特許第5772984号(P5772984)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5772984
(24)【登録日】2015年7月10日
(45)【発行日】2015年9月2日
(54)【発明の名称】容器設置機構及びオートサンプラ
(51)【国際特許分類】
   G01N 35/02 20060101AFI20150813BHJP
   G01N 35/04 20060101ALI20150813BHJP
   G01N 30/24 20060101ALI20150813BHJP
   G01N 1/00 20060101ALN20150813BHJP
【FI】
   G01N35/02 B
   G01N35/04 G
   G01N30/24 Z
   !G01N1/00 101H
【請求項の数】8
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-550145(P2013-550145)
(86)(22)【出願日】2012年5月30日
(86)【国際出願番号】JP2012063920
(87)【国際公開番号】WO2013094238
(87)【国際公開日】20130627
【審査請求日】2014年5月13日
(31)【優先権主張番号】特願2011-281064(P2011-281064)
(32)【優先日】2011年12月22日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100085464
【弁理士】
【氏名又は名称】野口 繁雄
(72)【発明者】
【氏名】松本 博幸
【審査官】 土岐 和雅
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−013235(JP,A)
【文献】 特開2010−107449(JP,A)
【文献】 特開2001−343392(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/141957(WO,A1)
【文献】 特開昭57−130267(JP,A)
【文献】 特開平05−075197(JP,A)
【文献】 特開平07−151764(JP,A)
【文献】 特開2010−228766(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N1/00〜1/44,30/00〜30/96,35/00〜37/00,C12M1/00〜1/42,B65D39/00〜55/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベース部材と、
前記ベース部材上に設けられ上下方向に伸縮可能な弾性支持部材と、
前記弾性支持部材により上方に付勢され、液を収容した容器をその上面を開放させた状態で保持するとともに、上下方向に変位可能に支持されている容器保持部と、
前記容器保持部に保持された前記容器の上面を封止するための蓋部を有し、前記蓋部で前記容器保持部に保持された前記容器の上面を封止するための封止位置と前記封止位置とは異なる位置である開放位置との間で回動するように前記ベース部材に回動可能に取り付けられた容器開閉部材と、
前記容器開閉部材を前記開放位置側へ付勢する弾性体からなる付勢部材と、
前記容器開閉部材を前記封止位置で停止させ、前記容器保持部が所定の高さまで下降させられたときに解除され、前記容器開閉部材が前記付勢部材の弾性力により前記開放位置へ回動するように構成されている開動作防止ストッパと、を備えた容器設置機構。
【請求項2】
前記弾性支持部材は、前記容器開閉部材が前記封止位置で前記容器保持部に保持されている容器の上面を封止しているときに圧縮状態となって前記容器保持部を前記蓋部側へ付勢するものであり、
前記容器保持部に保持されている容器の上面の縁にシール部材が取り付けられている請求項1に記載の容器設置機構。
【請求項3】
前記弾性支持部材の弾性力によって互いに係合するように前記容器保持部側と前記容器開閉部材側に設けられ、前記容器開閉部材が前記開放位置側から前記封止位置まで回動する際に、前記容器保持部に保持されている容器の上面が、前記容器開閉部材が前記封止位置にあるときの前記蓋部の高さである封止高さよりも低い位置から上昇して前記容器開閉部材が前記封止位置にきたときに前記封止高さに到達するように、前記容器保持部の上下動を前記容器開閉部材の回動に連動させる連動機構をさらに備えている請求項1又は2に記載の容器設置機構。
