(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5772927
(24)【登録日】2015年7月10日
(45)【発行日】2015年9月2日
(54)【発明の名称】光変換器およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
G02B 6/122 20060101AFI20150813BHJP
G02B 6/13 20060101ALI20150813BHJP
【FI】
G02B6/122 311
G02B6/13
【請求項の数】8
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-233043(P2013-233043)
(22)【出願日】2013年11月11日
(62)【分割の表示】特願2008-547057(P2008-547057)の分割
【原出願日】2007年11月30日
(65)【公開番号】特開2014-56263(P2014-56263A)
(43)【公開日】2014年3月27日
【審査請求日】2013年11月11日
(31)【優先権主張番号】特願2006-325731(P2006-325731)
(32)【優先日】2006年12月1日
(33)【優先権主張国】JP
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成18年度 総務省における委託研究[ナノ技術を活用した超高機能ネットワーク技術の研究開発])は産業技術力強化法第19条の適用を受けるもの
(73)【特許権者】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080816
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 朝道
(72)【発明者】
【氏名】徳島 正敏
【審査官】
林 祥恵
(56)【参考文献】
【文献】
特開2002−303752(JP,A)
【文献】
特開平04−356031(JP,A)
【文献】
特開2004−133446(JP,A)
【文献】
特開2005−326876(JP,A)
【文献】
特表2006−509264(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/12−6/14
G02F 1/00−1/125
G02F 1/21−1/39
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の導波路と、第2の導波路と、両導波路の間に設けられたテーパ導波路と、を備え、コアの断面の長辺方向が互いに直交する扁平な導波路である該第1の導波路および該第2の導波路を該テーパ導波路によって接続するように構成された光変換器であって、
第1の導波路のコアと第2の導波路のコアとは高さが異なり、
テーパ導波路のコアの導波方向の両端は、それぞれ第1の導波路のコアと第2の導波路のコアに接続されており、
接続される2つの導波路のコアの断面形状は、各接続箇所において連続的に又は段階的に変化し、
テーパ導波路のコアの断面形状は、導波方向に連続的に又は段階的に変化し、
テーパ導波路のコアの両側面は、コアの上面たる傾斜平面と底面が成すテーパとは逆向きのテーパを成し、
テーパ導波路のコアの幅は、導波方向に単調変化する部分と一定の部分との組み合わせである、光変換器。
【請求項2】
テーパ導波路のコアの高さは、導波方向に単調に変化する部分と一定の部分との組み合わせである、請求項1に記載の光変換器。
【請求項3】
テーパ導波路のコアの高さが一定の部分は、横方向のみのテーパ部を含む、請求項2に記載の光変換器。
【請求項4】
第1の導波路、第2の導波路及びテーパ導波路のコアの底面は、全て同一平面上にある、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の光変換器。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1項に記載の光変換器を単一のSOI(Silicon on Insulator)基板に含む、光集積回路。
【請求項6】
厚膜と薄膜とを厚み方向のテーパを介して接続した段差構造を備えたコア材料を加工して、テーパ導波路を形成することによる光変換器の製造方法であって、
テーパ導波路のコアの上面の接平面の法線をテーパ導波路のコアの底面に射影した方向に横切るように細線状の導波路のコアを形成する工程と、
