(54)【発明の名称】ポリイミド前駆体、それから得られるポリイミド樹脂膜、ならびにそれを含む表示素子、光学素子、受光素子、タッチパネル、回路基板、有機ELディスプレイ、および、有機EL素子ならびにカラーフィルタの製造方法
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
式(3)で表されるジアミン残基のモル数が、式(25)〜(28)から選択される少なくとも1種の酸二無水物残基の合計のモル数と同じであるか、またはそれより少ない請求項7に記載のポリイミド前駆体。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を実施するための形態を詳細に説明する。なお、以下の実施の形態により本発明が限定されるものではない。
【0020】
<ポリイミド前駆体>
本発明のポリイミド前駆体は、式(1)で表される酸二無水物残基、式(2)で表されるジアミン残基、ならびに、式(3)で表されるジアミン残基の1種以上、を含むポリイミド前駆体であって、式(1)で表される酸二無水物残基がポリイミド前駆体中の酸二無水物残基の全量に対し50モル%以上であり、式(2)で表されるジアミン残基がポリイミド前駆体中のジアミン残基の全量に対し50モル%以上であり、式(3)で表されるジアミン残基がポリイミド前駆体中のジアミン残基の全量に対し15モル%以下であるポリイミド前駆体である。
【0022】
式(3)中のR
1〜R
8は各々独立に水素、アルキル基、シクロアルキル基、複素環基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルコキシ基、アリールエーテル基、アリール基、ハロアルキル基、シアノ基およびシリル基からなる群より選ばれ、これらはさらに置換基を有していてもよく、また隣り合う基が結合を有して縮合環構造を形成しても良い。
【0023】
式(3)中のA
1及びA
2は同じでも異なっていてもよく、芳香族環、脂肪族環、鎖状炭化水素基、もしくはこれらの組み合わせからなる構造またはこれらとアミド基、エステル基、エーテル基、アルキレン基、オキシアルキレン基、ビニレン基およびハロアルキレン基からなる群より選ばれる基の1種以上との組み合わせからなる構造である。
【0024】
これらの基のうち、アルキル基とは、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基およびtert−ブチル基などの飽和脂肪族炭化水素基を示し、これは置換基を有していても有していなくてもよい。置換されている場合の追加の置換基には特に制限は無く、例えば、アルキル基、アリール基およびヘテロアリール基等を挙げることができ、この点は、以下の記載にも共通する。
【0025】
シクロアルキル基とは、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ノルボルニル基およびアダマンチル基などの飽和脂環式炭化水素基を示し、これは置換基を有していても有していなくてもよい。
【0026】
複素環基とは、例えば、ピラン環、ピペリジン環、環状アミドなどの炭素以外の原子を環内に有する脂肪族環を示し、これは置換基を有していても有していなくてもよい。複素環基の炭素数は特に限定されないが、通常、2以上20以下の範囲である。
【0027】
アルケニル基とは、例えば、ビニル基、アリル基、ブタジエニル基などの二重結合を含む不飽和脂肪族炭化水素基を示し、これは置換基を有していても有していなくてもよい。
【0028】
シクロアルケニル基とは、例えば、シクロペンテニル基、シクロペンタジエニル基、シクロヘキセニル基などの二重結合を含む不飽和脂環式炭化水素基を示し、これは置換基を有していても有していなくてもよい。
【0029】
アルコキシ基とは、例えば、メトキシ基、エトキシ基およびプロポキシ基などのエーテル結合を介して脂肪族炭化水素基が結合した官能基を示し、この脂肪族炭化水素基は置換基を有していても有していなくてもよい。
【0030】
アリールエーテル基とは例えば、フェノキシ基など、エーテル結合を介した芳香族炭化水素基が結合した官能基を示し、芳香族炭化水素基は置換基を有していても有していなくてもよい。
【0031】
アリール基とは、例えばフェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、フルオレニル基、フェナントリル基、ターフェニル基、アントラセニル基およびピレニル基などの芳香族炭化水素基、もしくはこれらが複数連結した基を示し、これは無置換でも置換されていてもかまわない。このようなアリール基が有していても良い置換基はアルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アリールエーテル基、アルキルチオ基、ハロゲン、シアノ基、アミノ基(アミノ基はさらにアリール基やヘテロアリール基で置換されていてもよい)、シリル基およびボリル基などである。
【0032】
ハロアルキル基とは、例えばトリフルオロメチル基のように、アルキル基の水素がすべてもしくは一部ハロゲンに置換されたものを示す。
【0033】
シリル基とは、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基のような、アルキル鎖でケイ素の反応点が置換されたものや、アルコキシ基で置換された基を示す。
【0034】
隣り合う基が結合を有して縮合環構造を形成するとは、前記式(3)で説明すると、R
1〜R
8の中から選ばれる任意の隣接2置換基(例えばR
3とR
4)が互いに結合して共役または非供役の縮合環を形成するものである。これら縮合環は環内構造に窒素、酸素、硫黄原子を含んでいてもよいし、さらに別の環と結合していてもよい。
【0035】
また、式(3)において、A
1およびA
2における芳香族環とはベンゼン、ナフタレン、ビフェニル、フェナントレン、アントラセンおよびピレンなどの芳香族炭化水素から誘導される環を表す。
【0036】
脂肪族環とは、シクロプロパン、シクロヘキサン、ノルボルネンおよびアダマンタンなどの飽和脂環式炭化水素から誘導される環を示す。
【0037】
鎖状炭化水素基とは、直鎖、もしくは分岐を有する炭化水素基を示し、この中には環状の炭化水素基は含まれない。
【0038】
アルキレン基とは、例えば、メチレン基、エチレン基、n−プロピレン基、イソプロピレン基、n−ブチレン基、sec−ブチレン基およびtert−ブチレン基などの2価の飽和脂肪族炭化水素基を示し、これは置換基を有していても有していなくてもよい。
【0039】
オキシアルキレン基とは、例えば、オキシエチレン基、オキシプロピレン基などのエーテル結合を介して脂肪族炭化水素基が結合した2価の官能基を示し、この脂肪族炭化水素基は置換基を有していても有していなくてもよい。
【0040】
ビニレン基とはエチレンから水素を2個取り除いた2価の基を表す。
【0041】
ハロアルキレン基とはハロアルキル基から水素をひとつ除いた2価の基を表す。
【0042】
式(1)で表される酸二無水物残基はポリイミド前駆体中の酸二無水物残基の全量に対し50モル%以上であり、70モル%以上であることが好ましく、80モル%以上であることがより好ましい。剛直なビフェニル構造を一定量以上有するため、本発明のポリイミド前駆体から得られたポリイミドは低CTE性と耐薬品性を示す。なお、式(1)で表される酸二無水物残基はポリイミド前駆体中の酸二無水物残基の全量に対する割合の上限は、100モル%であるが、後述する式(4)または式(25)〜(28)の酸二無水物残基を含有することもまた好ましいことから、そのような場合には90モル%以下であることが好ましい。
【0043】
式(2)で表されるジアミン残基はポリイミド前駆体中のジアミン残基の全量に対し50モル%以上であり、70モル%以上であれば好ましく、80モル%以上がさらに好ましく、90モル%以上が特に好ましい。なお、式(2)で表されるジアミン残基のポリイミド前駆体中のジアミン残基の全量に対する割合の上限は、式(3)で表されるジアミン残基を含有することが必要であることから98モル%が好ましく、95モル%以下がより好ましい。式(2)で表されるジアミン残基は、脂環式構造のため、一定量以上分子鎖中に含まれることで、分子鎖内の共役を短くすることができ、ポリイミド前駆体をイミド化した後のポリイミドは高透明性を示す。また、剛直な構造であることからポリイミドは低CTEを示す。
【0044】
また、本発明のポリイミド前駆体には式(3)で表されるジアミン残基が含まれる。この残基は構造中にフルオレン構造を含有している。フルオレンを9,9位でポリイミド前駆体の主鎖と結合させることで、ポリマー主鎖に対して垂直方向の分極率が低下し、その結果、イミド化後のポリイミドの複屈折が低下する。また、式(3)で表されるフルオレン残基は剛直な構造であるため、式(1)で表されるビフェニル基や式(2)で表されるシクロヘキシル基に由来する主鎖の剛直性が顕著に低下することない。その結果、本発明のポリイミド前駆体から得られるポリイミドは低CTEを示す。
【0045】
式(3)で表されるジアミン残基の含有量はジアミン残基の全量に対して15モル%以下である。式(3)で表されるジアミン残基の含有量の下限はポリマー主鎖に対して垂直方向の分極率が低下させる観点から、1モル%以上が好ましく、3モル%以上がより好ましく、5モル%以上がさらに好ましい。式(3)で表されるジアミン残基が上記範囲であることで、低複屈折と低CTEのバランスがより向上する。さらに、式(2)で表されるシクロヘキシル基とは異なり、式(3)で表されるジアミン残基は芳香族ジアミン残基であるため、可視光波長域に吸収帯を有する電荷移動錯体が形成される。しかし、式(3)で表されるジアミン残基が上記範囲であると、可視光波長域での透過率が顕著に低下することはない。その結果、本発明のポリイミド前駆体から得られるポリイミドは高透明性示す。
【0046】
本発明の別の形態としては、さらに式(4)で表される酸二無水物残基の1種以上を含むポリイミド前駆体である。
【0048】
式(4)中のR
9〜R
16は各々独立に水素、アルキル基、シクロアルキル基、複素環基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルコキシ基、アリールエーテル基、アリール基、ハロアルキル基、シアノ基およびシリル基からなる群より選ばれ、これらはさらに置換基を有していてもよく、また隣り合う基が結合を有して縮合環構造を形成しても良い。
【0049】
式(4)において、R
9〜R
16におけるアルキル基、シクロアルキル基、複素環基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルコキシ基、アリールエーテル基、フェノキシ基、アリール基、ハロアルキル基、シリル基、及び、「隣り合う基が結合を有して縮合環構造を形成する」の定義は、前記の式(3)のR
1〜R
8におけるそれらと同じである(以降のR
17〜R
157についても同じ)。
【0050】
式(4)中のB
1及びB
2は同じでも異なっていてもよく、芳香族環、脂肪族環、鎖状炭化水素基、もしくはこれらの組み合わせからなる構造またはこれらとアミド基、エステル基、エーテル基、アルキレン基、オキシアルキレン基、ビニレン基およびハロアルキレン基からなる群より選ばれる基の1種以上との組み合わせからなる構造である。
【0051】
式(4)において、B
1およびB
2における芳香族環、脂肪族環、鎖状炭化水素基、アルキレン基、オキシアルキレン基、ビニレン基、ハロアルキレン基の定義は、前記の式(3)のA
1およびA
2におけるそれらと同じである。
【0052】
式(4)で表される酸二無水物残基は構造中にフルオレン構造を有する。前述の通り、フルオレン構造を有することで、主鎖の剛直性を大きく落とすことなく、ポリイミド前駆体をイミド化した後のポリイミドの複屈折が低下する。したがって、酸二無水物残基とジアミン残基の両方にフルオレン構造を導入することで、形成されるポリイミド膜の複屈折がさらに低下する。加えて、ポリマー主鎖に対してフルオレン部分がねじれた構造であるため、分子鎖内での電荷移動錯体の形成が抑制される。その結果、本発明のポリイミド前駆体から得られるポリイミドは高透明性を示す。
【0053】
式(4)で表される酸二無水物残基の含有量は、ポリイミド前駆体中の酸二無水物残基の全量に対し40モル%以下であることが好ましい。かかる範囲であることで、低複屈折と低線CTEのバランスが向上する。また、機械強度に優れ、成膜時のクラックを低減するため好ましい。さらに、成膜時のクラック低減の観点から、式(4)で表される酸二無水物残基の含有量は酸二無水物残基の全量に対して30モル%以下であることがより好ましく、25モル%以下であることがさらに好ましい。また、式(4)で表される酸二無水物残基が含まる場合、その含有量の下限値としては、酸二無水物残基の全量に対して1モル%以上であることが好ましく5モル%以上であることがより好ましく、10モル%以上であることがさらに好ましい。
【0054】
本発明のポリイミド前駆体が式(3)で表されるジアミン残基と式(4)で表される酸二無水物残基を共に含む場合、式(1)、(2)、(3)、(4)で表される残基の含有量の範囲が、前述したそれぞれの含有率の範囲を満たすのであれば、式(3)と式(4)で表される残基の総量に特に制限はない。ただし、成膜時のクラック低減の観点から、式(3)と式(4)の残基の合計が全残基の含有量に対して、40モル%以下であることが好ましく、30モル%以下であることがより好ましく、15モル%以下であることがさらに好ましい。
【0055】
式(3)におけるA
1およびA
2はそれぞれ以下の(5)〜(10)のいずれかで表される構造であることがより好ましい。
【0057】
式(5)〜(7)中のXは単結合、エーテル基、アルキレン基、オキシアルキレン基またはビニレン基であり、片方の結合はフルオレン環と連結する。ここで、単結合とはXの両側が、原子または結合基を介在させずに直接に単結合で結合していることをいい、アルキレン基等の定義は、前記の式(3)のA
1およびA
2のXにおけるそれらと同じである(以降Yについて同じ)。
【0058】
式(8)〜(10)中のYはアミド基、エステル基、エーテル基、アルキレン基、オキシアルキレン基、ビニレン基またはハロアルキレン基である。
【0059】
式(5)〜(10)中のR
17〜R
80は各々独立に水素、アルキル基、シクロアルキル基、複素環基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルコキシ基、アリールエーテル基、アリール基、ハロアルキル基、シアノ基、水酸基およびシリル基からなる群より選ばれる。ただし、式(5)において、R
17〜R
21のうちいずれかはXを含む連結基である。式(6)において、R
22〜R
32のうちいずれかはXを含む連結基である。式(8)〜(10)において、2つの環構造のうちどちらがフルオレン環に連結してもよい。また、R
33〜R
37のうちいずれか、及び、R
38〜R
48のうちいずれかのそれぞれはYを含む連結基である。R
49〜R
53のうちいずれか、及び、R
54〜R
58のうちいずれかのそれぞれはYを含む連結基である。R
59〜R
69のうちいずれか、及び、R
70〜R
80のうちいずれかのそれぞれはYを含む連結基である。
【0060】
式(4)中のB
1およびB
2はそれぞれ以下の(11)〜(17)のいずれかで表される構造であることがより好ましい。
【0062】
式(11)〜(13)中のXは単結合、エーテル基、アルキレン基、オキシアルキレン基またはビニレン基であり、片方の結合はフルオレン環と連結する。
【0063】
式(14)〜(17)中のYはアミド基、エステル基、エーテル基、アルキレン基、オキシアルキレン基、ビニレン基またはハロアルキレン基である。
式(14)〜(17)中のZは単結合であり、片方の結合はフルオレン環と連結する。
【0064】
式(11)〜(17)中のR
81〜R
157は各々独立に水素、アルキル基、シクロアルキル基、複素環基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルコキシ基、アリールエーテル基、アリール基、ハロアルキル基、シアノ基、水酸基およびシリル基からなる群より選ばれる。ただし、式(11)において、R
81〜R
84のうちいずれかはXを含む連結基である。式(12)において、R
85〜R
94のうちいずれかはXを含む連結基である。式(14)において、R
98〜R
102のうちいずれか、及び、R
103〜R
112のうちいずれかのそれぞれはYを含む連結基である。式(15)において、R
113〜R
123のうちいずれか、及び、R
124〜R
127のうちいずれかのそれぞれはYを含む連結基である。式(16)において、R
128〜R
132のうちいずれか、及び、R
133〜R
136のうちいずれかのそれぞれはYを含む連結基である。式(17)において、R
137〜R
147のうちいずれか、及び、R
148〜R
157のうちいずれかのそれぞれはYを含む連結基である。
【0065】
式(3)で表されるジアミン残基の好ましい例としては式(18)〜(21)から選択される少なくとも1種の2価の有機基が挙げられるが、これらに限られるものではない。
【0067】
式(4)で表される酸二無水物残基の好ましい例としては式(22)〜(24)から選択される少なくとも1種の4価の有機基が挙げられるが、これらに限られるものではない。
【0069】
本発明のポリイミド前駆体は、本発明の効果を損なわない範囲で、これまで説明した残基に加え、さらに他の成分を含んでも良い。他の成分とは、式(1)および式(4)で表される酸二無水物残基を導く酸二無水物以外の酸二無水物の残基(このような酸二無水物およびその残基をそれぞれ「他の酸二無水物」および「他の酸二無水物残基」という)や、式(2)および式(3)で表されるジアミン残基を導くジアミン以外のジアミンの残基(このようなジアミンおよびその残基をそれぞれ「他のジアミン」および「他のジアミン残基」という)などが挙げられる。
【0070】
他の酸二無水物としては、芳香族酸二無水物、脂環式酸二無水物、又は脂肪族酸二無水物が挙げられる。
【0071】
芳香族酸二無水物としては、ピロメリット酸二無水物、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ターフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−オキシフタル酸二無水物、2,3,3’,4’−オキシフタル酸二無水物、2,3,2’,3’−オキシフタル酸二無水物、ジフェニルスルホン−3,3’,4,4’−テトラカルボン酸二無水物、ベンゾフェノン−3,3’,4,4’−テトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2−ビス(4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル)プロパン二無水物、1,1−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,1−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、ビス(1,3−ジオキソ−1,3−ジヒドロイソベンズフラン−5−カルボン酸)1,4−フェニレン、2,2−ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)プロパン、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,5,6−ピリジンテトラカルボン酸二無水物、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパンニ無水物、2,2−ビス(4−(3,4−ジカルボキシベンゾイルオキシ)フェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物、1,6−ジフルオロプロメリット酸二無水物、1−トリフルオロメチルピロメリット酸二無水物、1,6−ジトリフルオロメチルピロメリット酸二無水物、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ビフェニル二無水物などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0072】
