特許第5772994号(P5772994)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5772994
(24)【登録日】2015年7月10日
(45)【発行日】2015年9月2日
(54)【発明の名称】ターボ分子ポンプ
(51)【国際特許分類】
   F04D 19/04 20060101AFI20150813BHJP
【FI】
   F04D19/04 B
   F04D19/04 D
【請求項の数】2
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-3051(P2014-3051)
(22)【出願日】2014年1月10日
【基礎とした実用新案登録】実用新案登録第3168845号
【原出願日】2011年4月19日
(65)【公開番号】特開2014-62552(P2014-62552A)
(43)【公開日】2014年4月10日
【審査請求日】2014年1月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100084412
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 冬紀
(72)【発明者】
【氏名】大西 拓人
【審査官】 尾崎 和寛
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−239258(JP,A)
【文献】 国際公開第2005/015026(WO,A1)
【文献】 特開2008−038764(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 19/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロータ軸と一体に回転する複数のロータ翼と、前記複数のロータ翼との間に介装される複数のステータ翼とを略円筒状のケーシング内に収容し、前記ケーシングの一端側に設けられた吸気口フランジに接続した外部装置から排気口へ真空引きするターボ分子ポンプにおいて、
前記吸気口フランジ近傍の前記ケーシングの外周部に冷却媒体を流通する略円筒状の前記ケーシングと同軸である環状の冷却通路と、
前記環状の冷却通路の冷却媒体の入口側に接続されて冷却媒体を前記環状の冷却通路に供給する供給通路と、
前記ケーシングの他端側に接続されたベースと、
前記ベース内に収容されて、前記ロータ軸に設けられた円筒状ロータ部と、前記円筒状ロータ部に対して隙間を介して配置された円筒状のステータとを含むドラッグポンプ部とを備え、
前記ケーシングは、前記一端側に設けられた前記吸気口フランジであるケーシング上フランジと、前記ベースが接続される前記他端側のケーシング下フランジとを有し、
前記ベースは、前記ケーシング下フランジと接続されるベース上フランジを有し、
前記ケーシング下フランジは、外周部分に前記供給通路へ冷却媒体を供給する入口ポートが形成されていることを特徴とするターボ分子ポンプ。
【請求項2】
ロータ軸と一体に回転する複数のロータ翼と、前記複数のロータ翼との間に介装される複数のステータ翼とを略円筒状のケーシング内に収容し、前記ケーシングの一端側に設けられた吸気口フランジに接続した外部装置から排気口へ真空引きするターボ分子ポンプにおいて、
前記吸気口フランジ近傍の前記ケーシングの外周部に冷却媒体を流通する略円筒状の前記ケーシングと同軸である環状の冷却通路を設け
前記ケーシングは、前記一端側に設けられた前記吸気口フランジ近傍から前記ケーシングの他端側に向かって延在する円筒状の部位であって略一定の外径である小径部と、他端側の近傍から前記小径部に向かって延在する円筒状の部位であって、前記小径部よりも外径が大きく略一定の外径である大径部と、前記小径部と前記大径部との間で前記小径部から前記大径部に向かって径が大きくなるようにテーパ状に形成されて前記小径部と前記大径部とを接続するテーパ部とを有し、
前記環状の冷却通路は、前記小径部と前記テーパ部との接続部近傍に設けられて、前記小径部と前記テーパ部との双方に接触することを特徴とするターボ分子ポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ターボ分子ポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