テーパ部分の段差を横切る範囲においてテーパ導波路のコアの幅が一定となるように加工する工程と、
段差の厚みの大きい部分でテーパ導波路のコアの幅が単調に減少するように加工する工程と、を含む、光変換器の製造方法。
【請求項7】
厚膜と薄膜とを厚み方向のテーパを介して接続した段差構造を備えたコア材料を加工して、テーパ導波路を形成することによる光変換器の製造方法であって、
テーパ導波路のコアの上面の接平面の法線をテーパ導波路のコアの底面に射影した方向に横切るように細線状の導波路のコアを形成する工程と、
テーパ部分の段差を横切る範囲において、段差の低い方から高い方に向かってテーパ導波路のコアの幅が単調に減少するように加工するか、又は、単調に減少する部分と一定の部分との組み合わせとなるように加工する工程と、を含む、光変換器の製造方法。
【請求項8】
単一のSOI基板に対する光集積回路の製造方法であって、請求項6または7に記載の光変換器の製造方法を含む、光集積回路の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)本願は、先の日本特許出願2006−325731号(2006年12月1日出願)の優先権を主張するものであり、前記先の出願の全記載内容は、本書に引用をもって繰込み記載されているものとみなされる。
本発明は、光変換器およびその製造方法に関し、特に光集積回路用の光変換器およびその製造方法に関する。本発明はまた、光変換器を含む光集積回路およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
シリコン・オン・インシュレータ(Silicon on Insulator,SOI)基板とは、シリコン基板の上に埋め込み酸化膜と呼ばれる二酸化シリコンの薄膜を形成し、更にその上にシリコン活性層と呼ばれるシリコンの薄膜を形成した積層基板である。SOI基板は光集積回路の基板として用いることができる。シリコン活性層を加工して細線状にすることによって、シリコンをコアとし、埋め込み酸化膜および空気をクラッディング(クラッド)とする光導波路を形成することができる。シリコンのコアは二酸化シリコンで埋め込まれることもある。(導波路の導波光の電磁界は、コアを中心としてクラッディングにしみ出すように分布しながら導波される。したがって、「導波路」とは、コアのみならずクラッド部分を含むものとし、「細線」とは、導波路のコアのみを指すものとする。以下の説明においても同様である。また、「コアの幅」とは、導波方向に垂直な断面におけるコアの側面間の間隔をいい、「コアの高さ」とは、導波方向に垂直な断面におけるコアの上面と底面との間隔をいう。)
【0003】
様々な基本的な機能を有する微小な要素光素子を組み合わせ、単一のSOI基板上に集積化することによって光集積回路を実現することができる。光集積回路を構成する要素光素子の大半は小型化が容易な導波路型である。最も基本的な要素光素子は光導波路であり、光導波路には直線導波路、曲がり導波路、分岐導波路などが含まれる。これらの導波路を部品として組み合わせることによって、方向性結合器や干渉計などの光素子を構成することができる。さらに、これらの光素子に波長フィルタを組み合わせることによって、波長合分波器や光スイッチなどの光素子を構成することができる。
【0004】
このような光集積回路において、最も基本的な要素光素子は光導波路である。通常、光導波路のコアの断面形状やサイズは光導波路がシングル・モードとなるように選ばれる。しかし、個々の素子に好適な導波路のコアの断面形状やサイズは必ずしも同じではない(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。光配線として用いる場合、光導波路の最も重要な特性は導波損失が小さいことである。シリコンのコアは細線状に加工するときに側壁(側面)に荒れが生じ、その荒れが散乱損失を引き起こす。したがって、直線導波路では側壁の面積を小さくするために、高さの低いコアが望ましい。しかし、コアが薄すぎる(すなわち、コアの高さが低い)とモード・フィールドが広がり、それが原因で曲がり導波路ではかえって導波損失が増える。方向性結合器などの光素子は曲がり導波路を多く含むため、高集積が求められる光回路の場合には、コアの高さは高い方がよいことになる。SOI基板のシリコン活性層は厚みが均一であるため、従来技術では、光回路全体の損失低減と集積度向上との間のトレード・オフにより、光回路全体の導波路のコアの高さが選ばれてきた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−206352号公報
