特許第5773219号(P5773219)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5773219防水シールドコネクタ及びシールドシェル
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5773219
(24)【登録日】2015年7月10日
(45)【発行日】2015年9月2日
(54)【発明の名称】防水シールドコネクタ及びシールドシェル
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/52 20060101AFI20150813BHJP
   H01R 13/648 20060101ALI20150813BHJP
【FI】
   H01R13/52 301E
   H01R13/648
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-144468(P2012-144468)
(22)【出願日】2012年6月27日
(65)【公開番号】特開2014-10904(P2014-10904A)
(43)【公開日】2014年1月20日
【審査請求日】2014年7月31日
(73)【特許権者】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】特許業務法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】永渕 昭弘
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 正
(72)【発明者】
【氏名】居附 清貴
【審査官】 山田 康孝
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−165512(JP,A)
【文献】 特開2012−018802(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 13/52
H01R 13/648
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電線の末端を内部に収容する電線挿通筒部を備えるコネクタハウジングと、
前記電線挿通筒部内に装着されて前記電線挿通筒部の内周面と前記電線の外周面とに密着するシール部材と、
前記コネクタハウジングを覆うシールド部と、前記シールド部と一体に設けられて前記シール部材を抜け止めするバックリテーナ部とを備えるシールドシェルと、を備え
前記シールド部が前記電線挿通筒部の周囲を覆うものであり、
前記バックリテーナ部が、前記電線挿通筒部において前記電線を外部に導出するための開口部を塞ぐ蓋部と、この蓋部に設けられて前記シール部材に当接する押さえ部とを備えるものである防水シールドコネクタ。
【請求項2】
前記シールド部および前記蓋部には、互いに係合することによって前記蓋部が前記開口部を塞いだ状態を保持するためのロック構造が設けられている、請求項1に記載の防水シールドコネクタ。
【請求項3】
前記押さえ部において前記シール部材に当接する当接面が、前記シール部材側に突出する弧状部を備えるものである、請求項2に記載の防水シールドコネクタ。
【請求項4】
電線の末端を内部に収容する電線挿通筒部を備えるコネクタハウジングと、前記電線挿通筒部内に装着されて前記電線挿通筒部の内周面と前記電線の外周面とに密着するシール部材と、を備える防水シールドコネクタに装着されるシールドシェルであって、
前記コネクタハウジングを覆うシールド部と、
前記シールド部と一体に設けられて、前記シール部材を抜け止めするバックリテーナ部と、を備えるシールドシェル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防水シールドコネクタ及びシールドシェルに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、車両に搭載された機器に接続されるシールドコネクタとして、特許文献1に記載のものが知られている。このシールドコネクタは、電線に接続された複数の端子金具を内部に保持するコネクタハウジングと、このコネクタハウジングから引き出された電線の外周とコネクタハウジングの内周との間をシールする防水ゴム栓と、この防水ゴム栓の抜け止めのためのゴム栓押さえと、コネクタハウジングの外面を覆うようにコネクタハウジングに装着される筒状のシールドシェルとを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−113909号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような防水性とシールド性能との双方を満たすことを求められるコネクタは、部品点数が多くなりやすく、コスト高になりがちである点が問題であった。
