(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ハウジングと、前記ハウジングに固定された固定スクロールと、前記固定スクロールとの間に圧縮室を形成する可動スクロールと、前記可動スクロールに形成されたボス部と、前記ハウジングに駆動軸心周りで回転可能に軸支された駆動軸と、前記駆動軸心から偏心して前記駆動軸と一体回転可能な偏心軸部と、前記偏心軸部に嵌合されるとともに前記ボス部に嵌合され、前記可動スクロールを前記固定スクロールに対して公転させるドライブブッシュとを備えたスクロール型圧縮機において、
前記ハウジング内には、前記駆動軸を駆動するモータ機構が設けられ、
前記可動スクロールは、前記ボス部が中央に形成された可動基板と、前記可動基板から前記ボス部とは逆方向で渦巻状に延びる可動渦巻壁とを有し、
前記ドライブブッシュと前記ボス部との間及び前記駆動軸における前記ドライブブッシュ側の一端部と前記ハウジングとの間の少なくとも一方には軸受が設けられ、
前記軸受は、前記ボス部又は前記ハウジングである外側被軸受部側に設けられる円筒状の外側摺動部材と、前記ドライブブッシュ又は前記駆動軸の前記一端部である内側被軸受部側に設けられる円筒状の内側摺動部材とからなり、
前記外側被軸受部の内周面と前記外側摺動部材の外周面との外側境界域、前記外側摺動部材の内周面と前記内側摺動部材の外周面との中間境界域、及び、前記内側摺動部材の内周面と前記内側被軸受部の外周面との内側境界域の少なくとも二つの境界域が相対回転可能であり、
前記外側摺動部材と前記内側摺動部材とは、軸方向の長さが異なることにより、少なくとも前記軸方向の一端に段差を形成し、
前記外側被軸受部である前記ボス部と前記内側被軸受部である前記ドライブブッシュとの間に前記軸受である主軸受が設けられ、
前記ドライブブッシュは、前記軸方向の両端の少なくとも一方に面取りを有し、
前記外側摺動部材と前記可動スクロールとの間又は前記外側摺動部材と前記ドライブブッシュとの間には、前記内側摺動部材が前記面取りまで移動することを規制する移動規制手段が設けられていることを特徴とするスクロール型圧縮機。
前記移動規制手段は、前記可動スクロールに形成され、前記外側摺動部材と当接して前記内側摺動部材を前記可動基板から離反させる凸部である請求項1乃至3のいずれか1項記載のスクロール型圧縮機。
前記カラーは、前記軸方向の両端の少なくとも一方に面取りを有し、前記面取りされた部分を除いて前記外側境界域とされている請求項10又は11記載のスクロール型圧縮機。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記従来のスクロール型圧縮機では、ドライブブッシュとボス部との間及び駆動軸の一端部とハウジングとの間に転がり軸受を採用しており、製造コストの低廉化が困難である。
【0007】
このため、これらの少なくとも一方を円筒状の摺動部材である滑り軸受とすることが考えられる。この場合、ボス部やハウジングである外側被軸受部に対して滑り軸受の外周面を圧入し、ドライブブッシュや駆動軸の一端部である内側被軸受部に対して滑り軸受の内周面を隙間嵌めすることが一般的である。
【0008】
しかしながら、こうしてドライブブッシュとボス部との間又は駆動軸の一端部とハウジングとの間に滑り軸受を採用すると、スクロール型圧縮機が断続運転されたり、その回転数が変動したり、液圧縮を生じたりするような過酷な使用条件の下では、滑り軸受の特定の部分に偏心軸部から過大な負荷が一時的に作用し、滑り軸受に局所的な摩耗が生じ易い。この場合、スクロール型圧縮機の耐久性が懸念される。
【0009】
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、製造コストの低廉化を実現するとともに、過酷な条件の下で使用された場合であっても、優れた耐久性を発揮可能なスクロール型圧縮機を提供することを解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のスクロール型圧縮機は、ハウジングと、前記ハウジングに固定された固定スクロールと、前記固定スクロールとの間に圧縮室を形成する可動スクロールと、前記可動スクロールに形成されたボス部と、前記ハウジングに駆動軸心周りで回転可能に軸支された駆動軸と、前記駆動軸心から偏心して前記駆動軸と一体回転可能な偏心軸部と、前記偏心軸部に嵌合されるとともに前記ボス部に嵌合され、前記可動スクロールを前記固定スクロールに対して公転させるドライブブッシュとを備えたスクロール型圧縮機において、
前記ドライブブッシュと前記ボス部との間及び前記駆動軸における前記ドライブブッシュ側の一端部と前記ハウジングとの間の少なくとも一方には軸受が設けられ、
前記軸受は、前記ボス部又は前記ハウジングである外側被軸受部側に設けられる円筒状の外側摺動部材と、前記ドライブブッシュ又は前記駆動軸の前記一端部である内側被軸受部側に設けられる円筒状の内側摺動部材とからなり、
前記外側被軸受部の内周面と前記外側摺動部材の外周面との外側境界域、前記外側摺動部材の内周面と前記内側摺動部材の外周面との中間境界域、及び、前記内側摺動部材の内周面と前記内側被軸受部の外周面との内側境界域の少なくとも二つの境界域が相対回転可能であり、
