(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記コイルを収容する前記ステータコアに形成されたスロット内部の隙間を埋めるように前記ステータコア内部に形成されるモールド部材をさらに備える請求項1記載の回転機。
前記ステータコアの両端部に形成されるモールド部材と前記ステータコア内部に形成されるモールド部材とは、異なる熱伝導率を有する材料で形成される請求項2記載の回転機。
前記ステータコアの一方の端部に形成されたモールド部材と他方の端部に形成されたモールド部材とは、前記ロータ軸の中心軸方向に関する形状が非対称である請求項1記載の回転機。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して本発明の実施形態による回転機について詳細に説明する。尚、以下の実施形態では、回転機が、外部から供給される電流(例えば、三相交流電流)により回転駆動されるモータ(電動機)である場合を例に挙げて説明する。
【0009】
〔第1実施形態〕
図1は、本発明の第1実施形態による回転機としてのモータの構成を示す側断面図である。
図1に示す通り、モータ1は、回転軸10(ロータ軸)、ロータ20(回転子)、ステータ30(固定子)、及びハウジング40を備えており、外部から供給される電流によってロータ20とステータ30との間に電磁力が作用してロータ20が回転することにより回転軸10が回転駆動される。尚、以下では、回転軸10が延びている
図1中の左右方向を「軸方向」という。
【0010】
回転軸10は、ロータ20の回転駆動力を外部に伝達するための軸部材である。この回転軸10は、ロータ20に挿通されて固定されており、ハウジング40に設置された軸受B1,B2によって回転自在に支持されている。このため、回転軸10及びロータ20は、回転軸10の回転軸線の周りで一体的に回転する。尚、軸受B1,B2としては、例えばアンギュラ玉軸受等の転がり軸受を用いることができる。
【0011】
ロータ20は、回転軸10に取り付けられて回転軸10の周りで回転可能に構成されている。具体的に、ロータ20は、ロータコア、永久磁石、及びエンドプレートを備える。ロータコアは、磁性体からなる板材としての電磁鋼板を複数積層して構成され、上述した回転軸10が挿通される円環形状の部材である。永久磁石は、例えば軸方向に延びる直方体形状の磁石であり、ロータコアのステータ30側に、ロータコアの外周に沿って一定の間隔をもって複数埋設されている。これにより、ロータコアの外周に沿って交番磁界が形成される。エンドプレートは、ロータコアの軸方向(電磁鋼板の積層方向)両側端部に設けられ、ロータコアを軸方向に挟持する円盤形状の部材である。
【0012】
ステータ30は、ステータコア31及びコイル32を備えており、回転軸10の回転方向に沿ってロータ20の周囲を取り囲むようにハウジング40の一部をなす胴体部材41の内周面に固定されて、外部からコイル32に供給される電流に応じてロータ20の外周方向に沿う回転磁界を形成する。
図2は、本発明の第1実施形態による回転機が備えるステータを抜き出して示す側断面図である。また、
図3は、
図2中のB−B線に沿う断面矢視図である。
【0013】
図2,
図3に示す通り、ステータ30に設けられるステータコア31は、上述したロータ20のロータコアと同様に、磁性体からなる板材としての電磁鋼板を複数積層して構成される円環形状の部材であり、その内周側にはロータ20が配設される。このステータコア31は、その内周面とロータ20の外周面との間に予め設定された大きさの環状の間隙(エアギャップG:
図1参照)が形成されるように、その内径が設定されている。
【0014】
具体的に、ステータコア31は、
図3に示す通り、円環形状のヨーク31aと、ヨーク31aの周方向に沿ってヨーク31aの中心軸に向けて突出した状態で配列された複数のティース31bとを有する。隣接するティース31bの間の隙間は、コイル32が介挿されるスロット31cとされる。尚、
図3においては、複雑化を避けるため、ティース31b及びスロット31cが8個ずつ設けられたステータコア31を図示しているが、これらの数は任意に設定することができる。
【0015】
ステータコア31に設けられるティース31bは、スロット31cに介挿されたコイル32に三相交流が供給されることによって磁極として機能する。ステータコア31は、各ティース31bの突出方向が回転軸10の回転軸線に向かうようにロータ20の周りに配置され、かかる配置においてロータコアとの間の間隔が上述したエアギャップGとなるように、ティース31bの突出量が設定されている。
【0016】
コイル32は、ステータコア31に形成されたスロット31cに介挿されており、外部から供給される電流に応じた磁極を形成する。ここで、コイル32は、三相交流のうち、U相の電流が供給される第1コイル、V相の電流が供給される第2コイル、及びW相の電流が供給される第3コイルからなり、これら第1〜第3コイルが、ステータコア31の周方向に順次配列されている。このため、コイル32に三相交流が供給されると、ステータコア31の内周面に沿って回転磁界が形成される。
【0017】
コイル32は、ステータコア31に対してコイルエンド部32aがステータコア31の両端部から突出する状態に取り付けられる。つまり、
図2に示す通り、ステータコア31の左側の端部E1からコイルエンド部32aが左方向に突出するとともに、ステータコア31の右側の端部E2からコイルエンド部32aが突出した状態に取り付けられる。尚、コイル32の全てがこのような状態でステータコア31に取り付けられるため、コイルエンド部32aは、
図2に示す通り、ステータコア31の端部E1,E2に沿って円状に配列される。
【0018】
