特許第5773086号(P5773086)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許57730862−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5773086
(24)【登録日】2015年7月10日
(45)【発行日】2015年9月2日
(54)【発明の名称】2−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 17/20 20060101AFI20150813BHJP
   C07C 17/25 20060101ALI20150813BHJP
   C07C 21/18 20060101ALI20150813BHJP
【FI】
   C07C17/20
   C07C17/25
   C07C21/18
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-540251(P2014-540251)
(86)(22)【出願日】2013年3月21日
(65)【公表番号】特表2015-506909(P2015-506909A)
(43)【公表日】2015年3月5日
(86)【国際出願番号】JP2013059161
(87)【国際公開番号】WO2013141409
(87)【国際公開日】20130926
【審査請求日】2014年8月18日
(31)【優先権主張番号】61/614,102
(32)【優先日】2012年3月22日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岸本 誠之
(72)【発明者】
【氏名】小松 雄三
【審査官】 吉田 直裕
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−227675(JP,A)
【文献】 特表2014−530214(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/123148(WO,A1)
【文献】 国際公開第2013/065617(WO,A1)
【文献】 特表2014−510027(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 17/00−17/22
JSTPlus(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
含塩素化合物とフッ化水素とを、該含塩素化合物の全重量に対して200ppm以上の水の存在下で、気相状態において加熱下で反応させることを特徴とする2-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンの製造方法であって、
該含塩素化合物が、一般式(1):CX3CHClCH2Cl(式中、各Xは、同一又は異なって、Cl又はFである)で表されるクロロプロパン、一般式(2):CClY2CCl=CH2(式中、各Yは、同一又は異なって、Cl又はFである)で表されるクロロプロペン、及び一般式(3)CZ2=CClCH2Cl(式中、各Zは、同一又は異なって、Cl又はFである)で表されるクロロプロペンからなる群から選ばれた少なくとも一種の化合物である、2-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンの製造方法。
【請求項2】
触媒の不存在下に反応を行う、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
原料として用いる含塩素化合物1モルに対してフッ化水素を5〜30モル使用し、300〜500℃で反応を行う請求項1又は2に記載の2-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
化学式:CF3CCl=CH2で表される2-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(HCFO-1233xf)は、各種フルオロカーボンを製造するための中間体として有用な化合物であり、また、各種の重合体におけるモノマー成分としても有用である。
【0003】
HCFO-1233xfの製造方法としては、触媒を用いて気相で原料を無水フッ化水素(HF)と反応させる方法が知られている。例えば、下記特許文献1には、クロム系触媒を用いて1,1,2,3-テトラクロロプロペン(HCO-1230xa, CCl2=CClCH2Cl)を気相フッ素化する方法が開示されており、下記特許文献2にも同じくクロム系触媒を用いて1,1,2,3-テトラクロロプロペンを気相フッ素化する方法が報告されている。また、下記特許文献3には、触媒の劣化を抑制するための安定剤の存在下で1,1,2,3-テトラクロロプロペン(HCO-1230xa)、1,1,1,2,3-ペンタクロロプロパン(HCC-240db)、2,3,3,3-テトラクロロプロペン(HCO-1230xf)等をフッ素化できることが記載されている。
