(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
近年の爆発的なネットワークトラフィックの増加に伴い、40Gbit/sや100Gbit/s以上の超高速光伝送システムが検討されている。超高速光伝送システムにおいては、位相変調方式と、コヒーレント受信およびデジタル信号処理技術とを組み合わせたデジタルコヒーレント通信の検討が活発に行われている。位相変調方式は、信号光雑音耐力特性、波長分散耐力特性および偏波モード分散耐力特性などの長距離光ファイバ伝送において要求される特性に優れている。
【0003】
変調方式としては、分散補償耐力に優れる2値位相変調信号(Binary Phase Shift Keying:BPSK)や、4値位相変調信号(Quadrature Phase Shift Keying:QPSK)が注目されている。
【0004】
さらに、周波数帯域幅を増加させることなく伝送容量を拡大するために、偏波多重4値位相変調信号(Dual Polarization − Quadrature Phase Shift Keying:DP−QPSK)方式などの研究・開発が実用化に向けて活発に行われている。偏波多重4値位相変調信号方式は、周波数の利用効率に優れる4値位相変調信号を、直交する2偏波で多重する方式である。
【0005】
デジタルコヒーレント通信の光受信器について説明する。ここでは、一例として、4値光位相変調方式(QPSK)を用いて説明する。
図5を参照して、デジタルコヒーレント通信における受信処理を説明する。
【0006】
まず、光受信器30000は、TE波とTM波とが多重された信号光(以下では、「TE波/TM波多重信号光」と言う)を受信する。局発光源32000は、TE波とTM波とが多重された局発光(以下では、「TE波/TM波多重局発光」と言う)を出力する。光受信部31000は、TE波/TM波多重信号光とTE波/TM波多重局発光とが入力され、それぞれを偏波に応じて分岐し、分岐した信号光と局発光とを干渉させる。そして、直交する2つの偏波軸それぞれに対して平行な偏波状態を有する信号光の実部成分および虚部成分の合計4つの信号光を出力する。4つの信号光は、光ディテクタ33000によりアナログ電気信号に変換された後、アナログデジタルコンバータ34000によりデジタル電気信号に変換される。これらのデジタル電気信号は、リサンプリング部(図示せず)により信号光のシンボルレート(ボーレートとも呼ばれる)で標本化されたデジタル電気信号に変換された後、デジタル信号処理部35000に入力される。デジタル信号処理部35000は、波長分散補償、偏波分散補償、位相雑音・周波数偏差補償の機能を有する。例えば、光搬送波周波数偏差・光位相偏差補償としては、受信した信号光の周波数と局部発振光の周波数との間の周波数偏差および光位相偏差による光位相回転とがそれぞれ補償される。その後、これらの電気信号はそれぞれ、シンボル識別部36000により光送信器が送信したビット列に復調される。
【0007】
このように、超高速光通信システムにおけるデジタルコヒーレント受信が実現される。
【0008】
以下では、上述した光受信部31000についてさらに詳細に説明する。光受信部については、高速データ通信を推進する業界団体であるOIF(Optical Internetworking Forum)で標準化の検討が進められており、標準に則った光受信部の開発が行われている。このような光受信部を実現する手段については様々な種類がある。
【0009】
例えば、マイクロオプティクスの技術を用いて光受信部の偏波分離部を実現した例が非特許文献1に記載されている。しかしながら、このようにマイクロオプティクスの技術を用いる場合、複数のバルクそれぞれの位置関係を調整することが困難である。具体的には、例えば、複数のバルクの光軸を揃える必要がある。
【0010】
そこで位置関係の調整を必要としない手段として、石英系の平面光集積回路(以下では、「平面光波回路」と言う)が有力視されている。光受信部を平面光波回路で実現した例が特許文献1に開示されている。特許文献1には、平面光波回路の一部分に溝をつくり、フォトニック結晶チップを機能させるために、導波路を横切るようにフォトニック結晶チップを挿入する構成が開示されている。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0022】
まず
