特許第5773053号(P5773053)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5773053
(24)【登録日】2015年7月10日
(45)【発行日】2015年9月2日
(54)【発明の名称】光配向装置及び光配向方法
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/1337 20060101AFI20150813BHJP
【FI】
   G02F1/1337
【請求項の数】10
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2014-247489(P2014-247489)
(22)【出願日】2014年12月6日
【審査請求日】2014年12月15日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000102212
【氏名又は名称】ウシオ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100097548
【弁理士】
【氏名又は名称】保立 浩一
(72)【発明者】
【氏名】石井 一正
【審査官】 弓指 洋平
(56)【参考文献】
【文献】 特許第5344105(JP,B1)
【文献】 特開2003−289098(JP,A)
【文献】 特開2004−073925(JP,A)
【文献】 特開2014−174287(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/1337
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
設定された照射領域に所定の向きに偏光している偏光光を照射する照射ユニットと、
基板が載置されるステージと、
照射領域を通過するようステージを移動させることでステージ上の基板に偏光光が照射されるようにするステージ移動機構とを備えており、
ステージとして第一第二の二つのステージが設けられており、
ステージ移動機構は、照射領域の一方の側に設定された第一の基板搭載位置から第一のステージを照射領域に移動させるものであるとともに、照射領域の他方の側に設定された第二の基板搭載位置から第二のステージを照射領域に移動させるものであり、
ステージ移動機構は、第一のステージ上の基板が照射領域を通過した後に第一のステージを一方の側に戻して第一の基板回収位置に位置させるとともに、第二のステージ上の基板が照射領域を通過した後に第二のステージを他方の側に戻して第二の基板回収位置に位置させるものであり、
第一の基板搭載位置又は第一の基板回収位置に位置した第一のステージと照射領域の間には、第二のステージ上の基板が照射領域を通過する分以上の第一の退避スペースが確保され、第二の基板搭載位置又は第二の基板回収位置に位置した第二のステージと照射領域の間には、第一のステージ上の基板が照射領域を通過する分以上の第二の退避スペースが確保されており、
ステージ移動機構を制御する制御ユニットが設けられており、
制御ユニットにおいて、基板が照射領域を通過する際の速度として設定通過速度が設定されており、
制御ユニットは、第一のステージの第一の基板搭載位置から照射領域までの移動及び照射領域から第一の基板回収位置までの移動について当該移動の速度を設定通過速度に比べて速くする制御を行うものであるとともに、第二のステージの第二の基板搭載位置から照射領域までの移動及び照射領域から第二の基板回収位置までの移動について当該移動の速度を設定通過速度に比べて速くする制御を行うものであり、
第一第二のステージは、移動の際に基板を真空吸着して保持するものであり、
制御ユニットは、第一のステージの第一の基板搭載位置から照射領域までの移動及び第二のステージの第二の基板搭載位置から照射領域までの移動において、移動の速度を毎秒300mm以上600mm以下とする制御を行うものであることを特徴とする光配向装置。
【請求項2】
前記設定通過速度は一定の速度として設定されたものであり、
前記制御ユニットは、前記第一の基板搭載位置から前記照射領域までの往路移動において、前記第一のステージ上の基板の移動方向前方の縁が前記照射領域に達するまでに前記第一のステージの速度を前記設定通過速度に減速し、当該基板の移動方向前方の縁が前記照射領域に達してから移動方向後方の縁が前記照射領域を通過するまでの間、前記設定通過速度を維持し、当該基板の移動方向後方の縁が前記照射領域を通過した後に前記一方の側に戻すために減速する制御を行うものであり、
前記制御ユニットは、前記第二の基板搭載位置から前記照射領域までの往路移動において、前記第二のステージ上の基板の移動方向前方の縁が前記照射領域に達するまでに前記第二のステージの速度を前記設定通過速度に減速し、当該基板の移動方向前方の縁が前記照射領域に達してから移動方向後方の縁が前記照射領域を通過するまでの間、前記設定通過速度を維持し、当該基板の移動方向後方の縁が前記照射領域を通過した後に前記他方の側に戻すために減速する制御を行うものであることを特徴とする請求項1記載の光配向装置。
【請求項3】
前記照射ユニットは、前記第一第二の各ステージが往路移動する際と復路移動する際の双方において前記各ステージ上の基板に偏光光を照射するものであり、
前記制御ユニットにおいて、前記第一のステージが往路移動する際の設定通過速度と前記第一のステージが復路移動する際の設定通過速度として同じ速度が設定されており、前記第二のステージが往路移動する際の設定通過速度と前記第二のステージが復路移動する際の設定通過速度として同じ速度が設定されていることを特徴とする請求項2記載の光配向装置。
【請求項4】
前記制御ユニットにおいて、前記第一のステージが照射領域を通過した後に一方の側に戻すために反転する位置である第一の反転位置と、前記第二のステージが照射領域を通過した後に他方の側に戻すために反転する位置である第二の反転位置とが設定されており、
前記制御ユニットにおいて、前記第一のステージが前記照射領域を通過した後に第一の反転位置に達する際の減速と、前記第一のステージが第一の反転位置で反転して前記照射領域に達する際の加速とは、同じ勾配になるよう設定されており、
前記制御ユニットにおいて、前記第二のステージが前記照射領域を通過した後に第二の反転位置に達する際の減速と、前記第二のステージが第二の反転位置で反転して前記照射領域に達する際の加速とは、同じ勾配になるよう設定されていることを特徴とする請求項3記載の光配向装置。
【請求項5】
前記制御ユニットにおいて、
前記第一のステージについての前記第一の基板搭載位置から前記照射領域までの移動の速度と、前記照射領域から前記第一の基板回収位置までの移動の速度として、同じ速度が設定されており、
前記第二のステージについての前記第二の基板搭載位置から前記照射領域までの移動の速度と、前記照射領域から前記第二の基板回収位置までの移動の速度として、同じ速度が設定されており、
前記第一のステージが往路移動において前記照射領域に到達する際の前記設定通過速度への減速と、前記第一のステージが復路移動において前記照射領域を通過した後の前記設定通過速度からの加速は、同じ勾配となるよう設定されており、
前記第二のステージが往路移動において前記照射領域に到達する際の前記設定通過速度への減速と、前記第二のステージが復路移動において前記照射領域を通過した後の前記設定通過速度からの加速は、同じ勾配となるよう設定されていることを特徴とする請求項4記載の光配向装置。
【請求項6】
設定された照射領域に所定の向きに偏光している偏光光を照射する照射工程と、
第一第二の二つのステージにそれぞれ基板を載置する搭載工程と、
照射領域を各ステージが交互に通過するようステージ移動機構により各ステージを移動させることで各ステージ上の基板に偏光光が照射されるようにする移動工程と、
偏光光が照射された各基板を各ステージから取り去る回収工程と
を備えており、
移動工程において、照射領域の一方の側に設定された第一の基板搭載位置から第一のステージは照射領域に移動し、照射領域の他方の側に設定された第二の基板搭載位置から第二のステージは照射領域に移動し、
移動工程において、第一のステージ上の基板が照射領域を通過した後に第一のステージは一方の側に戻されて第一の基板回収位置に位置し、第二のステージ上の基板が照射領域を通過した後に第二のステージは他方の側に戻されて第二の基板回収位置に位置し、