【0004】
しかしながら、これらの文献に記載されている方法では、各種の不利な点がある。例えば、HCFO-1233xfの収率について更に改善が必要であり、触媒を用いることによってコストアップの問題がある上、目的物であるHCFO-1233xf以外の生成物が多く、選択率が十分ではない。更に、反応の進行に伴って触媒活性が劣化し易いために、触媒劣化の改善のために安定剤を使用することなど多くの試みがなされてきた。
【0005】
また、下記特許文献4には、液相でハロゲン化アンチモン触媒の存在下に1,1,2,3-テトラクロロプロペン(HCO-1230xa)を無水フッ化水素(HF)と反応させる方法が開示されている。しかしながら、この方法は、触媒の取り扱いが困難な上、反応器腐食や廃棄物の処理等により不経済であり、ハンドリングにも問題があるため、工業的な製法としては適さない。
【0006】
更に、下記特許文献5には、液相において無触媒条件下で1,1,2,3-テトラクロロプロペン(HCO-1230xa)と無水フッ化水素(HF)とを反応させることにより、HCFC-1233xfを製造できることが報告されている。しかしながら、この方法は、反応速度が遅く長い反応時間を要すること、大過剰のHFが必要であること、高圧下での厳しい反応条件を強いる必要があること等から工業スケールの製法としては不向きである。
【0007】
以上の通り、現状では、経済性に適合するように、簡便かつ高収率でHCFO-1233xfを製造できる方法が確立するには至っていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】WO 2007/079431 A2
【特許文献2】WO 2008/054781 A1
【特許文献3】WO 2009/015317 A1
【特許文献4】US 2009/0030247 A1
【特許文献5】WO 2009/003084 A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記した従来技術の現状に鑑みてなされたものであり、その主な目的は、工業的スケールでの実施に適した簡便かつ経済的に有利な方法によって、効率よく2-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(HCFO-1233xf)を製造できる方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、上記した目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、下記の事項を見出した。即ち、特定の一般式で表されるクロロプロパン化合物又はクロロプロペン化合物を原料として用い、これを気相中でフッ化水素と加熱下で反応させてHCFO-1233xfを製造する方法において、反応系中に一定量以上の水分を存在させる場合には、目的とするHCFO-1233xfの選択率が向上し、一段階の反応操作によって、比較的短い反応時間で目的とするHCFO-1233xfを効率よく製造することができる。そして、この方法によれば、従来のHCFO-1233xfの製造方法における欠点を解消して、工業的スケールにおいて、生産性よくHCFO-1233xfを製造することが可能となる。本発明は、これらの知見に基づいて完成されたものである。
【0011】
即ち、本発明は、下記の2-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンの製造方法を提供するものである。
項1. 含塩素化合物とフッ化水素とを、該含塩素化合物の全重量に対して50ppm以上の水の存在下で、気相状態において加熱下で反応させることを特徴とする2-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンの製造方法であって、
該含塩素化合物が、一般式(1):CX3CHClCH2Cl(式中、各Xは、同一又は異なって、Cl又はFである)で表されるクロロプロパン、一般式(2):CClY2CCl=CH2(式中、各Yは、同一又は異なって、Cl又はFである)で表されるクロロプロペン、及び一般式(3)CZ2=CClCH2Cl(式中、各Zは、同一又は異なって、Cl又はFである)で表されるクロロプロペンからなる群から選ばれた少なくとも一種の化合物である、2-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンの製造方法。