【特許文献2】特開2000−249856号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
以上の特許文献1、2の開示事項は、本書に引用をもって繰り込み記載されているものとする。以下に本発明による関連技術の分析を与える。このような従来技術では、光回路全体の導波路のコアの断面形状を設計する際に、光集積回路の損失低減と集積度向上がトレード・オフの関係にあり、両者を同時に好適化するようにコアの断面形状やサイズを設計することが難しいという問題がある。
【0007】
また、損失低減と集積度向上との間のトレード・オフによって決まる導波路コアの高さは、光回路によって異なるため、光回路毎に異なったシリコン活性層厚を有するSOI基板を用いなければならないという問題もある。
【0008】
本発明は、光回路に含まれる導波路コアの高さの選択に関して、損失低減と集積度向上の間で生じるトレード・オフの関係を解消することを目的としている。また、これによって、光回路を単一のSOI基板上に実現できるようにし、光集積回路の生産性を向上させることを目的としている。
【0009】
なお、コアの高さと幅を同時に増加させることによって、コア断面サイズを変更するスポットサイズ変換器が、例えば特許文献1、特許文献2に開示されている。しかし、高さが異なる導波路同士を接続し、接続の前後の導波路において、モードがシングル・モードになるように幅を選びたい場合や、コア断面の長辺方向が互いに直交するような扁平な導波路同士を接続する際には、これらの従来のスポットサイズ変換器を適用することはできないという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1の視点に係る光変換器は、第1の導波路と、第2の導波路と、両導波路の間に設けられたテーパ導波路と、を備えた光変換器であって、第1の導波路のコアと第2の導波路のコアとは高さが異なり、テーパ導波路のコアの導波方向の両端は、それぞれ第1の導波路のコアと第2の導波路のコアに接続されており、接続される2つの導波路のコアの断面形状及び屈折率は、各接続箇所において連続的に又は段階的に変化しており、テーパ導波路のコアの断面形状及び屈折率は、導波方向に連続的に又は段階的に変化している。
【0011】
第1の展開形態の光変換器では、第1の導波路のコアと第2の導波路のコアとは、幅が異なる。
【0012】
第2の展開形態の光変換器では、接続される2つの導波路の導波方向は、各接続箇所において一致している。
【0013】
第3の展開形態の光変換器では、テーパ導波路のコアの幅は、導波方向に単調に変化するか又は単調に変化する部分と一定の部分との組み合わせである。
【0014】
第4の展開形態の光変換器では、テーパ導波路のコアの高さは、導波路の方向に単調に変化するか又は単調に変化する部分と一定の部分との組み合わせである。
【0015】
第5の展開形態の光変換器では、第1の導波路、第2の導波路およびのテーパ導波路のコアの底面は全て同一平面上にある。
【0016】
第6の展開形態の光変換器では、テーパ導波路の導波方向の長さは、第1の導波路のコアの幅と第2の導波路のコアの幅の差および第1の導波路のコアの高さと第2の導波路のコアの高さとの差のうちの大きい方の10倍以上である。
【0017】
第7の展開形態の光変換器では、テーパ導波路のコアの上面は、底面と0°と90°の間の角度をなす傾斜平面を含み、傾斜平面の法線を底面上に射影した方向はテーパ導波路の導波方向と一致する。
【0018】
第8の展開形態の光変換器では、前記傾斜平面と前記テーパ導波路のコアの底面との成す角は30°以下である。
【0019】
第9の展開形態の光変換器では、テーパ導波路のコアの上面は凹面と凸面を含み、凹面と凸面の任意の位置における接平面はテーパ導波路のコアの底面と30°以下の角度をなし、接平面の法線方向を底面上に射影した方向は、導波方向と一致する。
【0020】
第10の展開形態の光変換器では、コアの屈折率は3以上であり、クラッディングの屈折率は2以下である。
【0021】
本発明の第2の視点に係る光変換器は、第1の導波路と、第2の導波路との間に設けられたテーパ導波路を有する光変換器であって、前記テーパ導波路のコアは、導波方向の両端において、それぞれ第1の導波路のコア及び第2の導波路のコアに接続され、各接続箇所において、接続される2つの導波路のコアの断面形状及び屈折率は、連続的に又は段階的に変化し、前記テーパ導波路のコアの断面形状及び屈折率は、導波方向に連続的に又は段階的に変化することを特徴とする。
