特許第5772815号(P5772815)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5772815積層体およびその製造方法ならびに成形容器
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5772815
(24)【登録日】2015年7月10日
(45)【発行日】2015年9月2日
(54)【発明の名称】積層体およびその製造方法ならびに成形容器
(51)【国際特許分類】
   B32B 23/06 20060101AFI20150813BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20150813BHJP
   B65D 1/00 20060101ALI20150813BHJP
【FI】
   B32B23/06
   B65D65/40 D
   B65D1/00
【請求項の数】17
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2012-506981(P2012-506981)
(86)(22)【出願日】2011年3月18日
(86)【国際出願番号】JP2011056542
(87)【国際公開番号】WO2011118521
(87)【国際公開日】20110929
【審査請求日】2014年2月19日
(31)【優先権主張番号】特願2010-68750(P2010-68750)
(32)【優先日】2010年3月24日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100139686
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 史朗
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100108578
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 詔男
(74)【代理人】
【識別番号】100152146
【弁理士】
【氏名又は名称】伏見 俊介
(72)【発明者】
【氏名】大森 友美子
(72)【発明者】
【氏名】今井 香朱子
(72)【発明者】
【氏名】西嶋 奈緒
(72)【発明者】
【氏名】佐伯 明子
(72)【発明者】
【氏名】木村 光晴
【審査官】 岸 進
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−263850(JP,A)
【文献】 特開2009−263854(JP,A)
【文献】 特開2009−057552(JP,A)
【文献】 特開2009−263848(JP,A)
【文献】 特開2002−348522(JP,A)
【文献】 特開2003−201695(JP,A)
【文献】 特開2002−322313(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00− 43/00
B65D 1/00− 1/48
B65D65/00− 65/46
C08K 3/00− 13/08
C08L 1/00−101/16
D21H19/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の層が積層されてなる積層体であって、
紙からなる基材と、
該基材の少なくとも片面に積層されて、1nm以上30nm以下の繊維径を有するセルロースの微細繊維を10質量%以上99質量%以下含有し、かつ、100nm以上10μm以下の繊維径を有するセルロースの微細繊維を1質量%以上90質量%以下含有する繊維層とを備えることを特徴とする積層体。
【請求項2】
前記セルロースの微細繊維は、70%以上100%以下の結晶性を有することを特徴とする請求項1に記載の積層体。
【請求項3】
前記セルロースの微細繊維は、セルロース質量に対してカルボキシル基を0.1mmol/g以上3.5mmol/g以下有することを特徴とする請求項2に記載の積層体。
【請求項4】
前記繊維層の曲げ弾性率は、2GPa以上30GPa以下であることを特徴とする請求項3に記載の積層体。
【請求項5】
前記繊維層の表面の算術平均粗さ(Ra)は、100nm以上2000nm以下であることを特徴とする請求項4に記載の積層体。
【請求項6】
前記繊維層の厚みは、100nm以上2000nm以下であることを特徴とする請求項5に記載の積層体。
【請求項7】
温度が30℃で湿度が70%における酸素透過度が、0.001cm/m・atm・day以上10cm/m・atm・day以下の範囲内であることを特徴とする請求項6に記載の積層体。
【請求項8】
温度が40℃で湿度が90%における水蒸気透過度が、0.0000001g/m/day以上50g/m/day以下の範囲にあることを特徴とする請求項6に記載の積層体。
【請求項9】
JAPAN TAPPI紙パルプ試験方法No.41に準じて評価した耐油性が、キットナンバー10以上であることを特徴とする請求項6に記載の積層体。
【請求項10】
前記繊維層は、更に無機層状鉱物を含むことを特徴とする請求項1に記載の積層体。
【請求項11】
前記繊維層は、更に下記一般式(1)に示されるシリカ化合物またはその加水分解物との複合材料を含むことを特徴とする請求項1に記載の積層体。但し、以下の一般式(1)中、X1、X2、X3、X4は、同一或いは相異なって、水酸基、アルコキシ基、アルキル基のいずれかである。
【化1】
【請求項12】
前記基材と前記繊維層の混合層の厚みは、10nm以上2000nm以下であることを特徴とする請求項1に記載の積層体。
【請求項13】
