(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記接合工程では、前記凹溝と前記蓋板の下面とで形成された中空部に熱媒体を流して前記ベース部材及び前記蓋板を冷却しながら摩擦攪拌を行うことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の伝熱板の製造方法。
前記接合工程では、前記ベース部材の前記凹溝に挿入された前記熱媒体用管に熱媒体を流して前記ベース部材及び前記蓋板を冷却しながら摩擦攪拌を行うことを特徴とする請求項4又は請求項5に記載の伝熱板の製造方法。
前記接合工程において、前記熱媒体用管の周囲に形成された空隙部に、摩擦熱によって流動化された塑性流動材を流入させることを特徴とする請求項4又は請求項6に記載の伝熱板の製造方法。
前記接合工程では、前記接合用回転ツールの押圧力によって前記蓋板が前記熱媒体用管の上部を押圧するとともに、前記蓋板の少なくとも上部と前記ベース部材とを摩擦攪拌することを特徴とする請求項5又は請求項6に記載の伝熱板の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0039】
[第一実施形態]
本発明の第一実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。まず、本実施形態に係る製造方法によって製造された伝熱板1について説明する。本実施形態においては、伝熱板1をヒートプレートとして用いる場合を例にして説明する。
【0040】
伝熱板1は、
図1の(a)及び(b)に示すように、平面視矩形の板厚のベース部材2と、ベース部材2の内部に埋設される熱媒体用管20と、ベース部材2に凹設された溝に配置された蓋板10と、を主に備えている。ベース部材2と蓋板10との突合部J1,J2は、それぞれ摩擦攪拌によって接合されている。かかる伝熱板1は、熱媒体用管20に挿通された図示しないマイクロヒーター等で加熱して使用される。
【0041】
ベース部材2は、熱媒体用管20に流れる熱媒体の熱を外部に伝達させる役割、あるいは、外部の熱を熱媒体用管20に流れる熱媒体に伝達させる役割を果たすものである。ベース部材2は、
図2の(a)及び(b)に示すように、平面視正方形を呈する直方体であって、本実施形態では、厚みが30mm〜120mmのものを用いる。ベース部材2は、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、銅、銅合金、チタン、チタン合金、マグネシウム、マグネシウム合金など摩擦攪拌可能な金属材料からなる。ベース部材2の表面Zaには、蓋溝3が凹設されており、蓋溝3の底面3cの中央には、蓋溝3よりも幅狭の凹溝4が凹設されている。
【0042】
蓋溝3は、
図2の(a)及び(b)に示すように、蓋板10が配置される部分であって、平面視略馬蹄状に一定の幅及び深さで連続して形成されている。蓋溝3は、断面視矩形を呈し、蓋溝3の底面3cから垂直に立ち上がる側壁3a,3bを備えている。
【0043】
凹溝4は、熱媒体用管20が挿入される部分であって、蓋溝3の底面3cの中央部分に、蓋溝3の全長に亘って形成されている。凹溝4は、上方が開口した断面視U字状の溝であって、下端には断面視半円形状の底面5が形成されている。凹溝4の開口部分の幅A及び凹溝4の深さCは、熱媒体用管20の外径Bと略同等に形成されている。また、蓋溝3の幅E及び深さGは、蓋板10の幅及び厚みと略同等に形成されている。
【0044】
熱媒体用管20は、
図2の(a)及び(b)に示すように、断面視円形の中空部18を有する円筒管である。熱媒体用管20は、本実施形態では銅からなり、平面視略馬蹄状を呈する。熱媒体用管20の外径Bは、凹溝4の幅A及び凹溝4の深さCと略同等に形成されているため、熱媒体用管20及び蓋板10をベース部材2に配置すると、熱媒体用管20の下半部と凹溝4の底面5とが面接触するとともに、熱媒体用管20の上端が、蓋板10の下面12と接触する。
【0045】
熱媒体用管20には、本実施形態においては、マイクロヒーターを挿通するが、他にも例えば、冷却水、冷却ガス、高温液、あるいは高温ガスなどの熱媒体を循環させて、熱媒体の熱をベース部材2及び蓋板10に、あるいは、ベース部材2及び蓋板10の熱を熱媒体に伝達させてもよい。
【0046】
なお、本実施形態においては、熱媒体用管20は、断面視円形としたが、断面視角形であってもよい。また、熱媒体用管20は、本実施形態においては、銅管を用いているが、他の材料の管を用いてもよい。また、熱媒体用管20は、必ずしも設ける必要は無く、凹溝4に直接熱媒体を流入させてもよい。
【0047】
蓋板10は、
図2の(a)及び(b)に示すように、ベース部材2の蓋溝3の断面と略同じ矩形断面を形成する上面11、下面12、側面13a及び側面13bを有し、平面視略馬蹄状で形成されている。蓋板10は、本実施形態では、ベース部材2と同様の組成で形成されている。蓋板10の厚みは、蓋溝3の深さGと略同等に形成されている。また、蓋板10の幅は、蓋溝3の幅Eと略同等に形成されているため、蓋板10を蓋溝3に配置すると、蓋板10の側面13a,13bは、蓋溝3の側壁3a,3bとそれぞれ面接触するか又は微細な隙間をあけて対向する。