前記外側摺動部材と前記内側摺動部材とは、軸方向の長さが異なることにより、少なくとも前記軸方向の一端に段差を形成していることを特徴とする。
【0011】
本発明のスクロール型圧縮機では、ドライブブッシュとボス部との間及び駆動軸の一端部とハウジングとの間の少なくとも一方に円筒状の外側摺動部材と円筒状の内側摺動部材とからなる軸受を採用している。外側摺動部材は、ボス部又はハウジングである外側被軸受部側に設けられる。内側摺動部材は、ドライブブッシュ又は駆動軸の一端部である内側被軸受部側に設けられる。このため、製造コストの低廉化が可能である。
【0012】
また、このスクロール型圧縮機では、軸受の外側境界域、中間境界域及び内側境界域の少なくとも二つの境界域が相対回転可能である。外側境界域とは、外側被軸受部の内周面と外側摺動部材の外周面との境界域である。中間境界域とは、外側摺動部材の内周面と内側摺動部材の外周面との境界域である。内側境界域とは、内側摺動部材の内周面と内側被軸受部の外周面との境界域である。このため、スクロール型圧縮機が過酷な条件下で使用され、偏心軸部から一時的に過大な負荷が軸受に作用しても、その負荷によって少なくとも二つの境界域が相対回転し、その負荷を逃がすことができる。このため、軸受には局所的な摩耗が生じ難い。
【0013】
特に、このスクロール型圧縮機では、外側摺動部材と内側摺動部材とが少なくとも軸方向の一端に段差を形成しており、段差には毛細管現象によって潤滑油が保持され易い。このため、少なくとも二つの境界域に潤滑油が供給され易く、それら境界域がより相対回転を生じ易い。
【0014】
したがって、本発明のスクロール型圧縮機では、製造コストの低廉化を実現するとともに、過酷な使用条件の下であっても、優れた耐久性を発揮することが可能である。
【0015】
ドライブブッシュとボス部との間に本発明に係る軸受が設けられていることが好ましい理由は、ドライブブッシュとボス部との間が偏心軸部によって大きな負荷を受け易いからである。
【0016】
外側摺動部材及び内側摺動部材の少なくとも一方としては、低摩擦性、耐摩耗性、耐疲労性、耐焼付き性、なじみ性等の特性を有する材料又は部品が採用され得る。1層構造の材料としては、すず基合金、鉛基合金、銅−鉛合金、鉛−青銅合金、アルミニウム−すず合金、アルミニウム−すず−ケイ素合金、アルミニウム−亜鉛合金の他、フッ素系樹脂等の摺動特性に優れた樹脂等を採用することができる。2層構造又は3層構造の部品を採用することもできる。外側摺動部材と内側摺動部材との間には、両者を接合するための接合層を設けることもできる。また、外側摺動部材及び内側摺動部材の一方は他方の内周面又は外周面に施されためっきやコーティングであってもよい。
【0017】
可動スクロールは、ボス部が中央に形成された可動基板と、可動基板からボス部とは逆方向で渦巻状に延びる可動渦巻壁とを有し得る。外側被軸受部であるボス部と内側被軸受部であるドライブブッシュとの間に本発明に係る軸受である主軸受が設けられ得る。この主軸受の段差は、可動基板の近傍に位置していることが好ましい。ボス部の奥側には潤滑油が供給され難いが、主軸受の段差を可動基板の近傍に位置させれば、その段差がボス部の奥側に潤滑油を好適に保持し、主軸受が好適に相対回転を生じる。
【0018】
ハウジング内には、駆動軸を駆動するモータ機構が設けられ得る。外側被軸受部であるボス部と内側被軸受部であるドライブブッシュとの間に本発明に係る軸受である主軸受が設けられ得る。この主軸受の段差は、モータ機構側に位置していることも好ましい。モータ機構側でも潤滑油が要求される。主軸受の段差をモータ機構側に位置させれば、その段差がモータ機構側に潤滑油を好適に保持し、主軸受が好適に相対回転を生じる。
【0019】
可動スクロールは、ボス部が中央に形成された可動基板と、可動基板からボス部とは逆方向で渦巻状に延びる可動渦巻壁とを有し得る。ハウジング内には、駆動軸を駆動するモータ機構が設けられ得る。外側被軸受部であるボス部と内側被軸受部であるドライブブッシュとの間に本発明に係る軸受である主軸受が設けられ得る。ドライブブッシュは、軸方向の両端の少なくとも一方に面取りを有し得る。そして、外側摺動部材と可動スクロールとの間又は外側摺動部材とドライブブッシュとの間には、内側摺動部材が面取りまで移動することを規制する移動規制手段が設けられていることが好ましい。本発明に係る軸受がボス部とドライブブッシュとの間で圧入されていない場合、主軸受は軸方向に僅かに移動し得る。こうして主軸受が軸方向に僅かに移動しても、内側摺動部材が面取りと当接することによる局所的な摩耗を生じ難い。
【0020】
移動規制手段は、可動基板側に形成された段差であり得る。この場合、潤滑油を保持する可動基板側の段差によって内側摺動部材の内周面が面取りと当接することを防止できる。このため、別個の手段を採用する必要がなく、スクロール型圧縮機の構成が簡易になる。
【0021】