脂環式酸二無水物としては、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−テトラメチル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2−ジメチル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,3−ジメチル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロヘプタンテトラカルボン酸二無水物、2,3,4,5−テトラヒドロフランテトラカルボン酸二無水物、3,4−ジカルボキシ−1−シクロヘキシルコハク酸二無水物、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物、3,4−ジカルボキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−1−ナフタレンコハク酸二無水物、ビシクロ[3,3,0]オクタン−2,4,6,8−テトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[4,3,0]ノナン−2,4,7,9−テトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[4,4,0]デカン−2,4,7,9−テトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[4,4,0]デカン−2,4,8,10−テトラカルボン酸二無水物、トリシクロ[6,3,0,0<2,6>]ウンデカン−3,5,9,11−テトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2,2,2]オクタン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2,2,2]オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2,2,1]ヘプタンテトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2,2,1]ヘプタン−5−カルボキシメチル−2,3,6−トリカルボン酸二無水物、7−オキサビシクロ[2,2,1]ヘプタン−2,4,6,8−テトラカルボン酸二無水物、オクタヒドロナフタレン−1,2,6,7−テトラカルボン酸二無水物、テトラデカヒドロアントラセン−1,2,8,9−テトラカルボン酸二無水物、3,3’、4,4’−ジシクロへキサンテトラカルボン酸二無水物、3,3’、4,4’−オキシジシクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロ−3−フラニル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボンサン無水物、及び“リカシッド”(登録商標)BT−100(以上、商品名、新日本理化(株)製)及びそれらの誘導体などが例示されるが、これらに限定されるものではない。
【0073】
脂肪族酸二無水物としては、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−ペンタンテトラカルボン酸二無水物及びそれらの誘導体などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0074】
これらの芳香族酸二無水物、脂環式酸二無水物、又は脂肪族酸二無水物は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0075】
これらのうち、市販され手に入れやすい観点、高透明性、低複屈折の観点から2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパンニ無水物(式(25))、3,3’,4,4’−オキシフタル酸二無水物(式(26))、2,2−ビス(4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル)プロパン二無水物(式(27))、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物(式(28))から選択される少なくとも1種の酸二無水物残基をさらに含むことが好ましい。
【0077】
式(1)、(2)、(3)を含むポリイミド前駆体に、これらの酸二無水物を共重合させることで、式(4)で表されるフルオレン環含有の酸二無水物を用いなくとも、ポリイミドの複屈折が低下する。加えて、式(4)で表される酸二無水物残基を含む酸二無水物と式(25)〜(28)で表される酸二無水物を比較すると、後者の方が入手のしやすさ、プリベーク膜の耐クラック性に優れる。
【0078】
上記の酸二無水物の量に特に制限はないが、CTE及び複屈折の観点からは、ポリイミド前駆体中の酸二無水物残基の全量に対して10〜20モル%であることが好ましく、透明性の観点からは、式(3)で表されるジアミン残基のモル数が、式(25)〜(28)から選択される少なくとも1種の酸二無水物残基の合計のモル数と同じであるか、またはそれより少ないことが好ましい。
【0079】
また、他のジアミンとしては、芳香族ジアミン化合物、脂環式ジアミン化合物、又は脂肪族ジアミン化合物が挙げられる。例えば、芳香族ジアミン化合物としては、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、3,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,4’−ジアミノジフェニルスルヒド、4,4’−ジアミノジフェニルスルヒド、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、ベンジジン、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン、3,3’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン、2,2’−ジメチルベンジジン、3,3’−ジメチルベンジジン、2,2’3,3’−テトラメチルベンジジン、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、1,5−ナフタレンジアミン、2,6−ナフタレンジアミン、ビス(4−アミノフェノキシフェニル)スルホン、ビス(3−アミノフェノキシフェニル)スルホン、ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス{4−(4−アミノフェノキシ)フェニル}エーテル、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、あるいはこれらの芳香族環にアルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子などで置換したジアミン化合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0080】
脂環式ジアミン化合物としては、シクロブタンジアミン、イソホロンジアミン、ビシクロ[2,2,1]ヘプタンビスメチルアミン、トリシクロ[3,3,1,13,7]デカン−1,3−ジアミン、1,2−シクロヘキシルジアミン、1,3−シクロヘキシルジアミン、シス−1,4−シクロヘキシルジアミン、4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタン、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタン、3,3’−ジエチル−4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタン、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタン、3,3’,5,5’−テトラエチル−4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタン、3,5−ジエチル−3’,5’−ジメチル−4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタン、4,4’−ジアミノジシクロヘキシルエーテル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノジシクロヘキシルエーテル、3,3’−ジエチル−4,4’−ジアミノジシクロヘキシルエーテル、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ジアミノジシクロヘキシルエーテル、3,3’,5,5’−テトラエチル−4,4’−ジアミノジシクロヘキシルエーテル、3,5−ジエチル−3’,5’−ジメチル−4,4’−ジアミノジシクロヘキシルエーテル、2,2−ビス(4−アミノシクロヘキシル)プロパン、2,2−ビス(3−メチル−4−アミノシクロヘキシル)プロパン、2,2−ビス(3−エチル−4−アミノシクロヘキシル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−アミノシクロヘキシル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジエチル−4−アミノシクロヘキシル)プロパン、2,2−(3,5−ジエチル−3’,5’−ジメチル−4,4’−ジアミノジシクロヘキシル)プロパン、あるいはこれらの脂環にアルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子などで置換したジアミン化合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0081】
脂肪族ジアミン化合物としては、エチレンジアミン、1,3−ジアミノプロパン、1,4−ジアミノブタン、1,5−ジアミノペンタン、1,6−ジアミノヘキサン、1,7−ジアミノヘプタン、1,8−ジアミノオクタン、1,9−ジアミノノナン、1,10−ジアミノデカンなどのアルキレンジアミン類、ビス(アミノメチル)エーテル、ビス(2−アミノエチル)エーテル、ビス(3−アミノプロピル)エーテルなどのエチレングリコールジアミン類、及び1,3−ビス(3−アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン、1,3−ビス(4−アミノブチル)テトラメチルジシロキサン、α,ω−ビス(3−アミノプロピル)ポリジメチルシロキサンなどのシロキサンジアミン類が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0082】
これらの芳香族ジアミン化合物、脂環式ジアミン化合物、又は脂肪族ジアミン化合物は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0083】
これらのうち、市販され手に入れやすい観点、および光学特性の観点から、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタンが好ましい。
【0084】
本発明のポリイミド前駆体は、分子量を好ましい範囲に調整するために末端封止剤により両末端を封止してもよい。酸二無水物と反応する末端封止剤としては、モノアミンや一価のアルコールなどが挙げられる。また、ジアミン化合物と反応する末端封止剤としては、酸無水物、モノカルボン酸、モノ酸クロリド化合物、モノ活性エステル化合物、二炭酸エステル類、ビニルエーテル類などが挙げられる。また、末端封止剤を用いることで、末端基として種々の有機基を導入することができる。
【0085】
酸無水物基と反応する末端封止剤に用いられるモノアミンとしては、5−アミノ−8−ヒドロキシキノリン、4−アミノ−8−ヒドロキシキノリン、1−ヒドロキシ−8−アミノナフタレン、1−ヒドロキシ−7−アミノナフタレン、1−ヒドロキシ−6−アミノナフタレン、1−ヒドロキシ−5−アミノナフタレン、1−ヒドロキシ−4−アミノナフタレン、1−ヒドロキシ−3−アミノナフタレン、1−ヒドロキシ−2−アミノナフタレン、1−アミノ−7−ヒドロキシナフタレン、2−ヒドロキシ−7−アミノナフタレン、2−ヒドロキシ−6−アミノナフタレン、2−ヒドロキシ−5−アミノナフタレン、2−ヒドロキシ−4−アミノナフタレン、2−ヒドロキシ−3−アミノナフタレン、1−アミノ−2−ヒドロキシナフタレン、1−カルボキシ−8−アミノナフタレン、1−カルボキシ−7−アミノナフタレン、1−カルボキシ−6−アミノナフタレン、1−カルボキシ−5−アミノナフタレン、1−カルボキシ−4−アミノナフタレン、1−カルボキシ−3−アミノナフタレン、1−カルボキシ−2−アミノナフタレン、1−アミノ−7−カルボキシナフタレン、2−カルボキシ−7−アミノナフタレン、2−カルボキシ−6−アミノナフタレン、2−カルボキシ−5−アミノナフタレン、2−カルボキシ−4−アミノナフタレン、2−カルボキシ−3−アミノナフタレン、1−アミノ−2−カルボキシナフタレン、2−アミノニコチン酸、4−アミノニコチン酸、5−アミノニコチン酸、6−アミノニコチン酸、4−アミノサリチル酸、5−アミノサリチル酸、6−アミノサリチル酸、アメライド、2−アミノ安息香酸、3−アミノ安息香酸、4−アミノ安息香酸、2−アミノベンゼンスルホン酸、3−アミノベンゼンスルホン酸、4−アミノベンゼンスルホン酸、3−アミノ−4,6−ジヒドロキシピリミジン、2−アミノフェノール、3−アミノフェノール、4−アミノフェノール、5−アミノ−8−メルカプトキノリン、4−アミノ−8−メルカプトキノリン、1−メルカプト−8−アミノナフタレン、1−メルカプト−7−アミノナフタレン、1−メルカプト−6−アミノナフタレン、1−メルカプト−5−アミノナフタレン、1−メルカプト−4−アミノナフタレン、1−メルカプト−3−アミノナフタレン、1−メルカプト−2−アミノナフタレン、1−アミノ−7−メルカプトナフタレン、2−メルカプト−7−アミノナフタレン、2−メルカプト−6−アミノナフタレン、2−メルカプト−5−アミノナフタレン、2−メルカプト−4−アミノナフタレン、2−メルカプト−3−アミノナフタレン、1−アミノ−2−メルカプトナフタレン、3−アミノ−4,6−ジメルカプトピリミジン、2−アミノチオフェノール、3−アミノチオフェノール、4−アミノチオフェノール、2−エチニルアニリン、3−エチニルアニリン、4−エチニルアニリン、2,4−ジエチニルアニリン、2,5−ジエチニルアニリン、2,6−ジエチニルアニリン、3,4−ジエチニルアニリン、3,5−ジエチニルアニリン、1−エチニル−2−アミノナフタレン、1−エチニル−3−アミノナフタレン、1−エチニル−4−アミノナフタレン、1−エチニル−5−アミノナフタレン、1−エチニル−6−アミノナフタレン、1−エチニル−7−アミノナフタレン、1−エチニル−8−アミノナフタレン、2−エチニル−1−アミノナフタレン、2−エチニル−3−アミノナフタレン、2−エチニル−4−アミノナフタレン、2−エチニル−5−アミノナフタレン、2−エチニル−6−アミノナフタレン、2−エチニル−7−アミノナフタレン、2−エチニル−8−アミノナフタレン、3,5−ジエチニル−1−アミノナフタレン、3,5−ジエチニル−2−アミノナフタレン、3,6−ジエチニル−1−アミノナフタレン、3,6−ジエチニル−2−アミノナフタレン、3,7−ジエチニル−1−アミノナフタレン、3,7−ジエチニル−2−アミノナフタレン、4,8−ジエチニル−1−アミノナフタレン、4,8−ジエチニル−2−アミノナフタレン等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0086】
酸無水物基と反応する末端封止剤に用いられる一価のアルコールとしては、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、3−ペンタノール、1−ヘキサノール、2−ヘキサノール、3−ヘキサノール、1−ヘプタノール、2−ヘプタノール、3−ヘプタノール、1−オクタノール、2−オクタノール、3−オクタノール、1−ノナノール、2−ノナノール、1−デカノール、2−デカノール、1−ウンデカノール、2−ウンデカノール、1−ドデカノール、2−ドデカノール、1−トリデカノール、2−トリデカノール、1−テトラデカノール、2−テトラデカノール、1−ペンタデカノール、2−ペンタデカノール、1−ヘキサデカノール、2−ヘキサデカノール、1−へプタデカノール、2−ヘプタデカノール、1−オクタデカノール、2−オクタデカノール、1−ノナデカノール、2−ノナデカノール、1−イコサノール、2−メチル−1−プロパノール、2−メチル−2−プロパノール、2−メチル−1−ブタノール、3−メチル−1−ブタノール、2−メチル−2−ブタノール、3−メチル−2−ブタノール、2−プロピル−1−ペンタノール、2−エチル−1−ヘキサノール、4−メチル−3−ヘプタノール、6−メチル−2−ヘプタノール、2,4,4−トリメチル−1−ヘキサノール、2,6−ジメチル−4−ヘプタノール、イソノニルアルコール、3,7−ジメチル−3−オクタノール、2,4−ジメチル−1−ヘプタノール、2−ヘプチルウンデカノール、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコール1−メチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、シクロペンタノール、シクロヘキサノール、シクロペンタンモノメチロール、ジシクロペンタンモノメチロール、トリシクロデカンモノメチロール、ノルボネオール、テルピネオール等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0087】
アミノ基と反応する末端封止剤に用いられる酸無水物、モノカルボン酸、モノ酸クロリド化合物およびモノ活性エステル化合物としては、無水フタル酸、無水マレイン酸、無水ナジック酸、シクロヘキサンジカルボン酸無水物、3−ヒドロキシフタル酸無水物等の酸無水物、2−カルボキシフェノール、3−カルボキシフェノール、4−カルボキシフェノール、2−カルボキシチオフェノール、3−カルボキシチオフェノール、4−カルボキシチオフェノール、1−ヒドロキシ−8−カルボキシナフタレン、1−ヒドロキシ−7−カルボキシナフタレン、1−ヒドロキシ−6−カルボキシナフタレン、1−ヒドロキシ−5−カルボキシナフタレン、1−ヒドロキシ−4−カルボキシナフタレン、1−ヒドロキシ−3−カルボキシナフタレン、1−ヒドロキシ−2−カルボキシナフタレン、1−メルカプト−8−カルボキシナフタレン、1−メルカプト−7−カルボキシナフタレン、1−メルカプト−6−カルボキシナフタレン、1−メルカプト−5−カルボキシナフタレン、1−メルカプト−4−カルボキシナフタレン、1−メルカプト−3−カルボキシナフタレン、1−メルカプト−2−カルボキシナフタレン、2−カルボキシベンゼンスルホン酸、3−カルボキシベンゼンスルホン酸、4−カルボキシベンゼンスルホン酸、2−エチニル安息香酸、3−エチニル安息香酸、4−エチニル安息香酸、2,4−ジエチニル安息香酸、2,5−ジエチニル安息香酸、2,6−ジエチニル安息香酸、3,4−ジエチニル安息香酸、3,5−ジエチニル安息香酸、2−エチニル−1−ナフトエ酸、3−エチニル−1−ナフトエ酸、4−エチニル−1−ナフトエ酸、5−エチニル−1−ナフトエ酸、6−エチニル−1−ナフトエ酸、7−エチニル−1−ナフトエ酸、8−エチニル−1−ナフトエ酸、2−エチニル−2−ナフトエ酸、3−エチニル−2−ナフトエ酸、4−エチニル−2−ナフトエ酸、5−エチニル−2−ナフトエ酸、6−エチニル−2−ナフトエ酸、7−エチニル−2−ナフトエ酸、8−エチニル−2−ナフトエ酸等のモノカルボン酸類およびこれらのカルボキシル基が酸クロリド化したモノ酸クロリド化合物、およびテレフタル酸、フタル酸、マレイン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、3−ヒドロキシフタル酸、5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸、1,2−ジカルボキシナフタレン、1,3−ジカルボキシナフタレン、1,4−ジカルボキシナフタレン、1,5−ジカルボキシナフタレン、1,6−ジカルボキシナフタレン、1,7−ジカルボキシナフタレン、1,8−ジカルボキシナフタレン、2,3−ジカルボキシナフタレン、2,6−ジカルボキシナフタレン、2,7−ジカルボキシナフタレン等のジカルボン酸類のモノカルボキシル基だけが酸クロリド化したモノ酸クロリド化合物、モノ酸クロリド化合物とN−ヒドロキシベンゾトリアゾールやN−ヒドロキシ−5−ノルボルネン−2,3−ジカルボキシイミドとの反応により得られる活性エステル化合物が挙げられる。
