(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
真空引き可能なチャンバと、このチャンバ内に配置された固定金型ユニット及び可動金型ユニットからなる金型ユニットと、前記固定金型ユニットと可動金型ユニットを互いに衝合・加圧させる加圧ヘッドを備え、前記チャンバが、前記固定金型ユニットを保持する固定ベース板及びこの固定ベース板に前記固定金型ユニットの外周を包囲するように設けられた第一チャンバ壁体と、前記可動金型ユニットを支持可能であって前記固定ベース板に対して進退可能に配置された可動ベース板及びこの可動ベース板に前記可動金型ユニットの外周を包囲するように設けられて前記第一チャンバ壁体に気密衝合可能な第二チャンバ壁体と、前記可動ベース板を前記第一チャンバ壁体側へ押動可能な第三チャンバ壁体からなり、前記第一チャンバ壁体と第二チャンバ壁体が互いに上下に分離すると共に前記可動金型ユニットが前記可動ベース板に支持された状態では、前記第一チャンバ壁体と第二チャンバ壁体の間の隙間よりも前記固定金型ユニットと可動金型ユニットの間の隙間が大きく、前記加圧ヘッドが、前記可動金型ユニットを前記可動ベース板から離間させて前記固定金型ユニットへ押し付け可能であることを特徴とする成形装置。
加圧ヘッドの外周面が略円筒状をなし、第三チャンバ壁体の内周端部が、前記加圧ヘッドの外周面にパッキンを介して摺動可能に密接される略円形をなすことを特徴とする請求項1に記載の成形装置。
第一チャンバ壁体の高さが固定金型ユニットの高さより高く、第二チャンバ壁体の高さが可動金型ユニットの高さ以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の成形装置。
【背景技術】
【0002】
オイルシールなどのゴム製品を圧縮成形などにより成形する場合、金型のキャビティ内を−93.3kPa(−700mmHg)以下の真空状態にすることによって、成形品にキャビティ内の残存空気による気泡が形成されることなく、品質の高い成形品を得ることができる。したがって従来、このような成形を行うには、
図8〜
図11に示すように、金型をチャンバで囲ってチャンバ内を真空引きすることが知られている。
【0003】
このうち、
図8に例示した従来技術の第一例では、真空ポンプ200によって真空引きされるチャンバ100が、チャンバ本体101とその一側に開口して金型ユニット300を水平方向へ出し入れするためのゲート101aを上下にスライドする板状の扉102からなる(例えば特許文献1参照)。
【0004】
また、
図9に例示した従来技術の第二例では、真空ポンプ200によって真空引きされるチャンバ100が、金型ユニット300における固定金型301側の第一チャンバ壁体103と下型302側の第二チャンバ壁体104からなり、この第一チャンバ壁体103と第二チャンバ壁体104が入れ子式に嵌合することによって密閉されるようになっている(例えば特許文献2参照)。
【0005】
また、
図10に例示した従来技術の第三例では、真空ポンプ200によって真空引きされるチャンバ100が、注型ヘッド303に上下方向相対移動可能に設けられたカバー105からなり、金型ユニット300を注型ヘッド303に対して昇降させる移動盤304の上面外周部に、カバー105の下端を密接させることによって密閉されるようになっている。
【0006】
さらに、
図11に例示した従来技術の第四例では、真空ポンプ200によって真空引きされるチャンバ100が、固定盤305の下面に固定された固定壁体106と、前記固定盤305の下面に上下移動可能に配置されると共に前記固定壁体106に入れ子式に嵌合された可動壁体107からなり、金型ユニット300を昇降させる移動盤304の上面外周部に、可動壁体107の下端を密接させることによって密閉されるようになっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、