項2. 触媒の不存在下に反応を行う、上記項1に記載の方法。
項3. 原料として用いる含塩素化合物1モルに対してフッ化水素を5〜30モル使用し、300〜500℃で反応を行う上記項1又は2に記載の2-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンの製造方法。
【0012】
以下、本発明の2-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンの製造方法について具体的に説明する。
(1)原料化合物
本発明では、原料化合物としては、一般式(1):CX3CHClCH2Cl(式中、各Xは、同一又は異なって、Cl又はFである)で表されるクロロプロパン、一般式(2):CClY2CCl=CH2(式中、各Yは、同一又は異なって、Cl又はFである)で表されるクロロプロペン、及び一般式(3)CZ2=CClCH2Cl(式中、各Zは、同一又は異なって、Cl又はFである)で表されるクロロプロペンからなる群から選ばれた少なくとも一種の含塩素化合物を用いる。これらの含塩素化合物を原料として、後述する条件に従ってフッ化水素との反応を行うことによって、一段階の反応工程で、目的とする2-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(HCFO-1233xf)を高収率で製造できる。
【0013】
上記した原料化合物の内で、一般式(1):CX3CHClCH2Clで表されるクロロプロパンの具体例としては、CCl3CHClCH2Cl (HCC-240db, bp. 179℃/760mmHg, 51-53℃/3mmHg)、CFCl2CHClCH2Cl(HCFC-241db, bp. 157℃)、CF2ClCHClCH2Cl(HCFC-242dc, bp. 113-114℃)、CF3CHClCH2Cl(HCFC-243db) 等を例示でき、一般式(2):CClY2CCl=CH2で表されるクロロプロペンの具体例としては、CCl3CCl=CH2 (HCO-1230xf, bp. 128℃)、CFCl2CCl=CH2(HCFO-1231xf, bp. 98.5-99℃)、CF2ClCCl=CH2(HCFO-1232xf, bp. 57-58℃)等を例示でき、一般式(3)CZ2=CClCH2Clで表されるクロロプロペンの具体例としては、CCl2=CClCH2Cl(HCO-1230xa, bp. 138℃) 、CFCl=CClCH2Cl(HCFO-1231xb)、 CF2=CClCH2Cl(HCFO-1232xc)等を例示できる。
【0014】
これらの原料化合物の内で、特に、HCC-240db(CCl3CHClCH2Cl( 1,1,1,2,3-ペンタクロロプロパン))、 HCFC-243db (CF3CHClCH2Cl ( 2,3-ジクロロ-1,1,1-トリフルオロプロパン))、HCO-1230xf (CCl3CCl=CH2(2,3,3,3-テトラクロロプロペン))、及びHCO-1230xa (CCl2=CClCH2Cl (1,1,2,3-テトラクロロプロペン))の各化合物は、入手が容易で安価な化合物である点において有利な原料化合物である。
【0015】
本発明では、上記した原料化合物を一種単独又は二種以上混合して用いることができる。
【0016】
(2)反応方法
本発明の製造方法では、原料化合物である含塩素化合物の全重量を基準として50ppm以上の水分の存在下において、上記した原料化合物とフッ化水素とを、気相状態において加熱下で反応させる。
【0017】
この様な条件下において、上記原料化合物をフッ化水素と反応させることによって、目的とする2-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(HCFO-1233xf)の選択率が向上して、一段階の反応工程によって、効率良く2-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(HCFO-1233xf)を得ることができる。
【0018】
本発明の製造方法では、上記した原料化合物とフッ化水素とを気相状態で反応させることが必要である。この場合、後述する反応温度領域において、原料化合物とフッ化水素が接触する際に原料化合物が気相状態であればよく、原料化合物の供給時には、原料化合物が液体状態であってもよい。例えば、原料化合物が常温、常圧で液状である場合には、原料化合物を気化器を用いて気化(気化領域)させてから予熱領域を通過させ、無水フッ化水素と接触させる混合領域に供給することによって、気相状態で反応を行うことができる。また、原料化合物を液体状態で反応装置に供給し、フッ化水素との反応領域に達した時に気化させて反応させても良い。原料化合物を反応領域で気化させる方法については特に限定はないが、例えば、ニッケルビーズ、ハステロイ片などの熱伝導性が良好で本発明の反応に対する触媒活性が無く、しかもフッ化水素に対して安定な材料を反応管内に充填して、反応管内の温度分布を均一にして、原料化合物の気化温度以上に加熱し、ここに液体状態の原料化合物を供給して、原料化合物を気化させて気相状態としてもよい。
