(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記セルロース繊維(A)と、前記水溶性高分子(B)との重量比((A)/(B))が、5/95〜95/5の範囲内であることを特徴とする請求項2に記載のガスバリア性積層体。
前記セルロース繊維(A)と、前記ポリビニルアルコール(B)との重量比((A)/(B))が、50/50〜95/5の範囲内であることを特徴とする請求項4に記載のガスバリア性積層体。
前記セルロース繊維(A)と、前記ポリウロン酸(B)との重量比((A)/(B))が、20/80〜95/5の範囲内であることを特徴とする請求項6に記載のガスバリア性積層体。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、セルロースナノファイバーから成る膜は、高湿度条件下ではセルロースの吸湿・膨潤により、ガスバリア性などの性能が低下してしまう問題がある。特許文献4に記載の、セルロースナノファイバー層の他に防湿層を一層設けたガスバリア性フィルムでも、セルロースナノファイバーの吸湿・膨潤の影響が大きいため、上記問題を解決するためには、セルロースナノファイバー膜自体を耐湿化する方法が求められる。
【0007】
一方、セルロース繊維は、繊維同士の密な絡み合い構造により強度や屈曲性に優れた膜を形成するが、隙間の多い構造となるため、水蒸気や大気中の汚染物質などの劣化因子が容易に浸入・浸透し、膜や下地となる基材の劣化を招く。特に、水蒸気の浸入は、吸湿性の高いセルロースにとって性能低下を引き起こす要因となるため望ましくない。
【0008】
そこで、本発明では、セルロース繊維から成る膜を耐湿化することにより、セルロース膜の優れたガスバリア性を高湿度下でも維持し、劣化因子となる水蒸気や汚れなどの膜内へ浸入・浸透を抑制することのできるガスバリア性積層体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するための手段として、請求項1に記載の発明は、基材と、前記基材の少なくとも一方の面上に設けたガスバリア層とを有するガスバリア性積層体であって、前記ガスバリア層が、少なくともセルロース繊維と1種または2種以上の水溶性高分子と
、シロキサン化合物とを含
み、前記シロキサン化合物は、前記ガスバリア層全体に対して、30重量%以上60重量%以下の範囲で含まれることを特徴とするガスバリア性積層体である。
【0010】
また、請求項2に記載の発明は、前記セルロース繊維の繊維幅が、3nm以上50nm以下の範囲内であることを特徴とする請求項1に記載のガスバリア性積層体である。
【0011】
また、請求項3に記載の発明は、前記セルロース繊維(A)と、前記水溶性高分子(B)との重量比((A)/(B))が、5/95〜95/5の範囲内であることを特徴とする請求項2に記載のガスバリア性積層体である。
【0012】
また、請求項4に記載の発明は、前記水溶性高分子の少なくとも1種が、ポリビニルアルコールであることを特徴とする請求項3に記載のガスバリア性積層体である。
【0013】
また、請求項5に記載の発明は、前記セルロース繊維(A)と、前記ポリビニルアルコール(B)との重量比((A)/(B))が、50/50〜95/5の範囲内であることを特徴とする請求項4に記載のガスバリア性積層体である。
【0014】
また、請求項6に記載の発明は、前記水溶性高分子の少なくとも1種が、ポリウロン酸であることを特徴とする請求項3に記載のガスバリア性積層体である。
【0015】
また、請求項7に記載の発明は、前記セルロース繊維(A)と、前記ポリウロン酸(B)との重量比((A)/(B))が、20/80〜95/5の範囲内であることを特徴とする請求項6に記載のガスバリア性積層体である。
【0016】
また、請求項8に記載の発明は、前記ガスバリア層が、さらに層状鉱物を含むことを特徴とする請求項5または7に記載のガスバリア性積層体である。
【0018】