第一の基板搭載位置又は第一の基板回収位置に位置した第一のステージと照射領域の間には、第二のステージ上の基板が照射領域を通過する分以上の第一の退避スペースが確保され、第二の基板搭載位置又は第二の基板回収位置に位置した第二のステージと照射領域の間には、第一のステージ上の基板が照射領域を通過する分以上の第二の退避スペースが確保されており、
基板が照射領域を通過する際の速度として設定通過速度が設定されており、
移動工程において、第一のステージの第一の基板搭載位置から照射領域までの移動及び照射領域から第一の基板回収位置までの移動について当該移動の速度を設定通過速度に比べて速くする制御を行い、第二のステージの第二の基板搭載位置から照射領域までの移動及び照射領域から第二の基板回収位置までの移動について当該移動の速度を設定通過速度に比べて速くする制御を行う方法であり、
移動工程は、第一第二の各ステージが基板を真空吸着して保持した状態で移動を行う工程であり、第一のステージの第一の基板搭載位置から照射領域までの移動の速度と、第二のステージの第二の基板搭載位置から照射領域までの移動の速度は、毎秒300mm以上600mm以下であることを特徴とする光配向方法。
【請求項7】
前記設定通過速度は一定の速度として設定されたものであり、
前記移動工程において行われる制御は、前記第一の基板搭載位置から前記照射領域までの前記第一のステージの往路移動において、前記第一のステージ上の基板の移動方向前方の縁が照射領域に達するまでに前記第一のステージの速度を前記設定通過速度に減速し、当該基板の移動方向前方の縁が前記照射領域に達してから移動方向後方の縁が前記照射領域を通過するまでの間、前記設定通過速度を維持し、当該基板の移動方向後方の縁が前記照射領域を通過した後に前記一方の側に戻すための減速を行う制御であり、
前記移動工程において行われる制御は、前記第二の基板搭載位置から前記照射領域までの前記第二のステージの往路移動において、前記第二のステージ上の基板の移動方向前方の縁が前記照射領域に達するまでの間に前記第二のステージの速度を前記設定通過速度に減速し、当該基板の移動方向前方の縁が前記照射領域に達してから移動方向後方の縁が前記照射領域を通過するまでの間、前記設定通過速度を維持し、当該基板の移動方向後方の縁が前記照射領域を通過した後に前記他方の側に戻すための減速を行う制御であることを特徴とする請求項記載の光配向方法。
【請求項8】
前記移動工程において、前記第一のステージが往路移動する際の設定通過速度と前記第一のステージが復路移動する際の設定通過速度は同じ速度であり、前記第二のステージが往路移動する際の設定通過速度と前記第二のステージが復路移動する際の設定通過速度は同じ速度であることを特徴とする請求項7記載の光配向方法。
【請求項9】
前記移動工程は、前記第一のステージが、前記照射領域を通過した後に一方の側に戻るために第一の反転位置で反転し、前記第二のステージが、前記照射領域を通過した後に他方の側に戻るために第二の反転位置で反転する工程であり、
前記第一のステージが前記照射領域を通過した後に第一の反転位置に達する際の減速と、前記第一のステージが第一の反転位置で反転して前記照射領域に達する際の加速とは、同じ勾配であり、
前記第二のステージが前記照射領域を通過した後に第二の反転位置に達する際の減速と、前記第二のステージが第二の反転位置で反転して前記照射領域に達する際の加速とは、同じ勾配であることを特徴とする請求項8記載の光配向方法。
【請求項10】
前記移動工程において、
前記第一のステージの前記第一の基板搭載位置から前記照射領域までの移動の速度と、前記第一のステージの前記照射領域から前記第一の基板回収位置までの移動の速度は、同じ速度であり、
前記第二のステージの前記第二の基板搭載位置から前記照射領域までの移動の速度と、前記第二のステージの前記照射領域から前記第二の基板回収位置までの移動の速度は、同じ速度であり、
前記第一のステージが往路移動において前記照射領域に到達する際の前記設定通過速度への減速と、前記第一のステージが復路移動において前記照射領域を通過した後の前記設定通過速度からの加速は、同じ勾配であり、
前記第二のステージが往路移動において前記照射領域に到達する際の前記設定通過速度への減速と、前記第二のステージが復路移動において前記照射領域を通過した後の前記設定通過速度からの加速は、同じ勾配であることを特徴とする請求項9記載の光配向方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この出願の発明は、配向膜を得る方法として知られる光配向の技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶パネルを始めとする液晶表示素子の配向膜や、視野角補償フィルムの配向層を得る際、光照射により配向を行なう光配向と呼ばれる技術が採用されるようになってきた。以下、光照射により配向を生じさせた膜や層を総称して光配向膜と呼ぶ。なお、「配向」ないし「配向処理」とは、対象物の何らかの性質について方向性を与えることである。
光配向は、光配向膜用の膜(以下、膜材)に対して偏光光を照射することにより行われる。膜材は、例えばポリイミドのような樹脂製であり、所望の方向(配向させるべき方向)に偏光させた偏光光が膜材に照射される。所定の波長の偏光光の照射により、膜材の分子構造(例えば側鎖)が偏光光の向きに揃った状態となり、光配向膜が得られる。
【0003】
光配向膜は、それが使用される液晶パネルの大型化とともに大型化している。また、一枚の液晶基板から多数の液晶表示素子を産出するため、処理対象物としての液晶基板が大型化しており、それに伴い、大きな対象領域について光配向処理を行うことが必要になってきている。このような事情のため、光配向において要求される偏光光の照射領域の幅は、1500mmないしそれ以上に幅広化してきている。このような幅の広い照射領域において偏光光を照射する光配向装置として、例えば特許文献1に開示された装置がある。この装置は、照射領域の幅に相当する長さの棒状の光源と、この光源からの光を偏光するワイヤーグリッド偏光素子とを備え、光源の長手方向に対して直交する方向に搬送される膜材に対して偏光光を照射する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5344105号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような光配向装置において、ワークとしては、膜材が連続して連なった長尺なものである場合と、膜材が基板上に既に設けられていて膜材付き基板がワークである場合とがある。
このうち、特許文献1には、膜材が設けられている液晶表示素子用の基板をワークとしてステージに配置し、ステージを移動させて基板が照射領域を通過するようにし、これにより光配向を行う技術が開示されている。同文献の装置は、二つのステージを使用しており、交互に照射領域を通過させながら偏光光照射をしており、このため、タクトタイムの短縮による高い生産性が実現できるとされている。
この出願の発明は、上記特許文献1に開示されたタクトタイム短縮による高生産性プロセスの実現を考慮に入れながら、さらに生産性を向上させたり、光配向処理の品質をさらに高めたりすることを解決課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本願の請求項1記載の発明は、設定された照射領域に所定の向きに偏光している偏光光を照射する照射ユニットと、
基板が載置されるステージと、
照射領域を通過するようステージを移動させることでステージ上の基板に偏光光が照射されるようにするステージ移動機構とを備えており、
ステージとして第一第二の二つのステージが設けられており、
ステージ移動機構は、照射領域の一方の側に設定された第一の基板搭載位置から第一のステージを照射領域に移動させるものであるとともに、照射領域の他方の側に設定された第二の基板搭載位置から第二のステージを照射領域に移動させるものであり、
ステージ移動機構は、第一のステージ上の基板が照射領域を通過した後に第一のステージを一方の側に戻して第一の基板回収位置に位置させるとともに、第二のステージ上の基板が照射領域を通過した後に第二のステージを他方の側に戻して第二の基板回収位置に位置させるものであり、
第一の基板搭載位置又は第一の基板回収位置に位置した第一のステージと照射領域の間には、第二のステージ上の基板が照射領域を通過する分以上の第一の退避スペースが確保され、第二の基板搭載位置又は第二の基板回収位置に位置した第二のステージと照射領域の間には、第一のステージ上の基板が照射領域を通過する分以上の第二の退避スペースが確保されており、