図8に示す従来技術の第一例は、チャンバ100の容積が大きいことに加え、金型ユニット300の出し入れに必要な開口高さ以上のストロークで扉102を開閉させる必要があり、このため扉102の開閉動作の時間が長くなってしまう問題がある。しかも、ゲート101aに周設した不図示のパッキンが、扉102の開閉に伴って無潤滑状態で摺動するため、パッキンの消耗が早く、パッキンの消耗が進行すると、真空ポンプ200によって真空引きしても−93.3kPa以下といった十分な真空度が得られにくく、その結果成形不良が起こりやすくなる問題がある。
【0009】
また、
図9に示す従来技術の第二例は、部点数が少なく構造が簡単であること、金型ユニット300における固定金型301及び下型302に第一チャンバ壁体103及び第二チャンバ壁体104を近接して設けることができるためチャンバ100の容積を小さくして十分な真空度に到達するまでの時間を短くできるなどのメリットがある反面、固定金型301及び下型302の厚さよりも第一チャンバ壁体103及び第二チャンバ壁体104の高さを高くする必要があるため、金型ユニット300への成形材料の投入や製品取り出しの阻害になることや、金型部品と組み合わせる構造であるために、第一チャンバ壁体103及び第二チャンバ壁体104の位置出し精度を高精度にする必要があり、特に型寸法が大きくなると、回転方向の位置出しに高い精度が要求され、組み立てや調整に多大な時間や労力を要する問題がある。
【0010】
また、
図10あるいは
図11に示す従来技術の第三、第四例は、チャンバ100が金型ユニット300の高さの変更などに対して融通が利くことや、金型ユニット300への成形材料の投入や製品取り出しの阻害にならないといったメリットがある反面、金型ユニット300の出し入れに必要な開口高さ以上のストロークでチャンバ100を上下移動させる必要があるため、チャンバ100の開閉動作の時間が長くなってしまう問題がある。そして、チャンバ100の開閉動作の時間が長いほど金型ユニット300が冷却されてしまうので、加熱にも時間がかかり、高温短時間加硫による成形が困難であった。
【0011】
しかも、
図10におけるパッキン105aあるいは
図11におけるパッキン107aはチャンバ100の開閉動作の際に常に摺動するため消耗しやすく、特にチャンバ100が箱形の場合、四つの角部のR形状(曲率半径)を大きくとれない制約があるためにパッキン107aとして小さい曲率半径にも対応可能なOリングを用いる必要があるが、角部ヘの負荷集中によってねじれや偏摩耗が起きやすく、早期破損を誘発するおそれがある。しかも、構造が複雑であるためパッキン(Oリング)107aの交換作業も困難であるといった問題がある。
【0012】
本発明は、以上のような点に鑑みてなされたものであって、その技術的課題は、真空状態でゴム製品や合成樹脂製品を成形する成形装置において、真空ポンプによって真空引きされるチャンバの構造を簡素化することによって、メンテナンス等の作業性を向上させ、金型ユニットへの成形材料の投入や製品取り出しの阻害にならず、チャンバの開閉ストロークも小さくすることの可能な成形装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上述した技術的課題を有効に解決するための手段として、請求項1の発明に係る成形装置は、真空引き可能なチャンバと、このチャンバ内に配置された固定金型ユニット及び可動金型ユニットからなる金型ユニットと、前記固定金型ユニットと可動金型ユニットを互いに衝合・加圧させる加圧ヘッドを備え、前記チャンバが、前記固定金型ユニットを保持する固定ベース板及びこの固定ベース板に前記固定金型ユニットの外周を包囲するように設けられた第一チャンバ壁体と、前記可動金型ユニットを支持可能であって前記固定ベース板に対して進退可能に配置された可動ベース板及びこの可動ベース板に前記可動金型ユニットの外周を包囲するように設けられて前記第一チャンバ壁体に気密衝合可能な第二チャンバ壁体と、前記可動ベース板を前記第一チャンバ壁体側へ押動可能な第三チャンバ壁体からなり、前記第一チャンバ壁体と第二チャンバ壁体が互いに上下に分離すると共に前記可動金型ユニットが前記可動ベース板に支持された状態では、前記第一チャンバ壁体と第二チャンバ壁体の間の隙間よりも前記固定金型ユニットと可動金型ユニットの間の隙間が大きく、前記加圧ヘッドが、前記可動金型ユニットを前記可動ベース板から離間させて前記固定金型ユニットへ押し付け可能であることを特徴とするものである。
