(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の天体自動追尾撮影方法及びデジタルカメラの実施形態を説明する。
図1に示すように、本実施形態のデジタルカメラ10(撮影装置)は、カメラボディ11と撮影レンズ101(撮影光学系L)を備えている。カメラボディ11内には、撮影光学系Lの後方に撮像手段として撮像センサ13が配設されている。撮影光学系Lの光軸LOと撮像センサ13の撮像面14とは直交している。この撮像センサ13は、撮像センサ駆動ユニット(移動手段)15に搭載されている。撮像センサ駆動ユニット15は、固定ステージと、この固定ステージに対して可動な可動ステージと、該固定ステージに対して可動ステージを移動させる電磁回路とを有しており、可動ステージに撮像センサ13が保持されている。撮像センサ13(可動ステージ)は、光軸LOと直交する所望の方向に所望の移動速度で平行移動制御され、さらに光軸LOと平行な軸(光軸と直交する面内の何処かに位置する瞬間中心)を中心として所望の回転速度で回転制御される。このような撮像センサ駆動ユニット15は、例えば特許文献3に記載されているカメラの像ブレ補正装置の防振ユニットとして公知である。
【0024】
カメラボディ11には、カメラ全体の機能を制御するCPU21が搭載されている。CPU21は、撮像センサ13を駆動制御し、撮像センサ13が撮影した画像信号を処理してLCDモニタ23に表示するとともに、メモリーカード25に書き込む。CPU21には、撮像センサ駆動ユニット15を防振ユニットとして用いる際にカメラに加わる振れを検出するために、X方向ジャイロセンサGSX、Y方向ジャイロセンサGSY、及び回転検出ジャイロセンサGSRが検出した信号が入力される。
【0025】
カメラボディ11は、スイッチ類として、電源スイッチ27、レリーズスイッチ28、設定スイッチ30を備えている。CPU21は、これらのスイッチ27、28、30のオン/オフ状態に応じた制御を実行する。例えば、電源スイッチ27の操作を受けて、図示しないバッテリからの電力供給をオン/オフし、レリーズスイッチ28の操作を受けて焦点調節処理、測光処理及び撮影処理(天体撮影処理)を実行する。設定スイッチ30は、天体追尾撮影モードや通常撮影モードなどの撮影モードを選択し、設定するスイッチである。
【0026】
カメラボディ11内には、緯度情報入力手段としてのGPSユニット31、方位角情報入力手段としての方位角センサ33、及び撮影仰角情報入力手段としての重力センサ35が内蔵されている。CPU21には、GPSユニット31から緯度情報ε、方位角センサ33から撮影方位角情報A、及び重力センサ35から撮影仰角情報hが入力される。また、重力センサ35は水準機能を有しており、
図11に示すカメラボディ11の姿勢情報をCPU21に与える(重力センサ35がカメラ姿勢情報入力手段として機能する)。カメラ姿勢情報は、カメラボディ11(撮像センサ13)の基準位置からの撮影光軸LOを中心とする回転角情報ξである。カメラボディ11(撮像センサ13)の基準位置は、例えば、矩形の撮像センサの長辺方向を水平方向Xとした位置であり、回転後の長辺方向X'とのなす角ξがこの回転角情報である。
【0027】
以上のGPSユニット31、方位角センサ33、重力センサ35は、カメラボディ11に内蔵する他、いずれか又は全てをカメラボディに対する外付けタイプとしてもよい。具体的には、アクセサリーシュー、又は底板に装着されるブラケットにこれらセンサを装備し、アクセサリーシューの接点を介して、又はUSB等のコネクタを介してCPU21に入力する構成とすることができる。日時はデジタルカメラ10の内蔵時計を利用することができ、緯度情報εは、設定スイッチ30を利用してCPU21に使用者が手入力してもよい。
【0028】
CPU21は、天体追尾撮影するときに、GPSユニット31から入力した緯度情報ε、方位角センサ33から入力した撮影方位角情報A、重力センサ35から入力した撮影仰角情報h及び回転角情報(カメラ姿勢情報)ξ、並びに前述の焦点距離検出装置105から入力した焦点距離情報fに基づいて、撮像センサ駆動ユニット15を駆動制御し、撮像センサ13を平行移動及び回転させる。
【0029】
以上のデジタルカメラ10を用いて行う天体追尾撮影の原理を具体的に説明する。
「北極点(緯度90゜)から撮影する場合」