また、ステータコア31の端部E1,E2には、コイルエンド部32aの根本部分を覆うように、端部E1,E2に沿う円環形状のモールド部材33a,33bがそれぞれ形成されている。ここで、コイルエンド部32aの全てを覆わずに、コイルエンド部32aの根本部分のみをモールド部材33a,33bで覆うのは、冷却用のオイルOLを用いた冷却を可能としつつ、そのオイルがロータ20とステータ30との隙間であるエアギャップGに侵入するのを防止するためである。
【0019】
つまり、コイルエンド部32aの根本部分のみをモールド部材33a,33bで覆い、根本部分以外の部分を露出させることで、冷却用のオイルOLをコイルエンド部32aの露出部分に直接かけることが可能となり、これによりステータ30(コイル32)を効率的に冷却することとしている。また、詳細は後述するが、ハウジング40を構成する左側壁部材42及右側壁部材43の一部をなす隔壁部42b,43bの先端部をモールド部材33a,33bでシールし、ロータ20が配設される空間S1(第1空間)とコイルエンド部32aが配設される空間S2(第2空間)とを分離することで、オイルがエアギャップGに侵入することを防止している。
【0020】
ここで、モールド部材33a,33bの厚みは、シールの度合と冷却効率とを考慮して設定される。つまり、隔壁部42b,43bの先端部をシールすることができなければオイルがエアギャップGに侵入してしまうため、モールド部材33a,33bの厚みは、少なくとも隔壁部42b,43bの先端部をシールすることができる厚みである必要がある。また、モールド部材33a,33bの厚みが増すにつれてコイルエンド部32aの露出部分が少なくなり、オイルを用いた冷却効率が低下する。このため、モールド部材33a,33bの厚みは、必要な冷却効率が確保できる厚み以下である必要がある。具体的なモールド部材33a,33bの厚みは、例えばコイルエンド部32aの突出量の50%程度の厚み、好ましくはコイルエンド部32aの突出量の20〜30%程度の厚みに設定される。
【0021】
また、
図3に示す通り、ステータコア31内部には、ステータコア31に形成されたスロット31c内部の隙間を埋めるように、モールド部材33a,33bと同様のモールド部材33cが形成される。このモールド部材33cは、スロット31cに介挿されたコイル32を固定してスロット31c内におけるコイル32の振動を防止するとともに、コイル32の冷却効率を高めるために設けられる。
【0022】
コイル32は、電流が流れることにより発熱源になるため、コイルエンド部32aの根本部分を覆うモールド部材33a,33b及びスロット31c内においてコイル32を固定するモールド部材33cは、高い熱伝導率を有することが望ましい。例えば、酸化ケイ素(SiO
2 )や酸化アルミニウム(Al
2 O
3 )等の絶縁性を有する熱伝導フィラーが混入された熱伝導性樹脂を用いてモールド部材33a,33b,33cを形成するのが望ましい。
【0023】
ここで、モールド部材33a,33b及びモールド部材33cは、同じ熱伝導率を有する材料を用いて形成されていても良く、異なる熱伝導率を有する材料で形成されていても良い。例えば、ステータコア31に取り付けられるコイル32は、スロット31cに介挿される部分及びコイルエンド部32aの先端部分において線材(コイル32をなす線材)の密度が高く、コイルエンド部32aの根本部分において線材の密度が低い。熱抵抗は、線材の密度が高い部分(スロット31c内部及びコイルエンド部32aの先端部分)よりも線材の密度が低い部分(コイルエンド部32aの根本部分)が高くなる。従って、モールド部材33cの材料よりも高い熱伝導率を有する材料を用いてモールド部材33a,33bを形成するのが望ましい。
【0024】
また、ステータコア31の端部E1,E2に形成されるモールド樹脂33a,33bについて、例えば形成後の熱伝導率よりも形成時の粘度が優先される場合には、モールド部材33cの材料よりも低い熱伝導率及び粘性を有する材料を用いてモールド樹脂33a,33bを形成しても良い。このような材料は、例えばモールド部材33cの材料では、コイルエンド部32aの根本部分における隙間(コイル32をなす線材と線材との隙間)を十分に埋めることができない場合に必要になる。
【0025】
また、モールド部材33a,33bとモールド部材33cとの機能の違いに着目して、、モールド部材33a,33bとモールド部材33cとを異なる材料で形成しても良い。例えば、モールド部材33a,33bは隔壁部42b,43bの先端部をシールするためにも用いられるものであることからモールド部材33a,33bは硬化後も弾力性がある材料を用いて形成する一方で、モールド部材33cはスロット31c内においてコイル32を確実に固定するために、硬化後は硬度が高くなる材料を用いて形成するといった具合である。
【0026】
ハウジング40は、胴体部材41、左側壁部材42、及び右側壁部材43からなり、その内部に回転軸10の一部、ロータ20、及びステータ30を収容するとともに、モータ1の外形を成す。胴体部材41は、鉄合金等によって形成されており、軸方向両端が開口している円筒形状の部材である。この胴体部材41の内周面には、上述したステータ30が固定されている。
【0027】
また、胴体部材41の鉛直方向上部には、外部から供給される冷却用のオイルOLをハウジング40の内部に配設されたコイルエンド部32aに導くオイル供給口P1(冷媒供給口)が設けられている。このオイル供給口P1は、ステータコア31の端部E1から左側に突出したコイルエンド部32aの露出部分(モールド部材33aにより覆われていない部分)の上方、及び、端部E2から右側に突出したコイルエンド部32aの露出部分(モールド部材33bにより覆われていない部分)の上方の各々において、回転軸10の回転方向に沿う複数箇所に設けられている。