ステージ移動機構を制御する制御ユニットが設けられており、
制御ユニットにおいて、基板が照射領域を通過する際の速度として設定通過速度が設定されており、
制御ユニットは、第一のステージの第一の基板搭載位置から照射領域までの移動及び照射領域から第一の基板回収位置までの移動について当該移動の速度を設定通過速度に比べて速くする制御を行うものであるとともに、第二のステージの第二の基板搭載位置から照射領域までの移動及び照射領域から第二の基板回収位置までの移動について当該移動の速度を設定通過速度に比べて速くする制御を行うものであり、
第一第二のステージは、移動の際に基板を真空吸着して保持するものであり、
制御ユニットは、第一のステージの第一の基板搭載位置から照射領域までの移動及び第二のステージの第二の基板搭載位置から照射領域までの移動において、移動の速度を毎秒300mm以上600mm以下とする制御を行うものであるという構成を有する。
また、上記課題を解決するため、請求項2記載の発明は、前記請求項1の構成において、前記設定通過速度は一定の速度として設定されたものであり、
前記制御ユニットは、前記第一の基板搭載位置から前記照射領域までの往路移動において、前記第一のステージ上の基板の移動方向前方の縁が前記照射領域に達するまでに前記第一のステージの速度を前記設定通過速度に減速し、当該基板の移動方向前方の縁が前記照射領域に達してから移動方向後方の縁が前記照射領域を通過するまでの間、前記設定通過速度を維持し、当該基板の移動方向後方の縁が前記照射領域を通過した後に前記一方の側に戻すために減速する制御を行うものであり、
前記制御ユニットは、前記第二の基板搭載位置から前記照射領域までの往路移動において、前記第二のステージ上の基板の移動方向前方の縁が前記照射領域に達するまでに前記第二のステージの速度を前記設定通過速度に減速し、当該基板の移動方向前方の縁が前記照射領域に達してから移動方向後方の縁が前記照射領域を通過するまでの間、前記設定通過速度を維持し、当該基板の移動方向後方の縁が前記照射領域を通過した後に前記他方の側に戻すために減速する制御を行うものであるという構成を有する。
また、上記課題を解決するため、請求項3記載の発明は、請求項2の構成において、前記照射ユニットは、前記第一第二の各ステージが往路移動する際と復路移動する際の双方において前記各ステージ上の基板に偏光光を照射するものであり、
前記制御ユニットにおいて、第一のステージが往路移動する際の設定通過速度と第一のステージが復路移動する際の設定通過速度として同じ速度が設定されており、第二のステージが往路移動する際の設定通過速度と第二のステージが復路移動する際の設定通過速度として同じ速度が設定されているという構成を有する。
また、上記課題を解決するため、請求項4記載の発明は、前記請求項3の構成であって、前記制御ユニットにおいて、
前記第一のステージについての前記第一の基板搭載位置から前記照射領域までの移動の速度と、前記照射領域から前記第一の基板回収位置までの移動の速度として、同じ速度が設定されており、
前記第二のステージについての前記第二の基板搭載位置から前記照射領域までの移動の速度と、前記照射領域から前記第二の基板回収位置までの移動の速度として、同じ速度が設定されており、
前記第一のステージが往路移動において前記照射領域に到達する際の前記設定通過速度への減速と、前記第一のステージが復路移動において前記照射領域を通過した後の前記設定通過速度から加速とは、同じ勾配となるよう設定されており、
前記第二のステージが往路移動において前記照射領域に到達する際の前記設定通過速度への減速と、前記第二のステージが復路移動において前記照射領域を通過した後の前記設定通過速度から加速とは、同じ勾配となるよう設定されているという構成を有する。
また、上記課題を解決するため、請求項5記載の発明は、前記請求項4の構成であって、前記制御ユニットにおいて、
前記第一のステージについての前記第一の基板搭載位置から前記照射領域までの移動の速度と、前記照射領域から前記第一の基板回収位置までの移動の速度として、同じ速度が設定されており、
前記第二のステージについての前記第二の基板搭載位置から前記照射領域までの移動の速度と、前記照射領域から前記第二の基板回収位置までの移動の速度として、同じ速度が設定されており、
前記第一のステージが往路移動において前記照射領域に到達する際の前記設定通過速度への減速と、前記第一のステージが復路移動において前記照射領域を通過した後の前記設定通過速度からの加速は、同じ勾配となるよう設定されており、
前記第二のステージが往路移動において前記照射領域に到達する際の前記設定通過速度への減速と、前記第二のステージが復路移動において前記照射領域を通過した後の前記設定通過速度からの加速は、同じ勾配となるよう設定されているという構成を有する。
また、上記課題を解決するため、請求項記載の発明は、設定された照射領域に所定の向きに偏光している偏光光を照射する照射工程と、
第一第二の二つのステージにそれぞれ基板を載置する搭載工程と、
照射領域を各ステージが交互に通過するようステージ移動機構により各ステージを移動させることで各ステージ上の基板に偏光光が照射されるようにする移動工程と、
偏光光が照射された各基板を各ステージから取り去る回収工程と
を備えており、
移動工程において、照射領域の一方の側に設定された第一の基板搭載位置から第一のステージは照射領域に移動し、照射領域の他方の側に設定された第二の基板搭載位置から第二のステージは照射領域に移動し、
移動工程において、第一のステージ上の基板が照射領域を通過した後に第一のステージは一方の側に戻されて第一の基板回収位置に位置し、第二のステージ上の基板が照射領域を通過した後に第二のステージは他方の側に戻されて第二の基板回収位置に位置し、
第一の基板搭載位置又は第一の基板回収位置に位置した第一のステージと照射領域の間には、第二のステージ上の基板が照射領域を通過する分以上の第一の退避スペースが確保され、第二の基板搭載位置又は第二の基板回収位置に位置した第二のステージと照射領域の間には、第一のステージ上の基板が照射領域を通過する分以上の第二の退避スペースが確保されており、
基板が照射領域を通過する際の速度として設定通過速度が設定されており、
移動工程において、第一のステージの第一の基板搭載位置から照射領域までの移動及び照射領域から第一の基板回収位置までの移動について当該移動の速度を設定通過速度に比べて速くする制御を行い、第二のステージの第二の基板搭載位置から照射領域までの移動及び照射領域から第二の基板回収位置までの移動について当該移動の速度を設定通過速度に比べて速くする制御を行う方法であり、
移動工程は、第一第二の各ステージが基板を真空吸着して保持した状態で移動を行う工程であり、第一のステージの第一の基板搭載位置から照射領域までの移動の速度と、第二のステージの第二の基板搭載位置から照射領域までの移動の速度は、毎秒300mm以上600mm以下であるという構成を有する。
また、上記課題を解決するため、請求項記載の発明は、前記請求項の構成において、前記設定通過速度は一定の速度として設定されたものであり、
前記移動工程において行われる制御は、前記第一の基板搭載位置から前記照射領域までの前記第一のステージの往路移動において、前記第一のステージ上の基板の移動方向前方の縁が照射領域に達するまでに前記第一のステージの速度を前記設定通過速度に減速し、当該基板の移動方向前方の縁が前記照射領域に達してから移動方向後方の縁が前記照射領域を通過するまでの間、前記設定通過速度を維持し、当該基板の移動方向後方の縁が前記照射領域を通過した後に前記一方の側に戻すための減速を行う制御であり、
前記移動工程において行われる制御は、前記第二の基板搭載位置から前記照射領域までの前記第二のステージの往路移動において、前記第二のステージ上の基板の移動方向前方の縁が前記照射領域に達するまでの間に前記第二のステージの速度を前記設定通過速度に減速し、当該基板の移動方向前方の縁が前記照射領域に達してから移動方向後方の縁が前記照射領域を通過するまでの間、前記設定通過速度を維持し、当該基板の移動方向後方の縁が前記照射領域を通過した後に前記他方の側に戻すための減速を行う制御であるという構成を有する。
また、上記課題を解決するため、請求項8記載の発明は、前記請求項7の構成において、前記移動工程は、前記第一第二の各ステージが往路移動する際と復路移動する際とで各ステージ上の基板に偏光光が照射されるようにする工程であり、
