(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記境界の形状を修正する段階は、一対の修正部材を持つプラズマシース修正部であって、前記一対の修正部材の間に間隙を画定しているプラズマシース修正部を用意する段階を有し、
前記境界の前記形状は、前記間隙において、前記平面に対して凸形状である請求項1に記載の方法。
前記イオンは、前記第1の照射において、所与の角度範囲にわたって、前記パターニングレジストフィーチャに衝突する請求項10から16のいずれか一項に記載の方法。
【背景技術】
【0002】
光リソグラフィーは、電子デバイスを製造する場合にしばしば利用される技術である。光リソグラフィーは、基板をパターニングして、そのパターンに応じて基板上に回路を形成するプロセスである。
図1Aから
図1Eを参照すると、光リソグラフィープロセスを説明するための簡略図が図示されている。一般的に、基板112は、光硬化性のポリマーフォトレジスト114(
図1A)でコーティングされている。この後、所望の開口パターンを持つマスク142を、基板114と光源(不図示)との間に配置する。光源からの光10をマスク142の開口を介して基板112上に照射し、マスクの開口を透過した光(または、パターンの画像)をフォトレジスト114上に投影する。フォトレジストの一部114aを、光10に露光して硬化させ、フォトレジストの残り114bは未硬化のままとする(
図1B)。この結果、フォトレジストの硬化部分114aによってマスクの開口のイメージが形成されるとしてよい。
【0003】
図1Cに図示されているように、フォトレジストの未硬化部分114bをはがすと、マスクの開口パターンに対応する3Dのフォトレジストフィーチャまたはレリーフ114aが基板112上に残るとしてよい。この後、基板をエッチングして、マスクの開口パターンのネガティブイメージに対応するトレンチ116を形成するとしてよい(
図1D)。残りのフォトレジスト114bを除去すると、パターニングされた基板112が形成されるとしてよい(
図1E)。トレンチに金属層を成膜すると、所望のパターンを持つ回路が基板112上に形成されるとしてよい。
【0004】
図2を参照すると、マスクの開口パターンの画像を基板に投影する従来の光リソグラフィーシステム200が図示されている。光リソグラフィーシステム200は、光源222、光結合器232および集光レンズ234を備える。さらに、光リソグラフィーシステム200は、所望の開口パターンを持つマスク142と、投影レンズ252とを備える。同図に示すように、所望の波長を持つ光を光源222から光結合器232および集光レンズ234に照射する。光結合器232および集光レンズ234は、照明部230と総称する。照明部230では、光10を拡大、均等化、集光等、調整する。光10は、所望の開口パターンを持つマスク142に照射されて、基板112上に投影される。マスク142の開口を透過する光10は、マスクの開口パターンに関する情報を含むとしてよい。光10はこの後、投影レンズ252によって捕えられ、投影レンズ252は、光10またはマスクの開口パターンのイメージを、基板112上に成膜されているフォトレジスト上に投影する。画像を投影する際、投影レンズ10は、4または5の倍数でイメージを縮小するとしてよい。
【0005】
生成する回路パターンのフィーチャサイズ(例えば、トレンチの幅)を小型化するべく、幾つかの点で当該プロセスを修正している。関連技術分野で公知であるように、小さくてもフィーチャの明瞭なイメージを投影できるか否かは、何より、プロセスで用いられる光の波長に左右されるとしてよい。現時点において、波長が365nm、248nmおよび193nmである紫外(UV)光が利用されている。
【0006】
光リソグラフィーは、スループットが高い効率的なプロセスであるが、短所がないわけではない。短所の1つとして、ラインウィドスラフネス(LWR)またはラインエッジラフネス(LER)が挙げられるとしてよい。関連技術分野で公知であるように、LWRは、フォトレジストの未硬化部分114bを基板から剥離して形成されるフォトレジストフィーチャの幅の過剰なバラツキである。このバラツキは、フォトレジストのレリーフまたはフィーチャの側面で見られる場合、LERと呼ばれる。LWRまたはLERといった粗度またはバラツキが短所となるのは、エッチング時にトレンチに転写され、最終的には回路に転写されるためである。このバラツキは、フォトレジストのレリーフまたはトレンチのフィーチャサイズが小さくなるほどに顕著になる。32nmのデバイスの場合、4nm以上のバラツキが見られている。パターニングレジストフィーチャの幾何学的形状は、LWRおよびLER等のライン粗度の影響も含め、レジスト層の下方に恒久的に存在するデバイス層のパターニング時に、レジスト層から当該デバイス層に転写されるので、LWRおよびLERは、約100nm未満の寸法の場合について許容可能なレベルの品質を持つデバイスを形成する可能性を制限する要因となり得る。このようなバラツキは、回路の不均一性につながり、最終的にはデバイスの劣化または故障につながる可能性がある。また、設計基準に応じて、デバイス性能は、小、中または大のいずれかの範囲の粗度による影響を大きく受けるとしてよい。
【0007】
LWRおよびLERの影響に対処するべく幾つかの方策が試されている。一例を挙げると、ドライ化学エッチングプロセスは、レジストを除去することができるが、パターン依存性のローディング効果が発生することが多い。この場合、除去処理は、分離されたフィーチャと、密にパターニングされている領域とで異なる。このようなドライ化学エッチングプロセスはさらに、収率損失の原因となり得る望ましくない欠陥をレジストパターンに発生させる可能性がある。また、レジストのLWR/LERに対処するべく用いられるプロセスはいずれも、パターニングすべきフィーチャのクリティカルディメンション(CD)に関して厳密な制御を維持するべく、本来のレジスト属性、例えば、レジストの高さ、幅およびプロフィールには影響を与えないことが重要である。
【0008】
粗いパターンをUVランプに露光することによって深紫外線(DUV)硬化を利用する別の方法では、照射による加熱を利用して粗いラインを円滑化する。この方法では、ラインセグメントの角部分でパターンが後退する望ましくない現象が副次的に発生し、デバイスが利用できなくなってしまう程度までラインを変形させてしまう。
【0009】
ラインまたは他のパターンのフィーチャサイズのCDが照射の回折限界未満の場合、レジストのUVリソグラフィープロセスの回折限界に対処するべく、ダブルパターニングリソグラフィー(DPL)が開発された。DPLが成功するようさまざまな方法が開発されており、セルフアラインダブルパターニングリソグラフィーおよび化学凍結リソグラフィー等が挙げられる。しかし、こういったプロセスはいずれも、コストおよび/または収率に関して、長所と同時に短所も持ち合わせている。