【0048】
また、本実施形態においては、凹溝4と熱媒体用管20の下半部を面接触させ、かつ、熱媒体用管20の上端と蓋板10の下面12とを接触させたが、これに限定されるものではない。即ち、凹溝4の幅A及び深さCを、熱媒体用管20の外径Bよりも大きく形成してもよい。また、蓋溝3、凹溝4、蓋板10及び熱媒体用管20は、本実施形態では、平面視略馬蹄状を呈するように形成したがこれに限定されるものではなく、伝熱板1の用途に応じて適宜設計すればよい。
【0049】
次に、伝熱板1の製造方法について説明する。
本実施形態に係る伝熱板1の製造方法は、(1)溝形成工程、(2)熱媒体用管挿入工程、(3)蓋溝閉塞工程、(4)接合工程、(5)矯正工程、(6)焼鈍工程を含むものである。
【0050】
(1)溝形成工程
溝形成工程では、
図3の(a)に示すように、ベース部材2の表面Zaに、所定の幅及び深さで蓋溝3及び凹溝4を形成する。溝形成工程は、例えば、公知のエンドミル等を用いて、切削加工により行う。
【0051】
(2)熱媒体用管挿入工程
熱媒体用管挿入工程では、
図3の(b)に示すように、溝形成工程で形成された凹溝4に熱媒体用管20を挿入する。
【0052】
(3)蓋溝閉塞工程
蓋溝閉塞工程では、
図3の(c)に示すように、蓋溝3に蓋板10を配置して、蓋溝3を閉塞する。ここで、蓋溝3と蓋板10との突き合わせ面において、蓋溝3と蓋板10の内縁とで突き合わされた部分を「突合部J1」とし、蓋溝3と蓋板10の外縁とで突き合わされた部分を「突合部J2」とする。
【0053】
(4)接合工程
接合工程では、
図5に示すように、冷却板60の上面にベース部材2を配置した状態で、突合部J1,J2に沿って、接合用回転ツールFを用いて摩擦攪拌を行う。接合工程は、本実施形態では、突合部J1を摩擦攪拌する第一接合工程と、突合部J2を摩擦攪拌する第二接合工程とを含む。
【0054】
ここで、本実施形態における接合工程の際に用いる接合用回転ツールFについて詳細に説明する。
接合用回転ツールFは、
図4に示すように、工具鋼などベース部材2よりも硬質の金属材料からなり、円柱状を呈するショルダ部F1と、このショルダ部F1の下端面F11に突設された攪拌ピン(プローブ)F2とを備えて構成されている。接合用回転ツールFの寸法・形状は、ベース部材2の材質や厚さ等に応じて設定すればよい。
【0055】
ショルダ部F1の下端面F11は、塑性流動化した金属を押えて周囲への飛散を防止する役割を担う部位であり、本実施形態では、凹面状に成形されている。攪拌ピンF2は、ショルダ部F1の下端面F11の中央から垂下しており、本実施形態では、先細りの円錐台状に成形されている。また、攪拌ピンF2の周面には、螺旋状に刻設された攪拌翼が形成されている。
【0056】
ここで、
図4に示すベース部材2の厚みtは、攪拌ピンF2の長さL
Aの3倍以上であることが好ましい。また、ベース部材2の厚みtは、ショルダ部F1の外径X
1の1.5倍以上であることが好ましい。かかる設定によれば、接合用回転ツールFの大きさに対して、ベース部材2の厚みを十分に確保することができるため、摩擦攪拌を行う際に発生する反りを低減することができる。
【0057】
次に、本実施形態で用いる冷却板60について説明する。冷却板60は、
図5に示すように、例えばアルミニウム合金からなる平板61と、平板61の内部に形成された流路63と、流路63に埋設された熱媒体用管62とを有する。冷却板60は、摩擦攪拌の際に接合用回転ツールFの押圧力を受ける支持台として機能するとともに、例えば水や空気などの冷媒を熱媒体用管62に流すことにより対象物を冷却させる。
【0058】
なお、冷却板60の構造については、本実施形態の形態に限定されるものではなく、材質、形状等は適宜設定すればよい。また、熱媒体用管62を用いず、流路63に直接熱媒体を流して冷却させてもよい。
【0059】
第一接合工程では、
図5、
図6の(a)及び(b)に示すように、冷却板60に熱媒体(水)を流した状態で、ベース部材2と蓋板10との突合部J1に沿って、摩擦攪拌を行う。
まず、冷却板60の上に、ベース部材2を載置して、ベース部材2を移動不能に固定する。そして、ベース部材2の表面Zaの任意の位置に開始位置S
M1を設定し、接合用回転ツールFの攪拌ピンF2をベース部材2に押し込む(押圧する)。開始位置S
M1は、本実施形態では、ベース部材2の外縁の近傍であり、かつ、突合部J1の近傍に設定する。接合用回転ツールFのショルダ部F1の一部がベース部材2の表面Zaに接触したら、突合部J1の始点s1に向かって接合用回転ツールFを相対移動させる。そして、
図6の(a)に示すように、始点s1に達したら、接合用回転ツールFを離脱させずに、そのまま突合部J1に沿って移動させる。
【0060】
接合用回転ツールFが突合部J1の終点e1に達したら、接合用回転ツールFをそのまま開始位置S
M1側に移動させて、任意の位置に設定した終了位置E