移動規制手段は、可動スクロールに形成され、外側摺動部材と当接して内側摺動部材を可動基板から離反させる凸部であり得る。この場合、可動基板側の段差の有無にかかわらず、内側摺動部材の内周面が面取りと当接することを防止できる。
【0022】
ドライブブッシュは、円筒状の外周面をもつブッシュ部と、ブッシュ部と一体をなし、扇状に広がるバランスウェイト部とからなり得る。移動規制手段は、外側摺動部材と当接して内側摺動部材をモータ機構から離反させるバランスウェイト部であり得る。この場合、モータ機構側の段差の有無にかかわらず、内側摺動部材の内周面が面取りと当接することを防止できる。
【0023】
軸受の段差は、軸方向の一方側に位置する第1段差と、軸方向の他方側に位置する第2段差とからなり得る。第1段差と第2段差とは軸方向の長さが等しいことが好ましい。この場合、軸受に方向性がなくなるため、軸受の製造が容易になるとともに、スクロール型圧縮機の製造も容易になり、製造コストの低廉化をより確実に実現することができる。なお、本明細書において、第1段差と第2段差との軸方向の長さが等しいという場合には、公差は含まれる。
【0024】
外側被軸受部であるハウジングと内側被軸受部である駆動軸の一端部との間に本発明に係る軸受である副軸受が設けられ得る。ハウジングには駆動軸を挿通する軸孔が形成され得る。軸孔内にシール材及び副軸受が設けられ得る。また、駆動軸には、シール材と副軸受との間と、駆動軸の他端部との間を連通する給油孔が形成され得る。副軸受の段差は、給油孔と対向していることが好ましい。駆動軸の給油孔は、シール材と副軸受との間から、駆動軸の他端部まで潤滑油を供給し、駆動軸の他端部に設けられる軸受の潤滑を手助けする。副軸受の段差がその給油孔と対向しておれば、副軸受の段差が保持した潤滑油が給油孔を通って駆動軸の他端部に供給され易い。
【0025】
外側摺動部材は、内側摺動部材を保持する金属製のカラーであり得る。また、内側摺動部材は、摺動特性に優れた樹脂からなり、内周面が内側境界域を構成する内層と、外側摺動部材と固定される裏金と、内層と裏金との間を結合する中間層とからなり得る。この内側摺動部材は3層構造の部品である。この場合、本発明に係る軸受の強度を十分なものとすることができる。この軸受は、外側摺動部材に内側摺動部材の裏金を嵌合することによって得ることができる。
【0026】
内層は、軸方向の両端の少なくとも一方に面取りを有し、面取りされた部分を除いて内側境界域とされていることが好ましい。この場合、内層に欠けを生じ難く、内側摺動部材が優れた耐久性を発揮する。
【0027】
カラーは、軸方向の両端の少なくとも一方に面取りを有し、面取りされた部分を除いて外側境界域とされていることが好ましい。この場合、カラーに欠けを生じ難く、欠けによって生じた異物によって境界域の摺動性が損なわれることがない。
【0028】
内側摺動部材は、外側摺動部材を保持する金属製のカラーであり得る。また、外側摺動部材は、摺動特性に優れた樹脂からなり、内周面が中間境界域を構成する内層と、外側被軸受部と固定される裏金と、内層と裏金との間を結合する中間層とからなり得る。この外側摺動部材は3層構造の部品である。この場合も、軸受の強度を十分なものとすることができる。この軸受は、内側摺動部材に外側摺動部材を嵌合することによって得ることができる。外側摺動部材の裏金は外側被軸受部に圧入され得る。
【0029】
可動スクロールは、ボス部が中央に形成された可動基板と、可動基板からボス部とは逆方向で渦巻状に延びる可動渦巻壁とを有し得る。外側被軸受部であるボス部と内側被軸受部であるドライブブッシュとの間に本発明に係る軸受である主軸受が設けられ得る。そして、可動基板には、主軸受と対向する凹部が形成されていることが好ましい。軸受が軸方向に僅かに移動し、外側摺動部材と可動基板との隙間が小さくなれば、そこに潤滑油が供給され難くなるおそれがある。そこに凹部が形成されておれば、凹部内に潤滑油が保持され、主軸受が好適に相対回転を生じる。
【0030】
ハウジング内には、駆動軸を駆動するモータ機構が設けられていることが好ましい。この場合、本発明によってハウジング内のモータ機構を比較的低温に保ち易く、モータ機構が性能を発揮し易い。
【発明の効果】
【0031】
本発明のスクロール型圧縮機は、製造コストの低廉化を実現できるとともに、断続運転されたり、回転数が変動したり、液圧縮を生じたりするような過酷な使用条件の下であっても、優れた耐久性を発揮可能である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明を具体化した実施例1〜4を図面を参照しつつ説明する。
【0034】
(実施例1)
図1に示すように、実施例1のスクロール型圧縮機は、モータ機構8を一体的に有する電動圧縮機となっている。このスクロール型圧縮機は、ハウジング1を備えている。ハウジング1は、後端側が開口する有底筒状のフロントハウジング11と、蓋状をなしてフロントハウジング11の後端を塞ぐリヤハウジング13と、フロントハウジング11内に支持された固定ブロック15とからなる。
【0035】