【0010】
上記を鑑みて、非常に小型のフィーチャサイズ、例えば、CDがサブ100nmのデバイスを必要とする技術のためにレジストリソグラフィープロセスを改良する必要性が認められる。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下では、添付図面を参照しつつ本発明をより詳しく説明する。添付図面には、本発明の好ましい実施形態を図示している。しかし、本発明は、多くの異なる形態で実施し得るものであり、本明細書で記載する実施形態に限定されると解釈されるべきではない。これに代えて、これらの実施形態は、本開示を完全に網羅して説明するために記載されているのであり、当業者は本発明の範囲を十分に理解するであろう。複数の図面にわたって同様の参照番号が用いられている場合、同様の構成要素を意味する。
【0030】
上述した方法に関連する問題点を解決するべく、新規且つ進歩的な基板パターニング方法および基板パターニングシステムを記載する。具体的には、本開示は、レジストフィーチャの品質を改善するべく、例えば、レジストフィーチャのLWRおよびLERを改善するべく、イオン注入プロセスを利用する技術を主に利用する。本明細書で開示するプロセスは、幅の狭いフィーチャ、例えば、非常に小さいピッチのアレイに組み込まれるフィーチャを形成するプロセスと共に利用され得るものである。非常に小さいピッチとは、例えば、約250nm未満のピッチである。このようなプロセスは、従来のDUVリソグラフィー、ダブルパターニングリソグラフィー、セルフアラインダブルパターニングリソグラフィー、および、他のリソグラフィープロセスを含む。しかし、当業者であれば、本明細書に開示する技術は、特定のリソグラフィー技術または特定の範囲のレジストフィーチャ寸法と組み合わせての利用に限定されるものではないと認めるであろう。
【0031】
本発明の一部の実施形態では、非常に小さい寸法のレジストフィーチャを処理するべくプラズマ浸漬注入プロセスを利用する。3次元(3D)構造を処理する新規の方法を含む幾つかの実施形態を開示する。説明を明確且つ簡略にするべく、実施形態は、複数の角度に配向される面を持つフォトレジストを処理する技術として説明する。しかし、当業者であれば、本開示はこれらに限定されないと認めるであろう。さまざまな角度に配向されている面を持つ任意の種類の構造であってよい。
【0032】
実施形態はさらに、プラズマを用いる基板処理システムを採用する技術として説明される。しかし、当業者であれば、他の種類の原子より小さい粒子、原子粒子、または、分子粒子を利用する基板処理システム、例えば、プラズマスパッタリングおよびビームラインイオン注入システムは本開示の範囲に含まれるものと認めるであろう。
【0033】
図3Aを参照すると、本発明の一実施形態に応じて3D構造を処理する基板処理システム300が図示されている。
図3Bは、フォトレジストを処理する粒子の角度分布を示す図である。両図は、必ずしも実寸に即したものではない。
【0034】
図3Aに図示しているように、システム300は、基板112と、基板112を支持しているプラテン304とが内部に配置されている処理チャンバ302を備えるとしてよい。本開示では、基板112は、金属基板、半導体基板、または、絶縁基板であってよい。本開示では、パターニングフォトレジストが基板上に設けられているとしてよい。パターニングフォトレジストは、未硬化部分をはがした後に基板上に残っているフォトレジストの硬化部分であるとしてよい。
【0035】
システム300はさらに、処理チャンバ302に含まれるプラズマ306を生成するプラズマ源(不図示)を備えるとしてよい。プラズマ源は、インサイチュ方式またはリモート方式のどちらであってもよく、誘導結合プラズマ源、容量結合プラズマ源、ヘリコン源、マイクロ波源、または、任意のその他の種類のプラズマ源であってよい。当業者であれば、プラテン304がプラズマ源として動作する場合もあることを認めるであろう。
【0036】
プラズマ306と基板112との間には、1以上のプラズマシース修正部312が設けられているとしてよい。本実施形態によると、プラズマシース修正部312では、一対の修正部材312aおよび312bが互いに間隙「y」を空けて設けられているとしてよい。別の実施形態によると、修正部312は、一の修正部材を含むとしてよい。しかし、他の実施形態において、修正部312は、3つ以上の修正部材が互いに離間して設けられており、間には間隙が設けられているとしてよい。
【0037】
プラズマシース修正部312は、プラズマシースの電界を調整可能であるとしてよい。一部の実施形態によると、プラズマシース修正部312は、正または負に荷電しているとしてよい。プラズマシース修正部312は、電気的に絶縁性の材料(例えば、石英)または導電性材料(例えば金属)、または、これらの組み合わせで形成されるとしてよい。これに代えて、プラズマシース修正部312は、半導体材料(例えば、Si)で形成されるとしてよい。システム300は複数の修正部材を有するとしてよく、それぞれの修正部材は材料が同じであってもよいし、または、異なる材料であってもよい。例えば、システム300は、2つの修正部材312aおよび312bから構成されるプラズマシース修正部312を備えるとしてもよい。修正部材312aおよび312bは、同じ材料で形成されるとしてもよいし、異なる材料で形成されるとしてもよい。
【0038】
プラズマシース修正部312が2つ以上の部材で構成される場合、部材は同一平面上または複数の異なる平面上に設けられるとしてよい。例えば、処理システム300が備えるプラズマシース修正部312は、2個の修正部材312aおよび312bを有するとしてよく、これらの部材は、基板112とそれぞれの修正部材312aとの間の垂直方向の間隙「z」が同じになるように、同一平面内に設けられるとしてよい。別の実施形態では、修正部312は、2つの修正部材312aおよび312bを有するとしてよく、修正部材312aおよび修正部材312bは、基板112との間の垂直方向の間隙「z」の値が異なるように離間させるとしてよい。プラズマシース修正部を備える処理システムの更なる説明については、同時係属中の米国特許出願第12/417,929号(出願日:2009年4月3日、米国特許第7,767,977号として発行)、および、第12/418,120号(出願日:2010年4月3日)、第12/644,103号(出願日:2009年12月22日)、および、第12/848,354号(出願日:2010年8月2日)に記載されている。各出願の内容は全て、参照により組み込まれる。
【0039】