【0014】
上記構成において、金型ユニットの固定金型ユニット及び可動金型ユニットと、チャンバの第一チャンバ壁体、第二チャンバ壁体及び第三チャンバ壁体が型開閉方向に対して互いに分離した状態では、第一チャンバ壁体と第二チャンバ壁体の間の隙間よりも固定金型ユニットと可動金型ユニットの間の隙間が大きくなっている。
【0015】
そしてこの状態から、第三チャンバ壁体を可動ベース板側へ向けて進出させて行くと、この第三チャンバ壁体が可動ベース板における第二チャンバ壁体と反対側の面に気密衝合してこの可動ベース板を押動し、これにより第二チャンバ壁体及び可動金型ユニットが第三チャンバ壁体及び可動ベース板と共に固定ベース板側へ向けて進出する。そして第二チャンバ壁体が第一チャンバ壁体の対向端部に気密衝合された時点でチャンバが密閉状態となり、しかもこの時点では固定金型ユニットと可動金型ユニットの間に隙間があり、したがって、チャンバ内を真空引きすることで金型キャビティを高真空度とすることができる。次に、可動ベース板に支持されていた可動金型ユニットを、加圧ヘッドの駆動によって可動ベース板から離間させて固定金型ユニットに気密衝合させ、金型ユニットを型締め状態として成形工程に移行することができる。
【0016】
請求項2の発明に係る成形装置は、請求項1に記載の構成において、加圧ヘッドの外周面が略円筒状をなし、第三チャンバ壁体の内周端部が、前記加圧ヘッドの外周面にパッキンを介して摺動可能に密接される略円形をなすものである。
【0017】
請求項3の発明に係る成形装置は、請求項1又は2に記載の構成において、第一チャンバ壁体の高さが固定金型ユニットの高さより高く、第二チャンバ壁体の高さが可動金型ユニットの高さ以下であることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る成形装置によれば、金型ユニットの型締めのストロークよりも小さなストロークでチャンバを閉塞させることができ、このためチャンバの開閉時間を短くして作業性を向上することができ、その結果、金型の冷却が抑えられて成形の歩留まりを向上させることができる。
【0019】
また、第三チャンバ壁体の内周端部に設けられて加圧ヘッドの外周面に摺動可能に密接されるパッキンは角部の存在しない略円環状とすることができるので、使用可能なパッキンの種類の選択肢が広がり、摺動に伴う角部ヘの負荷集中によるパッキンのねじれや偏摩耗などの発生を防止して、チャンバ内の高真空の維持に貢献できる。
【0020】
しかも、第二チャンバ壁体の高さを可動金型ユニットの高さ以下とすることによって、第二チャンバ壁体が可動金型ユニットへの成形材料の投入や製品取り出しの阻害にならないので、作業性を向上することができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明に係る成形装置の好ましい実施の形態について、
図1〜
図7を参照しながら詳細に説明する。
【0023】
まず
図1において、参照符号1は成形装置上部の固定盤、参照符号2はチャンバ、参照符号3はこのチャンバ2内に配置された上側の固定金型ユニット31及び下側の可動金型ユニット32からなる金型ユニット、参照符号4は成形装置下部にあって金型ユニット3を型締めする加圧ヘッドである。
【0024】
チャンバ2は、下面に固定金型ユニット31が取り付けられた固定ベース板21及びこの固定ベース板21の下面に金型ユニット3における固定金型ユニット31の外周を包囲するように取り付けられた第一チャンバ壁体22と、固定ベース板21の下側に配置され上下方向へ進退可能な可動ベース板23及びこの可動ベース板23の上面に金型ユニット3における可動金型ユニット32の外周を包囲するように取り付けられて第一チャンバ壁体22の下端面と対向する第二チャンバ壁体24と、可動ベース板23の下側に配置されて加圧ヘッド4及びアクチュエータ26により上下方向へ進退される第三チャンバ壁体25からなる。
【0025】
そして、第一チャンバ壁体22と第二チャンバ壁体24及び可動ベース板23と第三チャンバ壁体25が互いに気密衝合されることによって密閉されるチャンバ2内は、真空ポンプ5によって真空引きすることができるようになっている。
【0026】