また、請求項
9に記載の発明は、請求項
7または
8に記載のガスバリア性積層体の少なくとも一方の面に、接着層を介してヒートシール可能な熱可塑性樹脂層を積層してなることを特徴とする包装材料である。
【発明の効果】
【0019】
本発明は、セルロース系材料を利用することで、環境負荷の少ないガスバリア性積層体を提供することができる。また、セルロース繊維と水溶性高分子から成る複合化膜を用いることで、高湿度環境下においても優れたガスバリア性を示し、さらに、劣化因子となる水蒸気や汚れなどの浸入・浸透を抑制することができるガスバリア性積層体を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を詳細に説明する。本発明のガスバリア性積層体は、基材と、基材の少なくとも一方の面上に、少なくともセルロース繊維と水溶性高分子とを含むガスバリア層とから構成される。
【0021】
本発明のガスバリア層に含まれるセルロース繊維としては、その繊維幅が、3nm以上50nm以下、長さ数μmのものを用いることができる。繊維幅が前記範囲内であると、透明、且つ強度の高い膜を得ることができる。特に、繊維幅が3nm以上10nm以下の範囲が好適であり、繊維同士の絡み合いがより緻密となるため、ガスバリア性や強度などの性能に優れた膜を得ることができる。
【0022】
ここで、セルロース繊維の繊維幅測定は、0.001重量%セルロース繊維水分散液をマイカ基板上に1滴落とし、乾燥させたものをサンプルとして用いることができる。測定方法は、例えば、表面形状をAFM(ナノスコープ、日本ビーコ社製)により観察し、マイカ基材と繊維の高低差を繊維幅とみなし、計測をおこなう。
【0023】
また、繊維の絡み合いが密であるかどうかは、例えば、SEM(S−4800、日立ハイテクノロジーズ社製)を用いた表面観察や、キャストフィルムの比重を測定することで判断することができる。キャストフィルムの比重の測定については、デジタル比重計(AND−DMA−220、安藤計器製工所製)を用いて測定することができ、サンプルであるキャストフィルムは、セルロース繊維水分散液をポリスチレン製の角型ケース内に所定量流し込み50℃、24時間加熱乾燥することにより作製することができる。
【0024】
セルロース繊維を含む膜については、表面観察によれば、繊維間に生じる隙間の数や大きさが小さいほど、また、比重の測定によれば、比重が高くなるほど、繊維幅が小さく、繊維の絡み合いが密な膜が得られる。従って、さらに繊維間の隙間をなくしていくことで、膜内への水蒸気や汚れなどの劣化因子の浸入・浸透を防ぎ、高湿度下におけるガスバリア性低下を抑制することができる。
【0025】
そこで、本発明では、膜中のセルロース繊維間に存在する隙間を充填することのできる材料として、ガスバリア層に、セルロースと相性の良い水溶性高分子が含まれることが好ましい。セルロース繊維と水溶性高分子を混合して作製した複合化膜は、水蒸気や汚れなど劣化因子の浸入・浸透を抑制し、その結果、高湿度環境下においても優れたガスバリア性を示す膜となる。
【0026】
水溶性高分子としては、合成高分子類からは、ポリビニルアルコール、エチレンビニルアルコール共重合体、ポリメタクリル酸、ポリアクリル酸、ポリアミン、ポリウレタンやそれらの誘導体等、水溶性多糖類からは、ポリウロン酸、澱粉、カルボキシメチル澱粉、カチオン化澱粉、キチン、キトサン、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、アルギン酸、ペクチン、ゼラチン、グアガム、カラギーナンやそれらの誘導体等から選ばれる1種または2種以上のものを用いることができる。
【0027】
中でも、合成高分子類からは、ポリビニルアルコールを用いることが特に好ましい。造膜性、透明性、柔軟性などに優れるポリビニルアルコールは、セルロース繊維との相性も良いため、容易に繊維間の隙間を充填し、強度と柔軟性を併せ持つ膜をつくることができる。一般に、ポリビニルアルコール(PVA)は、ポリ酢酸ビニルをけん化して得られるものであるが、酢酸基が数十%残存している、いわゆる部分けん化PVAから酢酸基が数%しか残存していない完全けん化PVAまでを含む。