動作について説明すると、インサイチュ方式またはリモート方式で生成されるプラズマを、処理チャンバ302の内部に含めるとしてよい。プラズマ306は、所望の種の電子、プロトン、および、原子イオンまたは分子イオン、中性子、および、ラジカルといったフラグメントを含むとしてよい。本開示では、プラズマフラグメントを用いて、基板112上にドーピング、エッチング、または材料の成膜を実行するとしてよい。プラズマ306内に含まれている種は、1以上の特定の種に限定されない。種は、第1族および第3A族−第8A族の1以上の元素を含むとしてよい。プラズマ306に含まれる種の例を挙げると、水素(H)、ヘリウム(He)またはその他の希ガス、炭素(C)、酸素(O)、窒素(N)、ヒ素(As)、ホウ素(B)、リン(P)、アンチモン、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、カルボラン(C
2B
10H
12)またはその他の分子化合物があるとしてよい。
図3Aに図示されているように、プラズマ306はさらに、周縁部の近傍にプラズマシース308を含むとしてよい。本実施形態では、プラズマシース308は、正電荷イオン310を含むとしてよい。
【0040】
図面に図示されているように、プラズマシース308は、プラズマ306とのシースの境界によって表されている。しかし、プラズマシース308はプラズマ306のエッジからプラズマ306の周囲の物体の表面に向って有限距離だけ延在するもの、例えば、プラズマシース308は基板112の表面まで延在すると理解されたい。
【0041】
プラズマシース308またはプラズマ306に含まれるイオン310は、基板112にDCバイアス源またはRFバイアス源(不図示)によってバイアスが印加されているので、基板112に向うとしてよい。基板112に印加されるバイアス信号は、DCまたはRFのいずれかに関わらず、連続信号またはパルス状信号であってよい。
【0042】
プラズマシース修正部312は、プラズマシース308の形状を修正して、イオン310の入射角分布を制御するとしてよい。例えば、プラズマシース修正部312は、プラズマシース242内の電界を修正するとしてよく、そして、プラズマシース308の形状を修正するとしてよい。本実施形態によると、プラズマシース修正部312は、プラズマシース308の少なくとも一部分を、バルクプラズマ306に対して凹形状のプラズマシース308b(修正済みシース308b)、または、バルクプラズマ306に対してドーム形状(凸形状)のプラズマに修正するとしてよい。基板112に比べると、修正済みシース308bの形状は、基板112が画定している平面に対して平行でないとしてよい。基板112にバイアスが印加されている場合、基板112に向って誘引されるイオン310は、広い範囲にわたる入射角で、修正部材312aと修正部材312bとの間の間隙「y」を通過するとしてよい。従来のプラズマを利用した処理システムでは、基板に最も近いプラズマシースは、基板に対して平行になっている。基板にバイアスが印加されると、イオンは、プラズマシースに対して略垂直な経路で移動するので、基板に対して略垂直な経路で移動する。この結果、従来のプラズマ処理システムのイオンは、入射角の範囲が−5度から+5度の範囲内であり、通常の入射角はゼロ度に近い。しかし、本実施形態によると、イオン310の入射角は、修正済みシース308bで修正されるとしてよい。
図3Aに図示されているように、修正済みシース308bは、基板に対する角が一定ではない。このため、修正済みシース308bに対して垂直に進むイオン310は、さまざまな角度で進むとしてよい。基板112に対してイオン310が修正済みシース308bのさまざまな部分から進むと、入射角がさまざまな角度となるので、イオン310の入射角の範囲が大きくなるとしてよい。
図3Bに図示されているように、イオン310の入射角は、約0度を中心として約+60度から約−60度の範囲内であるとしてよい。一部の実施形態によると、イオン310の入射角はさらに、プラズマシース修正部312が形成する電界によって修正されるとしてよい。
【0043】
これらに限定されないが、プラズマシース修正部312の構成および特性等、複数の要因に基づき、イオン310の入射角をさらに修正するとしてよい。このような要因の例には、修正部材312aと修正部材312bとの間の水平方向の間隙(y)、修正部312と基板112との間の垂直方向の間隙(Z)、基板112と修正部材312aとの間の垂直方向の間隙(z)と、基板112と修正部材312bとの間の距離(z)との間の差分(不図示)、および、修正部312の電気特性が含まれるとしてよい。他のプラズマ処理パラメータはさらに、イオン310の入射角および/または入射角分布を調整するべく、調整されるとしてよい。更なる説明は、同時係属中の米国特許出願第12/418,120号、第12/417,929号、第12/644,103号および第12/848,354号に記載されているとしてよい。各出願の内容は全て、上述したように、参照により本願に組み込まれる。
【0044】
プラズマシース312を修正することによって、さまざまな角度に配向されている複数の面を持つ3次元構造を、コンフォーマルまたは等方的に処理するとしてよい。後述するように、修正済みプラズマシース312は、例えば、3Dフォトレジストレリーフ等の3D構造の複数の表面を、同時に等方的に処理するために利用されるとしてよい。
【0045】
図4を参照すると、本発明の一実施形態に係る、3D構造を処理する技術が図示されている。本実施形態において、当該技術を用いて、3Dフォトレジストレリーフ114aのLERおよびLWRを低減させるとしてよい。上述したように、LERおよびLWRは、光リソグラフィーを用いる場合に、フォトレジストの未硬化部分を除去した後で、3Dフォトレジストレリーフ114aに見られるとしてよい。本実施形態によると、フォトレジストレリーフ114aに見られるLERおよびLWRは、フォトレジストレリーフ114aが持つ複数の面に対してプラズマシース修正部312を利用してプラズマ支援ドーピング(PLAD)処理またはプラズマ浸漬イオン注入(PIII)処理を実行することによって、低減されるとしてよい。当業者であれば、図面は必ずしも実寸に即したものではないことを認めるであろう。
【0046】
図4に示すように、側面114a−1および上面114a−2を持つ3Dフォトレジストレリーフ114aが基板112上に設けられているとしてよい。プラズマシース修正部312を含むプラズマ処理システムの内部に、基板112およびフォトレジストレリーフ114aが設けられており、基板112の近傍にはプラズマが配置されている。この後、プラズマに含まれるイオン310は、プラズマシース修正部材312aとプラズマシース修正部材312bとの間の間隙を通過するように、フォトレジストレリーフ114aの表面に向って、方向付けられるとしてよい。図面に図示されているように、イオン310は、複数の入射角で進むとしてよい。
【0047】
本実施形態では、イオン310は、フォトレジストレリーフ114aの上面114a−2および側面114a−1に注入されるとしてよい。さまざまなイオン種を注入するとしてよいが、本発明ではヘリウム(He)またはアルゴン(Ar)イオンを注入するとしてよい。レジストにイオンを照射する時間は多岐にわたるとしてよいが、照射時間は約1秒から数分の間であるとしてよい。