第一チャンバ壁体22の下端面と対向する第二チャンバ壁体24の上端にはパッキン24aが保持されており、第二チャンバ壁体24と可動ベース板23の間はパッキン24bで封止されている。
【0027】
加圧ヘッド4は、不図示の駆動装置によって上下へ進退動作するものであって、基部41と、この基部41から立ち上がる中間部42と、中間部42の上端に形成された支持盤部43を有する。第三チャンバ壁体25は、内周縁が加圧ヘッド4の中間部42の外周面に遊嵌された底壁部25a及びその外周端部から立ち上がって前記中間部42及び支持盤部43の外周側を包囲するように延びる側壁部25bと、その上端に保持されて可動ベース板23の下面に密接可能なパッキン25cと、前記底壁部25aの内径部に螺子25e及びパッキン25fを介して気密的に結合された環状のホルダ25dと、このホルダ25dの内径部に保持されて、前記中間部42の外周面と摺動可能に密接されるパッキン25gを有する。
【0028】
アクチュエータ26は、例えば油圧シリンダ装置からなるものであって、加圧ヘッド4の基部41に取り付けられ、上下方向の推力を出力するロッド26aの上端が第三チャンバ壁体25の底壁部25aに結合されている。このため第三チャンバ壁体25は、加圧ヘッド4及びアクチュエータ26の駆動によって上下方向へ進退されるようになっている。
【0029】
金型ユニット3の平面投影形状は略長方形状であり、これを取り囲むチャンバ2を構成する第一チャンバ壁体22と、第二チャンバ壁体24と、第三チャンバ壁体25の側壁部25bも平面投影形状が略長方形状であるのに対し、加圧ヘッド4の中間部42の外周面は円筒面状に形成されており、したがってこの中間部42の外周面に摺動可能に密接されるパッキン25gを保持するホルダ25dは、内周の開口形状が円形をなしている。
【0030】
固定ベース板21は、
図2に示す金型出し入れ装置6によって、成形装置上部の固定盤1の下面より僅かに下側に支持されるようになっており、金型ユニット3における固定金型ユニット31は、固定ベース板21の下面に断熱板311を介して取り付けられヒータ(図示省略)を内蔵した熱盤312と、この熱盤312の下面に取り付けられた上型313からなる。
【0031】
可動ベース板23は内周が開口した枠状(額縁状)をなすものであって、ストローク下限位置に待機した第三チャンバ壁体25の側壁部25bの上端位置より僅かに上側の位置で金型出し入れ装置6における不図示のカムフォロワによって支持されるようになっており、金型ユニット3における可動金型ユニット32は、可動ベース板23の内周に配置されると共に外周鍔部320aが可動ベース板23の内周鍔部23aの上に支持可能な被支持盤320と、その上面に断熱板321を介して取り付けられヒータ(図示省略)を内蔵した熱盤322と、この熱盤322の上面に取り付けられた下型323からなる。また、可動金型ユニット32の被支持盤320と加圧ヘッド4の支持盤部43は、金型の出し入れ時に係合する不図示の嵌め合い構造によって上下に多少の相対変位が可能な状態で互いに接続されている。
【0032】
第二チャンバ壁体24が、
図2に示す金型出し入れ装置6によって支持された固定ベース板21と一体の第一チャンバ壁体22から下方へ分離すると共に、カムフォロワに支持された可動ベース板23に可動金型ユニット32の被支持盤320が支持された
図1の状態では、第一チャンバ壁体22と第二チャンバ壁体24の間の隙間G
1よりも固定金型ユニット31と可動金型ユニット32の間(上型313と下型323の間)の隙間G
2のほうが大きいものとなっている。すなわち可動ベース板23とこれに支持された被支持盤320の上面が同一平面をなすと共に、固定金型ユニット31の厚さt
1と、可動金型ユニット32における断熱板321から下型323までの厚さt
2との和(t
1+t
2)は、第一チャンバ壁体22の高さh
1と第二チャンバ壁体24のh
2の和(h
1+h
2)よりも小さく、このような寸法関係によってG
1<G
2となっている。
【0033】
また、第一チャンバ壁体22の高さh
1は固定金型ユニット31の厚さt
1より高く、第二チャンバ壁体24の高さh
2は、可動金型ユニット32における断熱板321から下型323までの厚さt
