(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記給電コイルの巻回軸は、前記スリットの延在方向または前記開口の周縁の一部に対して直交するように配置されている、請求項1〜6のいずれかに記載のアンテナ装置。
前記面状導体は、主に前記スリットまたは前記開口の周縁部により構成される共振回路を有し、前記共振回路の共振周波数は、前記給電コイルを含む回路の共振周波数とほぼ等しい、請求項1〜7のいずれかに記載のアンテナ装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1,2に記載のアンテナ装置においては、以下に示すような解決すべき課題がある。
【0008】
図25は特許文献1に示されているアンテナ装置の平面図である。面状導体2には導体開口部CAおよびスリット2Sが形成されている。コイル状導体31はそのコイル開口部が導体開口部CAと重なるように配置されている。コイル状導体31に実線の矢印で示す電流が流れると、面状導体2には破線の矢印で示す電流が誘導される。
図25において領域A1,A2,A3,A4ではコイル状導体31に流れる電流と面状導体2に流れる電流の向きが一致している。しかし、領域Bではコイル状導体31に流れる電流と面状導体2に流れる電流の向きが逆である。このように電流の向きが逆の領域が存在することにより、アンテナ(コイル)のインダクタンスが小さくなり、通信特性が劣化する問題がある。また、コイル状導体31と面状導体2との貼り付け位置や貼り付けた際のコイル状導体31と面状導体2との距離バラツキによって誘導電流の発生量が変化するため、インダクタンス値がばらつきやすいという問題がある。
【0009】
本発明は給電回路からみたアンテナ装置のインダクタンスの低下およびばらつきの問題を解消したアンテナ装置およびそのアンテナ装置を備えた無線通信装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1)本発明のアンテナ装置は、コイル状の導体を備える給電コイルと面状に広がる面状導体とを有し、
前記面状導体は前記給電コイルより面積が大きく、
前記面状導体には外縁の一部から内部へ延びるスリットまたはスリットとともに当該スリットに繋がる開口が形成されていて、
前記給電コイルは、前記コイル状導体の巻回軸方向が前記面状導体の法線方向とは異なるように配置されていて、
前記給電コイルは、前記コイル状導体のコイル開口が前記スリットまたは前記開口の周縁の一部に近接し、且つ前記コイル開口が前記スリットまたは前記開口の周縁の一部の方を向くように、配置されていることを特徴とする。
【0011】
(2)本発明のアンテナ装置は、コイル状の導体を備える給電コイルと面状導体とを有し、
前記面状導体は複数備え、これら複数の面状導体で互いの隣接部にスリットまたはスリットとともに当該スリットに繋がる開口が形成されていて、
前記複数の面状導体および前記スリットの総面積は前記給電コイルの面積より大きく、
前記給電コイルは、前記コイル状導体の巻回軸方向が、前記複数の面状導体のうち少なくとも前記給電コイルが最も近接する方の面状導体の法線方向とは異なるように配置されていて、
前記給電コイルは、前記コイル状導体のコイル開口が前記スリットまたは前記開口の周縁の一部に近接し、且つ前記コイル開口が前記スリットまたは前記開口の周縁の一部の方を向くように配置されていることを特徴とする。
【0012】
上記(1)(2)の構成において「近接」とは「給電コイル単体による通信距離より、給電コイルおよび面状導体による通信距離が大きくなる範囲の距離」のことである。この構成により、給電用のコイルに流れる電流の方向と面状導体に流れる電流の方向とが逆になる領域が実質的に生じないので、前記インダクタンスの低下やばらつきの問題が無い。
【0013】
(3)(2)において前記複数の面状導体は直流的に接続されていて同電位であることが好ましい。この構成により、複数の面状導体がシールド導体として作用する。
【0014】
(4)(2)において、前記複数の面状導体は互いに対向する第1導体面および第2導体面を有し、前記第1導体面と前記第2導体面とを電気的に直接接続する第1接続部と、前記第1導体面と前記第2導体面とを容量を介して接続する第2接続部と、を備えた構成でもよい。この構成により、給電コイルは第1導体面に結合して、第1導体面および第2導体面の間が開口として作用するので、導体面にスリットや開口を設けることなく、第1導体面および第2導体面を放射素子として利用できる。
【0015】
(5)(4)において、前記給電コイルは、インダクタを形成する導体が形成された複数の絶縁体層(例えば磁性体層や誘電体層、また誘電体と磁性体とを混合した層)と、キャパシタを形成する導体が形成された複数の絶縁体層(例えば磁性体層や誘電体層、また誘電体と磁性体とを混合した層)とが積層された積層構造であり、前記容量は、前記給電コイルが有する前記キャパシタである構成でもよい。この構成では、第1導体面および第2導体面を接続する容量素子を必要としないため、アンテナサイズを大きくすることなく容量を内蔵することができ、回路基板上の省スペース化が可能である。
【0016】
(6)前記スリットは少なくとも1つの曲折形状部を有していてもよい。この構成により、面状導体に対する給電コイルの配置位置や向きの自由度が高まる。
【0017】