【0048】
本発明に応じて構成されたプラズマ処理システム(PSMシステム)がLERにどのような効果をもたらすか調べるべく、実験を行った。本明細書で用いる場合、「PSMシステム」または「PSMプラズマシステム」という用語は、プラズマシース修正部を利用してプラズマの一部分に隣接して配置されている基板に向ってイオンの角度分布を広範囲に分布させるプラズマ処理システムを意味する。「広い」、「広範囲」または「広い角度範囲」といった用語は、イオン入射角に関連して用いられ、合計で約5度以上の範囲にわたる一連の角度を意味する。プラズマシース修正部は、
図3Bに示すように、広い角度範囲にわたって分散しているイオンドーズを含む照射を実行するべく利用された。
図4を再度参照すると、公称CDが約40nmである一連のレジストラインに、3keVでHeのプラズマを照射した。Heイオン310をフォトレジストレリーフ114aの上面114a−2および側面114a−1に3−4keVで注入することによって、LERは5.6nmから3.2nmに改善し、LERおよびLWRについては約40%の改善が見られた。プラズマシース修正部312を用いてHeイオンを注入することによって、フォトレジストレリーフ114aの複数の表面114a−1および114a−2が同時に等方的に改善される。
【0049】
また、フォトレジストレリーフ114aのクリティカルディメンションの縮小は、最小限に抑えられた。具体的には、処理前に測定されたCDは39.1nmであったが、処理後には37.6nmに縮小したのみであり、レジストレリーフ114aにHeイオン310を複数の入射角で注入した場合には縮小は4%に留められた。ファセッティングまたはスパッタリングも最小限に抑えられた。PLAD処理またはPIII処理は、低エネルギープロセスであるので、イオン310が注入される深さは非常に浅い。このため、イオン注入によってフォトレジストレリーフ114aに発生するいかなる変化も、例えば、レジスト縮小および/またはスパッタリングも、最小限に抑えられるとしてよい。
【0050】
さらに、フォトレジストレリーフ114aの複数の表面の同時且つ等方的な硬化が見られた。フォトレジストレリーフ114aが同時且つ等方的に硬化することは、ダブルパターニングリソグラフィー(DPL)プロセスまたはセルフアラインダブルパターニングリソグラフィー(SADPL)プロセスを実行するべく追加で光リソグラフィープロセスが実行される場合に有益であるとしてよい。DPLまたはSADPLの場合、最初のリソグラフィープロセスで形成される2つのフォトレジストレリーフの間にさらにフォトレジストレリーフを生成するべく別のリソグラフィープロセスを追加で実行する。追加でフォトレジストレリーフを形成すると、レリーフ間の距離が小さくなるとしてよく、基板112に形成されるトレンチの幅をさらに小さくすることになるとしてよい。追加で行われるリソグラフィープロセスでは、化学処理を実行するとしてよい。実行されると、最初のリソグラフィープロセスで形成されたフォトレジストレリーフの構造に悪影響が出る場合があるとしてよい。本実施形態によると、等方的に硬化するフォトレジストレリーフ114aは、追加リソグラフィープロセスに対応付けられる化学処理に対する耐性を持つとしてよい。このため、DPLまたはSADPLを実行する追加リソグラフィープロセスが可能になるとしてよい。
【0051】
本発明の他の実施形態によると、イオンのエネルギーおよび種類は、
図4に示すように、複数の角度でイオンを衝突させるパターニングレジストフィーチャのLERまたはLWRを最適化するように選択されるとしてよい。レジストフィーチャの粗度にイオンの種類およびエネルギーが与える影響を
図5および
図6に図示する。
図5は、従来のプラズマ構成を利用し、本発明に係る構成のプラズマシース修正部を利用するプラズマシステムから引き出されたイオンの照射前および照射後(「基準」)のレジストラインのLERを図示している。照射前は、LERは約4.4nmである。プラズマをLERに照射して得られる効果は、Siプラズマ、ArプラズマおよびHeプラズマ等のさまざまなプラズマについて示している。
図5はさらに、ArおよびSiについて、同じ種を用いてイオンエネルギーを変化させた場合の、LERへの影響を示す。
図5に示す全てのプラズマ条件では、LERが大幅に低減している。「大幅」という用語は概して、本明細書においてLERおよびLWR等の粗度パラメータと共に用いられる場合、所与の値が約5%以上減少することを意味する。従来のプラズマ構成を利用すると、2keVおよび8keVのシリコンイオンの場合、プラズマ照射後のLERは、それぞれ約3.9nmおよび4.0nmまで低減し、2keVおよび8keVのArの場合は、LERはそれぞれ、約3.8nmおよび3.7nmまで低減した。しかし、本発明に係るPSM構成を利用すると、Arプラズマを4keVで照射した場合、および、Heプラズマを3keVで照射した場合に、はるかに大きな低減幅が見られる。LERは、それぞれ約2.5nmおよび2.3nmまで低減する。それぞれ、LERが43%および48%低減したことになる。
【0052】
LERおよびLWRの改善に加えて、本発明の実施形態は、
図6に示すように、低周波数粗度および中周波数粗度を改善する。低周波数粗度および中周波数粗度の改善は、電界効果トランジスタのチャネル長L
effに影響を与えるので、デバイス性能を改善する上で特に有用であるとしてよい。公知であるが、パターニング基板の物理的なゲート寸法のバラツキは、その下方にゲート構造をパターニングするために利用されるレジストフィーチャのLWRと直接関連している。ゲートと活性領域との重複部分が比較的小さいデバイスの場合、中周波数粗度成分がデバイス性能を主に左右し、ゲートと活性領域との重複部分が比較的大きいデバイスの場合、中周波数粗度成分および低周波数粗度成分の両方がデバイス性能に影響を与える。
【0053】
上記を鑑みると、パターニングレジストフィーチャの最適ライン粗度は、パターニングレジストを用いて下方の基板に製造すべきデバイスの性質に応じて決まるとしてよい。したがって、本発明の実施形態において、フィーチャの粗度の低減を最適化するように一連のパラメータを調整するとしてよい。これらのパラメータには、他にもあるが、イオンの種類、イオンのエネルギー、レジストの種類、レジストフィーチャサイズ、プラズマシース修正部の幾何学的な特徴が含まれるとしてよい。
図3Aを再度参照すると、プラズマシース修正部の幾何学的な特徴には、水平方向の間隙Y、垂直方向の間隙Z等の要素が含まれる。さらに詳細な内容については、同時係属中の米国特許出願第12/418,120号、第12/417,929号および12/644,103号に開示されている。
【0054】
