【実施例】
【0012】
本実施例の電池収容ケースは、
図1に示すように、ケース本体1と、ケース本体1の内部に装着された電池収容体2と、ケース本体1に装着された電池収容体2上を覆う電池カバー3とで構成され、単1形電池T1、単2形電池T2、単3形電池T3の電池形式の異なる電池のいずれもが収容可能であり、かつその3種の内の1種のみを収容することが可能な構造を有している。
【0013】
電池収容体2は、電池形式の異なる、つまり長さや直径が異なる複数種類の電池を収容する矩形の枠体であって、単1形電池T1を収容する単1収容部5aと、単2形電池T2を収容する単2収容部5bと、単3形電池T3を収容する単3収容部5cとが設けられており、各収容部5は、該当する電池形式の電池の外周面に沿った円弧凹面で形成され、それぞれの収容部5には、2本の電池が直列に収容される。
【0014】
この電池収容体2には、
図2に示すように、電池収容体2の深さ方向の上部に単1収容部5aが配置され、この単1収容部5aの底部に単2収容部5bが配置され、単1収容部5aおよび単2収容部5bの側方に隣接して、単1収容部5aに収容された単1形電池T1、単2収容部5bに収容された単2形電池T2のそれぞれの外周面と単3形電池T3の外周面とが重なり合うように単3収容部5cが配置され、単2収容部5bの底部には、単3形電池T3の外径寸法より大きい貫通穴である開口部6が形成されている(
図1参照)。
【0015】
電池収容体2の正面板2aには、
図3に示すように、単1形電池T1または単2形電池T2の電池正極を当接させる兼用正電極7aおよび単3形電池T3の電池正極を当接させる専用正電極7bが並設され、その兼用正電極7aおよび専用正電極7bのそれぞれの近傍には、収容されるそれぞれの電池が誤って逆収容されたときの当接を防止するための各電池の電池正極より低く、電池負極より高い高さを有する突起部8が形成され、正面板2aの上部の中央部には、手の指で電池収容体2を把持するための把持部9が設けられている。
【0016】
電池収容体2の正面板2aに直交する2つの側板2bのそれぞれの外側面、つまりケース本体1の側壁1b側の面には、電池収容体2の電池の長手方向への移動を案内するガイド溝11a、11bが形成され、その把持部9側のガイド溝11bの把持部9側の端部には、後述する第2収容位置に移動した電池収容体2をその位置に停止させるための溝である係止部12が形成されており、各ガイド溝11a、11bには、ケース本体1の2つの側壁1bの内側面に形成された円柱状の突起であるガイドピン14a、14bが嵌合し、係止部12にはガイドピン14bが嵌合する。
【0017】
また、電池収容体2の一方の側板2b(本実施例では、単3収容部5c側の側板2b)の外側面には、兼用正電極7aおよび専用正電極7bと一体に形成された正極端子15が設けられ、この正極端子15には、ケース本体1の側壁1bに設けられた板バネ等の図示しない弾性電極が摺接し、電池収容体2の正電極7とケース本体1との間を電気的に接続する。
【0018】
更に、電池収容体2の単3収容部5c側の側板2bの上部、つまり電池カバー3側には、単3収容部5cに直列に収容された後述する専用負電極18b側の電池の落下を防止する抑え部16が形成され、その正電極7側には、電池カバー3の後述するフック部21の挿入時の逃げ、および単2収容部5bに収容された単2形電池T2の取外し時に、指の挿入を容易にする逃げとして機能する切欠き部17が形成されている。
【0019】
ケース本体1の2つの側壁1bの間の一端に設けられた背面壁1cには、電池収容体2の正面板2aに対向し、単1形電池T1および単2形電池T2の電池負極を押圧する、円錐コイルバネ等のバネ部材からなる兼用負電極18aおよび単3形電池T3の電池負極を押圧する、円錐コイルバネ等のバネ部材からなる専用負電極18bが並設されている。
【0020】
また、ケース本体1の底部には、単1収容部5aに収容された単1形電池T1の下部を支持する支持台19が設けられ、この支持台19は、電池収容体2のケース本体1への装着時に、電池収容体2の底部に形成された開口部6に挿入される(
図7参照)。
【0021】
電池カバー3は、外部からの電池の保護、電池のガタツキ防止、脱落防止等の機能を有するカバーであって、その内側面、つまり電池収容体2側の面には、後述する第1収容位置に位置する電池収容体2の単1収容部5aに収容された単1形電池T1の外周面および第2収容位置に位置する電池収容体2の単2収容部5bに収容された単2形電池T2の外周面を保持する第1保持部20aと、第2収容位置で単3収容部5cに収容された単3形電池T3の外周面を保持する第2保持部20bとが設けられており、各保持部20は、直列に収容された電池間の連結部の近傍で、正電極7側の電池を保持する位置に配置されている。
【0022】
また、電池カバー3の電池の長手方向に沿った一方の縁部(本実施例では、単3収容部5c側の縁部)の長手方向の中央部には、電池カバー3を固定するためのフック部21が設けられている。