図1を用いて光伝送システム10000を説明する。光伝送システム10000は、偏波多重M値位相変調(Mは2以上の整数)された信号光を送信する光送信器20000と、光送信器20000より送信された信号光を伝送する伝送路40000と、伝送路40000を介して信号光を受信する光受信器30000とを有する。
【0023】
伝送路40000には、例えばシングルモード光ファイバを用いることができる。
【0024】
光受信器30000は信号光を復調し復調したビット列を外部に出力する。
図5を用いて光受信器30000の構成例について説明する。ここではデジタル信号処理を用いた復調を例として挙げて説明する。
【0025】
光受信器30000は、光受信部31000と、局発光源32000と、光電変換部33000と、アナログデジタルコンバータ34000と、デジタル信号処理部35000と、復調部36000とを有する。
【0026】
光受信部31000は、導入された偏波多重された信号光と偏波多重された局発光をそれぞれ偏波に応じて分離し(以下では、「偏波分離」と言う)、偏波毎に信号光と局発光とを干渉させる。次いで、干渉させた干渉光を光電変換部33000に出力する。
【0027】
多重する偏波はTEとTMの直線偏波を適用できる。偏波多重により、一つの波長で伝送できるビットレートを実質的に倍増することができる。
【0028】
局発光源32000は、光送信器20000が送信する信号光と同程度の周波数を有する光を局発光として出力する。光送信器20000が送信する信号光が波長多重されている場合には、局発光源32000は、複数の波長のうちの一つと同程度の周波数を有する光を局発光として出力する。
【0029】
光電変換部33000は、干渉光を電気信号に変換し、変換した電気信号をアナログデジタルコンバータ34000に出力する。
【0030】
アナログデジタルコンバータ34000は、アナログ信号である変換後の電気信号をデジタル信号に変換する。次いでデジタル信号をデジタル信号処理部35000に出力する。
【0031】
デジタル信号処理部35000は、デジタル信号により信号光の位相および強度に関する情報を抽出する。デジタル信号処理部35000は、例えば、波長分散補償、偏波分散補償、位相雑音・周波数偏差補償を行う機能を有する。
【0032】
復調部36000は、デジタル信号処理部35000により抽出された位相および強度に関する情報に基づいて、送信器20000が送信したビット列を復調する。
【0033】
次に
図2を用いて光受信部31000を、平面光波回路を用いて実現した場合についてさらに詳細に説明する。
【0034】
受信部31000は石英系の基板311000上に種々のコンポーネントが形成されてなる。
【0035】
基板31100には、表面の領域を領域31120と領域31130とに区分する溝31110が形成される。溝の幅と深さは、溝に薄膜フィルタを嵌入して固定されるようにすることができればよい。このような溝31110は、例えば、ダイシング加工により容易に形成することができる。この場合、溝の長手方向は直線的な形状となる。
【0036】
また基板31100には、信号光入力部31131、局発光入力部31132、導波路31133、31134、31135、31136、31121、31122、90度オプティカルハイブリッド31123、31137、出力部31138、31139、31124、31125が形成される。
【0037】
さらに、光受信部31000は、溝31110に嵌入され、透過/反射で偏波分離するフィルタ31111を有する。透過/反射で偏波分離するとは、例えば、TE波を透過させ、TM波を反射させることで偏波分離することをいう。このような性質を有するフィルタは、例えば薄膜フィルタとして実用化されている。薄膜フィルタを用いた場合、このようなフィルタをTE透過/TM反射型薄膜フィルタと呼ぶ。本実施形態では、フィルタ31111がこのようなTE透過/TM反射型薄膜フィルタである場合を例として説明する。
【0038】
信号光入力部31131は、光送信器20000より伝送路40000を介して伝送された偏波多重された信号光が入力される。
【0039】
局発光入力部31132には、偏波多重された局発光が入力される。例えば、局発光源32000が単一偏波の局発光を出力するとする。この場合、局発光の偏波面がフィルタ31111によって規定される偏波面に対して所定の角度を有するように、局発光入力部31132に局発光が入力される。これにより、フィルタ31111によって規定される偏波面を基準として、偏波多重された局発光が局発光入力部31132から入力されることになる。
【0040】