【0088】
アミノ基と反応する末端封止剤に用いられる二炭酸エステル化合物としては、二炭酸ジ−tert−ブチル、二炭酸ジベンジル、二炭酸ジメチル、二炭酸ジエチルが挙げられる。
【0089】
アミノ基と反応する末端封止剤に用いられるビニルエーテル化合物としては、クロロギ酸−tert−ブチル、クロロギ酸−n−ブチル、クロロギ酸イソブチル、クロロギ酸ベンジル、クロロギ酸アリル、クロロギ酸エチル、クロロギ酸イソプロピルなどのクロロギ酸エステル類、イソシアン酸ブチル、イソシアン酸1−ナフチル、イソシアン酸オクタデシル、イソシアン酸フェニルなどのイソシアナート化合物類、ブチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、tert−ブチルビニルエーテル、ベンジルビニルエーテルなどが挙げられる。
【0090】
アミノ基と反応する末端封止剤に用いられるその他の化合物としては、クロロギ酸ベンジル、ベンゾイルクロリド、クロロギ酸フルオレニルメチル、クロロギ酸2,2,2−トリクロロエチル、クロロギ酸アリル、メタンスルホン酸クロリド、p−トルエンスルホン酸クロリド、フェニルイソシアネ−トなどが挙げられる。
【0091】
酸無水物基と反応する末端封止剤の導入割合は、酸二無水物成分に対して、0.1〜60モル%の範囲が好ましく、特に好ましくは5〜50モル%である。また、アミノ基と反応する末端封止剤の導入割合は、ジアミン成分に対して、0.1〜100モル%の範囲が好ましく、特に好ましくは5〜90モル%である。複数の末端封止剤を用いることで、複数の末端基を導入してもよい。
【0092】
ポリイミド前駆体に導入した末端封止剤は、以下の方法で容易に検出できる。例えば、末端封止剤を導入したポリマーを酸性溶液に溶解し、ポリマーの構成単位であるアミン成分と酸無水成分に分解し、これをガスクロマトグラフィー(GC)測定や、NMR測定を行うことで、末端封止剤を容易に検出できる。その他に、末端封止剤を導入したポリマーの、熱分解ガスクロマトグラフ(PGC)測定、赤外吸収スペクトル測定、
13C NMRスペクトル測定を行うことで、容易に検出可能である。
【0093】
本発明のポリイミド前駆体は、溶剤を含有するポリイミド前駆体樹脂組成物とすることが好ましい。溶剤としては、N−メチル−2−ピロリドン、ガンマブチロラクトン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルプロピレン尿素、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、ジメチルスルホキシドなどの極性の非プロトン性溶媒、テトラヒドロフラン、ジオキサン、プロピレングリコールモノメチルエーテルなどのエーテル類、アセトン、メチルエチルケトン、ジイソブチルケトン、ジアセトンアルコールなどのケトン類、酢酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、乳酸エチルなどのエステル類、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類などを単独、または2種以上使用することができる。
【0094】
ポリイミド前駆体樹脂組成物における溶剤の含有量は、ポリイミド前駆体100重量部に対して、好ましくは50重量部以上、より好ましくは100重量部以上であり、好ましくは2,000重量部以下、より好ましくは1,500重量部以下である。50〜2,000重量部の範囲であれば、塗布に適した粘度となり、塗布後の膜厚を容易に調節することができる。
【0095】
ポリイミド前駆体樹脂組成物は、界面活性剤を含有していてもよい。界面活性剤としては、フロラード(商品名、住友3M(株)製)、メガファック(商品名、DIC(株)製)、スルフロン(商品名、旭硝子(株)製)等のフッ素系界面活性剤があげられる。また、KP341(商品名、信越化学工業(株)製)、DBE(商品名、チッソ(株)製)、グラノール(商品名、共栄社化学(株)製)、BYK(ビック・ケミー(株)製)等の有機シロキサン界面活性剤が挙げられる。エマルミン(三洋化成工業(株)製)等のポリオキシアルキレンラウリエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテルおよびポリオキシエチレンセチルエーテル界面活性剤が挙げられる。さらに、ポリフロー(商品名、共栄社化学(株)製)等のアクリル重合物界面活性剤が挙げられる。
【0096】
界面活性剤は、ポリイミド前駆体樹脂組成物中のポリイミド前駆体100重量部に対し、0.01〜10重量であることが好ましい。
【0097】
ポリイミド前駆体樹脂組成物は、内部離型剤を含有することができる。内部離型剤としては、長鎖脂肪酸等が挙げられる。
【0098】
ポリイミド前駆体樹脂組成物は、支持基板との接着性を高めるために、保存安定性を損なわない範囲で、トリメトキシアミノプロピルシラン、トリメトキシエポキシシラン、トリメトキシビニルシラン、トリメトキシチオールプロピルシランなどのシランカップリング剤を含有してもよい。好ましい含有量は、ポリイミド前駆体100重量部に対し、0.01〜5重量部である。
【0099】
ポリイミド前駆体樹脂組成物は、熱架橋剤を含有していてもよい。熱架橋剤としては、エポキシ化合物やアルコキシメチル基またはメチロール基を少なくとも2つ有する化合物が好ましい。これらの基を少なくとも2つ有することで、樹脂および同種分子と縮合反応して架橋構造体が形成され、加熱処理後の硬化膜の機械強度や耐薬品性を向上させることができる。
【0100】
熱架橋剤として用いられるエポキシ化合物の好ましい例としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリメチル(グリシジロキシプロピル)シロキサン等のエポキシ基含有シリコーンなどを挙げることができるが、これらに限定されない。具体的には、エピクロン850−S、エピクロンHP−4032、エピクロンHP−7200、エピクロンHP−820、エピクロンHP−4700、エピクロンEXA−4710、エピクロンHP−4770、エピクロンEXA−859CRP、エピクロンEXA−1514、エピクロンEXA−4880、エピクロンEXA−4850−150、エピクロンEXA−4850−1000、エピクロンEXA−4816、エピクロンEXA−4822(以上商品名、大日本インキ化学工業(株)製)、リカレジンBEO−60E、リカレジンBPO−20E、リカレジンHBE−100、リカレジンDME−100(以上商品名、新日本理化(株)製)、EP−4003S,EP−4000S(以上商品名、(株)アデカ製)、PG−100、CG−500、EG−200(以上商品名、大阪ガスケミカル(株)製)、NC−3000、NC−6000(以上商品名、日本化薬(株)製)、EPOX−MK R508、EPOX−MK R540、EPOX−MK R710、EPOX−MK R1710、VG3101L、VG3101M80(以上商品名、(株)プリンテック製)、セロキサイド2021P、セロキサイド2081、セロキサイド2083、セロキサイド2085(以上商品名、ダイセル化学工業(株)製)などが挙げられる。
【0101】
熱架橋剤として用いられるアルコキシメチル基またはメチロール基を少なくとも2つ有する化合物としては、例えば、DML−PC、DML−PEP、DML−OC、DML−OEP、DML−34X、DML−PTBP、DML−PCHP、DML−OCHP、DML−PFP、DML−PSBP、DML−POP、DML−MBOC、DML−MBPC、DML−MTrisPC、DML−BisOC−Z、DML−BisOCHP−Z、DML−BPC、DML−BisOC−P、DMOM−PC、DMOM−PTBP、DMOM−MBPC、TriML−P、TriML−35XL、TML−HQ、TML−BP、TML−pp−BPF、TML−BPE、TML−BPA、TML−BPAF、TML−BPAP、TMOM−BP、TMOM−BPE、TMOM−BPA、TMOM−BPAF、TMOM−BPAP、HML−TPPHBA、HML−TPHAP、HMOM−TPPHBA、HMOM−TPHAP(以上、商品名、本州化学工業(株)製)、NIKALAC(登録商標) MX−290、NIKALAC MX−280、NIKALAC MX−270、NIKALAC MX−279、NIKALAC MW−100LM、NIKALAC MX−750LM(以上、商品名、(株)三和ケミカル製)が挙げられる。これらを2種以上含有してもよい。
【0102】
熱架橋剤は、ポリイミド前駆体樹脂100重量部に対し、0.01〜50重量部含有することが好ましい。
【0103】
ポリイミド前駆体樹脂組成物は、無機フィラー及び/又はオルガノ無機フィラーを含有していてもよい。無機フィラーとしては、シリカ微粒子、アルミナ微粒子、チタニア微粒子、ジルコニア微粒子などが挙げられる。
【0104】
無機フィラーの形状は特に限定されず、球状、楕円形状、偏平状、ロッド状、繊維状などが挙げられる。
【0105】
含有させた無機フィラーは光の散乱を防ぐため粒径が小さいことが好ましい。平均粒径は0.5〜100nmであり、0.5〜30nmの範囲が好ましい。
【0106】
無機フィラーの含有量は、ポリイミド前駆体に対し、好ましくは1〜200重量%、下限についてより好ましくは10重量%以上である。上限についてはより好ましくは150重量%以下、さらに好ましくは100重量%以下、特に好ましくは50重量%以下である。含有量の増加に伴い、可とう性や耐折性が低下する。
【0107】
ポリイミド前駆体樹脂組成物と無機フィラーを混合する方法としては、種々の公知の方法を用いることができる。例えば、無機フィラーやオルガノ無機フィラーゾルとポリイミド前駆体と混合することが挙げられる。オルガノ無機フィラーゾルは、有機溶剤に無機フィラーが30重量%程度の割合で分散したもので、有機溶剤としては、メタノール、イソプロパノール、ノルマルブタノール、エチレングリコール、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、プロピレングリコールモノメチルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチルイミダゾリジノン、ガンマブチルラクトンなどが挙げられる。
【0108】
オルガノ無機フィラーゾルは、シランカップリング剤を用いて表面処理することで、無機フィラーのポリイミド前駆体に対する分散性が向上する。シランカップリング剤の末端官能基に、エポキシ基やアミノ基が含まれていると、ポリアミド酸のカルボン酸とエポキシ基やアミノ基が結合することで、ポリイミド前駆体および、硬化処理後のポリイミドとの親和性が高まり、より効果的な分散を行うことができる。
【0109】
エポキシ基を有するシランカップリング剤としては、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシランなどが挙げられる。
【0110】
アミノ基を有するシランカップリング剤としては、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチル−ブチリデン)プロピルアミン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシランなどが挙げられる。
【0111】
オルガノ無機フィラーゾルのシランカップリング剤による処理方法としては、種々の公知の方法を用いることができる。例えば、濃度を調整したオルガノ無機フィラーゾルにシランカップリング剤を添加し、室温〜80℃で0.5〜2時間、撹拌することにより処理することができる。
【0112】
ポリイミド前駆体樹脂組成物は、光酸発生剤を含有していてもよい。光酸発生剤を含有することにより、露光パターンが描かれたマスクを介して光を照射すると露光部に酸が発生し、露光部のアルカリ水溶液に対する溶解性が増大する。このように光酸発生剤を含有するポリイミド前駆体樹脂組成物は、ポジ型感光性樹脂として用いることができる。(以降、光酸発生剤を含有するポリイミド前駆体樹脂組成物を、ポジ型感光性樹脂組成物と呼ぶこともある)
かかる場合に用いられる光酸発生剤としては、キノンジアジド化合物、スルホニウム塩、ホスホニウム塩、ジアゾニウム塩、ヨードニウム塩などが挙げられる。中でも優れた溶解抑止効果を発現し、高感度かつ低膜減りのポジ型感光性樹脂組成物を得られるという点から、キノンジアジド化合物が好ましく用いられる。また、光酸発生剤を2種以上含有してもよい。これにより、露光部と未露光部の溶解速度の比をより大きくすることができ、高感度なポジ型感光性樹脂組成物を得ることができる。
【0113】
キノンジアジド化合物としては、ポリヒドロキシ化合物にキノンジアジドのスルホン酸がエステルで結合したもの、ポリアミノ化合物にキノンジアジドのスルホン酸がスルホンアミド結合したもの、ポリヒドロキシポリアミノ化合物にキノンジアジドのスルホン酸がエステル結合および/またはスルホンアミド結合したものなどが挙げられる。これらポリヒドロキシ化合物やポリアミノ化合物の全ての官能基がキノンジアジドで置換されていなくても良いが、官能基全体の50モル%以上がキノンジアジドで置換されていることが好ましい。このようなキノンジアジド化合物を用いることで、一般的な紫外線である水銀灯のi線(波長365nm)、h線(波長405nm)、g線(波長436nm)により反応するポジ型感光性樹脂組成物を得ることができる。
【0114】
かかる場合において、キノンジアジド化合物は5−ナフトキノンジアジドスルホニル基、4−ナフトキノンジアジドスルホニル基のいずれも好ましく用いられる。同一分子中にこれらの基を両方有する化合物を用いてもよいし、異なる基を用いた化合物を併用してもよい。
【0115】
かかる場合に用いられるキノンジアジド化合物は、特定のフェノール化合物から、次の方法により合成される。例えば5−ナフトキノンジアジドスルホニルクロライドとフェノール化合物をトリエチルアミン存在下で反応させる方法が挙げられる。フェノール化合物の合成方法は、酸触媒下で、α−(ヒドロキシフェニル)スチレン誘導体を多価フェノール化合物と反応させる方法などが挙げられる。
【0116】
かかる場合に用いられる光酸発生剤の含有量は、ポリイミド前駆体100重量部に対して、好ましくは3〜40重量部である。光酸発生剤の含有量をこの範囲とすることにより、より高感度化を図ることができる。さらに増感剤などを必要に応じて含有してもよい。
【0117】
ポジ型感光性樹脂組成物のパターンを形成するには、ポジ型感光性樹脂組成物のワニスを支持基板上に塗布し、露光後、現像液を用いて露光部を除去する。現像液としては、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、ジエタノールアミン、ジエチルアミノエタノール、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、トリエチルアミン、ジエチルアミン、メチルアミン、ジメチルアミン、酢酸ジメチルアミノエチル、ジメチルアミノエタノール、ジメチルアミノエチルメタクリレート、シクロヘキシルアミン、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンなどのアルカリ性を示す化合物の水溶液が好ましい。また場合によっては、これらのアルカリ水溶液にN−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ガンマブチロラクトン、ジメチルアクリルアミドなどの極性溶媒、メタノール、エタノール、イソプロパノールなどのアルコール類、乳酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどのエステル類、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、イソブチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類などを単独あるいは数種を組み合わせたものを添加してもよい。現像後は水にてリンス処理をすることが好ましい。ここでもエタノール、イソプロピルアルコールなどのアルコール類、乳酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどのエステル類などを水に加えてリンス処理をしてもよい。
【0118】
<ポリイミド樹脂膜>
以下では、本発明のポリイミド前駆体の製造方法について説明する。ポリアミド酸やポリアミド酸エステル、ポリアミド酸シリルエステルなどのポリイミド前駆体は、ジアミン化合物と酸二無水物又はその誘導体との反応により合成することができる。誘導体としては該酸二無水物のテトラカルボン酸、酸塩化物、テトラカルボン酸のモノ、ジ、トリまたはテトラエステルなどが挙げられ、具体的にはメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基などでエステル化された構造が挙げられる。重合反応の反応方法は、目的のポリイミド前駆体が製造できれば特に制限はなく、公知の反応方法を用いることができる。
【0119】
具体的な反応方法としては、所定量の全てのジアミン成分および反応溶媒を反応器に仕込み溶解させた後、所定量の酸二無水物成分を仕込み、室温〜80℃で0.5〜30時間撹拌する方法などが挙げられる。
【0120】
以下では、本発明のポリイミド前駆体と溶剤とを含有するポリイミド前駆体樹脂組成物を用いてポリイミド樹脂膜を製造する方法について説明する。なお、ポリイミド樹脂膜には、前述の界面活性剤、内部離型剤、シランカップリング剤、熱架橋剤、無機フィラー、光酸発生剤等が含まれていてもよい。
【0121】
まず、ポリイミド前駆体樹脂組成物を支持基板上に塗布してポリイミド前駆体樹脂組成物膜を形成する。支持基板としては例えばシリコン、セラミックス類、ガリウムヒ素、ソーダ石灰硝子、無アルカリ硝子などが用いられるが、これらに限定されない。塗布方法は、例えば、スリットコート法、スピンコート法、スプレーコート法、ロールコート法、バーコート法などの方法があり、これらの手法を組み合わせて塗布してもかまわない。これらの中でも、スピンコートもしくはスリットコートによる塗布が好ましい。
【0122】
次に、支持基板上に塗布したポリイミド前駆体樹脂組成物を乾燥して、ポリイミド前駆体樹脂膜を得る。乾燥はホットプレート、オーブン、赤外線、真空チャンバーなどを使用する。ホットプレートを用いる場合、プレート上に直接、もしくは、プレート上に設置したプロキシピン等の治具上にポリイミド前駆体樹脂組成物を塗布した支持基板を保持して加熱する。プロキシピンの材質としては、アルミニウムやステレンレス等の金属材料、あるいはポリイミド樹脂や“テフロン(登録商標)”等の合成樹脂があり、いずれの材質のプロキシピンを用いてもかまわない。プロキシピンの高さは、支持基板のサイズ、被加熱体である樹脂層の種類、加熱の目的等により様々であるが、例えば300mm×350mm×0.7mmのガラス支持基板上に塗布した樹脂層を加熱する場合、プロキシピンの高さは2〜12mm程度が好ましい。
【0123】
中でも、真空チャンバーを用いて真空乾燥させることが好ましく、真空乾燥後にさらに乾燥のための加熱を行ったり、真空乾燥しながら乾燥のための加熱を行ったりすることがさらに好ましい。これにより、乾燥処理時間の短縮、及び、均一な塗布膜形成が可能となる。乾燥のための加熱の温度は支持基板やポリイミド前駆体の種類、目的により様々であり、室温から170℃の範囲で1分から数時間行うことが好ましい。さらに、乾燥工程は同一の条件、又は異なる条件で複数回行ってもよい。