【0028】
また、水溶性多糖類からは、ポリウロン酸を用いることが特に好ましい。ポリウロン酸としては、アルギン酸、ペクチン、ヒアルロン酸などの天然由来のポリウロン酸や、セルロース、でんぷん、キチンなどの天然多糖類を酸化処理して得られるセロウロン酸、アミノウロン酸、キトウロン酸などが挙げられ、これらは天然のバイオマス資源から得られるものであり、環境負荷の少ない材料として非常に好ましい。特に、セロウロン酸、アミノウロン酸、キトウロン酸は、セルロース繊維と化学構造が類似していることから、なじみが良く、セルロース繊維表面への密着性が非常に高い。
【0029】
中でも、セルロース繊維と同じセルロース系原料の酸化によって得られるセロウロン酸は、セルロース繊維表面への密着性が最も高く、緻密で高比重、高強度である複合化膜を得ることができるため、最も好適に用いることができる。
【0030】
また、でんぷんを酸化することによって得られるアミロウロン酸は、セルロースとのなじみが良好で、ガスバリア性と強度を有する膜を形成できる。よって、セルロース繊維とアミロウロン酸の複合膜は、高いガスバリア性を有する膜となるため好ましい。
【0031】
また、ポリウロン酸の一種であるペクチンは、セロウロン酸やアミロウロン酸と比較し、セルロース繊維となじみは弱いが、成膜性が高く、得られる膜の強度が高い等の特徴を有する。よって、セルロース繊維とペクチンの複合膜は、ガスバリア性に加え、高い強度を有する膜となるため好ましい。
【0032】
セロウロン酸は、例えば、以下のように製造することができる。アルカリ処理したセルロースを、TEMPOと、臭化アルカリ金属またはヨウ化アルカリ金属との共存下、次亜ハロゲン酸、亜ハロゲン酸、過ハロゲン酸およびそれらの塩から選択された少なくとも一種の酸化剤を用いて酸化し、グルコース残基の6位にカルボキシル基を導入する。
【0033】
本発明のセルロース繊維(A)と、水溶性高分子(B)との重量比((A)/(B))は、5/95〜95/5の範囲内であることが好ましい。この範囲から外れて、水溶性高分子の重量がセルロース繊維の重量に比べて多くなる場合、セルロース繊維の絡み合いがなくなるため、膜の強度や屈曲性が低下してしまうので好ましくない。また、この範囲から外れて、セルロース繊維の重量が水溶性高分子の重量に比べて多くなる場合、セルロース繊維間の隙間を水溶性高分子で十分に充填することができなくなるため、ガスバリア性等の性能を十分に発揮することができない。なお、ガスバリア層に含まれる水溶性高分子が2種以上の場合、水溶性高分子(B)の重量は、すべての水溶性高分子の総重量とする。
【0034】
水溶性高分子としてポリビニルアルコールを用いる場合、セルロース繊維(A)と、ポリビニルアルコール(B)との重量比((A)/(B))は、50/50〜95/5の範囲内であることが特に好ましい。ポリビニルアルコールのうち、部分けん化PVAを添加する場合、この範囲から外れて、ポリビニルアルコールの重量がセルロース繊維の重量に比べて多くなると、プラスチック材料を用いた基材に対する濡れ性は向上するも、コーティング剤が泡立ちやすい液となるため、好ましくない。一方、ポリビニルアルコールのうち、完全けん化PVAを添加する場合、この範囲から外れて、ポリビニルアルコールの重量がセルロース繊維の重量に比べて多くなると、泡立ちの少ない液となるが、プラスチック材料を用いた基材に対する濡れ性が低下し、ハジキ等の原因となるため、好ましくない。
【0035】
また、水溶性高分子としてポリウロン酸を用いる場合、セルロース繊維(A)と、ポリウロン酸(B)との重量比((A)/(B))は、20/80〜95/5の範囲内であることが特に好ましい。この範囲であれば、セルロース繊維間の隙間を十分に充填でき、かつ、表面の平滑性が高くなるため、ガスバリア性が高くなる。