フロントハウジング11及びリヤハウジング13の内部は、前方に位置するモータ室3と後方に位置する作動室5とに固定ブロック15によって仕切られている。モータ室3は吸入室を兼ねている。作動室5では、固定ブロック15とリヤハウジング13とに挟持されて固定スクロール17が固定されているとともに、固定スクロール17と固定ブロック15との間に可動スクロール19が設けられている。
【0036】
固定スクロール17は、リヤハウジング13側に位置する固定基板17aと、固定基板17aの外周で円筒状に前方に延びる外周壁17bと、外周壁17bの内側で渦巻状に前方に延びる固定渦巻壁17cとからなる。
【0037】
可動スクロール19は、固定ブロック15側に位置する可動基板19aと、可動基板19aの中央で円筒状に前方に延びるボス部19bと、可動基板19aから渦巻状に後方に延びる可動渦巻壁19cとからなる。固定スクロール17と可動スクロール19とで囲まれることにより、圧縮室7が形成されている。また、固定ブロック15と可動基板19aとの間は背圧室9とされている。固定ブロック15には、モータ室3と外周側の圧縮室7とを連通する図示しない吸入通路が形成されている。
【0038】
フロントハウジング11の前端壁11aの内面中央には円筒状の軸支部11bが突設されている。一方、固定ブロック15の中央には軸孔15aが貫通して形成されている。軸支部11bには転がり軸受23が圧入されている。一方、軸孔15aには、シール材25と、
図2に示すように、本発明に係る軸受及び副軸受である両面滑り軸受27とが設けられている。
図1に示すように、転がり軸受23、シール材25及び両面滑り軸受27により、駆動軸29が駆動軸心O周りで回転可能に軸支されている。固定ブロック15が外側被軸受部であり、駆動軸29の一端部29cが内側被軸受部である。
【0039】
両面滑り軸受27は、
図2に示すように、円筒状の外側摺動部材67内に円筒状の内側摺動部材65を圧入することによって得られている。
図4に示すように、内側摺動部材65の内周面65sと駆動軸29の一端部29cの外周面29sとは内側境界域Biを形成している。内側境界域Biは相対回転可能である。外側摺動部材67の外周面67sと固定ブロック15の内周面15sとは外側境界域Boを形成している。外側境界域Boも相対回転可能である。外側摺動部材67の内周面67fと内側摺動部材65の外周面65fとは中間境界域Bmを形成している。中間境界域Bmは圧入によって固定されている。
【0040】
内側摺動部材65はすず基合金等の1層の材料からなる。また、外側摺動部材67は内側摺動部材65を保持する金属製のカラーである。
【0041】
内側摺動部材65は、
図2に示すように、外側摺動部材67よりも、軸方向の長さが短い。このため、内側摺動部材65の前端には外側摺動部材67との間に第1段差27aが形成されている。また、内側摺動部材65の後端には外側摺動部材67との間に第2段差27bが形成されている。この両面滑り軸受27は、
図4に示すように、外側摺動部材67の前後の同一位置に内側摺動部材65が圧入されている。つまり、両面滑り軸受27は、第1段差27aと第2段差27bとの軸方向の長さが等しい。シール材25、固定ブロック15、両面滑り軸受27及び駆動軸29の一端部29cにより、潤滑油が導入されるスペースが区画されている。
【0042】
図1に示すように、固定ブロック15の後面には、可動スクロール19の可動基板19aに向かって延びる複数本の自転阻止ピン21aが固定されている。また、可動基板19aの前面には、自転阻止ピン21aの先端部を遊嵌状態で受ける自転阻止孔21bが凹設されている。自転阻止孔21bには円筒状のリング21cが遊嵌されている。駆動軸29が回転する際、自転阻止ピン21aがリング21cの内周面を摺動及び転動することにより、可動スクロール19は自転を規制されて駆動軸心O周りで公転のみ可能となっている。
【0043】
駆動軸29の後端には、駆動軸心Oから偏心した位置で偏心軸部29aが後方に向かって突設されている。偏心軸部29aは、円柱状に形成されるか、又は外周面に二面幅が形成された略円柱状に形成されている。偏心軸部29aにはドライブブッシュ31が嵌合されている。
【0044】
ドライブブッシュ31は炭素鋼製である。このドライブブッシュ31は、
図5に示すように、円筒状の外周面33sをもつブッシュ部33と、ブッシュ部33と一体をなし、駆動軸29の後端面と当接しながら扇状に広がるバランスウェイト部35とからなる。ブッシュ部33は可動スクロール19のボス部19bに嵌合されている。また、ブッシュ部33には挿通孔33aが貫設されており、挿通孔33aに偏心軸部29aが嵌合されている。ブッシュ部33とボス部19bとの間には、本発明に係る軸受及び主軸受としての両面滑り軸受37が設けられている。
【0045】
両面滑り軸受37は、
図3に示すように、円筒状の外側摺動部材53内に円筒状の内側摺動部材51を圧入することによって得られている。
図6に示すように、内側摺動部材51の内周面51sとブッシュ部33の外周面33sとは内側境界域Biを形成している。内側境界域Biは相対回転可能である。外側摺動部材53の外周面53sとボス部19bの内周面19sとは外側境界域Boを形成している。外側境界域Boも相対回転可能である。外側摺動部材53の内周面53fと内側摺動部材51の外周面51fとは中間境界域Bmを形成している。中間境界域Bmは圧入によって固定されている。