2と同等又はそれより低くなっている。
【0034】
加圧ヘッド4は、その上部の支持盤部43が、可動金型ユニット32における被支持盤320の真下にあり、可動ベース板23の内周開口を上下に通過可能となっている。そしてこの支持盤部43が、可動金型ユニット32を下から持ち上げるようにして可動ベース板23から離間(浮上)させ、この可動金型ユニット32における下型323を、固定金型ユニット31における上型313へ衝合させた状態で、可動金型ユニット32及び固定金型ユニット31を固定ベース板21ごと持ち上げて、成形装置上部の固定盤1へ押し付けるように可動金型ユニット32及び固定金型ユニット31を加圧することによって型締めを行うものである。
【0035】
加圧ヘッド4によって互いに衝合・加圧される固定金型ユニット31の上型313と可動金型ユニット32の下型323の互いの衝合面間には、例えばオイルシールなどのゴム製品を圧縮成形するための複数のキャビティ33が互いに対向して形成されている。
【0036】
図2に示すように、固定ベース板21にはピニオン62により水平移動されるラック61が設けられており、可動ベース板23にはピニオン64により水平移動されるラック63が設けられている。ピニオン62とラック61及びピニオン64とラック63は、金型出し入れ装置6を構成するものである。このため、固定ベース板21、固定金型ユニット31及び第一チャンバ壁体22と、可動ベース板23、可動金型ユニット32及び第二チャンバ壁体24は、固定盤1と加圧ヘッド4の支持盤部43との間の空間と、その外側に隣接する外部空間との間で水平方向へ出し入れすることができるようになっている。
【0037】
また、金型出し入れ装置6によって固定盤1と加圧ヘッド4の支持盤部43との間から引き出した状態では、
図3に示すように、固定ベース板21とこれに一体に保持された固定金型ユニット31及び第一チャンバ壁体22は、不図示の金型開閉装置によりピニオン62の水平軸心の周りに回転することができ、このため可動ベース板23及びこれに支持された可動金型ユニット32及び一体に保持された第二チャンバ壁体24に対して俯仰開閉動作することができる。
【0038】
以上のように構成された図示の実施の形態による成形装置は、以下のような工程で成形作業を行うものである。
【0039】
まず
図2に示すように、金型ユニット3を成形装置の外部に引き出し、詳しくは固定ベース板21及びこれに取り付けられた固定金型ユニット31、第一チャンバ壁体22と、可動ベース板23及びこれに支持された可動金型ユニット32及び一体に保持された第二チャンバ壁体24を、金型出し入れ装置6によって成形装置の外部に引き出して、
図3に示すように、固定ベース板21とこれに一体に保持された固定金型ユニット31及び第一チャンバ壁体22を開き、可動金型ユニット32における下型323上に成形用の未加硫ゴム生地A及び必要に応じて一体成形する金属部品を投入する。このとき、第二チャンバ壁体24の高さは、可動金型ユニット32の高さ(
図1に示す厚さt
2)と同等又はそれより低くなっているため、第二チャンバ壁体24が可動金型ユニット32上への未加硫ゴム生地Aの投入の阻害になることはなく、作業を円滑に行うことができる。
【0040】
未加硫ゴム生地Aの投入後は、固定ベース板21とこれに一体に保持された固定金型ユニット31及び第一チャンバ壁体22を
図2に示すように閉じてから(なお、
図2では未加硫ゴム生地Aは不図示)、金型出し入れ装置6によって再び成形装置における固定盤1と加圧ヘッド4の支持盤43の間へ、
図4に示すように挿入する。
【0041】
このとき、金型出し入れ装置6(
図4では不図示)に支持された固定ベース板21の上面は成形装置の固定盤1の下面とは非接触であり、固定金型ユニット31と可動金型ユニット32が上下方向(型開閉方向)へ互いに分離した状態にあり、第二チャンバ壁体24が第一チャンバ壁体22から下方へ分離すると共に、不図示のカムフォロワに支持された可動ベース板23の内周鍔部23aに可動金型ユニット32における被支持盤320の外周鍔部320aが支持された状態にあり、加圧ヘッド4は前記被支持盤320と非接触となる所定の下降位置で待機しており、かつ第三チャンバ壁体25が、アクチュエータ26によって可動ベース板23の下面から離間したストローク下限位置で待機した状態にある。そしてこの状態では、