【請求項4】
前記連動機構は、前記容器開閉部材に設けられたローラ及び前記ローラと当接するように前記容器保持部に設けられ前記弾性支持部材の弾性力によって前記ローラ側へ付勢されている追従面を備えており、
前記追従面は、前記容器開閉部材が前記開放位置と前記封止位置との間で移動する際に前記ローラが通過する範囲に前記容器の上面を前記封止高さよりも低い高さに抑えるための湾曲した頂点を備えており、
前記ローラが前記頂点よりも前記開放位置側にあるときは前記付勢部材の弾性力により前記容器開閉部材が前記開放位置へ自動的に回動し、前記ローラが前記頂点よりも封止位置側にあるときは前記弾性支持部材の弾性力により前記容器開閉部材が前記封止位置へ自動的に回動するようになっている請求項3に記載の容器設置機構。
【請求項5】
前記開動作防止ストッパは、前記容器開閉部材が前記封止位置にある状態において、前記追従面の前記頂点の高さが前記ローラの高さよりも低くなるまで前記容器保持部が押し下げられ、前記ローラが前記付勢部材の弾性力によって前記頂点よりも開放位置側へ移動することにより解除されるものである請求項4に記載の容器設置機構。
【請求項6】
前記ローラが前記追従面の前記頂点よりも前記開放位置側にあるときに前記ローラの周面と接する前記追従面の形状は、前記ローラの周面が描く円弧形状と同一形状であり、前記追従面の前記頂点よりも前記開放位置側における前記ローラの移動に際して前記容器保持部は上下動しないようになっている請求項4又は5に記載の容器設置機構。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載の容器設置機構と、
前記容器設置機構に設置された容器から液を吸引するためのニードル及び前記ニードルに吸引力を付与するシリンジポンプを含むサンプリング機構と、
前記ニードルと一体に取り付けられ、前記容器設置機構の前記容器保持部を下方向へ押し下げるための押圧棒と、
前記サンプリング機構及び前記押圧棒の動作を制御する制御部であって、前記サンプリング機構によるサンプリング動作を行なう前に、前記押圧棒で前記容器保持部を所定の高さまで押し下げることにより前記開動作防止ストッパを解除するように構成された開放手段を備えている制御部と、を備えたオートサンプラ。
【請求項8】
前記容器設置機構は請求項4から6のいずれか一項に記載の容器設置機構であり、
前記制御部は、前記サンプリング動作の後に、前記容器開閉機構のローラが前記容器保持部の前記追従面の前記頂点よりも前記封止位置側に到達するまで、前記押圧棒で前記容器開閉機構を押して回動させることで容器の上面を封止するように構成された封止手段をさらに備えている請求項7に記載のオートサンプラ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サンプルや試薬などの液を収容した容器をオートサンプラ内に設置するための容器設置機構とその容器設置機構を備えたオートサンプラに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、分析装置にサンプルや試薬などの液を供給する装置としてオートサンプラが用いられている。そのようなオートサンプラとして、水平方向と垂直方向に駆動されるニードルやニードルに吸引力を付与するシリンジポンプを備えたものが挙げられる。オートサンプラには、ニードルによって採取されるサンプルや試薬などの液を収容しておく容器を設置する場所が設けられており、必要に応じてニードルが採取すべき液の入った容器が設置されている場所まで移動し、液を吸引するようになっている(特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−15274号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のようなオートサンプラでは、液を収容した容器の上面を開放した状態で装置内に長時間設置しておくと容器内の液が蒸発し、試薬量が減ってしまったりサンプル液の溶媒量が減ってサンプル濃度が変化しまったりするなどの問題があった。そのため、容器の上面をセプタム等で封止して蒸発を防ぐなどしていた。しかし、容器の上面がセプタムで封止されていると、液を吸引しようとする度にニードルでセプタムを破る必要があり、ニードルとセプタムの接触により汚染が発生するなどの問題がある。