M1で接合用回転ツールFを離脱させる。
なお、開始位置S
M1、始点s1、終了位置E
M1及び終点e1は、本実施形態の位置に限定するものではないが、ベース部材2の外縁の近傍であり、かつ、突合部J1の近傍であることが好ましい。
【0061】
次に、第二接合工程では、
図6の(b)及び(c)に示すように、ベース部材2と蓋板10との突合部J2に沿って、摩擦攪拌を行う。
まず、ベース部材2の表面Zaの任意の地点hに開始位置S
M2を設定し、接合用回転ツールFの攪拌ピンF2をベース部材2に押し込む(押圧する)。接合用回転ツールFのショルダ部F1の一部がベース部材2の表面Zaに接触したら、突合部J2の始点s2に向かって接合用回転ツールFを相対移動させる。そして、始点s2に達したら、接合用回転ツールFを離脱させずに、そのまま突合部J2に沿って移動させる。
【0062】
接合用回転ツールFが突合部J2の終点e2に達したら、接合用回転ツールFをそのまま地点f側に移動させて、地点fに設定した終了位置E
M2で接合用回転ツールFを離脱させる。
なお、開始位置S
M2及び終了位置E
M2は、本実施形態の位置に限定するものではないが、ベース部材2の外縁の隅部であることが好ましい。これにより、終了位置E
M2に抜け穴が残存する場合は、隅部を切削加工して除去することができる。また、本実施形態では、冷却板60の熱媒体用管62に熱媒体を流して冷却させながら接合工程を行ったが、伝熱板1の熱媒体用管20に例えば水などの熱媒体を流して接合工程を行ってもよい。これにより、冷却効率をより高めることができる。
【0063】
図6の(c)に示すように、本接合工程によって、突合部J1及び突合部J2に沿って塑性化領域W1(W1a,W1b)が形成される。これにより、熱媒体用管20がベース部材2及び蓋板10によって密閉される。また、
図1の(b)に示すように、本実施形態では、塑性化領域W1の深さが、蓋溝3の側壁3a,3b(
図2の(b)参照)の深さと略同等に形成されているため、突合部J1及び突合部J2の深さ方向の全体を摩擦攪拌することができる。これにより、伝熱板1の気密性を高めることができる。なお、塑性化領域とは、接合用回転ツールFの摩擦熱によって加熱されて現に塑性化している状態と、接合用回転ツールFが通り過ぎて常温に戻った状態の両方を含むこととする。
【0064】
ここで、
図7は、本実施形態の接合工程後を示した伝熱板1の斜視図である。伝熱板1は、接合工程によって塑性化領域W1が形成される。本実施形態では、冷却板60をベース部材2の裏側に配置させることで、熱膨張及び熱収縮による伝熱板の反りや撓みを小さくすることができるが、撓みを完全になくすことは困難である。即ち、塑性化領域W1は、熱収縮によって縮むため、伝熱板1の表面Za側において、ベース部材2の各隅部側から中心側に向かって圧縮応力が作用する。これにより、伝熱板1は表面Za側が凹となるように(裏面Zb側に凸となるように)、撓んでしまう可能性がある。特に、伝熱板1の表面Zaに示す地点a〜地点jのうち、伝熱板1の四隅に係る地点a,c,f,hにおいては、その反りの影響が顕著に現れる傾向がある。なお、地点jは、伝熱板1の中心地点を示し、地点b,d,e,gは、ベース部材2の各辺の中間地点を示す。また、伝熱板1の表面Zaに示す地点a〜地点jに対応する裏面Zbの各点を地点a’〜j’とする。また、伝熱板1の地点aから地点f方向を縦方向、地点aから地点c方向を横方向とする。
【0065】
(5)矯正工程
矯正工程では、伝熱板1(ベース部材2)の裏面Zbから、ベース部材2の表面Za側に引張応力が発生するような曲げモーメントを作用させて、前記した接合工程により形成された伝熱板1の反りを矯正する。矯正工程では、以下に記すプレス矯正、衝打矯正及びロール矯正の三種類の方法からいずれか一以上の方法を選択して行えばよい。まず、プレス矯正について説明する。
【0066】
(5-1)プレス矯正
前記した接合工程が終了したら、摩擦攪拌で発生したバリを除去するとともに、
図8に示すように、伝熱板1の裏面Zbが上方を向くように裏返し、裏面Zbの中心地点j’(
図7の(b)参照)に板状の第一補助部材T1を配置する。さらに、伝熱板1の表面Za側の四隅に、板状の第二補助部材T2,T2及び第三補助部材T3,T3を配置する。即ち、第二補助部材T2、第三補助部材T3は、第一補助部材T1を挟んで両側に配置される。第一補助部材T1乃至第三補助部材T3は、プレス矯正を行う際の当て材又は台座となる部材であるとともに、伝熱板1が傷つかないようにするための部材である。第一補助部材T1乃至第三補助部材T3は、伝熱板1よりも軟質の材料であればよく、例えば、アルミニウム合金、硬質ゴム、プラスチック、木材を用いることができる。なお、第一補助部材T1乃至第三補助部材T3は、伝熱板1の力学特性や反りの曲率に応じて、反りとは反対側に撓ませて反りを矯正するのに十分な厚みで設定すればよい。
【0067】
各補助部材を配置したら、
図9の(a)及び(b)に示すように、公知のプレス装置Pを用いて、伝熱板1の裏面Zbから押圧する。即ち、第一補助部材T1にプレス装置PのポンチPaを押し当て、所定の押圧力で押圧する。プレス装置Pによって伝熱板1に圧力が加えられると、