本発明の別の実施形態によると、パターニングレジストフィーチャには、プラズマシース修正部312によってさまざまな角度でイオンドーズを実行することに加えて、電磁波を照射するとしてもよい。特に明記しない限り、「電磁波」という用語は、本明細書で用いられる場合、UV−可視−赤外(IR)スペクトル範囲内の放射線を意味する。本発明者達は、イオン衝突および電磁波を組み合わせることで、加算的または相乗的に、レジストフィーチャの粗度を無くす働きがあることを認めた。
【0055】
一実施形態によると、一連のパターニングレジストフィーチャにイオンドーズを供給するために用いられるプラズマはさらに、同じパターニングレジストフィーチャにUV線を供給するためにも利用される。プラズマに含まれるイオン化ガスは通常、可視線を放出することに加えて、紫外スペクトル範囲のエネルギーを持った放射線を放出する。本発明の実施形態で供給されるプラズマ等のプラズマから放出される放射線は、励起された種が低エネルギー状態に戻るので、励起された種について緩和プロセスが発生するという特徴を持つことが知られている。ArプラズマまたはHeプラズマ等、不活性ガスのプラズマを含むプラズマにおいて通常、多くのこのような緩和プロセスが発生する。IR線、可視光またはUV線を出射させることになる緩和プロセスは、適切なエネルギーの光子を供給して、レジストフィーチャに衝突させ、フォトレジストを変化させるとしてよい。公知のフォトリソグラフィー処理を利用してUV線を照射することで、まだ照射していないポジ型のフォトレジストに化学変化を発生させて、照射部分はその後現像液で溶解させる。本発明では、IR線、可視光またはUV線をパターニングレジストフィーチャ(言い換えると、最初のレジストのうち、パターニングレジストフィーチャを形成するために利用された最初のリソグラフィープロセスで照射されていない一部分であって、現像後に基板上に残っている部分)に照射することで、化学変化および/または物理変化を発生させるとしてよい。パターニングレジストフィーチャはリソグラフィー処理後に焼成されるが、UV線等の電磁波の照射は、パターニングレジストを軟化させるために、または、プラズマによるイオン衝突に反応しやすいようにパターニングレジストを変化させるために、十分な大きさであるとしてよい。このようにして、パターニングレジストフィーチャの表面粗度を改善するべく、イオン衝突を電磁波と共に利用するとしてよい。
【0056】
以下では、説明のため、パターニングレジストフィーチャを修正するべくプラズマからUV線を照射する本発明の実施形態を記載する。PSMプラズマからのイオン束を広い角度範囲で照射している間にパターニングレジストにインサイチュ方式でUV光子を照射することで、広い角度範囲のイオン束のみを照射した場合に比べて、発生するレジスト粗度への影響が大きくなるとしてよい。このようにして、LERおよびLWRは、UV線ドーズが供給されない場合に比べて、より効果的に低減するとしてよい。しかし、本発明はさらに、広い角度範囲でのイオン束の照射と組み合わせて、他の波長の電磁波、例えば、波長が可視−(IR)スペクトルにある光等を利用する方法およびシステムを含む。したがって、本発明は、波長がUV−可視−IR波長帯域(スペクトル)にある放射線をパターニングレジストに供給するシステムおよび方法を含む。
【0057】
本発明の実施形態によると、プラズマ特性および/またはプラズマシステム構成は、広い角度範囲のイオンドーズ、および、レジストにイオンドーズを照射することで発生し得る粗度低減効果を高める効果を持つUV線ドーズの両方を供給するように調整される。
【0058】
プロセスの一例を挙げると、レジストシステム、プラズマガス組成、および、一連の動作条件は、PSMプラズマシステムで利用されることを考えて選択され、内部で形成されるプラズマは、選択されたレジストシステムで変化を発生させる一連の周波数でUV線を供給する。プラズマガス組成は、例えば、ArまたはHe等の一種類のガスに基づいて決まるとしてもよいし、複数種類の不活性ガスの混合物(Ar/He、Ar/Ne等)、フッ化炭素/不活性ガスの混合物、酸素を含むガス組成物またはその他のガス組成等、複数のガスを混合させるとしてもよい。
【0059】
レジストシステムは、公知のレジスト、例えば、193nmまたは248nmの光リソグラフィーシステムで利用されるように構成されているレジストであってよい。方法の一例によると、ガス組成物およびプラズマ動作条件は、100nmから300nmの範囲内のUV線を生成するべく選択されるとしてよい。この範囲のUV波長は、特に、レジストの表面領域において、レジストシステムにおける化学結合を変化させる効果があるとしてよい。例えば、Ar/フッ化炭素プラズマ放電がUV線を発生させることが公知である。実施形態例によると、UVフォトレジストシステム、例えば、公知のメタクリレート系システムを、パターニングフォトレジストシステムを形成するべく利用するとしてよい。これらの種類のポリマーは、適切な波長のUV線を照射すると除去され易い酸素含有ペンダント基を持つとしてよい。この結果、主鎖が切断されるか、または、ポリマー構造および/またはポリマー組成に影響を及ぼす他の反応が発生する可能性がある。
【0060】
PSMプラズマから引き出したUV線を用いてパターニングフォトレジストのポリマー構造および/またはポリマー組成を変化させることによって、同様にPSMプラズマから供給される広い角度範囲のイオン束は、フォトレジストフィーチャの粗度をより効率的に低減するとしてよい。例えば、フォトレジストフィーチャの少なくとも一部は、UV線の照射によって発生する化学変化/物理変化によって軟化するとしてよい。この軟化によって、フォトレジストフィーチャにイオンを衝突させて実行する円滑化が容易になるとしてよい。
【0061】
しかし、UV照射が過度になると、レジストフィーチャの分解が望ましくない程度に到達したり、または、レジストの除去が過剰になったりするので、CD損失が過剰に成ったり、または、表面粗度の改善に失敗したりするとしてよい。したがって、本発明の実施形態は、加算的または相乗的に、プラズマから引き出されたイオンでパターニングレジストフィーチャのLWRおよびLERを改善するのに適切なUV線ドーズ量を供給することに関する。
【0062】
図7は、本発明の一の構成に応じたPSMプラズマシステム700を示す詳細図である。システム700はプラズマ706を含み、プラズマ706から、イオン710およびUV光子714が基板112に向けて放出される。システム700は、チャンバ壁および基板ホルダ(共に不図示)を備えるとしてよい。PSM712は、部材712aおよび712bを有しており、プラズマシース境界708aに、部材712bと部材712aとの間の開口領域の上方において、凹型領域708bが形成される。イオン710は、
図3Aから
図6を参照しつつ上述したように、図示しているように広い範囲の角度にわたって基板112に衝突して、レジストフィーチャのLERおよびLWRを改善させるとしてよい。また、プラズマ706から放出されるUV光子714の一部は、基板710に供給されるとしてよい。例えば、プラズマ706が点火されている間、IR線、可視光およびUV光子を含む電磁波が広い範囲の角度にわたって放出されるとしてよい。図示を簡略化するべく、基板112に垂直に向かう光子のみが図示されている。