地球上の北極点(緯度90゜)から撮影する場合とは、地軸(自転軸)の延長上に位置する北極星(天の極)が天頂と一致している状態(
図2)での撮影である。
【0030】
天球を有限の球体と見立てて、実際には無限大となるはずの天球の半径を
図2のように有限の r とおき、デジタルカメラ10の撮影光学系Lの光軸LOと北極星からのずれ角度(天の極方向と撮影光学系光軸との成す角)をθとする。このとき、デジタルカメラ10の撮影仰角hは、90−θ(h=90−θ)である。
【0031】
天球を
図3のように真下から見た場合、すべての天体は北極星(天の極)を中心に円軌道を描く。その円軌道の半径をRと置く。円軌道の半径Rはデジタルカメラ10の撮影仰角hに依存するので、θで表すことができる。円軌道の半径Rは、
R = r × sinθ ・・・(1)
で与えられる。
【0032】
円軌道の1周360°を24時間( = 1440分 = 86400秒)で一回りするとして、t秒でφ゜回転する場合、
φ = 0.004167 × t [deg] ・・・(2)
が成立する。
【0033】
図4のように天体の描く軌道が円軌道であっても、円軌道を真下から見た構図(a1)の場合と、斜めから見た構図(a2)、(a3)、真横から見た構図(a4)の場合はそれぞれ
図5の(a1)乃至(a4)に示したような画像となり、軌跡が異なるという結果が得られる。つまり、天体はあたかも円軌道を描いて動いているように見えるが、実際にカメラで撮影する場合には、カメラの撮影仰角hが結像状態に影響する。
【0034】
これらの軌跡は、円を斜めから見ると楕円に見えることから、Xrを楕円の長軸側の半径、Yrを短軸側の半径として、
Xr = R = r × sinθ ・・・(3)
Yr = R × cosθ= r × sinθ × cosθ ・・・(4)
として求めることができる。
【0035】
そこで、
図3、
図4、
図6に示したように、天体にデジタルカメラ10を向けて、天体(地球)がφ゜回転したときの軌跡をX方向(天球の緯線方向)、Y方向(天球の経線方向)に分割して説明する。X方向の移動量xは、
x = R × sinφ ・・・(5)
となる。Y方向の移動量yは円軌道を見ている方向により異なる。
【0036】
図6中において、矢印(D点からE点)で示した天体の軌跡は、(a1)のように天体の軌跡を真下から見た場合(θ= 0°)に完全な円軌道を描く。実際にはθ= 0では、円の半径Rも0となり点にしか見えないが、ここでは簡単のためRを有限の値で仮定する。このとき、Y方向の移動量yは最大になる。
【0037】
そして、円軌道を構図(a2)、(a3)のように斜めに見ていくと移動量yは小さくなっていくので、構図(a4)のように円軌道を真横から見ると移動量yは最小(=0)となる。Y方向の移動量yの最大量Ymaxは円軌道の場合の
図6から、
Ymax = R - R × cosφ ・・・(6)
となる。よって移動量yは、
y = Ymax × cosθ = (R - R × cosφ) × cosθ ・・・(7)
となる。(5)、(7)式中のRに(1)式を代入すると、移動量x、移動量yは、
x = r × sinθ × sinφ ・・・(8)
y = r × sinθ × cosθ(1 - cosφ) ・・・(9)
となる。
【0038】
実際のデジタルカメラ10を用いて天球に対する計算をするには、天球のX方向、Y方向を撮像面14上に射影した方向に関し、撮像面14上での移動量ΔxとΔyを求める。無限大となる天球半径 r は撮影レンズ101の焦点距離fで表して、
Δx = f × sinθ × sinφ ・・・(10)
Δy = f × sinθ × cosθ(1 - cosφ) ・・・(11)
により、移動量ΔxとΔyを演算する。
つまり、撮像センサ13の光軸直交面内での移動量は、デジタルカメラ10に装着された撮影レンズ101の焦点距離fによって変化する。
【0039】
次に、撮影時に撮像センサ中心を中心として撮像センサ13をどれだけ回転すればよいかを求める。前述のように、デジタルカメラ10から天体を見た場合、天体の軌道は円もしくは楕円軌道として見える。