ここでフィルタ31111の特性について説明する。フィルタ31111は、入射する光の偏波ごとに異なる透過率を示す。より詳細には、フィルタ31111は、その材料もしくは構成、入射する光の入射角度、または入射する光の波長に応じて、偏波ごとに異なる透過率を有する。フィルタ31111は、このような偏光に依存する反射および透過特性の違いを利用して、偏波分離機能を実現する。
【0041】
このようなフィルタ31111の透過スペクトルの例を
図4に示す。この例はフィルタ31111として後述する誘電体多層膜フィルタを用いた場合の透過スペクトルである。ここで、透過スペクトルとは、フィルタ31111に入射する光の波長と透過率との関係をいう。
図4の横軸はフィルタ31111に入射する光の波長を、縦軸は透過率を示す。一方のグラフはTE波に対するフィルタ31111の透過スペクトルを、他方のグラフはTM波に対するフィルタ31111の透過スペクトルを示している。TM波とは電界成分が基板31100の表面に対して垂直な方向に振動する電磁波であり、TE波とは電界成分が基板31100の表面上にあって電磁波の進行方向に対して垂直な方向に振動する電磁波である。例えば、
図4中に示す点線で挟まれた波長の光がフィルタ31111に入射された場合、透過光には主としてTE波が、反射光には主としてTM波が含まれることになる。
【0042】
図4のグラフからも分かるように、透過光および反射光それぞれは、主としていずれかの偏波を有している。すなわち、透過光および反射光それぞれは、いずれかの偏波のみを有しているわけではなく、両方の偏波を含みうる。このため、フィルタ31111を透過したTE光は、TM波も多少含む。また、フィルタ31111で反射したTM波についても同様である。
【0043】
このようなフィルタ31111の材料としては、例えば、誘電体多層膜フィルタがある。誘電体多層膜フィルタは、異なる透過率や膜厚を有する複数の薄膜を積層することにより製造することができる。
【0044】
次にフィルタの形状について説明する。フィルタ31111は、光が入射する方向に対して有限の厚みを有している。また、光がフィルタ31111に入射する面は、光の照射面積程度、またはそれ以上の面積を有していればよい。
【0045】
後述するフィルタ31141、31151もフィルタ31111と同様の特性、材料および形状を有する。
【0046】
導波路31133は、信号光入力部31131から導入され、かつ偏波多重された信号光をフィルタ31111まで導波するように形成される。ここで導波路31133は、その光軸がフィルタ31111の反射面に対して垂直以外の角度となるように形成される。これにより、導波路31133へ反射光が逆行することを防ぐことができる。反射面とは、フィルタ31111の領域のうち溝31110の側面と対向する面である。
【0047】
次に、導波路31133の構造と基板31100上に導波路31133を形成する方法について説明する。導波路31133の構造として、そのコア層の屈折率はコア層を囲むクラッド層よりも1.5%程度高く設定される。導波路31133は、この屈折率の違いにより、基板31100の平面方向に光を閉じ込めている。そして導波路31133は、シリコン(Si)の基板31100上にCVD(Chemical Vapor Deposition)等により形成される。ここで説明した導波路の構造および基板に導波路を形成する方法は、後述する他の導波路についても同様である。
【0048】
導波路31134は、局発光入力部31132から導入され、かつ偏波多重された局発光をフィルタ31111まで導波するよう形成される。導波路31134についてもその光軸がフィルタ31111の反射面に対して垂直以外の角度となるように形成される。導波路31121は、偏波多重された信号光のうちフィルタ31111からの透過光を90度オプティカルハイブリッド31123まで導波するように形成される。導波路31135は、波長多重された信号光のうちフィルタ31111からの反射光を90度オプティカルハイブリッド31137まで導波するように形成される。導波路31122は、波長多重された局発光のうちフィルタ31111からの透過光を90度オプティカルハイブリッド31123まで導波するように形成される。導波路31136は、波長多重された局発光のうちフィルタ31111からの反射光を90度オプティカルハイブリッド31137まで導波するように形成される。
【0049】
図2に示したように導波路31133、31134、31135、31136は基板31100上の領域31130に形成される。また、導波路31121、31122は基板31100上の領域31120に形成される。