【0028】
図4は、
図1中のA−A線に沿う断面矢視図である。
図4に示す通り、オイル供給口P1は、コイルエンド部32aの露出部分の上方において、回転軸10の回転方向に沿う3箇所に設けられている。これらオイル供給口P1は、例えば20〜70°の間隔を持って、回転軸10の回転方向に配列されている。オイル供給口P1の各々から供給されるオイルOLは、コイルエンド部32aの異なる部分に滴下され、
図4中の矢印で示す通り、コイルエンド部32aの露出部を伝って下方に移動する。尚、胴体部材41の底部は、コイルエンド部32aの露出部を伝って下方に移動したオイルOLが一時的に溜められるオイル溜まりOP(油溜まり)とされる。
【0029】
回転軸10の回転方向に沿う3箇所にオイル供給口P1を設け、これらオイル供給口P1の各々からオイルOLを滴下することで、1箇所のオイル供給口P1のみからオイルOLを滴下する場合に比べて、コイルエンド部32aの露出部分の全体に対してオイルOLを行き渡らせることができるため、冷却効率を高めることができる。尚、
図4に示す例では、回転軸10の回転方向に沿う3箇所にオイル供給口P1が形成された例を図示しているが、オイル供給口P1は、モータ1の大きさ等に応じて、回転軸10の回転方向に沿う2箇所或いは4箇所以上に形成されていても良い。また、オイル供給口P1は、回転軸10の回転方向において一直線上に配列されている必要は必ずしも無く、軸方向の位置が異なるように配列されていても良い。
【0030】
左側壁部材42は、円板形状の底板部42aと円筒形状の隔壁部42b(隔壁部材)とを有する部材である。この左側壁部材42は、隔壁部42bが胴体部材41の内部に配設されるように、底板部42aが胴体部材41の左端部に取り付けられる。左側壁部材42の一部をなす底板部42aは、その中心部に軸受B1の取り付け孔が形成されており、その外周部にオイル溜まりOPのオイルOLを外部に排出するオイル排出口P2が設けられている。
【0031】
また、左側壁部材42の一部をなす隔壁部42bは、ステータコア31(モールド部材33a)の内径と同程度の外径を有し、その先端部がモールド部材33aに接触した状態に取り付けられて、ロータ20が配設される空間S1とステータコア31の左側においてコイルエンド部32aが配設される空間S2とを分離する。つまり、隔壁部42bの先端部がモールド部材33aによってシールされることにより、空間S1,S2が分離される。
【0032】
右側壁部材43は、左側壁部材42と同様に、円板形状の底板部43aと円筒形状の隔壁部43b(隔壁部材)とを有する部材である。この右側壁部材43は、隔壁部43bが胴体部材41の内部に配設されるように、底板部43aが胴体部材41の右端部に取り付けられる。右側壁部材43の一部をなす底板部43aは、その中心部に軸受B2の取り付け孔が形成されており、その外周部にオイル溜まりOPのオイルOLを外部に排出するオイル排出口P2が設けられている。
【0033】
また、右側壁部材43の一部をなす隔壁部43bは、ステータコア31(モールド部材333)の内径と同程度の外径を有し、その先端部がモールド部材33bに接触した状態に取り付けられて、ロータ20が配設される空間S1とステータコア31の右側においてコイルエンド部32aが配設される空間S2とを分離する。つまり、隔壁部43bの先端部がモールド部材33bによってシールされることにより、空間S1,S2が分離される。
【0034】
図5は、本発明の第1実施形態における隔壁部材のシール方法を示す図である。上述の通り左側壁部材42及び右側壁部材43に設けられた隔壁部42b,43bは、その先端部がモールド部材33a,33bに接触することによってシールされる訳であるが、隔壁部42b,43bの先端部とモールド部材33a,33bの接触のさせ方(シール方法)は、
図5に示す通り、様々な方法が考えられる。以下、モールド部材33aによる隔壁部42bのシール方法について説明するが、モールド部材33bによる隔壁部43bのシール方法についても同様の方法を適用することができる。
【0035】
図5(a)に示すシール方法は、隔壁部42bの先端部における外周面及びモールド部材33aの内周面を共にテーパー状に形成し、隔壁部42bの先端部を全周に亘ってモールド部材33aの内周面に係止させることで、隔壁部42bとモールド部材33aとの接触面積を増大させる方法である。
図5(b)に示すシール方法は、隔壁部42bの先端部における外周面をテーパー状に形成するとともに、モールド部材33aの内周面を階段状に形成し、隔壁部42bの先端部を全周に亘ってモールド部材33aの内周面に係止させることで、隔壁部42bとモールド部材33aとの接触箇所を増大させる方法である。
【0036】
図5(c)に示すシール方法は、隔壁部42bの先端部にフランジFを形成するとともに、モールド部材33aの内周面に溝Mを形成し、隔壁部42bの先端部に形成されたフランジFを全周に亘ってモールド部材33aの内周面に形成された溝Mに嵌合させることで、隔壁部42bとモールド部材33aとのシールの度合いを高める方法である。
図5(d)に示すシール方法は、隔壁部42bの先端部に溝を形成してOリングRを設け、隔壁部42bの先端部に設けられたOリングRを全周に亘ってモールド部材33aの内周面に当接させることで、隔壁部42bとモールド部材33aとのシールの度合いを高める方法である。
【0037】
図5(e)に示すシール方法は、隔壁部42bの先端部における外周面の全周に亘って突起部Qを形成し、この突起部Qを全周に亘ってモールド部材33aの内周面に当接させることで、隔壁部42bとモールド部材33aとのシールの度合いを高める方法である。