【0124】
次に、イミド化のための加熱を行う。ポリイミド前駆体樹脂膜を180℃以上400℃以下の範囲で加熱してポリイミド樹脂膜に変換する。なお、熱イミド化工程は、上記乾燥工程の後に何らかの工程を経てから行われても構わない。
【0125】
熱イミド化工程の雰囲気は特に限定されず、空気でも窒素やアルゴン等の不活性ガスでもよい。ただし、本発明のポリイミド樹脂膜には無色透明性が求められるため、酸素濃度が5%以下の雰囲気で加熱して熱イミド化を行うことが好ましい。一般的に、酸素濃度を低くすることで、加熱時のポリイミド膜の着色を低減し、高透明性を示すポリイミド樹脂膜を得ることができる。
【0126】
また、熱イミド化工程において、製造ラインのオーブンの加熱形式にあわせた昇温方法を選択することができるが、最高加熱温度まで5〜120分かけて昇温することが好ましい。例えば、オーブン内にて、基材上に形成されたポリイミド前駆体樹脂膜を室温から、熱イミド化のための加熱温度まで5〜120分かけて昇温してイミド化し、ポリイミド樹脂膜としてもよいし、予め200℃以上650℃以下の範囲に加熱されたオーブン内に基材上に形成されたポリイミド前駆体樹脂膜をいきなり投入して加熱処理を行ってイミド化し、ポリイミド樹脂膜としてもよい。
【0127】
このようにして支持基板上に形成したポリイミド樹脂膜を支持基板から剥離するには、機械的に剥離する方法、フッ酸などの薬液や水に浸漬する方法、レーザーを硬化膜と支持基板の界面に照射する方法などが挙げられるがいずれの方法を用いても構わない。
【0128】
上記のように得られたポリイミド樹脂膜は高透明性、低複屈折、低CTE、高耐熱性、耐薬品性、可とう性を有しており、フレキシブル基板として、後述する液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、電子ペーパーなどの表示素子、カラーフィルタや光導波路などの光学素子、太陽電池、CMOSなどの受光素子、タッチパネル、回路基板等に好適に用いることができる。
【0129】
ポリイミド樹脂膜の透明性は、紫外−可視(UV−vis)スペクトルを測定することで判断できる。透明性樹脂膜としては、厚さ10μmの膜に対し波長400nmにおける光線透過率が70%以上であることが好ましく、より好ましくは80%以上であり、さらに好ましくは90%以上である。
【0130】
本発明のポリイミド樹脂膜は、膜表面に対して垂直方向と水平方向の屈折率差で定義される複屈折が0.06以下であることが好ましい。また、線熱膨張係数(CTE)に関しては50℃〜200℃の平均値が40ppm/℃以下であることが好ましい。より好ましくは複屈折が0.04以下かつ、CTEが40ppm/℃以下であり、さらに好ましくは複屈折が0.04以下かつCTEが30ppm/℃以下である。
【0131】
一般的に、支持基板上に製膜したポリイミド樹脂膜には残留応力が生じ、その結果、支持基板に反りが生じる。支持基板の反りは、素子の加工精度の低下や、素子の加工時の搬送エラー等の不具合を引き起こす。ポリイミド樹脂膜の残留応力は、主に支持基板とポリイミド樹脂膜のCTEが異なることに起因し、両者のCTEの差が増大すると、残留応力も増大する。一般的に、支持基板にはポリイミド樹脂膜よりもCTEが低いガラス基板などが用いられることから、ポリイミド樹脂膜には低CTEが求められる。一方、ディスプレイ基板などの表示素子やカラーフィルタなどの光学素子の基板には低複屈折が求められる。例えば、複屈折の高い基板に用いた表示素子やカラーフィルターを用いたディスプレイでは、画像の歪み、斜め視野での色ずれなどの不具合が生じる。本発明のポリイミド樹脂膜は、低CTEと低複屈折のバランスに優れるため、高い加工精度と高品質の表示画像を共に達成することができる。
【0132】
耐薬品性に関しては、本発明のポリイミド前駆体から形成されたポリイミドは、アセトン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、N−メチル−2−ピロリドン、ガンマブチロラクトン、ジメチルスルホキシドなどの有機溶剤や、塩酸、硝酸、燐酸、酢酸、シュウ酸などの酸性溶液、水酸化テトラメチルアンモニウムなどの塩基性溶液に対して、優れた耐薬品性を示す。
【0133】
なお、これらの物性値は、ポリイミド樹脂膜に界面活性剤、内部離型剤、シランカップリング剤、熱架橋剤、無機フィラー、光酸発生剤等が含まれている場合には、それらも含んだ状態の樹脂膜としての物性値である。
【0134】
発明のポリイミド樹脂膜は、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、電子ペーパーなどの表示素子、カラーフィルタや光導波路などの光学素子、太陽電池、CMOSなどの受光素子、タッチパネル、回路基板等に使用することができる。特にこれらの表示素子や受光素子等を、柔軟性があり大きく湾曲させ、また、折り曲げ可能なフレキシブル素子として活用する上で、本発明のポリイミド樹脂膜をフレキシブル基板として好ましく用いることができる。なお、本発明のポリイミド樹脂膜をフレキシブル基板として用いた場合の表示素子や光学素子(カラーフィルタ等)等については、フレキシブル表示素子やフレキシブル光学素子(フレキシブルカラーフィルタ等)等のように、素子名の前に「フレキシブル」と表記して示す場合もある。
【0135】
表示素子、受光素子、回路、TFT基板などの製造は、支持基板上にポリイミド樹脂膜を形成し、そのポリイミド樹脂膜を支持基板から剥離した後でポリイミド樹脂膜上に実施してもよく、支持基板から剥離せずにそのままポリイミド樹脂膜上に実施してもよい。
【0136】
後者の場合は、表示素子、受光素子、回路、TFT基板などを製造した後に、支持基板からそれらを剥離する。この方法は従来の枚葉式の製造プロセスを利用できる利点がある。また、ポリイミド樹脂膜が支持基板に固定されているため、位置精度良く表示素子、受光素子、回路、TFT基板、タッチパネルなどを製造するために好適である。以下の説明では後者の方法を代表例として説明することが多いが、いずれも前者の方法であってもよい。
【0137】
表示素子、受光素子、回路、TFT基板、タッチパネルなどを形成したポリイミド樹脂膜を基材から剥離する方法は特に限定されない。剥離方法の例としては、水に浸漬する方法、塩酸やフッ酸などの薬液に浸漬する方法、紫外光から赤外光の波長範囲のレーザー光をポリイミド樹脂膜と支持基板の界面に照射する方法などが挙げられる。なお、剥離を容易にするために、ポリイミド前駆体樹脂組成物を基材へ塗布する前に、支持基板に離型剤を塗布したり犠牲層を製膜したりしておいてもよい。離型剤としては、植物油系、アルキッド系、シリコーン系、フッ素系、芳香族高分子系、アルコキシシラン系等が挙げられる。犠牲層としては、金属膜、金属酸化物膜、アモルファスシリコン膜等が挙げられる。
【0138】
本発明のポリイミド樹脂膜には、少なくとも一方の面上に無機膜を製膜しガスバリア層とすることができ、ガスバリア層付き基板として、表示素子の基板に好適に使用することができる。
【0139】
ポリイミド樹脂膜上のガスバリア層は水蒸気や酸素等の透過を防ぐ役割を果たすものである。特に有機エレクトロルミネッセンス素子(有機EL素子)では、水分による素子の劣化が著しいので、基板にガスバリア性を付与することが必要である。
【0140】
<フレキシブル基板>
本発明のポリイミド樹脂膜を含む基板は柔軟性があり大きく湾曲させることができるという特長を有する。かかる柔軟性のある基板を、フレキシブル基板と呼ぶ。フレキシブル基板は少なくとも以下の(1)〜(3)の工程を経て製造できる。また、ポリイミド樹脂膜上に無機膜を有するフレキシブル基板は少なくとも以下の(1)〜(4)の工程を経て製造することができる。
(1)本発明のポリイミド前駆体と溶剤とを含むポリイミド前駆体樹脂組成物を支持基板上に塗布する工程
(2)塗布されたポリイミド前駆体樹脂組成物から溶剤を除去する工程
(3)ポリイミド前駆体をイミド化してポリイミド樹脂膜を得る工程
(4)ポリイミド樹脂膜上に無機膜を形成する工程。
【0141】
上記(1)〜(3)の工程は、<ポリイミド樹脂膜>で詳細を述べたとおりである。
【0142】
上記(4)の工程は、ポリイミド樹脂膜の少なくとも片面に、無機膜を形成する工程である。ポリイミド樹脂膜を支持基板から剥離して、フレキシブル基板を製造することができる。
【0143】
なお、(4)の工程はポリイミド樹脂膜の直上に無機膜を形成するものであってもよいし、間に別の層を介在させて無機膜を形成するものであってもよい。好ましくは、ポリイミド樹脂膜の直上に無機膜を形成する方法である。
【0144】
フレキシブル基板を製造する際の支持基板は、自立性をもつ硬質なものであって、樹脂組成物を塗布する面が平滑であり、耐熱性のある基材が好ましい。材質は特に制限されず、例えばソーダガラスや無アルカリガラス、シリコン、石英、アルミナやサファイアなどのセラミック、ガリウムヒ素、鉄、錫、亜鉛、銅、アルミニウム、ステンレスなどの金属、ポリイミドやポリベンゾオキサゾールなどの耐熱プラスチックフィルム、ポリテトラフルオロエチレンやポリフッ化ビニリデンなどのフッ素樹脂、エポキシ樹脂、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレートなどの基材が挙げられる。これらのうち、表面の平滑性、レーザー剥離が可能であること、安価な点などから、ガラスが好ましい。ガラスの種類に特に制約は無いが、金属不純物低減の観点から無アルカリガラスが好ましい。
【0145】
前述したように表示素子の基板にフレキシブル基板を用いる場合、基板はガスバリア性が求められるため、ポリイミド樹脂膜上に無機膜が形成されることが好ましい。ガスバリア層としての無機膜を構成する材料としては、金属酸化物、金属窒化物および金属酸窒化物が好ましく用いることができる。例えば、アルミニウム(Al)、ケイ素(Si)、チタン(Ti)、錫(Sn)、亜鉛(Zn)、ジルコニウム(Zr)、インジウム(In)、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、タンタル(Ta)、カルシウム(Ca)などの金属酸化物、金属窒化物および金属酸窒化物を挙げることができる。特に少なくともZn、Sn、Inの金属酸化物、金属窒化物および金属酸窒化物を含むガスバリア層は、耐屈曲性が高く好ましい。さらに、Zn、Sn、Inの原子濃度が20〜40%であるガスバリア層は耐屈曲性がより高く好ましい。ガスバリア層には二酸化ケイ素、酸化アルミニウムを共存させた組成も耐屈曲性が良好で好ましい。
【0146】
これら無機のガスバリア層は例えばスパッタリング法、真空蒸着法、イオンプレーティング法、プラズマCVD法等の気相中より材料を堆積させて膜を形成する気相堆積法により作製することができる。中でも、スパッタ法では、金属ターゲットを酸素含有雰囲気でスパッタする反応性スパッタをすることで製膜速度を向上させることができる。
【0147】
ガスバリア層の形成は、支持基板とポリイミド樹脂膜からなる積層体上で行っても、支持基板から剥離された自立膜上で行ってもよい。
【0148】
本発明のポリイミド樹脂は耐熱性が高いので、基板温度を上げてガスバリア層を作製することが可能である。ガスバリア層の製膜温度は80〜400℃とすることが好ましい。ガスバリア性能の向上には高い製膜温度を選択することが有利である。製膜温度が高いと耐屈曲性が低下する場合があるため、耐屈曲性が重要な用途では、ガスバリア層の製膜温度は100〜300℃であることが好ましい。本発明のポリイミド樹脂膜は優れた耐熱性を有しているため、高温下(例えば300℃)でガスバリア層を形成しても、膜に皺などの欠陥が生じることはない。
【0149】
ガスバリア層の層数に制限は無く、1層だけでも、2層以上の多層でもよい。多層膜の例としては、1層目がSiO、2層目がSiNから成るガスバリア層や、1層目がSiO/AlO/ZnO、2層目がSiOからなるガスバリア層が挙げられる。
【0150】
フレキシブル基板のガスバリア層上に有機EL発光層等の各種の機能を有する層を形成して、表示素子や光学素子などを作製する工程においては、各種有機溶媒が使用される。例えば、カラーフィルタ(以下、「CF」)では、ポリイミド樹脂膜上にガスバリア層を形成した上に着色画素やブラックマトリックス等を形成してCFとする。このとき、ガスバリア層の耐溶剤性が悪い場合は、ガスバリア性能が低下する。したがって、最上層のガスバリア層に耐溶剤性が付与されていることが好ましく、例えば最上層のガスバリア層は酸化ケイ素からなることが好ましい。
【0151】
ガスバリア層の組成分析は、X線光電子分光法(XPS法)を使用して各元素を定量分析することにより行うことができる。
【0152】
ガスバリア層の合計の厚さは、20〜600nmであることが好ましく、30〜300nmであることがさらに好ましい。
【0153】
ガスバリア層の厚さは、通常は透過型電子顕微鏡(TEM)による断面観察により測定することが可能である。
【0154】
ガスバリア層の上層と下層の境界領域の組成が傾斜的に変化している等の理由によりTEMで明確な界面が視認できない場合には、まず、厚さ方向の組成分析を行い厚さ方向の元素の濃度分布を求めた上で、濃度分布の情報を基に層の境界および、層の厚さを求めるものとする。厚さ方向の組成分析の手順および各層の層の境界ならびに層の厚さの定義を以下に記す。
【0155】
まず、透過型電子顕微鏡によりガスバリア層の断面を観察し、全体の厚さを測定する。次いで、深さ方向に元素の組成分析が可能な以下の測定を適用して、ガスバリア層の厚さ位置に対応する元素の濃度の分布(厚さ方向の濃度プロファイル)をえる。このときに適用する組成分析方法としては、電子エネルギー損失分光法(以降EELS分析と記す)、エネルギー分散型X線分光法(以降EDX分析と記す)、二次イオン質量分析法(以降SIMS分析と記す)、X線光電子分光法(XPS分析と記す)、オージェ電子分光法(以降AES分析分析と記す)、が挙げられるが、感度および精度の観点から、EELS分析がもっとも好ましい。従って、まず、EELS分析を行い、以降先にあげた順(EELS分析→EDX分析→SIMS分析→XPS分析→AES分析)で分析を行って、より上位の分析で特定できない成分について、下位の分析のデータを適用するようにする。
【0156】
<CF>
本発明のポリイミド樹脂膜を用いたフレキシブル基板上にブラックマトリックス、着色画素を設けることで、CFが得られる。このCFは、樹脂膜を基材に用いているため、軽量、割れにくい、可とう性などが特徴である。ブラックマトリックス、着色画素層のうち少なくとも1つの層に使用されている樹脂がポリイミド樹脂を含むことが好ましい。さらに、反射率低減及び耐熱性の観点から、ブラックマトリックスが低光学濃度層と、該低光学濃度層上に形成された高光学濃度層からなり、かつ低光学濃度層と高光学濃度層の少なくとも1つの層に使用されている樹脂がポリイミド樹脂を含むことが好ましい。
【0157】
本発明のポリイミド樹脂膜は、ポリイミド前駆体の溶剤として一般的な極性非プロトン性溶媒に対して高い耐薬品性を有するため、ブラックマトリックス、着色画素層にポリイミド樹脂を使用できる。さらに、ブラックマトリックス、着色画素層上にガスバリア層を形成する場合においても、ブラックマトリックス、着色画素層のポリイミド樹脂は耐熱性が高いため、ガスバリア層の形成過程においてガス発生が少なく、ガスバリア性の高いガスバリア層の製膜に有利である。また、ブラックマトリックス、着色画素層のパターン加工時には、アルカリ水溶液に可溶なポリイミド前駆体として使用できるため微細なパターン形成に有利である。
【0158】
CFの構成の例を図面により説明する。
図1Aは支持基板上に形成された、本発明のポリイミド樹脂膜を含むCFの基本的な構成を示すものである。ここから前述の剥離方法によって支持基板1を剥離することで、本発明のポリイミド樹脂膜を基板とするCFが得られる。
【0159】
支持基板1上にポリイミド樹脂膜2が形成され、その上にブラックマトリックス4、赤の着色画素5R、緑の着色画素5Gおよび青の着色画素5Bが形成され、さらにオーバーコート層6を備えている。なお、オーバーコート層6は必須ではなく、配置しない例も可能である。また、
図1B〜
図1Dは
図1Aの変形例であり、無機膜であるガスバリア層3がさらに形成されている。ガスバリア層3を形成する場所は特に限定されず、例えば、ポリイミド樹脂膜2上に形成しても(
図1B参照)、ブラックマトリックス4や着色画素層上に形成しても(
図1C参照)、カラーフィルタの表面に存在するオーバーコート層6上に形成しても、ポリイミド樹脂膜2上とオーバーコート層6上の両方に形成してもよい(
図1D参照)。また、ガスバリア層の層数に制限は無く、1層だけでも、2層以上の多層でもよい。多層膜の例としては、1層目がSiO、2層目がSiNから成るガスバリア層や、1層目がSiO/AlO/ZnO、2層目がSiOからなるガスバリア層が挙げられる。
【0160】
(ブラックマトリックス)
ブラックマトリックスは、黒色顔料を樹脂に分散した樹脂からなるブラックマトリックスであることが好ましい。黒色顔料の例としては、カーボンブラック、チタンブラック、酸化チタン、酸化窒化チタン、窒化チタン又は四酸化鉄が挙げられる。特に、カーボンブラック、チタンブラックが好適である。また赤顔料、緑顔料、青顔料を混合して黒色顔料として用いることもできる。
【0161】
樹脂ブラックマトリックスに使用する樹脂としては、耐熱性の観点、微細パターンの形成のしやすさの観点から、ポリイミド樹脂が好ましい。ポリイミド樹脂は、酸二無水物とジアミンとから合成されたポリアミド酸を、パターン加工後に熱硬化してポリイミド樹脂とすることが好ましい。
【0162】
酸二無水物、ジアミンおよび溶剤の例としては、前述のポリイミド樹脂で挙げたものを用いることができる。
【0163】
樹脂ブラックマトリックスに使用する樹脂としては、感光性アクリル樹脂を用いることもできる。黒色顔料分散した、アルカリ可溶性のアクリル樹脂、光重合性モノマーおよび高分子分散剤および添加剤からなる。
【0164】
アルカリ可溶性のアクリル樹脂の例としては、不飽和カルボン酸とエチレン性不飽和化合物との共重合体が挙げられる。不飽和カルボン酸の例としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、ビニル酢酸又は酸無水物が挙げられる。
【0165】
光重合性モノマーの例としては、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリアクリルホルマール、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート又はジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0166】
光重合開始剤の例としては、ベンゾフェノン、N,N’−テトラエチル−4,4’−ジアミノベンゾフェノン、4−メトキシ−4’−ジメチルアミノベンゾフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、α−ヒドロキシイソブチルフェノン、チオキサントン又は2−クロロチオキサントンが挙げられる。
【0167】
感光性アクリル樹脂を溶解するための溶媒の例としては、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、アセト酢酸エチル、メチル−3−メトキシプロピオネート、エチル−3−エトキシプロピオネート、メトキシブチルアセテート又は3−メチル−3−メトキシブチルアセテートが挙げられる。
【0168】
外光反射に起因する視認性の低下を抑制するために、ブラックマトリックスは、低光学濃度層と、該低光学濃度層上に形成された高光学濃度層と、からなる積層樹脂ブラックマトリックスであることが好ましい。なお、低光学濃度層とは、光学濃度が0ではなく実質的に透明でない層構成のものであって、単位厚さ当たりの光学濃度の値が、高光学濃度層の単位厚さ当たりの光学濃度よりも小さいものをいう。前記積層樹脂ブラックマトリックを構成する樹脂は特に制約されないが、低光学濃度層と高光学濃度層を一括パターニングする観点から、低光学濃度層はポリイミド樹脂、高光学濃度層はアクリル樹脂であることが好ましい。さらに、反射率を低下させるために、前記樹脂ブラックマトリックスには微粒子が含まれることがより好ましい。