図9の(a)及び(b)に示すように、第一補助部材T1が伝熱板1を下側に押し、第二補助部材T2及び第三補助部材T3が伝熱板1の両端側を上側に押すため、伝熱板1には曲げモーメントが作用する。この曲げモーメントは伝熱板1の表面Za側に引張応力を発生させるため、伝熱板1が強制的に下側に凸に撓ませられる。
【0068】
プレス装置の押圧力は、伝熱板1の厚みや材料によって適宜設定すればよいが、
図9の(b)に示すように、伝熱板1の表面Za側が下に凸となって、表面Zaに引張応力が発生するような曲げモーメントを作用させることが好ましい。
【0069】
また、本実施形態では、
図10に示すように、中心地点j’だけでなく伝熱板1の裏面Zbの地点b’、地点d’、地点e’及び地点g’付近に対しても押圧を行う。即ち、伝熱板1の裏面Zbにかかる各辺の中間地点である地点b’、地点d’、地点e’及び地点g’を含んだ位置H2〜H5に第一補助部材T1を配置して、プレス装置Pによって押圧を行う。これにより、伝熱板1をバランスよく矯正でき、平坦性をより高めることができる。
【0070】
なお、プレスする位置は、本実施形態では5箇所に設定したが、これに限定されるものではなく、接合工程によって生じる伝熱板1の反りに応じて適宜設定すればよい。
【0071】
(5-2)衝打矯正
次に、衝打矯正について説明する。衝打矯正については、プレス矯正と近似するため、
具体的な図示は省略する。衝打矯正とは、例えばハンマーなどの衝打具を用いて伝熱板を衝打して、伝熱板に発生した反りを矯正することをいう。衝打矯正は、プレス装置Pに替えてハンマーなどの衝打具で伝熱板1を衝打する点を除いては、プレス矯正と略同等である。
【0072】
衝打矯正では、プレス矯正と同様に補助部材を配置した後、
図9及び
図10を参照するように、伝熱板1の裏面Zbから例えばプラスチックハンマー等の衝打具で伝熱板1を衝打する。伝熱板1を衝打すると、伝熱板1の表面Za側に引張応力を発生させるため、伝熱板1が強制的に下側に凸に撓ませられる(
図9の(b)参照)。これにより、伝熱板1の反りを矯正して平坦にすることができる。また、プレス矯正と同様に、必要に応じて伝熱板1の裏面Zbの位置H2〜H5を衝打することで、伝熱板1をバランスよく矯正することができる。
【0073】
衝打矯正は、プレス矯正と比べると、プレス装置等を準備する手間が省けるため、作業を容易に行うことができる。また、衝打矯正は、作業が容易であるため伝熱板1が小さい場合や薄い場合に有効である。なお、衝打矯正を終了した後は、衝打により発生したバリを除去することが好ましい。また、衝打具は、伝熱板1を衝打可能なものであれば、特に種類を問わないが、例えばプラスチックハンマーが好ましい。
【0074】
(5-3)ロール矯正
次に、ロール矯正について説明する。前記した接合工程が終了したら、摩擦攪拌で発生したバリを除去するとともに、伝熱板1の裏面Zbが上方を向くように裏返し、裏面Zbの中心地点j’を含んで縦方向と平行になるように長板形状の第一補助部材T1を配置する。さらに、伝熱板1の表面Za側の縁部において縦方向と平行になるように、長板形状の第二補助部材T2及び第三補助部材T3を配置する。即ち、第二補助部材T2、第三補助部材T3は、第一補助部材T1を挟んで両側に配置される。
【0075】
そして、第一補助部材T1の上側に、第一補助部材T1と直交するようにロールR1を配置し、第二補助部材T2,T3の下側に第二補助部材T2及び第三補助部材T3と直交するようにロールR2を配置する。つまり、伝熱板1は、
図11の(b)に示すように、上側に凸の状態でロールR1,R2の間に配置され、第一補助部材T1乃至第三補助部材T3を介してロールR1,R2に狭持される。
【0076】
第一補助部材T1乃至第三補助部材T3は、ロール矯正を行う際の当て材であるとともに、伝熱板1が傷つかないようにするための部材である。第一補助部材T1乃至第三補助部材T3は、伝熱板1よりも軟質の材料であればよく、例えば、アルミニウム合金、硬質ゴム、プラスチック、木材を用いることができる。
【0077】
ここで、ロールR1,R2が互いに近づいて伝熱板1に圧力を加えると、
図11の(b)及び(c)に示すように、第一補助部材T1が伝熱板1を下側に押し、第二補助部材T2及び第三補助部材T3が伝熱板1の両端側を上側に押すため、伝熱板1には曲げモーメントが作用する。この曲げモーメントは伝熱板1の表面Za側に引張応力を発生させるため、伝熱板1が強制的に下側に凸に撓ませられる。
【0078】
また、
図11の(a)に示すように、ロールR1が矢印α方向に回転するとともに、ロールR2が矢印β方向に回転すると、ロールR1,R2は伝熱板1に対して矢印γ方向(ロール送り方向)に相対的に移動する。また、ロールR1が矢印β方向に回転するとともにロールR2が矢印α方向に回転すると、ロールR1,R2は伝熱板1に対して矢印δ方向(ロール送り方向)に相対的に移動する。
【0079】