図5(f)に示すシール方法は、モールド部材33aの内周面側に切り欠きKを形成し、隔壁部42bの先端部を全周に亘ってモールド部材33aに形成された切り欠きKに係合させることで、隔壁部42bとモールド部材33aとのシールの度合いを高める方法である。
【0038】
次に、上記構成におけるモータ1の動作について簡単に説明する。外部からの三相交流がモータ1に供給されると、三相交流の各相の電流がステータ30に設けられたコイル32(第1〜第3コイル)に流れ、供給される電流に応じてロータ20の回転方向に沿って回転磁界が形成される。すると、外周に沿って交番磁界が形成されたロータコアがこの回転磁界と相互作用し、吸引力及び反発力が生ずることによりロータ20が回転し、これにより回転軸10がロータ20と一体に回転して回転軸10の回転駆動力が外部に伝達される。
【0039】
また、モータ1の駆動時には、不図示のポンプ等によって冷却用のオイルOLがオイル供給口P1にそれぞれ供給され、空間S2内に配設されたコイルエンド部32aの露出部分における複数箇所に滴下される。コイルエンド部32aに滴下されたオイルOLは、
図4中の矢印で示す通り、コイルエンド部32aの露出部を伝って下方に移動する。ここで、コイルエンド部32aの複数箇所にオイルOLが滴下されることにより、ステータコア31の端部に沿って配列されたコイルエンド部32aの全体に対してオイルOLを行き渡らせることができるため、コイルエンド部32aを効率的に冷却することができる。
【0040】
また、左側壁部材42の隔壁部42bがモールド部材33aによってシールされ、右側壁部材43の隔壁部43bがモールド部材33bによってシールされることにより、ステータコア31の左右両側において、ロータ20が配設される空間S1とコイルエンド部32aが配設される空間S2とが分離される。このため、オイル供給口P1から空間S2内にオイルOLが供給されても、オイルOLがエアギャップGに侵入するのを防止することができる。
【0041】
以上の通り、本実施形態では、コイルエンド部32aの根本部分を覆うようにステータコア31の両端部にモールド部材33a,33bを形成するとともに、ロータ20が配設される空間S1とコイルエンド部32aが配設される空間S2とを分離する隔壁部42b,43bをモールド部材33a,33bにそれぞれ接触した状態に取り付けている。これにより、コストの増大及び性能低下を引き起こすことなく、効率的な冷却を行うことができる。
【0042】
〔第2実施形態〕
図6は、本発明の第2実施形態による回転機としてのモータの構成を示す側断面図である。
図6に示す本実施形態のモータ2は、回転軸10にレゾルバ50を取り付るとともに、モールド部材33aに代えてモールド部材51を設け、左側壁部材42及び右側壁部材43に代えて左側壁部材52及び右側壁部材53をそれぞれ設けた点が
図1に示すモータ1とは相違する。
【0043】
レゾルバ50は、回転軸10の回転角度を検出するセンサであり、
図6に示す例では、軸受B2の右側に取り付けられている。モールド部材51は、ステータコア31の右側に形成されるモールド部材33bとは、回転軸10の軸方向に関する形状が非対称になるように形成されている。具体的に、モールド部材51は、コイルエンド部32aの根本部分を覆うようにステータコア31の端部(端部E1)に沿う円環形状に形成された円環部51aと、円環部51aから左側に突出する円筒形状の突出部51bとを有する形状である。尚、円環部51aは、
図1に示すモールド部材33aと同じ形状である。
【0044】
左側壁部材52は、
図1に示す左側壁部材42と同様に、円板形状の底板部52aと円筒形状の隔壁部52b(隔壁部材)とを有する部材である。但し、左側壁部材52の隔壁部52bは、左側壁部材42の隔壁部42bよりも軸方向の長さが短く形成されている。これは、上述したモールド部材51が円環部51aから左側に突出した円筒形状の突出部51bを有する形状であるため、隔壁部52がモールド部材51の円環部51aまでの長さを有さなくとも、隔壁部52bをモールド部材51に接触させることができるからである。
【0045】
右側壁部材53は、円板形状の底板部53a、円筒形状の支持部53b、及び円筒形状の隔壁部53c(隔壁部材)を有する部材である。支持部53bは、その内周面に、軸受B2及びレゾルバ50の一部を支持する。隔壁部53cは、
図1に示す隔壁部43bと同様のものであるが、支持部53bが設けられた分だけ軸方向の長さが短く形成されている。このように、本実施形態のモータ2は、レゾルバ50を取り付けるために、モールド部材33b,51の形状が非対称にされるとともに、左側壁部材52及び右側壁部材53の形状が非対称にされている。
【0046】
本実施形態においては、コイルエンド部32aの根本部分を覆うようにステータコア31の両端部にモールド部材51とモールド部材33bとを形成し、ロータ20が配設される空間S1とコイルエンド部32aが配設される空間S2とを分離する隔壁部52b,53cをモールド部材51,33bにそれぞれ接触した状態に取り付けている。これにより、第1実施形態と同様に、コストの増大及び性能低下を引き起こすことなく、効率的な冷却を行うことができる。
【0047】
〔第3実施形態〕
図7は、本発明の第3実施形態による回転機としてのモータの構成を示す側断面図である。
図1乃至
図6に示した第1実施形態及び第2実施形態のモータ1,2は、ロータ20が回転軸10と共に回転する内輪回転型であった。これに対し、
図7に示す第3実施形態のモータ3は、固定の中心軸70の周りをロータ20が回転する外輪回転型である。
【0048】
本実施形態のモータ3では、
図7中におけるハウジング40の左右の外側にそれぞれアウタハウジング61,62を取り付けている。そして、各アウタハウジング61,62で両端を固定支持した中心軸70に、軸受B1,B2を介してロータ20を回転自在に支持している。