ターボ分子ポンプでは、タービン翼などの排気作用部が形成されたロータを数万rpmという高速回転することによって、真空チャンバ内のガスを排気している。この種のターボ分子ポンプとして、水冷機構によりモータ本体や電源部を冷却するものがある(たとえば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−348765号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ターボ分子ポンプに接続されている機器の真空排気を行う場合、接続されている機器がたとえば露光装置などである場合、ターボ分子ポンプで発生する熱を接続されている機器へできるだけ伝えない方がよい。しかし、従来のターボ分子ポンプでは、ターボ分子ポンプで発生した熱が接続されている機器に伝達されるのを効果的に抑止し難かった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(1) 本発明の好ましい態様によるターボ分子ポンプは、ロータ軸と一体に回転する複数のロータ翼と、複数のロータ翼との間に介装される複数のステータ翼とを略円筒状のケーシング内に収容し、ケーシングの一端側に設けられた吸気口フランジに接続した外部装置から排気口へ真空引きするターボ分子ポンプにおいて、 吸気口フランジ近傍のケーシングの外周部に冷却媒体を流通する略円筒状のケーシングと同軸である環状の冷却通路と、環状の冷却通路の冷却媒体の入口側に接続されて冷却媒体を環状の冷却通路に供給する供給通路と、ケーシングの他端側に接続されたベースと、ベース内に収容されて、ロータ軸に設けられた円筒状ロータ部と、円筒状ロータ部に対して隙間を介して配置された円筒状のステータとを含むドラッグポンプ部とを備え、ケーシングは、一端側に設けられた吸気口フランジであるケーシング上フランジと、ベースが接続される他端側のケーシング下フランジとを有し、ベースは、ケーシング下フランジと接続されるベース上フランジを有し、ケーシング下フランジは、外周部分に供給通路へ冷却媒体を供給する入口ポートが形成されていることを特徴とする。
(2) 本発明の他の好ましい態様によるターボ分子ポンプは、ロータ軸と一体に回転する複数のロータ翼と、複数のロータ翼との間に介装される複数のステータ翼とを略円筒状のケーシング内に収容し、ケーシングの一端側に設けられた吸気口フランジに接続した外部装置から排気口へ真空引きするターボ分子ポンプにおいて、吸気口フランジ近傍のケーシングの外周部に冷却媒体を流通する略円筒状のケーシングと同軸である環状の冷却通路を設け、ケーシングは、一端側に設けられた吸気口フランジ近傍からケーシングの他端側に向かって延在する円筒状の部位であって略一定の外径である小径部と、他端側の近傍から小径部に向かって延在する円筒状の部位であって、小径部よりも外径が大きく略一定の外径である大径部と、小径部と大径部との間で小径部から大径部に向かって径が大きくなるようにテーパ状に形成されて小径部と大径部とを接続するテーパ部とを有し、環状の冷却通路は、小径部とテーパ部との接続部近傍に設けられて、小径部とテーパ部との双方に接触することを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、ターボ分子ポンプで発生した熱が吸気口フランジに接続した外部装置に伝達されるのを効果的に抑止できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明によるターボ分子ポンプの一実施の形態を示す断面図である。
図2】ターボ分子ポンプ1の外観を示す図であり、(a)は側面図であり、(b)は底面図である。
図3】冷却水パイプ36A〜36Cの経路について模式的に示した図である。
図4】冷却水パイプ36Cの配設のバリエーションを示す図である。
図5】冷却水パイプ36Cの配設のバリエーションを示す図である。
図6】冷却水パイプ36Cの配設のバリエーションを示す図である。
図7】冷却水パイプ36Cの配設のバリエーションを示す図である。
図8】冷却水パイプ36Cの配設のバリエーションを示す図である。
図9】冷却水パイプ36Cの配設のバリエーションを示す図である。
図10】冷却水パイプ36Cの配設のバリエーションを示す図である。