【0063】
本発明に応じて、以下で詳細に説明するが、プラズマ706およびプラズマシース修正部712は、基板112に対するUV源として機能する。プラズマガス組成物、PSM材料およびPSM712の幾何学的構造を適宜選択して、基板112へのUV線714の照射を調整するとしてよい。
【0064】
図7Aは、PSM716がUV光子714を透過させて、プラズマ706から放出される光子を基板112の全面に衝突させるシステム構成702を図示する。PSM716は、所望の周波数範囲にわたってUV線に対する透過率が高くなる材料で構成されるとしてよい。例えば、上述したように、基板112上に設けられているパターニングレジストフィーチャ(不図示)は、波長帯域が180nmから250nmのUV線に対して感度を持つフォトレジストを含むとしてよい。言い換えると、フォトレジストは、180−250nmの波長の放射線が照射されると、化学変化および/または物理変化が発生しやすいとしてよい。したがって、
図7Aに示すように、PSM716は、UV光子714を基板112全体に透過させるべく、180nm−250nmの範囲内の放射線に対する透過率が高い材料を含むとしてよい。例えば、PSM716は、カットオフ周波数が約180nm未満の溶融石英材料を含むとしてよい。これに代えて、130nm−150nmの範囲内の放射線に対して感度を持つフォトレジストと共に利用する場合、PSM716は、約130nmの波長までの短波長について透過率が高いCaF2材料を含むとしてよい。PSM716は、さまざまな絶縁体から構成されるスタックを含む複数の材料を含むとしてよい。PSM716のバルク部分は、1以上の面に薄膜でコーティングされている。酸化アルミニウム、酸化シリコン、バンドギャップの大きい半導体等の材料は、少なくとも部分的にPSM716を形成するべく利用されるとしてよい。
【0065】
UV線を透過するPSM716を提供することによって、本実施形態は、プラズマ706が存在する中でUV線およびイオン衝突の両方を基板112に照射しやすくなる。例えば、PSM716は、PSM716と基板112との間で相対的な横方向の並進運動を実現する機構(不図示)を有するとしてよい。この機構がアクティブ化されると、PSM716の開口をLと定義されている+/−方向に基板112全体の上方で移動させるとしてよい。この結果、スキャンによって基板112全体にイオン710を照射する。このようなスキャンを1回または複数回行う間、イオン710は、どの時点においても、横方向の寸法wで画定される基板112の一部のみに照射される一方、UV線714は、スキャン中を通して基板112全体に照射し得ることは明らかである。したがって、
図7Aに示す構成は、所望の化学変化または物理変化を発生させるべく、イオン束、例えば、LWRまたはLERを低減するためのイオン710に比べて、比較的大量のUV束を必要とするレジストシステムに利用される。
【0066】
図7Bは、PSM718がUV光子714を遮蔽して、部材718aと部材718bとの間に形成されている開口の下方の領域を除き、プラズマ706から放出されたUV光子が基板112に衝突しないようにしているシステム構成704の一例を示す図である。PSM718は、UV光子714を遮蔽する任意の材料を含むとしてよい。この構成では、スキャン機構が利用される場合、どの時点においても、基板112のうちイオン束を受け取る領域(領域「w」と図示している)は、UV光子(領域「y」として図示している)を受け取る領域と同等または幾分大きいとしてよい。したがって、
図7Bの構成は、LWRまたはLERを低減する広い角度範囲のイオン束と共に作用する所望の化学変化または物理変化を発生させるべく、イオン束に比べて、相対的に少量のUV束を必要とするレジストシステムに利用可能であるとしてよい。
【0067】
図7Cは、PSM720が部分的にUV光子714を遮蔽して、プラズマ706から放出されるUV光子が、光子波長に基づき、PSM720によって選択的に透過されるシステム構成705を示す図である。例えば、PSM720は、第1のUV範囲を選択的に透過させて、第2のUV範囲を遮蔽するとしてよい。この選択性は、PSM720を製造する際に公知の材料を利用することで実現され得る。酸化物材料、例えば、シリカ系材料にドーパントを添加すると、シリカのUV範囲での透過率が変更され得ることは公知である。このように、PSM720は、UVスペクトルの一部分でのみUV線を透過させるバルク材料で構成されるとしてよい。これに代えて、PSM720は、特定範囲のUV波長のみを通過させるフィルタとして機能する層構造を含むとしてよい。例えば、PSM720は、遮蔽波長帯域、つまり、PSM720が透過させない波長帯域を挟んで分離している2つの異なる波長帯域を通過させるように構成されているとしてよい。このようなフィルタは、複数の酸化物層、半導体層および酸化物層、および、他の組み合わせを含むとしてよい。多層構造は、例えば、複数の同様の厚みの層を含むとしてもよいし、または、1以上の表面が薄膜でコーティングされているバルク層を含むとしてもよい。したがって、
図7Cの構造では、どの時点においても、プラズマ706から放出される光子の全てのUV波長(光子714a、714b)が、領域「y」において基板122に到達する一方、より大きな領域Lにおいては、フィルタリングされない波長714bのUV光子のみがPSM720を透過して基板112に到達している。
【0068】
このように、
図7CのPSM構成は、選択波長帯域(714b)でイオン710によってLWRを低減させ、好ましくない範囲(714a)は、LWRの低減に利用されず、および/または、LWRまたはその他のレジスト特性、例えば、更なるリソグラフィー処理への耐性(レジスト「硬度」)に悪影響を与えるようなレジストシステムに利用され得る。
【0069】
本発明の別の実施形態では、パターニングレジスト構造に、
図3Aおよび
図7から
図7Cに図示している構造等のPSMを利用することで、広い角度範囲のイオン束が照射されている間、基板温度は調整され得る。
図8は、本発明に係る構成のPSMを備えるようにプラズマシステムを利用して、4keVのArイオンをさまざまな基板温度でレジストフィーチャに衝突させる実験の測定結果を示す。室温から摂氏75度まで基板温度を昇温させると、Arイオン処理によるCD損失が低減され、LWRを大幅に改善する。基板温度の上昇幅が大きくなると、LWR/LERが大きく改善すると考えられたい。しかし、基板温度の昇温の程度は、上昇後の温度で分解、軟化または溶融が始まると、制限されるとしてよい。
【0070】