【0049】
本実施形態のモータ3のロータ20は、磁性体からなる板材としての電磁鋼板を複数積層して構成した積層体のロータコア21と、ロータコア21の軸方向(電磁鋼板の積層方向)両側端部に設けたエンドリング22と、ロータコア21の内部に積層体の積層方向に沿って埋設した永久磁石23とを備えている。
【0050】
ロータ20の内部には、ロータコア21とエンドリング22とに跨って、ロータ20を冷却するためのオイルが流れるオイル流路24(冷媒流路)を形成している。このオイル流路24は、ロータコア21と永久磁石23との隙間を流路の一部として含んでいる。
【0051】
中心軸70の軸方向におけるエンドリング22の両側には、円筒形状の回転支持部材25,26を固定してある。この回転支持部材25,26は、ハウジング40の左側壁部材
42及び右側壁部材
43の中心に形成してある開口42c,43cに適宜の隙間を介して挿入した状態で、軸方向外側に突出しており、軸受B1,B2を介して中心軸70に回転可能に支持されている。なお、上記した回転支持部材25,26はロータ20の一部を構成している。
【0052】
回転支持部材25,26は、オイル流路24と軸受B1,B2の内部空間とを接続する通路を有している。この通路は、オイル流路24からのオイルを、軸受B1,B2の内部空間を介して回転支持部材25,26の開口側に導く。
【0053】
中心軸70の一方の端部を固定支持している
図7中で左側のアウタハウジング61は、軸方向内端部をハウジング40の左側壁部材
42に固定してある胴体部材61aと、胴体部材61aのハウジング40と反対側を閉塞する左側壁部材61bとを備えている。この左側壁部材61bの中心に形成してある取付孔61cに、中心軸70の一方の端部を外部に突出させた状態で固定している。
【0054】
同様にして、中心軸70の他方の端部を固定支持している
図7中で右側のアウタハウジング62は、軸方向内端部をハウジング40の右側壁部材
43に固定してある胴体部材62aと、胴体部材62aのハウジング40と反対側を閉塞する右側壁部材62bとを備えている。この右側壁部材62bの中心に形成してある取付孔62cに、中心軸70の他方の端部を外部に突出させた状態で固定している。
【0055】
中心軸70の内部には、中心軸70の両端に開口したロータオイル導入流路71を形成している。ロータオイル導入流路71には、図示しないオイルポンプなどのオイル供給手段によって、ロータ20を冷却するためのオイルが導入される。
【0056】
中心軸70が挿入されるロータ20の中心の貫通孔の内壁には、ロータコア21からその軸方向両側のエンドリング22の一部にわたり、円筒形状のスリーブ27を固定している。そして、スリーブ27やエンドリング22の内周面と中心軸70の外周面との間に、環状の隙間28(環状空間)を形成している。この隙間28は、中心軸70の外周面に開口したロータオイル導入流路71と、ロータ20のオイル流路24とにそれぞれ連通している。
【0057】
中心軸70のロータオイル導入流路71に導入されたオイルは、隙間28を経てロータ20のオイル流路24に導入される。オイル流路24のオイルは軸受B1,B2の内部空間を経て回転支持部材25,26の開口に到達し、ハウジング40の左側壁部材41及び右側壁部材42と、アウタハウジング61,62の左側壁部材61b及び右側壁部材62bとの間の空間に排出される。
【0058】
本実施形態においては、中心軸70の周りにロータ20が回転する外輪回転型のモータ3において、コイルエンド部32aの根本部分を覆うようにステータコア31の両端部にモールド部材33a,33bを形成し、ロータ20が配設される空間S1とコイルエンド部32aが配設される空間S2とを分離する隔壁部42b,43cをモールド部材33a,33bにそれぞれ接触した状態に取り付けている。これにより、第1実施形態と同様に、コストの増大及び性能低下を引き起こすことなく、効率的な冷却を行うことができる。
【0059】
〔第4実施形態〕
図8乃至
図11に示す第4実施形態のモータ4では、上述した第3実施形態のモータ3と同様に、第1及び第2実施形態のモータ1,2におけるロータ20を冷却媒体としてのオイルを用いて冷却するようにしている。特に、回転時におけるロータ20の高熱化に伴いロータコア21を構成する積層電磁鋼板間の接着力が低下する場合を想定して、積層電磁鋼板間からのエアギャップGへのオイル漏れを防止している。なお、
図8においては、コイルエンド部32aをオイルにより冷却するための構成の図示を省略している。以下、第4実施形態のモータ4の詳細な構成について説明する。
【0060】
本実施形態では、回転軸10は、第1軸部10a(第1回転体部)と第2軸部10b(第2回転体部)とからなる。第1軸部10aは、第2軸部10bの左側面中央部から軸方向左側に延びるとともに、第2軸部10bの右側面中央部から軸方向右側に延びるように形成された円柱形状の部位である。第2軸部10bは、第1軸部10aよりも大径の円柱形状の部位である。
【0061】
この回転軸10は、第2軸部10bがロータ20の中心部に挿通されてスリーブ27(スリーブ部材)とともにロータ20に固定されており、第1軸部10aの一方がハウジング40から左方向に突出するとともに第1軸部10aの他方がハウジング40から右方向に突出した状態でハウジング40に設置された軸受B1,B2によって回転自在に支持される。このため、回転軸10、ロータ20、及びスリーブ27は、回転軸10の回転軸線の周りで一体的に回転する。
【0062】
回転軸10の第1軸部10aの内部には、その中心軸に沿って第2軸部10bの内部まで延びる冷媒流路11(第1流路)が形成されている。また、回転軸10の第2軸部10bの外周面には、ロータ20に設けられた永久磁石23を冷却するための冷媒(例えば、冷却用オイル)を導く冷媒流路をなす溝12(凹部)が形成されている。本実施形態では、