【0169】
(着色画素)
ブラックマトリックスを形成した後に、着色画素を形成する。着色画素は、赤、緑、青の3色の着色画素からなる。また3色の着色画素に加えて、無色透明または、ごく薄く着色した第4色の画素を形成することで、表示装置の白色表示の明るさを向上させることもできる。
【0170】
カラーフィルタの着色画素は、着色剤として顔料または染料を含む樹脂が用いることができる。
【0171】
赤の着色画素に使用する顔料の例としては、PR254、PR149、PR166、PR177、PR209、PY138、PY150又はPYP139が挙げられ、緑の着色画素に使用する顔料の例としては、PG7、PG36、PG58、PG37、PB16、PY129、PY138、PY139、PY150又はPY185が挙げられ、青の着色画素に使用する顔料の例としては、PB15:6又はPV23が挙げられる。
【0172】
青色染料の例としては、C.I.ベイシックブルー(BB)5、BB7、BB9又はBB26が挙げられ、赤色染料の例としては、C.I.アシッドレッド(AR)51、AR87又はAR289が挙げられ、緑色染料の例としては、C.I.アシッドグリーン(AG)25、AG27が挙げられる。
【0173】
赤緑青の着色画素に使用する樹脂の例としては、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂又はポリイミド系樹脂が挙げられる。耐熱性の観点からはポリイミド樹脂が好ましく、CFの製造コストを安くするために、感光性アクリル系樹脂を使用してもよい。
【0174】
ポリイミド樹脂からなる着色画素を形成するためには、少なくともポリアミック酸、着色剤、溶剤からなる非感光性カラーペーストを、基板上に塗布した後、風乾、加熱乾燥、真空乾燥などにより乾燥し、非感光性ポリアミック酸着色被膜を形成し、ポジ型フォトレジストを用いて、所望パターンを形成後、フォトレジストをアルカリ剥離し、最後に200〜300℃で1分〜3時間加熱することにより着色画素を硬化(ポリイミド化)させる方法が一般的である。
【0175】
感光性アクリル系樹脂は、アルカリ可溶性のアクリル樹脂、光重合性モノマーおよび光重合開始剤を含有することが一般的である。
【0176】
アルカリ可溶性のアクリル樹脂の例としては、不飽和カルボン酸とエチレン性不飽和化合物との共重合体が挙げられる。不飽和カルボン酸の例としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、ビニル酢酸又は酸無水物が挙げられる。
【0177】
光重合性モノマーの例としては、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリアクリルホルマール、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート又はジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0178】
光重合開始剤の例としては、ベンゾフェノン、N,N’−テトラエチル−4,4’−ジアミノベンゾフェノン、4−メトキシ−4’−ジメチルアミノベンゾフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、α−ヒドロキシイソブチルフェノン、チオキサントン又は2−クロロチオキサントンが挙げられる。
【0179】
感光性アクリル系樹脂を溶解するための溶媒の例としては、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、アセト酢酸エチル、メチル−3−メトキシプロピオネート、エチル−3−エトキシプロピオネート、メトキシブチルアセテート又は3−メチル−3−メトキシブチルアセテートが挙げられる。
【0180】
ブラックマトリックスおよび着色画素を形成したカラーフィルタの表面を平坦化するために、カラーフィルタ表面にさらにオーバーコート層を形成してもよい。オーバーコート層の形成に使用する樹脂の例としては、エポキシ樹脂、アクリルエポキシ樹脂、アクリル樹脂、シロキサン樹脂又はポリイミド樹脂が挙げられる。オーバーコート層の厚さとしては、表面が平坦になる厚さが好ましく、0.5〜5.0μmがより好ましく、1.0〜3.0μmがさらに好ましい。
【0181】
(CFの製造方法)
本発明のポリイミド樹脂膜を含むCFは少なくとも以下の工程を経て製造することができる。
(1)本発明のポリイミド前駆体と溶剤とを含むポリイミド前駆体樹脂組成物を支持基板上に塗布する工程
(2)塗布されたポリイミド前駆体樹脂組成物から溶剤を除去する工程
(3)ポリイミド前駆体をイミド化してポリイミド樹脂膜を得る工程
(4)ポリイミド樹脂膜上にブラックマトリックスおよび着色画素を形成する工程
(5)支持基板からポリイミド樹脂膜を剥離する工程
上記(1)〜(3)の工程は、<ポリイミド樹脂膜>で詳細を述べたとおりである。
【0182】
上記(4)の工程は、ポリイミド樹脂膜上にブラックマトリックスおよび着色画素を形成する工程である。後述するように、ブラックマトリックスや着色画素のパターン形成にはフォトリソグラフィーが用いられる。現在、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイとしては300ppi以上の高精細が求められており、フレキシブルディスプレイパネルでも同等以上の性能が求められている。このような高解像度を実現するには高精度のパターン形成が必要である。支持基板上に製膜されたポリイミド樹脂膜上にブラックマトリックス等を形成して、CFを作製する場合、支持基板としてガラス基板を用い、その上にブラックマトリックス等を形成して、CFを作製する現行の技術が適用でき、ポリイミド自立膜上にCFを作製する場合と比較して、高精細パターンの形成に有利である。
【0183】
なお、(4)の工程はポリイミド樹脂膜の直上にブラックマトリックスや着色画素を形成するものであってもよいし、間に別の層を介在させてこれらを形成するものであってもよい。
【0184】
上記CFの製造工程には、さらにガスバリア層等の無機膜を製膜する工程が含まれていてもよい。無機膜を形成する場所は特に限定されない。例えば、ポリイミド樹脂膜上に形成しても、ブラックマトリックスや着色画素層上に形成しても、カラーフィルタの表面に存在する平坦化膜上に形成しても、ポリイミド樹脂膜上と平坦化膜上の両方に形成してもよい。また、無機膜の層数に制限は無く、1層だけでも、2層以上の多層でもよい。多層膜の例としては、1層目がSiO、2層目がSiNから成る無機膜や、1層目がSiO/AlO/ZnO、2層目がSiOからなる無機膜が挙げられる。
【0185】
次に、本発明のCFの製造方法の一例をより具体的に説明する。支持基板上にポリイミド樹脂膜およびガスバリア層を上記の方法で作製する。その上に、カーボンブラックまたはチタンブラックからなる黒色顔料を分散したポリアミド酸からなるブラックマトリックス用ペーストをスピンコーター又はダイコーター等の方法でキュア後の厚さが1μmになるように塗布し、60Pa以下まで減圧乾燥した後に、110〜140℃の熱風オーブン又はホットプレートでセミキュアを行う。
【0186】
ポジ型レジストをスピンコーター又はダイコーター等の方法で、プリベーク後の厚さが1.2μmになるように塗布後、80Paまで減圧乾燥を行い、80〜110℃の熱風オーブン又はホットプレートでプリベークを行い、レジスト膜を形成する。その後、プロキシミティ露光機又はプロジェクション露光機等により、フォトマスクを介して紫外線により選択的に露光を行った後、1.5〜3重量%の水酸化カリウム又はテトラメチルアンモニウムヒドロキシド等のアルカリ現像液に20〜300秒浸漬することにより露光部を除去する。剥離液を用いてポジレジストを剥離後、200〜300℃の熱風オーブン又はホットプレートで10〜60分加熱することで、ポリアミド酸をポリイミドに転換させることで樹脂ブラックマトリックスを形成する。
【0187】
着色画素は、着色剤と樹脂とを用いて作製する。着色剤として顔料を使用する場合には、顔料に高分子分散剤および溶媒を混合して分散処理を行った分散液に、ポリアミド酸を添加して作製する。一方、着色剤として染料を使用する場合には、染料に溶媒、ポリアミド酸を添加して作製する。この場合の全固形分は、樹脂成分である高分子分散剤、ポリアミド酸と、着色剤との合計である。
【0188】
得られた着色剤組成物を、樹脂ブラックマトリックスが形成されたポリイミド樹脂膜上に、スピンコーター又はダイコーター等の方法で加熱処理後の厚さが0.8〜3.0μmの目的の厚さになるように塗布後、80Paまで減圧乾燥を行い、80〜110℃の熱風オーブン又はホットプレートでプリベークを行い、着色剤の塗膜を形成する。
【0189】
次に、ポジ型レジストをスピンコーター又はダイコーター等の方法で、プリベーク後の厚さが1.2μmになるように塗布後、80Paまで減圧乾燥を行い、80〜110℃の熱風オーブン又はホットプレートでプリベークを行い、レジスト膜を形成する。その後、プロキシミティ露光機又はプロジェクション露光機等により、フォトマスクを介して紫外線により選択的に露光を行った後、1.5〜3重量%の水酸化カリウム又はテトラメチルアンモニウムヒドロキシド等のアルカリ現像液に20〜300秒浸漬することにより露光部を除去する。剥離液を用いてポジレジストを剥離後、200〜300℃の熱風オーブン又はホットプレートで10〜60分加熱することで、ポリアミド酸をポリイミドに転換させることで着色画素を形成する。着色画素の色毎に作製した着色剤組成物を使用して、上記のようなパターンニング工程を赤の着色画素、緑の着色画素および青の着色画素について順次行う。なお、着色画素のパターンニングの順序は特に限定されない。
【0190】
その後、ポリシロキサン樹脂をスピンコーター又はダイコーター等の方法で塗布後、真空乾燥し、80〜110℃の熱風オーブン又はホットプレートでプリベークを行い、150〜250℃の熱風オーブン又はホットプレートで5〜40分加熱することでオーバーコート層を形成することで、本発明のCFの画素が作製できる。
【0191】
前述したように本発明のポリイミド樹脂膜はCTEが低いため、支持基板上にポリイミド樹脂膜を形成した際の基板の反りを低減できる。したがって、ブラックマトリックスや着色画素形成時のフォトリソグラフィー工程での焦点ずれを小さくでき、その結果、CFを高精度で作製できる。
【0192】
<TFT基板>
本発明のポリイミド樹脂膜は、TFT基板の基材に好適に使用することができる。すなわち、本発明のポリイミド樹脂膜上にTFTを備えたTFT基板を得ることができる。このTFT基板は、樹脂膜を基材に用いているため、軽量、割れにくいなどが特徴である。
【0193】
本発明のポリイミド樹脂膜を利用したTFT基板は少なくとも以下の工程を経て製造することができる。
(1)本発明のポリイミド前駆体と溶剤とを含むポリイミド前駆体樹脂組成物を支持基板上に塗布する工程
(2)塗布されたポリイミド前駆体樹脂組成物から溶剤を除去する工程
(3)ポリイミド前駆体をイミド化してポリイミド樹脂膜を得る工程
(4)ポリイミド樹脂膜上にガスバリア層を形成する工程
(5)ポリイミド樹脂膜上にTFTを形成する工程。
【0194】
上記(1)〜(3)の工程は、<ポリイミド樹脂膜>で詳細を述べたとおりである。
【0195】
上記(4)及び(5)の工程は、ポリイミド樹脂膜の上に、ガスバリア層を形成し、次いで、TFTを形成する工程である。なお、(4)や(5)の工程はポリイミド樹脂膜の直上にガスバリア層やTFTを形成するものであってもよいし、間に別の層を介在させてこれらを形成するものであってもよい。好ましくは、ポリイミド樹脂膜の直上にガスバリア層を形成し、その上にTFTを形成する方法である。
【0196】
TFTを形成するための半導体層としては、アモルファスシリコン半導体、多結晶シリコン半導体、In−Ga−ZnO
-4に代表される酸化物半導体、ペンタセンやポリチオフェンに代表される有機物半導体が挙げられる。例えば、本発明のポリイミド樹脂膜を基材として、ガスバリア膜、ゲート電極、ゲート絶縁膜、半導体層、エッチングストッパ膜、ソース・ドレイン電極を公知の方法によって順次形成してボトムゲート型TFTを作製する。上記の工程を経てポリイミド樹脂膜を利用したTFT基板を製造することができる。このようなTFT基板は、液晶素子、有機EL素子、電子ペーパーなどの表示素子の駆動基板として用いることができる。
【0197】
TFT基板の製造において、ゲート電極、ゲート絶縁膜、半導体層、エッチングストッパ膜、ソース・ドレイン電極の形成には、主にフォトリソグラフィーを用いられる。前述したように本発明のポリイミド樹脂膜はCTEが低いため、支持基板上にポリイミド樹脂膜を形成した際の基板の反りを低減できる。したがって、フォトリソグラフィー工程での焦点ずれを小さくできるため、TFTを高精度で作製できる。その結果、駆動性能の良好なTFT基板が得られる。また、例えばボトムエミッション型有機ELディスプレイの場合、ディスプレイの使用者はTFT基板を透過した光を視認する。このため、複屈折の高い樹脂をTFT基板の基材に用いると、斜め方向から見た時に色ずれなどが起きる。本発明のポリイミドは、従来の低CTE/透明ポリイミドよりも複屈折が低いため、これらの不具合を改善することができる。
<タッチパネル>
本発明のポリイミド樹脂膜を用いたフレキシブル基板は、タッチパネルの基板に使用することができる。例えば、本発明のポリイミド樹脂膜の少なくとも片面に透明導電層を形成することで透明導電膜とし、接着剤や粘着剤等を用いて透明導電膜同士を積層させることでタッチパネルを作成することができる。
【0198】
透明導電層としては、公知の金属膜、金属酸化物膜等、カーボンナノチューブやグラフェンなどの炭素材料を適用できるが、中でも透明性、導電性および機械特性の観点から、金属酸化物膜を適用することが好ましい。前記金属酸化物膜としては、例えば、不純物としてスズ、テルル、カドミウム、モリブテン、タングステン、フッ素、亜鉛、ゲルマニウム等を添加した酸化インジウム、酸化カドミウムおよび酸化スズ、不純物としてアルミニウムを添加した酸化亜鉛、酸化チタン等の金属酸化物膜が挙げられる。中でも酸化スズまたは酸化亜鉛を2〜15質量%含有した酸化インジウムの薄膜は、透明性および導電性が優れているため好ましく用いられる。
【0199】
上記透明導電層の成膜方法は、目的の薄膜を形成できる方法であれば、いかなる方法で
もよいが、例えば、スパッタリング法、真空蒸着法、イオンプレーティング法、プラズマ
CVD法等の気相中より材料を堆積させて膜を形成する気相堆積法などが適している。中でも、特に優れた導電性・透明性が得られるという観点から、スパッタリング法を用いて成膜することが好ましい。また、透明導電層の膜厚は20〜500nmであることが好ましく、50〜300nmであることがさらに好ましい。
【0200】
<回路基板>
本発明のポリイミド樹脂膜を用いたフレキシブル基板は、回路基板に使用することができる。回路基板としては特に限定はなく、本発明のポリイミド樹脂膜をベースフィルムとしてその上に何らかの回路を形成したものが挙げられる。例えば、本発明のポリイミド樹脂膜をベースフィルムとし、その片面又は両面に接着剤層を介して銅箔を設けた銅張りポリイミドフィルム(CCL)にフォトレジスト膜形成、露光/現像、エッチング、レジスト剥離、ソルダーレジスト膜形成、電解金メッキを行ない、この上に保護層となるカバーレイフィルムが張り付けることで回路基板が得られる。前述の通り、本発明のポリイミド樹脂膜は透明性が高いため、透明回路基板を得ることができる。これは、透明ディスプレイに好適に用いることができる。
【0201】
<表示素子、受光素子>
本発明のポリイミドを利用したフレキシブル基板は、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、電子ペーパーといった表示素子や太陽電池、CMOSなどの受光素子に使用することができる。特にこれらの表示素子や受光素子を、折り曲げ可能なフレキシブルデバイスとして活用する上で、本発明のフレキシブル基板が好ましく用いられる。
【0202】
表示素子や受光素子の製造工程の一例としては、基板上に形成したポリイミド樹脂膜の上に、表示素子や受光素子に必要な回路と機能層を形成し、レーザー照射等の公知の方法を用いてポリイミド樹脂膜を基板から剥離することが挙げられる。
【0203】
例えば表示素子の一例である有機EL素子として、
図2に有機EL素子の一例(トップエミッション方式、白色発光有機EL)を示す。支持基板7上にポリイミド樹脂膜8が形成され、その上に無機膜であるガスバリア層9がさらに形成され、その上にTFT回路と有機EL発光層等が形成されている。TFT回路と有機EL発光層等は、アモルファス、シリコン、低温ポリシリコン、酸化物半導体などからなるTFT10、および平坦化層11、Al/ITOなどからなる第一電極12、第一電極12の端部を被覆する絶縁膜13を有し、正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層からなる白色有機EL発光層14W、ITOなどからなる第二電極15から構成され、ガスバリア層16で封止されている。レーザ照射等の公知の方法を用いてポリイミド樹脂膜8を支持基板7から剥離することによって、有機EL素子として使用できる。
【0204】
本発明のポリイミド樹脂膜を含む有機EL素子は少なくとも以下の工程を経て製造することができる。
(1)ポリイミド前駆体と溶剤とを含むポリイミド前駆体樹脂組成物を支持基板上に塗布する工程
(2)塗布されたポリイミド前駆体樹脂組成物から溶剤を除去する工程
(3)ポリイミド前駆体をイミド化してポリイミド樹脂膜を得る工程
(4)前記ポリイミド樹脂膜上にTFT回路と有機EL発光層を形成する工程
(5)前記支持基板から前記ポリイミド樹脂膜を剥離する工程
上記(1)〜(3)の工程は、<ポリイミド樹脂膜>で詳細を述べたとおりである。
【0205】
上記(4)の工程は、アモルファス、シリコン、低温ポリシリコン、酸化物半導体などからなるTFT10、および平坦化層11、Al/ITOなどからなる第一電極12、第一電極12の端部を被覆する絶縁膜13を有し、正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層からなる白色あるいは各色(赤色、緑色、青色等)の有機EL発光層、ITOなどからなる第二電極15を順時形成する。この際ポリイミド樹脂膜8の上に予め無機膜であるガスバリア層9を形成した上で、TFT回路と有機EL発光層を形成することが好ましく、また、有機EL発光層を形成した後、ガスバリア層16で封止することも好ましい。
【0206】
上記(5)の工程は、前述の場合と同様である。
【0207】
なお、光取り出し方式は、TFT基板側に光を取り出すボトムエミッション方式でも、封止基板側に光を取り出すトップエミッション方式のどちらでもよい。前述したように、本発明のポリイミド樹脂膜を用いることで高い精度でのTFT形成、及び斜め視野での色ずれを小さくすることができる。さらに、本発明のポリイミド樹脂膜上には高温下でもガスバリア層を形成できるため、パネルのガス透過率を低減することができる。したがって、本発明のポリイミド樹脂膜を含む有機EL素子を用いることで、ダークスポットなどの欠陥等が少なく、また色度が変化しない、表示品位/表示信頼性が高い、フレキシブルな有機ELディスプレイを得ることができる。
【0208】
<有機ELディスプレイ>
本発明のポリイミド樹脂膜を含む有機EL素子、および/または、本発明のポリイミド樹脂膜を含むCFは、それらを備えた有機ELディスプレイとして好ましく用いることができる。
A.本発明のポリイミド樹脂膜を含む有機EL素子を備えた有機ELディスプレイ