【0050】
90度オプティカルハイブリッド31123は、領域31120に形成され、フィルタ31111を透過した信号光と局発光とが干渉するように形成される。また、90度オプティカルハイブリッド31137は、領域31130に形成され、フィルタ31111で反射した信号光と局発光とが干渉するように形成される。
【0051】
90度オプティカルハイブリッド31123は、導波路31121および導波路31122によって導波された信号光と局発光とを干渉させることにより、導波された信号光の実部成分と虚部成分とを抽出する。90度オプティカルハイブリッド31137は、導波路31135および導波路31136によって導波された信号光と局発光とを干渉させることにより、導波された信号光の実部成分と虚部成分とを抽出する。
【0052】
出力部31124は、90度オプティカルハイブリッド31123により抽出された信号光の実部成分を外部へ出力する。また出力部31125は、90度オプティカルハイブリッド31123により抽出された信号光の虚部成分を外部へ出力する。出力部31138は、90度オプティカルハイブリッド31137により抽出された信号光の実部成分を外部へ出力する。また出力部31139は、90度オプティカルハイブリッド31137により抽出された信号光の虚部成分を外部へ出力する。
【0053】
以上、平面光波回路31000の構成例について説明した。
【0054】
次に、
図2に示した平面光波回路31000の動作について説明する。
【0055】
まず、伝送路40000により伝送され、かつ偏波多重された信号光は信号光受信ポート31131に入力される。一方、局発光源32000からの偏波多重された局発光は局発光入力部31132に入力される。
【0056】
そして導波路31133が、偏波多重された信号光をフィルタ31111まで導波する。一方、導波路31134は、偏波多重された局発光をフィルタ31111まで導波する。
【0057】
次いで導波路31121は、フィルタ31111からの信号光の透過光を90度オプティカルハイブリッド31123まで導波する。一方、導波路31122は、フィルタ31111からの局発光の透過光を90度オプティカルハイブリッド31123まで導波する。
【0058】
また、導波路31135は、フィルタ31111からの信号光の反射光を90度オプティカルハイブリッド31137まで導波する。一方、導波路31136は、フィルタ31111からの局発光の反射光を90度オプティカルハイブリッド31137まで導波する。
【0059】
90度オプティカルハイブリッド31123は、導波路31121で導波された信号光と導波路31122で導波された局発光とを干渉させる。一方、90度オプティカルハイブリッド31137は、導波路31135で導波された信号光と導波路31136で導波された局発光とを干渉させる。
【0060】
その後出力部31124および出力部31125は、90度オプティカルハイブリッド31123で干渉した干渉光を光電変換部33000に出力する。また、出力部31138および出力部31139は、90度オプティカルハイブリッド31137で干渉した干渉光を光電変換部33000に出力する。
【0061】
以上、
図2に示した平面光波回路31000の動作について説明した。
【0062】
以上のように本実施形態においては、90度オプティカルハイブリッド31123を基板31100上の平面31120に形成し、90度オプティカルハイブリッド31137を基板31100上の平面31130に形成している。さらに、波長多重された信号光を偏波に応じて分岐するフィルタ31111を溝31110に嵌入することによって、90度オプティカルハイブリッド31123に接続される導波路と、90度オプティカルハイブリッド31137に接続される導波路とを、溝31110で分離する。これにより、導波路31121、31135、31122、31136が交差する箇所を低減し、かつ、偏波分離された信号光および局発光を90度オプティカルハイブリッド31123、31137まで導波することが可能となる。
【0063】
また、導波路31121、31135、31122、31136、および90度オプティカルハイブリッド31123、31137を溝31110に対して対称に形成することが可能となる。これにより、導波路31121および導波路31135の長さ、並びに導波路31122および導波路31136の長さ、とを容易に等しくすることができる。結果として、偏波に応じて分岐されてから90度ハイブリッドに入力されるまでの間で信号光および局発光のそれぞれの光路長を容易に等しくすることが可能となる。