前記移動工程において、前記第一のステージが往路移動する際の設定通過速度と前記第一のステージが復路移動する際の設定通過速度は同じ速度であり、前記第二のステージが往路移動する際の設定通過速度と前記第二のステージが復路移動する際の設定通過速度は同じ速度であるという構成を有する。
また、上記課題を解決するため、請求項9記載の発明は、前記請求項8の構成において、前記移動工程は、前記第一のステージが、前記照射領域を通過した後に一方の側に戻るために第一の反転位置で反転し、前記第二のステージが、前記照射領域を通過した後に他方の側に戻るために第二の反転位置で反転する工程であり、
前記第一のステージが前記照射領域を通過した後に第一の反転位置に達する際の減速と、前記第一のステージが第一の反転位置で反転して前記照射領域に達する際の加速とは、同じ勾配であり、
前記第二のステージが前記照射領域を通過した後に第二の反転位置に達する際の減速と、前記第二のステージが第二の反転位置で反転して前記照射領域に達する際の加速とは、同じ勾配であるという構成を有する。
また、上記課題を解決するため、請求項10記載の発明は、前記請求項9の構成であって、前記移動工程において、
前記第一のステージの前記第一の基板搭載位置から前記照射領域までの移動の速度と、前記第一のステージの前記照射領域から前記第一の基板回収位置までの移動の速度は、同じ速度であり、
前記第二のステージの前記第二の基板搭載位置から前記照射領域までの移動の速度と、前記第二のステージの前記照射領域から前記第二の基板回収位置までの移動の速度は、同じ速度であり、
前記第一のステージが往路移動において前記照射領域に到達する際の前記設定通過速度への減速と、前記第一のステージが復路移動において前記照射領域を通過した後の前記設定通過速度からの加速は、同じ勾配であり、
前記第二のステージが往路移動において前記照射領域に到達する際の前記設定通過速度への減速と、前記第二のステージが復路移動において前記照射領域を通過した後の前記設定通過速度からの加速は、同じ勾配であるという構成を有する。
【発明の効果】
【0007】
以下に説明する通り、本願の請求項1又は記載の発明によれば、各ステージについて、基板搭載位置から照射領域までの移動及び照射領域から基板回収位置までの移動が設定通過速度より速い速度で行われるので、よりタクトタイムが短くなり、さらに生産性の高い光配向プロセスが実現される。
また、請求項2又は記載の発明によれば、上記効果に加え、基板の表面領域内の各点について照射領域を通過する際の速度が常に一定に維持されるので、光配向処理の面内均一性を容易な制御で向上させることができる。
また、請求項3、4、5、8、9又は10記載の発明によれば、上記効果に加え、復路でも偏光光照射がされるのでこの点で生産性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第一の実施形態に係る光配向装置の斜視概略図である。
図2図1に示す光配向装置の正面概略図である。
図3】第一の実施形態の装置におけるステージの位置と移動速度との関係について示した概略図であり、基板搭載回収位置から照射領域に向かう場合を示す。
図4】第一の実施形態の装置におけるステージの位置と移動速度との関係について示した概略図であり、照射領域から基板搭載回収位置に戻る場合を示す。
図5】照射領域と反転位置の間のスペース並びに当該スペースにおける移動速度の制御について示した概略図であり、照射領域から反転位置に向かう場合の速度制御について示す。
図6】照射領域と反転位置の間のスペース並びに当該スペースにおける移動速度の制御について示した概略図であり、反転位置から照射領域に向かう場合の速度制御について示す。
図7】制御ユニットにおける各ステージの移動速度のシーケンス制御について示した概略図である。
図8】基板アライナー6の概略について示した斜視図である。
図9】第一の実施形態の光配向装置の動作について示した概略図である。
図10】第一の実施形態の光配向装置の動作について示した概略図である。
図11】設定搬送速度を設定通過速度よりも高くすることで生産性がさらに向上する点を示した図である。
図12】第二の実施形態に係る光配向装置及び方法の要部について示した概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
次に、この出願の発明を実施するための形態(以下、実施形態)について説明する。
図1は、第一の実施形態に係る光配向装置の斜視概略図である。図1に示す光配向装置は、設定された照射領域Rに偏光光を照射する照射ユニット1と、基板Sが載置されるステージ21,22と、照射領域Rにステージ21,22を移動させることでステージ21,22上の液晶基板Sに偏光光が照射されるようにするステージ移動機構3とを備えている。
【0010】
照射ユニット1はほぼ矩形のパターンで偏光光を照射するものとなっており、このパターンの領域が照射領域Rである。照射領域Rは、水平な面内の領域として設定されている。
ステージ移動機構3は、上記照射領域Rを通過するようにしてステージ21,22を移動させる機構である。この実施形態では、ステージ21,22は水平な姿勢で配置され、移動方向は水平方向である。
【0011】
図2は、図1に示す光配向装置の正面概略図である。図2に示すように、照射ユニット1は、光源11と、光源11の背後に設けられたミラー12と、光源11やミラー12を内部に収容したランプハウス13と、偏光素子14等から構成されている。
光源11には、棒状のランプが使用されている。本実施形態では、紫外域の光によって光配向を行うので、高圧水銀ランプや水銀に他の金属を加えたメタルハライドランプ等が使用される。波長域は、例えば200〜400nm程度である。紫外域の必要な波長の光を放射するLEDを複数並べて長い照射パターンを得るようにしても良い。
【0012】
なお、ワークとしての基板Sは、この実施形態では、表面に膜材が形成された液晶基板となっている。膜材としては、波長254nmの光に感応して配向されるもの、波長313nmの光に感応して配向されるもの、波長365nmの光に感応して配向されるものなどが知られている。光配向に使用する波長に応じて、光源11は適宜選定される。光源11と基板Sとの間にフィルタを配置し、適宜波長を選択しながら処理することもある。
【0013】
ミラー12は、効率良く偏光光照射を行うためのもので、断面が楕円又は放物線の一部を成す形状の樋状ミラーが使用される。長尺な左右一対のミラー12をスリットを形成しながら配置して、ほぼ樋状のミラーを形成する。なお、光源11及びミラー12は、ステージ21,22の移動方向に垂直な水平方向(以下、幅方向という)に延びるよう配置されている。したがって、照射領域Rは、幅方向に長いほぼ長方形の領域である。
【0014】
偏光素子14は、光源11から放射される光を光配向に必要な偏光光にするためのものである。偏光素子14としては、透明基板上に縞状の誘電体、導体又は半導体より成る微細な格子を設けたグリッド偏光素子を使用することができる。ランプハウス13は、光照射口を有しており、偏光素子14は、光源11と光照射口との間の位置に配置されている。
偏光素子14は、出射される偏光光の偏光軸の向きが、照射領域Rを通過する基板Sの移動方向(実際にはリニアガイド31の方向)を基準にして所定の向きとなるよう配置される。これは、基板Sに対して所定の方向の偏光光を照射することで所定の方向に光配向がされるようにするものであることに他ならない。
【0015】
なお、一つの偏光素子14は矩形の小さいものである場合が多く、通常、偏光素子14を光源11の長手方向に複数並べて照射領域Rに偏光光を照射する構成が採用される。この場合も、各偏光素子14は、ステージ21,22の移動方向に対して所定の向きとなるよう配置される。
また、偏光素子14は、ランプハウス13とは別のユニット(偏光素子ユニット)としてランプハウス13に対して装着される構造が採用されることもある。
【0016】
図1に示すように、この実施形態の装置は、一つの移動路に二つのステージ21,22を備えている。移動路が一つであるため、一方のステージが他方のステージを追い越したり、双方のステージがすれ違ったりすることはできない。以下、二つのステージ21,22を第一のステージ21、第二のステージ22とする。図2には、図1に示すステージ移動機構3がその制御系とともに示されている。
【0017】
