(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
従来、この種の貯湯式給湯装置の具体例として、特許文献1に記載されたものがある。同文献に記載された貯湯式給湯装置は、貯湯タンクに比較的低温の湯水が長時間滞留した場合に、貯湯タンク内の湯水を外部に排出し、貯湯タンク内の湯水の全量を入れ替えることが可能である。このことにより、貯湯タンク内にレジオネラ菌などの雑菌が繁殖して湯水が飲用などに適さないものとなることを防止することが可能である。
特許文献1では、貯湯タンク内の湯水を外部に排出して湯水の入れ替えを図るための手段として、たとえば
図7に示すような配管構造が採用されている。この配管構造では、貯湯タンク8の上部に接続された出湯管80には、開閉弁としての排水弁V10を備えた排水管部81が分岐接続されている。出湯管80には、開閉弁V11および湯水混合弁V12が設けられており、湯水混合弁V12には、貯湯タンク8内の下部に入水を行なわせるための入水管82に分岐接続された分岐管83が接続されている。
このような構造によれば、貯湯タンク8内の湯水の入れ替え動作を行なう際には、開閉弁V11を閉状態とし、かつ排水弁V10を開状態とすればよく、このことにより排水管部81から排水を行なわせつつ、貯湯タンク8内には入水管82を介して新たな湯水を供給することができる。この場合、湯水混合弁V12については、水側全開状態としておくことにより、分岐管83内の水を出湯口80aに送ることができる。したがって、湯水の入れ替え動作が実行されている際に出湯口80aからの出湯動作が中断される不具合を生じないようにすることができる。
【0003】
しかしながら、前記従来技術においては、次に述べるように、未だ改善すべき余地があった。
【0004】
すなわち、貯湯タンク8の湯水の入れ替え動作時において、入水口82aへの給水流量をQa、排水管部81からの排水流量をQbとすると、出湯口80aからの出湯流量Qcは、Qc=Qa−Qbとなる。したがって、排水流量Qbが多いほど、出湯流量Qcは少なくなる。ただし、排水流量Qbが多いと、貯湯タンク8の湯水の入れ替え動作の所要時間を短くすることが可能であり、従来においては、排水流量Qbを積極的に少なくするための手段は、なんら講じられていない。排水管部81は、外部に排水を行なわせる部分であるため、出湯口80aとは異なり、排水管部81の下流側には大きな流路抵抗を生じさせる配管機器が接続されるようなことはなく、排水管部81を介して湯水を排水する際の流路抵抗は少ない。このため、従来においては、排水流量Qbが多いのが実情であり、その結果出湯流量Qcが少なくなって、この出湯流量Qcが不足し、または不足気味になり易いという不具合があった。このような不具合は、貯湯タンク8の出湯口80aに加熱用熱源機(図示略)を接続した場合に、より顕著となる場合がある。より具体的には、加熱用熱源機の多くは、所定の最小通水量以上の通水が行なわれることを条件として湯水加熱動作を生じるように構成されているため、出湯流量Qcが少ないと、その流量が前記の最小通水量を下回る可能性が高くなり、加熱用熱源機を適切に運転させることが困難となるのである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、前記したような事情のもとで考え出されたものであって、貯湯タンク内の湯水の入れ替え動作の実行時に、出湯流量が不足または不足気味になるといった不具合を適切に防止することが可能な貯湯式給湯装置を提供することを、その課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、本発明では、次の技術的手段を講じている。
【0008】
本発明により提供される貯湯式給湯装置は、入水管および出湯管が接続されている貯湯タンクと、前記出湯管に設けられ、かつ前記出湯管内を流通する湯水と前記入水管に分岐接続された分岐管内を流通する湯水とを混合可能な湯水混合弁と、前記出湯管のうち、前記湯水混合弁よりも上流位置に分岐接続され、かつ開閉動作が可能な排水弁を備えており、この排水弁が開状態とされたときに前記貯湯タンク内の湯水を外部に排水することが可能な排水管部と、を備えている、貯湯式給湯装置であって、
前記出湯管の出湯口に配管接続されて前記出湯口から湯水供給を受け、かつこの湯水の通水量が所定の最小通水量以上であることを条件として湯水加熱動作を実行可能な湯水加熱用熱源機を、さらに備えており、前記排水管部の全体または一部は、この排水管部を利用した湯水の排水が行なわれるときに、前記出湯管から前記排水管部に流れ込む湯水の流量を絞ることが可能な流量絞り構造部として構成され