したがって、伝熱板1に作用する曲げモーメントの位置が、その相対的な移動に伴って遷移していくため、伝熱板1の全体が強制的に下側に凸に撓まされる。そのため、この相対的な移動を繰り返して往復動させることによって、反りを矯正していくことが可能になる。なお、第一補助部材T1乃至第三補助部材T3は、伝熱板1の力学特性や反りの曲率に応じて、反りとは反対側に撓ませて反りを矯正するのに十分な厚みで設定すればよい。
【0080】
また、伝熱板1の縦方向にロールR1,R2を回転させて矯正工程を行なった後、横方向にロールR1,R2を回転させてもよい。即ち、第一補助部材T1乃至第三補助部材T3を横方向と平行になるように配置するとともに、第一補助部材T1乃至第三補助部材T3に対して直交するようにロールR1,R2を配置する。そして、ロールR1,R2を横方向に往復動させる。これにより、伝熱板1をバランスよく矯正することができる。
【0081】
また、ここでは、伝熱板1の裏面Zbを上にして、歪矯正工程を行うものとして説明したが、裏返さずに表面Zaを上にして歪矯正工程を行うようにしてもよい。この場合、前記した各構成部品は、表裏対称に表れるため、説明を省略する。
【0082】
(6)焼鈍工程
焼鈍工程では、伝熱板1を焼鈍することにより、伝熱板1の内部応力を除去する。本実施形態では、伝熱板1を図示しない焼鈍炉に挿入して塑性化領域W1に残留する内部応力を除去する。これにより、伝熱板1の内部応力を除去することができ、伝熱板1の使用時の変形を防止することができる。なお、焼鈍方法については、特に限定されるものではなく、例えば、熱媒体用管20に、例えばマイクロヒーターを通電させて焼鈍を行ってもよい。
【0083】
以上説明した第一実施形態に係る伝熱板の製造方法によれば、接合工程を行う際に、ベース部材2の裏側に冷却板60を配置させて冷却しながら摩擦攪拌を行うため、熱収縮による伝熱板の反りや撓みを防止することができる。また、冷却板60を用いることで、水などの熱媒体の管理が容易になるため、比較的容易に接合作業を行うことができる。また、冷却板60は、ベース部材2よりも一回り大きく形成しているため伝熱板1を安定して載置することができる。これにより、接合工程に係る摩擦攪拌接合を安定して行うことができる。また、熱媒体用管62を冷却板60の全体にバランスよく埋設することで、伝熱板1を均一に冷却することができる。
【0084】
また、接合工程による熱収縮によって伝熱板1が撓んでしまったとしても、前記した矯正工程を行って、伝熱板1の表面Za側に引張応力が発生するような曲げモーメントを作用させる。これにより、裏面Zb側に凸となる反りを矯正することができるため、伝熱板1の平坦性を高めることができる。また、伝熱板1よりも硬度の低い第一補助部材T1乃至第三補助部材T3を用いることで、伝熱板1を傷つけることなく矯正作業を行うことができる。
【0085】
[第二実施形態]
第二実施形態に係る伝熱板の製造方法は、
図12に示すように、伝熱板21において、熱媒体用管20の周囲に形成される空隙部22に塑性流動材が流入されている点で第一実施形態と相違する。即ち、
図1の(b)に示すように、第一実施形態においては、接合工程で摩擦攪拌を行ったとしても、熱媒体用管20の周囲に空隙が形成されてしまう。そこで、第二実施形態に示すように、熱媒体用管20の周囲に形成された空隙部22に塑性流動材を流入させて、当該空隙部22を埋めてもよい。なお、第一実施形態と共通する部分は説明を省略する。
【0086】
即ち、伝熱板21に係る蓋溝3及び蓋板10は、第一実施形態よりも幅狭に形成されている。そして、接合工程では、ベース部材2の裏側に冷却板60を配置した状態で、接合用回転ツールFを熱媒体用管20に近接させるように摩擦攪拌を行い、金属部材を塑性流動化させた塑性流動材を空隙部22に流入させる。これにより、熱媒体用管20の周囲に形成される空隙部22が塑性流動材(金属部材)で埋まるため、伝熱板21の熱交換効率を高めることができる。
【0087】
また、このようにして形成された伝熱板21に対しても、前記したようにプレス矯正、衝打矯正又はロール矯正を行うことにより、伝熱板21に生じる反りを矯正することができる。なお、空隙部22に塑性流動材をどの程度流動させるかは、接合用回転ツールFの大きさや押込み量、蓋溝3及び蓋板10の形状に応じて適宜設定すればよい。
【0088】
[第三実施形態]
第三実施形態に係る伝熱板の製造方法は、
図13に示すように、蓋板33が平面視U字状を呈する点及び冷却板37の流路39も平面視U字状を呈する点で第一実施形態と相違する。
【0089】
図13の(a)は、第三実施形態に係る伝熱板及び冷却板を示した斜視図であり、(b)は、(a)のII−II線断面図である。伝熱板31は、
図13の(a)及び(b)に示すように、ベース部材32と、ベース部材32の蓋溝34に挿入された蓋板33とを有する。
【0090】
ベース部材32は、平板状を呈し、平面視U字状を呈するように断面視矩形の蓋溝34が凹設されている。さらに蓋溝34の中央には、蓋溝34に沿って平面視U字状を呈するように断面視矩形の凹溝35が形成されている。蓋板33は、蓋溝34の断面形状と同等の断面形状を呈し、平面視U字状を呈する。これにより、蓋溝34に蓋板33を挿入すると、凹溝35と蓋板33の下面とで断面視矩形の中空部36が形成される。ベース部材32及び蓋板33は、本実施形態では例えば銅で形成されている。