【0005】
各容器にキャップをした状態で装置に設置することも考えられるが、そうすると、容器のキャップを取り外すための機構をオートサンプラに設ける必要があり、装置のコストが高くなってしまう。
【0006】
そこで、本発明は、液を収容した容器の上面を封止した状態でオートサンプラ内に設置でき、オートサンプラが容器の上面を容易に開放することができるようにすることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明にかかる容器設置機構は、ベース部材と、ベース部材上に設けられ上下方向に伸縮可能な弾性支持部材と、弾性支持部材により上方に付勢され、液を収容した容器をその上面を開放させた状態で保持するとともに、上下方向に変位可能に支持されている容器保持部と、容器保持部に保持された容器の上面を封止するための蓋部を有し、蓋部で容器保持部に保持された容器の上面を封止するための封止位置と封止位置とは異なる位置である開放位置との間で回動するようにベース部材に回動可能に取り付けられた容器開閉部材と、容器開閉部材を開放位置側へ付勢する弾性体からなる付勢部材と、容器開閉部材を封止位置で停止させ、容器保持部が所定の高さまで下降させられたときに解除され、容器開閉部材が付勢部材の弾性力により開放位置へ回動するように構成されている開動作防止ストッパと、を備えたものである。
【0008】
上記の容器設置機構を備えた本発明のオートサンプラは、容器設置機構に設置された容器から液を吸引するためのニードル及びニードルに吸引力を付与するシリンジポンプを含むサンプリング機構と、上記ニードルと一体に取り付けられ、容器設置機構の容器保持部を下方向へ押し下げるための押圧棒と、サンプリング機構及び押圧棒の動作を制御する制御部を備えている。そして、制御部は、サンプリング機構によるサンプリング動作を行なう前に、押圧棒で容器保持部を所定の高さまで押し下げることにより開動作防止ストッパを解除するように構成された開放手段を備えている。
【0009】
本発明の容器設置機構において、弾性支持部材は容器開閉部材が封止位置で容器保持部に保持されている容器の上面を封止しているときに圧縮状態となって容器保持部を蓋部側へ付勢するものであり、容器保持部に保持されている容器の上面の縁にシール部材が取り付けられていることが好ましい。そうすれば、容器保持部に保持されている容器の上面の封止をより確実に行なうことができる。
【0010】
また、本発明の容器設置機構では、弾性支持部材の弾性力によって互いに係合するように容器保持部側と容器開閉部材側に設けられ、容器開閉部材が開放位置側から封止位置まで回動する際に、容器保持部に保持されている容器の上面が、容器開閉部材が封止位置にあるときの蓋部の高さである封止高さよりも低い位置から上昇して容器開閉部材が封止位置にきたときに封止高さに到達するように、容器保持部の上下動を容器開閉部材の回動に連動させる連動機構をさらに備えていることが好ましい。そうすれば、容器開閉部材を封止位置側へ回動させようとしたときに容器保持部に保持されている容器が干渉して容器開閉部材の回動が阻害されることを防止でき、容器の上面の封止動作が容易になる。
【0011】
連動機構としては、前記容器開閉部材に設けられたローラ及びローラと当接するように容器保持部に設けられ弾性支持部材の弾性力によってローラ側へ付勢されている追従面を備えており、追従面は、容器開閉部材が開放位置と封止位置との間で移動する際にローラが通過する範囲に容器の上面を封止高さよりも低い高さに抑えるための湾曲した頂点を備えており、ローラが頂点よりも開放位置側にあるときは付勢部材の弾性力により容器開閉部材が開放位置へ自動的に回動し、ローラが頂点よりも封止位置側にあるときは弾性支持部材の弾性力により容器開閉部材が封止位置へ自動的に回動するようになっているものが挙げられる。連動機構をこのような構成にすることで、構造を簡単なものにすることができ、コストを抑えることができる。
