【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記した目的達成すべく鋭意研究を重ねてきた。その結果、銅又は銅合金からなる基材上にパラジウム皮膜又は銀皮膜を形成した後、ニッケル皮膜又はニッケル合金皮膜を形成することによって、下地に含まれる銅原子の表面層への拡散が抑制され、例えば、表面層として銀皮膜を形成してLED照明ユニットの反射部として利用する場合に、高い反射率を長期間維持することが可能となることを見出し、ここに本発明を完成するに至った。
【0010】
即ち、本発明は、下記の銅の拡散防止層を有する銅系材料、及びLED照明ユニットを提供するものである。
項1. 銅又は銅合金を基材とする材料において、該基材上に、パラジウム皮膜又は銀皮膜と、ニッケル皮膜又はニッケル合金皮膜とが順次積層された構造の拡散防止層が形成されていることを特徴とする、銅の拡散防止層を有する銅系材料。
項2. 表面層として銀皮膜を有する上記項1に記載の銅系材料。
項3. LED照明ユニットにおける反射部である上記項2に記載の銅系材料。
項4. 上記項3に記載の銅系材料からなる反射部と、LED発光素子を有するLED照明ユニット。
【0011】
以下、本発明の銅系材料について詳細に説明する。
本発明の銅系材料は、銅又は銅合金を基材とする材料において、該基材上に、パラジウム皮膜又は銀皮膜と、ニッケル皮膜又はニッケル合金皮膜とが順次積層された構造の拡散防止層が形成されたものである。
【0012】
本発明の銅系材料における基材は、銅又は銅合金である。銅合金の種類については特に限定はないが、銅含有率が60重量%程度以上の銅合金が好ましく、例えば、銅亜鉛合金、銅スズ合金、銅ニッケル合金、銅アルミ合金などを用いることができる。
【0013】
本発明の銅系材料は、該基材上にパラジウム皮膜又は銀皮膜が形成され、次いで、この上にニッケル皮膜又はニッケル合金皮膜が形成された積層構造の拡散防止層を有するものである。
【0014】
該拡散防止層におけるパラジウム皮膜の形成方法については特に限定はなく、真空蒸着法、スパッタリング法等の気相法、電気めっき法、無電解めっき法、置換めっき法などの湿式めっき法等の各種の方法で形成できる。これらの方法の内で、特に、電気めっき法、無電解めっき法、置換めっき法などの湿式めっき法によれば、複雑な装置を要することなく、簡単な方法で目的とするパラジウム皮膜を形成することができる。特に、電気めっき法によれば、低コストで効率よくパラジウム皮膜を形成できる。また、置換めっき法では、めっき浴中に短時間浸漬処理するだけの簡単な処理によって銅素材上にパラジウム皮膜を形成することでき、これにより十分な効果を得ることができる。
【0015】
パラジウム皮膜の厚さについては特に限定はなく、置換めっき法によって形成される非常に薄いPd皮膜でも十分な効果が得られるが、通常、0.001〜5μm程度が好ましく、0.01〜1μm程度がより好ましい。
【0016】
また、銀皮膜の形成方法についても特に限定はなく、真空蒸着法、スパッタリング法等の気相法、電気めっき法、無電解めっき法等の湿式めっき法等の任意の方法で形成することができる。これらの方法の内で、特に、電気めっき法、無電解めっき法などの湿式めっき法によれば、複雑な装置を要することなく、簡単な方法で目的とする銀皮膜を形成することができる。電気めっき法で形成する場合には、シアン化銀めっき浴などを用いてストライクめっきを行ってもよく、或いは、公知の光沢銀めっき皮膜、無光沢銀めっき皮膜等を形成してもよい。これらの銀めっき皮膜を形成するための銀めっき浴についても、公知のめっき浴を適宜用いることができる。銀皮膜の厚さについても特に限定はないが、通常は、0.01μm程度以上の膜厚とすることによって、十分な効果を得ることができ、経済性等を考慮すれば、0.01〜0.5μm程度とすればよい。
【0017】
パラジウム皮膜又は銀皮膜上には、ニッケル皮膜又はニッケル合金皮膜を形成する。ニッケル皮膜及びニッケル合金皮膜を形成する方法については特に限定はなく、真空蒸着法、スパッタリング法等の気相法、電気めっき法、無電解めっき法等の湿式めっき法等の任意の方法を適用できる。この場合にも、電気めっき法、無電解めっき法などの湿式めっき法によれば、複雑な装置を要することなく、簡単な方法で目的とするニッケル皮膜又はニッケル合金皮膜を形成することができる