前項<表示素子、受光素子>に記載したように、本発明のポリイミド樹脂膜を用いた有機EL素子を用いることで、有機ELディスプレイを得ることができる。例えば、本発明のポリイミド樹脂膜は高い透明性を有していることから、本発明のポリイミド樹脂膜上にガスバリア膜/TFT回路/有機EL発光層(赤色/緑色/青色)を作成することで、
図7に示す有機ELディスプレイ(ボトムエミッション型)を得ることができる。
B.本発明のポリイミド樹脂膜を含むCFを備えた有機ELディスプレイ
本発明のポリイミド樹脂膜を含むCFと、有機EL素子を組み合わせることにより、フルカラー表示の有機ELディスプレイを得ることができる。特に、ポリイミド樹脂膜を基材に用いた白色発光有機EL素子と、本発明のCFとを組み合わせることが好ましい。なお、有機EL素子の基材として用いるポリイミド樹脂膜としては既存のポリイミド樹脂膜でも、本発明のポリイミド樹脂膜でもよい。
【0209】
本発明のCFと白色発光型の有機EL素子を貼り合わせてなる有機ELディスプレイの一例を
図3に示す。その製造工程の一例としては、以下の方法が挙げられる。前述の製造方法によって第1支持基板(図示せず)上に本発明のCF20を形成する。別途、前述の方法によって第2支持基板(図示せず)上にポリイミド樹脂膜を基板とする有機EL素子30を形成する。その後、粘着層17を介してCF20と有機EL素子30とを貼り合わせる。その後、第1、第2支持基板にそれぞれ支持基板側からレーザーを照射することで第1、第2支持基板をそれぞれ剥離する。
【0210】
粘着層は特に制限されず、例えば、粘着剤、粘接着剤、接着剤を光や熱により硬化させたものが挙げられる。粘着層の樹脂は特に制限されず、例えば、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、シリコーン樹脂などが挙げられる。
【0211】
第2基板上に形成するポリイミド樹脂膜に特に制限はなく、本発明のポリイミド樹脂膜でも、公知のポリイミド樹脂膜でも構わない。公知のポリイミドとしては、例えば、ピロメリット酸二無水物や3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物を酸成分に、パラフェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、2,2’−ジメチルベンジジン、2,2’−ジトリフルオロメチル−4,4’−ジアミノビフェニルをジアミン成分とする全芳香族ポリイミドが挙げられる。
【0212】
第1、第2支持基板の剥離に用いるレーザーの種類は、剥離が可能であれば特に制限はなく、例えば、エキシマレーザー(波長248、308、351nm)、YAGレーザー(波長1064、532、355nm)、He−Neレーザー(633nm)、炭酸ガスレーザ(波長1060nm)などが挙げられる。
【実施例】
【0213】
以下実施例等をあげて本発明を説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。
【0214】
(1)ポリイミド樹脂膜の作製−1
6インチのミラーシリコンウェハーに、東京エレクトロン(株)製の塗布現像装置 Mark−7を用いて、140℃×4分のプリベーク後の膜厚が15±0.5μmになるようにワニス状態のポリイミド前駆体樹脂組成物をスピン塗布した。その後、同じくMark−7のホットプレートを用いて140℃×4分のプリベーク処理(主として塗布されたポリイミド前駆体樹脂組成物から溶剤を除去する工程)を行った。プリベーク膜をイナートオーブン(光洋サーモシステム(株)製 INH−21CD)を用いて窒素気流下(酸素濃度20ppm以下)、3.5℃/minで300℃まで昇温し、30分間保持しポリイミド前駆体をイミド化し、5℃/minで50℃まで冷却しポリイミド樹脂膜を作製した。続いてフッ酸に1〜4分間浸漬してポリイミド樹脂膜を基板から剥離し、風乾してポリイミド樹脂膜を得た。
【0215】
(2)ポリイミド樹脂膜の作製−2
1/4に切断した6インチシリコン基板に、140℃×4分のプリベーク後の膜厚が30±1.0μmになるようにポリイミド前駆体をスピン塗布した以外はポリイミド樹脂膜の作製−1と同様の手法にてポリイミド樹脂膜を作製した。
【0216】
(3)ポリイミド樹脂膜(ガラス基板上)の作製−1
50mm×50mm×0.7mm厚のガラス基板(旭硝子(株)製AN−100)に、ミカサ(株)製のスピンコーターMS−A200を用いて140℃×4分のプリベーク後の膜厚が15±0.5μmになるようにワニスをスピン塗布した。その後、大日本スクリーン(株)製ホットプレートD−SPINを用いて140℃×4分のプリベーク処理を行った。プリベーク膜をイナートオーブン(光洋サーモシステム(株)製 INH−21CD)を用いて窒素気流下(酸素濃度20ppm以下)、3.5℃/minで300℃まで昇温し、300℃まで昇温し、30分間保持し、5℃/minで50℃まで冷却しポリイミド樹脂膜(ガラス基板上)を作製した。
【0217】
(4)ポリイミド樹脂膜(ガラス基板上)の作製−2
300mm×350mm×0.7mm厚のガラス基板(旭硝子(株)製AN−100)に、スリットコーター(東レエンジニアリング(株)製)を用いて140℃×4分のプリベーク後の膜厚が15±0.5μmになるようにワニスをスピン塗布した。その後、ホットプレートを用いて140℃×4分のプリベーク処理を行った。プリベーク膜をイナートオーブン(光洋サーモシステム(株)製 INH−21CD)を用いて窒素気流下(酸素濃度20ppm以下)、70分かけて300℃まで昇温し、30分間保持し、5℃/minで50℃まで冷却しポリイミド樹脂膜(ガラス基板上)を作製した。
【0218】
(5)光透過率(T)の測定
紫外可視分光光度計((株)島津製作所製 MultiSpec1500)を用い、400nmにおける光透過率を測定した。なお、測定には(3)で作製したガラス基板上ポリイミド樹脂膜を用いた。
【0219】
(6)屈折率、複屈折の測定
プリズムカプラー(METRICON社製、PC2010)を用い、波長632.8nmのTE屈折率(n(TE))およびTM屈折率(n(TM))を測定した。n(TE)、n(TM)は、それぞれポリイミド膜面に対して、平行方向、垂直方向の屈折率である。平均屈折率n(AV)は((2×n(TE)
2+n(TM)
2)/3)^0.5から算出し、複屈折はn(TE)とn(TM)の差(n(TE)−n(TM))として計算した。なお、測定には(2)で作製したポリイミド樹脂膜を用いた。
【0220】
(7)CTEの測定
熱機械分析装置(エスアイアイ・ナノテクノロジー(株)製 EXSTAR6000 TMA/SS6000)を用いて、窒素気流下で測定を行った。昇温方法は、以下の条件にて行った。第1段階で昇温レート5℃/minで200度まで昇温して試料の吸着水を除去し、第2段階で降温レート5℃/minで室温まで空冷した。第3段階で、昇温レート5℃/minで本測定を行い、50℃〜200℃のCTEの平均値を求めた。なお、測定には(1)で作製したポリイミド樹脂膜を用いた。
(8)クラック評価
(3)に記載の方法でプリベーク膜を作製し、光学顕微鏡(Nikon製、OPTIPHOT300)を用いて目視で100枚観察を行い、クラックの生じた枚数を記録した。
(9)基板反りの測定
反り測定は、(株)ミツトヨ製の精密石常盤(1000mm×1000mm)の上に載せ、試験板の4辺の各中点および各頂点の計8箇所について常盤から浮いている量(距離)を、隙間ゲージを用いて測定した。これらの平均値を反り量とした。測定は室温で行なった。
(10)ブラックマトリクスの位置精度(BM位置精度)の測定
(3)の方法で作製したガラス基板上ポリイミド樹脂膜に下記調製例3で作製したブラックペーストをスピン塗布し、ホットプレートで130℃、10分間乾燥し、黒色の樹脂塗膜を形成した。ポジ型フォトレジスト(シプレー社製、“SRC−100”)をスピン塗布、ホットプレートで120℃、5分間プリベークした。次に、マスクを介して超高圧水銀灯を用いて100mJ/cm
2で紫外線照射した後、2.38%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液を用いて、フォトレジストの現像と樹脂塗膜のエッチングを同時に行い、パターンを形成した。さらに、メチルセロソルブアセテートでレジスト剥離した後、ホットプレートで280℃、10分間加熱させることでイミド化させ、ブラックマトリクスを形成した。ブラックマトリクスの厚さを測定したところ、1.4μmであった。
作製したカラーフィルタのブラックマトリックスの理想格子からのズレ量をSMIC−800(ソキア・トプコン社製)を用い、各ガラス付きカラーフィルタ基板について24ポイントずつ測定した。測定により得られたズレ量の絶対値の平均を計算により求め、得られた値をその水準におけるブラックマトリックスの理想格子からのズレ量とした。
(11)EL素子の色座標(x,y)の角度依存性の測定
(4)の方法で作製したガラス基板上ポリイミド樹脂膜表面に、ITOターゲット(東トー社製)を用いたスパッタリングにより、膜厚160nmのITO膜を形成した。次にこのように形成したITO膜を、Ar雰囲気下、200℃で1時間、加熱処理することによってITO膜をアニールし、続いてエッチング処理して、ポリイミド基板に陽極を形成した。得られた基板を “セミコクリーン56”(商品名、フルウチ化学(株)製)で15分間超音波洗浄してから、超純水で洗浄した。この基板を、素子を作製する直前に1時間UV−オゾン処理し、真空蒸着装置内に設置して、装置内の真空度が5×10
−4Pa以下になるまで排気した。抵抗加熱法によって、正孔輸送層、有機発光層、電子輸送層を順次蒸着し、赤色有機EL発光層を設けた。次いで、基板上方の全面にMg/ITOからなる陰極を形成した。さらにCVD製膜によりSiON封止膜を形成した。得られた上記基板を蒸着機から取出し、エキシマレーザー(波長308nm)をガラス基板側から照射することにより、ガラス基板から有機EL素子を剥離した。得られた有機EL素子を6Vの定電圧で駆動し、輝度配向特性測定装置C9920−11(浜松ホトニクス(株)製)を用いて、0°、70°方向での色座標(x,y)を測定した。各方向で測定した(x,y)の差が小さいほど、斜め視野での色ずれが小さいことを意味する。
【0221】
以下、実施例で使用する化合物の略号を記載する。
BPDA:3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物
ODPA:3,3’,4,4’−オキシジフタル酸二無水物
6FDA:4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物
BSAA:2,2−ビス(4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル)プロパン二無水物
PMDA−HS:1R,2S,4S,5R−シクロへキサンテトラカルボン酸二無水物
BPAF:4,4’−(フルオレニル)ジフタル酸無水物
BPF−EPA:4,4’−((9H−フルオレニル)ビス(4,1−フェニレンオキシカルボニル))ジフタル酸二無水物
BPF−PA: 9,9−ビス(4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル)フルオレン無水物
CHDA:トランス−1,4−ジアミノシクロへキサン
TFMB:2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン
FDA:9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン
FDH:9,9−ビス(3−(3−アミノベンズアミド)−4−ヒドロキシフェニル)フルオレン
BPF−AN:9,9−ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)フルオレン
NMP:N−メチル−2−ピロリドン。
【0222】
調製例1;ポリイミド前駆体組成物(ワニス)の調製
乾燥窒素気流下、2000mL4つ口フラスコにBPDA129.0416g(0.438mol)、PDA47.4290g(0.438mol)、NMP1000gを入れて65℃で加熱撹拌した。6時間後、冷却してポリアミド酸樹脂溶液(樹脂の濃度15wt%)を得た。
【0223】
調製例2;ポリイミド前駆体組成物(ワニス)の調製
DAE60.07g(0.30mol)、PDA70.29g(0.65mol)およびSiDA12.43g(0.05mol)を、850gのGBLおよび850gのNMPと共に仕込み、ODPA309.43g(0.9975mol)を添加し、80℃で3時間反応させた。無水マレイン酸1.96g(0.02mol)を添加し、更に80℃で1時間反応させ、ポリアミド酸樹脂溶液(樹脂の濃度20wt%)を得た。
【0224】
調製例3;ブラックマトリックスを形成するための黒色遮光剤組成物の作製
調製例2のポリイミド前駆体組成物(ワニス)250gに、50gのカーボンブラック(MA100;三菱化学(株)製)および200gのNMPを混合し、ダイノーミルKDL−Aを用いて、直径0.3mmのジルコニアビーズを使用して、3200rpmで3時間の分散処理を行い、遮光剤分散液1を得た。
【0225】
この遮光剤分散液1を50gに、49.9gのNMPおよび0.1gの界面活性剤(LC951;楠本化学(株)製)を添加して、非感光性の遮光剤組成物を得た。
【0226】
調製例4;赤の着色画素を形成するための感光性赤色着色剤組成物の作製
着色剤として、50gのPR177(クロモファイン(登録商標)レッド6125EC;大日精化製)および50gのPR254(イルガフォア(登録商標)レッドBK−CF;チバ・スペシャルティケミカルズ(株)製)を混合した。この着色剤中に、100gの高分子分散剤(BYK2000;樹脂濃度40wt%;ビックミージャパン(株)製)、67gのアルカリ可溶性樹脂(サイクロマー(登録商標)ACA250;樹脂濃度45wt%;ダイセル化学製)、83gのプロピレングリコールモノメチルエーテルおよび650gのプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを混合して、スラリーを作製した。スラリーを入れたビーカーを循環式ビーズミル分散機(ダイノーミルKDL−A;ウイリー・エ・バッコーフェン社製)とチューブでつなぎ、メディアとして直径0.3mmのジルコニアビーズを使用して、3200rpm、4時間の分散処理を行い、着色剤分散液を得た。
【0227】
この着色剤分散液45.7gに、7.8gのサイクロマーACA250、3.3gの光重合性モノマー(カヤラッド(登録商標)DPHA;日本化薬製)、0.2gの光重合開始剤(イルガキュア(登録商標)907;チバ・スペシャルティケミカルズ製)、0.1gの光重合開始剤(カヤキュアー(登録商標)DETX−S;日本化薬製)、0.03gの界面活性剤(BYK333;ビックケミージャパン(株)製)および42.9gのプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを添加し、着色剤組成物を得た。着色剤組成物における全固形分中の着色剤の濃度は、31wt%であり、各着色剤の重量混合比は、PR177:PR254=50:50であった。
【0228】
調製例5;緑の着色画素を形成するための感光性緑色着色剤組成物の作製
着色剤として、65gのPG7(ホスタパーム(登録商標)グリーンGNX;クラリアントジャパン社製)および35gのPY150(E4GNGT;ランクセス(株)製)を混合した。この着色剤に、100gのBYK2000、67gのサイクロマーACA250、83gのプロピレングリコールモノメチルエーテルおよび650gのプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを混合し、ダイノーミルKDL−Aを用いて、直径0.3mmのジルコニアビーズを使用して、3200rpm、6時間の分散処理を行い、着色剤分散液を得た。
【0229】
この着色剤分散液51.7gに、6.3gのサイクロマーACA250、2.9gのカヤラッドDPHA、0.2gのイルガキュア907、0.1gのカヤキュアーDETX−S、0.03gのBYK333および38.8gのプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを添加し、着色剤組成物を得た。着色剤組成物における全固形分中の着色剤の濃度は35wt%であり、着色剤はPG7:PY150=65:35(重量比)であった。
【0230】
調製例6;青の着色画素を形成するための感光性青色着色剤組成物の作製
着色剤として、100gのPB15:6(リオノール(登録商標)ブルー7602;東洋インキ社製)を使用し、この着色剤中に100gのBYK2000、67gのサイクロマーACA250、83gのプロピレングリコールモノメチルエーテルおよび650gのプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを混合して、スラリーを作製した。スラリーを分散機ダイノーミルKDL−Aを用いて、直径0.3mmのジルコニアビーズを使用して、3200rpm、3時間の分散処理を行い、着色剤分散液を得た。
【0231】
この着色剤分散液41.3gに、8.9gのサイクロマーACA250、3.5gのカヤラッドDPHA、0.2gのイルガキュア907、0.1gのカヤキュアーDETX−S、0.03gのBYK333および46gのプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを添加し、着色剤組成物を得た。着色剤組成物における全固形分中の着色剤の濃度は28wt%であり、着色剤はPB15:6単独であった。
【0232】
調製例7;赤の着色画素を形成するための非感光性赤色着色剤組成物の作製
ピグメントレッドPR254、3.6g(80wt%)、ピグメントレッドPR177、0.9g(20wt%)とポリマー分散剤(PD) 22.5g及びNMP63gを混合して、スラリーを作製した。スラリーを分散機ダイノーミルKDL−Aを用いて、直径0.3mmのジルコニアビーズを使用して、3200rpm、3時間の分散処理を行い、着色剤分散液を得た。
【0233】
この着色剤分散液45.6gに調製例2で作製したポリイミド前駆体ワニス18.2g、密着改良剤として3−アミノプロピルトリエトキシシランを0.1g、界面活性剤としてアクリル系界面活性剤を0.03g、および適量のNMPを添加混合し、顔料/樹脂比率が25/75(wt/wt)、固形分濃度が6%で溶剤としてNMPを94wt%含む赤色カラーペースト(PR−1)を得た。
【0234】
調製例8;緑の着色画素を形成するための非感光性緑色着色剤組成物の作製
ピグメントグリーンPG36、2.7g(60wt%)、ピグメントイエローPY150、1.8g(40wt%)とポリマー分散剤(PD) 22.5g及びNMP63gを混合して、スラリーを作製した。スラリーを分散機ダイノーミルKDL−Aを用いて、直径0.3mmのジルコニアビーズを使用して、3200rpm、3時間の分散処理を行い、着色剤分散液を得た。
【0235】
この着色剤分散液45.6gに調製例2で作製したポリイミド前駆体ワニス18.2g、密着改良剤として3−アミノプロピルトリエトキシシランを0.1g、界面活性剤としてアクリル系界面活性剤を0.03g、および適量のNMPを添加混合し、顔料/樹脂比率が25/75(wt/wt)、固形分濃度が6%で溶剤としてNMPを94wt%含む緑色カラーペースト(PG−1)を得た。
【0236】
調製例9;青の着色画素を形成するための非感光性青色着色剤組成物の作製
ピグメントブルーPB15:6、4.5gとポリマー分散剤(PD) 22.5g及びN−メチルピロリドン63gを混合して、スラリーを作製した。スラリーを分散機ダイノーミルKDL−Aを用いて、直径0.3mmのジルコニアビーズを使用して、3200rpm、3時間の分散処理を行い、着色剤分散液を得た。
【0237】
この着色剤分散液45.6gに調製例2で作製したポリイミド前駆体ワニス18.2g、密着改良剤として3−アミノプロピルトリエトキシシランを0.1g、界面活性剤としてアクリル系界面活性剤を0.03g、および適量のNMPを添加混合し、顔料/樹脂比率が25/75(wt/wt)、固形分濃度が6wt%で溶剤としてNMPを94wt%含む青色カラーペースト(PB−1)を得た。