【0046】
内側摺動部材51は、
図3に示すように、摺動特性に優れたフッ素系樹脂からなり、内周面51sを構成する内層51aと、外側摺動部材53に圧入された裏金51cと、内層51aと裏金51cとの間を結合する中間層51bとからなる。内層51aは、
図6に示すように、軸方向の両端に面取り51d、51eを有している。
【0047】
外側摺動部材53は、内側摺動部材51を保持する金属製のカラーである。外側摺動部材53の内縁には、軸方向の両端に面取り53a、53bが形成されている。また、外側摺動部材53の外縁にも、軸方向の両端に面取り53c、53dが形成されている。
【0048】
内側摺動部材51は、外側摺動部材53よりも、軸方向の長さが短い。このため、内側摺動部材51の前端には外側摺動部材53との間に第1段差37aが形成されている。また、内側摺動部材51の後端には外側摺動部材53との間に第2段差37bが形成されている。この両面滑り軸受37も、外側摺動部材53の前後の同一位置に内側摺動部材51が圧入されている。つまり、両面滑り軸受37は、第1段差37aと第2段差37bとの軸方向の長さが等しい。第1段差37aは、モータ機構8側に位置している。第2段差37bは、可動基板19aの近傍に位置している。
【0049】
ドライブブッシュ31のブッシュ部33は、軸方向の前端にフランジ33cを有している。フランジ33cとブッシュ部33の外周面33sとの間には曲面33rが形成されている。また、ブッシュ部33は、軸方向の後端に面取り33bが形成されている。一方、可動スクロール19では、ボス部19bの内周面19sと可動基板19aの前面との間に逃し溝19dが形成されている。なお、逃し溝19dに代え、フランジ33cの曲面33rと同様の曲面を形成することも可能である。
【0050】
図1に示すように、固定スクロール17とリヤハウジング13との間には吐出室2が形成されており、固定スクロール17の固定基板17aには圧縮室7と吐出室2とを連通する吐出ポート17dが貫設されている。吐出室2内では、吐出ポート17dを開閉する吐出リード弁39と、吐出リード弁39の開度を規制するリテーナ41とが設けられている。
【0051】
また、可動スクロール19の可動渦巻壁19c及び可動基板19aには軸方向に直線状に延びる給気孔19dが貫設されている。給気孔19dのボス部19b側には、
図5に示すように、給気孔19dより大径の凹部19eが形成されている。凹部19eは、両面滑り軸受37及びブッシュ部33の円筒部33bの厚み分と対向している。給気孔19dは、吐出ポート17d近くの圧縮室7とボス部19b内とをごく短時間連通するようになっている。
【0052】
一方、
図1に示すように、駆動軸29には、固定ブロック15における軸孔15a内のシール材25と両面滑り軸受27との間と、転がり軸受23の内輪との間を連通する給油孔29bが形成されている。両面滑り軸受27の第1段差27aはその給油孔29bと対向している。
【0053】
リヤハウジング13には上下に延びる油分離室4が形成されている。油分離室4の上方には、円筒状の外周面43aを有する分離筒43が固定されている。外周面43aと対面する油分離室4の内周面4aは外周面43aと同軸とされ、これらによって遠心分離式のセパレータが構成されている。吐出室2は吐出通路6によって内周面4aと外周面43aとの間に連通されている。
【0054】
モータ室3内には、ステータ45がフロントハウジング11の内周面に固定して設けられている。ステータ45の内側には、駆動軸29に固定されたロータ47が設けられている。ロータ47、ステータ45及び駆動軸29によってモータ機構8が構成されている。フロントハウジング11の前端側には、外部とモータ室3とを連通させる吸入口3aが貫設されている。リヤハウジング13には分離筒43内と外部とを連通させる吐出口13aが貫設されている。
【0055】
吸入口3aは、配管によって蒸発器と接続されている。蒸発器は配管によって膨張弁と接続されている。膨張弁は配管によって凝縮器と接続されている。凝縮器は配管によって吐出口13aと接続されている。各配管、蒸発器、膨張弁及び凝縮器の図示は省略する。スクロール型圧縮機、各配管、蒸発器、膨張弁及び凝縮器は車両用空調装置の冷凍回路を構成している。
【0056】
このスクロール型圧縮機では、ドライブブッシュ31とボス部19bとの間に両面滑り軸受37を採用しているとともに、駆動軸29のドライブブッシュ31側である一端部29cと固定ブロック15との間にも両面滑り軸受27を採用している。このため、このスクロール型圧縮機は、製造コストの低廉化が可能である。
【0057】