前記基材の少なくとも片面側に、前記繊維層と、さらに金属又は金属酸化物よりなる薄膜層とを有することを特徴とする請求項1に記載の積層体。
【請求項14】
請求項1に記載の積層体の少なくとも片面側に、さらに樹脂層又はシーラント層を設けたことを特徴とする積層体。
【請求項15】
請求項1に記載の積層体を用いたことを特徴とする成形容器。
【請求項16】
紙からなる基材の少なくとも片面に、セルロースの微細繊維を含む塗液を塗布して塗膜を形成する工程と、前記塗膜を乾燥させて積層体を形成する工程とを含み、
前記積層体は、1nm以上30nm以下の繊維径を有するセルロースの微細繊維を10質量%以上99質量%以下含有し、かつ、100nm以上10μm以下の繊維径を有するセルロースの微細繊維を1質量%以上90質量%以下含有する繊維層を有することを特徴とする積層体の製造方法。
【請求項17】
前記塗液が、固形分濃度1%で、660nmの波長に対して0.1%以上70%以下の透過率であることを特徴とする請求項16に記載の積層体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス・臭気・液体・薬剤などの各種対象に対して内容物へのバリア性を付与し、これらにより内容物が劣化・変質することを抑制したり、外部に漏れ出すことを防止したりする、食品、トイレタリー製品、医薬品、電子部材、電子機器等の包装用として好適な積層体およびその製造方法ならびに成形容器に関する。
【背景技術】
【0002】
食品、医薬品、電子部材、電子機器等には酸素や水蒸気等によって劣化したり変質したりすることを抑制するために、それらの包装用に、酸素や水蒸気の透過度を抑制したガスバリアフィルム等のガスバリア材が使用されている。
従来、この種のガスバリア材には、ポリビニルアルコール(PVA)とエチレンビニルアルコールとの共重合体、ポリ塩化ビニリデン系樹脂等の樹脂フィルム、あるいはこれらの樹脂がコートされたフィルムや、セラミック蒸着フィルム等が使用され、それらを様々な基材に積層させた積層体が検討されている。
【0003】
また、バリア用の包装容器としてはプラスチックなどからなる成形容器が多く使用されている。しかし、プラスチックは、殆どが石油由来の有限な資源であり、燃焼熱が高く、環境ホルモンの問題などが指摘されている。近年の環境保全型思考や、容器包装リサイクル法の施行に伴い、プラスチック材料から紙などの再生可能な天然資源由来の材料への転換が必要となっている。
【0004】
なお、紙に各種バリア層を設けて包装材料として利用する検討が行なわれている。例えばバリア性を有するフィルムやバリア層を有するフィルムに紙基材を貼り合わせる手法や、紙基材上に無機層状化合物を有する樹脂組成物層、熱可塑性樹脂層を設ける手法(例えば特許文献1参照)や、紙基材や紙容器に樹脂層を設け、蒸着やCVDなどによる無機薄膜層を積層させることによりバリア性を付与する手法が検討されている。
【0005】
しかし、紙基材表面には、無数の凹凸がミリオーダーあるいはナノオーダーで存在する。そのため、紙基材上に無機薄膜層を積層させることによりバリア性を付与する手法では、ガラス質の極めて脆い性質を有する無機薄膜層を成膜した場合、紙基材表面の凹凸上に形成したことに起因する欠陥がバリア層内に発生し、バリア性を低下させてしまうといった問題が指摘されている。
【0006】
また、紙に各種バリア層を設けてバリア性を付与する際、紙基材の密度、透気度、平滑性を制御し、より高いバリア性を付与することが考えられている。例えば、密度の高い紙を用いることや、樹脂により紙繊維の間を目止めする手法が検討されている。
しかし、これらの手法は、充分なバリア性を付与できるほどではないものや、接触・あるいは貼り合わせただけなので、紙繊維との相互作用が少ない手法である。また、コーティングや含浸などにより目止めをする手法であっても、紙表面のミリオーダーあるいはナノオーダーでの凹凸に追従した層を形成してしまい、充分な機能を発揮することができず、そのため、相当の厚みを有する層を形成して紙の凹凸の影響を除去するしかなく、単なる目止め、穴埋め材に過ぎなかった。
【0007】
また、このような目止め剤の多くは石油由来の合成高分子を用いるため、紙材料本来の持つ再生可能な天然物由来材料という利点を充分に活用できない。なお、天然物由来材料からなる、バリア性を持つ高分子や繊維のコーティングなどによる目止め剤もいくつか報告されているものの、分子分散した単なる高分子ではその形状と柔らかさから、紙表面の凹凸に追従した層を形成してしまう。また、薄膜で機能を有する膜は得られておらず、相当の厚みを有する層を形成しても、前述のバリア、目止めの機能と環境適合性という両面を充分に達成されたものは得られていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平11−309816号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、本発明は、以上のような背景技術を考慮してなされたもので、天然資源を有効利用し総合的に環境に配慮した材料を提供することを目的とし、かつ紙繊維との相互作用により、優れた強度を有しつつも、紙基材との親和性・密着にも優れ、薄膜でも充分にバリア性を付与し得るバリア材料となりうる積層体およびその製造方法ならびに成形容器を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、この発明は以下の手段を提案している。
本発明の積層体は、複数の層が積層されてなる積層体であって、紙からなる基材と、該基材の少なくとも片面に積層されて、1nm以上30nm以下の繊維径を有するセルロースの微細繊維を10質量%以上99質量%以下含有し、かつ、100nm以上10μm以下の繊維径を有するセルロースの微細繊維を1質量%以上90質量%以下含有する繊維層とを備えることを特徴とする。