【0238】
調製例10;透明保護膜を形成するための樹脂組成物の作製
65.05gのトリメリット酸に、280gのGBLおよび74.95gのγ−アミノプロピルトリエトキシシランを添加し、120℃で2時間加熱した。得られた溶液20gに、7gのビスフェノキシエタノールフルオレンジグリシジルエーテルおよび15gのジエチレングリコールジメチルエーテルを添加し、樹脂組成物を得た。
【0239】
調製例11;ポリシロキサン溶液の合成
500mlの三口フラスコにメチルトリメトキシシランを81.72g(0.60mol)、フェニルトリメトキシシランを59.49g(0.30mol)、(2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランを24.64g(0.10mol)、ジアセトンアルコールを163.1g仕込み、室温で攪拌しながら水55.8gにリン酸0.54g(仕込みモノマーに対して0.3wt%)を溶かしたリン酸水溶液を10分かけて添加した。その後、フラスコを40℃のオイルバスに浸けて30分攪拌した後、オイルバスを30分かけて115℃まで昇温した。昇温開始1時間後に溶液の内温が100℃に到達し、そこから1.5時間加熱攪拌し(内温は100〜110℃)、ポリシロキサン溶液を得た。なお、加熱攪拌中、窒素を0.05l(リットル)/min流した。反応中に副生成物であるメタノール、水が合計131g留出した。
【0240】
得られたポリシロキサン溶液の固形分濃度は43wt%、ポリシロキサンの重量平均分子量は4200であった。なお、ポリシロキサン中のフェニル基置換シランの含有比はSi原子モル比で30mol%であった。
【0241】
調製例12:感光性ポジ型透明レジストの作製
上記合成で得られたポリシロキサン溶液15.43g、キノンジアジド化合物0.59g、溶剤としてジアセトンアルコール3.73g、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート9.84gを黄色灯下で混合、攪拌して均一溶液とした後、0.45μmのフィルターで濾過して感光性ポジ型透明レジストを調製した。
【0242】
(実施例1)
乾燥窒素気流下、200mL4つ口フラスコにCHDA3.1495g(27.51mmol)、FDA1.0651g(3.06mmol)、BPDA7.1951g(24.45mmol)、6FDA2.7159g(6.11mmol)、NMP80gを入れて65℃で加熱撹拌した。6時間後、冷却してポリイミド前駆体組成物(ワニス)とした。このときモノマーのモル比はBPDA/6FDA/CHDA/FDA=80/20/90/10であった。得られたポリイミド前駆体から前述の(1)〜(4)記載の各方法にてポリイミド樹脂膜を作製し、(5)〜(11)記載の手法にて光透過率、複屈折、CTE、クラック評価、基板反り、BM位置精度、EL素子の色座標の角度依存性の測定を行なった。結果を表1に示す。
【0243】
(実施例2)
乾燥窒素気流下、200mL4つ口フラスコにCHDA3.4068g(29.83mmol)、FDA0.5471g(1.57mmol)、BPDA8.0387g(27.32mmol)、BSAA2.1250g(4.08mmol)、NMP80gを入れて65℃で加熱撹拌した。6時間後、冷却してポリイミド前駆体組成物(ワニス)とした。このときモノマーのモル比はBPDA/BSAA/CHDA/FDA=87/13/95/5であった。実施例1と同様に、ポリイミド樹脂膜を作製し、光透過率、複屈折、CTE、クラック評価、基板反り、BM位置精度、EL素子の色座標の角度依存性の測定を行なった。結果を表1に示す。
【0244】
(実施例3)
乾燥窒素気流下、200mL4つ口フラスコにCHDA3.4463g(30.18mmol)、FDA0.9145g(2.62mmol)、BPDA7.7216g(26.24mmol)、ODPA2.0353g(6.56mmol)、NMP80gを入れて65℃で加熱撹拌した。6時間後、冷却してポリイミド前駆体組成物(ワニス)とした。このときモノマーのモル比はBPDA/ODPA/CHDA/FDA=80/20/92/8であった。実施例1と同様に、硬化膜を作製し、透過率、複屈折および線膨張係数の測定を行なった。結果を表1にしめす。実施例1と同様に、ポリイミド樹脂膜を作製し、光透過率、複屈折、CTE、クラック評価、基板反り、BM位置精度、EL素子の色座標の角度依存性の測定を行なった。結果を表1に示す。
【0245】
(実施例4)
乾燥窒素気流下、200mL4つ口フラスコにCHDA3.7100g(32.49mmol)、FDA0.7226g(2.62mmol)、BPDA8.1354g(27.65mmol)、PMDA−HS1.5496g(6.91mmol)、NMP80gを入れて65℃で加熱撹拌した。6時間後、冷却してポリイミド前駆体組成物(ワニス)とした。このときモノマーのモル比はBPDA/PMDA−HS/CHDA/FDA=80/20/94/6であった。実施例1と同様に、ポリイミド樹脂膜を作製し、光透過率、複屈折、CTE、クラック評価、基板反り、BM位置精度、EL素子の色座標の角度依存性の測定を行なった。結果を表1に示す。
【0246】
(実施例5)
乾燥窒素気流下、200mL4つ口フラスコにCHDA3.5082g(30.72mmol)、FDA0.5634g(1.62mmol)、BPDA8.5635g(29.11mmol)、BPAF1.4825g(3.23mmol)、NMP80gを入れて65℃で加熱撹拌した。6時間後、冷却してポリイミド前駆体組成物(ワニス)とした。このときモノマーのモル比はBPDA/BPAF/CHDA/FDA=90/10/95/5であった。実施例1と同様に、ポリイミド樹脂膜を作製し、光透過率、複屈折、CTE、クラック評価、基板反り、BM位置精度、EL素子の色座標の角度依存性の測定を行なった。結果を表1に示す。
【0247】
(実施例6)
乾燥窒素気流下、200mL4つ口フラスコにCHDA3.3253g(29.12mmol)、FDA0.5340g(1.53mmol)、BPDA8.1168g(27.59mmol)、BPF−EPA2.1415g(3.07mmol)、NMP80gを入れて65℃で加熱撹拌した。6時間後、冷却してポリイミド前駆体組成物(ワニス)とした。このときモノマーのモル比はBPDA/BPF−EPA/CHDA/FDA=90/10/95/5であった。実施例1と同様に、ポリイミド樹脂膜を作製し、光透過率、複屈折、CTE、クラック評価、基板反り、BM位置精度、EL素子の色座標の角度依存性の測定を行なった。結果を表1に示す。
【0248】
(実施例7)
乾燥窒素気流下、200mL4つ口フラスコにCHDA3.3662g(29.48mmol)、FDA0.5406g(1.55mmol)、BPDA8.2168g(27.93mmol)、BPF−PA1.9940g(3.10mmol)、NMP80gを入れて65℃で加熱撹拌した。6時間後、冷却してポリイミド前駆体組成物(ワニス)とした。このときモノマーのモル比はBPDA/BPF−PA/CHDA/FDA=90/10/95/5であった。実施例1と同様に、ポリイミド樹脂膜を作製し、光透過率、複屈折、CTE、クラック評価、基板反り、BM位置精度、EL素子の色座標の角度依存性の測定を行なった。結果を表1に示す。
【0249】
(実施例8)
乾燥窒素気流下、200mL4つ口フラスコにCHDA3.3209g(29.08mmol)、FDA0.5333g(1.53mmol)、BPDA6.7551g(22.96mmol)、BPAF3.5083g(7.65mmol)、NMP80gを入れて65℃で加熱撹拌した。6時間後、冷却してポリイミド前駆体組成物(ワニス)とした。このときモノマーのモル比はBPDA/BPAF/CHDA/FDA=75/25/95/5であった。実施例1と同様に、ポリイミド樹脂膜を作製し、光透過率、複屈折、CTE、クラック評価、基板反り、BM位置精度、EL素子の色座標の角度依存性の測定を行なった。結果を表1に示す。
【0250】
(実施例9)
乾燥窒素気流下、200mL4つ口フラスコにCHDA3.1226g(27.35mmol)、MFDA1.1439g(3.04mmol)、BPDA7.1516g(24.31mmol)、6FDA2.6995g(6.08mmol)、NMP80gを入れて65℃で加熱撹拌した。6時間後、冷却してポリイミド前駆体組成物(ワニス)とした。このときモノマーのモル比はBPDA/6FDA/CHDA/MFDA=80/20/90/10であった。実施例1と同様に、ポリイミド樹脂膜を作製し、光透過率、複屈折、CTE、クラック評価、基板反り、BM位置精度、EL素子の色座標の角度依存性の測定を行なった。結果を表1に示す。
【0251】
(実施例10)
乾燥窒素気流下、200mL4つ口フラスコにCHDA3.0978g(27.13mmol)、FHA1.4594g(2.36mmol)、BPDA6.9406g(23.59mmol)、6FDA2.6199g(5.90mmol)、NMP80gを入れて65℃で加熱撹拌した。6時間後、冷却してポリイミド前駆体組成物(ワニス)とした。このときモノマーのモル比はBPDA/6FDA/CHDA/FHA=80/20/92/8であった。実施例1と同様に、ポリイミド樹脂膜を作製し、光透過率、複屈折、CTE、クラック評価、基板反り、BM位置精度、EL素子の色座標の角度依存性の測定を行なった。結果を表1に示す。
【0252】
(実施例11)
乾燥窒素気流下、200mL4つ口フラスコにCHDA3.0211g(26.46mmol)、BPF−AN1.5657g(2.94mmol)、BPDA6.9191g(23.52mmol)、6FDA2.6118g(5.88mmol)、NMP80gを入れて65℃で加熱撹拌した。6時間後、冷却してポリイミド前駆体組成物(ワニス)とした。このときモノマーのモル比はBPDA/6FDA/CHDA/BPF−AN=80/20/90/10であった。実施例1と同様に、ポリイミド樹脂膜を作製し、光透過率、複屈折、CTE、クラック評価、基板反り、BM位置精度、EL素子の色座標の角度依存性の測定を行なった。結果を表1に示す。
【0253】
(実施例12)
乾燥窒素気流下、200mL4つ口フラスコにCHDA3.3598g(29.42mmol)、FDA1.1391g(3.27mmol)、BPDA9.6187g(32.69mmol)、NMP80gを入れて65℃で加熱撹拌した。6時間後、冷却してポリイミド前駆体組成物(ワニス)とした。このときモノマーのモル比はBPDA/CHDA/FDA=100/90/10であった。実施例1と同様に、ポリイミド樹脂膜を作製し、光透過率、複屈折、CTE、クラック評価、基板反り、BM位置精度、EL素子の色座標の角度依存性の測定を行なった。結果を表1に示す。
【0254】
(実施例13)
乾燥窒素気流下、200mL4つ口フラスコにCHDA3.3381g(29.23mmol)、MFDA1.2229g(3.25mmol)、BPDA9.5566g(32.48mmol)、NMP80gを入れて65℃で加熱撹拌した。6時間後、冷却してポリイミド前駆体組成物(ワニス)とした。このときモノマーのモル比はBPDA/CHDA/MFDA=100/90/10であった。実施例1と同様に、ポリイミド樹脂膜を作製し、光透過率、複屈折、CTE、クラック評価、基板反り、BM位置精度、EL素子の色座標の角度依存性の測定を行なった。結果を表1に示す。
【0255】
(実施例14)
乾燥窒素気流下、200mL4つ口フラスコにCHDA3.1619g(27.69mmol)、FHA1.9035g(3.08mmol)、BPDA9.0522g(30.77mmol)、NMP80gを入れて65℃で加熱撹拌した。6時間後、冷却してポリイミド前駆体組成物(ワニス)とした。このときモノマーのモル比はBPDA/CHDA/FHA=100/92/8であった。実施例1と同様に、ポリイミド樹脂膜を作製し、光透過率、複屈折、CTE、クラック評価、基板反り、BM位置精度、EL素子の色座標の角度依存性の測定を行なった。結果を表1に示す。
【0256】
(実施例15)
乾燥窒素気流下、200mL4つ口フラスコにCHDA3.2224g(28.22mmol)、BPF−AN1.6701g(3.14mmol)、BPDA9.2252g(31.35mmol)、NMP80gを入れて65℃で加熱撹拌した。6時間後、冷却してポリイミド前駆体組成物(ワニス)とした。このときモノマーのモル比はBPDA/CHDA/BPF−AN=100/90/10であった。実施例1と同様に、ポリイミド樹脂膜を作製し、光透過率、複屈折、CTE、クラック評価、基板反り、BM位置精度、EL素子の色座標の角度依存性の測定を行なった。結果を表1に示す。
【0257】
(比較例1)
乾燥窒素気流下、200mL4つ口フラスコにCHDA3.9472g(34.57mmol)、BPDA10.1704g(34.57mmol)、NMP80gを入れて65℃で加熱撹拌した。6時間後、冷却してポリイミド前駆体組成物(ワニス)とした。実施例1と同様に、ポリイミド樹脂膜を作製し、光透過率、複屈折、CTE、基板反り、BM位置精度、EL素子の色座標の角度依存性の測定を行なった。結果を表1に示す。
【0258】
(比較例2)
乾燥窒素気流下、200mL4つ口フラスコにTFMB5.9138g(18.47mmol)、6FDA8.2039g(18.47mmol)、NMP80gを入れて65℃で加熱撹拌した。6時間後、冷却してポリイミド前駆体組成物(ワニス)とした。実施例1と同様に、ポリイミド樹脂膜を作製し、光透過率、複屈折、CTE、基板反り、BM位置精度、EL素子の色座標の角度依存性の測定を行なった。結果を表1に示す。
【0259】
(比較例3)
乾燥窒素気流下、100mL4つ口フラスコにCHDA3.9014g(34.17mmol)、BPDA7.0366g(23.92mmol)、ODPA3.1796(10.25)NMP80gを入れて65℃で加熱撹拌した。6時間後、冷却してポリイミド前駆体組成物(ワニス)とした。このときモノマーのモル比はBPDA/ODPA/CHDA=70/30/100であった。実施例1と同様に、ポリイミド樹脂膜を作製し、光透過率、複屈折、CTE、基板反り、BM位置精度、EL素子の色座標の角度依存性の測定を行なった。結果を表1に示す。
【0260】
(比較例4)
乾燥窒素気流下、200mL4つ口フラスコにCHDA1.8178g(15.92mmol)、FDA3.6978(10.61mmol)、BPDA6.2448g(21.22mmol)、6FDA2.3572g(5.31mmol)、NMP80gを入れて65℃で加熱撹拌した。6時間後、冷却してポリイミド前駆体組成物(ワニス)とした。このときモノマーのモル比はBPDA/6FDA/CHDA/FDA=80/20/60/40であった。実施例1と同様に、ポリイミド樹脂膜を作製し、光透過率、複屈折、CTE、基板反り、BM位置精度、EL素子の色座標の角度依存性の測定を行なった。結果を表1に示す。
【0261】
(比較例5)
乾燥窒素気流下、200mL4つ口フラスコにFDA7.6544g(21.97mmol)、BPDA6.4633g(21.97mmol)、NMP80gを入れて65℃で加熱撹拌した。6時間後、冷却してポリイミド前駆体組成物(ワニス)とした。実施例1と同様に、ポリイミド樹脂膜を作製したところ、膜全面にクラックが発生した。
【0262】
(実施例16) カラーフィルタの作製(
図4)
[1]ポリイミド樹脂膜の作製
300mm×400mm×0.7mm厚のガラス基板(AN100(旭硝子(株)))(図示せず)に、140℃×20分のプリベーク後の厚さが15±0.5μmになるように実施例1で合成したワニスをスピン塗布した。その後、ホットプレートを用いて140℃×4分のプリベーク処理を行った。プリベーク処理後の塗膜を、イナートオーブンを用いて窒素気流下(酸素濃度20ppm以下)、3.5℃/minで300℃まで昇温し、30分間保持し、5℃/minで50℃まで冷却しポリイミド樹脂膜2(ガラス基板上)を作製した。
【0263】
[2]ブラックマトリクスの作製
上記の方法で作製したガラス基板上ポリイミド樹脂膜に調製例3で作製したブラックペーストをスピン塗布し、ホットプレートで130℃、10分間乾燥し、黒色の樹脂塗膜を形成した。ポジ型フォトレジスト(シプレー社製、“SRC−100”)をスピン塗布、ホットプレートで120℃、5分間プリベークした。次に、マスクを介して超高圧水銀灯を用いて100mJ/cm
2で紫外線照射した後、2.38%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液を用いて、フォトレジストの現像と樹脂塗膜のエッチングを同時に行い、パターンを形成した。さらに、メチルセロソルブアセテートでレジスト剥離した後、ホットプレートで280℃、10分間加熱させることでイミド化させ、ブラックマトリクス4を形成した。ブラックマトリクスの厚さを測定したところ、1.4μmであった。
【0264】
[3]着色画素の作製
ブラックマトリクスがパターン加工されたガラス基板上ポリイミド樹脂膜上に熱処理後のブラックマトリクス開口部での厚さが2.0μmになるようにスピナーの回転数を調整し、調製例4で作製した感光性赤レジストをポリイミド膜上に塗布した。次に、ホットプレートで100℃、10分間プリベークすることにより、赤色着色画素を得た。次に、キャノン(株)製、紫外線露光機“PLA−5011”を用い、ブラックマトリクス開口部とブラックマトリクス上の一部の領域についてアイランド状に光が透過するクロム製フォトマスクを介して、100mJ/cm
2(365nmでの紫外線強度)で露光した。露光後に0.2wt%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液からなる現像液に浸漬して現像し、続いて純水で洗浄した。その後、230℃のオーブンで30分間加熱処理し、赤色画素5Rを作製した。
【0265】
同様にして、調製例5で作製した感光性緑レジストからなる緑色画素5G、調製例6で作製した感光性青レジストからなる青色画素5Bを作製した。続いて、熱処理後の着色画素部での厚さが2.5μmになるようにスピナーの回転数を調整し、調製例10で作製した樹脂組成物を塗布した。その後、230℃のオーブンで30分間加熱処理し、オーバーコート層6を作製した。
【0266】
[4]カラーフィルタのガラス基板からの剥離
上記の方法でガラス基板上に作製したカラーフィルタの周辺に切り込みを入れ、水に12時間浸漬させることで、カラーフィルタをガラス基板から剥離した。なお、光学顕微鏡を用いて画素パターン形状を確認したところ、剥離前後でパターン形状に変化はなかった。また、得られたカラーフィルタの外観については、ガラス基板カラーフィルタと比較して、遜色の無いものであった。
【0267】
(実施例17) カラーフィルタの作製
着色画素の作製に、調製例7から9に記載の非感光性着色剤組成物を用いて、下記記載の方法で着色画素を作製したこと以外は、実施例16と同様にしてカラーフィルタを作製した。
【0268】
ブラックマトリクス4がパターン加工されたガラス基板上ポリイミド樹脂膜2上に熱処理後のブラックマトリクス開口部での厚さが2.0μmになるようにスピナーの回転数を調整し、調製例7で作製した非感光性着色剤組成物をポリイミド膜上に塗布した。次に、ホットプレートで130℃、10分間乾燥し、赤色の樹脂塗膜を形成した。赤色の樹脂塗膜の上にポジ型フォトレジスト(シプレー社製、“SRC−100”)をスピン塗布し、ホットプレートで120℃、5分間プリベークした。次に、超高圧水銀灯を用いて100mJ/cm
2紫外線照射してマスク露光した後、2.38%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液を用いて、フォトレジストの現像と樹脂塗膜のエッチングを同時に行い、パターンを形成した。メチルセロソルブアセテートでレジストを剥離し、ホットプレートで280℃、10分間加熱させることでイミド化させ、赤色画素5Rを形成した。
【0269】
同様にして、調製例8で作製した非感光性緑色着色剤組成物からなる緑色画素5G、調製例9で作製した非感光性青色着色剤組成物からなる青色画素5Bを作製した。続いて、熱処理後の着色画素部での厚さが2.5μmになるようにスピナーの回転数を調整し、調製例10で作製した樹脂組成物を塗布した。その後、230℃のオーブンで30分間加熱処理し、オーバーコート層6を作製した。