図1に示すように、固定金型ユニット31と可動金型ユニット32(上型313と下型323)が隙間G
2をもって対向しており、この隙間G
2は、第一チャンバ壁体22と第二チャンバ壁体24の間の隙間G
1よりも大きいものとなっている。
【0042】
次に、アクチュエータ26の駆動によって第三チャンバ壁体25を上昇させると、やがてその側壁部25bの上端がパッキン25cを介して可動ベース板23の下面に密接衝合し、この可動ベース板23を押し上げる。このため、可動ベース板23に設けられた第二チャンバ壁体24及び可動ベース板23の内周に支持された可動金型ユニット32も上昇する。なお、加圧ヘッド4も可動ベース板の上昇に合わせて上昇する。
【0043】
第三チャンバ壁体25の上昇移動によって可動ベース板23を介して押し上げられる第二チャンバ壁体24の上端は、
図5に示すように、やがてパッキン24aを介して第一チャンバ壁体22の下端に気密衝合されるので、これによって、チャンバ2が密閉状態となり、その時点で、アクチュエータ26及び加圧ヘッド4の上昇移動が停止する。そしてこの状態では固定金型ユニット31と可動金型ユニット32(上型313と下型323)の間に隙間G
3が形成されている。この隙間G
3はG
2−G
1に相当する大きさであって、キャビティ内の未加硫ゴム生地Aの上端が可動金型のキャビティ表面に接触しない隙間となっている。
【0044】
すなわち、アクチュエータ26及び加圧ヘッド4によってチャンバ2を閉塞させるための第三チャンバ壁体25のストロークは、金型ユニット3の固定金型ユニット31と可動金型ユニット32を型締めするのに必要なストロークよりも小さいので、その動作時間も短くなって作業性が向上し、その結果、金型ユニット3の冷却が抑えられて成形の歩留まりを向上させることができる。
【0045】
次に真空ポンプ5を駆動させることによって、
図6に網掛けで示すように、チャンバ2内を真空引きする。可動ベース板23の内周鍔部23aと、これに支持された被支持盤320の外周鍔部320aとの間には通気可能な隙間が存在しており、したがってチャンバ2のうち、可動ベース板23より上側の空間(第一チャンバ壁体22及び第二チャンバ壁体24の内周空間)と、可動ベース板23より下側の空間(第三チャンバ壁体25と加圧ヘッド4の間の空間)は連通しており、チャンバ2内は円滑に真空引きされる。
【0046】
そしてこのとき、上述のように、固定金型ユニット31の上型313と可動金型ユニット32の下型323の間に未加硫ゴム生地Aの上端が可動金型のキャビティ表面に接触しない隙間G
3が形成されているため、上型313及び下型323に形成されて互いに対向しているキャビティ33内もチャンバ2内と同等の真空度に真空引きされる。
【0047】
また、チャンバ2は金型ユニット3の外周のほか、加圧ヘッド4の上部外周を包囲するようになっているものではあるが、その容積はそれほど大きくする必要がないため、例えば−93.3kPa(−700mmHg)以下の所定の真空度に短時間で到達することができる。
【0048】
不図示の圧力センサによって検出されるチャンバ2内の気圧が、所定の真空度に到達したら、
図7に示すように、真空ポンプ5の駆動を停止すると共にバルブ7等によってチャンバ2内の真空度を維持しつつ、加圧ヘッド4を上昇させる。なお、このとき加圧ヘッド4の基部41に取り付けられたアクチュエータ26のシリンダ26bも加圧ヘッド4と共に上昇するが、アクチュエータ26の回路に設けた不図示のカウンタバランス弁の制御によって、アクチュエータ26の上昇に応じてロッド26aがシリンダ26b内に没入して行くことになる。
【0049】
そして、このようにして加圧ヘッド4を上昇させることによって、その上端の支持盤部43が可動金型ユニット32における被支持盤320の下面を押し上げるので、それまで可動ベース板23の内周に支持されていた可動金型ユニット32は可動ベース板23から離間(浮上)して、この可動金型ユニット32における下型323が、固定金型ユニット31における上型313と衝合することによって型締めが行われる。
【0050】