ここで、本発明に係る積層体は、バリア材全体の厚みを薄く、より環境適合した材料を用いたり、あるいは、より高いバリア性を有する紙材料を得るために金属あるいは金属酸化物よりなる層を紙からなる基材に形成させたりすれば、少ない材料と工程で従来と同等あるいはそれ以上の品質を有するバリア材料となりうる。
【0012】
また、上記の積層体において、前記セルロースの微細繊維が70%以上100%以下の結晶性を有することを特徴とする。
また、上記の積層体において、前記セルロースの微細繊維がセルロース質量に対してカルボキシル基を0.1mmol/g以上3.5mmol/g以下有することを特徴とする。
【0013】
また、上記の積層体において、前記繊維層の曲げ弾性率が2GPa以上30GPa以下であることを特徴とする。
また、上記の積層体において、前記繊維層の表面の算術平均粗さ(Ra)が、100nm以上2000nm以下であることを特徴とする。
【0014】
また、上記の積層体において、前記繊維層の厚みが、100nm以上2000nm以下であることを特徴とする。
また、上記の積層体において、温度が30℃で湿度が70%における酸素透過度が、0.001cm/m・atm・day以上10cm/m・atm・day以下の範囲内であることを特徴とする。
【0015】
また、上記の積層体において、温度が40℃で湿度が90%における水蒸気透過度が、0.0000001g/m/day以上50g/m/day以下の範囲にあることを特徴とする。
また、上記の積層体において、JAPAN TAPPI紙パルプ試験方法No.41に準じて評価した耐油性が、キットナンバー10以上であることを特徴とする。
【0016】
また、上記の積層体において、前記繊維層が、更に無機層状鉱物を含むことを特徴とする。
また、上記の積層体において、前記繊維層が、更に下記一般式(1)に示されるシリカ化合物またはその加水分解物との複合材料を含むことを特徴とする。但し、以下の一般式(1)中、X1、X2、X3、X4は、同一或いは相異なって、水酸基、アルコキシ基、アルキル基のいずれかである。
【0017】
【化1】
【0018】
また、上記の積層体において、前記基材と前記繊維層の混合層の厚みが、10nm以上2000nm以下であることを特徴とする。
また、上記の積層体において、前記基材の少なくとも片面側に、前記繊維層と、さらに金属又は金属酸化物よりなる薄膜層とを有することを特徴とする。
また、上記の積層体の少なくとも片面側に、さらに樹脂層又はシーラント層を設けたことを特徴とする。
【0019】
上述した本発明に係る積層体は、内容物が劣化・変質することを抑制したり、外部に漏れ出すことを防止したりする、食品、トイレタリー製品、医薬品、電子部材、電子機器等の包装用として好適なものとなる。すなわち、本発明の成形容器は、上記の積層体を用いたことを特徴としている。
【0020】
また、本発明の積層体の製造方法は、紙からなる基材の少なくとも片面に、セルロースの微細繊維を含む塗液を塗布して塗膜を形成する工程と、前記塗膜を乾燥させて積層体を形成する工程とを含み、前記積層体は、1nm以上30nm以下の繊維径を有するセルロースの微細繊維を10質量%以上99質量%以下含有し、かつ、100nm以上10μm以下の繊維径を有するセルロースの微細繊維を1質量%以上90質量%以下含有する繊維層を有することを特徴としている。
また、上記の積層体の製造方において、前記塗液が、固形分濃度1%で、660nmの波長に対して0.1%以上70%以下の透過率であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
上述したように、本発明に係る積層体は、紙からなる基材上にセルロースの微細繊維を含む層を形成させるものなので、天然資源を有効利用し総合的に環境に配慮した材料を提供することができる。
そして、この積層体は、紙からなる基材の少なくとも片面に、1nm以上10μm以下の繊維径を有するセルロースの微細繊維を含む繊維層を備えるので、セルロースの微細繊維の繊維径をこの範囲に規定すれば、紙繊維との相互作用により、優れた強度を有するとともに、紙基材との親和性・密着にも優れ、薄膜でも充分にガス・臭気・液体・薬剤など各種バリア性を付与し得るバリア材料となりうる。よって、これを用いた成形容器によれば、上記課題を同様に解決することができる。
【0022】
更に、上述したように、本発明に係る積層体に、金属あるいは金属酸化物よりなる層を有する構成とすれば、より高いバリア性に優れた積層体を得ることができる。また、セルロースの微細繊維を含む層に超微細繊維を含む構成とすれば、金属あるいは金属酸化物よりなる層の欠陥を防ぐことができる。
また、セルロースの微細繊維を含む層に微細繊維の中でも、上述したような所定の範囲の径をもつ繊維あるいは粒子を含む構成とすれば、効率よく基材の表面を改質することができ、優れた積層体を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明に係る積層体の第1実施形態の断面図である。
図2】本発明に係る積層体の第2実施形態の断面図である。
図3】本発明に係る積層体の第3実施形態の断面図である。
図4】本発明に係る積層体の第4実施形態の断面図である。
図5】本発明に係る積層体の第5実施形態の断面図である。
図6】本発明に係る積層体の第6実施形態の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の詳細について実施形態に基づいて説明する。