【0012】
連動機構が上記構成である場合、開動作防止ストッパは、容器開閉部材が封止位置にある状態において、追従面の頂点の高さがローラの高さよりも低くなるまで容器保持部が押し下げられ、ローラが付勢部材の弾性力によって頂点よりも開放位置側へ移動することにより解除される。
【0013】
上記連動機構の構成では、容器開閉部材を開放位置から封止位置まで回動させる際、ローラが頂点よりも封止位置側の位置にくるように容器開閉部材を回動させた後は弾性支持部材の弾性力によって容器開閉部材が封止位置へ自動的に回動するようになっている。そこで、ローラが追従面の頂点よりも開放位置側にあるときにローラの周面と接する追従面の形状を、ローラの周面が描く円弧形状と同一形状とし、追従面の頂点よりも開放位置側におけるローラの移動に際して容器保持部が上下動しないようにすることで、ローラが追従面の頂点よりも封止位置側の位置にくるまで容器開閉部材を回動させる際に弾性支持部材を圧縮させる力が不要となる。これにより、ローラを追従面の頂点よりも封止位置側へ移動させるために必要な力が小さくてすみ、容器開閉部材を封止位置へ回動させる動作が容易になる。
【0014】
本発明のオートサンプラでは、制御部が、サンプリング動作の後に、容器開閉機構のローラが容器保持部の追従面の頂点よりも封止位置側に到達するまで、押圧棒で容器開閉機構を押して回動させることで容器の上面を封止するように構成された封止手段をさらに備えているようにすれば、サンプリングが終了した後にオートサンプラが容器の上面を自動的に封止するようになり、容器に収容されている液の蒸発を防止することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の容器設置機構は、液を収容した容器をその上面を開放させた状態で保持する容器保持部と、容器保持部に保持された容器の上面を封止するための蓋部を有し、蓋部を容器保持部に保持された容器の上面を封止するための封止位置と封止位置とは異なる位置である開放位置との間で回動するようにベース部材に回動可能に取り付けられた容器開閉部材を備えているので、容器保持部に保持された容器の上面の開閉が可能である。
【0016】
そして、容器保持部が弾性支持部材により上方に付勢されるとともに上下方向に変位可能に支持され、容器開閉部材を封止位置で停止させ、容器保持部が所定の高さまで下降させられたときに解除され、容器開閉部材が付勢部材の弾性力により開放位置へ回動するように構成されている開動作防止ストッパと、容器開閉部材を開放位置側へ付勢する弾性体からなる付勢部材を備えているので、容器保持部を所定の高さまで下降させるだけで開動作防止ストッパを解除して容器の上面を開放することができる。開動作防止ストッパを解除するための機構として、上下方向に駆動する機構で良いので、回転機構などの複雑な機構が不要であり、例えばニードルを上下動させるような、従来からオートサンプラに設けられている機構を利用して開動作防止ストッパを解除するための機構を構成することができる。
【0017】
本発明のオートサンプラは、ニードルと一体に取り付けられた押圧棒により容器保持部を押し下げて容器の上面を自動で開放するようになっているので、ニードルを上下方向に移動させるための駆動系を利用して容器の開放を容易に行なうことができ、容器の上面を開放するために新たな駆動系を設ける必要がない。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】容器設置機構の一実施例の構造を示す斜視図である。
図2】同実施例の連動機構について説明するための側面透視図である。
図3】同実施例の容器保持部に保持された容器の上面の開放動作を説明するための側面透視図である。
図4】同実施例の容器保持部に保持された容器の上面の封止動作を説明するための側面透視図である。
図5】オートサンプラの一実施例を説明するための概略構成図である。
図6】同実施例の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
液を収容した容器をオートサンプラに設置するための容器設置機構の一実施例について図1を用いて説明する。