【0036】
本発明のセルロース繊維は、以下の方法により、セルロース繊維分散体として得ることができる。まず、水または水/アルコール中にて、天然セルロース原料に、酸化触媒であるN−オキシル化合物と酸化剤を作用させることで、セルロースのミクロフィブリル表面を酸化処理する。次に、不純物を除去した後、水または水/アルコール混合液中にて分散処理を施すことで、セルロース繊維の分散体として得ることができる。
【0037】
原料の天然セルロースは、針葉樹や広葉樹などから得られる各種木材パルプ、またはケナフ、バガス、ワラ、竹、綿、海藻などから得られる非木材パルプ、ホヤから得られるセルロース、微生物が生産するセルロース等を用いることができる。また、結晶構造については、セルロースI型のものが好ましい。
【0038】
酸化触媒としては、N−オキシル化合物、共酸化剤および酸化剤を含む溶液または懸濁液を使用する。N−オキシル化合物は、TEMPOや、4−アセトアミド−TEMPO、4−カルボキシ−TEMPO、4−フォスフォノオキシ−TEMPOなどのTEMPO誘導体を用いることができる。共酸化剤は、臭化物またはヨウ化物が好ましく、例えば、臭化アルカリ金属やヨウ化アルカリ金属を挙げることができ、特に、反応性の良い臭化ナトリウムが好ましい。酸化剤は、ハロゲン、次亜ハロゲン酸やその塩、亜ハロゲン酸やその塩、過酸化水素などを用いることができるが、次亜塩素酸ナトリウムが好ましい。
【0039】
原料セルロース及び酸化触媒を含む反応液のpHは、酸化反応を効率良く進行させる点からpH9以上pH12以下の範囲であることが好ましい。
【0040】
酸化反応の温度条件は、5℃以上70℃以下の範囲内であれば良いが、反応温度が高くなると副反応が生じやすくなることを考慮し50℃以下が好ましい。
【0041】
酸化処理を施したセルロースは、ミクロフィブリル表面にカルボキシル基が導入され、さらに、該カルボキシル基同士の静電反発による浸透圧効果が、ナノオーダーのミクロフィブリルを独立(分散)しやすくする。特に、分散媒として水を用いた場合、最も安定な分散状態を有する。ただし、乾燥条件、液物性の改良・制御など種々の目的に応じて、アルコール類(エタノール、メタノール、イソプロパノール、tert−ブタノール)を始め、エーテル類、ケトン類を含んでもよい。
【0042】
また、分散方法としては、例えば、ミキサー、高速ホモミキサー、高圧ホモジナイザー、超音波ホモジナイザー、グラインダー磨砕、凍結粉砕、メディアミル、ボールミルの何れか或いはこれらを組み合わせて用いることができる。
【0043】
本発明のガスバリア層には、セルロース繊維と水溶性高分子のほかに、シロキサン化合物が含まれていてもよい。シロキサン化合物とは、シランカップリング剤の加水分解物が縮重合によりシロキサン結合した化合物である。シロキサン結合による架橋構造は、耐水性や基材へ密着性に加え、セルロースの膨潤を抑える効果が非常に高い。特に、オルトケイ酸テトラエチルから得られるシロキサン化合物は、シロキサン結合のみから形成される高度な架橋構造を有するため、膜内への水蒸気の浸入を最も抑える化合物である。その他には、3−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、アクリル酸3−(トリメトキシシリル)プロピルなど種々のシランカップリング剤から得られるシロキサン化合物を用いることができる。また、これらを2種以上混合して用いても良い。シロキサン化合物は、ガスバリア層全体に対して、0重量%以上70重量%以下の範囲で含まれることが好ましい。この範囲であると耐水性や基材への密着性およびセルロースの膨潤を抑えることができる。さらに30重量%以上60重量%以下の範囲であると、上記の効果に加え、より高いバリア性を発揮することができる。
【0044】