図7のように点Fの天体が楕円(円)軌道を描いて移動する場合、点Fを撮像センサ中心(撮像面14の中心C)にとらえて、F→F'という移動に対し追尾するならば、撮像センサ中心CをΔx、Δy移動させればよい。しかし、点Fの周囲に例えばJという天体があった場合、点Jは、J→J'へと移動する。この点Jに対しても追尾を行うためには、撮像センサ中心Cを中心として撮像センサ13を回転させればよい。その回転角度は、点F'における楕円の接線Lの傾き角(点Fにおける楕円の接線と点F'における楕円の接線との成す角)αである。以下、カメラボディ11(撮像センサ13)の基準位置において、撮像センサ13の長辺方向をX軸、X軸と直交する短辺方向をY軸とする。
【0040】
図8のようなX-Y座標系と楕円において、楕円上の点Kにおける楕円の接線Lの方程式は、
x0 × x/a
2 + y0 × y/b
2 = 1
となる。
図8において、点a、点bは、式(3)と(4)で示した楕円の長軸側の半径Xr、短軸側の半径Yrに相当する。
【0041】
この接線Lの式をYについての方程式(Y=)の形に変形すると、
Y = -(b
2 × x0)/(a
2 × y0) × x - 1/(a
2 × y0)
となる。この楕円の接線LとX軸の成す角度が、画像中心を回転中心とする画像の回転角αである。
【0042】
楕円の接線Lの傾きに直交する直線Qの傾きは、
-(b
2 × x0)/(a
2 × y0)
となるため、求める回転角αは、
α = arctan( -(b
2 × x0)/(a
2 × y0)) ・・・(12)
となる。
【0043】
「緯度が90°以外の場合」
以上は、撮影地点の緯度が90°(つまり北極星(天の極)が真上にある場合)の説明である。次に、撮影地点の緯度が90°以外の場合について、さらに
図9及び
図10を参照して説明する。
【0044】
北半球における天体撮影の様子を表す
図9において、各符号を以下の通り定義する。
P:天の極
Z:天頂
N:真北
S:対象天体(撮影目標点)(説明の便宜上、この対象天体(恒星)は撮影画面14の中心であり、撮影レンズ101の光軸LOの延長線上に位置するものとする。但し、撮影するにあたり光軸をどれかの天体に一致させる必要が無いことは言うまでも無い)
ε:撮影地点の緯度
A:撮影方位角(撮影レンズ101が狙う天体Sの方位、又は撮影レンズ101の光軸LOと天球との交点の方位角)
h:撮影仰角(撮影レンズ10が狙う天体Sの高度、又は撮影レンズ101の光軸LOと天球との交点の高度)
H:対象天体Sの時角(通常、時角の単位は時間が使われるが、ここでは角度(1時間=15度)に換算して扱うこととする。)
δ:対象天体Sの赤緯
γ:天球面上において、天の極Pと対象天体Sとを最短で結ぶ曲線と、天頂Zと対象天体(恒星)Sとを最短で結ぶ曲線とがなす角。
【0045】
図9において、北極星Pと目標点Sの間の角度である∠POSが求められれば、
図2における角度θを∠POSに置き換えることで天体の軌跡を求めることができる。
【0046】
∠POSは、球の半径を1とした場合の
図10の曲線PSの長さに等しい。よって、∠POSは球面三角の余弦定理を用いて、
cos(∠POS) = cos(90 - ε) × cos(90 - h) + sin(90 - ε) × sin(90 - h)×cos(A)
= sin(ε) × sin(h) + cos(ε) × cos(h) × cos(A)
となるので、
∠POS = arccos[sin(ε) × sin(h) + cos(ε) × cos(h) × cos(A)] ・・・(13)
となる。
ここで、式(8)乃至(11)のθを∠POSで置き換えると、任意の緯度εにおける天体のX方向移動量x、Y方向移動量yを求めることができる。
【0047】
また、カメラ姿勢によって、移動方向の補正を行う必要がある。カメラを水平に構えたまま、撮影仰角hの方向に持ち上げて目標点Sへ向けた場合、水平と目標点Sの赤道がなす角はγとなる。なお、前述のように、カメラ姿勢は、デジタルカメラ10の撮影レンズ光軸LO回りの回転角のことであり、撮像面14の長手方向が水平の場合のカメラ姿勢を水平とする。
球面三角の正接定理より、
tan(γ) = sin(90 - ε) × sin(A)/(cos(90 - ε) × sin(90 - h) - sin(90 - ε)× cos(90 - h) × cos(A))
= cos(ε) × sin(A)/(sin(ε) × cos(h) - cos(ε) × sin(h) × cos(A))