上述したシステム、方法および組成の例は概して、粗度を改善するべく任意に組み合わせて利用して、例えば、LWR/LERの低減、高周波数粗度、低周波数粗度および中周波数粗度のバラツキの低減、および、同様のパターニングレジスト属性の低減を実現するとしてよい。
【0071】
図9は、本発明の実施形態に係る、パターニングレジストフィーチャの粗度を低減する方法に含まれるステップの一例を示す要約図である。一部のステップについては、黒丸で示す選択基準がさらに適用されるとしてよい。そのような選択基準は、方法のサブステップの一例を含むとしてよい。ステップ902において、レジストプロセスプロフィールを決定する。プロセスプロフィールは、例えば、パターニングフォトレジストフィーチャを形成するために用いられているレジストの種類を含むとしてよい。例えば、業界基準のレジストであってもよいし、または、特定用途向けに開発されたレジストプロフィールであってよい。レジストプロセスプロフィールはさらに、パターニングレジストフィーチャを生成するべく利用されるフォトリソグラフィー処理の種類を含むとしてよい。例えば、標準的なリソグラフィープロセスであってよく、または、本発明が実現するプラズマ処理の後利用される追加フォトリソグラフィー処理ステップに対する耐性を持つロバスト性の高いレジストを必要とするダブルパターニングプロセスを含むとしてよい。
【0072】
ステップ904において、適切なプラズマイオンプロフィールを提供する。「プラズマイオンプロフィール」という用語は、パターニングレジストを処理するために用いられるプラズマのパラメータであって、基板に供給されるイオンのエネルギーおよび種類を含むパラメータを意味する。
図5および
図6に示すように、これらのパラメータは、LWR/LERの低減、具体的には、小および中の範囲の粗度の低減に強い影響力を持つとしてよい。プラズマイオンプロフィールは、プラズマ浸漬注入システムにおいて、パターニングレジスト層を含む基板が当該システム内に載置されるとプラズマを発生させるべく、PSMプラズマを操作する制御システムに供給されるとしてよい。
【0073】
適切なプラズマイオンプロフィールはさらに、適切なイオンドーズに関する情報を含むとしてよい。このドーズに関する情報は、LWRの目標値等の設計基準、および、パターニングレジストに実行される追加処理工程群等のプロセス因子に基づいて決まるとしてよい。例えば、目標とするデバイス設計は、レジストフィーチャのLWRおよび/または低周波数粗度が目標値であることを要件としているとしてよい。このため、レジストフィーチャを製造するために用いられる第1のリソグラフィープロセスに要件を課す。第1のリソグラフィープロセスは、第2のリソグラフィープロセスが実施されるダブルパターニングプロセスフローの一部であってよい。所与のイオンエネルギーおよび角度分布を持つ場合、第1のイオンドーズが、第1のリソグラフィープロセスによってパターニングレジストのLWRの最大低減幅を実現するという効果を奏し、イオンドーズを高くしても実質的に粗度に影響を与えることはないことは、公知であるか、または、実験から導き出されるとしてよい。さらに、第1のイオンドーズよりも大きい第2のイオンドーズは、パターニングレジストを硬化させる上で、第1のイオンドーズよりも効果的であることは、公知であるか、または、実験から導き出されるとしてよい。このように、第2のイオンドーズをパターニングレジストに照射することによって、第2のリソグラフィープロセスをレジストに適用した場合のCD損失またはその他の悪影響が低減されるとしてよい。したがって、適切なイオンドーズとは、必要なLWR、および、レジストを第2のリソグラフィープロセスに備えるために必要なレジスト硬化の両方を実現する第2のイオンドーズであってよい。
【0074】
別の例を挙げると、LWRが第1のイオンドーズで最低値に到達するが、第1のドーズより大きいイオンドーズで増加する場合、高いイオンドーズを利用するのは好ましくないとしてよい。したがって、最適なドーズは、第1のドーズと第2のドーズとの間になるように選択されるとしてよい。つまり、LWRを最適化することと、第2のリソグラフィープロセスで発生し得る悪影響に備えて硬度を改善することとの間で妥協点を探る。
【0075】
ステップ906において、適切なプラズマ照射プロフィールは、本発明に係るプラズマシース修正部を備えるプラズマイオン注入システム等の処理システムに供給される。「プラズマ照射プロフィール」という用語は、本明細書で用いられる場合、上述したように、ガス種の選択等のさまざまな要因で発生し得るプラズマから得られる電磁波特性を意味する。このプラズマ照射プロフィールは、同じプラズマから引き出されたイオンを衝突させることで得られるレジスト円滑化効果を高めるべく選択されるとしてよい。このように、適切なプラズマ照射プロフィールを提供することは、プラズマを発生させる場合に所望の波長帯域の構成を生成するガス種およびプラズマ動作条件を選択することを含むとしてよい。一例を挙げると、ステップ904でのイオン種の提供およびステップ906でのプラズマ照射プロフィールの提供は、イオンを衝突させることで得られる円滑化効果、および、UVを照射することで得られる、この効果の改善効果の両方を可能とするガス種を選択することを含むとしてよい。例えば、プラズマから引き出され、エネルギーを持つArイオンを照射することによって発生し得る、パターニングレジストフィーチャ円滑化効果を奏する低エネルギーArプロセスが特定されるとしてよい。当該低エネルギーArプロセスはさらに、所与のレジストシステムについて円滑化効果を改善する周波数のUV光子を放出するとしてよい。
【0076】
別の例を挙げると、ステップ904のイオン種の選択およびステップ906のプラズマ照射プロフィールの選択は、第1のガス種が(少なくとも部分的に)イオン衝突に起因し得る円滑化効果を実現し、第2のガス種が(少なくとも部分的に)UV線照射に起因し得る、円滑化効果の強化を実現する複数のガス種を選択することを含むとしてよい。例えば、プラズマから引き出されたエネルギーを持つArイオンを照射したことに起因し得るパターニングレジストフィーチャについて円滑化効果を実現するArイオンを利用するプロセスが特定されるとしてよい。また、フッ化炭素種は円滑化効果を向上させる効果を持つエネルギーのUV光子等の放射線を放出することが、公知であるか、または、実験から分かっているとしてよい。したがって、パターニングレジストフィーチャに対して、効果的にイオンを衝突させると共に、円滑化効果が向上するように効果的に放射線を照射することが可能なAr/フッ化炭素種の混合物を含むプラズマガス組成が決定されるとしてよい。
【0077】
ステップ908において、適切なPSM構成が提供される。これは、適切なPSM形状、および、適切な一連のPSM形成材料特性を提供することを含むとしてよい。適切な一連のPSM形成材料特性は、対象となる波長帯域における電磁波の適切な透過率を含むとしてよい(透過プロフィール)。一例を挙げると、PSMは、フォトレジストを変化させる効果を奏する波長帯域でUV線を透過させるように設定されるUV透過プロフィールを持つ。