図1に示す第1実施形態の積層体100は、少なくとも紙からなる基材1と、この基材1の片面に付設された繊維層2とを有して構成されている。
基材1としては、通常の上質紙、各種コート紙、裏打ち紙、含浸紙、ボール紙や板紙、それらと樹脂フィルム層や金属層などを貼合せ製函してなるものや、箱型に成形されたパルプモールドなどを用いることができるが、これらに限定されるものではない。
【0025】
繊維層2は、セルロースの微細繊維を含むものであり、そのセルロースの微細繊維が、平均径が1nm以上200nm以下の範囲にある。これらの繊維径の測定は、AFMやSEMなどの装置を用いて形状観察を行い、任意の多数のサンプルの繊維幅を測定してその平均をとる手法、あるいは塗液の粒度分布計などを用いた粒径測定結果から計測することが可能である。なお、本発明では前者の観察からの計測値を用いた。
ここで、上記セルロースの微細繊維は、その平均径が、1nm以上200nm以下の範囲にあると、ナノレベルで塗布あるいはキャスト膜表面の平滑性が向上し、紙基材の平滑化に大きな効果を及ぼす。また、繊維の絡み合いや水素結合面積が膨大になることから、良好なバリア性と紙基材中の繊維との相互作用も増大し、密着性も向上する。また、これらの繊維の絡み合いは、後述する高い弾性率と強い強度を持つ繊維からなる膜のしなやかさを保つことができる。
【0026】
特に、この繊維層2は、1nm以上30nm以下の繊維径を有するセルロースの微細繊維が10質量%以上含まれていることを特徴としている。セルロースの微細繊維がこの範囲にあると、前記の膜面の平滑性を向上させる効果が大きく、更に金属や酸化金属層を付与したときに、より緻密で孔や欠陥のない層が形成され、高いバリア性を付与することができる。
【0027】
更に、これらセルロースの微細繊維の大きさを制御することで径の大きな微細繊維が紙基材の大きな凹凸を効率よく平滑化し、径の小さな微細繊維がさらにナノレベルでの平滑性を向上させることができる。また、これらの微細繊維の径と配合比を制御することで、紙の細孔に効率よく充填した緻密な膜を形成させることができる。
具体的には、1nm以上30nm以下の小さい繊維径を有するセルロースの微細繊維が10質量%以上99質量%以下含まれ、かつ、100nm以上10μm以下の大きい繊維径を有するセルロースの微細繊維が1質量%以上90質量%以下含まれることが好ましい。この範囲であれば、紙の細孔に効率よく充填した緻密な膜を形成させることができる。
【0028】
特に、1nm以上30nm以下の小さい繊維径を有するセルロースの微細繊維が25質量%以上90質量%以下含まれ、かつ、100nm以上10μm以下の大きい繊維径を有するセルロースの微細繊維が10質量%以上75質量%以下含まれる場合には、より紙の平滑化を効率よく達成することができるので、膜の厚みを薄くしたり、透過率を低くして裏移りを抑えたり、また、塗膜の干渉縞を抑えたりすることができる。
【0029】
特に、1nm以上10μm以下の繊維径を有するセルロースの微細繊維を含むことが好ましい。含有するセルロースの微細繊維がこの範囲であれば、紙基材の大きな凹凸を効率よく平滑化することができるうえ、表面に緻密な膜を形成することができ、各種バリア性に優れる。また、更に金属あるいは金属酸化物の層を設ける際にも、欠陥を防ぐ効果が効率よく発揮される。
【0030】
なお、大きい繊維径を有するセルロースの微細繊維については、セルロースの形状が微細繊維状でなくてもよく、例えば、粒子形状を有しても上記効果を得ることができる。セルロースの形状が粒子形状の場合、セルロースの形状が微細繊維状の場合と同様、100nm以上10μm以下の粒子径を有するセルロースの粒子が1質量%以上90質量%以下含まれることにより、紙基材の大きな凹凸を効率よく平滑化することができる。
【0031】
また、上記セルロースの微細繊維を含む繊維層2は、その曲げ弾性率が、2GPa以上30GPa以下であることを特徴としている。
曲げ弾性率がこの範囲にあると、基材表面の改質が効率よく行える。例えば凹凸の著しい紙基材の上に薄膜での塗工で、基材表面の平滑化が効率よく達成でき、高いバリア性を付与することができる。また、セルロースの微細繊維を含む層に更に金属や酸化金属層を付与したときに、より緻密で孔や欠陥のない層が形成され、高いバリア性を付与できるだけでなく、積層体全体で高い強度を付与できるため、包装材料や各種材料として用いる際の物理的強度を付与することができる。曲げ弾性率が、2GPa以上12GPa以下であれば、より好ましい。曲げ弾性率が、2GPa以上12GPa以下であれば、薄い膜であっても強度が付与され、紙基材を薄くすることもできるため、コスト面、環境面においても効果が高い。また、厚い層を設けた際にも、硬すぎることなく後加工にも影響を与えない。特に、3GPa以上6GPa以下の範囲にあると、強度も高く、取り扱い易いためより好ましい。
【0032】
更に、上記積層体100の複数の層のうち、繊維層2に含まれるセルロースの微細繊維は、70%以上100%以下の結晶性を有することを特徴としている。結晶性がこの範囲にあると、高い強度を付与できるだけでなく、結晶内には各種ガス・薬剤・液体などの吸着が抑えられ、高いバリア性を付与することができる。
また、紙の基材1と、繊維層2に含まれるセルロースの微細繊維の相互作用を利用し、親和性・密着性も高い複合材料からなるバリア材を提供することができる。また、径の大きな微細繊維と、径の小さな微細繊維を含むことにより、紙の細孔に効率よく充填した緻密な膜を形成することができる。また硬い構造と柔らかい構造を有することで、薄膜でも充分な強度とバリア性を有する材料を提供することができる。
【0033】
また、上記繊維層2に含まれるセルロースの微細繊維は、セルロース質量に対しカルボキシル基量が0.1mmol/g以上3.5mmol/g以下の範囲にあることを特徴としている。これらのカルボキシル基量は、セルロース繊維の伝導度滴定法により測定することができる。
