(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5773218
(24)【登録日】2015年7月10日
    
      
        (45)【発行日】2015年9月2日
      
    (54)【発明の名称】圧着端子
(51)【国際特許分類】
   H01R   4/72        20060101AFI20150813BHJP        
   H01R   4/18        20060101ALI20150813BHJP        
   H01R  11/12        20060101ALI20150813BHJP        
【FI】
   H01R4/72
   H01R4/18 A
   H01R11/12 E
【請求項の数】2
【全頁数】10
      (21)【出願番号】特願2012-129890(P2012-129890)
(22)【出願日】2012年6月7日
    
      (65)【公開番号】特開2013-254658(P2013-254658A)
(43)【公開日】2013年12月19日
    【審査請求日】2014年6月27日
      
        
          (73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
          (74)【代理人】
【識別番号】100103252
【弁理士】
【氏名又は名称】笠井  美孝
          (74)【代理人】
【識別番号】100147717
【弁理士】
【氏名又は名称】中根  美枝
        
      
      
        (72)【発明者】
          【氏名】飯尾  清一
              
            
        
      
    
      【審査官】
        高橋  学
      
    (56)【参考文献】
      
        【文献】
          欧州特許出願公開第01796216(EP,A1)    
        
        【文献】
          特開2008−176970(JP,A)      
        
        【文献】
          実開平5−31131(JP,U)      
        
        【文献】
          特開2012−104235(JP,A)      
        
      
    (58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R      4/72        
H01R      4/18        
H01R    11/12        
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
  電気的接続対象に対して導通可能に接続される接続部と、被覆電線の芯線に対して加締め固定される圧着部と、該接続部と該圧着部の間に延在する連結部を含んで構成されており、前記圧着部を含む周辺領域が外挿される被覆筒体によって被覆される圧着端子において、
  前記圧着部は、前記被覆電線の前記芯線が載置される載置部と、該載置部の幅方向の両側縁部から平板状に突出して該芯線が載置される側に立ち上がるように屈曲されてなる芯線加締め部を含んで構成されている一方、
  前記芯線加締め部の基端部には、前記連結部側の側縁部が該連結部側に向かって延び出す延出部が設けられており、該延出部の上端面に前記被覆筒体の内面に係合して該被覆筒体の位置ずれを防ぐ係合角部が形成されている一方、
  前記連結部には、該連結部の幅方向中央部分に該連結部の長手方向に延びる補強用凸条が設けられており、該補強用凸条の圧着部側端部が前記延出部の前記係合角部よりも前記圧着部側に位置する一方、前記補強用凸条の接続部側端部が前記延出部の前記係合角部よりも前記接続部側に位置しており、
  前記補強用凸条の前記圧着部側端部に至るように前記芯線の先端部が位置決めされる一方、前記補強用凸条の前記接続部側端部を超える位置に前記被覆筒体の先端部が位置決めされるようになっている
ことを特徴とする圧着端子。
【請求項2】
  前記延出部の前記上端面が段差状に切り欠かれることにより、複数の前記係合角部が該延出部の該上端面に形成されている請求項1に記載の圧着端子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
  本発明は、被覆電線の電線端末において、露出された芯線に圧着されて取り付けられる圧着端子に関するものである。
 