、前記排水管部を利用した湯水の排水時において前記出湯口から前記湯水加熱用熱源機への出湯がなされるときの出湯量の減少を抑制可能な構成とされていることを特徴としている。
【0009】
このような構成によれば、貯湯タンク内の湯水が排水管部から外部に排出されて、湯水の入れ替え動作が実行される際に、排水管部からの排水流量を少なくすることができる。したがって、貯湯タンク内の湯水の入れ替え動作時において、入水管から分岐管に流れ込んだ湯水を出湯口から出湯させる場合に、その流量が不足または不足気味となる不具合を適切に防止することができる。また、後述するように、貯湯タンク内の湯水の入れ替え時において、貯湯タンク内の湯水が大きく攪拌されることを防止する効果も得られる。
さらに、前記構成によれば、出湯口から出湯される温度が目標給湯温度よりも低い場合には、湯水加熱用熱源機を利用して湯水を目標給湯温度まで加熱することが可能である。本発明では、出湯口から湯水加熱用熱源機に供給される湯水流量を多くすることができるために、通水量が所定の最小通水量未満となって湯水加熱用熱源機が適切に運転されないという不具合が生じ難くなる。
【0010】
本発明において、好ましくは、前記排水管部には、流路断面積が前記出湯管の最小流路断面積よりも小さいオリフィスが設けられている。
【0011】
このような構成によれば、オリフィスを利用した簡易な構成により、排水管部からの排水流量を少なくすることができる。排水管部のうち、オリフィス以外の部分については、たとえば出湯管と同一サイズの管体を用いるなどして構成すればよいため、排水管部の製造コストの上昇も抑制することができる。
【0012】
本発明において、好ましくは、前記オリフィスは、前記排水弁よりも排水方向上流側に設けられている。
【0013】
このような構成によれば、次のような効果が得られる。すなわち、前記とは異なり、オリフィスが排水弁の下流側に設けられている場合には、水の表面張力に起因してオリフィスに水膜が発生し、この水膜によって水が塞き止められて排水弁よりも下流側に水が滞留する現象を生じる虞がある。このような現象を冬季に生じると、滞留水が凍結し、排水が困難となる。これに対し、前記した構成によれば、そのような不具合を適切に防止することができる。
【0016】
本発明において、好ましくは、前記貯湯タンクは、前記入水管から内部への湯水供給が下部から行なわれ、かつ前記出湯管を介しての外部への出湯が上部から行なわれる構成とされ、前記貯湯タンク内における湯水の滞留時間を判断し、かつこの滞留時間が所定の制限時間に達したものと判断したときには、この制限時間に達した湯水の量を判断し、この湯水の量またはこれに余裕を加えた量の湯水を前記貯湯タンクから前記排水管部を介して外部に排出させるように前記排水弁の開閉制御を実行する制御手段を、さらに備えている。
【0017】
このような構成によれば、貯湯タンク内の湯水が所定の制限時間に達すると、排水弁が開き、滞留時間が制限時間に達した湯水の量、またはこれに余裕を加えた量の湯水が排出されて湯水の入れ替え動作が実行される。このため、貯湯タンク内の湯水の入れ替え時において、貯湯タンク内の湯水の全量を排出する場合と比較すると、節水を図ることができる利点が得られる。また、貯湯タンク内においては、基本的には、滞留時間が短い新鮮な湯水が下部に存在し、かつ滞留時間が比較的長い湯水が上部に存在するが、貯湯タンク内の湯水の入れ替え動作時において、排水量を少なくすると、貯湯タンク内の湯水が攪拌され難くなり、滞留時間が短い湯水と長い湯水とが混合される虞が少なくなる作用が得られる。このような作用は、貯湯タンク内の湯水の入れ替え時において、滞留時間が長い湯水のみを貯湯タンクの上部から効率良く排出させる上で好ましい。
【0018】
本発明のその他の特徴および利点は、添付図面を参照して以下に行なう発明の実施の形態の説明から、より明らかになるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の好ましい実施の形態について、図面を参照して具体的に説明する。
【0021】
図1に示す貯湯式給湯装置WHは、外装ケース70内に収容された貯湯タンク1、貯湯タンク1に接続された入水管10ならびに出湯管11、出湯管11に分岐接続された排水管部12、制御部2、湯水加熱用の主熱源としてのソーラ集熱パネル3、および補助熱源機4を具備している。