【0270】
光学顕微鏡を用いて、得られたカラーフィルタの画素パターン形状を確認したところ、剥離前後でパターン形状に変化はなかった。また、得られたカラーフィルタの外観については、ガラス基板カラーフィルタと比較して、遜色の無いものであった。
【0271】
(実施例18) カラーフィルタの作製(
図5)
酸化ケイ素からなるターゲットを用いて、アルゴン雰囲気下でスパッタリングを行い、厚さ300nmの酸化ケイ素膜からなるガスバリア層3をポリイミド樹脂膜2上に形成し、その積層膜上にブラックマトリクス4、着色画素5R、5G、5B、オーバーコート層6を形成したこと以外は実施例17と同様にしてカラーフィルタを作製した。ガスバリア層形成は、圧力2×10
−1Pa、基板温度300℃、交流電源13.56MHzの条件でスパッタリングにて行った。光学顕微鏡を用いて画素パターン形状を確認したところ、剥離前後でパターン形状に変化はなかった。また、得られたカラーフィルタの外観については、ガラス基板カラーフィルタと比較して、遜色の無いものであった。
【0272】
(実施例19) カラーフィルタの作製(
図6)
酸化亜鉛と二酸化ケイ素と酸化アルミの比率が62/35/3(mol)の混合焼結ターゲットを用いて、10vol%酸素を含むアルゴン雰囲気下でスパッタリングを行い、厚さ200nmの酸化ケイ素/酸化亜鉛/酸化アルミ膜からなるガスバリア層(下層)3’をポリイミド樹脂膜2上に形成し、その後、真空を維持したまま、酸化ケイ素からなるターゲットを用いて、アルゴン雰囲気下でスパッタリングを行い、厚さ100nmの酸化ケイ素膜からなるガスバリア層(上層)3’ ’を得た。その積層膜上にブラックマトリクス4、着色画素5R、5G、5B、オーバーコート層6を形成したこと以外は実施例17と同様にしてカラーフィルタを作製した。ガスバリア膜(下層)の形成は、圧力3×10
−1Pa、基板温度300度、直流電源3kWの条件でスパッタリングにて行った。ガスバリア層(上層)形成は、圧力2×10
−1Pa、基板温度300℃、交流電源13.56MHzの条件でスパッタリングにて行った。光学顕微鏡を用いて画素パターン形状を確認したところ、剥離前後でパターン形状に変化はなかった。また、得られたカラーフィルタの外観については、ガラス基板カラーフィルタと比較して、遜色の無いものであった。
【0273】
(実施例20) アクティブマトリックス型有機EL素子の作製(
図7)
[1]ポリイミド樹脂膜の作製
300mm×400mm×0.7mm厚のガラス基板(AN100(旭硝子(株)))(図示せず)に、140℃×10分のプリベーク後の厚さが15±0.5μmになるように実施例1で調製したワニスをスピン塗布した。その後、送風乾燥器を用いて140℃×10分のプリベーク処理を行った。プリベーク処理後の塗膜を、イナートオーブンを用いて窒素気流下(酸素濃度20ppm以下)、3.5℃/minで300℃まで昇温し、30分間保持し、5℃/minで50℃まで冷却しポリイミド樹脂膜2(ガラス基板上)を作製した。
【0274】
[2]TFT基板の作製
上記の方法で作製したポリイミド樹脂膜(ガラス基板上)に、プラズマCVD法を用いてSiOから成るガスバリア層9を製膜した。その後、ボトムゲート型のTFT10を形成し、このTFTを覆う状態でSi
3N
4から成る絶縁膜(図示せず)を形成した。次に、この絶縁膜に、コンタクトホールを形成した後、このコンタクトホールを介してTFTに接続される配線(高さ1.0μm、図示せず)を絶縁膜上に形成した。この配線は、TFT間または、後の工程で形成される有機EL素子とTFTとを接続するためのものである。
【0275】
さらに、配線の形成による凹凸を平坦化するために、配線による凹凸を埋め込む状態で絶縁膜上へ平坦化層11を形成した。平坦化層の形成は、感光性ポリイミドワニスを基板上にスピンコートし、ホットプレート上でプリベーク(120℃×3分間)した後、所望のパターンのマスクを介して露光、現像し、空気フロー下において230℃で60分間加熱処理することにより行った。ワニスを塗布する際の塗布性は良好で、露光、現像、加熱処理の後に得られた平坦化層にはしわやクラックの発生は認められなかった。さらに、配線の平均段差は500nm、作製した平坦化層には5μm四方のコンタクトホールが形成され、厚さは約2μmであった。
【0276】
[3]ボトムエミッション型有機EL素子の作製
得られた平坦化層11上に以下の各部位を形成して、ボトムエミッション型の有機EL素子を作製した。まず、平坦化層上に、ITOからなる第一電極12を、コンタクトホールを介して配線(図示せず)に接続させて形成した。その後、レジストを塗布、プリベークし、所望のパターンのマスクを介して露光し、現像した。このレジストパターンをマスクとして、ITOエッチャント用いたウエットエッチングにより第一電極のパターン加工を行った。その後、レジスト剥離液(モノエタノールアミンとジエチレングリコールモノブチルエーテルの混合液)を用いて該レジストパターンを剥離した。剥離後の基板を水洗し、200℃で30分間加熱脱水して平坦化層付き電極基板を得た。平坦化層の厚さ寸法変化は、剥離液処理前に対して加熱脱水後で1%未満であった。こうして得られた第一電極は、有機EL素子の陽極に相当する。
【0277】
次に、第一電極の端部を覆う形状の絶縁層13を形成した。絶縁層には、同じく感光性ポリイミドワニスを用いた。この絶縁層を設けることによって、第一電極とこの後の工程で形成する第二電極15との間のショートを防止することができる。
【0278】
さらに、真空蒸着装置内で所望のパターンマスクを介して、正孔輸送層、有機発光層、電子輸送層を順次蒸着して、赤色有機EL発光層14R、緑色有機EL発光層14G、青色有機EL発光層14Bを設けた。次いで、基板上方の全面にAl/Mg(Al:反射電極)からなる第二電極15を形成した。さらにCVD成膜によりSiON封止膜16を形成した。得られた上記基板を蒸着機から取り出し、エキシマレーザー(波長308nm)をガラス基板側から照射することにより、ガラス基板から有機EL素子を剥離した。得られたアクティブマトリックス型の有機EL素子に駆動回路を介して電圧を印加したところ、良好な発光を示した。また、得られた有機EL素子は、ガラス基板を用いて作製した有機EL素子と比較して、遜色の無いものであった。
【0279】
(実施例21) 有機ELディスプレイ(アクティブマトリックス型)の作製(
図8)
[1]ポリイミド樹脂膜の作製
300mm×400mm×0.7mm厚のガラス基板(AN100(旭硝子(株)))に、140℃×10分のプリベーク後の厚さが15±0.5μmになるように実施例1で調製したワニスをスピン塗布した。その後、送風乾燥器を用いて140℃×10分のプリベーク処理を行った。プリベーク処理後の塗膜を、イナートオーブンを用いて窒素気流下(酸素濃度20ppm以下)、3.5℃/minで300℃まで昇温し、30分間保持し、5℃/minで50℃まで冷却しポリイミド樹脂膜2(ガラス基板上)を作製した。
【0280】
[2]TFT基板の作製
上記の方法で作製したポリイミド樹脂膜(ガラス基板上)に、プラズマCVD法を用いてSiOから成るガスバリア層9を製膜した。その後、ボトムゲート型のTFT10を形成し、このTFT10を覆う状態でSi
3N
4から成る絶縁膜(図示せず)を形成した。次に、この絶縁膜に、コンタクトホールを形成した後、このコンタクトホールを介してTFTに接続される配線(高さ1.0μm、図示せず)を絶縁膜上に形成した。この配線は、TFT間または、後の工程で形成される有機EL素子とTFTとを接続するためのものである。
【0281】
さらに、配線の形成による凹凸を平坦化するために、配線による凹凸を埋め込む状態で絶縁膜上へ平坦化層11を形成した。平坦化層の形成は、感光性ポリイミドワニスを基板上にスピンコートし、ホットプレート上でプリベーク(120℃×3分間)した後、所望のパターンのマスクを介して露光、現像し、空気フロー下において230℃で60分間加熱処理することにより行った。ワニスを塗布する際の塗布性は良好で、露光、現像、加熱処理の後に得られた平坦化層にはしわやクラックの発生は認められなかった。さらに、配線の平均段差は500nm、作製した平坦化層には5μm四方のコンタクトホールが形成され、厚さは約2μmであった。
【0282】
[3]カラーフィルタ層の作製
前記平坦化層11上に、熱処理後の厚さが1.9μmになるようにスピナーの回転数を調整し、調製例7で作製した非感光性赤色着色剤組成物PR−1を塗布し、120℃のホットプレートで、10分間加熱することにより赤色着色画素を得た。ポジ型フォトレジスト(ロームアンドハース電子材料社製、“LC−100A”)をスリットコーターでプリベーク後の厚さが1.0μmになるように塗布し、100℃のホットプレートで、5分間乾燥し、プリベークを行った。キャノン(株)製紫外線露光機PLA−501Fを用い、フォトマスクを介して100mJ/cm
2 (365nmの紫外線強度)でマスク露光した。次に、2.0%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液を用いて、フォトレジストの現像と樹脂塗膜のエッチングを同時に行い、パターンを形成した。続いてメチルセロソルブアセテートでレジストを剥離した。次に270℃のオーブンで、30分間熱処理することでキュアを行い、厚さ1.9μmの赤色画素5Rを作製した。
【0283】
同様にして調製例8で作製した非感光性緑色着色剤組成物PG−1を用いて緑色画素5Gを、調製例9で作製した非感光性青色着色剤組成物PB−1を用いて青色画素5Bを形成した。
【0284】
[3]オーバーコート層の作製
調製例12で作製した感光性ポジ型透明レジストを、カラーフィルタ層を形成した基板にスピンコーター(ミカサ(株)製1H−360S)を用いて任意の回転数でスピンコートした後、ホットプレート(大日本スクリーン製造(株)製SCW−636)を用いて90℃で2分間プリベークし、厚さ3μmの膜を作製した。作製した膜をパラレルライトマスクアライナー(以下、PLAと略する)(キヤノン(株)製PLA−501F)を用いて、超高圧水銀灯を感度測定用のグレースケールマスクを介してパターン露光した後、自動現像装置(滝沢産業(株)製AD−2000)を用いて2.38重量%水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液であるELM−D(商品名、三菱ガス化学(株)製)で60秒間シャワー現像し、次いで水で30秒間リンスした。その後、ブリーチング露光として、PLA(キヤノン(株)製PLA−501F)を用いて、膜全面に超高圧水銀灯を3000J/m
2(波長365nm露光量換算)露光した。
【0285】
その後、ホットプレートを用いて110℃で2分間ソフトベークし、次いでオーブン(タバイエスペック(株)製IHPS−222)を用いて空気中230℃で1時間キュアしてオーバーコート層(図示せず)を作製した。
【0286】
[4]ボトムエミッション型有機EL素子の作製
得られたオーバーコート層上に以下の各部位を形成して、ボトムエミッション型の有機EL素子を作製した。まず、オーバーコート層上に、ITOからなる第一電極12を、コンタクトホールを介して配線(図示せず)に接続させて形成した。その後、レジストを塗布、プリベークし、所望のパターンのマスクを介して露光し、現像した。このレジストパターンをマスクとして、ITOエッチャント用いたウエットエッチングにより第一電極12のパターン加工を行った。その後、レジスト剥離液(モノエタノールアミンとジエチレングリコールモノブチルエーテルの混合液)を用いて該レジストパターンを剥離した。剥離後の基板を水洗し、200℃で30分間加熱脱水してカラーフィルタ層付き電極基板を得た。カラーフィルタ層の厚さ寸法変化は、剥離液処理前に対して加熱脱水後で1%未満であった。こうして得られた第一電極は、有機EL素子の陽極に相当する。
【0287】
次に、第一電極12の端部を覆う形状の絶縁層13を形成した。絶縁層13には、同じく感光性ポリイミドワニスを用いた。この絶縁層13を設けることによって、第一電極とこの後の工程で形成する第二電極15との間のショートを防止することができる。
【0288】
さらに、真空蒸着装置内で所望のパターンマスクを介して、正孔輸送層、有機発光層、電子輸送層を順次蒸着して、白色有機EL発光層14Wを設けた。次いで、基板上方の全面にAl/Mg(Al:反射電極)からなる第二電極15を形成した。さらにCVD成膜によりSiON封止膜16を形成した。得られた上記基板を蒸着機から取り出し、エキシマレーザー(波長308nm)をガラス基板側から照射することにより、ガラス基板から有機EL素子を剥離した。得られたアクティブマトリックス型の有機EL素子に駆動回路を介して電圧を印加したところ、良好な発光を示した。また、得られた有機EL素子は、ガラス基板を用いて作製した有機EL素子と比較して、遜色の無いものであった。
【0289】
(実施例22)
有機ELディスプレイ(アクティブマトリックス型)の作製(
図9)
[1]ポリイミド樹脂膜の作製
300mm×400mm×0.7mm厚のガラス基板(AN100(旭硝子(株)))に、140℃×10分のプリベーク後の厚さが15±0.5μmになるように実施例1で調製したワニスをスピン塗布した。その後、送風乾燥器を用いて140℃×10分のプリベーク処理を行った。プリベーク処理後の塗膜を、イナートオーブンを用いて窒素気流下(酸素濃度20ppm以下)、3.5℃/minで300℃まで昇温し、30分間保持し、5℃/minで50℃まで冷却しポリイミド樹脂膜2(ガラス基板上)を作製した。
【0290】
[2]TFT基板の作製
上記の方法で作製したポリイミド樹脂膜2(ガラス基板上)に、プラズマCVD法を用いてSiOから成るガスバリア層9を製膜した。その後、ボトムゲート型のTFT10を形成し、このTFTを覆う状態でSi
3N
4から成る絶縁膜(図示せず)を形成した。次に、この絶縁膜に、コンタクトホールを形成した後、このコンタクトホールを介してTFTに接続される配線(高さ1.0μm、図示せず)を絶縁膜上に形成した。この配線は、TFT間または、後の工程で形成される有機EL素子とTFTとを接続するためのものである。
【0291】
さらに、配線の形成による凹凸を平坦化するために、配線による凹凸を埋め込む状態で絶縁膜上へ平坦化層11を形成した。平坦化層の形成は、感光性ポリイミドワニスを基板上にスピンコートし、ホットプレート上でプリベーク(120℃×3分間)した後、所望のパターンのマスクを介して露光、現像し、空気フロー下において230℃で60分間加熱処理することにより行った。ワニスを塗布する際の塗布性は良好で、露光、現像、加熱処理の後に得られた平坦化層にはしわやクラックの発生は認められなかった。さらに、配線の平均段差は500nm、作製した平坦化層には5μm四方のコンタクトホールが形成され、厚さは約2μmであった。
【0292】
[3]トップエミッション型有機EL素子の作製
上記の方法で得られたTFTの平坦化層11上に以下の各部位を形成して、トップエミッション型の有機EL素子を作製した。まず、平坦化層11上に、Al/ITO(Al:反射電極)からなる第一電極12を、コンタクトホールを介して配線に接続させて形成した。その後、レジストを塗布、プリベークし、所望のパターンのマスクを介して露光し、現像した。このレジストパターンをマスクとして、ITOエッチャント用いたウエットエッチングにより第一電極のパターン加工を行った。その後、レジスト剥離液(モノエタノールアミンとジエチレングリコールモノブチルエーテルの混合液)を用いて該レジストパターンを剥離した。剥離後の基板を水洗し、200℃で30分間加熱脱水して平坦化層付き電極基板を得た。平坦化層の厚さの変化は、剥離液処理前に対して加熱脱水後で1%未満であった。こうして得られた第一電極12は、有機EL素子の陽極に相当する。
【0293】
次に、第一電極12の端部を覆う形状の絶縁層13を形成した。絶縁層には、同じく感光性ポリイミドワニスを用いた。この絶縁層を設けることによって、第一電極12とこの後の工程で形成する第二電極15との間のショートを防止することができる。
【0294】
さらに、真空蒸着装置内で所望のパターンマスクを介して、正孔輸送層、有機発光層、電子輸送層を順次蒸着して、赤色有機EL発光層14R、緑色有機EL発光層14G、青色有機EL発光層14Bを設けた。次いで、基板上方の全面にMg/ITOからなる第二電極15を形成した。さらにCVD成膜によりSiON封止膜16を形成した。得られた上記基板を蒸着機から取り出し、エキシマレーザー(波長308nm)をガラス基板側から照射することにより、ガラス基板から有機EL素子を剥離した。得られたアクティブマトリックス型の有機EL素子に駆動回路を介して電圧を印加したところ、良好な発光を示した。また、得られた有機EL素子はガラス基板を用いて作製した有機EL素子と比較して、遜色の無いものであった。
【0295】
(実施例23) 有機ELディスプレイ(アクティブマトリックス型)の作製(
図3)
[1]ガラス基板付きカラーフィルタの作製
実施例18に記載の方法で、ガラス基板上にカラーフィルタを作製した。
【0296】
[2]ガラス基板付きTFTの作製
調製例1で作製したポリイミド前駆体ワニスを用いたこと以外は、実施例20に記載の方法で、ポリイミド樹脂膜8、ガスバリア層9、TFT10、平坦化層11を順次作製した。
【0297】
[3]トップエミッション型有機EL素子の作製
上記の方法で得られたTFTの平坦化層11上に以下の各部位を形成して、トップエミッション型の有機EL素子を作製した。まず、平坦化層11上に、Al/ITO(Al:反射電極)からなる第一電極12を、コンタクトホールを介して配線に接続させて形成した。その後、レジストを塗布、プリベークし、所望のパターンのマスクを介して露光し、現像した。このレジストパターンをマスクとして、ITOエッチャント用いたウエットエッチングにより第一電極12のパターン加工を行った。その後、レジスト剥離液(モノエタノールアミンとジエチレングリコールモノブチルエーテルの混合液)を用いて該レジストパターンを剥離した。剥離後の基板を水洗し、200℃で30分間加熱脱水して平坦化層付き電極基板を得た。平坦化層の厚さの変化は、剥離液処理前に対して加熱脱水後で1%未満であった。こうして得られた第一電極12は、有機EL素子の陽極に相当する。
【0298】
次に、第一電極12の端部を覆う形状の絶縁層13を形成した。絶縁層には、同じく感光性ポリイミドワニスを用いた。この絶縁層を設けることによって、第一電極とこの後の工程で形成する第二電極15との間のショートを防止することができる。
【0299】
さらに、真空蒸着装置内で所望のパターンマスクを介して、正孔輸送層、有機発光層、電子輸送層を順次蒸着して、白色有機EL発光層14Wを設けた。次いで、基板上方の全面にMg/ITOからなる第二電極15を形成した。さらにCVD成膜によりSiON封止膜16を形成した。
【0300】
[4]有機ELディスプレイの作製
上記[1]で得られたガラス基板付きカラーフィルタと[3]で得られたガラス基板付きトップエミッション型有機EL素子を、粘着層17を介して貼り合わせた。続いて、エキシマレーザー(波長308nm)をガラス基板側から照射することにより、ガラス基板からカラーフィルタと有機EL素子を剥離し、有機ELディスプレイを作製した。得られたアクティブマトリックス型の有機ELディスプレイに駆動回路を介して電圧を印加したところ、良好な発光を示した。また、得られた有機EL素子は、ガラス基板を用いて作製した有機EL素子と比較して、遜色の無いものであった。
少なくとも、式(1)で表される酸二無水物残基、式(2)で表されるジアミン残基、ならびに式(3)で表されるジアミン残基の1種以上を含むポリイミド前駆体であって、式(1)で表される酸二無水物残基がポリイミド前駆体中の酸二無水物残基の全量に対し50モル%以上であり、式(2)で表されるジアミン残基がポリイミド前駆体中のジアミン残基の全量に対し50モル%以上であり、式(3)で表されるジアミン残基がポリイミド前駆体中のジアミン残基の全量に対し15モル%以下であるポリイミド前駆体。