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、防水性とシールド性能とを併せ持つコネクタを安価に提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の防水シールドコネクタは、電線の末端を内部に収容する電線挿通筒部を備えるコネクタハウジングと、前記電線挿通筒部内に装着されて前記電線挿通筒部の内周面と前記電線の外周面とに密着するシール部材と、前記コネクタハウジングを覆うシールド部と、前記シールド部と一体に設けられて前記シール部材を抜け止めするバックリテーナ部とを備えるシールドシェルと、を備え、前記シールド部が前記電線挿通筒部の周囲を覆うものであり、前記バックリテーナ部が、前記電線挿通筒部において前記電線を外部に導出するための開口部を塞ぐ蓋部と、この蓋部に設けられて前記シール部材に当接する押さえ部とを備えるものである。
【0006】
また、本発明のシールドシェルは、電線の末端を内部に収容する電線挿通筒部を備えるコネクタハウジングと、前記電線挿通筒部内に装着されて前記電線挿通筒部の内周面と前記電線の外周面とに密着するシール部材と、を備える防水シールドコネクタに装着されるものであって、前記コネクタハウジングを覆うシールド部と、前記シールド部と一体に設けられて、前記シール部材を抜け止めするバックリテーナ部と、を備える。
【0007】
本構成によれば、シールドシェルに、シール部材を抜け止めするためのバックリテーナ部を一体化したので、部品点数を削減でき、製造コストを低減できる。これにより、防水性とシールド性能とを併せ持つコネクタを安価に提供することができる。
【0009】
また、前記シールド部および前記蓋部には、互いに係合することによって前記蓋部が前記開口部を塞いだ状態を保持するためのロック構造が設けられていてもよい。本構成によれば、シール部材の抜け止めを確実に図ることができる。
【0010】
また、前記押さえ部において前記シール部材に当接する当接面が、前記シール部材側に突出する弧状部を備えるものであることが好ましい。
本構成によれば、押さえ部においてシール部材に当接する部分に丸みが付けられているため、押さえ部がシール部材に引っかかってシール部材を傷つける事態を回避できる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、防水性とシールド性能とを併せ持つコネクタを安価に提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施形態の防水シールドコネクタの斜視図
図2】実施形態の防水シールドコネクタの上面図
図3】実施形態の防水シールドコネクタの正面図
図4図3をA−A線で切断した部分断面図
図5】シールド装着部の部分拡大断面図
図6図3をB−B線で切断した部分側断面図
図7】シールドシェルの平面図
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施形態を、図1図7を参照しつつ詳細に説明する。
本実施形態の防水シールドコネクタ1は、内部に端子付き電線30を収容するものであって、機器(例えば、ハイブリッド自動車や電気自動車等の車両のインバータやモータ等)のシールドケースに取り付けられるものである。なお、以下の説明では、防水シールドコネクタ1において電線31が導出される側を正面側とし、機器との接続面側を下側として説明する。
【0014】
防水シールドコネクタ1の内部に収容される端子付き電線30は、芯線32を絶縁被覆33で被覆した電線31の一端部において、絶縁被覆33を剥ぎ取って芯線32を露出させ、ここに端子金具(図示せず)を圧着したものである。
【0015】
防水シールドコネクタ1は、端子付き電線30を内部に保持するコネクタハウジング10と、コネクタハウジング10の外面を覆うようにコネクタハウジング10に装着されるシールドシェル20とを備える。
【0016】
コネクタハウジング10は、合成樹脂製であって、機器のコネクタと接続されるコネクタ部11と、電線Wが導出される電線挿通筒部12とが互いに直交した状態で連結されることで、全体が略L字型に形成されたものである。
【0017】
コネクタ部11は、下方向に開口する円筒状に形成されており、その上端側で電線挿通筒部12と連結されている。このコネクタ部11の内部には、詳細には図示しないが、複数の端子収容部が備えられており、ここに端子付き電線30の端子金具が収容されている。