となり、
γ = arctan[cos(ε) × sin(A)/(sin(ε) × cos(h) - cos(ε) × sin(h) × cos(A))] ・・・(14)
となる。
【0048】
よって、上記で求めたこのγを用いて、天体の移動量x、yを撮像面上の座標(カメラ(撮像素子)の縦横座標)における横方向移動量Δx、縦方向移動量Δyに変換するには、下記式(I)、(II)を使用する。
Δx = x × cos(γ) + y × sin(γ) ・・・(I)
Δy = x × sin(γ) + y × cos(γ) ・・・(II)
【0049】
また、
図11に示したように、デジタルカメラ10のカメラ姿勢(撮像センサ13)が撮影レンズ光軸LO回りに水平からξ傾いている(回転している)場合は、式(III)、(IV)によって撮像センサ13の横方向、縦方向移動量Δx、Δyを補正することができる。
Δx = x × cos(γ + ξ) + y × sin(γ + ξ) ・・・(III)
Δy= x × sin(γ + ξ) + y × cos(γ + ξ) ・・・(IV)
【0050】
以上の撮像センサ13の回転角α、横方向移動量Δx、縦方向移動量Δyは、次のように算出される。
【0051】
天球の北極点Pの方向は、日時にかかわらず変化しないと見なすことができるので、撮影地点の緯度から演算によって算出できる。さらに天頂Zの方向も、緯度から算出できる。従って、先ず、目標とする天体が撮像面14に投影されるように、デジタルカメラ10の構図を決めて固定する。このデジタルカメラ10の構図において、CPU21に、GPSユニット31から撮影地点の緯度情報εを入力し、方位角センサ33からデジタルカメラ10の撮影方位角情報Aを入力し、重力センサ35から撮影仰角情報h及び回転角情報(カメラ姿勢情報)ξを入力する。CPU21は、これらの入力情報から、
図9、
図10に示したように、天頂の点Z、天の極の点P、撮影画面中心の天体の点Sの位置を求める。
【0052】
以上の3点Z、P、Sが求まれば、CPU21は、焦点距離検出装置105から入力した撮影レンズ101の焦点距離情報f及び回転角情報(カメラ姿勢情報)ξから、撮像センサ13の回転角α、横方向移動量Δx、縦方向移動量Δyを算出する。CPU21は、この算出した回転角α、横方向移動量Δx、縦方向移動量Δyに基づく移動軌跡に合わせて撮像センサ13を平行移動制御及び回転移動制御しながら(このときデジタルカメラ10の向きは固定である)露出を行うことで、天体の追尾撮影が可能となる。
【0053】
以上のように、撮像センサ13を、光軸LOに直交する平面上でXY方向移動及び回転運動もできるように構成された撮像センサ駆動ユニット15を備えたデジタルカメラ10では、機構的には上記の天体追尾撮影を、カメラボディ11は地上に固定のままで、撮像センサ13だけを所定の方向に所定の軌跡で移動させることで実現できる。
【0054】
一方、撮像センサ駆動ユニット15による撮像センサ13の可動範囲には機械的リミットがある。この機械的リミットにより露出時間が制限される。各機械的リミットのうちX方向をLx、Y方向をLy、回転の機械的リミットをLαとすると、それぞれのリミットに達するまでの時間Tlimitは式(12)、(III)、(IV)のαにLα、ΔxにLx、ΔyにLyを代入し、Tについて逆算することで算出できる。その時得られたΔx、Δy、αについての時間TlimitをそれぞれTlimit(Δx)、Tlimit(Δy)、Tlimit(α)とする。上記の3つの時間Tlimit(Δx)、Tlimit(Δy)、Tlimit(α)のうち最小値を機械的リミットにより制限された最長露出時間Tlimitとする。
【0055】
このデジタルカメラ10による天体撮影(天体追尾撮影)について、
図12及び
図13に示したフローチャートを参照して説明する。
図12に示すように、設定スイッチ30により通常撮影モードが設定されて電源スイッチ27がオンされた状態では(S101、S103:NO)、レリーズスイッチ28をオンすることにより通常の撮影が行われる(S105:YES、S107:NO、S111)。電源スイッチ27がオフされたときは撮影動作が終了する(S103:YES)。レリーズスイッチ28がオンされないときは撮影が行われない(S105:NO)。この撮影動作は一般的なデジタルカメラ10によるそれと同じである。