【背景技術】
【0002】
  従来から、自動車等の電装系に使用される被覆電線には、その端末において露出された芯線に対して圧着されることにより取り付けられる圧着端子が広く採用されている。例えば、実開平5−31130号公報(特許文献1)に記載されているように、このような圧着端子は、金属等の導通部材で形成されており、電気的な接続対象に対して導通可能に接続される接続部と、被覆電線の芯線の外周面に加締め固定される芯線加締め部を有する圧着部と、それらの間に延在する連結部を有する構造とされている。そして、被覆電線に対する圧着端子の取付部分の防水性を確保するために、内部にホットメルトを配した熱収縮チューブを圧着部を含む周辺領域に外挿し、熱収縮チューブを熱収縮させることにより圧着部や芯線を密封状態で被覆したり、合成樹脂材からなる筒状のモールド成形品により圧着部の周辺領域を密封することが行われている。
【0003】
  ところで、このような圧着端子付の被覆電線を車両に搭載して使用する場合には、使用環境が高温になることから、熱収縮チューブ等の被覆筒体が加熱により緩んで圧着端子から離隔する方向に位置ずれして、被覆電線の芯線や圧着部分が外部に露呈するおそれがあった。
【0004】
  そこで、特許文献1に記載されているように、接続部と圧着部を連結する連結部の中央部分に大きな切欠を形成し、当該切欠部分を圧着部の芯線加締め部が突出する側に切り起こして起立突起を形成した構造が提案されている。これによれば、起立突起の角部を、熱収縮チューブ等の被覆筒体の内面に係合させることにより、当該係合による抵抗により被覆筒体の位置ずれを防止することが可能となる。
【0005】
  ところが、このような従来構造の圧着端子では、連結部の剛性が十分に確保できないという問題があった。すなわち、圧着端子が相手側の接続対象に対して接続された状態では、接続対象への固定点である接続部と、被覆電線への固定点である圧着部の間の連結部に対して、他部材との干渉や振動等による外力が集中して及ぼされ、連結部に大きな曲げ力が加えられることとなる。従来構造の圧着端子では、このような連結部に対して、起立突起を形成するために大きな切欠を設けなければならず、実質的に連結部の両縁部のみで接続部と圧着部が連接されていることとなる。それ故、連結部の剛性を十分に確保することが困難で、連結部の耐久性悪化や破断の問題を招いていた。
 
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実開平5−31130号公報
 
 
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
  本発明は、上述の事情を背景に為されたものであって、その解決課題は、連結部の剛性を確保しつつ、被覆筒体の位置ずれ防止性を有利に実現することができる、新規な構造の圧着端子を提供することにある。
 
【課題を解決するための手段】
【0008】
  以下、前述の如き課題を解決するために為された本発明の態様を記載する。なお、以下に記載の各態様において採用される構成要素は、可能な限り任意の組み合わせで採用可能である。
【0009】
  本発明の第一の態様は、電気的接続対象に対して導通可能に接続される接続部と、被覆電線の芯線に対して加締め固定される圧着部と、該接続部と該圧着部の間に延在する連結部を含んで構成され
ており、前記圧着部を含む周辺領域が外挿される被覆筒体によって被覆される圧着端子において、前記圧着部は、前記被覆電線の前記芯線が載置される載置部と、該載置部の幅方向の両側縁部から平板状に突出して該芯線が載置される側に立ち上がるように屈曲されてなる芯線加締め部を含んで構成されている一方、前記芯線加締め部の基端部には、前記連結部側の側縁部が該連結部側に向かって延び出す延出部が設けられており、該延出部の上端面に
前記被覆筒体の内面に係合して該被覆筒体の位置ずれを防ぐ係合角部が形成されている
一方、前記連結部には、該連結部の幅方向中央部分に該連結部の長手方向に延びる補強用凸条が設けられており、該補強用凸条の圧着部側端部が前記延出部の前記係合角部よりも前記圧着部側に位置する一方、前記補強用凸条の接続部側端部が前記延出部の前記係合角部よりも前記接続部側に位置しており、前記補強用凸条の前記圧着部側端部に至るように前記芯線の先端部が位置決めされる一方、前記補強用凸条の前記接続部側端部を超える位置に前記被覆筒体の先端部が位置決めされるようになっていることを特徴とする。
【0010】
  本態様に従う構造の圧着端子によれば、芯線加締め部の基端部における連結部側の側縁部に延出部が設けられていると共に、延出部の上端面に係合角部が形成されている。ここで、芯線加締め部の基端部に設けられた延出部は、芯線加締め部が載置部の芯線載置側(以下、上方)に屈曲される際に、載置部に対して上方に向かって屈曲される。従って、延出部の上端面に形成された係合角部は、芯線加締め部の前方(連結部側)において芯線加締め部に外挿される熱収縮チューブ等の被覆筒体の軸方向に直交する軸直方向に立ち上がる段差面を構成することができる。これにより、芯線加締め部に対して被覆筒体の内面に係合する凸状の係合部分を部品点数の増加を伴うことなく容易に付加することができ、被覆筒体の芯線加締め部からの位置ずれを有利に防止することができる。
さらに、本態様によれば、補強用凸条により連結部の更なる補強を図ることができる。また、補強用凸条は連結部の長手方向に延びていることから、補強用凸条の圧着部側端部を目印に芯線を位置決めする一方、補強用凸条の接続部側端部を目印に被覆筒体の端部を位置決めすることにより、芯線を被覆筒体で安定して被覆することができ、それらの位置決め作業を容易に行うことができる。なお、補強用凸条は、連結部の上面側(芯線加締め部の突出する側)に凸となるものや、下面側に凸となるもののいずれも含む。
【0011】
  また、芯線加締め部の基端部に設けた延出部の上端面に対して、被覆筒体の内面に係合し得る係合角部を設けたことから、従来構造のように、圧着端子の連結部に大きな切欠き部を設けて被覆筒体の内面への係合部分を設けることが回避されている。従って、使用時に応力が集中する連結部の剛性を十分に確保しつつ、被覆筒体への係合部分を設けることができるのである。
【0012】
  しかも、本態様の圧着端子における被覆筒体への係合部分は、芯線加締め部の延出部の上端面の係合角部によって構成されていることから、従来構造の如き連結部に設けた場合に比して、接続部から十分に離隔した圧着部に被覆筒体への係合部分を設けることができる。それ故、複数の圧着端子を1つの端子ボルトに重ね合わせて装着する場合にも、圧着端子の重ね合せ方向で係合部分が干渉することを有利に回避し得て、1つの端子ボルトに対する装着自由度の向上を図ることができる。
【0013】
  なお、係合角部は、例えば、延出部を略矩形に構成して延出部の上方角部を利用して構成しても良いし、延出部の上端面を段差状に切り欠いて当該段差面を利用して構成することもできる。
【0014】
  また、各芯線加締め部において、延出部の上端面に形成する係合角部は、1つずつ設けられていればよいが、複数の係合角部が設けられていてもよい。
【0015】
  本発明の第二の態様は、前記第一の態様に係る圧着端子において、前記延出部の前記上端面が段差状に切り欠かれることにより、複数の前記係合角部が該延出部の該上端面に形成されているものである。
【0016】
  本態様によれば、延出部の上端面を段差状に切り欠くことにより、容易に複数の係合角部を設けることができる。これにより、複数の係合角部が被覆筒体の内面に係合して、被覆筒体の芯線加締め部側への位置ずれを一層確実に防止することができる。
 