【0018】
電線挿通筒部12は、正面側に開口する横長の筒状に形成されており、その後端側でコネクタ部11と連結されている。この電線挿通筒部12の内部には、複数(本実施形態では2つ)の電線収容室13が、長尺方向に沿って並んで形成されている。各電線収容室13は、その後端位置で端子収容部と連通している。各電線収容室13には、端子収容部に収容された端子金具に接続された電線31が収容されている。この電線31の一端部(端子金具と接続される側とは逆側の端部)は、電線挿通筒部12の開口部から下方に導出されている。
【0019】
各電線収容室13において、開口部よりやや奥まった位置には、電線31の外周と電線収容室13の内周との間をシールする防水ゴム栓14(シール部材に該当)が配されている。この防水ゴム栓14は、円環状に形成され、その外周面が各電線収容室13の内周面に密着し、その内周面が電線Wの外周面に密着するようにされている。
【0020】
電線挿通筒部12において開口部側の部分は、断面楕円形状のシールド装着部15とされ、ここには、シールドシェル20が装着される。シールドシェル20は、金属板材を打ち抜き加工することにより形成され、シールド装着部15に巻き付けられるシールド部21と、防水ゴム栓14を抜け止めするためのバックリテーナ部24とを備えている。
【0021】
シールド部21は、シールド装着部15の外径にほぼ等しい長さの長尺板状に形成されている。このシールド部21において一対の長辺のうち一方の長辺には、その一部を切り欠くことにより切り欠き部22が設けられている。この切り欠き部22は、シールド装着部15の外周形状に沿う形状の、横長の楕円弧形状をなし、シールド装着部における長径方向の外径とほぼ等しい幅に形成されている。
【0022】
この切り欠き部22からは、連結部23およびバックリテーナ部24が延設されている。連結部23は、板状に形成されて、切り欠き部22の幅方向中心位置から外側方向に向かって突出されている。そして、その突出端の位置は、シールド部21の長辺よりもやや内側位置とされている。
【0023】
この連結部23の突出端から延設されたバックリテーナ部24は、電線挿通筒部12の開口部における外形とほぼ等しい外形を持つ長円形の板状に形成された蓋部25を備える。この蓋部25は、その長径方向がシールド部21の長さ方向に沿う向きで、連結部23に接続されている。
【0024】
蓋部25には、電線挿通筒部12から外部に導出される電線31を挿通するための空間を形成する複数の孔部26が貫通形成されている。これらの孔部26は、各電線収容室13の出口位置に対応する位置に配され、蓋部25の長径方向に沿って、間隔を空けて並んで形成されている。各孔部26は、略半円状に形成され、その円弧がシールド部21側となり、弦がシールド部21とは逆側となる向きに配されている。
【0025】
各孔部26の開口縁において半円の弦の部分からは、それぞれスリット部27が延びている。これらのスリット部27は、蓋部25においてシールド部21と接続されている側とは逆側の端縁に至るまで延設されている。スリット部27の出口部分、すなわち蓋部25の端縁に至る位置からやや内側位置までの部分は、それよりも奥側の部分よりも拡幅されている。拡幅部分の幅は、各孔部26における半円の弦の長さと同程度とされている。これにより、スリット部27における狭幅部分の両側には、スリット部27における拡幅部分の両端と、孔部26における半円の弦の両端とをそれぞれ結んだ線を基端位置として、互いに内側に向かって突出する一対の突出片28'が形成される。この突出片28'は、詳細には後述するが、折り曲げられて蓋部25の表面から上方に突出され、さらに円弧状に曲げられて、防水ゴム栓14を押さえる押さえ部28を形成するものである。
【0026】
シールド部21およびバックリテーナ部24には、互いに係合することによってシールドシェル20のコネクタハウジング10への組み付け状態を保持するためのロック構造29が設けられている。このロック構造29は、バックリテーナ部24に設けられて、長径方向の両端部から外側方向に向かって突出する係止片29Aと、シールド部21に設けられて、この係止片29Aと係合可能な係止孔29Bとで構成されている。
【0027】
次に、上記のように構成されたコネクタハウジング10にシールドシェル20を組み付ける手順について説明する。
【0028】
まず、コネクタハウジング10に端子付き電線30を組み付けておく。また、各突出片28'をその基端位置で上方に向かって折り曲げ、さらに、側方から見て円弧が上側を向き、弦が下側を向く半円状となるように折り曲げる。これにより、円弧面28A(弧状部に該当)側が上側を向く断面半円状に形成された押さえ部28が形成される。そして、この突出片28'の折り曲げ工程により、一対の押さえ部28の間に形成された空間は、孔部26とともに電線31を挿通するための空間を形成する。