図11】冷却水パイプ36Cの配設のバリエーションを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図を参照して本発明を実施するための一実施の形態について説明する。図1は、本発明によるターボ分子ポンプの一実施の形態を示す断面図である。図1に図示されたターボ分子ポンプ1は、磁気軸受式ターボ分子ポンプである。ターボ分子ポンプ1は、シール部材42により外部から密封されたケーシング(上ケース)12とベース13からなるケース部材11を備えている。ケース部材11の内部中心には、回転軸4cの周囲に、この回転軸の軸方向(図示上下方向)に複数段に配列されたロータ翼4aを有するロータ4が回転可能に配置されている。
【0009】
このターボ分子ポンプ1は、上ケース12の内部空間に翼排気部2を有し、上ケース12からベース13にかけてケース部材11の内部空間に設けられたドラッグポンプ部(ネジ溝排気部)3を有する複合タイプのターボ分子ポンプである。翼排気部2は複数段のロータ翼4aと複数段のステータ翼6とで構成され、ネジ溝排気部3はロータ円筒部4bとネジステータ8とで構成されている。
【0010】
ロータ翼4aとステータ翼6とは、ポンプの軸方向に交互に配設されている。上ケース12の内面にはリング状のスペーサ5が複数積層されており、各ステータ翼6の外周部は上下のスペーサ5によって挟持されて保持されている。ロータ4には、ベース13内に配置されたロータ円筒部4bが一体に形成されている。ロータ円筒部4bの外周には円筒形状のネジステータ8が配置されている。ネジステータ8は、複数積層されたスペーサ5と、ベース13の上端面13aとの間で挟持されており、内周面にネジ溝8aが形成されている。
【0011】
複数段のロータ翼4aおよびロータ円筒部4bが形成されたロータ4は、その回転軸4cがベース13に設けられたラジアル磁気軸受31およびスラスト磁気軸受32により非接触状態で支持される。ロータ4は、回転軸4cが磁気軸受31、32により非接触で支持されて、モータ35により回転駆動される。ロータ4の回転軸4cの磁気浮上位置は、ギャップセンサ33a、33b、33cにより検出される。34は、ロータ4の回転軸4cが磁気軸受31、32による磁気作用で浮上されていない状態において、ロータ4の回転軸4cを支持する機械式の保護ベアリングである。また、36A,36B,36Cは冷却通路(冷却水パイプ)である。
【0012】
フランジ17bは、上ケース12の図示下部のフランジであり、締結部材(図1では図示せず)により、ベース13の上部のフランジ13bに取り付けられている。フランジ17aは、上ケース12の図示上部のフランジである。フランジ17aは、締結部材(図示せず)により、図示しない真空チャンバの排気系のフランジに取り付けられる。モータ35によりロータ4を回転駆動すると真空チャンバ内の気体分子が吸気口15から流入する。吸気口15から流入した気体分子は翼排気部2において、下流側へと叩き飛ばされる。図示はしないが、ロータ翼4aとステータ翼6とは翼の傾斜の向きが逆であり、且つ、傾斜角度は、高真空側である前段側から下流側である後段側に向けて、気体分子が逆行しにくい角度に変化して形成されている。気体分子は、翼排気部2において圧縮されて図示下方のネジ溝排気部3へ移送される。
【0013】
ネジ溝排気部3においては、ネジステータ8に対してロータ円筒部4bが高速回転すると粘性流による排気機能が発生し、翼排気部2からネジ溝排気部3へと移送された気体は圧縮されながら排気口45方向へ移送され真空排気される。なお、本実施の形態では、ネジ溝構成を有するネジ溝排気部3としているが、ネジ溝構成以外の構成も含め、粘性流による排気機能を発揮する部分はドラッグポンプ部と呼ばれる場合もある。
【0014】
−−−ターボ分子ポンプ1の冷却について−−−
従来のターボ分子ポンプでは、発熱量が多いドラッグポンプ部3の近傍のベース13を
冷却するため、本実施の形態のターボ分子ポンプ1における冷却水パイプ36A,36Bに相当する冷却水パイプが設けられていた。ターボ分子ポンプ1ではロータ4を数万rpmという高速回転することで排気作用を生み出しているため、運転時のロータ4には強い遠心力が作用している。また、高速で回転するロータ翼4aと排気するガスの分子との摩擦によって摩擦熱が生じるため、ロータ4の温度が上昇する。ロータ4の温度が過度に上昇すると熱膨張のためにロータ翼4aとステータ翼6とが接触するおそれがある。また、たとえばフランジ17aに取り付けられる機器が露光装置などのように精度の高い温度管理を要する機器である場合には、ターボ分子ポンプ1で発生した熱を露光装置側にできるだけ伝えないようにすることが望ましい。
【0015】