【発明の効果】
【0019】
  本発明の圧着端子によれば、芯線加締め部の基端部における連結部側の側縁部に延出部が設けられていると共に、延出部の上端面に係合角部が形成されている。この係合角部が被覆筒体の内面と係合することにより、被覆筒体の位置ずれを防止できる。また、従来構造のように圧着端子の連結部に大きな切欠き部を設けることが回避されているため、連結部の剛性を十分に確保しつつ、被覆筒体への係合部分を設けることができる。
 
 
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の第一の実施形態としての圧着端子の平面図。
 
【
図4】
図1に示された圧着端子が取り付けられた熱収縮チューブ付き電線の平面図。
 
【
図5】
図4に示された圧着端子が取り付けられた熱収縮チューブ付き電線の圧着端子を重ね合わせた状態を示す平面図。
 
【
図6】本発明の第二の実施形態としての圧着端子の平面図。
 
 
【発明を実施するための形態】
【0021】
  以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
 
【0022】
  先ず、
図1〜3には、本発明の第一の実施形態としての圧着端子10が、示されている。圧着端子10は、電気的接続対象に対して導通可能に接続される接続部12と、後述する被覆電線56の芯線58に対して加締め固定される芯線加締め部38を有する圧着部14と、それらの間に延在する連結部16を含んで一体的に構成されている。
 
【0023】
  より詳細には、圧着端子10は、導電性を有しており、且つプレス加工や打抜き加工等が可能な種々の金属材料、例えば真鍮や銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金等を用いて形成されている。本実施形態では、圧着端子10の厚さ寸法が全体に亘って略一定とされている。
 