(7)前記給電コイルの巻回軸は前記スリットの延在方向または前記開口の周縁の一部に対して直交するように配置されていることが好ましい。この構成により、給電コイルはスリットまたは開口の周縁に沿って流れる電流による磁界と最も効率よく結合する。
【0018】
(8)前記面状導体は、主に前記スリットまたは前記開口の周縁部により構成される共振回路を有し、前記共振回路の共振周波数は前記給電コイルを含む回路の共振周波数とほぼ等しいことが好ましい。この構成により、面状導体による放射効率が高まる。
【0019】
(9)前記面状導体の少なくとも一部は金属筺体であることが好ましい。この構成により、面状導体としての専用部材を設ける必要がなく、部品数を削減できる。
【0020】
(10)前記面状導体の少なくとも一部は回路基板に形成されたグランド導体であることが好ましい。この構成により、面状導体としての専用部材を設ける必要がなく、部品数を削減できる。
【0021】
(11)本発明の無線通信装置は、(1)に記載のアンテナ装置とこのアンテナ装置に接続される通信回路とを備えたことを特徴とする。
【0022】
(12)本発明の無線通信装置は、(2)に記載のアンテナ装置とこのアンテナ装置に接続される通信回路とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、給電用のコイルに流れる電流の方向と面状導体に流れる電流の方向とが逆になる領域が実質的に生じないので前記インダクタンスの低下やばらつきの問題の無いアンテナ装置およびそのアンテナ装置を備えた無線通信装置が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
《第1の実施形態》
図1は第1の実施形態に係るアンテナ装置および通信相手側のアンテナコイルの斜視図である。アンテナ装置は給電コイル3と面状導体2とを備えている。給電コイル3は磁性体コア32とこの磁性体コア32に巻回されたコイル状の導体31とを備えている。このコイル状の導体31は、磁性体コア32に巻回された導線(巻き線導体)であってもよいし、複数の誘電体層を積層してなる積層体や複数の磁性体層を積層してなる積層体、あるいは、1または複数の誘電体層と1または複数の磁性体層とを積層してなる積層体に形成された導体パターンであってもよい。特に、小型で表面実装可能な給電コイルを構成できることから、複数の磁性体層(例えばフェライトセラミック層)を積層してなる積層体に面内導体パターンおよび層間導体パターンにてコイル状の導体31を構成したチップ型の給電コイルであることが好ましい。
【0026】
給電コイル3には給電回路であるRFIC13が接続される。すなわち、コイル状の導体31の一端および他端は、RFIC13の2つの入出力端子にそれぞれ接続されている。本実施形態において、RFIC13は、NFC用RFICチップであり、NFC用の高周波信号を処理する半導体ICチップである。
【0027】
面状導体2は給電コイル3より面積が大きい。すなわち、面状導体2の法線方向から見たとき、面状導体の外形寸法は、給電コイルの外形寸法よりも大きい。面状導体2には外縁の一部から内部へ延びるスリット2Sが形成されている。本実施形態において、スリット2Sはその一端から他端まで一定幅を有しているが、その幅は必ずしも一定でなくてもよい。
【0028】
この例では面状導体2は通信端末筺体の金属筺体部(金属製カバー部)であり、
図1に示した状態で面状導体2の下面に、つまり通信端末筺体の内側に、給電コイル3が配置されている。給電コイル3は、コイル状導体31の巻回軸方向が面状導体2の法線方向とは異なるように配置されている。より具体的には、コイル状導体31の巻回軸が面状導体2に対して平行となるように配置されている。なお、「平行」とは厳密な平行を意味するものではなく、コイル状導体の巻回軸方向が面状導体の面に対して±45°以内の角度を持っていればよい。
【0029】
また、給電コイル3は、そのコイル開口がスリット2Sに近接し、且つ給電コイル3のコイル開口がスリット2Sの方を向くように配置されている。すなわち、給電コイル3は、面状導体2のスリット2Sを通過する磁束がコイル開口を通過し得るように、言い換えると、スリット2Sからコイル開口が見えるように、配置されている。
【0030】
面状導体2は金属筺体部に限らず、絶縁性基材に形成された導体膜または絶縁性基材中に形成された導体層であってもよい。すなわち、面状導体2は、通信端末に搭載されたグランド導体、金属シャーシやシールドケース、バッテリーパックの金属カバー等の各種の金属板であってもよいし、フレキシブルシートに設けられた金属薄膜による平面パターンであってもよい。面状導体2がフレキシブルシート上に設けられた金属薄膜パターンである場合は、通信端末の裏蓋内側に接着剤等を介して貼り付ければよい。なお、面状導体2は面状に広がる面を有した導体であればよく、必ずしも平面である必要は無い(曲面でもよい)。
【0031】
図1に表れているように、通信相手側のアンテナコイル4にはRFIC14が接続されている。面状導体2が通信相手のアンテナコイル4に近接することによって、面状導体2に誘導電流が発生し、この電流は縁端効果によって面状導体2の主に端縁に沿って流れる。すなわちアンテナコイル4が発生した磁束の通過を妨げる方向に電流(渦電流)が流れる。
図1中の磁束φ1はアンテナコイル4を通る磁束を表している。スリット2Sも端縁の一部であり、スリット2Sの端縁に沿った部分の電流密度が高くなる。そして、スリット2Sの間隙が狭いほどスリット2S付近の磁界強度が高くなる。