上記した電池収納体2は、その正面板2aをケース本体1の背面壁1cに対向させてケース本体1内に押し込まれ、ケース本体1の側壁1bが弾性変形して、ケース本体1のガイドピン14a、14bに、電池収納体2のガイド溝11a、11bが嵌合して装着される。これにより、電池収容体2が、ケース本体1の内部で電池の長手方向への移動が可能になる。
【0023】
本実施例の電池収容体2は、そのガイド溝11a、11bに嵌合するガイドピン14a、14bに案内されながら
図4に示す第1収容位置と、
図5に示す第2収容位置との間を、電池の長手方向に移動し、これら2つの収容位置で停止するよう構成されている。
本実施例の第1収容位置は、
図4に示すように、ケース本体1の負電極18と電池収容体2の正電極7とが最も離間し、かつ電池収容体2がケース本体1の底側に停止した位置であって、単1形電池T1を兼用正電極7aと兼用負電極18aとの間の単1収容部5aに収容するときの位置である。
【0024】
また、第2収容位置は、
図5に示すように、ケース本体1内で負電極18と電池収容体2の正電極7とが第1収容位置よりも接近し、かつ電池収容体2がケース本体1の開放側に停止した位置であって、単2形電池T2を兼用正電極7aと兼用負電極18aとの間の単2収容部5bに収容するとき、および単3形電池T3を専用正電極7bと専用負電極18bとの間の単3収容部5cに収容するときの位置である。
【0025】
上記した第1収容位置から第2収容位置への電池収容体2の移動は、ケース本体1の底側の第1収容位置に停止している電池収容体2の単1収容部5aに収納されている2本の単1形電池T1を取外し、電池収容体2の把持部9で正面板2aをつまんでケース本体1の負電極18の方向に停止するまで移動させる。このとき、電池収容体2はガイド溝11に嵌合するガイドピン14によってケース本体1の開放側に持上げられる。
【0026】
そして、停止した電池収容体2を把持部9によって停止するまで下方に押下げ、第2収容位置に停止させる。これにより、単2形電池T2または単3形電池T3が収容されたときに負電極18の正電極7方向への付勢力によってケース本体1のガイドピン14bがガイド溝11bの設けられた係止部12に自動的に嵌合して当該位置に固定され、
図5に矢印で示す第1収容位置への不用意な移動が防止される。
【0027】
また、第2収容位置から第1収容位置への電池収容体2の移動は、ケース本体1の開放側の第2収容位置に停止している電池収容体2の単2収容部5bまたは単3収容部5cに収納されている2本の単2形電池T2または単3形電池T3を取外し、電池収容体2の把持部9で正面板2aをつまんでケース本体1の負電極18の方向に停止するまで移動させ、その状態で電池収容体2を把持部9によって停止するまで上方に持上げる。これにより、係止部12によるガイドピン14bの係止が解除される。
【0028】
そして、持上げた電池収容体2を把持部9によって負電極18から離間する方向に停止するまで移動させ、第1収容位置に停止させる。このとき電池収容体2はガイド溝11に嵌合するガイドピン14によってケース本体1の底側の方向に押下げられる。これにより、単1形電池T1が収容されたときに兼用負電極18aの兼用正電極7a方向への付勢力によってケース本体1のガイドピン14がガイド溝11の端部に押付けられ、電池収容体2が第1収容位置に固定される。
【0029】
上記した第1収容位置において、単1形電池T1を直列に収容する場合は、
図6に示すように、2本の単1形電池T1を電池収容体2の兼用正電極7aとケース本体1の兼用負電極18aとの間の単1収容部5aに収容し、
図7に示すように、その外周面の下部をケース本体1の支持台19に支持させた状態で電池カバー3の第1保持部20aで単1形電池T1の外周面の上部を保持し収容する。これにより、単1形電池T1の電池正極は兼用正電極7a、正極端子15、図示しない弾性電極を介して、電池負極は兼用負電極18aを介して、電池収容ケースが設けられた装置の回路基板に接続され、回路基板へ直列の単1形電池T1から電源が供給される。
【0030】
また、第2収容位置において、単2形電池T2を直列に収容する場合は、
図8に示すように、2本の単2形電池T2を電池収容体2の兼用正電極7aとケース本体1の兼用負電極18aとの間の単2収容部5bに収容し、
図9に示すように、その外周面の上部を電池カバー3の第1保持部20aで保持し収容する。これにより、単2形電池T2の電池正極は兼用正電極7a、正極端子15、図示しない弾性電極を介して、電池負極は兼用負電極18aを介して、電池収容ケースが設けられた装置の回路基板に接続され、回路基板へ直列の単2形電池T2から電源が供給される。
【0031】
また、第2収容位置において、単3形電池T3を直列に収容する場合は、