【0024】
  接続部12は、平面が略楕円形の平板形状を有していると共に、中央部分に貫通孔18が貫設されている。この貫通孔18は、例えば所定の位置に螺着される端子ボルトを挿通するために利用される。また接続部12の外周縁部において、径方向での対向する位置には、一対の収容部20,20が設けられている。収容部20,20は、接続部12の外周縁部から突出する略矩形平板形状の突片を接続部12の一方の面側(
図1中の表面側)且つ接続部12の径方向内方に折り曲げ加工することにより、接続部12の外周縁部から逆L字状に延び出す形状で設けられている。
図3に示すように、一対の収容部20,20の一方の端部には、角部を斜めに削ぎ落とすことにより形成された収容溝22,22が形成されている。また、一対の収容部20,20から周方向時計回りに僅かに離隔した位置に一対の突起24,24が設けられており、さらに周方向時計回りに少し離隔した位置に一対のテーパ部26,26が設けられている。各テーパ部26の形状は、収容溝22に対応した形状とされている。さらに、接続部12の先端側(
図1中の右側)の外周縁部には径方向外方に延出する延長部28が設けられており、延長部28の周方向に離隔した位置には時計回り方向に起立突起30と平面視で矩形状の貫通孔32が形成されている。起立突起30は、延長部28をU字状に切り抜いた切欠部34に囲われた領域が上方(
図1中の表面側)に切り起こされた構造とされており、延長部28の板厚寸法と略同じかそれ以下の寸法でもって切り起こされている。なお、起立突起30は、貫通孔32に嵌まるように、貫通孔32より僅かに小さく形成されている。
 
【0025】
  圧着部14は、長手状の略矩形平板形状を有し且つ後述する被覆電線56の芯線58が載置される載置部36と、この載置部36の幅方向の両側縁部に設けられた一対の芯線加締め部38,38および一対の被覆電線加締め部40,40を含んで構成されている。これらの芯線加締め部38,38及び被覆電線加締め部40,40は、載置部36の幅方向両側縁部から平板上に突出して後述する芯線58が載置される側(
図1中の上側)に立ち上がるように屈曲されることにより形成されており、載置部36の両側壁部を構成している。ここで、芯線加締め部38,38およびその間の表面全面に亘って例えば台形状の突起42が設けられている。なお、突起42の形状は円弧形状、多角形状等の任意の形状が採用され得る。
 
【0026】
  また、圧着部14の芯線加締め部38の基端部44には、連結部16側の側縁部が連結部16側に向かって略矩形平板形状で延び出す延出部48が設けられており、延出部48の上端面50の角部を用いて係合角部52が形成されている。さらに、一対の芯線加締め部38,38に形成された延出部48,48は、圧着部14の長手方向の同じ位置に設けられている。ここで延出部48は例えばプレス打ち抜きのパターン変更のみで形成可能であり、また
図3から分かるようにそもそも廃棄する部分に延出部48を設定することができる。また、芯線加締め部38の曲げ加工時に同時に載置部36の上方に向かって立ち上がるように屈曲される。これにより、部品点数や材料、さらには作業工程の増加を伴うことなく、延出部48を設けることができる。
 
【0027】
  このような接続部12と圧着部14の間に延在する連結部16の幅方向中央部分には、連結部16の長手方向に延びる補強用凸条54が連結部16の上面側(
図2中上方)に凸となる形状で設けられている。これにより連結部16の更なる補強を図ることができる。なお、補強用凸条54は、連結部16の上面側(芯線加締め部38の突出する側)に凸となるものや、下面側に凸となるもののいずれも含む。
 
【0028】
  次に、
図4を用いて、本実施形態の圧着端子10に対して、被覆電線56を圧着する方法について説明する。被覆電線56は、導体である銅やアルミニウムその他の金属線の複数を束ね合わせた芯線58が、エチレン系樹脂やスチレン系樹脂等の電気絶縁性を有する絶縁被覆60で覆われた構造とされている。先ず、被覆電線56の先端側の絶縁被覆60を剥いで芯線58を露出させる。次に、この被覆電線56の外周側に熱収縮チューブ62を遊挿する。
 
【0029】
  次に、芯線58が露出された被覆電線56の先端部分を、圧着端子10の圧着部14における載置部36の上面に載置する。この時、芯線58の先端部が補強用凸条54上、例えば圧着部側端部64に至るように、芯線58の位置決めを行う。これにより、簡便且つ正確に一対の芯線加締め部38,38の間に露出させた芯線58を配設すると共に、一対の被覆電線加締め部40,40の間に絶縁被覆60で覆われている部分を配設することができる。
 