【0019】
フッ化水素は、通常、原料化合物と共に、気相状態で反応器に供給すればよい。フッ化水素の供給量については、通常、上記した原料化合物1モルに対して、3モル程度以上とすればよいが、5〜100モル程度の範囲とすることが好ましく、5〜30モル程度の範囲とすることがより好ましい。この様な使用量の範囲とすることによって、原料化合物の転化率とHCFO-1233xfの選択率の両方を良好な範囲内に維持することができる。特に、原料化合物1モルに対してフッ化水素を10モル以上供給する場合に、HCFO-1233xfの選択率を非常に高くすることができる。
【0020】
尚、上記した原料は、反応器にそのまま供給してもよく、あるいは、窒素、ヘリウム、アルゴン等の不活性ガスで希釈して供給しても良い。
【0021】
本発明において、反応系に存在する水分量とは、後述する所定の反応温度域において原料化合物とフッ化水素が反応する際に、反応器内での反応が進行する場所に存在する水分量である。具体的には、原料として用いる含塩素化合物とフッ素化剤に含まれる水分の他に、必要に応じて添加する成分である不活性ガス等に含まれる水分や、必要に応じて別個に添加する水分を加えた量である。
【0022】
水分の供給方法は任意であり、例えば、原料とする含塩素化合物に水分を含ませた状態で反応器に供給する方法、無水フッ化水素に予め水分を含ませた状態で反応器に供給する方法、原料とは別ラインで反応器に水を供給する方法、不活性ガスに水蒸気を同伴させて反応器に供給する方法など各種の方法を採用できる。
【0023】
反応系に存在する水分量は、原料とする含塩素化合物の全重量を基準として、50ppm程度以上であることが好ましく、100ppm程度以上であることがより好ましく、200ppm程度以上であることが更に好ましく、1000ppm以上であることが特に好ましい。水分量の上限については特に限定はないが、高い選択率で目的物が得られる点で、原料とする含塩素化合物の全重量を基準として10000ppm(1重量%)程度の水分量が好ましいが、これを上回る水分量とすると、設備の腐食や目的物と水分の分離の複雑さを回避できなくなる恐れがある。
【0024】
本発明では、原料化合物とフッ化水素との反応は、触媒の存在下又は不存在下において行うことができる。触媒の種類については、特に限定はなく、公知のフッ素化反応用触媒を用いることができる。
【0025】
本発明では、触媒の不存在下において反応を行うことが好ましい。触媒の不存在下において、前述した条件に従って、一定量以上の水分の存在下に反応を行うことによって、高い選択率で2-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンを得ることが可能となる。
【0026】
本発明方法で用いる反応器の形態は特に限定されるものではなく、触媒の存在下に反応を行う場合には、例えば、触媒を充填した管型の流通型反応器を用いればよい。また、触媒の不存在下に反応を行う場合には、例えば、空塔の断熱反応器やフッ化水素と出発物質との気相混合状態を向上させるための多孔質又は非多孔質の金属や媒体を充填した断熱反応器を用いればよい。また、熱媒体を用いて除熱・反応器内の温度分布を均一化した多管型反応器等を用いることもできる。空筒の反応器を使用する場合、内径の小さい反応管を用いて伝熱効率を良くする方法では、例えば、原料の流量と、反応管の内径の関係は、線速度が大きくかつ伝熱面積が大きくなるようにすることが好ましい。
【0027】
反応器は、ハステロイ(HASTELLOY)、インコネル(INCONEL)、モネル(MONEL)、インコロイ(INCOLLOY)等のフッ化水素の腐食作用に抵抗性がある材料によって構成されていることが好ましい。
【0028】
本発明方法では、反応器の中の温度は、通常、250〜600℃程度であり、300〜500℃程度が好ましく、350〜450℃程度がより好ましい。この温度範囲より高温になるとHCFO-1233xfの選択率が低下し、低温になると原料化合物の転化率が低下するので、温度が高すぎることや低すぎることは、いずれも好ましくない。尚、450℃より高温で反応を行うと、炭化物が生成して反応管壁や充填剤に付着・堆積する場合があり、反応器内を徐々に閉塞することがある。このような場合には反応系中に酸素を同伴するか、あるいはいったん反応を停止して酸素あるいは空気を流通させることで、反応管内に残存する炭化物を燃焼除去してもよい。