【0078】
上述したように、本発明に係るプラズマシース修正部は、基板に対する法線方向を中心とした約+/−60度の範囲にわたって、広い角度範囲のイオン束を供給するとしてよい。しかし、この分布は、例えば、上述した垂直方向(Z)および水平方向(y)の間隙を相対的に調整することによって、入射イオンの角度の範囲を増減させるべく、特定のレジストシステムおよびレジスト構造に合わせて調整するとしてよい。また、詳細に上述したように、PSMで利用される材料の選択は、パターニングレジストに到達するUV線の量および波長を調整するべく、変更するとしてよい。
【0079】
ステップ910において、パターニングレジストを支持する基板は、PSMプラズマを照射している間、適切な温度に保たれる。これは、例えば、基板温度を室温よりも高い温度まで昇温させて、LWRまたはLERのさらに大きく低減することを含むとしてよい。
【0080】
本明細書で説明する方法は、
図9を参照しつつ上述したステップを含め、例えば、命令を実行可能なマシンで読出可能なコンピュータ可読格納媒体で複数の命令から成るプログラムを有形に具現化することによって、自動化されるとしてもよい。汎用コンピュータは、このようなマシンの一例である。関連技術分野で公知の適切な格納媒体は、これらに限定されないが、読出可能または書込可能なCD、フラッシュメモリチップ(例えば、サムデバイス)、さまざまな磁気格納媒体等のデバイスを含む。
【0081】
上述した本発明の実施形態は概して、表面フィーチャの粗度を低減するべくイオン衝突処理を採用すると同時にこのような円滑化処理で発生し得るクリティカルディメンションの損失を低減するシステムおよびプロセスに関するが、他の実施形態では表面パターニングフィーチャに材料を添加することを目的としてイオン衝突処理を採用する機構を設ける。
図10Aおよび
図10Bを参照すると、本開示の別の実施形態に係る、3D構造を処理する技術を説明するための簡略図が図示されている。本実施形態では、孔の面積を縮小する技術を図示している。本実施形態では、基板500は、金属基板、半導体基板または誘電体基板であるとしてよい。基板500は、孔512を持つとしてよい。本実施形態は第1の半径R
1を持つ孔が設けられている基板を処理することに関連して説明されるが、本開示はこれに限定されない。先述した実施形態のフォトレジストと同様に、本発明に係る基板500は単に、垂直方向に延伸する面を1以上持つ構造であってよい。
【0082】
本実施形態によると、イオン310を複数の入射角で孔512の側壁に向ける。イオンが好ましいが、本発明は、ラジカルまたは他の中性子を含む他の粒子を除外するものではない。孔512の表面に方向付けられるイオン310は、孔512の表面上に堆積させられることにより、第2の半径R
2を持つ境界層522を形成するとしてよい。プラズマシース修正部522を利用することによって、イオン310は、複数の入射角で孔512の表面に方向付けられるとしてよい。この結果、コンフォーマル且つ等方的に堆積が実行されるとしてよく、均一な厚みを持つ境界層522が形成されるとしてよい。さらに、基板500に本来あった孔の半径は、コンフォーマル且つ均一に、R
1からR
2に減少するとしてよい。
【0083】
要約すると、本発明は、パターニングフィーチャ、例えば、フォトレジストの粗度を低減するための新規且つ進歩的な方法およびシステムを提供する。本発明は、供給するイオンおよび他の種がパターニングフィーチャ内に侵入しても侵入深さはわずかに抑えることが出来る、比較的低いイオンエネルギーを利用するシステム、例えば、プラズマ浸漬システムで利用され得る。これによって、レジストパターン属性、例えば、プロフィールおよびCD等に大きく影響を与えることなく、表面円滑化を実現可能にする。法線から離れた角度で大量のイオン束を供給することにより、本発明に係るPSMアーキテクチャは特に、表面粗度の影響を最も直接受けるレジストフィーチャの領域、つまり、レジストの側壁を処理するのに効果的である。本発明の実施形態は、不活性ガスプラズマを利用する実施形態を含め、RIE等のドライ化学プロセスを利用する際に広く見られるパターン依存効果の影響は受けない。さらに、本発明は、プラズマシース修正部を浸漬注入システム等のプラズマ処理システムと共に利用することによって、レジスト処理プロセスを調整する上で大きな柔軟性を持つ。これは、ガス組成、イオンエネルギー、イオン入射角範囲、プラズマ照射プロフィール、PSM透過プロフィールおよび基板温度等、多岐にわたる実験パラメータが、独立して簡便に調整可能であるためである。
【0084】
本発明の範囲は、本明細書で説明した具体的な実施形態に限定されるものではない。本開示の他のさまざまな実施形態および本開示の変形例は、上述の説明および添付図面を参照すれば、本明細書で説明したもの以外にも存在することが当業者には明らかであろう。本発明は、低エネルギーイオンを利用するプラズマ浸漬イオン注入システムで利用されているが、イオン注入以外に、または、イオン注入に加えて、イオン衝突処理もレジストを円滑化させることに貢献するとしてよく、本発明は、低エネルギーイオンを供給可能な他のプラズマシステムで利用されるとしてよい。さらに、本発明は、PSMプラズマから放出されるIR/可視光が表面粗度を低減する効果を持つシステムおよび方法を含む。このような実施形態では、プラズマ照射プロフィールは、少なくとも部分的に、IR/可視光放出特性に基づいて選択されるとしてよい。そして、PSM構成は、IR/可視スペクトルの1以上の範囲におけるPSMの遮蔽特性または透過特性に基づいて選択されるとしてよい。
【0085】
さらに、注入または成膜に加えて、本開示で開示した技術は、フォトレジスト構造以外の構造、または、フォトレジスト構造に対して、エッチングを実行するために用いられるとしてもよい。例えば、本開示で開示される技術は、トランジスタのゲートのクリティカルディメンションを低減するためのフォトレジストトリミングプロセスを実行するために用いられるとしてよい。一の表面に対して一度でO
2+HBrプラズマを利用して実行される従来のトリミングプロセスとは対照的に、本開示に係る技術はエッチング剤(例えば、イオン)を複数の角度で照射し、複数の表面に対して同時に等方的にトリミングプロセスを実行するために、用いられるとしてもよい。このため、トリミングプロセスは、より効率的且つより均一に実行されるとしてよい。このような他の実施形態および変形例は、本開示の範囲内に含まれるものとする。さらに、本開示は特定の目的を実現するべく特定の環境で特定の方法で実施されるものとして本明細書で説明したが、当業者であれば、本開示の有用性はこれらに限定されることなく、本開示は任意の目的を実現するべく任意の環境で実施しても有益であることを認めるであろう。したがって、本開示の主題は、本明細書で説明しているように、本開示の全範囲およびあらゆる意図を鑑みて、解釈されたい。