図9に示す通り、断面形状が矩形形状である8つの溝12が、第2軸部10bの周方向に沿って等間隔に形成されている。
【0063】
図10は、本実施形態による回転機としてのモータ4が備える回転軸の斜視図である。
図10(a)に示す通り、溝12は、軸方向に直線状に延びるように、回転軸10の第2軸部10bに形成される。但し、溝12は、第2軸部10bの軸方向における両端部に至るように形成されている訳ではなく、第2軸部10bの軸方向における一方の端部の近傍から他方の端部の近傍まで延びるように形成されている。これは、冷媒流路をなす溝12に供給された冷媒が、回転軸10(第2軸部10b)とスリーブ27との間から漏れるのを極力防止するためである。
【0064】
ここで、回転軸10の外周面に形成される溝12は、
図10(b)に示す通り、軸方向に沿って螺旋状に形成されたものであっても良く、
図10(c)に示す通り、軸方向に沿って蛇行状に形成されたものであっても良い。溝12を
図10(b)に示す螺旋状に形成した場合には、溝12を
図10(a)に示す直線状に形成した場合に比べて、ロータ20の周方向における温度分布を均一化することができる。また、溝12を
図10(c)に示す蛇行状に形成した場合には、溝12を
図10(a)に示す直線状に形成した場合に比べて、ロータ20の冷却効率を高めることができる。
【0065】
図11は、本実施形態による回転機としてのモータ4が備える回転軸に形成される溝の断面形状を示す図である。本実施形態においては、
図11(a)に示す通り、断面形状が矩形形状である溝12が回転軸10の第2軸部10bの外周面に形成されているものとする。但し、溝12の断面形状は、
図11(b)に示す円弧形状(回転軸線に向かって凸の円弧形状)であっても良く、
図11(c)に示す三角形状(1つの頂点が回転軸線に向かう三角形状)であっても良い。
【0066】
更には、
図11(a)〜(c)に示すような軸方向に延びる細長の溝12を第2軸部10bの周方向に沿って複数形成するのではなく、
図11(d)に示す通り、第2軸部10bの外周面を全体的に凹部としてもよい。つまり、第2軸部10bの軸方向における両端部を除いた第2軸部10bの外周面を全体的に窪ませた凹部を形成しても良い。このような凹部は、例えば
図11(a)に示す直線状の溝12を周方向に沿って無数に形成することによって実現することができる。
【0067】
また、回転軸10の第2軸部10bの内部には、第1軸部10aに形成された冷媒流路11と、第2軸部10bの外周面に形成された溝12とを連通する連通流路13(第2流路)が形成されている。この連通流路13は、
図9に示す通り、冷媒流路11から溝12に向かって、第2軸部10bの径方向(具体的には、互いに異なる8方向)に延びるように形成されている。
【0068】
ここで、回転軸10は、
図9に示す通り、第2軸部10bの外周面に形成された溝12の各々がロータ20の永久磁石23の各々に最近接するように、ロータ20に対する回転方向の位置決めがされている。これは、冷媒が導かれる冷媒流路である溝12を、発熱源である永久磁石23に極力近接させることによってロータ20の冷却効率を高めるためである。
【0069】
ロータ20は、ロータコア21、エンドリング22、及び永久磁石23を備えており、スリープ27とともに回転軸10に取り付けられて回転軸10の周りで回転可能に構成されている。
図8に示す通り、ロータコア21は、磁性体からなる板材としての電磁鋼板を接着剤で複数積層して構成され、上述した回転軸10が中心部に挿通される円環形状の部材である。
【0070】
永久磁石23は、例えば軸方向に延びる直方体形状の磁石であり、ロータコア21に形成された挿通孔に介挿されることにより、ロータコア21の外周面に沿って一定の間隔をもって複数配列されている。
図9に示す例では、断面形状が長方形である8つの永久磁石23が、ロータコア21の周方向に沿って等間隔に設けられている。これにより、ロータコア21の外周面に沿って交番磁界が形成される。
【0071】
エンドリング22は、ロータコア21の軸方向(電磁鋼板の積層方向)両側部に設けられ、ロータコア21を軸方向に挟持する円環形状の部材である。尚、ロータコア21の軸方向の長さは、ロータコア21の軸方向両側部に設けられるエンドリング22の厚みを加えた長さが、回転軸10の第2軸部10bの軸方向の長さと等しくなるように設定されている。
【0072】
スリーブ27は、回転軸10の第2軸部10bとロータ20との間に設けられた円環形状の部材であり、例えば回転軸10と同じ材質によって形成されている。このスリーブ27は、軸方向の長さが回転軸10の第2軸部10bの軸方向の長さと等しくなるように設定されており、例えば焼きばめ等によって回転軸10の第2軸部10bの外周面に嵌合している。スリーブ27が回転軸10の第2軸部10bの外周面に嵌合することによって、回転軸10とスリーブ27との間に溝12による冷媒流路が形成される。
【0073】
冷媒流路としての溝12に導かれた冷媒は、回転軸10(第2軸部10b)とスリーブ27との間を流れる。このため、モータ4の温度上昇によってロータコア21を構成する電磁鋼板を接着している接着剤の接着強度が低下した状況下においてロータ20が高速回転をしたとしても、冷媒流路としての溝12に導かれた冷媒の漏れを防止することができる。尚、上述したロータコア21は、例えば焼きばめ等によってスリーブ27の外周面に嵌合している。
【0074】