カルボキシル基量が0.1mmol/g以上3.5mmol/g以下の範囲にあると、特に包装材料の性能として重要な項目である酸素バリア性が良好な積層体が得られる。カルボキシル基は0.1mmol/g未満であると、酸素バリア性が充分に発揮できず、また、3.5mmol/g以上であると高湿度下での酸素バリア性や、水への耐性が低くなってしまう。
【0034】
その測定方法としては、改質処理したセルロースの乾燥質量換算0.2gをビーカーにとり、イオン交換水80mlを添加する。そこに0.01M塩化ナトリウム水溶液5mlを加え、攪拌させながら0.1M塩酸を加えて全体がpH2.8となるように調整した。ここに自動滴定装置(東亜ディーケーケー株式会社、AUT−701)を用いて0.1M水酸化ナトリウム水溶液を0.05ml/30秒で注入し、30秒毎の電導度とpH値を測定し、pH11まで測定を続けた。得られた電導度曲線から水酸化ナトリウムの滴定量を求め、カルボキシル基含有量を算出した。
【0035】
また、この積層体100に含まれる繊維層2には、無機層状鉱物を含んでも良い。層状鉱物としてはカオリナイト族、スメクタイト族、マイカ族等を使用することができ、モンモリロナイト、ヘクトライト、サポナイト等を挙げることができる。中でも高いアスペクト比と面積を持ち、塗液の安定性と、塗工性のよさからモンモリロナイトが好ましい。無機層状鉱物は、繊維層2に0質量%以上70質量%以下含まれることが好ましい。この範囲であると、セルロース繊維と紙基材の親和性、密着性を低下させることなく、無機層状鉱物により更に膜表面の平滑性が向上し、紙基材の平滑化に大きな効果を及ぼし、更に金属あるいは酸化金属の薄膜を均一に積層することや、紙基材やセルロース繊維層と金属あるいは酸化金属の薄膜との密着を高めることができる。また、無機層状鉱物によりセルロースの膨潤を抑えることができ、ガスや水分・油分・臭気などのバリア性を高めることができる。さらに、10質量%以上50質量%以下であると、層状鉱物を入れることにより膜の強度が低下するのを抑えることができる。また、30質量%以上50質量%以下であると、上記の効果に加え、より高いバリア性を発揮することができる。
さらに、セルロースの微細繊維を含む繊維層2には、以下の一般式(2)に示されるシリカ化合物またはその加水分解物との複合材料を含んでもよい。下記一般式(2)中、X1、X2、X3、X4は、同一或いは相異なって、水酸基、アルコキシ基、アルキル基のいずれかであることを示す。シリカ化合物またはその加水分解物は、繊維層2に0質量%以上70質量%以下含まれることが好ましい。この範囲であると膜のしなやかさを損なうことなく、耐水性や基材への密着性およびセルロースの膨潤を抑えることができる。更にシリカ化合物あるいはその加水分解物は金属あるいは酸化金属の薄膜を均一に積層することや、紙基材やセルロース繊維層と金属あるいは酸化金属の薄膜との密着を高めることにも効果がある。特に金属あるいは酸化金属の欠陥を埋め、高いバリア性を付与し、水や薬剤、臭気などに加え、ガスなどの小さな分子を持つものをバリアすることもできる。さらに30質量%以上60質量%以下の範囲であると、このバリア性を高いレベルで発揮することができる。
【0036】
【化2】
【0037】
シリカ化合物またはその加水分解物との複合材料を含むことにより、水への耐水性および高湿度下での酸素・水蒸気バリア性が向上するだけでなく、後述の図3ないし図4に示す積層体300、400のように、更に金属あるいは酸化金属からなる蒸着層3を設けた際に、その層間の密着や蒸着膜の劣化を防ぐことができる。
【0038】
セルロースの微細繊維を含む繊維層2には、上記の無機層状鉱物、シリカ化合物またはその加水分解物のほかに、機能性付与のために、さらに添加剤が含まれていても良い。例えば、レベリング剤、消泡剤、合成高分子、無機系粒子、有機系粒子、潤滑剤、紫外線吸収剤、染料、顔料或いは安定剤などが挙げられ、これらはバリア性を損なわない範囲内で含まれる。
【0039】
また、本発明の積層体の繊維層2の表面は、その算術平均粗さ(Ra)が、100nm以上2000nm以下であることを特徴としている。繊維層2の表面の算術平均粗さ(Ra)がこの範囲であると、平滑性が高いことから、その後の印刷・塗工などを施す場合に良好な特性を示すだけでなく、後述の積層体300、400のように、金属あるいは酸化金属からなる蒸着層3を付与する際に、クラックやピンホールなどの欠陥が存在することでバリア性が低下するのを防止することができる。
【0040】
また、本発明の積層体の繊維層2の厚みは、100nm以上2000nm以下であることが好ましい。繊維層2の厚みを100nm以上2000nm以下の範囲にすることにより、膜厚が薄くても充分なバリア性を発揮するため、コスト面でも優れている。なお、上記範囲より大きい値であっても、強度が向上し、バリア性も悪くはならないが、コスト面で好ましくないことと、硬すぎて積層体の加工時に割れが発生するなどの問題が生じる場合がある。また、上記範囲より小さい値であると、被膜成形時にピンホールなどが生じてしまい、また紙基材表面の繊維を充分に覆うことができなくなり、ガス・水分・油などのバリア性が発揮できない場合がある。
【0041】
また、本発明の積層体は、紙の基材1上に、前述のセルロースの微細繊維を含む液を塗布し、これを乾燥させることで基材1の平滑性とバリア性を向上させることができる。これにより塗布・乾燥という比較的簡便な手法で基材1を改質することができる。