本発明のガスバリア層には、さらに層状鉱物が含まれていてもよい。層状鉱物としては、カオリナイト、ディッカイト、ナクライト、ハロイサイト、アンチゴライト、クリソタイル、パイロフィライト、モンモリロナイト、バイデライト、ヘクトライト、サポナイト、スチーブンサイト、テトラシリリックマイカ、ナトリウムテニオライト、白雲母、マーガライト、タルク、バーミキュライト、金雲母、ザンソフィライト、緑泥石などを用いることができる。市販品としては、スメクタイト系の粘土鉱物に属するサポナイト構造を有するスメクトンSA(クニミネ工業社製)、ソジウム型のモンモリロナイトであるクニピア−F(クニミネ工業社製)、精製された天然ベントナイトであるベンゲル(豊順洋行製)等を用いることができる。また、層状鉱物に対して有機化合物を複合化したものであってもよい。例えば、長鎖アルキル基を有する第4級アンモニウムイオンをイオン交換によって層間にインターカレートした複合体が挙げられる。市販品としては、ベントン27、ベントン38(エレメンティススペシャリティーズ社製)等があげられる。層状鉱物は、ガスバリア層全体に対して、0重量%以上70重量%以下の範囲で含まれることが好ましい。この範囲であると、層状鉱物がセルロースの膨潤を抑えることができる上、水分を保持する効果により水溶性高分子の膨潤も抑えることができ好ましい。さらに、10重量%以上50重量%以下であると、層状鉱物を入れることにより膜の強度が低下するのを抑えることができる。また、30重量%以上50重量%以下であると、上記の効果に加え、より高いバリア性を発揮することができる。
【0045】
また、ガスバリア層には、機能性付与のために、さらに添加剤を加えても良い。例えば、レベリング剤、消泡剤、合成高分子、無機系粒子、有機系粒子、潤滑剤、紫外線吸収剤、染料、顔料或いは安定剤などを用いることができ、これらはガスバリア性を損なわない範囲内でコーティング液に添加することができ、用途に応じてフィルム特性を改良することもできる。
【0046】
次に、ガスバリア性積層体の製造方法について説明する。本発明のガスバリア性積層体は、基材の少なくとも一方の面に、少なくともセルロース繊維と水溶性高分子とを含む水溶液を主剤とするコーティング剤を塗布し、乾燥させることにより得ることができる。
【0047】
本発明の基材としては、種々の高分子組成物から成るプラスチック材料を用いることができる。例えば、ポリオレフィン系(ポリエチレン、ポリプロピレン等)、ポリエステル系(ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等)、セルロース系(トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース、セロファン等)、ポリアミド系(6−ナイロン、6,6−ナイロン等)、アクリル系(ポリメチルメタクリレート等)や、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリイミド、ポリビニルアルコール、ポリカーボネート、エチレンビニルアルコール等からなるものが用いられる。また、前述のプラスチック材料の中から、少なくとも1種以上の成分を持つ、或いは共重合成分に持つ、或いはそれらの化学修飾体を成分に有する有機高分子材料も可能である。
【0048】
更に、近年では、少しでも環境負荷を低減させる材料を利用することが有効とされている。本発明の基材においても、例えば、ポリ乳酸、バイオポリオレフィンなど植物から化学合成されるバイオプラスチック、或いはヒドロキシアルカノエートなど微生物が生産するプラスチックを含む基材、或いは木材や草木などのパルプ化、抄紙などの工程を経て得られる紙などを用いることができる。更にはセルロース系材料を含む、セロハン、アセチル化セルロース、セルロース誘導体、セルロースナノファイバーを含む基材も可能である。
【0049】
本発明の基材は、各種層と基材との密着性を向上させるために、予め基材表面に、コロナ処理、プラズマ処理、フレーム処理、オゾン処理、アンカーコート処理等の表面改質を施してあってもよい。
【0050】