このスクロール型圧縮機は次のように作動する。すなわち、車両の運転者が車両用空調装置に対する操作を行うと、それに基づいて、図示しないモータ制御回路がモータ機構8を制御し、ロータ47及び駆動軸29を駆動軸心O周りに回転させる。これにより、偏心軸部29aが駆動軸心O周りに旋回し、可動スクロール19は駆動軸心O周りに公転する。このため、圧縮室7が外周側から中心側へと容積を減少しながら移動するため、蒸発器から吸入口3aを介してモータ室3に供給される冷媒ガスが圧縮室7内へ吸入され、圧縮室7内で圧縮される。吐出圧力まで圧縮された冷媒ガスは、圧縮室7から吐出ポート17dを経て吐出室2に吐出される。吐出室2内の冷媒ガスは、吐出通路6を経てセパレータに供給され、潤滑油が油分離室4に貯留される。油分離室4内の潤滑油は種々の潤滑に供される。潤滑油を分離した冷媒ガスは吐出口13aから凝縮器へ排出される。こうして、車両用空調装置の空調が行われる。
【0058】
この間、このスクロール型圧縮機では、
図4に示すように、両面滑り軸受27の外側境界域Bo及び内側境界域Biの二つの境界域が相対回転可能である。このため、スクロール型圧縮機が過酷な条件下で使用されても、その負荷によって外側境界域Bo及び内側境界域Biが相対回転する。この際、外側境界域Boが相対回転するよりも、内側境界域Biがより低い摩擦係数で摺動する。このため、その負荷を逃がすことができる。
【0059】
また、このスクロール型圧縮機では、
図5に示すように、両面滑り軸受37の外側境界域Bo及び内側境界域Biの二つの境界域が相対回転可能である。このため、偏心軸部29aから一時的に過大な負荷が両面滑り軸受37に作用しても、その負荷によって外側境界域Bo及び内側境界域Biが相対回転する。この際、外側境界域Boが相対回転するよりも、内側境界域Biがより低い摩擦係数で摺動する。このため、その負荷も逃がすことができる。
【0060】
特に、車両用のスクロール型圧縮機では、外気温や運転条件の変化、スイッチのオンオフ等により、断続運転されたり、その回転数が変動したり、液圧縮を生じたりするため、過大な負荷が作用し易いが、このスクロール型圧縮機では、両面滑り軸受27、37に作用する負荷を逃すことができるため、両面滑り軸受27、37に局所的な摩耗が生じ難い。
【0061】
また、このスクロール型圧縮機では、
図4に示すように、両面滑り軸受27の外側摺動部材67と内側摺動部材65とが軸方向の両端に第1、2段差27a、27bを形成し、第1、2段差27a、27bに毛細管現象によって潤滑油が保持され易い。このため、両面滑り軸受27の外側境界域Bo及び内側境界域Biに潤滑油が供給され易く、それら外側境界域Bo及び内側境界域Biでより相対回転を生じ易い。
【0062】
また、このスクロール型圧縮機では、
図5に示すように、両面滑り軸受37の外側摺動部材53と内側摺動部材51とが軸方向の両端に第1、2段差37a、37bを形成し、第1、2段差37a、37bに毛細管現象によって潤滑油が保持され易い。このため、外側境界域Bo及び内側境界域Biに潤滑油が供給され易く、それら外側境界域Bo及び内側境界域Biでより相対回転を生じ易い。
【0063】
さらに、このスクロール型圧縮機では、
図6に示すように、両面滑り軸受37の第2段差37bが可動基板19aの近傍に位置しているため、その第2段差37bがボス部19bの奥側に潤滑油を好適に保持し、両面滑り軸受37が好適に相対回転を生じる。
【0064】
また、このスクロール型圧縮機では、両面滑り軸受37の第1段差37aをモータ機構8側に位置させているため、その第1段差37aがモータ機構8側に潤滑油を好適に保持し、両面滑り軸受37が好適に相対回転を生じる。
【0065】
このスクロール型圧縮機では、両面滑り軸受37がボス部19bとブッシュ部33との間で圧入されていないため、軸方向に僅かに移動し得る。例えば、
図7に示すように、両面滑り軸受37が後方側に移動した場合、外側摺動部材53の後端面が可動基板19aの前面と当接する。このため、潤滑油を保持する可動基板19a側の第2段差37bによって内側摺動部材51の内層51aにおける内周面51sが面取り33bと当接することを防止できる。第2段差37bが移動規制手段に相当する。また、この際、外側摺動部材53の面取り53dが逃し溝19dに対面するため、外周面53sが逃し溝19dと当接することを防止できる。
【0066】
他方、
図8に示すように、両面滑り軸受37が前方側に移動した場合、外側摺動部材53の前端面がバランスウェイト部35の後面と当接する。このため、両面滑り軸受37は、
図9に示すように、潤滑油を保持するバランスウェイト部35側の第1段差37aによって内側摺動部材51の内層51aにおける内周面51sが曲面33rと当接することを防止できる。
【0067】
また、両面滑り軸受37は、内層51aの両端に面取り51d、51eを有し、面取り51d、51eを除いて内側境界域Biとされている。このため、内層51aに局所的な摩耗や欠けを生じ難く、内側摺動部材51が優れた耐久性を発揮する。また、両面滑り軸受37は、外側摺動部材53が両端の外縁に面取り53c、53dを有し、面取り53c、53dを除いて外側境界域Boとされている。このため、外側摺動部材53にも欠けを生じ難く、欠けによって生じた異物によって外側境界域Boの摺動性が損なわれることがない。
【0068】
また、このスクロール型圧縮機では、
図2及び
図3に示すように、両面滑り軸受27、37は、軸方向の中心を基準として実質的に対称形であり、前後の方向性がなくなっている。このため、両面滑り軸受27、37の製造が容易である。また、