この実施例の容器設置機構は、ベース部材2上に2つの容器保持部4を備えている。2つの容器保持部4はそれぞれ独立して上下方向に変位可能に支持されており、各容器保持部4に保持される容器8の上面の開閉も互いに独立して行なわれるようになっている。これら2つの容器保持部4を支持する構造や容器8の上面を開閉する機構の構造は同一である。
【0020】
ベース部材2はほぼ立方体形状であり、その上面にコイルバネからなる2つの弾性支持部材6が上下方向に伸縮するように取り付けられている。それぞれの弾性支持部材6の上端に容器保持部4が圧縮された状態で取り付けられている。弾性支持部材6はコイルバネ以外のバネでもよく、バネ以外の弾性部材でもよい。容器保持部4は上面に容器8を収容するための穴を備えている。容器保持部4に保持される容器8にはオートサンプラで扱われる液が収容される。
【0021】
それぞれの容器保持部4の側方にシャフト12が設けられている。シャフト12の基端部はベース部材2の互いに対向する2つの側面に設けられた軸13に回動可能に取り付けられている。シャフト12の先端部に蓋部14が設けられており、シャフト12が軸13を回転中心として回動することにより、蓋部14は円弧を描くように移動する。蓋部14はシャフト12の先端から容器保持部4側へ垂直に延びており、シャフト12が直立状態になったときに容器保持部4に保持された容器8の直上に配置されるようになっている。シャフト12及び蓋部14は容器保持部4に保持された容器8の上面の封止と開放を行なうための容器開閉部材を構成している。
【0022】
シャフト12の直立状態となっているときの位置を「封止位置」、直立状態から一定角度だけ回動した位置を「開放位置」と規定する。容器保持部4に保持される容器8の上面の縁には、弾力性をもつ樹脂からなるシール部材9が装着され、蓋部14による封止性能を高めている。シャフト12の回動と容器保持部4の上下動との関係については後述するが、シャフト12が封止位置にきたときに容器保持部4に保持された容器8の上面のシール部材9が蓋部4の下面に接する高さにくるようになっている。このとき、シール部材9は弾性支持部材6により蓋部14に押し付けられた状態となる。
【0023】
シャフト12はバネ18(付勢部材)によって開放位置側へ付勢されている。シャフト12は直立状態から一定角度だけ回動した位置においてストッパ20により停止するようになっている。
【0024】
シャフト12の回動と容器保持部4の上下動とを連動させるために、追従面10とローラ16を備えた連動機構が設けられている。ローラ16はシャフト12の容器保持部4側に取り付けられている。追従面10は容器保持部4のシャフト12側の側面のローラ16に当接し得る位置に形成されている。容器保持部4は弾性支持部材6の弾性力によって上向きに付勢されており、これによって追従面10はローラ16側へ付勢されている。追従面10とローラ16は、ローラ16が追従面10の後述する谷部10aにあるときを除いて当接している。
【0025】
図2に示されているように、ローラ16は蓋部14と同様にシャフト12の回動によって円弧を描くように移動する。容器保持部4は弾性支持部材6によって付勢されているため、ローラ16が移動するとそのローラ16を追従面10に追従させるように容器保持部4が上下動する。追従面10は緩やかな曲線を有し、シャフト12が封止位置にきたときにローラ16が落ち込む谷部(底点)10aを備え、シャフト12が封止位置から一定角度だけ開放位置側へ回動したときにローラ16が接する位置に山部(頂点)10bを備えている。谷部10aの両側はともに上り傾斜となっており、山部10bの両側はともに下り傾斜となっている。
【0026】
追従面10の形状により、シャフト12を開放位置側から封止位置側へ(図において左側へ)移動させると容器保持部4が弾性支持部材6により押されて徐々に上昇し、シャフト12が封止位置にきたときに容器保持部4に保持されている容器8の上面のシール部材9が蓋部14の下面に接するようになっている。このとき、追従面10の谷部10aの高さは容器8のシール部材9が蓋部14の下面に接することによって停止したローラ16よりも低くなるように設定されている。これにより、弾性支持部材6の弾性力によって容器8のシール部材9が蓋部14の下面に押し付けられる。シャフト12の封止位置側への回動に連動して容器保持部4が徐々に上昇するため、シャフト12の回動中に蓋部14が容器8に接することなく、シャフト12をスムーズに封止位置まで回動させることができる。そして、シャフト12が封止位置にきたときに容器保持部4に保持されている容器8の上面が蓋部14によってシール部材9を介して封止される。