図1中の磁束φ2はスリット2Sを通る磁束を表している。給電コイル3に磁束φ2の一部が鎖交する。なお、面状導体2の外周の縁端部に沿って流れる電流による磁界も生じるが、給電コイル3は面状導体2の外周の縁端部からは充分に離れているので、主にスリット2S付近の磁界と強く結合する。(外周の縁端部付近の磁界との結合により、結合が相殺されることはない。)
このようにして面状導体2が磁界捕捉素子(放射板)として作用し、給電コイル3は面状導体2を介して通信相手側アンテナコイル4と磁界結合する。また、給電コイルを構成するコイル状導体のコイル開口面が面状導体に対面しておらず、コイル状導体の一部のみが面状導体に近接しているので、さらに言えば、コイル状導体の巻回軸方向から見たとき、コイル状導体には面状導体との距離が近い部分と遠い部分とを有しているので、給電コイル3と面状導体2との相対的な位置関係が多少変わっても、給電コイル3のインダクタンス値は大きく変化しない。ゆえに、製造ばらつきの小さなアンテナ装置を実現できる。
【0032】
給電コイル3のコイル開口はスリット2Sの方を向くように配置されていればよいが、
図1に示したように、給電コイル3のコイル巻回軸がスリット2Sの延在方向(延びるように存在する方向)に対して直交していると、スリット2S部に生じる磁束φ2との結合効率が最大となる。
【0033】
図2はスリット2Sと給電コイル3との位置および向きと結合強度との関係を示す図である。
図2(A)、
図2(B)、
図2(C)において両端矢じりの実線は給電コイル3のコイル巻回軸方向を表している。また、
図2(A)、
図2(C)において両端矢じりの破線はスリット2Sの延在方向を表し、
図2(B)において両端矢じりの破線はスリット2Sの内部端が延びる方向(スリット2S全体の間隙方向)を表している。
【0034】
図2(A)は
図1に示した例と同様に、給電コイル3のコイル開口がスリット2Sの方を向くように配置され、且つ給電コイル3のコイル巻回軸がスリット2Sの延在方向に直交している例である。この構成によれば、スリット2S部に生じる磁界で給電コイル3は面状導体2と強く結合する。
【0035】
図2(B)は、給電コイル3のコイル開口がスリット2Sの内部端方向を向くように配置され、且つ給電コイル3のコイル巻回軸がスリット2Sの内部端方向に直交している例である。この構成によれば、給電コイル3はスリット2Sの内部端に沿って流れる電流で生じる磁界と結合するので、結合度は弱いながらも給電コイル3は面状導体2と結合する。
【0036】
図2(C)は、給電コイル3の2つのコイル開口がスリット2Sの両側方向を向くように配置され、且つ給電コイル3のコイル巻回軸がスリット2Sの延在方向に直交している例である。この構成によれば、給電コイル3はスリット2Sの対向する端縁に沿って流れる電流で生じる磁界と逆方向にそれぞれ結合するので、結合が相殺され、給電コイル3は面状導体2と結合しない。
【0037】
したがって、給電コイル3のコイル開口がスリット2Sの方を向くように配置され、且つ給電コイル3のコイル巻回軸がスリット2Sの延在方向に直交していることが好ましい。
【0038】
《第2の実施形態》
図3は第2の実施形態に係るアンテナ装置の斜視図である。この例では面状導体2に形成されているスリットは、互いに直交する方向に延びるスリット部2Sa,2Sbで構成されている。すなわちスリットは曲折形状部を有している。給電コイル3aはスリット部2Saの方を向くように配置され、且つ給電コイル3aのコイル巻回軸がスリット部2Saの延在方向に直交している。したがって、給電コイル3aはスリット部2Sa部に生じる磁界と強く結合する。また、給電コイル3bはスリット部2Sbの方を向くように配置され、且つ給電コイル3bのコイル巻回軸がスリット2Sbの延在方向に直交している。したがって、給電コイル3bはスリット部2Sb部に生じる磁界と強く結合する。
【0039】
この例では2つの給電コイル3a,3bを設けたが、いずれか一方のみを設けられていてもよい。また、2つの給電コイルを直列または並列に接続されていてもよい。もちろん、3つ以上の給電コイルを利用することもできる。
【0040】
図4は第2の実施形態に係る別のアンテナ装置の斜視図である。この例では面状導体2にスリット2Sおよび開口2Aが形成されている。給電コイル3は開口2Aに近接し、コイル開口が開口2Aの方を向くように配置されている。したがって、給電コイル3は開口2Aの周縁に生じる磁界と強く結合する。なお、給電コイル3は、そのコイル巻回軸がスリット2S付近に生じる磁界の向きとは直交しているのでスリット2Sの影響は受けない。また、面状導体2の外周の縁端部に沿って流れる電流による磁界も生じるが、給電コイル3は面状導体2の外周の縁端部よりも開口2A側に寄っているので、主に開口2A付近の磁界と強く結合する。(外周の縁端部付近の磁界との結合により結合が相殺されることはない。)
図5は、第2の実施形態に係るさらに別のアンテナ装置に関し、給電コイル3と面状導体2との結合の様子を示す図である。このアンテナ装置の面状導体には互いに幅の異なるスリット2Sおよび開口2Aが形成されている。
図5(A)、
図5(B)、
図5(C)において両端矢じりの実線は給電コイル3のコイル巻回軸方向を表している。また、
図5(A)、
図5(C)において両端矢じりの破線はスリット2Sの延在方向を表し、
図5(B)において両端矢じりの円弧状の破線は開口2Aに沿って流れる電流の向きを表している。
【0041】