図1に示すように、両面滑り軸受27を軸孔15aに挿入したり、両面滑り軸受37をボス部19bに挿入したりする工程において、両面滑り軸受27、37の前後を区別する必要がなく、スクロール型圧縮機の製造も容易になり、製造コストの低廉化をより確実に実現することができる。
【0069】
また、このスクロール型圧縮機では、作動中、圧縮室7から高圧の冷媒ガスが給気孔19d、凹部19eを経てボス部19b内に供給される。その冷媒ガスは、
図5に示すように、両面滑り軸受37の第2段差37b、内側境界域Bi、外側境界域Bo、第1段差37aを経るとともに、偏心軸部29aと挿通孔33aとの間を経て、背圧室9に至る。
【0070】
そして、両面滑り軸受37及びブッシュ部33の円筒部33bと対向する凹部19eが可動基板19aに形成されていることから、凹部19e内に潤滑油が保持される。このため、両面滑り軸受37が軸方向に移動し、外側摺動部材53と可動基板19aとの隙間が小さくなっても、両面滑り軸受37は好適に相対回転を生じる。
【0071】
このため、冷媒ガスが含む潤滑油により、内側境界域Bi、外側境界域Bo及び偏心軸部29aと挿通孔33aとの間が潤滑される。また、背圧室9が高圧になり、可動スクロール19が好適に固定スクロール17に向かって付勢される。また、自転阻止ピン21a等が好適に潤滑される。
【0072】
さらに、背圧室9に至った冷媒ガスは、
図4に示すように、両面滑り軸受27の内側境界域Bi及び外側境界域Boを経て、シール材25と両面滑り軸受27との間に至る。このため、シール材25が駆動軸29を好適に押圧し、冷媒ガスがモータ室3に漏れることを防止する。
【0073】
特に、駆動軸29の給油孔29bは、シール材25と両面滑り軸受27との間から、
図1に示すように、給油孔29bを経て転がり軸受23の内輪に供給される。この際、両面滑り軸受27の第1段差27aがその給油孔29bと対向しているため、第1段差27aが保持した潤滑油が給油孔29bを通って転がり軸受23に供給され易い。転がり軸受23の内輪に供給された潤滑油は駆動軸29との隙間を経て駆動軸29の前端に移動し、転がり軸受23のボール間を経てモータ室3に至る。このため、転がり軸受23も好適に潤滑される。
【0074】
このため、このスクロール型圧縮機では、モータ室3内のモータ機構8を比較的低温に保つこともでき、モータ機構8が性能を発揮し易い。
【0075】
また、このスクロール型圧縮機では、
図5に示すように、両面滑り軸受37の外側摺動部材53が内側摺動部材51を保持するカラーであり、内側摺動部材51が内層51a、中間層51b及び裏金51cからなることから、十分な強度を発揮することができる。
【0076】
したがって、このスクロール型圧縮機では、製造コストの低廉化を実現するとともに、過酷な使用条件の下であっても、優れた耐久性を発揮することが可能である。
【0077】
(実施例2)
実施例2のスクロール型圧縮機は、
図10に示すように、実施例1の両面滑り軸受37の代わりに両面滑り軸受137を採用しているとともに、
図11に示す可動スクロール119を採用している。
【0078】
図10に示すように、両面滑り軸受137は、実施例1の両面滑り軸受37の外側摺動部材53よりも軸方向に短い外側摺動部材54を採用している。そして、この両面滑り軸受137は、外側摺動部材54の前後の異なる位置に内側摺動部材51が圧入されている。このため、内側摺動部材51の前端のみに外側摺動部材54との間の段差137aが形成されている。段差137aは、モータ機構8側に位置している。
【0079】
また、
図11に示すように、可動スクロール119では、ボス部19bの内周面19sと可動基板19aの前面との間に凸部19eが形成されている。凸部19eと内周面19sとの間には曲面19rが形成されている。他の構成は実施例1と同一であるため、実施例1と同一の構成については実施例1と同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0080】
このスクロール型圧縮機では、両面滑り軸受137が後方側に移動した場合、外側摺動部材54の後端面が可動スクロール119の凸部19eの前面と当接する。このため、内側摺動部材51の内層51aにおける内周面51sが面取り33bと当接することを防止できる。凸部19eが移動規制手段に相当する。また、この際、外側摺動部材54の面取り53dが曲面19rに対面するため、外周面53sが曲面19rと当接することを防止できる。
【0081】
但し、このスクロール型圧縮機では、外側摺動部材54の後側に寄った位置に内側摺動部材51が圧入されているため、スクロール型圧縮機の組付けに際して留意を要するという難点も有している。仮に、前後を異ならせて組付けるとすれば、内側摺動部材51の内層51aの内周面51sの一部がブッシュ部33の曲面33rと干渉し、内側摺動部材51がやや局所的に摩耗し易いことになるおそれがある。他の作用効果は実施例1と同様である。
【0082】
(実施例3)
実施例3のスクロール型圧縮機は、