【0022】
第11の展開形態において、光集積回路は、上述の光変換器を単一のSOI基板に含む。
【0023】
本発明の第3の視点に係る光変換器の製造方法は、厚膜と薄膜とを厚み方向のテーパを介して接続した段差構造を備えたコア材料を加工して、テーパ導波路を形成することによる光変換器の製造方法であって、テーパ導波路のコアの上面の接平面の法線をテーパ導波路のコアの底面に射影した方向に横切る方向へ細線状の導波路のコアを形成する工程を含む。
【0024】
第12の展開形態の光変換器の製造方法は、テーパ部分の段差を横切る範囲において、段差の低い方から高い方に向かってテーパ導波路のコアの幅が単調に減少するように加工するか、又は、単調に減少する部分と一定の部分との組み合わせとなるように加工する工程を含む。
【0025】
第13の展開形態の光変換器の製造方法は、テーパ部分の段差を横切る範囲においてテーパ導波路のコアの幅が一定となるように加工する工程と、段差の厚みの大きい部分でテーパ導波路のコアの幅が単調に減少するように加工する工程とを含む。
【0026】
第14の展開形態の光集積回路の製造方法は、単一のSOI基板に対する光集積回路の製造方法であって、上述の光変換器の製造方法を含むことが好ましい。
本発明の第4の視点に係る光変換器は、第1の導波路と、第2の導波路と、両導波路の間に設けられたテーパ導波路と、を備え、コアの断面の長辺方向が互いに直交する扁平な導波路である該第1の導波路および該第2の導波路を該テーパ導波路によって接続するように構成された光変換器であって、第1の導波路のコアと第2の導波路のコアとは高さが異なり、テーパ導波路のコアの導波方向の両端は、それぞれ第1の導波路のコアと第2の導波路のコアに接続されており、接続される2つの導波路のコアの断面形状は、各接続箇所において連続的に又は段階的に変化し、テーパ導波路のコアの断面形状は、導波方向に連続的に又は段階的に変化し、テーパ導波路のコアの両側面は、コアの上面たる傾斜平面と底面が成すテーパとは逆向きのテーパを成し、テーパ導波路のコアの幅は、導波方向に単調変化する部分と一定の部分との組み合わせである。
第5の視点に係る光変換器の製造方法は、厚膜と薄膜とを厚み方向のテーパを介して接続した段差構造を備えたコア材料を加工して、テーパ導波路を形成することによる光変換器の製造方法であって、テーパ導波路のコアの上面の接平面の法線をテーパ導波路のコアの底面に射影した方向に横切るように細線状の導波路のコアを形成する工程と、テーパ部分の段差を横切る範囲において、段差の低い方から高い方に向かってテーパ導波路のコアの幅が単調に減少するように加工するか、又は、単調に減少する部分と一定の部分との組み合わせとなるように加工する工程と、を含む。
【発明の効果】
【0027】
本発明の光変換器によって、高さの異なる光導波路を互いに接続することができ、導波路のコアの高さを場所によって変化させることが可能となる。したがって、直線導波路の部分ではコアの高さを低くし、曲がり導波路の部分ではコアの高さを高くすることができる。その結果、光集積回路の低損失化と高集積化を同時に好適化することができ、従来これらの間に生じていたトレード・オフの関係を解消できる。
【0028】
また、本発明の光変換器によって、コアの高さを徐々に変化させることができ、高さの異なる光導波路を無損失で結合することができる。さらに、本発明の光変換器によって、コアの幅も徐々に変化させることで、光変換器を介して結合された両側の光導波路を共にシングル・モードとすることもできる。
【0029】
本発明の光変換器の製造方法を単一のSOI基板に対して適用することで、光集積回路の生産性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】本発明の第1の実施例にもとづく光変換器の斜視図。
【
図2】本発明の第2の実施例にもとづく光変換器の斜視図。
【
図3】本発明の第1の実施例にもとづく光変換器および光変換器を含む光集積回路の製造方法を説明するための図。
【
図4】本発明の第2の実施例にもとづく光変換器および光変換器を含む光集積回路の製造方法を説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明の実施形態に係る光変換器は、第1の導波路のコア(
図1の1)と、第1の導波路のコアと高さの異なる第2の導波路のコア(