また、本発明の基材は、セラミック蒸着を施した基材を用いてもよい。例えば、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化スズ、酸化ケイ素等を蒸着した基材を用いることができる。成膜方法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、プラズマ気相成長法などが挙げられる。
【0051】
また、これらの基材形状は、特に限定されることはなく、フィルム状、シート状、ボトル状、筒状などの各種成形体を用途によって適宜選択することができる。特に、ガスバリア層に含まれるセルロース繊維の有する透明性や屈曲性を活かすことを考慮すると、基材はフィルム状であることが望ましく、透明なプラスチックフィルムを好適に用いることができる。フィルム状の基材は、延伸、未延伸のどちらでも良く、機械的強度や寸法安定性を有するものが良く、例えば、二軸方向に任意に延伸されたポリエチレンテレフタラートフィルムやポリアミドフィルムを好適に用いることができる。さらに、基材には、周知である種々の添加剤や安定剤、例えば、可塑剤、滑剤、酸化防止剤、紫外線防止剤などを用いて機能を付加させたものを用いることも可能である。
【0052】
基材の選定は用途によって適宜おこなうことができる。例えば、ガスバリア性積層体を包装材料とする場合には、価格面、防湿性、充填適性、風合い、廃棄性からポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド系フィルムが好ましいが、環境配慮型材料としては紙やポリ乳酸フィルムの方が好ましい。
【0053】
ガスバリア層の形成方法としては、公知の塗布法を用いることができ、例えば、ロールコーター、リバースロールコーター、グラビアコーター、マイクログラビアコーター、ナイフコーター、バーコーター、ワイヤーバーコーター、ダイコーター、ディップコーター等を用いることができる。以上の塗布方法を用いて、基材の少なくとも一方の面に塗布する。乾燥方法としては、自然乾燥、送風乾燥、熱風乾燥、UV乾燥、熱ロール乾燥、赤外線照射等を用いることができる。
【0054】
また、膜の強度や密着性を向上させるために、ガスバリア層形成後にさらにUV照射やEB照射処理を施すことでも可能である。
【0055】
さらに、ガスバリア層上には、必要に応じて中間フィルム層、ヒートシール可能な熱可塑性樹脂層(ヒートシール層)、印刷層などを積層し、包装材料とすることができる。また、各層をドライラミネート法やウェットラミネート法で積層するための接着層(ラミネート用接着剤層)や、ヒートシール層を溶融押出し法で積層する場合のプライマー層やアンカーコート層などを積層しても良い。
【0056】
以下、本発明のガスバリア性積層体を包装材料として用いる場合の構成例(a)〜(c)を示す。しかし、本発明のガスバリア性積層体はこれに限定されるものではない。
(a)基材/ガスバリア層/ラミネート用接着剤層/ヒートシール層
(b)基材/ガスバリア層/印刷層/ラミネート用接着剤層/ヒートシール層
(c)基材/ガスバリア層/ラミネート用接着剤層/中間フィルム層/ラミネート用接着剤層/ヒートシール層
【0057】
中間フィルム層は、ボイルおよびレトルト殺菌時の破袋強度を高めるために設けられるもので、一般的に機械強度及び熱安定性の面から二軸延伸ナイロンフィルム、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、二軸延伸ポリプロピレンフィルムの内から選ばれることが多い。厚さは、材質や要求品質等に応じて決められるが、一般的には10μm以上30μm以下の範囲である。形成方法としては2液硬化型ウレタン系樹脂等の接着剤を用いて貼り合わせるドライラミネート法により積層することができる。また、紙などのガス透過性の良い基材を用いる場合は、デンプン系の水溶性接着剤や酢酸ビニルエマルジョンのような水性接着剤を用いたウェットラミネーション法により積層できる。