【0029】
次に、このシールドシェル20を、押さえ部28が突出している側を上側にして載置する。そして、シールド部21上にコネクタハウジング10の電線挿通筒部12を載置し、シールド部21を、その長さ方向がシールド装着部15の周方向に沿うようにして、シールド装着部15に巻き付ける。このとき、シールドシェル20においてバックリテーナ部24が設けられている側が下側(電線挿通筒部12の開口部側)を向くようにする。
【0030】
次いで、連結部23を折り曲げ、バックリテーナ部24の蓋部25が電線挿通筒部12の開口部を塞ぐようにする。このとき、電線挿通筒部12の開口部から下方に導出されている電線31を、スリット部27を通過させて孔部26の奥端に突き当たる位置まで挿入する。そして、係止片29Aを係止孔29Bに係合させることで、蓋部25が電線挿通筒部12の開口部を塞いた状態に保持される。
【0031】
この状態では、蓋部25に形成された押さえ部28が、電線挿通筒部12の開口部から内部に進入し、その円弧面28Aが下側から防水ゴム栓14に当接することにより、防水ゴム栓14を下側から押さえることとなる。これにより、防水ゴム栓14の下方への抜け止めが図られる。
【0032】
なお、シールド部21の外周には、編組線(図示せず)が被せられ、さらに編組線の外周からかしめリング40がかしめられる。これにより、編組線40がシールド部21の外周面にシールド接続される。
【0033】
以上のように本実施形態によれば、防水シールドコネクタ1は、電線31の末端を内部に収容する電線挿通筒部12を備えるコネクタハウジング10と、この電線挿通筒部12における電線収容室13内に装着されて電線収容室13の内周面と電線31の外周面とに密着する防水ゴム栓14とを備えている。そして、コネクタハウジング10には、このコネクタハウジング10を覆うシールド部21と、このシールド部21と一体に設けられて防水ゴム栓14を抜け止めするバックリテーナ部24とを備えるシールドシェル20が装着されている。シールド部21は、コネクタハウジング10において電線挿通筒部12の周囲を覆うものであり、バックリテーナ部24は、電線挿通筒部12において電線31を外部に導出するための開口部を塞ぐ蓋部25と、この蓋部25に設けられて防水ゴム栓14に当接する押さえ部28とを備えるものである。
【0034】
このような構成によれば、シールドシェル20に、防水ゴム栓14を抜け止めするためのバックリテーナ部24を一体化したので、部品点数を削減でき、製造コストを低減できる。これにより、防水性とシールド性能とを併せ持つコネクタを安価に提供することができる。
【0035】
また、シールド部21および蓋部25には、互いに係合することによって蓋部25が電線挿通筒部12の開口部を塞いだ状態を保持するためのロック構造が設けられている。このような構成によれば、防水ゴム栓14の抜け止めを確実に図ることができる。
【0036】
また、押さえ部28が、円弧面28Aが上側(防水ゴム栓14側)を向く断面半円状に形成されており、円弧面28Aが防水ゴム栓14に当接する。
このような構成によれば、押さえ部において防水ゴム栓14に当接する部分が円弧状とされている。すなわち、押さえ部において防水ゴム栓14に当接する部分に尖ったところがないようにされているので、押さえ部28が防水ゴム栓14に引っかかって防水ゴム栓14を傷つける事態を回避できる。
【0037】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)上記実施形態では、押さえ部28を円弧面28Aが上側(防水ゴム栓14側)を向く断面半円状に形成したが、押さえ部の形状は上記実施形態の限りではなく、例えば断面半楕円形に形成されていても構わない。また、頂点部分に丸みを有する山状に形成されていても構わない。
【0038】
(2)上記実施形態では、押さえ部28を、蓋部25に設けられた突出片を折り曲げることにより形成したが、押さえ部の形成方法は上記実施形態の限りではなく、例えば、蓋部25の一部を上側(防水ゴム栓との対抗面側)に叩き出すことによって形成しても構わない。
【符号の説明】
【0039】
1…防水シールドコネクタ
10…コネクタハウジング
12…電線挿通筒部
14…防水ゴム栓(シール部材)
20…シールドシェル
21…シールド部
24…バックリテーナ部
25…蓋部
28…押さえ部
28A…円弧面(弧状部)
29…ロック構造
31…電線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7