【0027】
なお、追従面10の、ローラ16が追従面10の山部10bよりも開放位置側で移動するときにローラ16と接する部分10c(図2)は、この区間においてローラ16の周面が描く円弧軌道と同一の形状になっていることが好ましい。そうすれば、この区間をローラ16が移動する際に容器保持部4は上下動せず、この区間におけるシャフト12の回動をスムーズに行なうことができる。
【0028】
既述のように、容器保持部4には弾性支持部材6の弾性力によって上昇方向の力が常に作用している。ローラ16が追従面10の谷部10aと山部10bの間にある状態では、弾性支持部材6の弾性力によって容器保持部4が上昇し、それに伴なってローラ16が追従面10の谷部10aへ向かい、容器8のシール部材9が蓋部材14の下面に接することで停止する。すなわち、ローラ16が追従面10の谷部10aと山部10bの間にある状態では、シャフト12が封止位置側へ自動的に移動し、封止位置で停止する。
【0029】
ここで、シャフト12はバネ18によって開放位置側へ付勢されているが、ローラ16が追従面10の谷部10aと山部10bの間にある状態においては、ローラ16に弾性支持部材6の弾性力による力がバネ18の弾性力による力よりも強く作用するように、弾性支持部材6の弾性力、バネ18の弾性力及び追従面10の谷部10aと山部10bの間の傾斜角度が調整されている。
【0030】
ローラ16が追従面10の谷部10aにある状態では、弾性支持部材6の弾性力がローラ16をその位置に留まらせるように作用し、開動作防止ストッパを実現している。すなわち、シャフト12が封止位置にあるときは開動作防止ストッパとしての機能が働き、蓋部14が容器8の上面を封止した状態で維持される。
【0031】
上記の開動作防止ストッパは、ローラ16の高さが山部10bの高さよりも高くなるまで、容器保持部4を下降させることにより解除することができる。容器保持部4を上方から押圧して下降させると、シャフト12はバネ18の弾性力によって開放位置側(図において右側)へ移動する(図3(A)参照)。容器保持部4の上面には、容器保持部4を下方向へ押圧するためにオートサンプラに設けられた後述の押圧棒24(図5)を挿入するための穴11が設けられている(図1参照)。
【0032】
そして、ローラ16が山部10bを超えた後は、山部10bの谷部10aとは反対側の追従面10は下り傾斜になっているため、弾性支持部材6の弾性力とバネ18の弾性力がともにローラ16を谷部10aとは反対側へ移動させる方向に作用する。これにより、ローラ16が山部10bを超えた後、シャフト12は開放位置まで自動的に移動し、ストッパ20により停止させられる(図3(B)参照)。シャフト12が開放位置にあるときは、弾性支持部材6及びバネ18の弾性力がともにシャフト12に開放位置に留まらせる方向に作用し、閉動作防止ストッパを実現している。これにより、容器保持部4に保持されている容器8の上面が開放された状態で維持される。
【0033】
この閉動作防止ストッパは、ローラ16が山部10bを超えるまでシャフト12を封止位置側(図において左側)へ回動させることにより解除される(図4(A)参照)。シャフト12を封止位置側へ回動させることは、後述の押圧棒24(図5)によりシャフト12を封止位置側(図において左側)へ水平方向に一定距離だけ押圧することにより行なうことができる。ローラ16が山部10bを超えた後は、上述のように、弾性支持部材6の弾性力によって容器保持部4が上昇し、その上昇に連動してシャフト12が封止位置まで自動的に回動する(図4(B)参照)。
【0034】
以上のように、この実施例の容器設置機構は、容器保持部4に保持された容器8の上面を蓋部14によって封止した状態でオートサンプラに設置することができる。容器8の上面を開放は、ローラ16が山部10bを超えることができる高さまで容器保持部4を下降させるだけで行なうことができる。すなわち、容器8の上面を開放するために必要な駆動系としては上下方向への駆動系のみでよく、回転方向や斜め方向の駆動系は不要である。オートサンプラは液の吸引や吐出を行なうニードルを上下方向に移動させる駆動系を備えており、その駆動系を利用して容器8の上面の開放を行なうことができる。