【0058】
また、ヒートシール層は、袋状包装体などを形成する際に密封層として設けられるものである。例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸エステル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体またはそれらの金属架橋物等の樹脂の1種からなるフィルムが用いられる。ヒートシール層の厚さは、目的に応じて決められるが、一般的には15μm以上200μm以下の範囲である。形成方法としては、ヒートシール層を形成するフィルムを2液硬化型ウレタン樹脂などの接着剤を用いて貼り合わせるドライラミネート法等を用いることが一般的であるがいずれも公知の方法により積層することができる。
【0059】
また、ラミネート用接着剤層として用いられる接着剤としては、積層される各層の材質に応じてアクリル系、ポリエステル系、エチレン−酢酸ビニル系、ウレタン系、塩化ビニル−酢酸ビニル系、塩素化ポリプロピレン系などの公知の接着剤を用いることができる。ラミネート用接着剤層を形成するための接着剤の塗布方法としては、公知の塗布法を用いることができ、例えば、ロールコーター、リバースロールコーター、グラビアコーター、マイクログラビアコーター、ナイフコーター、バーコーター、ワイヤーバーコーター、ダイコーター、ディップコーター等を用いることができる。接着剤の塗布量としては、1g/m
2以上10g/m
2以下が好ましい。
【0060】
また、印刷層は、包装袋などとして実用的に用いるために形成されるものであり、ウレタン系、アクリル系、ニトロセルロース系、ゴム系、塩化ビニル系等の従来から用いられているインキバインダー樹脂に各種顔料、体質顔料及び可塑剤、乾燥剤、安定剤等の添加剤などが添加されてなるインキにより構成される層であり、文字、絵柄等が形成されている。
【実施例】
【0061】
以下に、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例により限定されるものではない。
【0062】
以下に示すセルロース繊維((a))、水溶性高分子((b1)〜(b4))、層状鉱物((c))およびシロキサン化合物((d))の各材料を、表1に示した配合比で混合し、処方1〜13のコーティング液を作製した。なお、処方8のオルトケイ酸エチル加水分解物の重量は、SiO
2換算での値である。
【0063】
(a)セルロース繊維:以下の「セルロース繊維の製造方法」によりセルロース繊維分散体を作製した。
(b1)セロウロン酸:以下の「セロウロン酸の製造方法」により作製した。
(b3)ポリビニルアルコール:市販品(PVA−124、クラレ社製)
(b2)アミロウロン酸:以下の「アミロウロン酸の製造方法」により作製した。
(b4)ペクチン:市販品(和光純薬社製)
(c)モンモリロナイト:市販品(クニピアF、クニミネ工業社製)
(d)オルトケイ酸エチル:市販品(和光純薬社製)を水及びエタノール中、酸性条件下で加水分解したものを使用した。
【0064】
[セルロース繊維の製造方法]
漂白クラフトパルプ10gを水500ml中で一晩静置し、パルプを膨潤させた。これを20℃に温度調整し、TEMPO 0.1gと臭化ナトリウム 1gを添加し、パルプの懸濁液とした。さらに、攪拌しながらセルロース重量当たり10mmol/gの次亜塩素酸ナトリウムを添加した。この際、約1Nの水酸化ナトリウム水溶液を添加してパルプ懸濁液のpHを約10.5に保持した。その後240分間反応を行い、十分に水洗しパルプを得た。得られたパルプをイオン交換水で固形分濃度1%に調整し、高速回転ミキサーを用いて約60分間攪拌し、透明なセルロース繊維の分散液を得た。
【0065】
[セロウロン酸の製造方法]