【0029】
反応時の圧力については、上記した原料化合物とフッ化水素が気相状態で存在できる圧力であれば特に限定されるものではなく、常圧下、加圧下、減圧下のいずれでもよい。例えば、本発明の製造方法は、減圧下又は大気圧(0.1MPa)下で実施することができ、原料が液体状態にならない程度の加圧下で実施することもできる。
【0030】
反応時間については特に限定的ではないが、通常、V/Foで表される接触時間を0.1〜100 sec、好ましくは1〜30 sec 程度の範囲とすればよい。ここで、V/Fo は、反応系に流す原料ガス(原料化合物、フッ化水素及び不活性ガス)の全流量Fo(0℃、1MPaでの流量:cc/sec)に対する気相での反応空間体積V(cc)の比率である。
【0031】
上記した反応条件によれば、反応器出口では、CF3CCl=CH2(2-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン、HCFO-1233xf)を含む反応生成物を得ることができる。HCFO-1233xfは、蒸留などによって精製して回収することができ、回収された生成物は、そのまま目的とする用途に用いても良いし、他の化合物へと変換してもよい。
【0032】
本発明の製造方法では、反応生成物中には、HCFO-1233xfの他に、CCl2=CClCH2Cl(HCO-1230xa)、CCl3CCl=CH2(HCO-1230xf)、CFCl2CHClCH2Cl(HCFC-241db)、CFCl2CCl=CH2(HCFO-1231xf)、CF2ClCHClCH2Cl(HCFC-242dc)、CF2ClCCl=CH2(HCFO-1232xf)等が含まれる。これらの化合物は、使用した原料の種類や反応条件に応じて、HCFO-1233xfの前駆体として生じるものであり、いずれも本発明の製造方法の原料としても使用できるものである。
【0033】
本発明の製造方法では、反応生成物に含まれるこれらの前駆体や未反応の原料、即ち、前記した一般式(1)、一般式(2)又は一般式(3)で表される含塩素化合物について、HCFO-1233xfを分離回収した後、再び反応器に戻してリサイクルして、原料化合物として再利用することができる。この様にHCFO-1233xfの前駆体や未反応の原料をリサイクルすることによって、原料転化率が低い場合であっても、高い生産性を維持することができる。
【発明の効果】
【0034】
本発明方法によれば、特定の一般式で表される含塩素化合物を原料として、高い選択率で2-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(HCFO-1233xf)を製造することができ、一段階の反応によって、比較的短い接触時間で、極めて高収率で2-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(HCFO-1233xf)を得ることができる。
【0035】
特に、触媒の不存在下に本発明の方法を行う場合には、従来の触媒を用いる製造方法の欠点をことごとく解消し、より高い選択率で目的とする2-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンを得ることができる。
【0036】
また、本発明の製造法は、常圧や減圧状態等の穏和な条件下で実施が可能であり、連続製造に適した気相反応を利用する製造方法である。
【0037】
このため、本発明の方法は、2-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(HCFO-1233xf)の製造方法として工業的に非常に有利な方法である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明を更に詳細に説明する。
【0039】
比較例1
内径43 mm、長さ 50 cmの管状ハステロイ製反応器にハステロイ製の板材 (10 mm x 20 mm x 0.8 mm、以下、「ハステロイ製板」という) を 2.3 kg充填した。この反応器を大気圧 (0.1 MPa)下で 400 ℃ に維持し、窒素を7.7 L/min. (0℃、0.1 MPaでの流量)、無水フッ化水素(HF)ガスを7.5 L/min (0℃、0.1 MPaでの流量)、及びCCl3CHClCH2Cl (HCC-240db)を0.68 L/min (0℃、0.1 MPaでのガス流量)の各流速で供給した。この時、反応器に供給されている水分量は HCC-240db に対して 40 ppm であった。また、HF:HCC-240dbモル比は11:1 、接触時間(V/F0)はハステロイ製板充填層の空間容積 (V = 0.66 L) と反応物の総流量 (F0 = 15.9 L/min. ) から、V/F0= 2.5 sec であった。8 時間後、反応器からの流出ガスを、ガスクロマトグラフを使用して分析した。分析結果を表1に示す。