図10に示すように、2本の単3形電池T3を電池収容体2の専用正電極7bとケース本体1の専用負電極18bとの間の単3収容部5cに収容し、
図11に示すように、その外周面を抑え部16と電池カバー3の第2保持部20bとで保持し収容する。これにより、単3形電池T3の電池正極は専用正電極7b、正極端子15、図示しない弾性電極を介して、電池負極は専用負電極18bを介して、電池収容ケースが設けられた装置の回路基板に接続され、回路基板へ直列の単3形電池T3から電源が供給される。
【0032】
上記のように、本実施例では、電池収容体2の深さ方向の上部に単1形電池T1を収容する単1収容部5aを配置し、この単1収容部5aの底部に単2形電池T2を収容する単2収容部5bを配置し、単1収容部5aおよび単2収容部5bの側方に隣接して、単3形電池T3を収容する単3収容部5cを配置し、
図2に示すように、各収容部5に収容された単1形電池T1と、単2形電池T2と、単3形電池T3とのそれぞれの外周面が重なり合うように構成したので、単1形電池T1の収容時には、それ以外の電池が収容不可能となり、同様に単2形電池T2収容時または単3形電池T3収容時には、他の電池が収容不可能となり、電池形式の異なる収容部5への他の電池形式の電池の誤収容を防止することができる、つまり、正規の収容部5へ、該当する電池形式の電池を迷うことなく正確に収納することができる。
【0033】
また、単1形電池T1を収容する第1収容位置(
図4)では、電池収容体2の正電極7とケース本体1の負電極18との間隔が単1形電池T1に合った広い間隔になっているので、単1形電池T1よりも長さの短い単2形電池T2、単3形電池T3のいずれかを収容した場合は、接点である正電極7と負電極18との間で通電できず、電源供給ができないことで使用者に誤収容を容易に認識させることができ、電池形式の異なる収容部5への他の電池形式の電池の誤収容を防止することができる。
【0034】
同様に、単2形電池T2または単3形電池T3を収容する第2収容位置(
図5)では、それぞれの電池に対し長さの長い単1形電池T1は電池収容体2へ収容ができず、電池の誤収容を防止することができる。このとき、単3収容部5cには、その円弧凹面の形状および抑え部16によって単2形電池T2は収容できず、また単2収容部5bへ単3形電池T3を収容しようとした場合は、単3形電池T3の外径に対し単2収容部5bの円弧凹面の径が大きいために電池収容体2の単2収容部5bの底部に形成された開口部6内へ単3形電池T3が落ち込むことで、正電極7と負電極18との間で通電できず、電池形式の異なる収容部5への他の電池形式の電池の誤収容を防止することができる。
【0035】
更に、本実施例では、単1形電池T1、単2形電池T2、単3形電池T3を収容するための電池収容体2の位置の切替は、第1収容位置と第2収容位置との2モード2モーションのみで収容準備が完了となり、切替作業における操作性向上と簡素化を図ることができる。
更に、上記した構成の電池収容ケースは、電池の収容スペースとしても非常に無駄が省かれており、シンプル、かつ軽量コンパクトなサイズの電池収容ケースの装置への設置を実現することができる。
【0036】
また、電池収容体2の着脱を不要とした構造であるので、取外し部品の落下やそれに伴う破損および紛失を防止することができる。しかも、電池収容における部品点数の削減とそれに伴う組立作業性の向上を図ることができ、結果として装置の品質向上にも大きく寄与することができる。
【0037】
このように本実施例の電池収容ケースは、電池形式の異なる電池の誤収容を防止する機能を有しているので、通信機器等のエレクトロニクス関連装置だけにとどまらず、音響機器や玩具等の法人、個人等不特定多数の使用者が使用する製品において、サイズの異なった形式の電池を供給電源とし、いずれかの電池形式を1種類だけ直列に収納し使用する場合に、他の電池形式の電池を同時に収容できない機能を求められる、あらゆる製品へ適用が可能である。
【0038】
以上説明したように、本実施例では、単1形、単2形、単3形の各収容部に収容された単1形電池T1と、単2形電池T2と、単3形電池T3のそれぞれの外周面が重なり合うように構成し、単1形電池T1を兼用正電極と兼用負電極との間に収容する第1収容位置では、電池収容体の兼用正電極とケース本体の兼用負電極との間隔を単1形電池T1に合った広い間隔に、単2形または単3形の電池を収容する第2収容位置では、単2形電池T2を収容する兼用正電極と兼用負電極との間隔を単2形電池T2に合った狭い間隔に、単3形電池T3を収容する専用正電極と専用負電極との間隔を単3形電池T3に合った狭い間隔にしたので、異なる電池形式の電池の使用を可能にした電池収容ケースにおいて、電池形式の異なる収容部への他の電池形式の電池の誤収容を防止することができる。
なお、上記実施例においては、電池を2本直列に収容する場合を例に説明したが、収容する電池の本数は、1本であってもよく、3本以上を直列に収容するものであってもよい。