予めベンリ―ゼ(旭化成社製)5gを水に分散させた。この分散液にTEMPO 0.96g及び臭化ナトリウム 1.27gを溶解させた水溶液を加え、ベンリーゼの固形分濃度が約1.3重量%になるよう調製した。次に11%次亜塩素酸ナトリウム水溶液57gを添加し酸化反応を開始した。反応は、系内温度が5℃、PHが10.5の条件でおこなった。(反応が進むとPHが下がるのでNaOH水溶液を滴下し一定を保った)10時間後反応を停止し、水/アセトン混合液で十分に洗浄した後、さらに減圧乾燥することによりセロウロン酸を得た。
【0066】
[アミロウロン酸の製造方法]
予め水溶性デンプン(Acros社製)5gを水に溶解させた。この水溶液にTEMPO 0.048g及び臭化ナトリウム 0.635gを溶解させた水溶液を加え、デンプンの固形分濃度が約1.3重量%になるよう調製した。次に11%次亜塩素酸ナトリウム水溶液44gを添加し酸化反応を開始した。反応は、系内温度が5℃、PHが10.5の条件でおこなった。(反応が進むとPHが下がるのでNaOH水溶液を滴下し一定を保った)10時間後反応を停止し、水/アセトン混合液で十分に洗浄した後、さらに減圧乾燥することによりアミロウロン酸を得た。
【0067】
【表1】
【0068】
<実施例1〜10>
[実施例1〜10におけるガスバリア性フィルムの作製]
厚さ12μmポリエチレンテレフタラートフィルム(ルミラーP60、東レ社製)基材上に、表1の処方1〜10に示した配合で作製したコーティング液を、バーコート法により膜厚0.2μmになるように塗布後、乾燥させガスバリア層を形成し、ガスバリア性フィルムを作製した。
【0069】
[実施例1〜10における包装材料用ガスバリア性フィルムの作製]
さらに、作製したガスバリア性フィルムを包装材料として用いるために、ガスバリア層側に、ラミネート用接着剤層を介してヒートシール層をドライラミネーション法により貼り合わせ、50℃、4日間養生して、包装材料用ガスバリア性フィルムを作製した。ヒートシール層としては、厚さが50μmの直鎖状低密度ポリエチレンフィルム(TUX−FCS、東セロ社製)を使用し、ラミネート用接着剤層を形成する接着剤としては、二液硬化型ポリウレタン系ラミネート用接着剤(A515/A50、三井化学ポリウレタン社製)を使用した。接着剤は、グラビアコート法により、乾燥後の塗布量が4.0g/m
2となるようにガスバリア層上に塗布した。
【0070】
<比較例1〜3>
[比較例1〜3におけるガスバリア性フィルムの作製]
厚さ12μmポリエチレンテレフタラートフィルム(ルミラーP60、東レ社製)基材上に、表1の処方11〜13に示した配合で作製したコーティング液を、バーコート法により膜厚0.2μmになるように塗布後、乾燥させガスバリア層を形成し、ガスバリア性フィルムを作製した。
【0071】
[比較例1〜3における包装材料用ガスバリア性フィルムの作製]
さらに、実施例1〜10と同様の操作で、包装材料用ガスバリア性フィルムを作製した。
【0072】
得られたガスバリア性フィルムの性能は、下記の方法に従って評価した。
【0073】
[酸素透過度(等圧法)(cm
3/m
2・day・Pa)]
酸素透過度測定装置MOCON(OX−TRAN2/21、モダンコントロール社製)を用いて、30℃、40%RH及び70%RHの雰囲気下で測定をおこなった。ガスバリア性フィルムの酸素透過度を測定した結果を表2に示す。
【0074】
[屈曲性]
屈曲性は、ゲルボフレックステスター(テスター産業株式会社製)を用いて、各ガスバリア性フィルムを10回及び100回繰り返し屈曲させた後の、30℃70%RHの雰囲気下での酸素透過度を測定することにより評価した。包装材料用ガスバリア性フィルムの酸素透過度を測定した結果を表3に示す。
【0075】
【表2】
【0076】
【表3】
【0077】
測定の結果、実施例1〜10のガスバリア性フィルムは、比較例1〜3と比べ、高いガスバリア性を示した。さらに、高湿度(70%RH)条件下でのガスバリア性低下を抑えることができた。また、実施例1〜10の包装材料用ガスバリア性フィルムは、ゲルボフレックステスターにて100回繰り返し屈曲させた後も、高い酸素バリア性を維持していた。