【0040】
実施例1
水分を飽和させたCCl3CHClCH2Cl (HCC-240db)を原料として用いること以外は、比較例1と同様の方法で反応を行った。反応器に供給された水分量は、HCC-240db に対して 200 ppm であった。流出ガスの分析結果を表 1 に示す。
【0041】
実施例2
原料を添加するラインとは別のラインから、水分量がCCl3CHClCH2Cl (HCC-240db) に対して 3000 ppm になるように水を添加する以外は、比較例1と同様の条件で反応を行った。流出ガスの分析結果を表1に示す。
【0042】
本実施例での生成物は以下の通りである。
CF3CCl=CH2(HCFO-1233xf)
CF2ClCCl=CH2(HCFO-1232xf)
CF2ClCHClCH2Cl(HCFC-242dc)
【0043】
【表1】
【0044】
比較例2
内径 43 mm、長さ 50 cmの管状ハステロイ製反応器にハステロイ製板 (10 mm x 20 mm x 0.8 mm) を 2.3 kg充填した。この反応器を大気圧 (0.1 MPa)下で 400 ℃ に維持し、窒素を 5.0 L/min. (0℃、0.1 MPaでの流量)、無水フッ化水素(HF)ガスを10.2 L/min (0℃、0.1 MPaでの流量)、及びCCl3CHClCH2Cl (HCC-240db)を0.68 L/min (0℃、0.1 MPaでのガス流量)の各流速で供給した。この時、反応器に供給されている水分量は HCC-240db に対して 40 ppm であった。また、HF:HCC-240dbモル比は15:1 、接触時間(V/F0)はハステロイ製板充填層の空間容積 (V = 0.66 L) と反応物の総流量 (F0 = 15.9 L/min. ) から、V/F0= 2.5 sec であった。8 時間後、反応器からの流出ガスを、ガスクロマトグラフを使用して分析した。分析結果を表2に示す。
【0045】
実施例3
水分を飽和させたCCl3CHClCH2Cl (HCC-240db)を原料として用いること以外は、比較例2と同様の方法で反応を行った。反応管に供給される水分量は、HCC-240db に対して 200 ppm であった。流出ガスの分析結果を表 2に示す。
【0046】
実施例4
原料を添加するラインとは別のラインから、水分量がCCl3CHClCH2Cl (HCC-240db) に対して 3000 ppm になるように水を添加すること以外は、比較例2と同様の条件で反応を行った。流出ガスの分析結果を表2に示す。
【0047】
【表2】
【0048】
比較例3
内径 43 mm、長さ 50 cmの管状ハステロイ製反応器にハステロイ製板 (10 mm x 20 mm x 0.8 mm) を 2.3 kg充填した。この反応器を大気圧 (0.1 MPa)下で 400 ℃ に維持し、窒素を0.7 L/min. (0℃、0.1 MPaでの流量)、無水フッ化水素(HF)ガスを14.4 L/min (0℃、0.1 MPaでの流量) 、及びCCl3CHClCH2Cl (HCC-240db)を0.68 L/min (0℃、0.1 MPaでのガス流量)の各流速で供給した。この時、反応器に供給されている水分量は HCC-240db に対して 40 ppm であった。また、HF:HCC-240dbモル比は21:1 、接触時間(V/F0)はハステロイ製板充填層の空間容積 (V = 0.66 L) と反応物の総流量 (F0 = 15.9 L/min. ) から、V/F0= 2.5 sec であった。8 時間後、反応器からの流出ガスを、ガスクロマトグラフを使用して分析した。分析結果を表3に示す。
【0049】
実施例5
水分を飽和させたCCl3CHClCH2Cl (HCC-240db)を原料として用いること以外は、比較例3と同様の方法で反応を行った。反応器に供給される水分量は、HCC-240db に対して 200 ppmであった。流出ガスの分析結果を表3に示す。
【0050】
実施例6
原料を添加するラインとは別のラインから、水分量がCCl3CHClCH2Cl (HCC-240db) に対して 3000 ppm になるように水を添加すること以外は、比較例3と同様の条件で反応を行った。流出ガスの分析結果を表3に示す。
【0051】
【表3】