そこで、本実施の形態では、図1図2に示すように、ベース13を冷却する冷却水パイプ36A,36Bだけでなく、上ケース12を冷却する冷却水パイプ36Cを設けている。図2(a)はターボ分子ポンプ1の側面図であり、図2(b)はターボ分子ポンプ1の底面図である。冷却水パイプ36Cは、フランジ17aに取り付けられた機器への熱伝達を抑制するため、フランジ17aの近傍、すなわち、上ケース12の図1における図示上部に設けられる。冷却水パイプ36Cを設けることでロータ4からステータ6,スペーサ5,上ケース12の順に伝わった熱が機器へ熱伝達されるのを抑制するだけでなく,ケース12を冷却し,それに伴ってスペーサ5,ステータ6も冷却し,ロータ4を冷却するという
効果も同時に得ることができる。冷却水パイプ36Cは、たとえば、冷却水パイプ36A,36Bと同様の熱伝導性の良い材料からなる管状の部材であって、上ケース12の外周面に接するように(すなわち上ケース12と同軸に)環状に形成されている。なお、冷却水パイプ36Aは、環状に形成された管状の部材であり、ベース13の底面に配設されている。冷却水パイプ36Bは、環状に形成された管状の部材であり、ベース13の上部のフランジ13bの下面に配設されている。
【0016】
図3は、冷却水パイプ36A〜36Cの経路について模式的に示した図である。冷却水パイプ36Aには、冷却水の入口361aと出口362aとが設けられている。冷却水パイプ36Bには、冷却水の入口361bと出口362bとが設けられている。冷却水パイプ36Cには、冷却水の入口361cと出口362cとが設けられている。図2,3に示すように、冷却水パイプ36Aの出口362aと冷却水パイプ36Bの入口361bとは接続管371で接続されている。冷却水パイプ36Bの出口362bと冷却水パイプ36Cの入口361cとは接続管372で接続されている。
【0017】
ターボ分子ポンプ1における冷却水の流れは、図3の矢印で示すとおりである。すなわち、冷却水は、外部から冷却水パイプ36Aの入口361aに供給される。冷却水パイプ36Aの入口361aに供給された冷却水は、冷却水パイプ36Aの内部を流れ、出口362aから接続管371を介して冷却水パイプ36Bの入口361bに供給される。冷却水パイプ36Bの入口361bに供給された冷却水は、冷却水パイプ36Bの内部を流れ、出口362bから接続管372を介して冷却水パイプ36Cの入口361cに供給される。冷却水パイプ36Cの入口361cに供給された冷却水は、冷却水パイプ36Cの内部を流れ、出口362cから外部に排出される。
【0018】
なお、冷却水パイプ36A,36Bの設置形態としては、たとえば、ベース13における冷却水パイプ36A,36Bの設置位置に略一周するような溝を形成し、その溝内に冷却水パイプ36A,36Bを配設し、その後、充填剤(たとえばシリコンゴム系のシール材や、樹脂の充填剤)などを充填して溝を埋め、冷却水パイプ36A,36Bを埋設するようにしても良い。溝内に配設した冷却水パイプ36A,36Bの上から蓋をしてもよい。また、ベース13を鋳造で形成し、最後に仕上げ加工するような場合には、冷却水パイプ36A,36Bを予め鋳込んで埋設してしまうようにしても良い。
【0019】
このように、上ケース12を冷却する冷却水パイプ36Cを設けることで、上ケース12自体の温度を低減させてフランジ17aに取り付けられた機器への熱伝達を抑制できるので、フランジ17aに取り付けられた機器への熱による悪影響を抑制できる。また、上ケース12自体の温度を低減させることでロータ4の温度を低減させることができ、ロータ翼4aとステータ翼6とが接触する不具合を防止できる。さらに、上ケース12に配設した冷却水パイプ36Cが上ケース12を補強して上ケース12の強度を増加させるので、万が一、ロータ翼4aが破断するなどしても、上ケース12の変形を抑制できる。
【0020】
なお、冷却水パイプ36Cについては、種々の配設形態が考えられる。たとえば、図4(a)に示すように、上ケース12の外周面のフランジ17aの近傍に冷却水パイプ36Cを配設するための溝12aを設け、図4(b)に示すように、その溝12a内に冷却水パイプ36Cを配設し、その後、充填剤(たとえばシリコンゴム系のシール材や、樹脂の充填剤)などを充填して溝を埋め、冷却水パイプ36Cを埋設するようにしても良い。溝12a内に配設した冷却水パイプ36Cの上から蓋をしてもよい。また、上ケース12を鋳造で形成し、最後に仕上げ加工するような場合には、図5に示すように、冷却水パイプ36Cを予め鋳込んで埋設してしまうようにしても良い。この場合、図示はしないが、冷却水の入口361cおよび出口362cを上ケース12の側方に引き出してもよく、上ケース12の下方に引き出してもよい。このようにすることで、冷却水パイプ36Cと上ケース12との接触面積を増やすことができるので、熱伝達率が向上し、効率的に上ケース12を冷却できる。