ステージ移動機構3については、種々のものが採用でき、特許文献1と同様にボールネジとリニアガイドとから成るものも採用できるが、この実施形態では、リニアガイド31とリニアモータステージ32とより成る機構が採用されている。リニアモータステージには種々のタイプがあるが、実施形態ではソーター型のリニアモータステージが採用されている。この種のリニアモータステージは、駆動側の構造としては、プラテンと呼ばれるベース盤33が移動方向に沿って延びた状態で設けられたものとなっている。詳細な図示は省略するが、プラテン33は、平板状の部材の表面に小さなブロック状(例えば直方体状)の強磁性体より成る凸極が碁盤の目状に設けられた構造となっている。プラテン33に対し、被駆動側であるステージ21,22は、エアにより僅かな隙間で浮上した状態で配置されており、且つ電磁石を含むリニアモータステージ32が下面に設けられている。電磁石の制御により磁極を切り替えることで、ステージ21,22はプラテン33上を浮上しながらリニアガイド31の方向に任意の速度で移動するようになっている。尚、図1に示すように、各ステージ21,22の下面の両側にはスライダ211,221が固定されており、リニアガイド31に嵌合してリニアガイド31上を滑動するようになっている。
【0018】
この他、磁気レール(異なる磁極が移動方向に沿って交互に存在するレール)上にステージを配し、その下面に電磁石を設けて駆動することで磁気レールに沿ってステージを移動させるタイプのリニアモータステージが採用されることもある。
なお、各ステージ21,22は、上面に基板Sを真空吸着する不図示の真空吸着機構を備えている。真空吸着機構は、各ステージ21,22の上面に形成された多数の吸着孔から吸引して(負圧を形成して)基板Sが動かないように保持する機構である。
【0019】
図2に示すように、実施形態の光配向装置は、装置全体を制御する制御ユニット4を備えている。制御ユニット4には、ステージ移動機構3などの各部の動作を制御するシーケンスプログラムを記憶した記憶部41や、シーケンスプログラムを実行する演算処理部42等を有している。制御ユニット4からの制御信号は、ステージ移動機構3の駆動部を含む装置の各部に送られるようになっている。
【0020】
実施形態の装置は、ステージ移動機構3により第一第二のステージ21,22を移動させ、交互に照射領域Rを通過させることで各ステージ21,22上の基板Sに交互に偏光光を照射する。これにより、タクトタイム短縮による高生産性プロセスの実現を図っている。この際、実施形態の装置は、特許文献1の装置に比べてより一層のタクトタイム短縮を可能にして更なる高生産性プロセスを実現するとともに、光配向処理の面内均一性の更なる向上を図っている。以下、この点について説明する。
【0021】
この実施形態の装置においても、特許文献1と同様、第一のステージ21への基板Sの搭載は、照射領域Rの一方の側で行われ、第一のステージ21を照射領域Rの他方の側まで移動させた後に反転させて一方の側に戻す(即ち、往復動させる)ことで光配向処理が行われる。第二のステージ22への基板Sの搭載は、照射領域Rの他方の側で行われ、第二のステージ22を照射領域Rの一方の側まで移動させた後に反転させて他方の側に戻すことで光配向処理が行われる。各側において、基板搭載動作が行われる位置と基板回収動作が行われる位置は、同じである必要はないが、この実施形態では同じ位置となっている(以下、基板搭載回収位置という)。
【0022】
制御ユニット4による制御は、前述したようにステージ移動機構3の制御も含んでいるが、制御ユニット4においては、各ステージ21,22の移動速度として二つの速度が設定されている。一つは、照射領域Rを通過する際の速度である(以下、設定通過速度という)。もう一つは、基板搭載回収位置と照射領域Rと間の移動速度であり、基板搭載回収位置と照射領域Rとの間における基板Sの搬送速度に相当している(以下、設定搬送速度という)。
【0023】
実施形態の装置では、設定搬送速度が設定通過速度より高い速度として設定されている。即ち、照射領域Rを通過する際の速度に比べて速い速度で各ステージ21,22を照射領域Rに到達させ、速い速度で照射領域Rから基板搭載回収位置に戻すよう構成されている。
基板Sの通過速度は、光配向処理に必要な積算照射量との関係で設定される。基板S上の一点における積算照射量は、照射領域Rにおける偏光光の照度をI、通過速度(厳密には平均通過速度)をV、移動方向で見た照射領域Rの長さをLとしたとき、積算照射量Qは、Q=I・L/Vで表される。したがって、必要な積算照射量Qとの関係で通過速度Vを予め算出して設定する。
【0024】
発明者は、当初、一定の設定通過速度でステージ21,22の移動を終始行わせていたが、この速度よりも速い速度でステージ21,22を移動させてもステージ21,22上で基板Sがずれる等の問題が生じないことを見出し、設定通過速度より速い速度で照射領域R−基板搭載回収位置間の移動を行う構成を想到するに至った。
【0025】
上記のように二つの異なる速度でステージ21,22の移動を行う場合、移動の過程で加速及び減速が伴うことになるが、この際に重要なことは、基板S上の各点における照射量が均一にして光配向処理の面内均一性をより高くする観点から、基板Sの表面内のすべての点について照射領域Rの通過の際には一定の設定通過速度が保たれるようにし、その上で加速や減速を行うようにすることである。この点について、図3及び図4を使用して説明する。
【0026】
図3及び図4は、第一の実施形態の装置におけるステージ21,22の位置と移動速度との関係について示した概略図である。このうち、図3は、基板搭載回収位置から照射領域Rに向かう場合、図4は照射領域Rから基板搭載回収位置に戻る場合を示している。図3及び図4では、一例として第一のステージ21の場合を示している。図3及び図4において、描き加えられているグラフは、縦軸が速度、横軸が基板の移動方向における位置(移動距離)を示す。理解のため、横軸は移動する基板の移動方向前方の縁の位置となっており、したがってグラフは基板の移動方向前方の縁における速度の推移を示している。
図3(1)(2)に示すように、基板搭載回収位置から照射領域Rに向かう際、第一のステージ21は、設定搬送速度で移動する。そして、照射領域Rの手前で減速を始め、照射領域R通過中は、一定の設定通過速度で移動する。
【0027】
この際重要なことは、図3(1)に示すように、第一のステージ21上の基板Sの移動方向前方の縁が照射領域Rに達するまでには設定通過速度への減速が完了していることである。仮に、例えば基板の移動方向中央の点での速度制御とし、中央の点が照射領域Rに達する前に設定通過速度に減速すれば良いとすると、図3(2)に示すように、基板Sの移動方向前方の縁及びその付近の表面領域については、照射領域Rに少し進入した後、設定通過速度に減速されることになる。即ち、基板Sの移動方向前方の縁及びその付近表面領域は、設定通過速度よりも速い速度で照射領域R内を少し移動した後に設定通過速度に落ち着いて当該速度で移動することになる。この場合、基板Sの移動方向前方の縁付近の表面領域では、他の領域に比べて積算照射量が減ることになり、光配向処理の不足が生じ得る(処理の不均一化)。他方、図3(1)に示すように、基板Sの移動方向前方の縁が照射領域Rに達するまでに設定通過速度に減速していれば、このような問題はない。
【0028】
また、図4(1)に示すように、照射領域Rから基板搭載回収位置に戻る際、第一のステージ21は、設定通過速度から設定搬送速度に加速し、設定搬送速度で基板搭載回収位置に達する。この際重要なことは、第一のステージ21上の基板Sの移動方向後方の縁が照射領域Rを通過後に加速を開始することである。仮に、図4(2)に示すように、基板Sの移動方向後方の縁が照射領域Rを通過する前に加速を開始してしまうと、基板Sの移動方向後方の縁付近の表面領域では、設定通過速度よりも速い速度で照射領域R内を少し移動することになり、同様に、積算照射量の減少による光配向不足が生じ得る。一方、図4(2)に示すように、基板Sの移動方向後方の縁が照射領域Rを通過してから加速を開始すれば、このような問題はない。
【0029】
また、実施形態の装置は、前述したように各ステージ21,22を往復動させるものである。往復動における反転の位置(以下、単に反転位置という)では、当然ながら速度ゼロであるから、反転位置に向けての減速(往路)、反転位置からの加速(復路)という制御が存在する。これら制御についても、上記図3及び図4の場合と同様、各ステージ21,22上の基板Sの表面領域における光配向処理の均一性の向上が図られている。但し、上記図3及び図4に示す場合と異なり、照射領域Rと反転位置との間の移動については、速度制御のみならず、照射領域Rと反転位置との間のスペース上の問題もある。
【0030】