【0022】
貯湯タンク1は、内部への給水が下部から行なわれ、かつ出湯が上部から行なわれる構成である。具体的には、水道管などの給水管71から入水口10aに供給された水は、減圧弁16および流量センサSaを有する入水管10を通過し、その先端開口部10bから
貯湯タンク1内の下部に供給可能である。貯湯タンク1内の上部には、出湯管11の先端開口部11bが位置しており、貯湯タンク1内からの出湯は、この出湯管11を介して行なわれる。
【0023】
出湯管11には、湯水混合弁V1が設けられ、この湯水混合弁V1には、入水管10に分岐接続された分岐管13が接続されている。湯水混合弁V1は、貯湯タンク1から出湯管11内を流通してきた湯水と、分岐管13を流れてきた湯水とを所望の比率で混合させる。この混合された湯水は、出湯管11の末端の出湯口11aに到達し、配管部62を介して補助熱源機4に供給される。入水管10には、開閉弁V3を有するバイパス配管部14も接続されている。このバイパス配管部14は、たとえば湯水混合弁V1が万一故障するなどして高温出湯の虞が生じた際に開閉弁V3が開状態となり、入水管10に供給された水を出湯口11aに直接導くことによって高温出湯を防止する役割を果たす。貯湯タンク1の下部には、補助排水管15が接続されている。この補助排水管15は、貯湯タンク1内の湯水の全量を排水する場合に利用され、この補助排水管15に設けられた開閉弁V4は、常時は閉状態にある。
【0024】
排水管部12は、後述する貯湯タンク1内の湯水の入れ替え動作時に排水を行なわせるための部分であり、出湯管11のうち、湯水混合弁V1よりも上流位置に分岐接続されている。この排水管部12は、その一端部が外装ケース70の外部に露出した排水口12aとなっており、開閉弁としての排水弁V2と、オリフィス17とを具備している。
【0025】
オリフィス17は、排水管部12内を通過する湯水の流量を絞るための部分であり、本発明でいう流量絞り構造部の一例に相当する。このオリフィス17の流路断面積は、出湯管11の最小流路断面積よりも小さくされている。なお、このオリフィス17は、固定オリフィスに代えて、可変オリフィスとすることもできる。
図2によく表われているように、オリフィス17は、排水弁V2よりも排水方向上流側に設けられている。本実施形態とは異なり、オリフィス17が排水弁V2の下流側に設けられている場合には、オリフィス17に水膜が発生することに起因して、排水弁V2よりも下流側に水が滞留し、冬季においてこの滞留水が凍結する虞がある。このような凍結を生じたのでは、排水が困難となる。これに対し、本実施形態の前記した構成によれば、そのような不具合を解消することができる。ただし、本発明では、オリフィス17を排水弁V2の下流側に設けた構成としてもよい。
【0026】
排水弁V2は、通常時は閉状態にあり、貯湯タンク1内の湯水の入れ替え動作時に開状態とされる。この排水弁V2は、出湯管11との間の距離L1ができる限り小さく、かつこの排水弁V2から排水口12aまでの寸法L2ができる限り長くなる配置に設けられている。これは、冬季において、排水弁V2内およびその上流側に滞留する水が外気温の影響を受けて凍結することを抑制する上で好ましい。
【0027】
貯湯タンク1内には、湯水加熱手段として、たとえばコイル状管タイプの熱交換器5が設けられている。この熱交換器5の内部には、ソーラ集熱パネル3内を通過して加熱された熱媒が外部配管部30、および熱媒循環用ポンプPや膨張タンク50などを備えた内部配管部51a,51bを介して供給可能である。
【0028】
補助熱源機4は、貯湯タンク1から出湯される湯水の温度が所定の目標給湯温度よりも低い場合に、この湯水を目標給湯温度まで加熱するためのものであり、本発明でいう湯水加熱用熱源機の一例に相当する。この補助熱源機4の構成は、たとえば一般のガス給湯器と同様な構成である。具体的には、補助熱源機4は、燃料ガスを燃焼させるバーナ40、このバーナ40に燃焼用空気を供給するファン41、バーナ40によって発生された燃焼ガスから熱回収を行なう熱交換器42、および各部の動作制御を行なう制御部43を備え
ている。補助熱源機4の出湯口には、たとえばカラン60が設けられた配管部61が接続されており、カラン60が開けられると、入水口10aに常時作用している給水圧により、貯湯タンク1からの出湯が可能である。補助熱源機4は、センサScで検出される通水量が所定の最小通水量以上であることを条件として運転状態となる仕様である。