図5(A)の例では、給電コイル3はスリット2S付近に生じる磁界と強く結合する。
図5(B)の例では、給電コイル3は開口2A付近に生じる磁界のうち給電コイル3近傍の磁界と強く結合する。
図5(C)の例では、給電コイル3はスリット2Sの対向する端縁に沿って流れる電流で生じる磁界と逆方向にそれぞれ結合するので、結合が相殺される。また、給電コイル3はコイル巻回軸が開口2A付近に生じる磁界のうち給電コイル3近傍の磁界と直交しているので、やはり給電コイル3は面状導体2と結合しない。
【0042】
なお、
図4・
図5に示した開口2Aはスリットの一部が他の部分より幅広になっているものとみることもできる。この構成により、開口部またはスリットの幅広部分を例えばカメラモジュールのレンズ部に対応させれば、カメラモジュールを含む範囲に面状導体を設けることもできる。開口2Aは、カメラモジュールのレンズ部だけでなく、スピーカーやマイク等、各種の機能部を収容するための穴として利用することができる。
【0043】
《第3の実施形態》
図6(A)、
図6(B)は第3の実施形態に係るアンテナ装置の斜視図である。
図6(A)、
図6(B)のいずれの例も、2つの面状導体2a,2bを備えている。そして、面状導体2aと2bの互いの隣接部にスリット2Sが形成されている。2つの面状導体2a,2bおよびスリット2Sの総面積は給電コイル3の面積より大きい。すなわち、各面状導体2a,2bの法線方向から見たとき、各面状導体2a,2bの外形寸法の総面積は、給電コイル3の外形寸法よりも大きい。
【0044】
給電コイル3は面状導体2a側に近接配置され、そのコイル開口がスリット2Sの方を向くように配置され、且つ給電コイル3のコイル巻回軸がスリット2Sの延在方向に直交している。そのため、第1の実施形態で示したアンテナ装置と同様に、給電コイル3は面状導体2aと結合する。面状導体2bはスリット2Sを介して面状導体2aと結合するので、結局、面状導体2a,2bは磁界捕捉素子(放射板)として作用し、給電コイル3は面状導体2a,2bを介して通信相手側アンテナコイル4と磁界結合する。本実施形態において、各面状導体2a,2bの主面は同一面であり、給電コイル3は、そのコイル状導体の巻回軸方向が各面状導体と平行となるように配置されている。
【0045】
上記の例では2つの面状導体を備えたが、3つ以上の複数の面状導体を備えていてもよい。また、本実施形態において、各面状導体は電気的に独立したものであるが、互いに接続されていてもよい。
【0046】
《第4の実施形態》
図7は第4の実施形態に係るアンテナ装置の斜視図である。第1の実施形態で
図1に示したアンテナ装置と異なり、スリット2Sの外側の端部付近に、スリット2Sを跨ぐようにキャパシタ5を接続している。キャパシタ5は例えばチップコンデンサである。
【0047】
図8は第4の実施形態に係るアンテナ装置の面状導体2のインダクタンス形成部について示す図である。スリット2Sの外側の端部付近に、スリット2Sを跨ぐようにキャパシタ5を接続した場合、主にスリット2Sの内周縁部2SP(図中破線)の電気長に相当するインダクタンスが生じ、このインダクタンスとキャパシタ5のキャパシタンスとでLC共振回路が構成される。なお、
図1〜
図6では面状導体に流れる電流が主に導体の縁端部を流れる効果を使っているのに対し、
図7では面状導体を共振させて使っているため動作原理が異なる。すなわち、共振を利用する場合、スリット2Sを中心にループ状に電流が周回する。しかしいずれの使い方であっても面状導体によってアンテナ特性を改善させることが可能であり、
図1〜6のような使い方でもよいし、
図7のような使い方でもよい。
【0048】
一方、給電コイル3は、コイル状導体のインダクタンス成分とコイル状導体の線間容量に相当するキャパシタンス成分を有し、且つ外部に接続されるRFIC13の主にキャパシタンスとで共振回路が構成される。面状導体2およびキャパシタ5による共振回路の共振周波数は給電コイル3の共振周波数付近に定められている。これらの共振周波数は、キャリア周波数付近に定められている。このことで、給電コイル3と面状導体2とは強く電磁界結合する。その結果、面状導体2から高効率で電磁界放射することができる。
【0049】
前記面状導体側の共振回路の共振周波数はキャパシタ5のキャパシタンスおよびスリット2Sの長さによって定めることができる。また、面状導体のスリット2S以外の箇所にマイクやスピーカーなどの磁性体を備える部品や金属筺体が近接したとしても、面状導体側の共振周波数は殆ど変化しない。そのため、アンテナ装置の組み込み先の環境に影響受けず、安定したアンテナ特性が得られる。
【0050】
例えば、13.56MHz帯のキャリア信号を通信に用いる場合、給電コイル3側の共振周波数(給電コイル3およびRFIC13による回路単体の共振周波数)を13.56MHzとし、面状導体2側の共振周波数を13.8MHzとする。両者を近接させることで、給電コイル3の共振周波数は13.1MHzとなり、面状導体側の共振周波数は14.2MHzとなる。すなわち、2つの共振回路の結合により結合モードの2つの共振周波数が生じ、この2つの結合モードの共振周波数の周波数帯域に亘って利得を得ることができる。すなわち、面状導体2側の共振周波数と給電コイル3側の共振周波数とを異ならせることにより、通信可能な周波数帯域を広帯域化することができる。
【0051】
図9は第4の実施形態の別のアンテナ装置の斜視図である。面状導体2の構成および給電コイル3は
図4に示したものと同じである。