上記の点について図5及び図6を使用して説明する。図5及び図6は、照射領域Rと反転位置の間のスペース並びに当該スペースにおける移動速度の制御について示した概略図である。このうち、図5は、照射領域Rから反転位置に向かう場合の速度制御について示し、図6は、反転位置から照射領域Rに向かう場合の速度制御について示す。同様に、図5及び図6は、一例として第一のステージ21の場合を示す。
【0031】
実施形態の装置において、第一の基板搭載回収位置に位置した第一のステージ21と照射領域Rの間には、第二のステージ22上の基板Sが照射領域Rを通過する分以上のスペースが確保され、第二の基板搭載回収位置に位置した第二のステージ22と照射領域Rの間には、第一のステージ21上の基板Sが照射領域Rを通過する分以上のスペースが確保されている。この点は、特許文献1の装置と同様である。以下、照射領域R通過のためのスペースを退避スペースという。
【0032】
「照射領域Rを通過する分以上のスペース」といった場合、ステージ21,22の移動方向の長さ分のスペースと衝突防止用の僅かなスペースが確保されている場合も含む。即ち、第一の基板搭載回収位置に位置した第一のステージ21と照射領域Rの間のスペースが第二のステージ22の長さにほぼ一致し、第二の基板搭載回収位置に位置した第二のステージ22と照射領域Rの間のスペースが第一のステージ21の長さにほぼ一致している場合である。この場合も、各ステージ21,22上の基板Sは照射領域Rを通過することができ、また省スペース化という点では好ましい。しかしながら、この配置では、反転位置に向けての減速のための移動路及び反転位置から照射領域Rに向けての加速のための移動路が確保できないため、光配向処理の面内均一性の向上が図れない問題がある。
【0033】
図5(2)に示すように、例えば第一のステージ21については、第二の基板搭載回収位置に位置した第二のステージ22の照射領域R側の縁と照射領域Rとの距離が第一の退避スペースの長さということになる。この場合、第一の退避スペースの長さが第一のステージ21の長さと衝突回避用の僅かなスペースの分だけであるとすると、第一のステージ21上の基板Sが照射領域Rを完全に通過する前に減速を始めなければならない。即ち、第一のステージ21上の基板Sの移動後方の縁がまだ照射領域R内にある状態から減速を始めることなる。この場合、基板Sの移動方向後方の縁付近の表面領域は、設定通過速度よりも遅い速度で通過することになるから、積算照射量が多くなり、積算照射量の面内均一性が低下する。この結果、光配向処理の面内均一性も低下する。
【0034】
したがって、光配向処理の面内均一性低下防止のためには、第一の退避スペースは、第一のステージ21の長さ+衝突回避用スペースだけでは足りず、設定通過速度からの減速のための移動路の分が含まれていなければならない。減速のための移動路が含まれていれば、図5(1)に示すように、第一のステージ21上の基板Sの移動方向後方の縁が照射領域Rを通過した後に減速を始めても、反転位置で停止することができ、光配向処理の面内均一性低下が防止される。
【0035】
また、反転位置から照射領域Rに向けて移動する場合も同様である。速度ゼロから設定通過速度に達するまでの加速移動の間は、設定通過速度未満であるから、図6(2)に示すように第一の退避スペースが第一のステージ21の長さ+衝突回避用スペースの分だけであるとすると、基板Sの移動方向前方の縁付近の表面領域は設定通過速度未満で照射領域Rを一部移動することになる。このため、光配向処理の面内均一性が低下する。図6(1)に示すように、第一の退避スペースが第一のステージ21の幅+衝突回避用スペースよりも長く、加速のための十分な長さの移動路が設けられていれば、基板Sの移動方向前方の縁が照射領域Rに達する際には設定通過速度に達するように速度制御することができ、光配向処理の面内均一性低下が防止される。なお、このような減速ための移動路や加速のための移動路は、この明細書において「速度緩衝路」と総称されている。
【0036】
以上は第一のステージ21の場合であったが、第二のステージ22の場合も向きが逆になるだけで、基本的に同様である。
制御ユニット4は、PLCのように演算処理部41や記憶部42を含んでおり、シーケンス制御プログラムが実装されている。シーケンス制御プログラムは、上記のような速度制御を含むシーケンスを実行するものとなっている。図7は、制御ユニット4における各ステージ21,22の移動速度のシーケンス制御について示した概略図である。
【0037】
図7の横軸は移動方向の位置(移動距離)を示し、縦軸は速度を示す。横軸では、基板搭載回収位置を原点としている。なお、横軸は、一例として基板Sの移動方向中央の点の移動方向の位置となっている。
【0038】
上記のような各ステージ21,22の移動による基板Sの搬送を監視するため、実施形態の装置は、幾つかのセンサを備えている。この点について、図2を使用して説明する。
まず、各ステージ21,22内には、基板Sの載置を検出するセンサ(以下、基板センサ)71が設けられている。また、ステージ移動機構3には、第一のステージ21が第一の基板搭載回収位置に位置したのを検出するセンサ(以下、第一のロード位置センサ)72と、第一のステージ21が反転位置に位置したのを検出するセンサ(以下、第一の反転位置センサ)73と、第二のステージ22が第二の基板搭載回収位置に位置したのを検出するセンサ(以下、第二のロード位置センサ)74と、第二のステージ22が反転位置に位置したのを検出するセンサ(以下、第二の反転位置センサ)75とが配置されている。これらセンサ71〜75の出力は、制御ユニット4に送られる。各センサ71〜75は、近接センサ、リミットスイッチのような機械式センサ、又はフォトセンサ等から適宜選択して用いることができる。
【0039】
また、実施形態の装置は、光配向のための偏光光照射が正しく行われるように基板Sの位置や向きを調節する基板アライナー6を備えている。前述したように、偏光素子14は、基板Sに対して所定の方向に偏光軸が向いた偏光光が照射されるよう配置される。この基準としてリニアガイド31の長さ方向が選択されている。基板アライナーは、リニアガイド31の長さ方向に対して基板Sが所定の姿勢となるようにし、光配向の方向性の精度を確保するものである。
【0040】
図8は、基板アライナー6の概略について示した斜視図である。図8には、一例として第一のステージ21に設けられた基板アライナー6が示されているが、第二のステージ22についても同様である。
図8に示すように、第一のステージ21は、固定ベース20Aと、固定ベース20A上の可動ベース20B等から構成されている。ステージ移動機構3は、直接的には固定ベース20Aを移動させるものとなっている。
【0041】
可動ベース20Bには、XYシータ移動機構62が設けられており、固定ベース20A上において可動ベース20BをXYθの方向に移動可能としている。ステージ21,2221に載置される基板Sには、アライメントマークS1が施されており、基板アライナー6は、アライメントマークS1を撮像するアライメントセンサ61と、上記XYθ移動機構62と、アライメントセンサ61からの出力に従ってXYθ移動機構62を制御するアライメント用制御部63とから主に構成されている。このようなアライメント制御部の構成は、特許文献1に開示されたものと同様とすることができるので、詳細な説明は割愛する。
【0042】
次に、第一の実施形態の光配向装置の動作について図9及び図10を使用して説明する。図9及び図10は、第一の実施形態の光配向装置の動作について示した概略図である。以下の説明は、実施形態の光配向方法の説明も兼ねる。
装置の稼働開始の初期状態では、図9(1)に示すように、第一のステージ21は第一の基板搭載回収位置にあり、第二のステージ22は第二の基板搭載回収位置にある。この状態で、不図示のロボットが基板Sをまず第一のステージ21に載置する。第一のステージ21内の基板センサ71が基板Sの載置を検出してこの信号が制御ユニット4に送られると、シーケンスプログラムは、第一のステージ21上の基板S用の基板アライナー6を動作させる。この結果、可動ベース20BがXYθ方向に移動して基板Sの位置及び姿勢が所定のものとなる。
【0043】
次に、制御ユニット4は、ステージ移動機構3に制御信号を送り、図9(1)に矢印で示すように、第一のステージ21をまず設定搬送速度で前進、即ち高速移動させる。そして、図9(2)に示すように、第一のステージ21上の基板Sが照射領域Rに達する少し手前の位置で設定通過速度に減速し、低速移動に移行させる。制御ユニット4は、一定の設定通過速度を維持しながら第一のステージ21が照射領域Rを通過するようにし、図9(3)に示すように第一のステージ21上の基板Sの移動方向後方の縁が照射領域Rを通過した後、さらに減速させて反転位置で停止させる。