【0029】
制御部2は、たとえばマイクロコンピュータを用いて構成されており、本発明でいう制御手段の一例に相当し、前述した各種の弁V1〜V3の動作制御などを実行する。貯湯タンク1には、複数の温度センサSbが異なる高さに設けられており、制御部2は、これら複数の温度センサSbを利用した湯水温度の検出も可能である。また、貯湯タンク1からの出湯量も検出可能である。貯湯タンク1からの出湯量は、流量センサSaを利用して検出される流量に基づき、この流量から分岐管13を介して湯水混合弁V1を通過する水の流量を減じるなどして求めることが可能である。制御部2は、貯湯タンク1内に長時間にわたって滞留した湯水を排出して貯湯タンク1内の湯水を入れ替えるための、後述する動作制御を実行する。
【0030】
次に、前記した貯湯式給湯装置WHの作用について説明する。
【0031】
まず、貯湯タンク1内の湯水の入れ替え動作(制御の詳細は、
図3および
図4を参照して後述する)時においては、湯水混合弁V1は、水側全開・湯側全閉(分岐管13側全開・出湯管11側全閉)とされる。また、排水弁V2は、開状態とされる。このことにより、貯湯タンク1内の上部の湯水は、排水管部12を通過してその排水口12aから外部に排水される。これに伴い、排水口12aからの排水量Qbと同等量の湯水が、入水管10から貯湯タンク1に流入し、貯湯タンク1内の湯水の入れ替えが行なわれる。
【0032】
前記した湯水の入れ替え時においては、出湯管11内から排水管部12に流れ込む湯水の流量がオリフィス17によって絞られるため、排水管部12からの排水量Qbはかなり少なくなる。一方、湯水の入れ替え時において、カラン60が開けられた場合には、分岐管13内の湯水が湯水混合弁V1を通過して出湯口11aに到達し、補助熱源機4に送られる。この場合の出湯量Qcは、従来技術について述べたのと同様に、入水口10aへの入水量をQaとすると、Qc=Qa−Qbであるため、オリフィス17の作用によって排水量Qbが少なくなる分だけ、出湯量Qcを多くすることができる。したがって、補助熱源機4に供給される湯水の流量が所定の最小通水量未満になることが頻発しないようにし、補助熱源機4を適切に運転させることができる効果が得られる。
【0033】
貯湯タンク1は、下部入水・上部出湯方式であるため、原則として、滞留時間が短い湯水は貯湯タンク1の下部側に存在し、滞留時間が長い湯水は貯湯タンク1の上部側に存在する。湯水の入れ替え時には、貯湯タンク1の上部から出湯がなされ、下部から給水がなされるために、滞留時間が長い湯水を貯湯タンク1の上部から適切に排水するためには、貯湯タンク1内の湯水が余り攪拌されないようにすることが望まれる。これに対し、排水管部12からの排水量Qbが前記したように少なくされていれば、湯水の入れ替え時において、貯湯タンク1内の湯水が大きく攪拌されることも適切に防止されることとなる。なお、貯湯タンク1からの通常の出湯時においては、出湯口11aに接続された補助熱源機4や各種の配管部が大きな流路抵抗となる結果、貯湯タンク1からの出湯流量がある程度抑制される。したがって、通常の出湯時においても、貯湯タンク1内の湯水が大きく攪拌されることはない。
【0034】
次に、制御部2の湯水入れ替え動作制御の一例について、
図4のフローチャートを参照しつつ説明する。
【0035】
まず、貯湯タンク1内が比較的高温の湯水の満杯状態にあり、複数の温度センサSbの
いずれにおいても、所定温度(たとえば、60℃以上)が検出されている場合には、制御部2は、湯水入れ替えのための制御を実行しない(S1:NO)。貯湯タンク1内の湯水全体が60℃以上の高温であれば、レジオネラ菌などの雑菌が繁殖する可能性はないと考えられ、貯湯タンク1内の湯水の衛生さは保たれているからである。
【0036】
貯湯タンク1内の湯水温度は時間の経過に伴って徐々に低下するが、ソーラ集熱パネル3は天候の影響を大きく受けるために、ソーラ集熱パネル3を利用した湯水加熱量が不足気味になる場合がある。このようなことに起因し、貯湯タンク1内の湯水温度が60℃未満に低下する場合がある。このような事態が生じ、複数の温度センサSbの少なくとも1つが60℃未満の検出温度を示すと、制御部2は、その時点でタイマセットを行なう(S1:YES,S2)。その後は、以下に述べるような貯湯タンク1内の湯水入れ替えのための制御を実行する。
【0037】