【0056】
一方、設定スイッチ30により天体追尾撮影モードが設定されて電源スイッチ27がオンされた状態では(S101、S103:NO)、対象天体(恒星)S(
図9、
図10)を撮像センサ13の撮像面14にとらえてレリーズスイッチ28をオンすることにより、本実施形態の天体追尾撮影が行われる(S105:YES、107:YES、S109)。このとき、任意の長秒時の露出時間Tが撮影者によってカメラに対して設定される。なお、デジタルカメラ10にAF装置及びAF対応撮影レンズ101が備えられている場合は、天体追尾撮影モードが設定されたときは、焦点を無限遠合焦状態に固定(あるいは撮影者に無限遠合焦状態に設定することを促す動作を)することが好ましい。少なくとも、天体追尾撮影処理の前に無限遠合焦処理を実行することが好ましい。
【0057】
次に、本実施形態の天体追尾撮影(S109)について、
図13に示したフローチャートを参照してより詳細に説明する。
【0058】
天体追尾撮影処理に入った時点では、撮像センサ駆動ユニット15の初期化が実行されており、撮像センサ13は、撮像面14の中心Cが光軸LOに一致した状態で保持されている(S201)。
【0059】
この初期化状態でCPU21は、GPSユニット31から緯度情報εを入力し、方位角センサ33から撮影方位角情報Aを入力し、重力センサ35から撮影仰角情報h及び回転角情報(カメラ姿勢情報)ξを入力し、焦点距離検出装置105から焦点距離情報fを入力する(S203)。
【0060】
次いでCPU21は、入力した緯度情報ε、撮影方位角情報A、撮影仰角情報h、回転角情報(カメラ姿勢情報)ξ、及び焦点距離情報fと、撮像センサ駆動ユニット15による撮像センサ13の可動範囲の機械的リミットとから、最長露出時間(露出限界時間)Tlimitを算出する(S205)。
【0061】
次いでCPU21は、撮影者が設定した任意の露出時間Tが最長露出時間Tlimit以内か否かを判定する(S207)。CPU21は、露出時間Tが最長露出時間Tlimit以内である場合には、その露出時間Tを天体追尾撮影中の露出時間として設定する(S207:YES)。一方、CPU21は、露出時間Tが最長露出時間Tlimitを超えている場合には(S207:NO)、最長露出時間Tlimitを天体追尾撮影中の露出時間として設定する(S209)。そしてCPU21は、設定した露出時間だけ、図示しないシャッタを開放して、撮像センサ13による撮像を開始する(S211)。なお、絞りは、通常、開放状態で撮影されるが、撮影者により任意に設定可能である。
【0062】
CPU21は、GPSユニット31から入力した撮影地点の緯度情報ε、方位角センサ33から入力したデジタルカメラ10の撮影方位角情報A、重力センサ35から入力した撮影仰角情報h及び回転角情報(カメラ姿勢情報)ξから、天頂の点Z、天の極の点P、撮影画面中心の天体の点Sの位置を求める(
図9、
図10)。CPU21は、求めた3点Z、P、Sと、焦点距離検出装置105から入力した撮影レンズ101の焦点距離情報f及び回転角情報(カメラ姿勢情報)ξから、撮像センサ13の回転角α、横方向移動量Δx、縦方向移動量Δyを算出する(S213)。
【0063】
そしてCPU21は、設定した露出時間が経過するまで、算出した撮像センサ13の回転角α、横方向移動量Δx、縦方向移動量Δyに基づく移動軌跡に合わせて撮像センサ13を平行移動制御及び回転移動制御しながら露出を行う(S215、S217:NO)。これにより、デジタルカメラ10を固定した状態で撮影するだけで各天体を見かけ上静止した状態で撮影することができる。この露出時間中に、CPU21は、撮像センサ13の回転角α、横方向移動量Δx、縦方向移動量Δyを、設定した露出時間内における露出開始からの経過時間に応じて複数回に亘って算出及び更新する。CPU21の演算スピード、移動周期(頻度)、空きメモリー量によっては、露出開始時に既に全露出時間内の移動データを算出してメモリーしておき、露出開始からの経過時間に応じて、移動の都度、メモリーから移動データを読み出して撮像センサ13を移動制御することも可能である。このようにすれば、露出時間中において、撮像センサ13の回転角α、横方向移動量Δx、縦方向移動量Δyを算出及び更新する必要がなくなる。
【0064】