図9の例では、基板1にキャパシタ5が実装されていて、スプリングピン6を介してキャパシタ5がスリット2Sに跨るように接続されている。面状導体2の共振に寄与するインダクタンス成分はスリット2Sおよび開口2Aの内周縁およびスプリングピン6を流れる電流の電気長で定まる。この構造によれば、面状導体2にキャパシタを設ける必要が無いため、工法的に作りやすい利点がある。なお、
図9において、給電コイル3は、面状導体2上に配置させてもよいし、キャパシタ5と同じように基板1上に配置させてもよい。給電コイル3とキャパシタ5とを基板1上に実装する場合、給電コイル3とキャパシタ5とを多層基板等を利用して一体化してもよい。
【0052】
《第5の実施形態》
図10は第5の実施形態に係るアンテナ装置の斜視図である。面状導体2にはスリット2Sおよび開口2Aが形成されている。スリット2Sはメアンダライン状に形成されている。すなわち導体部が互いに入り込む櫛歯状に形成されている。したがって、このスリット2Sのキャパシタンス成分が増大する。一方、開口2Aの内周縁でインダクタンス成分が生じ、このインダクタンス成分とスリット2Sのキャパシタンス成分とで共振回路が構成されている。この構成によれば、別部品としてのチップコンデンサ等が不要となる。前記メアンダライン状のスリット2Sはエッチングを含むパターン形成法で作成できるので、必要なキャパシタンスが高精度に得られる。
【0053】
なお、給電コイル3は開口2Aの周縁の一部の方を向くように配置されている。したがって、給電コイル3は開口2Aに生じる磁界と強く結合する。
【0054】
図11(A)は第5の実施形態に係る別のアンテナ装置が備える面状導体の斜視図、
図11(B)はその正面図である。この例ではフレキシブルシート状の基板1の上面に面状導体2が形成されていて、下面に容量形成用電極7が形成されている。この容量形成用電極7は面状導体2のスリット2Sの両側の導体部と対向する位置に形成されている。この構成によっても別部品としてのチップコンデンサ等が不要となる。
【0055】
《第6の実施形態》
図12(A)、
図12(B)は第6の実施形態に係るアンテナ装置の斜視図である。
図12(A)、
図12(B)のいずれの例も、2つの面状導体2a,2bを備えている。そして、面状導体2aと2bの互いの隣接部にスリット2Sが形成されている。このスリット2Sの端部付近にキャパシタ5a,5bがそれぞれ接続されている。面状導体2a,2bの共振周波数の決定に寄与するインダクタンス成分はスリット2Sの内周端縁で定まる。このインダクタンス成分と2つのキャパシタ5a,5bのキャパシタンスとで共振回路が構成されている。その他は第3の実施形態で
図6に示したアンテナ装置と同じである。
【0056】
このように、複数の面状導体の隣接部にスリットが形成された構造でも面状導体側の共振周波数を定めることができる。
【0057】
なお、面状導体2a,2bを直流的に同電位とすれば、面状導体2a,2bをシールド導体として利用できる。
【0058】
《第7の実施形態》
図13は第7の実施形態に係るアンテナ装置を備えた無線通信装置の筐体内部の構造を示す平面図である。この無線通信装置は、スマートフォンに代表される通信端末装置であり、筐体91の内部には回路基板71,81、バッテリーパック83等が収められている。回路基板71には通信回路を備えたRFIC60、給電コイル3、キャパシタ5等が実装されている。この回路基板71にはUHF帯アンテナ72、カメラモジュール76等も搭載されている。また、回路基板81にはUHF帯アンテナ82等が搭載されている。回路基板71と回路基板81とは同軸ケーブル84を介して接続されている。
【0059】
回路基板71に形成されているグランド導体は面状導体として作用し、スリット2Sおよび開口2Aが形成されている。このスリット2Sの外側の端部にスリット2Sを跨ぐようにキャパシタ5が実装されている。また、給電コイル3は開口2A内に実装されている。給電コイル3は、開口2Aの周縁の一部に近接し、給電コイル3のコイル開口が開口2Aの周縁の一部の方を向くように配置されている。したがって、給電コイル3は開口2Aに生じる磁界と強く結合する。
【0060】
図13に示した例では、面状導体としての専用部材を設ける必要がなく、部品数を削減できる。また、無線通信装置の筐体の両面どちらの面でも通信することができる。また、キャパシタ5のキャパシタンスが、UHF帯でバイパスコンデンサとして作用するような大きな値にすれば、UHF帯アンテナからの高周波電流が給電コイル3付近を通過しないので、UHF帯アンテナが給電コイル3(の材質)の影響を受けて特性が劣化する、ということもない。
【0061】
図14は第7の実施形態に係るモジュール化した給電コイル3の斜視図である。この給電コイル3セラミック層や樹脂層を積層してなる積層体を素体としている。積層体は磁性体積層部11とその上下の非磁性体(誘電体)積層部12とで構成されている。第1コイル導体21は磁性体積層部11を周回するように形成されている。この磁性体積層部11の内部には第2コイル導体が形成されている。積層体の上面にはRFIC60や、たとえばチップインダクタやチップコンデンサのような他のチップ部品61が搭載されている。誘電体積層部12には共振周波数設定用のキャパシタが電極パターンによって構成されている。このようにして給電回路側の部品をモジュール化することもできる。
【0062】
《第8の実施形態》