【0030】
  かかる状態下で、例えば特許文献(実開平05−23389)に示されるような公知の加締め装置を用いて、芯線加締め部38,38及び被覆電線加締め部40,40に加締め加工を施す。これにより、芯線加締め部38,38及び被覆電線加締め部40,40を備えた圧着部14が塑性変形して、芯線58および被覆電線56を外周面から包み込むようにして圧着される。これにより、圧着部14の内面が、芯線58および被覆電線56の最外周面に対して圧着状態で当接されることとなり、特に突起42が多数設けられた芯線加締め部38,38の内面では芯線58との接触面積を大きくできる。なお、この状態では、まだ、芯線58は露出した状態のままである。
 
【0031】
  次に、熱収縮チューブ62を被覆電線56に沿ってスライドさせ、熱収縮チューブ62の先端部が補強用凸条54の接続部側端部66を越えた位置に至るように、熱収縮チューブ62の位置決めを行う。これにより補強用凸条54の接続部側端部66が延出部48の係合角部52よりも接続部12側に設けられていることから、十分な被覆代でもって係合角部52を熱収縮チューブ62の内面に係合させることができる。それ故、熱収縮チューブ62が使用環境による加熱により緩んで、被覆電線56の芯線58や圧着部14が外部に露呈するのを防止することができる。この状態で、電熱器などの加熱手段を用いて熱収縮チューブ62を加熱する。
 
【0032】
  これにより、熱収縮チューブ62は熱収縮され、これに伴って溶融した図示しないホットメルトは、熱収縮チューブ62の収縮力によって係合角部52から芯線58の部分、芯線加締め部38,38及び被覆電線加締め部40,40、絶縁被覆60の先端部を密着する。しかも、加熱により溶融したホットメルトは、粘度が低下して流動化しているので、上述した各部材との間に大きな隙間を空けることなく満遍なく埋めることができ、上述した各部材を液密状態で密着させることができる。
 
【0033】
  次に、
図5を用いて、本実施形態の複数の圧着端子10を1つの図示しない端子ボルトに重ね合わせて装着する方法について説明する。1つの端子ボルトに重ね合わせて装着するためには、
図5に示すように、複数の圧着端子10の貫通孔18が一致するように重ねてやればよい。すなわち、一方の圧着端子10の上に、もう一方の圧着端子10を例えば90度反時計回りに回転させた状態で貫通孔18が一致するように重ね、時計回りに回転させることにより上方(
図5中の上側)の圧着端子10のテーパ部26を下方(
図5中の下側)の圧着端子10の収容部20内の収容溝22に挿入する。十分に挿入されると、押さえつけられていた下方の圧着端子10の起立突起30が、上方の圧着端子10の貫通孔32内に弾性復帰して貫通孔32と係合する。これにより、上方の圧着端子10の外周縁部を、下方の圧着端子10の一対の収容部20,20と起立突起30によって、端子ボルトにより螺合する前に所望の位置に位置決めして仮止めすることができるのである。同様にして、さらに上に圧着端子10を重ねていくことができる。そして、本実施形態の圧着端子10における熱収縮チューブ62への係合部分は、芯線加締め部38の延出部48の上端面50の係合角部52によって構成されていることから、従来構造の如き連結部16に設けた場合に比して、接続部12から十分に離隔した位置とすることができる。それ故、複数の圧着端子10を1つの端子ボルトに重ね合わせて装着する場合にも、圧着端子10の重ね合せ方向で係合部分が干渉することを有利に回避し得るのである。
 
【0034】
  上述の如き構造の本実施形態の圧着端子10によれば、芯線加締め部38の基端部44における連結部16側の側縁部に延出部48が設けられていると共に、延出部48の上端面50に係合角部52が形成されている。これにより、芯線加締め部38の前方(連結部16側)において芯線加締め部38に外挿される熱収縮チューブ62等の被覆筒体の軸方向に直交する軸直方向に立ち上がる段差面として延出部48の連結部16側の側縁部を構成することができる。従って、芯線加締め部38に対して被覆筒体の内面に係合する凸状の係合部分として係合角部52を部品点数の増加を伴うことなく容易に付加することができると共に、被覆筒体の芯線加締め部38からの位置ずれを係合角部52により有利に防止することができる。なお、係合角部52の形状は特に限定されないが、本実施形態(
図2等参照)のように角の丸い角丸形状であることが望ましく、これにより被覆筒体の破れ等を防止することができる。
 