図1の2)と、テーパ導波路のコア(
図1の3)とを備え、テーパ導波路のコアの両端は、それぞれ第1の導波路のコアと第2の導波路のコアとに接続されており、第1の導波路のコアとテーパ導波路のコアとの接続部と、第2の導波路のコアとテーパ導波路のコアとの接続部とにおいて、それぞれ、接続される2つの導波路のコアの断面形状及び屈折率は連続的又は段階的(即ち、ほぼ連続的に)変化しており、かつ、テーパ導波路のコアの断面形状及び屈折率は両端の間で連続的に又は段階的に(即ち、ほぼ連続的に)変化している。
【0032】
また、第1の導波路のコアと第2の導波路のコアとは、幅が異なってもよい。
【0033】
なお、第1の導波路の導波方向と、第1の導波路との接続端の近傍におけるテーパ導波路の導波方向とは一致し、かつ、第2の導波路の導波方向と、第2の導波路との接続端の近傍におけるテーパ導波路の導波方向とは一致することが好ましい。
【0034】
また、テーパ導波路の導波軸に垂直な断面におけるコアの横幅は、第1の導波路のコアとの接続端から第2の導波路のコアとの接続端に至る過程において、単調に減少するか、又は、単調に減少する部分と一定の部分との組み合わせであってもよい。
【0035】
さらに、テーパ導波路の導波方向に垂直な断面におけるコアの高さは、第1の導波路のコアとの接続端から第2の導波路のコアとの接続端に至る過程において、単調に増加するか、又は、単調に増加する部分と一定の部分との組み合わせであってもよい。
【0036】
なお、第1の導波路のコア、第2の導波路のコア及びテーパ導波路のコアの底面は全て同一平面上にあってもよい。
【0037】
また、テーパ導波路のコアの長さが、第1の導波路のコアの横幅と第2の導波路のコアの横幅との差、又は、第1の導波路のコアの高さと第2の導波路のコアの高さとの差のいずれか大きい方の10倍以上であることが好ましい。
【0038】
さらに、テーパ導波路のコアの上面(
図1の3a)が、テーパ導波路のコアの底面と0°と90°の間の角度をなす傾斜平面を含み、前記傾斜平面の法線を前記底面上に射影した方向は、テーパ導波路の導波方向と一致するか、又は、ほぼ一致することが好ましい。
【0039】
なお、傾斜平面とテーパ導波路のコアの底面との成す角が30°以下であることが好ましい。
【0040】
また、テーパ導波路のコアの上面(
図1の3a)は、凹面と凸面を含み、前記凹面又は凸面の任意の位置における接平面がテーパ導波路のコアの底面と30°以下の角度をなし、前記接平面の法線を前記底面上に射影した方向が、導波軸の方向と一致するか、またはほぼ一致するようにしてもよい。
【0041】
なお、コアの屈折率が3以上であり、クラッディングの屈折率が2以下であることが好ましい。
【0042】
さらに、本発明の他の実施形態に係る光変換器は、厚膜と薄膜とを厚み方向のテーパを介して接続した段差構造を備えたコア材料(
図3の6)を、テーパの上面の接平面の法線をテーパの底面に射影した方向に横切る方向へ細線状の導波路のコアを形成するように加工することによって形成する。
【0043】
なお、テーパを横切る範囲で、段差の低い方から高い方に向かって細線(すなわち、コア)の幅が単調に減少するように加工するか、又は、単調に減少する部分と一定の部分との組み合わせとなるように加工することによって形成してもよい。
【0044】
さらに、これらの光変換器の製造方法を単一のSOI基板に適用して、光集積回路が製造される。
【実施例1】
【0045】
次に、本発明の第1の実施例について図面を参照して詳細に説明する。
【0046】
コアの高さが異なる導波路を備えた光回路は、
図1に示すようなコア形状を有するモード・フィールド変換を用いることによって実現される。光変換器は、第1の導波路と、第2の導波路と、両導波路の間に設けられたテーパ導波路と、を備え、第1の導波路のコア1と第2の導波路のコア2とは高さが異なり、テーパ導波路のコア3の導波方向の両端は、それぞれ第1の導波路のコア1と第2の導波路のコア2にそれぞれ接続されており、それぞれの接続部において、接続される2つの導波路のコアの断面形状及び屈折率が連続しているか又はほぼ連続しており、かつ、テーパ導波路のコア3の断面形状及び屈折率は、導波方向に連続的に又はほぼ連続的に変化している。
【0047】
第1の導波路のコア1と第2の導波路のコア2とは、幅が異なっていてもよい。
【0048】