図15は第8の実施形態に係るアンテナ装置を備えた無線通信装置の筐体内部の構造を示す図であり、上部筐体91と下部筐体92とを分離して内部を露出させた状態での平面図である。この例では、下部筐体92は樹脂製であるが、その内面に金属膜による面状導体2が形成されている。フレキシブル基板に面状導体が貼り付けられていてもよいし、下部筺体の内面にレーザーダイレクトストラクチャリング(LDS)によって描画されていてもよい。面状導体2にはスリット部2Sa,2Sbおよび開口2Aが形成されている。開口2Aに対応する筐体の部分にも開口が形成されていて、この部分にカメラモジュール76のレンズが光学的に露出するように、これらが配置されている。
【0063】
給電コイル3はスリット部2Sbの先端(開口2Aから遠い側)を向くように配置され、且つ給電コイル3のコイル巻回軸がスリット部2Sbの先端に直交している例である。この構成によれば、給電コイル3はスリット2Sbの内部端に沿って流れる電流で生じる磁界と結合する。すなわち給電コイル3は面状導体2と結合する。上部筐体91側の他の構成は
図13に示したものと同じである。
【0064】
《第9の実施形態》
図16(A)は第9の実施形態に係るアンテナ装置の斜視図、
図16(B)はその正面図である。この例では、2つの面状導体2a,2bを備えている。面状導体2aは例えば回路基板に形成されたグランド導体であり、面状導体2bは通信端末の筺体の一部を構成する金属筐体部である。面状導体2bは、2つの面状の壁部と各壁部間の主面部とを有する。面状導体2aはグランド導体であって、回路基板の表層または内層に設けられている。回路基板の表層には給電コイル3がチップ型部品として実装されている。回路基板はプリント配線板であって、図示しないが、セルラー用RF回路や表示装置の駆動回路等、各種の実装部品が搭載されている。
【0065】
面状導体2aと面状導体2bとの間にはスリット2Sa,2Sbが設けられている。すなわち、面状導体2aの端部と面状導体2bの端部はスリット2Saやスリット2Sbを介して対向している。より具体的には、面状導体2bの一方壁部と面状導体2aとの間にスリット2Saが形成されており、面状導体2bの他方壁部と面状導体2aとの間にスリット2Sbが形成されている。面状導体2aと面状導体の各壁部とは、各々の法線がほぼ直交するように配置されている。
【0066】
金属筺体部は、例えばマグネシウムやアルミニウム、炭素繊維等の導電材によって構成されている。面状導体2aも導電材によって構成されており、プリント配線板のグランド導体の他、端末内に配置された金属シャーシやシールドケース、バッテリーパックの金属カバー等の各種の金属体を利用できる。
【0067】
給電コイル3は、面状導体2bよりも面状導体2a寄りに配置されている。すなわち、給電コイル3は、その巻回軸が面状導体2aに対して平行となるように、面状導体2aに近接配置されている。このように、複数の面状導体が隣接する部分をスリットとして利用する場合、給電コイルは、その巻回軸方向が最も近い方の面状導体の法線方向と異なるように配置されていればよい。
【0068】
図16(A)において、破線の矢印は面状導体2a,2bの周縁部に流れる電流の経路を表わしている。また、
図16(B)において、矢印はスリット2Sa,2Sbを通る磁束を表している。例えば面状導体2bが通信相手のアンテナコイルに近接することによって、面状導体2bに誘導電流が発生し、この誘導電流は縁端効果によって主に面状導体2bの端縁に沿って流れる。そして、スリット2Sa,2Sbを介して隣接する面状導体2aに電流が誘導され、この電流は縁端効果によって主に面状導体2aの端縁に沿って流れる。さらに、給電コイル3はスリット2Saを通る磁界を介して面状導体2a,2bと結合する。
【0069】
なお、面状導体2a,2bを直流的に同電位とすれば、面状導体2a,2bをシールド導体として利用できる。すなわち、面状導体2aと面状導体2bとは、電気的に独立していてもよいが、給電ピン等を介して接続されていてもよい。
【0070】
このように、2つの面状導体が同一平面ではなく異なる面上にあって、スリット2Sa,2Sbが異なる面を有する面状導体の間に設けられていてもよく、同様の作用効果を得ることができる。特に、本実施形態によれば、金属筺体部自体には、給電コイル3との結合用のスリットや開口を形成する必要が無いので、金属筺体部の強度が大きく低下することが無いし、筺体のデザイン上の自由度も向上する。
【0071】
なお、給電コイル3の配置状態は、
図16(A)および
図16(B)で説明したものに限定されない。
図17は給電コイル3の配置状態の別の例を示すアンテナ装置の正面図である。
図17に示すように、面状導体2aはグランド導体であって、絶縁性基板2cの表層(または内層)に設けられている。給電コイル3は、面状導体2aが設けられていない絶縁性基板2cの領域に実装されている。給電コイル3は、コイル巻回軸が絶縁性基板2cに対し直交し、かつ、コイル開口部の一部がスリット2Saと重なる位置に配置されていてもよい。この場合であっても、給電コイル3はスリット2Saを通る磁界を介して面状導体2a,2bと結合する。
【0072】
《第10の実施形態》
図18(A)は第10の実施形態に係るアンテナ装置の斜視図、
図18(B)はその正面図である。
図19は、アンテナ装置の側面図である。この例では、第9の実施形態と同様に2つの面状導体2a,2bを備えているが、スリット2Sa,2Sbを跨ぐようにして接続部2b1,2b2,2b3,2b4を設け、面状導体2aと面状導体2bとの一部を接続している点で第9の実施形態と相違する。