【0044】
第一のステージ21が反転位置に達したのが第一の反転位置センサ73で確認されると、制御ユニット4は、第一のステージ21を反転させ、逆のシーケンスで逆の向きに移動させる。即ち、制御ユニット4は、第一のステージ21上の基板Sの移動方向前方の縁が照射領域Rに達するまでに設定通過速度に到達させ、一定の設定通過速度で低速移動させる。そして、図9(4)に示すように、第一のステージ21上の基板Sの移動方向後方の縁が照射領域Rを通過したら、制御ユニット4は、第一のステージ21を加速して設定搬送速度とし、高速移動に移行させる。その後、第一のステージ21が第一の基板搭載回収位置に達したら移動を停止させる。
【0045】
この間、第二の基板搭載回収位置では、第二のステージ22への基板Sの搭載動作が行われる。即ち、ロボットは制御ユニット4からの制御信号により所定のタイムラグをおいて基板Sを第二のステージ22に載置する。第二のステージ22では、同様に基板Sの載置を基板センサ71が確認した後、制御ユニット4が第二のステージ22上の基板S用の基板アライナー6を動作させてアライメントを行わせる。図9(4)に示すように第一のステージ21が第一の基板搭載回収位置に戻った際には、第二のステージ22でのアライメントは終了している。
【0046】
次に、制御ユニット4は、ステージ移動機構3に制御信号を送り、図9(5)に矢印で示すように、第二のステージ22をまず設定搬送速度で前進、即ち高速移動させる。そして、図10(1)に示すように、第二のステージ22上の基板Sが照射領域Rに達する少し手前の位置で設定通過速度に減速し、低速移動に移行させる。引き続き一定の設定通過速度で第二のステージ22を移動させ、図10(2)に示すように、第一のステージ22上の基板Sの移動方向後方の縁が照射領域Rを通過した後、さらに減速させて第二の反転位置で停止させる。
【0047】
第二のステージ21が反転位置に達したのが第二の反転位置センサ75で確認されると、制御ユニット4は、同様に第二のステージ22を反転させ、逆のシーケンスで逆の向きに移動させる。即ち、制御ユニット4は、第二のステージ22上の基板Sの移動方向前方の縁が照射領域Rに達するまでに設定通過速度に到達させ、設定通過速度で低速移動させる。そして、図10(3)に示すように、第二のステージ22上の基板Sの移動方向後方の縁が照射領域Rを通過したら、第二のステージ22を加速して設定搬送速度とし、高速移動に移行させる。その後、第二のステージ22が第二の基板搭載回収位置に達したら移動を停止させる。
【0048】
この間、第一の基板搭載回収位置では、第一のステージ21が第一の基板搭載回収位置に戻ったのを第一のロード位置センサ72が確認した後、第一のステージ21からの基板Sの回収と次の基板Sの第一のステージ21への搭載が行われる。即ち、ロボットが第一のステージ21から基板Sを取り去り、次の基板Sを第一のステージ21に搭載する。
【0049】
そして、図10(4)に示すように第二のステージ22が第二の基板搭載回収位置に戻った際には、次の基板Sの第一のステージ21への搭載動作が終了し、且つその基板Sについてのアライメントが終了した状態となっている。制御ユニット4は、再びステージ移動機構3に信号を送り、第一のステージ21を高速移動させた後、図10(5)に示すように照射領域Rの少し手前で低速移動に移行させ、一定の設定通過速度で照射領域Rを通過させる。
【0050】
この間、第二の基板搭載回収位置では、第二のステージ22が第二の基板搭載回収位置に戻ったのを第二のロード位置センサ74で確認した後、第二のステージ22への基板Sの回収と次の基板Sの第二のステージ22への搭載、第二のステージ22のアライメントが行われる。
【0051】
以後の動作は同様であり、装置がこのような動作を繰り返して二つのステージ21,22上で交互に光配向が行われるようシーケンスプログラムがプログラミングされている。なお、基板SはAGVやコンベアのような搬送機構によりロボットまで搬送され、光配向が行われた後、搬送機構により次のプロセスのための装置の位置まで搬送される。
【0052】
上記のような構成及び動作に係る実施形態の光配向装置又は方法によれば、偏光光が照射される照射領域Rを二つのステージ21,22が交互に通過することで各ステージ21,22上の基板Sに対して偏光光が照射されるので、生産性の高い光配向プロセスが実現される。この際、設定通過速度は必要な積算照射量との関係で設定されるものの、照射領域Rと基板搭載回収位置との間の移動は設定通過速度より速い速度である設定搬送速度で行われるので、よりタクトタイムが短くなり、さらに生産性の高い光配向プロセスが実現される。
【0053】
図11は、上記の点の理解を容易にするための図であり、設定搬送速度を設定通過速度よりも高くすることで生産性がさらに向上する点を示した図である。このうち、図11(1)は、設定搬送速度>設定通過速度とした場合(実施形態)のタクトタイムを示し、図11(2)は設定搬送速度=設定通過速度した場合(比較例)のタクトタイムを示す。図11(1)(2)において、縦軸は速度であり、横軸は時間である(図7と異なる)。
【0054】
図11(1)(2)において、途中で速度がゼロになっている時間点は、反転位置に達した時間点を意味する。双方とも、照射領域Rの長さは同じであり、図11(1)(2)に示すように設定通過速度の値も同じである。したがって、偏光光の積算照射量としては同じである。
【0055】
図11の(1)(2)を比較すると解るように、実施形態の装置及び方法によれば、タクトタイムは大幅に削減され、生産性は著しく向上する。一例を示すと、設定通過速度は、必要な積算照射量により異なるが、50〜200mm毎秒程度である。設定搬送速度は、可能な限り(例えば基板Sがステージ21,22上でずれる等の不具合がない範囲で)最も速い速度とされる。これは基板Sの大きさやステージ21,22上での保持力等によるが、300〜600mm毎秒程度である。設定通過速度を100mm毎秒、設定搬送速度を400mm毎秒とすると、設定搬送速度を設けない場合(図11(2)の場合)は、タクトタイムは100秒を超えるが、設定搬送速度を設けた場合(図11(1)の場合)は、タクトタイムは70秒以下となり、30秒以上タクトタイムが短縮される。なお、この場合のタクトタイムとは、例えば第一のステージ21についていえば、第一の基板搭載回収位置からスタートして反転位置で反転して第一の基板搭載回収位置に戻ってくるまでの時間である(即ち、基板Sの搭載及び回収をしている時間を除く)。
【0056】
上述したように、実施形態の光配向装置及び光配向方法によれば、設定搬送速度が設定通過速度よりも速い速度となっているので、タクトタイムがより短くなり、さらに高い生産性で光配向処理を行うことができる。この際、反転位置と照射領域Rの間にステージの移動方向の長さ+速度緩衝路以上の退避スペースが確保されており、設定搬送速度から設定通過速度までの減速は、基板Sの移動方向前方の縁が照射領域Rに達するまでに行われ、設定通過速度から設定搬送速度への加速は、基板Sの移動方向後方の縁が照射領域Rを通過後に行われる。即ち、基板Sの表面内の各点は照射領域Rを通過中常に一定の設定通過速度で移動する。このため、基板Sの表面内の各点での偏光光の積算照射量が一定となり、光配向処理の面内均一性が向上する。
【0057】
なお、反転位置と照射領域Rの間におけるステージの移動方向の長さ+速度緩衝路以上の退避スペースの確保による光配向処理の面内均一性の向上は、実施形態の装置及び方法のように二つのステージ21,22を使用して交互に基板Sが照射領域Rを通過する構成の場合の他、一つのみのステージを使用して往復動させる場合にも該当する。一つのみのステージを使用する場合は、生産性という点では二つのステージ21,22を使用する場合に比べて劣るが、反転位置と照射領域Rの間にステージの移動方向の長さ+速度緩衝路以上の退避スペースを確保することにより光配向処理の面内均一性を向上させることができる点は、同様である。
【0058】
また、往路のみならず復路においても基板Sに対して偏光光を照射することは、必要な積算照射量を得る際の設定通過速度を速くする意義があり、この点で生産性を向上させるのに貢献している。但し、本願発明の実施に際しては、往路のみ偏光光照射をし、復路では偏光光照射をしない場合もあり得る。この場合は、照射ユニット1内にシャッタを設ける等して光を遮断するようにする。この場合、復路においては偏光光照射と無関係にステージ21,22を移動させることができるので、設定通過速度よりも速い速度で照射ユニット1の直下を通過させる場合が多い。