最も単純な構造のテーパ導波路においては、テーパ導波路の導波方向は、テーパ導波路の全長を通して一定である。しかし、製造上の誤差または意識的な設計によって、テーパ導波路が湾曲している場合もある。したがって、テーパ導波路のコア3を第1の導波路のコア1と第2の導波路のコア2に接続するときの、それぞれの接続部において、接続される2つの導波路の導波方向を一致させることが好ましい。
【0049】
テーパ導波路のコア3の幅は、導波方向に単調に変化するか、又は、単調に変化する部分と一定の部分との組み合わせであってもよい。
【0050】
一方、テーパ導波路のコアの3高さは、導波路の方向に単調に変化するか、又は、単調に変化する部分と一定の部分との組み合わせであってもよい。
【0051】
第1の導波路のコア1、第2の導波路のコア2及びテーパ導波路のコア3の底面は、全て同一平面上にあってもよい。
【0052】
テーパ導波路のコア3の両側面3bは、コア3の底面および上面たる傾斜平面3aに直交する面として構成され、傾斜平面3aと底面の成すテーパとは逆向きのテーパを成す。
【0053】
第1の導波路のコア1及び第2の導波路のコア2を滑らかに接続するために、テーパ導波路のコア3の長さは、第1の導波路のコア1の幅と第2の導波路のコア2の幅との差と、第1の導波路のコア1の高さと第2の導波路のコア2の高さとの差のうちの大きい方の10倍以上であることが好ましい。
【0054】
テーパ導波路のコア3の上面は、テーパ導波路のコア3の底面と0°と90°の間の角度をなす傾斜平面3aを含み、傾斜平面3aの法線をテーパ導波路のコア3の底面上に射影した方向は、テーパの導波方向と一致するか又はほぼ一致することが好ましい。
【0055】
また、第1の導波路のコア1と第2の導波路のコア2を滑らかに接続するために、前記傾斜平面3aとテーパ導波路のコア3の底面のなす角は30°以下であることが好ましい。
【0056】
第1の導波路のコア1とテーパ導波路のコア3との接続部、及び、第2の導波路のコア2とテーパ導波路のコア3との接続部とにおいて、それぞれ接続される導波路のコアの断面形状及び屈折率は完全に連続していることが望ましいが、製造上、僅かに階段状に不連続になる場合、言い換えれば、ほぼ連続である場合もある。このように、ほぼ連続である場合でも、その不連続の程度が小さければ、それに起因する導波光の反射や損失は無視できる程度となるので、実用上は問題無い。
【0057】
同様に、テーパ導波路のコア3の断面形状と屈折率とは、両端の間で完全に連続的に変化していることが望ましいが、製造上、僅かに階段状に不連続になる場合、言い換えればほぼ連続的に変化している場合もある。このようにほぼ連続的に変化している場合でも、その不連続の程度が小さければ、それに起因する導波光の反射や損失は無視できる程度となるので、実用上は問題無い。
【0058】
更に、テーパ導波路のコア3の上面は、テーパ導波路のコア3の底面と0°と90°の間の角度をなす傾斜平面3aを含み、傾斜平面3aの法線をコア3の底面上に射影した方向は、導波方向と完全に一致することが望ましいが、製造上、僅かに階段状に不連続になる場合、言い換えればほぼ一致する場合もある。このように、ほぼ一致する場合でも、その不一致の程度が小さければ、それに起因する導波光の反射や損失は無視できる程度となるので、実用上は問題無い。
【実施例2】
【0059】
次に、第2の実施例について図面を参照して説明する。第1の実施例では、
図1に示したように、高さ方向と横方向のテーパはテーパ導波路のコア3において、同時にかつ逆向きに実現されていた。しかしながら、
図2のように、別々のテーパ状の第1のコア部分4と第2のコア部分5とをつなげることによって構成してもよい。また、テーパ状の第1コア部分4及び第2コア部分5の一部は重なっていてもよく、僅かな間隙を介して離れていてもよい。
【0060】
テーパ導波路の第1コア部分4の両側面4bは、第1コア部分4の底面及び上面たる幅一定の傾斜平面4aに直交する面として構成され、かつ、互いに平行である。また、第1コア部分4の上面4aと底面との間隔は、コア1の端部から第2コア部分5に向けて単調に増加している。すなわち、第1コア部分4は高さ方向にのみテーパ構造を成す。
【0061】
一方、テーパ導波路の第2コア部分5の両側面5bは、第2コア部分5の底面及び高さ一定の上面5aに直交する面として構成され、両側面5b間の幅(間隔)が、第1コア部分4の端部からコア2へ向って単調に減少している。また、第2コア部分5の上面5aと底面との間隔は一定である。すなわち、第2コア部分5は両側面5b間の幅(間隔)についてのみテーパ構造をなす。
【0062】
さらに、
図1及び