図12に示すように、実施例1の両面滑り軸受37の代わりに両面滑り軸受237を採用しているとともに、
図13に示す可動スクロール219を採用している。
【0083】
図12に示すように、両面滑り軸受237は、実施例1の両面滑り軸受37の内側摺動部材51よりも軸方向に長い内側摺動部材57を採用している。そして、この両面滑り軸受237は、外側摺動部材53の前後の異なる位置に内側摺動部材57が圧入されている。このため、内側摺動部材57の後端のみに外側摺動部材53との間の段差237bが形成されている。
【0084】
また、
図13に示すように、可動スクロール219では、給気孔19dとは別の位置において、可動基板19aに凹部19gが形成されている。他の構成は実施例1と同一であるため、実施例1と同一の構成については実施例1と同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0085】
このスクロール型圧縮機では、凹部19gが保持した潤滑油が内側境界域Bi及び外側境界域Boに供給され、内側境界域Bi及び外側境界域Boで好適に相対回転を生じる。
【0086】
但し、このスクロール型圧縮機では、外側摺動部材53の前側に寄った位置に内側摺動部材57が圧入されているため、スクロール型圧縮機の組付けに際して留意を要するという難点も有している。仮に、前後を異ならせて組付けるとすれば、内側摺動部材57の内層51aの内周面51sの一部が面取り33bと当接し、内側摺動部材57がやや局所的に摩耗し易いことになってしまう。他の作用効果は実施例1と同様である。
【0087】
(実施例4)
実施例4のスクロール型圧縮機は、
図14に示すように、実施例1の両面滑り軸受37の代わりに両面滑り軸受63を採用している。両面滑り軸受63は、内側摺動部材59に外側摺動部材61を嵌合することによって得られている。
【0088】
内側摺動部材59の内周面59sとブッシュ部33の外周面33sとは内側境界域Biを形成している。内側境界域Biは相対回転可能である。外側摺動部材61の外周面63fとボス部19bの内周面19fとは外側境界域Boを形成している。外側境界域Boは圧入によって固定されている。外側摺動部材61の内周面61sと内側摺動部材59の外周面59sとは中間境界域Bmを形成している。中間境界域Bmは相対回転可能である。
【0089】
内側摺動部材59は、外側摺動部材61を保持する金属製のカラーである。また、外側摺動部材61は、摺動特性に優れたフッ素系樹脂からなり、内周面61sを構成する内層61aと、ボス部19bに圧入された裏金61cと、内層61aと裏金61cとの間を結合する中間層61bとからなる。
【0090】
外側摺動部材61は、内側摺動部材59よりも、軸方向の長さが短い。このため、外側摺動部材61の両端には内側摺動部材59との間に第1、2段差63a、63bが形成されている。第1段差63aは、モータ機構8側に位置している。第2段差63bは、可動基板19aの近傍に位置している。
【0091】
この両面滑り軸受63も、両面滑り軸受63をボス部19bに圧入する工程で前後を区別しなくて済むように、内側摺動部材59の前後の同一位置に外側摺動部材61が嵌合されている。他の構成は実施例1と同一であるため、実施例1と同一の構成については実施例1と同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0092】
このスクロール型圧縮機は、内側境界域Biが相対回転するよりも、中間境界域Bmがより低い摩擦係数で摺動する。また、このスクロール型圧縮機では、ドライブブッシュ31のブッシュ部33は面取り33bを有しているが、両面滑り軸受63の内側摺動部材59が金属製のカラーからなるため、内側摺動部材59の内周面59sに摩耗が生じることはほとんど問題にならない。他の作用効果は実施例1と同様である。
【0093】
以上において、本発明を実施例1〜4に即して説明したが、本発明は上記実施例1〜3に制限されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更して適用できることはいうまでもない。
【0094】
例えば、ドライブブッシュ31とボス部19bとの間にだけ両面滑り軸受37、137、237、63を設け、一端部29cと固定ブロック15との間には、片面に摺動面を有する滑り軸受を設けることもできる。この滑り軸受は、外周面が固定ブロック15の軸孔15aに圧入され、内周面が一端部29cに隙間嵌めされる。この場合にはスクロール型圧縮機の製造コストをより低廉化することが可能である。
【0095】
また、軸支部11bにも片面に摺動面を有する滑り軸受を設けることもできる。この滑り軸受は、外周面が軸支部11bに圧入され、内周面が駆動軸29に隙間嵌めされる。この場合にもスクロール型圧縮機の製造コストをより低廉化することが可能である。
【0096】
さらに、実施例4では、外周側から内周側に向かって、裏金61c、中間層61b、内層61a、内側摺動部材59が位置する両面滑り軸受63を採用したが、外周側から内周側に向かって、内層、中間層、裏金、内側摺動部材が位置する両面滑り軸受を採用することも可能である。