CPU21は、設定した露出時間が経過したら(S217:YES)、図示しないシャッタを閉じて露出を終了する(S219)。CPU21は、撮像センサ13から撮影画像データを読み出して(S221)、ホワイトバランス調整や所定フォーマットへの変更等の画像処理を施す(S223)。最後にCPU21は、画像処理後の撮影画像データをLCDモニタ23に表示するとともに、所定フォーマットの画像ファイルとしてメモリーカード25に保存する(S225)。
【0065】
以上の通り本実施形態の天体自動追尾撮影方法及びカメラによれば、撮影地点の緯度情報ε、撮影方位角情報A、撮影仰角情報h、撮影装置の姿勢情報ξ、及び撮影光学系101の焦点距離情報fを入力し、入力した全情報(ε、A、h、ξ、f)を用いて、天体像を撮像センサ13の所定の撮像領域に対して固定するためのデジタルカメラ(撮影装置)10に対する天体像の相対移動量(回転角α、横方向移動量Δx、縦方向移動量Δy)を算出し、算出した相対移動量(回転角α、横方向移動量Δx、縦方向移動量Δy)に基づき、所定の撮像領域と天体像の少なくとも一方を移動させて撮影している。これにより、天体の運動に応じて撮像センサ13上の天体像が移動しないように、つまり、日周運動に同期して撮像センサ13を移動するので、デジタルカメラ10を固定した状態で、長時間露出しても天体が流れない天体自動追尾撮影が可能になる。
【0066】
なお、デジタルカメラ(撮影装置)10の姿勢を変えることなく撮像センサ13の移動量を算出した直後に露出を行うような場合には、撮像センサ13の回転角α、横方向移動量Δx、縦方向移動量Δyを算出する処理(S213)を露出開始前(S211の前)に実行して最長露出時間Tlimit分の駆動データを予め算出してもよい。そしてこの駆動データをカメラ内蔵メモリーに記憶しておき、露出中にこのカメラ内蔵メモリーからデータを順次読み出して撮像センサ駆動ユニット15を介して撮像センサ13を移動制御する構成でもよい。
【0067】
以上の実施形態では、CPU21による撮像センサ駆動ユニット15の駆動制御により、撮像センサ13を物理的に平行移動及び回転させている。しかし、撮像センサ13の所定の撮像領域を、撮像センサ13の全撮像領域(撮像面14の全領域)の一部を電子的にトリミングしたトリミング領域とし、算出した相対移動量(回転角α、横方向移動量Δx、縦方向移動量Δy)に基づいてこのトリミング領域を、撮影光学系101の光軸LOに対して直交する方向に平行移動及びこの光軸LOと平行な軸回りに回転移動させながら撮影して、天体を点として撮影する構成も可能である。この態様にあっては、
図1においてCPU21が、所定の駆動周期で撮像センサ13にトリミング指示信号を送ることにより、撮像センサ13のトリミング領域を撮影光学系101の光軸LOに対して直交する方向に平行移動及びこの光軸LOと平行な軸回りに回転移動させながら撮影することができる。
【0068】
以上のデジタルカメラ10は、撮像センサ13を光軸と直交する方向及び光軸と平行な軸回りに回転させる撮像センサ駆動ユニット15を備えたが、この撮像センサ駆動ユニット15を省略して、撮影レンズ101内に撮像センサ13上の被写体位置を移動させる像ブレ補正レンズ(防振レンズ)102を搭載した像ブレ補正装置と、撮像センサを回転させる撮像センサ回転機構とを組み合わせても、またはトリミング領域を回転移動させる形態と組み合わせても、本発明のデジタルカメラは構成することができる。
図14はその実施形態を示しており、CPU21が撮影レンズ101のレンズCPU103に防振駆動指示信号を送ることにより、レンズCPU103が防振駆動ユニット104を介して像ブレ補正レンズ102を光軸直交方向に駆動制御する。一方、CPU21が、所定の駆動周期で撮像センサ13に回転指示信号を送ることにより、撮像センサを光軸LOと平行な軸回りに回転移動させる。あるいは、CPU21が、所定の駆動周期で撮像センサ13にトリミング指示信号を送ることにより、撮像センサ13のトリミング領域を撮影光学系101の光軸LOと平行な軸回りに回転移動させる。
【0069】
また、本実施形態の説明ではカメラとしてデジタルカメラを示したが、レンズ交換式の一眼レフデジタルカメラ、レンズシャッタ式コンパクトデジタルカメラに限らず、撮像手段(撮像素子)を光軸と直交する面内において光軸と直交する任意の方向に移動、回転が駆動可能な撮影装置一般に適用できる。