【0073】
回路基板2cには、面状導体2a、および、面状導体2aとは非導通な電極パターン2a1,2a2が形成されている。第9の実施形態と同様、面状導体2aは例えば回路基板2cに形成されたグランド導体であり、面状導体2bは金属筐体の一部である。回路基板2cと面状導体2bとの間にスリット2Sa,2Sbが設けられている。なお、面状導体2aとしては、グランド導体の他、金属シャーシやシールドケース、バッテリーパックの金属カバー等の各種の金属体を利用できる。
【0074】
面状導体2bは、スリット2Saの長さ方向における両端部近傍で、電極パターン2a1,2a2と導通するよう、接続部2b1,2b2により回路基板2cに接続されている。上述のように電極パターン2a1,2a2は面状導体2aとは非導通であるため、スリット2Sa側では、面状導体2bは面状導体2aと非導通となっている。
【0075】
また、面状導体2bは、スリット2Sbの長さ方向における両端部近傍で、面状導体2aと導通するよう、接続部2b3,2b4により回路基板2cに接続されている。なお、面状導体2bは、スリット2Sbを形成されないように、回路基板2cに接続されていてもよい。
【0076】
なお、接続部2b1,2b2,2b3,2b4は、金属のねじであってもよいし、はんだ、導電ペーストなどであってもよい。また、面状導体2bが、面状導体2aにはめ込まれる構造であってもよい。
【0077】
回路基板2cのスリット2Sa側には、第9の実施形態と同様に、給電コイル3が実装されている。
【0078】
回路基板2cには、電極パターン2a1と面状導体2aとを接続するキャパシタ5cが設けられている。面状導体2aと面状導体2bとは、接続部2b1,2b3およびキャパシタ5cにより導通し、
図18(B)に示すように、面状導体2a,2bにより形成された開口Aは、インダクタンスを構成する。このインダクタンスは、キャパシタ5cとでLC共振回路を構成している。キャパシタ5cは、LC共振回路が、通信信号のキャリア周波数帯内またはキャリア周波数帯近傍で共振するキャパシタンスに定められている。
【0079】
図18(A)および
図18(B)において磁束φ2は給電コイル3およびスリット2Saを通る磁束を示す。このように、スリット2Saに磁束が通ることで、面状導体2aに電流が誘導される。この結果、開口Aに沿って面状導体2a,2bに電流が流れる。すなわち、開口Aの周囲にループが形成され、この開口Aを中心にループ状に電流が流れる。これにより、開口Aに磁束が出入りし、アンテナ装置においては、
図19の矢印に示すように、開口Aが放射部として作用する。
【0080】
なお、面状導体2aのうち開口Aより外側にある部分には、破線矢印に示すように、開口Aより放射される磁束を打ち消すように渦電流が流れる。したがって、開口Aから放射された磁界は、面状導体2b側に曲げられて放射されやすい。
【0081】
第10の実施形態では、長手方向における面状導体2bの長さは、面状導体2aよりも短い構成が好ましい。この構成にすることで、開口Aからの磁束が面状導体2b側へと放射するようになり、面状導体2bを相手側アンテナに向けて通信することで、より効果的に通信ができる。また、キャパシタ5cは可変容量素子として、共振周波数を可変としてもよい。
【0082】
《第11の実施形態》
図20は、第11の実施形態に係るアンテナ装置の斜視図である。この例では、回路基板2cには、面状導体2aとは非導通の電極パターン2a3,2a4がさらに形成されている。電極パターン2a2,2a3と面状導体2aとは、インダクタ8a,8bにより導通している。また、電極パターン2a4と面状導体2aとは、キャパシタ5dにより導通している。
【0083】
この構成の場合、スリット2Saの内周縁部でインダクタンスが生じ、このインダクタンスとキャパシタ5cのキャパシタンスとでLC共振回路を構成する。また、インダクタンス8aを用いることで、スリット2Saの内周縁部によるインダクタンスのみを利用した場合と比べて、LC共振回路が通信信号のキャリア周波数帯内またはキャリア周波数帯近傍で共振するよう、インダクタンスを設定し易くなる。同様に、スリット2Sbに磁束が通ることで、スリット2Sbの内周縁部にも、図中矢印方向に電流が誘導される。すなわち、スリット2Sbからも磁束が放射されるようになる。
【0084】
《第12の実施形態》
図21は、第12の実施形態に係るアンテナ装置に用いる給電コイルの分解斜視図である。第12の実施形態に係る給電コイル3cは、インダクタンス成分とキャパシタンス成分とを有している。具体的には、
図21に示すように、給電コイル3cは、コイルパターンの一部である面内導体321a,321bが形成された非磁性体層311aおよび磁性体層311bと、複数の磁性体層312とを有し、複数の磁性体層312が非磁性体層311aおよび磁性体層311bに挟まれた積層構造となっている。複数の磁性体層312の側面には、図示しないが、非磁性体層311aおよび磁性体層311bの面内導体321a,321bを接続する側面ビアが形成されている。
【0085】
また、複数の磁性体層312のうち、コイル巻回中心部に位置する二つには、積層方向に対向してキャパシタ成分を構成するための平面導体パターン312a,312bが形成されている。コイルパターンから発生する磁界は、面内導体321a,321b付近が最も強く、巻回中心部に向かうに従って強度は弱くなる。このため、巻回中心部付近にキャパシタを形成しても、アンテナ特性にあまり影響を与えることはない。