【0064】
好ましくは、導波路31121の長さと導波路31135の長さとが等しく形成される。これにより、90度オプティカルハイブリッド31123で局発光と干渉する信号光が伝送される光路長と、90度オプティカルハイブリッド31137で局発光と干渉する信号光が伝送される光路長とが等しくなる。このため、2つの信号光間に発生するスキューを低減し、信号品質の劣化を低減することができる。
【0065】
さらに好適には、導波路31122の長さと導波路31136の長さとが等しく形成される。
【0066】
次に、
図3を用いて光受信部50000を平面光波回路で実現した場合の変形例を説明する。
図2に示した平面光波回路31000と同じ構成については同じ番号を付け、簡略のためこれらについての説明を省略する。
【0067】
平面光波回路50000において、領域31120に溝31140が、領域31130に溝31150がさらに形成される。また、平面光波回路50000は、フィルタ31141およびフィルタ31151を有する。
【0068】
フィルタ31141は領域31120に備えられ、透過/反射することによって偏波分離を行う。一方、フィルタ31151は領域31130に備えられ、透過/反射することによって偏波分離を行う。ここで、フィルタ31141は溝31140に嵌入されることにより領域31120に備えられ、フィルタ31151は溝31150に嵌入されることにより領域31130に備えられる。本実施形態では、フィルタ31141および31151として、TE透過/TM反射型薄膜フィルタを用いて説明する。
【0069】
本実形態において、導波路31121は、波長多重された信号光のうちフィルタ31111からの透過光をフィルタ31141まで導波し、フィルタ31141からの透過光を90度オプティカルハイブリッド31123まで導波するように形成される。また、導波路31122は、波長多重された局発光のうちフィルタ31111からの透過光をフィルタ31141まで導波し、フィルタ31141からの透過光を90度オプティカルハイブリッド31123まで導波するように形成される。ここで導波路31121および31122は導波する光の光軸がフィルタ31141の反射面に対して垂直以外の角度で入射されるように形成される。
【0070】
さらに、導波路31135は、波長多重された信号光のうちフィルタ31111からの反射光をフィルタ31151まで導波し、フィルタ31151からの反射光を90度オプティカルハイブリッド31137まで導波するように形成される。また、導波路31136は波長多重された局発光のうちフィルタ31111からの反射光をフィルタ31151まで導波し、フィルタ31151からの反射光を90度オプティカルハイブリッド31137まで導波するように形成される。ここで導波路31135および31136も、導波する光の光軸がフィルタ31151の反射面に対して垂直以外の角度で入射されるように形成される。
【0071】
以上、平面光波回路50000の構成例について説明した。
【0072】
次に、
図3に示した平面光波回路50000の動作について説明する。
【0073】
まず、伝送路40000により伝送された信号光は信号光受信入力部31131に入力される。局発光源32000からの波長多重された局発光は局発光入力部31132に入力される。
【0074】
そして、導波路31133が波長多重された信号光をフィルタ31111まで導波する。一方、導波路31134が波長多重された局発光をフィルタ31111まで導波する。
【0075】
次いで導波路31121は、波長多重された信号光のうちフィルタ31111からの透過光をフィルタ31141まで導波する。そして、フィルタ31141からの透過光を90度オプティカルハイブリッド31123まで導波する。一方、導波路31122は、TE波/TM波多重局発光のうちフィルタ31111からの透過光をフィルタ31141まで導波する。そして、フィルタ31141からの透過光を90度オプティカルハイブリッド31123まで導波する。
【0076】
また、導波路31135は波長多重信号光のうちフィルタ31111からの反射光をフィルタ31151まで導波する。そして、フィルタ31151からの反射光を90度オプティカルハイブリッド31137まで導波する。一方、導波路31136は波長多重された局発光のうちフィルタ31111からの反射光をフィルタ31151まで導波する。そして、フィルタ31151からの反射光を90度オプティカルハイブリッド31137まで導波する。