ここで、スリーブ27は第2軸部10bの外周面に焼きばめ等によって嵌合しているため、溝12に導かれた冷媒の漏れが生ずることは殆ど無いが、溝12に導かれる冷媒の圧力が高い場合には漏れが生ずる虞も考えられる。このため、軸方向の両端部において、スリーブ27を回転軸10の第2軸部10bにロウ付けし、溶接し、或いはスリーブ27と回転軸10の第2軸部10bとの間にOリング等のシール材を設けてシールするのが望ましい。
【0075】
次に、上記構成におけるモータ4の動作について簡単に説明する。外部からの三相交流がモータ4に供給されると、三相交流の各相の電流がステータ30に設けられたコイル32(第1〜第3コイル)に流れ、供給される電流に応じてロータ20の回転方向に沿って回転磁界が形成される。すると、外周に沿って交番磁界が形成されたロータコア21がこの回転磁界と相互作用し、吸引力及び反発力が生ずることによりロータ20が回転し、これにより回転軸10、ロータ20、及びスリーブ27が一体となって回転して回転軸10の回転駆動力が外部に伝達される。
【0076】
また、モータ4の駆動時には、不図示のポンプ等によって冷媒が回転軸10の第1軸部10aの一方に形成された冷媒流路11に供給される。冷媒流路11に供給された冷媒は、第2軸部10bの一端側(左側)に形成された連通流路13を介して第2軸部10bの外周面に形成された溝12に導かれる。ここで、回転軸10とスリーブ27との間には、溝12による冷媒流路が形成されているため、溝12に冷媒が導かれると永久磁石23が冷却される。ここで、この冷媒流路はロータ20に設けられた永久磁石23に最近接するように配置されているため、ロータコア21及び永久磁石23を効率的に冷却することができる。溝12による冷媒流路を介した冷媒は、第2軸部10bの他端側(右側)に形成された連通流路13を介して第1軸部10aの他方に形成された冷媒流路11に導かれて外部に排出される。
【0077】
以上の通り、本実施形態では、回転軸10の外周面に冷媒を導く冷媒流路をなす溝12を形成し、この溝12が形成された回転軸10とロータ20との間に円環形状のスリーブ27を設けることによって、溝12に導かれた冷媒が回転軸10とスリーブ27との間を流れるようにしている。このため、モータ4の温度上昇によってロータコア21を構成する電磁鋼板を接着している接着剤の接着強度が低下した状況下においてロータ20が高速回転をしたとしても、溝12に導かれた冷媒の漏れを防止することができる。
【0078】
また、本実施形態では、回転軸10の第1軸部10aよりも大径とされた第2軸部10bの外周面に溝12を形成し、この溝12が形成された第2軸部10bとロータ20との間にスリーブ27を設けることによって、永久磁石23に近接した位置に冷媒流路を形成している。このため、永久磁石23を含むロータ20を簡易且つ効率的に冷却することができる。
【0079】
なお、例えば、回転軸10に形成される溝12の数、長さ、形状(断面形状含む)は、上述した実施形態に制限されることはない。また、回転軸10に形成される溝12とロータ20に設けられる永久磁石23の回転方向(周方向)における配置及び位置関係も、上述した実施形態に制限されることはなく、任意の配置及び位置関係とすることができる。
【0080】
また、上記実施形態では、回転軸10が、第1軸部10aと第2軸部10bとからなるもの(第1軸部10aと第2軸部10bとが一体形成されたもの)を例に挙げて説明した。しかしながら、本発明は、第1軸部10aと第2軸部10bとが別の部材で構成される回転軸であっても適用可能である。例えば、第1軸部10aと同様の外径を有する円筒状の軸部材に対して、第2軸部材10bと同様の外径を有するとともに第1軸部10aと同様の内径を有する円環状の補助部材が固定されたものを回転軸10として用いることが可能である。
【0081】
〔
参考例〕
図12は、本発明の
参考例による回転機としてのモータの構成を示す断面図である。
図12に示す
参考例のモータ5では、円筒形状のスリーブ27(円環形状のスリーブ部材)を、外径及び内径共に、上述した第3実施形態よりも大きい径として、その分、ロータコア21及びエンドリング22の直径方向における寸法を短くしている。そして、ロータ20の一部をなす円筒形状の回転体80(第2回転体部)の外周面にスリーブ27を取り付けて、スリーブ27の外周面にロータコア21及びエンドリング22を取り付けている。
【0082】
なお、本
参考例では、ロータ20のオイル流路24を、ロータコア21及びエンドリング22ではなく、後述するように回転体80に形成している。
【0083】
回転体80の両端面には、互いに中心軸の位置を一致させて回転支持部材25,26(第1回転体部)がそれぞれ取り付けられている。回転支持部材25,26は、中心軸70の軸方向にオイルを導く環状の隙間25a,26a(第1流路)を中心軸70との間に形成する。回転体80は、回転支持部材25,26よりも大きい径で形成されている。
【0084】
回転体80の外周面には、スリーブ27の内周面とでオイル流路24の一部を構成する溝12(凹部)が形成されている。本
参考例では、
図13に示す通り、断面形状が矩形形状である8つの溝12が、回転体80の周方向に沿って等間隔に形成されている。
【0085】
また、回転体80の内部には、回転体80の内周面と中心軸70の外周面との間に形成される環状の隙間28と連通するオイル流路24(第2流路)が形成されている。このオイル流路24は、前述した永久磁石23に対応して円周方向に沿って複数形成してある。即ち、オイル流路24は、
図12に示すように、永久磁石23に接近して回転体80の外周面に形成してある。上記回転体80の円周方向に沿って複数形成してあるオイル流路24は、内部を流れるオイルの向きを、交互に反対向きとしている。
【0086】
ここで、回転体80は、