【0091】
冷却板37は、
図13の(a)に示すように、平板38と、平板38に形成された流路39とを有する。流路39は、断面視円形であるとともに平面視U字状を呈する。凹溝35の平面形状と、流路39の平面形状とは略同等に形成されている。即ち、摩擦攪拌を行う突合部J1,J2に沿って流路39が形成されている。平板38は、アルミニウム合金製であって、伝熱板31よりも一回り大きく形成されている。
【0092】
次に、第三実施形態に伝熱板の製造方法について説明する。第三実施形態に係る伝熱板の製造方法は、(1)溝形成工程、(2)蓋溝閉塞工程、(3)接合工程、(4)矯正工程、(5)焼鈍工程を含むものである。
【0093】
(1)溝形成工程
溝形成工程では、
図13の(b)に示すように、ベース部材32の表面に、所定の幅及び深さで蓋溝34及び凹溝35を形成する。
【0094】
(2)蓋溝閉塞工程
蓋溝閉塞工程では、蓋溝34に蓋板33を配置して蓋溝34を閉塞する。これにより、凹溝35と蓋板33の下面とに囲まれて中空部36が形成される。ここで、蓋溝34と蓋板33との突合せ部において、蓋溝34と蓋板33の内縁とで突き合わされた部分を突合部J1とし、蓋溝34と蓋板33の外縁とで突き合わされた部分を突合部J2とする。
【0095】
(3)接合工程
接合工程では、
図14に示すように、冷却板37をベース部材32の裏側に配置した状態で、突合部J1,J2に沿って接合用回転ツールFを用いて摩擦攪拌接合を行う。つまり、冷却板37の流路39が、凹溝35の下方に位置するように冷却板37を配置して、流路39に熱媒体(水)を流しながら摩擦攪拌を行う。接合工程によって、突合部J1,J2に沿って塑性化領域W1が形成される。
【0096】
なお、(4)矯正工程、(5)焼鈍工程においては、第一実施形態と略同等であるため、詳細な説明は省略する。
【0097】
以上説明した第三実施形態に係る伝熱板31の製造方法によれば、冷却板37に形成された流路39の平面形状を、凹溝35の平面形状と略同等となるように形成した。即ち、摩擦攪拌接合のルートに沿って、冷却板37の流路39を形成したため、接合工程の際の冷却効率をより高めることができる。
【0098】
なお、本実施形態では、凹溝35の平面形状と流路39の平面形状とが略同一となるように形成したが、これに限定されるものではなく、両者の形状が平面視して略相似形状となるように形成してもよい。これにより、摩擦攪拌接合の接合ルートに沿って熱媒体(水)を流すことができるため、冷却効率を高めることができる。また、流路39に熱媒体用管を挿入して、当該熱媒体用管に熱媒体を流してもよい。また、流路39に熱媒体を流すとともに、伝熱板31の中空部36に熱媒体(水)を流しながら、接合工程を行ってもよい。これにより、伝熱板31の冷却効率をより一層高めることができる。
【0099】
[第四実施形態]
次に、本発明の第四実施形態について説明する。前記した第一実施形態においては、蓋板10の両側面に沿ってそれぞれ摩擦攪拌を行うことで、塑性化領域W1,W1のように、二条の塑性化領域が形成されるようにして伝熱板を形成したが、第四実施形態のように、蓋板の幅を小さく設定して、一条の塑性化領域のみが形成されるようにして伝熱板を形成してもよい。
【0100】
第四実施形態に係る伝熱板の製造方法は、
図15に示すように、伝熱板41において、平面視正方形の板厚のベース部材2と、ベース部材2に凹設された溝に挿入された熱媒体用管20と、ベース部材2に凹設された溝に挿入された蓋板42と、を主に備えている。蓋板42の上面は、一条の摩擦攪拌によって接合されている。
【0101】
図16及び
図17に示すように、ベース部材2の表面Zaには、ベース部材2の一方の側面Zcから対向する他方の側面Zdまで連続して形成された凹溝43が形成されている。凹溝43は、熱媒体用管20及び蓋板42が挿入される部分である。凹溝43は、断面視U字状、平面視蛇行状を呈するように形成されている。
図17に示すように、凹溝43の側壁43a,43b間の幅A’は、熱媒体用管20の外径と略同等に形成されている。また、凹溝43の幅A’は、接合用回転ツールFのショルダ部F1の外径X
1よりも小さく形成されている。凹溝43の深さは、深さC’で形成されている。
【0102】
熱媒体用管20は、凹溝43に挿入される管であって、ベース部材2の一方の側面Zcから他方の側面Zdまで貫通して形成されている。熱媒体用管20は、平面視蛇行状を呈し、凹溝43の平面形状と略同等の形状を呈する。
【0103】
蓋板42は、
図16及び
図17に示すように、断面視矩形、平面視蛇行状を呈する部材であって凹溝43に挿入される部材である。蓋板42は、側面42a,42b及び上面42c、下面42dを備えている。蓋板42の高さと熱媒体用管20の外径との和は、凹溝43の深さC’と略同等に形成されている。また、蓋板42の幅は、凹溝43の幅A’と略同等に形成されている。したがって、熱媒体用管20及び蓋板42を凹溝43に挿入すると、蓋板42の上面42cとベース部材2の表面Zaとが面一になるとともに、蓋板42の側面42a,42bは、凹溝43の側壁43a,43bとそれぞれ面接触するか又は微細な隙間をあけて対向する。