【0077】
以降の動作は上述した平面光波回路31000の動作と同様であるため省略する。
【0078】
以上のように、変形例の場合には、平面光波回路31000に対して、領域31120に備えられた透過/反射することによって偏波分離するフィルタ31141と、領域31130に備えられた透過/反射することによって偏波分離するフィルタ31151とをさらに有する。
【0079】
このように、信号光および局発光が導波される経路にフィルタを多段に備えることにより、フィルタ31111を透過した信号光および局発光をフィルタ31141でさらに透過させることができる。このため、90度オプティカルハイブリッド31123に入力される光の偏波消光比をさらに高めることができる。また、フィルタ31111を反射した信号光および局発光をフィルタ31151でさらに反射させることができる。このため、90度オプティカルハイブリッド31137に入力される光の偏波消光比をさらに高めることができる。
【0080】
変形例に係る平面光波回路50000は、上述した実施形態に係る平面光波回路31000の特徴をも有している。したがって、90度オプティカルハイブリッドを有する平面光波回路において、導波路が交差する箇所を低減し、90度オプティカルハイブリッドに入力される光の偏波消光比を高めることができる。さらに、偏波に応じて分岐されてから90度ハイブリッドに入力されるまでの間で信号光および局発光それぞれの光路長を容易に等しくすることが可能となる。
【0081】
以上好ましい実施形態を挙げて本発明を説明したが、本発明は必ずしも上記実施形態に限定されるものではなく、その技術的思想の範囲内においてさまざまに変形して実施することができる。
【0082】
例えば、上記実施形態ではM値位相変調を用いて説明したが、振幅位相変調(Amplitude Phase Shift Keying:APSK)や、振幅位相変調の一つであるM値直行位相振幅変調(Quadrature Amplitude Modulation:QAM)を用いてもよい。また、伝送方式として直行周波数分割多重方式(Othogonal Frequency Division Multiplexing:OFDM)を採用し、サブキャリアの少なくとも一つで偏波多重M値位相変調等を採用することができる。
【0083】
伝送路40000の構成として、シングルモード光ファイバに代えてマルチモード光ファイバを用いることもできる。
【0084】
上記実施形態では、局発光源32000が光受信器30000に備えられる例を示したが、光受信器30000の外部に備えることもできる。この場合、光受信器30000は局発光源32000からの局発光を入力する入力部さらに有する。
【0085】
溝31110、31140、31150は基板31100の長手方向に直線的な形状である必要はなく、長手方向に曲線的な形状であっても構わない。これらの溝は基板の端から端まで完全に横断するように形成してもよい。しかし、溝が基板の途中で止めて形成されることを排除するものではない。溝が基板の途中で止めて形成される場合は、その仮想延長線で、領域31120と領域31130に区分すると想定することができる。また溝はダイシング加工以外の方法で形成されてもよい。
【0086】
また、フィルタ31111、31141、31151の材料として、誘電体多層膜フィルタを用いた例を説明したが、フォトニック結晶偏光子を用いることもできる。
【0087】
上記実施形態では、フィルタ31131、31141、31151として、TE波を透過させ、TM波を反射させる特性を有するフィルタを用いて説明した。しかしながら、フィルタ31131、31141、31151として、TM波を透過させ、TE波を反射させる特性を有するフィルタを用いてもよい。このようなフィルタはTE反射/TM透過型薄膜フィルタと呼ぶことができ、入射する光の波長と入射角度に応じて材料および構成を変更することにより実現される。
【0088】
上記実施形態ではフィルタ33151が溝31150に嵌入された場合について説明したが、フィルタ33151が領域31130における基板31100の側面に貼付されていてもよい。この場合、領域31130に溝31150は形成されなくてもよい。
【0089】
この出願は、2012年3月6日に出願された日本出願特願2012−048681を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。