セルロースの微細繊維を含む液の塗布の手法としては、公知の方法を用いることができる。具体的には、グラビアコーター、ディップコーター、リバースコーター、ワイヤーバーコーター、ダイコーター等である。ウェット成膜方法を用いることにより、紙の基材1の凹凸に追従しない表面形状の塗膜を形成することができる。また、塗液の溶媒についても特に限定されるものではないが、水・アルコールをはじめとした各種有機溶剤を1種類または複数種用いることができる。
【0042】
次に、本発明の第2実施形態の積層体について説明する。
図2に示すように、この第2実施形態の積層体200は、紙からなる基材1上に、前述のセルロースの微細繊維を含む液を塗布し、これを乾燥させることで、基材1の基材成分とセルロースの微細繊維を含む混合層21と基材成分を含まずセルロースの微細繊維を含む層22とからなる繊維層2を形成している。
【0043】
このような構成であれば、基材1にセルロースナノファイバーのようなある程度の大きさを持ったファイバーを含む弾性率の高い膜を形成できる塗液を塗工していることで、凹凸の激しい多孔質である基材1の繊維の網目構造内に潜り込んで、基材成分とセルロースの微細繊維を含む層の混合層21を形成するだけでなく、その表面に基材成分を含まずセルロースの微細繊維を含む層22を紙基材上に形成することができる。
【0044】
このとき、混合層21の厚みは、10nm以上2000nm以下の範囲であることが好ましい。混合層21の厚みが上記範囲である場合、上記原理により、紙の網目に完全に染み込んでしまうだけでなく、紙の基材1の表面に連続した膜を形成し、更に凹凸追従した塗膜ではなく、効率的に平滑な面を形成できる。そのため、ガス・臭気・液体・薬剤・固形物など各種バリア性にも優れた積層体を得ることができる。
【0045】
特に、後述の図3に示すように、繊維層2の上に蒸着層3を形成する場合、蒸着層3は割れ易く、薄膜で十分な機能を発揮することが望まれている。この点に対し、この積層体200は、その表面が平滑であるため、基材1の凹凸による蒸着層3のムラや欠陥を抑えることができる。また、10nm以上2000nm以下の範囲の厚みの混合層21を有することで、基材1への繊維層2の親和性・密着性を高めることができる。
【0046】
紙の基材1へ塗布する場合の前述の塗液は、1%固形分濃度に希釈した場合の透過率で0.1%以上70%以下の範囲にあるとより好ましい。液の透明度がこの範囲にあると、塗布後の基材1の不透明度を上げることができ、裏写りを防止する効果も大きく、塗布面の光沢を上げつつ、反射や干渉縞を抑えることができる。
透過率の測定方法としては、各種セルロースの微細繊維を含む液を固形分濃度1%となるように水または塗液溶剤で希釈する。この液を1cm角の石英ガラスセルに入れ、分光光度計などで測定した660nmの波長の透過率を読み取り、透過率とする。660nmの波長の透過率が測定できれば、装置の種類などは問わない。
【0047】
次に、本発明の第3実施形態および第4実施形態の積層体について説明する。
図3に第3実施形態の積層体300を、図4に第4実施形態の積層体400を示す。これら積層体300、400は、上記積層体100ないし積層体200に対し、繊維層2上に、蒸着層3を更に備える点が異なっている。
この蒸着層3は、金属あるいは酸化金属からなっており、各種金属あるいは酸化金属を蒸着コーティング、浸漬、ラミネーションなどにより積層させることができる。金属や酸化金属の種類は特に限定しないが、本発明に係る積層体あるいは、これを用いたバリア材などとして利用する場合には、アルミニウム、酸化アルミニウム、酸化シリカなどが好ましい。
【0048】
特に、この蒸着層3として、アルミニウムや酸化アルミニウム、酸化シリカなどの層を付与する場合、プラズマ・真空蒸着などの蒸着プロセスにより成形することができ、これらによる薄膜は効率的に生産性も良くバリア性等の機能を付与することができる。また、本来、紙などの基材1は凹凸が激しく、紙基材内部に含まれる水分などのガスが抜けるなどの理由により、均一な連続した薄膜が成形できないなど、前記プロセスで成膜することは困難であったが、上述した本発明中の繊維層2を含むことにより、平滑性とガスバリア性を付与することにより、効率よく基材の表面を改質することができ、これらの課題を解決することができる。
【0049】
なお、蒸着層3を形成する前工程として、プラズマ処理などを行うことにより、機能層表面の水分や塵等を除去すると共にその表面の平滑化、活性化を促進させてもよい。
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、当業者の知識に基づいて設計の変更等の変形を加えることも可能であり、そのような変形が加えられた実施形態も本発明の範囲に含まれるものである。
【0050】
例えば、本発明の積層体は、必要に応じて、図5に示す第5実施形態の積層体500のように、第3ないし第4実施形態の構成に、さらに繊維層2を積層することができる。
さらに、本発明の積層体は、図6に示す第6実施形態の積層体600のように、更に樹脂層又はシーラント層4を積層したり、各層間の強度を向上させるためのアンカー・プライマー層、防汚染層、印刷層、帯電防止層等を積層したりすることができる。この場合、積層する各層は、溶融押出により積層してもよく、接着剤を用いて積層しても、また、蒸着などによって積層させることもできる。
【0051】
特に、例えば樹脂層に関しては防汚・浸透性の高い液体へのバリアを付与することができ、シーラント層に関しては、成形などの際に形状保持・内容物漏れを防ぐことができる。各層の材料としては特に限定されず、ポリオレフィン系・エポキシ系・ウレタン系・イソシアネート系・ポリエステル系・植物由来材料(バイオプラ)など公知の材料を用いることができる。