【0035】
  また、従来構造のように連結部16に大きな切欠き部を設けることが回避されているので、使用時に応力が集中する連結部16の剛性を十分に確保しつつ、被覆筒体の内面に係合し得る係合角部52を設けることができる。
 
【0036】
  また、補強用凸条54により連結部16の更なる補強を図ることができる。補強用凸条54は連結部16の長手方向に延びていることから、芯線58の先端部が補強用凸条54の圧着部側端部64に至るように芯線58の位置決めを行う一方、熱収縮チューブ62の先端部が補強用凸条54の接続部側端部66を越えるように熱収縮チューブ62の位置決めを行うことにより、芯線58を被覆筒体で安定して被覆することができ、それらの位置決め作業を容易に行うことができる。
 
【0037】
  加えて、被覆筒体への係合部分は、圧着部14に設けられた芯線加締め部38の延出部48の係合角部52によって構成されていることから、従来構造の如き連結部16に設けた場合に比して、接続部12から十分に離隔した圧着部14に被覆筒体への係合部分を設けることができる。それ故、複数の圧着端子10を1つの端子ボルトに重ね合わせて装着する場合にも、圧着端子10の重ね合せ方向で係合部分が干渉することを有利に回避し得るのである。
 
【0038】
  次に、本発明の第二の実施形態としての圧着端子70を例示するが、以下に挙げる実施形態において、第一の実施形態と同様な構造とされた部材および部位については、図中に、第一の実施形態と同一の符号を付することにより、それらの詳細な説明を省略する。
 
【0039】
  すなわち、
図6〜8には、本発明の第二の実施形態としての圧着端子70が示されている。かかる圧着端子70は、第一の実施形態における延出部48の上端面50が段差状に切り欠かれることにより、複数の係合角部72,74が延出部48の上端面50,76に形成されている点に関して、第一の実施形態と異なる実施形態を示すものである。
 
【0040】
  より詳細には、第一の実施形態で述べた略矩形状の延出部48の上端面50の接続部12側を段差状に切り欠くことにより、延出部48は側面視で略L字形状となる。それ故、2つの係合角部72,74を延出部48の上端面50,76に設けることができる。これにより、2つの係合角部72,74が被覆筒体の内面に係合して、被覆筒体の芯線加締め部38側への位置ずれを一層確実に防止することができる。
 
【0041】
  以上、本発明の実施形態について説明してきたが、かかる実施形態における具体的な記載によって、本発明は、何等限定されるものでない。例えば、本実施形態では、延出部48を略矩形平板形状となし、延出部48の角部やかかる角部を段差状に切り欠いた際の角部を利用して係合角部52,72,74、を構成していたが、これに限定されない。具体的には、任意の形状の延出部48の上端面50から上方に突出する突起を一体形成し、該突起により係合角部を構成するようにしてもよい。この場合、突起の形状は、矩形状、円弧形状、多角形状等任意に設定可能である。また、係合角部52や係合角部72,74のように、本実施形態では被覆筒体への係合部分は1つと2つの場合について説明を行ったが、勿論3つ以上あってもよい。加えて、延出部48の側縁部に係合角部を突出形成してもよい。
 
【0042】
  また、被覆筒体として熱収縮チューブ62に代えて、圧着部14を外部から包囲する合成樹脂製の筒状のモールド成形品により、圧着部14を密封するようにしてもよい。筒状のモールド成形品の場合でも、熱収縮チューブ62の場合と同様、本発明の圧着端子10による位置ずれ防止効果や、装着自由度、位置決め容易性の向上等の効果が同様に享受できる。
 
 
【符号の説明】
【0043】
10,70:圧着端子、12:接続部、14:圧着部、16:連結部、36:載置部、38:芯線加締め部、44:基端部、48:延出部、50,76:上端面、52,72,74:係合角部、54:補強用凸条、56:被覆電線、58:芯線