【0104】
次に、第四実施形態に係る製造方法について説明する。
第四実施形態に係る伝熱板の製造方法は、(1)溝形成工程、(2)熱媒体用管挿入工程、(3)蓋板挿入工程、(4)接合工程、(5)矯正工程、(6)焼鈍工程を含むものである。
【0105】
(1)溝形成工程
溝形成工程では、
図16及び
図17に示すように、ベース部材2の表面Zaに所定の幅及び深さで凹溝43を形成する。溝形成工程は、例えば、公知のエンドミル等を用いて行う。
【0106】
(2)熱媒体用管挿入工程
熱媒体用管挿入工程では、
図16及び
図17に示すように、溝形成工程で形成された凹溝43に熱媒体用管20を挿入する。
【0107】
(3)蓋板挿入工程
蓋板挿入工程では、
図16及び
図17に示すように、凹溝43に蓋板42を挿入して凹溝43を閉塞する。ここで、凹溝43と蓋板42との突き合わせ面において、凹溝43の一方の側壁43aと、蓋板42の一方の側面42aとで突き合わされた部分を「突合部J3」とし、凹溝43の他方の側壁43bと、蓋板42の他方の側面42bとで突き合わされた部分を「突合部J4」とする。
【0108】
(4)接合工程
接合工程では、
図18に示すように、ベース部材2の裏側に冷却板60を配置した状態で、蓋板42(凹溝43)に沿って接合用回転ツールFを用いて摩擦攪拌を行う。接合工程は、本実施形態ではタブ材を配置するタブ材配置工程と、摩擦攪拌を行う接合工程とを含む。なお、冷却板60は、第一実施形態と同等のものを用いる。
【0109】
タブ材配置工程では、
図18の(a)に示すように、ベース部材2の一方の側面Zc及び他方の側面Zdに一対のタブ材48,49をそれぞれ配置する。タブ材48,49とベース部材2とは溶接によって仮接合する。
【0110】
接合工程では、
図18の(a)及び(b)に示すように、冷却板60の熱媒体用管62に熱媒体(水)を流した状態で、蓋板42(凹溝43)に沿って摩擦攪拌を行う。即ち、タブ材48に設定した開始位置S
M4に接合用回転ツールFを押し込んで、ショルダ部F1がベース部材2に接触したら、蓋板42に沿って接合用回転ツールFを相対移動させ、タブ材49に設定した終了位置E
M4まで連続して摩擦攪拌を行う。
【0111】
図18の(b)に示すように、接合用回転ツールFのショルダ部F1の外径X
1は、凹溝43の幅A’よりも大きく設定しているため、蓋板42の幅方向の中心に沿って接合用回転ツールFを移動させると、突合部J3,J4が塑性化される。このように、本実施形態によれば、一のルートを設定するだけで、突合部J3,J4を摩擦攪拌することができるため、第一実施形態に比べて作業手間を大幅に省略することができる。また、摩擦攪拌を行う際に、接合用回転ツールFが蓋板42を押し込むため、熱媒体用管20も押圧されて凹溝43と熱媒体用管20とを密接させることができる。これにより、熱媒体用管20の周囲に形成される空隙部22を低減することができるため、伝熱板41の熱交換効率を高めることができる。なお、接合工程が終了したら、ベース部材2からタブ材を切除する。
【0112】
ここで
図19は、本実施形態の本接合工程後を示した伝熱板41を示した斜視図である。本実施形態では、冷却板60をベース部材2の裏側に配置させることで、熱膨張及び熱収縮による伝熱板の反りや撓みを小さくすることができるが、撓みを完全になくすことは困難である。即ち、接合工程によって形成された塑性化領域W3は、熱収縮によって縮むため、伝熱板41が表面Za側に凹状となるように反って撓んでしまう可能性がある。特に、伝熱板41の表面Zaに示す地点a〜地点jのうち、伝熱板41の四隅に係る地点a,c,f,hに関しては、その反りが顕著に見られる傾向がある。なお、地点jは、伝熱板41の中心地点を示す。
【0113】
(5)矯正工程
矯正工程は、前記した接合工程で発生した反りを解消するために行う工程である。矯正工程は、第一実施形態で示したプレス矯正、衝打矯正又はロール矯正のいずれかを行えばよいため、説明を省略する。
【0114】
(6)焼鈍工程
焼鈍工程では、伝熱板41を焼鈍することにより、伝熱板41の内部応力を除去する。本実施形態では、伝熱板41を焼鈍炉に挿入して焼鈍を行う。これにより、伝熱板41の内部応力を除去することができ、伝熱板41の使用時の変形を防止することができる。
【0115】
以上説明した第四実施形態に係る伝熱板41によれば、接合工程を行う際に、ベース部材2の裏側に冷却板60を配置させて冷却しながら摩擦攪拌を行うため、熱収縮による伝熱板の反りや撓みを防止することができる。また、冷却板を用いることで、水などの熱媒体の管理が容易になるため、比較的容易に接合作業を行うことができる。
【0116】
