及び7bから受ける推力R1及びR2と、蓋体4の右側壁3R側に固定された第一ピニオンが、右側壁3R側の第一及び第二固定テーパ部から受ける推力とは、互いに打ち消し合う方向となっている。
【0045】
よって、本実施形態に係る蓋体の開閉機構1によれば、本体3に対して蓋体4が蓋体4の揺動軸A1、A2方向及び揺動軸A1、A2方向に直交する方向に厳密に位置決めされる。よって、第一ラック5の歯5aのピッチ円と第一ピニオン6の歯6bのピッチ円との間隔、及び第二ラック7の歯7aのピッチ円と第二ピニオン8の歯8aのピッチ円との間隔を、それぞれ蓋体4の揺動動作中常に適正な間隔に保つことが可能であり、蓋体4の揺動動作中の良好な操作フィーリングを得ることができる。
【0046】
本発明の蓋体の開閉機構は、上述した一実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、当業者が行い得る変更、改良等を施した種々の形態にて実施することができることは言うまでもない。
【0047】
例えば、本実施形態においては、本体3の開口3aを上方に向けて収納装置Bを配置しているが、収納装置Bの向きは限定されない。例えば、本体3の開口3aを斜め上方、水平方向、あるいは下方に向けて収納装置Bを配置することもできる。
【0048】
また、本実施形態においては、蓋体4を開方向に揺動付勢する図略のトーションスプリングと、蓋体4を閉位置にロックする図略のロック装置とを配設して、蓋体4の揺動が自動で行われるようにしている。しかし、蓋体4の揺動は自動に限定されない。蓋体の開閉機構に、図略のトーションスプリング及び図略のロック装置を配設することなく、蓋体4の揺動を手動で行うようにしてもよい。この場合、蓋体4を手動で揺動させる操作力がダンパ9によって減衰されるため、使用者は、蓋体4を揺動させるときに適度な操作抵抗を感じることが可能であり、蓋体4の揺動動作中の良好な操作フィーリングを得ることができる。