図2に示した、テーパ導波路のコア3の上面3a及びテーパ導波路の第1コア部分4の上面4aは、必ずしも平面又は平面の組み合わせである必要は無い。すなわち、テーパ導波路のコアの上面が凹面と凸面を含み、凹面と凸面の任意の位置における接平面がテーパ導波路のコア3及び第1コア部分4の底面と30°以下の角度をなし、接平面の法線を底面上に射影した方向が、導波方向と一致するか、又は、ほぼ一致する構造であってもよい。
【0063】
また、コア内に光を十分に閉じ込めるために、第1、第2及びテーパ導波路のコアの屈折率は3以上であり、クラッディングの屈折率は2以下であることが好ましい。
【0064】
[製法]
次に、本発明の第1の実施例及び第2の実施例の光変換器の製造方法を説明する。
【0065】
本製造方法では、
図3を参照すると、厚膜部分と薄膜部分とが厚み方向のテーパ(すなわち、境界部)を介して接続された段差構造を備えたコア材料6を用い、テーパの上面(
図1の3a参照)の接平面の法線をテーパの底面に射影した方向に横切るような配置で細線状の導波路のコア3を形成する。すなわち、コア3を、その導波方向が、段差をなす厚膜と薄膜との境界部に垂直な方向となるように形成する。実際には、「境界部」はテーパであって幅を有するため、線ではない。そのため、上記のような厳密な表現を用いた。このようにして、
図1に示した、本発明の第1の実施例の光変換器を形成することができる。
【0066】
さらに、テーパ部分の段差を横切る範囲において、段差の低い方から高い方に向かってテーパ導波路のコア3の両側面(
図1の3b参照)間の幅(すなわち、上面3aの幅)が単調に減少するように加工するか、又は、単調に減少する部分と一定の部分との組み合わせとなるように加工してもよい。
【0067】
一方、
図4に示すように、テーパ部分の段差を横切る範囲においてテーパ導波路の第1コア部分4の両側面(
図2の4b参照)間の幅ないし間隔(すなわち、上面4aの幅)が一定となるようにし、段差の厚みの大きい部分においてテーパ導波路の第2コア部分5の両側面(
図2の5b参照)の幅(すなわち、上面5aの幅)が単調に減少するように加工することによって、
図2に示した、本発明の第2の実施例にもとづく光変換器を形成することができる。
【0068】
本発明に係る上記の製造方法を実施するために、基板としてSOI基板を用いるとともに、SOI基板に含まれるシリコン活性層を導波路のコアとして利用することができる。SOI基板のシリコン活性層上に、フォトレジストでパターニングし、水酸化カリウム溶液や硝酸と過酸化水素水の混合液を用いたエッチングによって、テーパの段差を形成する。このとき、フォトレジストとして、エッチング中に徐々に溶解するものを用い、必要なテーパの長さ以上の厚みにしておく。このようにすると、エッチング中にフォトレジストパターンが徐々に後退し、長く、緩やかなテーパを作ることができる。フォトレジストの剥離後、新たに、導波路用の細線状のコアを段差を垂直に横切る方向に形成する。一例として、異方性ドライ・エッチングによって、コア部を細線状に加工することで光変換器を形成する。
【0069】
ここで、「導波路用の細線状のコアを段差を垂直に横切る方向」とは、厚膜部分と薄膜部分との間に挟まれたテーパの上面の法線をテーパの底面に射影した方向をいう。また、「コア部を細線状に加工する」とは、コアの長手方向(通常は、導波方向と一致する。)が、そのような射影方向となるようにコア材料を加工することをいう。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明は、高さの異なる要素光素子を集積化した光集積回路を単一のSOI基板上に実現することを可能とする。これによって、簡便かつ安価に、光集積回路を生産することが可能となり、次世代の高速光通信システムの発展に寄与する。
本発明の全開示(請求の範囲を含む)の枠内において、さらにその基本的技術思想に基づいて、実施形態ないし実施例の変更・調整が可能である。また、本発明の請求の範囲の枠内において種々の開示要素の多様な組み合わせないし選択が可能である。
【符号の説明】
【0071】
1 第1の導波路のコア
2 第2の導波路のコア
3 テーパ導波路のコア
3a コア3の上面
3b コア3の両側面
4 テーパ導波路の第1コア部分
5 テーパ導波路の第2コア部分
4a 第1コア部分4の上面
4b 第1コア部分4の両側面
5a 第2コア部分5の上面
5b 第2コア部分5の両側面
6 コア材料(SOI基板のシリコン活性層)
7 クラッディング(クラッド)材料(SOI基板の二酸化シリコン層)