なお、上述した本発明に係る積層体は、各種フィルムやシートに用いることができるほか、ボトル状、筒状、箱状などの各種成形容器に用いることができる。
【0052】
以下、本発明の詳細について実施例を用いて説明する。
[製造例1]
針葉樹クラフトパルプ30gを水600gに浸漬し、ミキサーにて分散させた。分散後のパルプスラリーにあらかじめ水200gに溶解させたTEMPOを0.3g、NaBrを3g添加し、更に水で希釈し全体を1400mLとした。系内を20℃に保ち、セルロース1gに対し10mmolになるよう次亜塩素酸ナトリウム水溶液を計りとり滴下した。
【0053】
滴下開始からpHは低下を始めるが、0.5N水酸化ナトリウム水溶液を用いてpHを10に保った。2時間後、0.5N水酸化ナトリウムが2.5mmol/gになったところでエタノールを30g添加し、反応を停止させた。反応系に0.5N塩酸を添加し、pH2まで低下させた。酸化パルプをろ過し、0.01N塩酸または水で繰返し洗浄した後、酸化パルプを得た自動滴定装置(東亜ディーケーケー、AUT−701)を用いて0.1N水酸化ナトリウムにより電導度滴定を行ったところ、カルボキシル基量が1.3mmol/gと算出された。得られた酸化パルプを水で希釈し水酸化ナトリウム水溶液を用いてpH8の1%分散液を得た。このまま2日間高速攪拌機で攪拌しセルロースの微細繊維を含む分散液を得た。
【0054】
[製造例2]
針葉樹クラフトパルプ30gを水600gに浸漬し、ミキサーにて分散させた。分散後のパルプスラリーにあらかじめ水200gに溶解させたTEMPOを0.3g、NaBrを3g添加し、更に水で希釈し全体を1400mLとした。系内を20℃に保ち、セルロース1gに対し10mmolになるよう次亜塩素酸ナトリウム水溶液を計りとり滴下した。
【0055】
滴下開始からpHは低下を始めるが、0.5N水酸化ナトリウム水溶液を用いてpHを10に保った。3時間後、0.5N水酸化ナトリウムが2.8mmol/gになったところでエタノールを30g添加し、反応を停止させた。反応系に0.5N塩酸を添加し、pH2まで低下させた。酸化パルプをろ過し、0.01N塩酸または水で繰返し洗浄した後、酸化パルプを得た。自動滴定装置(東亜ディーケーケー、AUT−701)を用いて0.1N水酸化ナトリウムにより電導度滴定を行ったところ、カルボキシル基量が1.6mmol/gと算出された。得られた酸化パルプを水で希釈し水酸化ナトリウム水溶液を用いてpH9の1%分散液を得た。分散液を超音波ホモジナイザーで5分間処理し、1%セルロースの微細繊維を含む水溶液を得た。
【0056】
[製造例3]
針葉樹クラフトパルプ30gを水600gに浸漬し、ミキサーにて分散させた。分散後のパルプスラリーにあらかじめ水200gに溶解させたTEMPOを0.3g、NaBrを3g添加し、更に水で希釈し全体を1400mLとした。系内を20℃に保ち、セルロース1gに対し10mmolになるよう次亜塩素酸ナトリウム水溶液を計りとり滴下した。
【0057】
滴下開始からpHは低下を始めるが、0.5N水酸化ナトリウム水溶液を用いてpHを10に保った。4時間後、エタノールを30g添加し、反応を停止させた。反応系に0.5N塩酸を添加し、pH2まで低下させた。酸化パルプをろ過し、0.01N塩酸または水で繰返し洗浄した後、酸化パルプを得た。自動滴定装置(東亜ディーケーケー、AUT−701)を用いて0.1N水酸化ナトリウムにより電導度滴定を行ったところ、カルボキシル基量が2.4mmol/gと算出された。得られた酸化パルプを水で希釈し水酸化ナトリウム水溶液を用いてpH6の1%分散液を得た。分散液を超音波ホモジナイザーで5分間処理し、1%セルロースの微細繊維を含む水溶液を得た。
【0058】
[製造例4]
上記製造例2の1%セルロースの微細繊維を含む水溶液に、水に分散させた固形分4%のモンモリロナイトをセルロースとモンモリロナイトの質量比が1:1となるように混ぜ合わせた。更に超音波ホモジナイザーで1分間分散させた。
[製造例5,6,7,8]
製造例1と製造例2のセルロースの微細繊維を含む水溶液をそれぞれ質量比が1:9、5:5、7.5:2.5、9.5:0.5となるように混ぜ合わせ、製造例5,6,7,8の水溶液を得た。
【0059】
[製造例の評価1]
各分散液を1%水溶液とし、1cm角の石英ガラスに入れ、分光光度計にて660nmの透過率を測定した。
【0060】
[製造例の評価2]
各分散液を0.01%濃度まで希釈し、マイカ上に塗布しAFMにて繊維形態を観察した。1本ずつ存在している任意の繊維10点の高さ平均を求るまたは、白金でコートした後SEM観察を行い、10点の幅の平均を求め、平均の繊維径とした。
【0061】
[製造例の評価3]
製造例1−7の分散液をガラス基材上にキャストし、80℃で1晩乾燥させ、2mm厚のシートを得た。このシートを幅25mm長さ40mmの短冊状に切り抜き、JIS−K7171に従いシートの3点曲げを行い、10mm/minにおける曲げ弾性率を求めた。
【0062】
製造例の評価1−3の結果を表1に示す。
【0063】
【表1】
【0064】
[実施例1−7]
製造例1−7の各分散液を坪量270g/mのアイボリー紙の表面にバーコーターにて膜厚500nmとなるように塗布し、120℃のオーブンで3分間乾燥し、実施例1−7の積層体を作製した。
[実施例8−14]
製造例1−7の各分散液を坪量75g/mのコート紙の表面にバーコーターにて膜厚200nmとなるように塗布し、120℃オーブンで3分間乾燥し、実施例8−14の積層体を作製した。
【0065】
[実施例15−21]
実施例1−7の積層体の塗工面に更に真空蒸着により酸化ケイ素の皮膜を50nmで積層し、実施例15から21の積層体を得た。
[実施例22−24]