図13に示す通り、回転体80の外周面に形成された溝12の各々がロータコア21の永久磁石23の各々に最近接するように、ロータコア21に対する回転方向の位置決めがされている。これは、オイルが導かれるオイル流路24の一部を構成する溝12を、発熱源である永久磁石23に極力近接させることによってロータ20の冷却効率を高めるためである。
【0087】
ロータ20は、ロータコア21、永久磁石23、及びエンドリング22を備えており、スリーブ27とともに回転体80に取り付けられて、回転体80とともに、中心軸70の周りで回転可能に構成されている。
図12に示す通り、ロータコア21は、磁性体からなる板材としての電磁鋼板を接着剤で複数積層して構成され、上述した回転体80がスリーブ27とともに中心部に挿通される円環形状の部材である。
【0088】
エンドリング22は、ロータコア21の軸方向(電磁鋼板の積層方向)両側部に設けられ、ロータコア21を軸方向に挟持する円環形状の部材である。尚、ロータコア21の軸方向の長さは、ロータコア21の軸方向両側部に設けられるエンドリング22の厚みを加えた長さが、回転体80の軸方向の長さと等しくなるように設定されている。
【0089】
スリーブ27は、回転体80とロータ20との間に設けられた円環形状の部材であり、例えば中心軸70や回転体80と同じ材質によって形成されている。このスリーブ27は、軸方向の長さが回転体80の軸方向の長さと等しくなるように設定されており、例えば焼きばめ等によって回転体80の外周面に嵌合している。スリーブ27が回転体80の外周面に嵌合することによって、回転体80とスリーブ27との間に溝12による隙間流路35が形成される。
【0090】
オイル流路24の一部を構成する溝12に導かれたオイルは、回転体80とスリーブ27との間を流れる。このため、モータ5の温度上昇によってロータコア21を構成する電磁鋼板を接着している接着剤の接着強度が低下した状況下においてロータ20が高速回転をしたとしても、オイル流路24の一部を構成する溝12に導かれたオイルの漏れを防止することができる。尚、上述したロータコア21は、例えば焼きばめ等によってスリーブ27の外周面に嵌合している。
【0091】
ここで、スリーブ27は回転体80の外周面に焼きばめ等によって嵌合しているため、溝12に導かれたオイルの漏れが生ずることは殆ど無いが、溝12に導かれるオイルの圧力が高い場合には漏れが生ずる虞も考えられる。このため、軸方向の両端部において、スリーブ27を回転体80にロウ付けし、溶接し、或いはスリーブ27と回転体80との間にOリング等のシール材を設けてシールするのが望ましい。
【0092】
次に、上記構成におけるモータ5の動作について簡単に説明する。モータ5の駆動時には、不図示のポンプ等によってオイルが中心軸70の端部開口からロータオイル導入流路71に導入される。導入されたオイルは、ロータオイル導入流路71から中心軸70の外周側の隙間28に流出した後、該隙間28を軸方向外側に向けて流れていき、オイル流路24に流れ込む。
【0093】
オイル流路24に流れ込んだオイルは、回転体80の外周面に形成された溝12に導かれる。ここで、回転体80とスリーブ27との間には、溝12による流路が形成されているため、溝12にオイルが導かれると永久磁石23が冷却される。ここで、溝12はロータコア21に設けられた永久磁石23に最近接するように配置されているため、ロータコア21及び永久磁石23を効率的に冷却することができる。溝12による流路を通過したオイルは、オイル流路24から軸受B1,B2の内部空間を経て、回転支持部材25,26の開口に到達する。そして、ハウジング40の左側壁部材41及び右側壁部材42と、アウタハウジング61,62の左側壁部材61b及び右側壁部材62bとの間の空間に排出される。
【0094】
以上の通り、本
参考例では、ロータ20の回転体80の外周面にオイル流路24の一部を構成する溝12を形成し、この溝12が形成された回転体80とロータコア21との間に円環形状のスリーブ27を設けることによって、溝12に導かれたオイルが回転体80とスリーブ27との間を流れるようにしている。このため、モータ5の温度上昇によってロータコア21を構成する電磁鋼板を接着している接着剤の接着強度が低下した状況下においてロータ20が高速回転をしたとしても、溝12に導かれた冷媒の漏れを防止することができる。
【0095】
また、本
参考例では、回転支持部材25,26よりも大径とされた回転体80の外周面に溝12を形成し、この溝12が形成された回転体80とロータコア21との間にスリーブ27を設けることによって、永久磁石23に近接した位置に冷媒流路を形成している。このため、永久磁石23を含むロータ20を簡易且つ効率的に冷却することができる。
【0096】
なお、例えば、回転体80の外周面に形成される溝12の数、長さ、形状(断面形状含む)は、上述した形状に制限されることはない。また、回転体80の外周面に形成される溝12とロータコア21に設けられる永久磁石23の回転方向(周方向)における配置及び位置関係も、上述した位置関係に制限されることはなく、任意の配置及び位置関係とすることができる。
【0097】
また、上記
参考例では、回転支持部材25,26と回転体80とが一体形成されたものを例に挙げて説明した。しかしながら、回転支持部材25,26と回転体80とが別の部材で構成されていてもよい。
【0098】
また、
図8乃至
図11の第4実施形態では、冷媒流路をなす凹部としての溝12が回転軸10の外周面に形成されている例について説明した。同様に、
図12及び
図13の
参考例では、オイル流路24の一部を構成する凹部としての溝12が回転体80の外周面に形成されている例について説明した。しかしながら、この溝12は、
図14に示すように、スリーブ27の内周面に形成されていても良く、
図15に示すように、回転軸10の外周面または回転体80の外周面と、スリーブ27の内周面との双方に形成されていても良い。