【0021】
なお、図6(a),(b)に示すように、上ケース12のフランジ17aの近傍で上ケース12の円周方向に沿って略一周させた冷却水パイプ36Cの両端を上ケース12の軸線方向に沿って図示下部のフランジ17bに向かって延在させ、図示下部のフランジ17bの側面から入口361cおよび出口362cが外部に露出するように、冷却水パイプ36Cを予め鋳込んで埋設してしまうようにしても良い。なお、図6(b)は、図6(a)に示した上ケース12を図示右方から見たときの図である。
【0022】
たとえば図7〜11に示すように、フランジ17aの下部を絞ったような形状を呈する、すなわち、大きな直径のロータ翼4aを収容可能な上ケーシング12を有するターボ分子ポンプ1の場合には、冷却水パイプ36Cを次のように配設してもよい。以下の説明では、上ケーシング12のうち、上ケーシング12の上端側に設けられたフランジ17aの近傍から上ケーシング12の下端側に向かって延在する円筒状の部位であって略一定の外径である部位を小径部121と呼ぶ。ケーシング12の下端側に設けられたフランジ17bの近傍から上端に向かって延在する円筒状の部位であって、小径部121よりも外径が大きく略一定の外径である円筒部分を大径部122と呼ぶ。小径部121と大径部122との間で小径部121から大径部122に向かって径が大きくなるようにテーパ状に形成されて小径部121と大径部122とを接続する部位をテーパ部123と呼ぶ。
【0023】
たとえば、図7に示すように、小径部121とテーパ部123との境目の近傍に冷却水パイプ36Cを配設して、冷却水パイプ36Cが小径部121およびテーパ部123の双方に接触するようにしてもよい。たとえば、図8に示すように、冷却水パイプ36Cが小径部121と接触する部分を小径部121の外周面に合わせて変形させて、冷却水パイプ36Cと小径部121との接触部分が面状となるようにして、接触面積を増やすようにしてもよい。これにより、効率的に上ケース12を冷却できる。
【0024】
たとえば、図9に示しように、冷却水パイプ36Cが小径部121およびテーパ部123と接触する部分を小径部121およびテーパ部123の外周面に合わせて変形させて、冷却水パイプ36Cと小径部121およびテーパ部123との接触部分が面状となるようにして、接触面積を増やすようにしてもよい。また、たとえば、図10に示すように、小
径部121とテーパ部123との境目の近傍だけでなく、テーパ部123にも冷却パイプ36Cを設けるようにしてもよい。すなわち、冷却水パイプ36Cを小径部121からテーパ部123にかけて複数周にわたって設けるようにしてもよい。
【0025】
このとき、図11に示すように、冷却水パイプ36Cがテーパ部123と接触する部分をテーパ部123の外周面に合わせて変形させて、冷却水パイプ36Cとテーパ部123との接触部分が面状となるようにして、接触面積を増やすようにしてもよい。なお、上述した冷却水パイプ36Cの配設の形態については、それぞれ組み合わせてもよい。
【0026】
なお、本発明は、上述した実施の形態のものに何ら限定されず、ロータ軸と一体に回転する複数のロータ翼と、複数のロータ翼との間に介装される複数のステータ翼とを略円筒状のケーシング内に収容し、ケーシングの一端側に設けられた吸気口フランジに接続した外部装置から排気口へ真空引きするターボ分子ポンプにおいて、吸気口フランジ近傍のケーシングの外周部に冷却媒体を流通する略円筒状の前記ケーシングと同軸環状の冷却通路を設けたことを特徴とする各種構造のターボ分子ポンプを含むものである。
【符号の説明】
【0027】
1 ターボ分子ポンプ 2 翼排気部
3 ネジ溝排気部 4 ロータ
4a ロータ翼 4b ロータ円筒部
4c 回転軸 5 スペーサ
6 ステータ翼 8 ネジステータ
11 ケース部材 12 ケーシング(上ケース)
13 ベース 36A〜36C 冷却通路(冷却水パイプ)
121 小径部 122 大径部
123 テーパ部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11