【0086】
非磁性体層311aの下側には入出力端子331a,331b,331c,331dが形成された非磁性体層313が積層されている。なお、入出力端子331a,331b,331c,331dは、非磁性体層311aの面内導体321aが形成された面とは反対面に形成されていてもよし、非磁性体層311aの下面に面内導体321aを形成して、非磁性体層311aを磁性体層としてもよい。
【0087】
入出力端子331a,331cには、コイルパターンの端部それぞれが接続されている。すなわち、入出力端子331a,331cは、給電コイル3cのコイルの入出力端子となる。また、入出力端子331bには、平面導体パターン312bが接続され、入出力端子331dには、平面導体パターン312aが接続されている。すなわち、入出力端子331b,331dは、キャパシタの入出力端子となる。
【0088】
図22は、第12の実施形態に係る給電コイルを実装する基板の一部を示す図である。
図22に示す回路基板2cおよび回路基板2cに形成される面状導体2aは、第10および第11の実施形態と同様である。
図22の101a,101b,101cは、面状導体2aとは非導通の端子用電極パターンである。給電コイル3cは、入出力端子331aが端子用電極パターン101aと、入出力端子331bが面状導体2aと、入出力端子331cが端子用電極パターン101bと、入出力端子331dが端子用電極パターン101cと導通するように配置される。端子用電極パターン101a,101bには、RFIC15が接続される。端子用電極パターン101bには、第10および第11の実施形態で示した面状導体2bが、接続部2b1(
図18(A)参照)により接続される。
【0089】
この構成により、給電コイル3cは、インダクタンス成分とキャパシタンス成分とを有するため、第10および第11の実施形態で説明した別部品としてキャパシタ5cが不要となる。この結果、アンテナサイズを大きくすることなく容量を内蔵することができ、回路基板上の省スペース化が可能である。
【0090】
なお、給電コイル3cに形成するキャパシタは、積層方向に形成してもよいし、積層方向に直交する方向、すなわち、各層の面に沿った方向に形成してもよい。また、給電コイル3cには、キャパシタを複数設けてもよい。
【0091】
以下に、第12の実施形態に係る給電コイルの変形例を示す。
【0092】
図23は、別の例の給電コイルの分解斜視図である。この例の給電コイル3dは、平面導体パターン312a,312bが形成された磁性体層312が、コイルパターンの一部である面内導体321a,321bが形成された非磁性体層311a、磁性体層311bの下側に積層された構成である。すなわち、給電コイル3dのコイルと、実装される面状導体2aとの間にキャパシタを形成することで、面状導体2aからコイルまでの距離を稼ぐことができるため、面状導体2aによる影響を軽減することができる。
【0093】
なお、非磁性体層311bは、磁性体層であってもよい。また、
図23には複数の磁性体層312が配置されているが、これらのうちコイル用導体パターン321aの直上に配置される磁性体層311b以外の磁性体層は、非磁性体層によって置換されていてもよい。なお、それぞれの層の磁性・非磁性は、目的に応じて適宜選択してもよい。
【0094】
図24は、別の例の給電コイルの分解斜視図である。この例の給電コイル3eは、
図23と同様に、給電コイル3eのコイルと、実装される面状導体2aとの間に、平面導体パターン312a,312bによりキャパシタを形成した構成である。さらに、コイルパターンの一部である面内導体321a,321bが形成された非磁性体層311aおよび磁性体層311bの間に挟まれた複数の磁性体層312の一つには、ミアンダ状に形成された電極パターン312cが形成されている。電極パターン312cは、図示しない側面ビアを介して、一端が平面導体パターン312bに導通し、他端が入出力端子331bに導通している。平面導体パターン312bは、入出力端子331dに導通している。なお、複数の磁性体層312および磁性体層311bは非磁性体層であってもよいし、非磁性体層311a,311bは磁性体層であってもよい。
【0095】
これにより、入出力端子331b,331dの間に、平面導体パターン312a,312bにより形成されるキャパシタと、平面導体パターン312bにより形成されるインダクタとによるLC直列共振回路が接続された構成となる。平面導体パターン312bにより形成されるインダクタにより、
図18(A)等で説明した、開口Aによるインダクタンス成分が不足する場合に補うことができ、通信信号のキャリア周波数帯内またはキャリア周波数帯近傍で共振するLC共振回路を実現できる。
【0096】
なお、以上に示した第1〜第9の実施形態ではアンテナ装置が受信動作する場合について説明したが、アンテナの可逆性により、送信アンテナとして作用する場合にも同様に結合する。すなわち、給電コイルが発生する磁界により面状導体に誘導電流が流れ、それによって発生する磁界で通信相手のアンテナと結合することになる。
【0097】
また、本発明のアンテナ装置は、面状導体を放射体として使用しているため、面状導体のいずれの主面を相手側アンテナに向けても通信することができる。
【0098】
また、面状導体は給電コイルと相手側アンテナとの間に配置してもよいし、給電コイルを面状導体と相手側アンテナとの間に配置してもよい。