そしてこの型締めの過程では、熱盤312,322からの熱によって加熱された下型323と上型313の間に構成されたキャビティ33内で未加硫ゴム生地Aが圧縮され、経時的に加硫硬化して成形され、例えばオイルシールなどの製品Bとなる。このとき、キャビティ33内は高真空となっているため、ゴム生地A(製品B)へ残留空気が封じ込まれてしまうことはなく、品質の高い製品Bが成形される。
【0051】
成形後は、チャンバ2内を大気開放し、
図7に示す状態から、アクチュエータ26を降下させることによって第一チャンバ壁体22と第二チャンバ壁体24、可動ベース板23と第三チャンバ壁体25を分離させ、不図示のメインラムを降下させることによって、加圧ヘッド4を降下させる。このとき、固定ベース板21と第一チャンバ壁体22はラック61がピニオン62と接触するまで降下し、可動ベース板23と被支持盤320はラック63がピニオン64と接触するまで降下する(ラック61,63、ピニオン62,64は
図2を参照)。そしてここで、固定金型ユニット31と可動金型ユニット32は互いに分離することになる。支持盤部43は被支持盤320から僅かな隙間ができた位置(
図4に示す状態)で降下を停止する。次に
図2に示すように金型出し入れ装置6によって成形装置の外部に引き出し、さらに
図3に示すように、固定ベース板21とこれに一体に保持された固定金型ユニット31及び第一チャンバ壁体22を開き、可動金型ユニット32における下型323から製品Bを取り出す(
図2,
図3,
図4には製品Bは不図示)。
【0052】
そして、第二チャンバ壁体24の高さは、可動金型ユニット32の高さと同等又はそれより低くなっているため、第二チャンバ壁体24が可動金型ユニット32からの製品Bの取り出しの阻害になることはなく、ここでも作業性を向上することができる。
【0053】
上述した一連の動作において、例えば
図4に示す状態から
図5に示すチャンバ2の閉塞行程や、
図6に示す状態から
図7に示す型締め行程などでは、第三チャンバ壁体25と加圧ヘッド4が相対変位するため、パッキン25gが加圧ヘッド4における中間部42の外周面と摺動することになるが、中間部42の外周面は円筒面をなしており、ホルダ25dによって、パッキン25gも円環状をなしているため、角筒面に摺動させる場合のようにパッキン25gの周方向一部に負荷集中が生じるようなことはなく、捩れや偏摩耗を有効に防止することができる。またその結果、採用可能なパッキン25gの種類が広がるほか、チャンバ2内を十分な真空度として成形品の品質を向上することができる。
【0054】
また、上記構成の成形装置によれば、第三チャンバ壁体25が可動ベース板23に気密衝合して、この可動ベース板23を介して第二チャンバ壁体24を第一チャンバ壁体22に気密衝合させることで、チャンバ2が画成されるものであるため、構造が簡素で、パッキン24a,25c,25gの交換など、メンテナンス時の作業性も向上させることができる。
【0055】
なお、例えばパッキン25gの交換に際しては、まず金型ユニット3を装置から取り外し、次に固定ベース板21及びこれと一体の第一チャンバ壁体22を装置から取り外し、不図示のボルトで結合されている加圧ヘッド4の中間部42と支持盤部43を分離してから、アクチュエータ26を上昇させると、被支持盤320と支持盤部43は、不図示の嵌め合い構造によって上下に多少の相対変位が可能な状態で互いに接続されているため、第二チャンバ壁体24、第三チャンバ壁体25、被支持盤320及び支持盤部43が持ち上がり、支持盤部43が中間部42と分離される。したがって、さらにアクチュエータ26を上昇させるとパッキン25gが中間部42から外れるので、このパッキン25gをホルダ25dから取り外して交換することができる。交換後は、上述と逆の作業によって組み立てることができる。
【0056】
また、
図1に示す状態において、G
1<G
2の関係、すなわちt
1+t
2<h
1+h
2で、かつ
図5に示すチャンバ2の閉塞状態において、隙間G
3が未加硫ゴム生地Aの厚さより大きいといった条件を満たすものであれば、可動金型ユニット32における下型323及び固定金型ユニット31における上型313を、厚さの異なるものに変更することができる。