実施例3、実施例4および実施例18の積層体の塗工面あるいは蒸着面に、さらにウレタン系接着剤を用い、厚み70μmのポリエチレンフィルムをドライラミネートし、実施例22から24の積層体を得た。
【0066】
[実施例25]
メタノールと0.02N−塩酸水溶液を5:5で混ぜ合わせた混合溶液にテトラエトキシシランを1%濃度で加え2時間加水分解させた水溶液を、製造例2の分散液と1:1で混ぜ合わせ、実施例18の積層体の蒸着面に更に200nmとなるように塗布し、120℃のオーブンで3分間乾燥させ、実施例25の積層体を得た。
[実施例26]
実施例25の積層体の塗工面に、さらにウレタン系接着剤を用いて厚み70μmのポリエチレンフィルムをドライラミネートし、実施例26の積層体を得た。
【0067】
[実施例27]
製造例8の分散液を坪量270g/mのアイボリー紙の表面にバーコーターにて膜厚500nmとなるように塗布し、120℃のオーブンで3分間乾燥し、実施例27の積層体を作製した。
[実施例28]
製造例8の分散液を坪量75g/mのコート紙の表面にバーコーターにて膜厚200nmとなるように塗布し、120℃オーブンで3分間乾燥し、実施例28の積層体を作製した。
【0068】
[比較例1]
繊維層2を形成させていない坪量75g/mのコート紙を比較例1として用いた。
[比較例2]
繊維層2の代わりに、市販のポリビニルアルコール(分子量10万)を1%濃度で水に溶解させ、実施例8−14と同様に坪量75g/mのコート紙上に塗布し、比較例2の積層体を得た。
【0069】
[比較例3]
繊維層2の代わりに、市販のポリビニルアルコール(分子量10万)を1%濃度で水に溶解させ、実施例1−7と同様に坪量270g/mのアイボリー紙上に塗布し、比較例3の積層体を得た。
[比較例4]
比較例3の積層体に更に真空蒸着により酸化ケイ素の皮膜を50nmで積層し、比較例4の積層体を得た。
【0070】
[実施例・比較例の評価1]
各積層体について、モコン法を用いて、酸素透過度(単位:ml/m・day・atm)を30℃−70%RHの条件で測定した。結果を表1に示す。
同表に示す結果から判るように、酸素透過度が0.001から10(ml/m・day・atm)の範囲内にあれば、酸素を嫌う多くの内容物を保護するのに十分な機能があるといえ、紙基材とセルロース繊維という天然物からバリア性フィルム並みの性能を示すものが得られる。これらは、紙としての廃棄が可能なだけでなく、これまでフィルムでは着色や印刷、貼り合わせ、金属蒸着により酸素ガスの他、光を遮断していたものが、工程も少なく同等の性能を得ることができる。また、金属箔などの貼り合わせを行なっていないため、金属探知器を通すことも可能となる。また、酸素と同じような大きさのガスやにおいの漏れも防止することができる。
【0071】
[実施例・比較例の評価2]
実施例8から14の積層体の塗工面と、比較例1および2のコート面に、JAPAN TAPPI紙パルプ試験方法No.41に従い、紙のはつ油度を評価した(キット法)。その結果、比較例1および比較例2はキットナンバー1が浸透してしまったが、実施例8および10の積層体はキットナンバー10まで浸透せず、また実施例9、11から14についてはキットナンバー12まで浸透しなかった。よって、JAPAN TAPPI No.41に準じて評価した耐油性が、キットナンバー10以上であれば浸透しないことが判った。
【0072】
[実施例・比較例の評価3]
実施例11、12,22,23,24,26および比較例1,2について、水蒸気透過度を40℃90%RHの条件下、カップ法にて測定を行った。結果を表2に示す。
温度が40℃で湿度が90%における水蒸気透過度が0.0000001g/m/day以上50g/m/day以下の範囲にあれば、水蒸気を嫌う多くの内容物を保護するのに充分な機能があるといえ、紙基材とセルロース繊維という天然物からバリア性フィルム並みの性能を示すものが得られる。これらは、紙としての廃棄が可能なだけでなく、これまでフィルムでは着色や印刷、貼り合わせ、金属蒸着により水蒸気の他、光を遮断していたものが、工程も少なく同等の性能を得ることができる。また、金属箔などの貼り合わせを行なっていないため、金属探知器を通すことも可能となる。また、水蒸気と同じような大きさあるいは透過機構のガスやにおいの漏れを防止することもできる。さらに、外からの水蒸気の進入を防ぐだけでなく、内容物の乾燥を防いだり、水分が飛んで内容物の変質・目減りを防止することもできる。
【0073】
実施例・比較例の評価1−3の結果を表2に示す。
【0074】
【表2】
【0075】
以上の結果より、本発明の積層体は、酸素・水蒸気・油のバリア性に優れていると言うことができ、紙から成る基材1上にセルロースの微細繊維を含む繊維層2を形成させることにより、紙基材との親和性、密着も高く、ガス・臭気・液体・薬剤など各種バリア性にも優れたバリア材あるいはバリア容器を得ることができることが確認された。
更に、金属あるいは金属酸化物よりなる層を有することにより、より高いバリア性に優れた積層体を得ることができることが確認された。更に、セルロースの微細繊維を含む層に超微細繊維を含むことにより、金属あるいは金属酸化物よりなる層の欠陥を防ぐことができることが確認された。また、セルロースの微細繊維を含む層に微細繊維の中でもある範囲の径をもつ繊維あるいは粒子を含むことにより、効率よく基材の表面を改質することができ、優れた積層体を得ることができることが確認された。
【符号の説明】
【0076】
1・・・基材
2・・・繊維層
21・・・基材成分とセルロースの微細繊維を含む混合層
22・・・基材成分を含まずセルロースの微細繊維を含む層
3・・・蒸着層
4・・・樹脂層又はシーラント層
100、200、300、400、500、600・・・積層体
図1
図2
図3
図4
図5
図6