電気めっき法によってニッケル皮膜を形成する場合には、ニッケルめっき浴の種類についても限定はなく、スルファミン酸ニッケルめっき浴、ワット浴、光沢剤を添加したワット浴等公知の電気ニッケルめっき浴を利用できる。
【0018】
ニッケル合金めっき皮膜としては、例えば、Ni-P合金めっき皮膜、Ni-B合金めっき皮膜、Ni-W合金めっき皮膜、Ni-Mo合金めっき皮膜、Ni-W-P合金めっき皮膜、Ni-Mo-P合金めっき皮膜等を例示できる。これらのニッケル合金めっき皮膜におけるNi含有量については、特に限定的ではないが、例えば、Ni含有量が60重量%程度以上のニッケル合金めっき皮膜を好適に用いることができる。
【0019】
ニッケル合金めっき皮膜の内で好ましい皮膜としては、例えば、Ni-P合金めっき皮膜を挙げることができる。Ni-P合金めっき皮膜におけるリン含有量については、通常、1〜13重量%程度が好ましく、3〜10重量%程度がより好ましい。
【0020】
Ni-P合金めっき皮膜の形成方法についても特に限定はなく、電気Ni-P合金めっき浴、無電解Ni-P合金めっき浴などの公知の各種のNi-P合金めっき浴を用いて、常法に従って、基材とする銅又は銅合金上にNi-P合金めっき皮膜を形成すればよい。
【0021】
電気Ni-P合金めっき浴の組成及びめっき条件の一例としては下記の通りである。
(1)めっき浴組成
硫酸ニッケル 200〜400 g/L、
塩化ニッケル 30〜60 g/L、
ホウ酸 30〜50 g/L、
亜リン酸1〜10g/L
(2)めっき条件
pH 1.0 〜4.5、浴温 40 〜60 ℃、電流密度 1〜3 A/dm
2
以上の条件で電気Ni-P合金めっきを行うことによって、リン含有率2〜10%程度の範囲のNi-P合金めっき皮膜を形成することができる。
【0022】
また、無電解Ni-P合金めっき浴としては、次亜リン酸塩を還元剤として含む公知の無電解Ni-P合金めっき浴を用いることができる。
【0023】
これらの内で、特に、電気Ni-P合金めっき浴を用いることによって、効率良くNi-P合金めっき皮膜を形成することができる。
【0024】
ニッケル皮膜又はニッケル合金皮膜の厚さについては、特に限定的ではないが、通常、1〜10μm程度とすることが好ましく、2〜5μm程度とすることがより好ましい。
【0025】
本発明の銅系材料では、表面層の種類については特に限定はなく、例えば、Au,Pd等の表面層を有するプリント配線板の銅系材料からなる回路部分において、基材とする銅又は銅合金に含まれる銅原子が表面層に拡散することを効果的に防止できる。
【0026】
特に、表面層として銀皮膜が形成された銅系材料については、銅原子が表面の銀皮膜に拡散して、銀皮膜の反射率が低下することをすることを抑制できる。例えば、表面層として銀皮膜が形成された銅系材料をLED照明ユニットの反射部とする場合には、LED発光素子と表面に銀皮膜が形成された反射部とを有するパッケージ化されたLED照明ユニットにおいて、反射部における銅原子の熱拡散が抑制されて反射率の低下が少なく、高い反射率を長期間維持することができる。
【0027】
この場合、反射部の表面に形成する銀皮膜の種類については特に限定はなく、真空蒸着法、スパッタリング法等の気相法、電気めっき法、無電解めっき法等の湿式めっき法等の任意の方法で形成することができる。例えば、電気めっき法で形成する場合には、必要に応じて、シアン化銀めっき浴などを用いてストライクめっきを行った後、公知の銀めっき浴を用いて銀めっき皮膜を形成すればよい。また、銀めっき皮膜は光沢銀めっき皮膜、無光沢銀めっき皮膜のいずれであってもよい。
【0028】
表面層としての銀皮膜の厚さについても特に限定はないが、通常は、0.1 〜10μm程度とすればよい。
【0029】
上記した銅又は銅合金からなる基材上に、パラジウム皮膜又は銀皮膜と、ニッケル皮膜又はニッケル合金皮膜とを順次積層した構造の拡散防止層を有し、表面層として銀皮膜を有する銅系材料を反射部とするLED照明ユニットの一例の概略図を
図1に示す。このLED照明ユニットでは、セラミックス、ガラス等の基板上に電極を介してLED発光素子が配置されており、LED発光素子の周辺に発光した光を有効に活用するために反射部が設けられている。