【0035】
また、容器8の上面の封止は、ローラ16が山部10bを超えるまでシャフト12を封止位置側(図において左側)へ水平方向に押圧するだけで行なうことができる。すなわち、容器8の上面を封止するために必要な駆動系としては水平方向への駆動系のみでよく、回転方向や斜め方向の駆動系は不要である。オートサンプラはニードルを水平面内方向に移動させる駆動系も備えており、その駆動系を利用して容器8の上面の封止を行なうことができる。
【0036】
上記の容器設置機構を備えたオートサンプラについて図5図1とともに参照しながら説明する。なお、図5においては容器設置機構の図示を省略している。
下方へ延びたニードル22と押圧棒24が共通の移動部26に保持されている。ニードル22は容器設置機構の容器保持部4に保持された容器8内に挿入され、その容器8内の液のサンプリングを行なうためのものである。ニードル22はシリンジポンプ等からなる吸引・吐出機構32により、液の吸引と吐出を行なう。押圧棒24は容器設置機構の容器保持部4に保持されている容器8の上面の開閉を行なうためのものである。すなわち、容器8の上面を開放する際は容器保持部4の穴11に押圧棒24の先端を挿入して容器保持部4を一定の高さまで押し下げ、容器8の上面を封止する際は押圧棒24の外周面で蓋部14を封止位置側へ水平に押圧する。サンプリングの際に押圧棒24が容器設置機構に干渉せず、かつ容器8の上面の開放と封止の際にニードル22が容器設置機構に干渉しないように、ニードル22と押圧棒24が配置されている。
【0037】
ニードル22や押圧棒24の水平面内方向と上下方向の移動を可能とするために、移動部26を水平面内方向へ駆動する水平方向駆動機構28と、移動部26を上下方向へ駆動する上下方向駆動機構30が設けられている。水平方向駆動機構28、上下方向駆動機構30及び吸引・吐出機構32は制御部34によって制御され、その動作の条件等は記憶装置40に記憶されている。
【0038】
制御部34は開放手段36と封止手段38を備えている。開放手段36は、サンプリング動作を行なう前にサンプリング対象の容器8の上面の開放動作を行なうように構成されたものである。封止手段38は、サンプリング動作が終了した後でサンプリング対象であった容器8の上面の封止動作を行なうように構成されたものである。
【0039】
上述のように、容器8の上面の開放動作は、容器保持部4の穴11に先端を挿入して容器保持部4を一定の高さまで押し下げる動作であり、容器8の上面の封止動作は、押圧棒24の外周面で蓋部14を封止位置側へ水平に押圧する動作である。記憶装置40には開放動作を実行するために必要な条件を記憶する開放条件記憶部42と、封止動作を実行するために必要な条件を記憶する封止条件記憶部44が設けられている。
【0040】
開放条件記憶部42に記憶される条件とは、容器保持部4の穴11の位置座標や容器保持部4の押下げ量、押下げ速度などである。封止条件記憶部44に記憶される条件とは、封止動作開始前後の押圧棒24の位置座標や押圧棒24の移動速度などである。制御部34は開放条件記憶部42と封止条件記憶部44に記憶されている各条件に基づいて水平方向駆動機構28及び上下方向駆動機構30の動作を制御し、容器8の上面の開放と封止を行なう。
【0041】
制御部34による制御により、このオートサンプラでは、図6に示されているように、液の入った容器8を上面を封止した状態で保持する容器設置機構を設置するだけで、サンプリング対象の容器8の上面の開放(ステップS1)、サンプリング動作(ステップS2)、サンプリングの終了した容器8の上面の封止(ステップS3)が自動的に行なわれる。
【符号の説明】
【0042】
2 ベース部材
4 容器保持部
6 弾性支持部材
8 容器
9 シール部材
10 追従面
11 穴(押圧棒挿入用)
12 シャフト
13 軸
14 蓋部
16 ローラ
18 バネ
20 ストッパ
22 ニードル
24 押圧棒
26 移動部
28 水平方向駆動機構
30 上下方向駆動機構
32 吸引・吐出機構
34 制御部
40 記憶装置
図2
図3
図4
図5
図6
図1