【0059】
次に、第二の実施形態の装置及び方法について、図12を使用して説明する。図12は、第二の実施形態に係る光配向装置及び方法の要部について示した概略図である。
第一の実施形態では、光配向処理の面内均一性を向上させるものとして、基板Sの表面の各点が照射領域Rを通過する際、各点において一定の設定通過速度が維持されるよう制御したが、光配向処理の面内均一性向上のための構成としてこれ以外にも幾つか考えられ、その一例が図12に示されている。図12に示す制御では、照射領域Rを通過中、往路では一定のブレーキ(減速度)で減速しながら各ステージ21,22が移動し、復路では、往路での速度変化に対して対称な速度変化になるよう加速しながら照射領域Rを移動させる制御となっている。
【0060】
より具体的に説明すると、図12の縦軸は速度、横軸は移動方向の位置(移動距離)となっている。横軸の中央の速度ゼロとなっている箇所は、反転位置である。図7と同様に、実際には反転位置から戻ってくるが、図示の都合上、そのまま横軸をのばして描いている。
図12において、グラフは、基板Sの表面上の各点における速度の推移(移動経路上の推移)を示すものとなっている。実線が移動方向中央での速度の推移、一点鎖線が移動方向の一方の側の縁での速度の推移、二点鎖線が移動方向他方の側の縁での速度の推移を示す。
【0061】
図12から解るように、この実施形態では、照射領域Rを通過中、往路では一定の減速度で通過し、復路では一定の加速度で通過するよう制御される。そして、減速度の勾配と加速度の勾配は同じとなっている。且つ、基板Sの移動方向中央の点で見た場合、加速と減速の速度変化は、反転位置を挟んでちょうど線対称なものとなっている。
【0062】
照射領域Rを通過中に基板Sの速度が変化する場合、前述したように、照射領域の移動方向の長さをL、照度をIとすると、ある点の積算照射量は、平均速度をVとして、I・L/Vとなる(照度Iは長さLにおいて一定とする)。この場合、図12から解るように、平均速度Vは、往路での速度(一定に減速している速度)と復路での速度(一定に加速している速度)との平均ということになる。図12から解るように、往路では、基板Sの移動方向一方の側の縁は相対的に速い速度で照射領域Rを通過し、移動方向他方の側の縁は遅い速度で照射領域Rを通過するものの、復路ではこの関係がちょうど逆になる。このため、往路と復路とで平均した速度は、ともに移動方向中央の点での平均速度に一致する。即ち、各点での平均速度は一致し、このため各点での積算照射量は均一になる。このような構成によっても、光配向処理の均一性向上を図ることができる。
【0063】
装置を構成する制御ユニット4には、図12に示すような制御が行われるようシーケンス制御プログラムが実装される。往路において、一定の設定搬送速度から減速を始めるタイミングは、基板Sの移動方向一方の側の縁が照射領域Rに達する前とし、一定の減速度で減速して反転位置に到達させる。復路では、一定の加速度で移動させ、移動方向一方の側の方の縁が照射領域Rを通過した後に設定搬送速度に達してその速度を維持する。且つ、図12に示すように、少なくとも照射領域Rにおいては、反転位置を中心にして完全に対称となる速度変化とする。なお、図12では、照射領域R通過中の減速をそのまま維持して反転位置に達し、反転位置からの加速をそのまま維持して照射領域Rを通過させているが、照射領域Rと反転位置との間の減速又は加速を照射領域R通過中の減速又は加速と異なるものにすることもあり得る。
【0064】
第二の実施形態の構成においても、照射領域R通過中の速度(平均速度)より設定搬送速度は速いので、タクトタイムが短くなり、生産性が向上する。そして、基板Sの表面の各点での積算照射量が均一になるので、光配向処理の均一性が向上する。なお、第一の実施形態の場合と比べると、照射領域Rを通過中の加速及び減速の各タイミング及び勾配を精度良く制御する必要があるので、多少制御が複雑になる。このような複雑さがない点で、第一の実施形態の装置及び方法は優れている。
【0065】
この他、例えば図3(2)のような場合でも、往路で設定通過速度を超えてしまう基板Sの移動方向前方の縁付近領域について、照射領域Rを抜け出て反転位置に向かう際、当該領域が照射領域Rを抜け出る少し前に減速を開始するようにして補償することで均一化を図ることもできる。図4(2)のような場合も同様で、反転位置から照射領域Rに向かう際、基板Sの移動方向前方の縁が照射領域Rに少し入り込んだ時点で設定通過速度になうよう制御することで補償し、これによって均一化を図ることもできる。
【0066】
各実施形態において、第一のステージ21について基板Sの搭載位置と回収位置は照射領域Rの一方の側において同じ位置であったが、一方の側であれば足り、同じ位置とする必要はない。第二のステージ22についても同様である。例えば一方の側において、第一の基板搭載位置からみて照射領域Rに近い位置に第一の基板回収位置が設定されていても良い。この場合、光配向された基板Sが基板回収位置で第一のステージ21から取り去られた後、第一のステージ21がさらに前進して基板搭載位置に達し、そこで次の基板Sが搭載されることになる。
【0067】
上記の場合、第一の基板回収位置については、前述した分の退避スペースが確保されていなくても問題がない場合もある。即ち、例えば第一のステージ21が第一の基板回収位置から第一の基板搭載位置に移動した状態において第二のステージ22についての退避スペースが確保されていても良い。もしくは、第一のステージ21が第一の基板回収位置に位置した状態で第二のステージ22の退避スペースが確保され、その状態から第一のステージ21が照射領域Rに近づいた位置で基板Sが搭載される構成もあり得る。つまり、一方のステージ21,22が基板Sの搭載又は回収のために位置した状態において他方のステージ21,22の退避スペースが確保されていれば良い。
【0068】
なお、特許文献1に記載のように複数の照射ユニット1がステージ21,22の移動方向に沿って並設される場合もある。この場合、各照射ユニット1からの偏光光の照射領域Rを包絡した領域が全体の照射領域Rということになる。この全体の照射領域Rについて、前述した各制御のいずれかが行われる。
【0069】
また、この出願の発明において、「ステージ」の用語は通常より広く解釈される必要がある。即ち、真空吸着のような吸着孔を有する複数のピンの上に基板Sを載置してこれら複数のピン上に基板Sを吸着し、複数のピンを一体に移動させることで基板Sが照射領域Rを通過するようにする場合がある。従って、「ステージ」は、基板Sを保持しながら基板Sを移動させることができる部材であれば足り、必ずしも台状の部材に限られない。
【0070】
なお、基板Sとして膜材が貼り付けられた液晶表示素子用の基板が想定されたが、液晶表示素子以外の表示素子用の基板を対象物として光配向を行う場合もあるし、視野角補正の目的で光配向を行う場合もある。これら以外にも、種々の目的で光配向を行う際、本願発明の装置及び方法を使用することができる。また、自明ではあるが、光配向方法の発明は、光配向膜の製造方法の発明として捉えることができる。
【符号の説明】
【0071】
1 照射ユニット
11 光源
14 偏光素子
21 第一のステージ
22 第二のステージ
3 ステージ移動機構
31 リニアガイド
32 リニアモータステージ
33 プラテン
4 制御ユニット
6 基板アライナー
S 基板
R 照射領域
【要約】      (修正有)
【課題】光配向処理において、生産性をさらに向上させ、品質をさらに高めることができる光配向装置及び方法を提供する。
【解決手段】二つのステージ21,22に基板Sを載置し、照射ユニット1により偏光光が照射されている照射領域Rを通過するようにしてステージ移動機構3により二つのステージ21,22を交互に往復動させる。ステージ移動機構3を制御する制御ユニットは、各ステージ21,22が照射領域Rを通過している際には遅い速度である一定の設定通過速度を維持し、第一のステージ21の第一の基板搭載回収位置と照射領域Rとの間の移動及び第二のステージ22の第二の基板搭載回収位置と照射領域Rとの間の移動については、速い速度である設定搬送速度で移動を行わせる。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12