また、矯正工程を行うことにより、伝熱板41の平坦性を高めることができる。また、本実施形態においては凹溝43を幅狭に形成することにより、一条の摩擦攪拌のみで接合工程を行うことができるため、作業手間を省くことができる。
【0117】
なお、本実施形態においては、伝熱板41の熱媒体用管20に熱媒体(水)を流しながら接合工程を行ってもよい。これにより、冷却効率を高めることができる。また、冷却板60の熱媒体用管62(流路63)の平面形状を、摩擦攪拌接合のルートに沿うように蛇行状に形成してもよい。これにより、伝熱板41の冷却効率をより高めることができる。
【0118】
[第五実施形態]
第五実施形態は、第四実施形態の変形例である。第五実施形態に係る伝熱板の製造方法は、
図20に示すように、熱媒体用管を有さない点で第四実施形態と相違する。即ち、第四実施形態において、熱媒体用管を用いずに、凹溝43に直接熱媒体を流動させてもよい。
【0119】
凹溝43の下部は、円弧上に切り欠かれているため、凹溝43に蓋板42を挿入すると、蓋板42が隙間44をあけて凹溝43に係止される。そして、第四実施形態と同様に、冷却板60をベース部材2の裏側に配置して接合工程を行い、ベース部材2と蓋板42の上部とを摩擦攪拌により一体化させてもよい。蓋板42の上部には、塑性化領域W4が形成される。
このようにして形成された伝熱板51に対しても前記した接合工程及び矯正工程を行うことで伝熱板51の平坦性を高めることができる。
【0120】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において適宜変形が可能である。例えば、本実施形態では、熱媒体用管を平面視略馬蹄状、平面視U字状又は平面視蛇行状に配設したが、これに限定されるものではなく他の形態であってもよい。
【実施例】
【0121】
次に、本発明の実施例について説明する。実施例においては、同一の構成からなる二つの試験体(第三実施形態に示すバッキングプレート)に対して接合工程を行う際に、一方は鋼板の上に試験体を載せて接合工程を行い、他方は冷却板の上に試験体を載せて接合工程を行い、両者の反り(撓み)について測定した。なお、鋼板の上で接合工程を行う試験を試験1とし、冷却板の上で接合工程を行う試験を試験2とする。
【0122】
図21に示すように、試験体201は、ベース部材202と、ベース部材202に凹設された蓋溝204に挿入される蓋板203とからなる。ベース部材202及び蓋板203は、無酸素銅(C1020)を用いる。ベース部材202の長さは3000mm、幅は200mm、高さは20mmで形成されている。また、蓋板203の幅は30mm、厚みは5mmで形成されている。
【0123】
図21の(b)に示すように、ベース部材202に凹設された蓋溝204の底面の中央には、断面視矩形の凹溝205が凹設されている。凹溝205と蓋板203の下面とで中空部が形成される。蓋溝204の幅は30mm、深さは5mmで形成されている。また、凹溝の幅は20mm、深さは9mmで形成されている。接合工程では、一対の突合部J1,J2に沿って接合用回転ツールFを移動させて、摩擦攪拌接合を行う。当該接合工程によって、突合部J1,J2には塑性化領域W,Wが形成される。
【0124】
図21の(c)に示すように、接合用回転ツールFは、特殊鋼からなりショルダ部F1と、ショルダ部F1の下端面F11から垂下した攪拌ピンF2とからなる。ショルダ部F1の外径X
1は20mm、攪拌ピンF2の長さL
Aは4mm、攪拌ピンF2の基端側の径X
2は8mm、先端側の径X
3は6mmで形成されている。接合工程では、当該接合用回転ツールFを、回転速度1000rpm、進行速度300mm/minで移動させる。
【0125】
なお、
図24に示すように、試験2で用いる冷却板37は、前記した第三実施形態に係る冷却板と略同等の形状ものを用いる。冷却板37は、アルミニウム合金(A5052)製である。冷却板37は、試験体201に形成される中空部の平面形状と、冷却板37の流路39の平面形状とが略同等の形状になるように形成されている。冷却板37の長さは3020mm、幅は220mm、高さは55mmで形成されている。また、冷却板37の内部に形成された流路39は、断面視円形であって直径が10mmで形成されている。また、流路39の中心が、冷却板37の下面から15mmに位置するように形成されている。実施例では、流路39に水を流入する。
【0126】
<試験1>
試験1では、試験体201を、
図22に示すように、鋼板Uの上に載置して、突合部J1,J2(
図21の(b)参照)の全体に亘って摩擦攪拌接合を行った。そして、
図23に示すように、鋼板Uからベース部材202の裏面までの高さU1は15mmであった。
【0127】
<試験2>
試験2では、試験体201を、
図24に示すように、冷却板37の上に載置して、突合部J1,J2(
図21の(b)参照)の全体に亘って摩擦攪拌接合を行った。そして、
図25に示すように、水平面からベース部材202の裏面までの高さU2は2mmであった。
【0128】
以上、試験1及び試験2を比較すると、冷却板37の上に試験体201を配置して接合工程を行ったほうが、接合された試験体の反りが非常に小さいことが分かった。