すなわち、制御部2は、前記したタイマセット後には、予め設定された時間(たとえば2時間)が経過する都度、この2時間内における貯湯タンク1からの積算出湯量を検出し、そのデータをこの制御部2が備えたEEPROMなどの記憶部20(
図3を参照)に記憶する処理を繰り返して実行する(S3:YES,S4)。このような処理は、たとえば複数の温度センサSbの全ての検出温度が60℃以上となり、かつその状態が15分以上継続する事象が検出されない限りは継続して実行される(S3:NO,S10:NO,S3)。なお、前記した事象が検出された場合には、制御部2は、タイマリセットを行ない(S10:YES,S11)、貯湯タンク1内の湯水入れ替えのための制御を中止する。貯湯タンク1内の湯水が高温に維持されると、殺菌効果が得られ、貯湯タンク1内を衛生な状態にすることができるからである。貯湯タンク1内の湯水入れ替え制御を中止するための条件(ステップS10の内容)は、前記した内容に限らないが、貯湯タンク1内の全域を殺菌し得る温度条件とすることが好ましい。たとえば、複数の温度センサSbの全ての検出温度が70℃以上となり、かつその状態が10分以上継続することを、湯水入れ替え制御を中止するための条件とすることもできる。
【0038】
ステップS2のタイマセット時から所定の制限時間(たとえば96時間)が経過すると、制御部2は、その時点で貯湯タンク1内の湯水の滞留時間が96時間に達したか否かを判断する(S5:YES,S6)。この判断は、貯湯タンク1の容量TCと、前記した96時間内における貯湯タンク1からの積算出湯量ΣQとを比較することにより行ない、TC>ΣQの関係である場合には、制御部2は、湯水の滞留時間は96時間以上であると判断し、滞留時間が96時間に達した湯水の量は、(TC−ΣQ)であると判断する(S6:YES,S7)。
【0039】
理解を容易にするため、
図3を用いて前記した一連の処理を模式的に説明する。まず、同図(a)に示すように、制御部2の記憶部20の初期(ステップS2のタイマセット時)には、2時間ごとの積算出湯量を示すアドレスa1〜a48へのデータの書き込みはない。ただし、その後2時間経過した際には、同図(b)に示すように、アドレスa1の最新の2時間における貯湯タンク1からの積算出湯量Q1のデータが書き込まれる。その後は、同図(c)〜(d)に示すように、2時間が経過する毎に、アドレスa1の最新の2時間の積算出湯量Q2,Q3のデータが順次書き込まれる。これに伴い、同図(b)で示されていた最新の2時間の積算出湯量Q1のデータは、アドレスa2,a3の2〜4時間前、4〜6時間前のデータとなる。このような処理が繰り返し実行され、初期から96時間が経過すると、同図(e)に示すように、アドレスa1〜a48の全てに2時間ごとの貯湯タンク1からの積算出湯量Q1〜Q48のデータが書き込まれる。
【0040】
図3(e)に示すように、初期から96時間が経過した時点において、制御部2は、(TC−ΣQ)の値を、滞留時間が96時間に達した湯水の量であって、排水対象となる量
であると判断する。ここで、ΣQは、96時間内における貯湯タンク1からの積算出湯量であり、アドレスa1〜a48に書き込まれた積算出湯量Q1〜Q48の合計値である。積算出湯量ΣQが貯湯タンク1の容量TC未満であれば、貯湯タンク1内の湯水の全量が96時間内において入れ替わっていないものと考えることが可能である。貯湯タンク1の容量TCが200Lであって、積算出湯量ΣQが、150Lの場合、それらの差分の50Lは、貯湯タンク1内の滞留時間が96時間に達したものと判断することができる。なお、積算出湯量ΣQが貯湯タンク1の容量以上であり、(TC−ΣQ)の値がゼロ、または負となる場合には、滞留時間が96時間に達した湯水は貯湯タンク1内に存在しないものと判断される(S6:NO,S12)。
【0041】
制御部2は、滞留時間が96時間に達した湯水が存在すると判断した場合、排水弁V2を開状態とし、貯湯タンク1内の湯水を(TC−ΣQ)の量だけ排水管部12から外部に排出させる(S8)。これに伴い、それと同等量だけ新たな水が貯湯タンク1に流入する。このような湯水の入れ替え動作により、滞留時間が96時間に達した湯水を貯湯タンク1内から排除し、貯湯タンク1内の衛生さを保つことができる。ただし、湯水の入れ替え動作時においては、湯水の入れ替えの確実化、あるいは信頼性を高めるべく、湯水の入れ替え量を(TC−ΣQ)に所定の余裕量を加えた値とすることもできる。この余裕量は、一定量((TC−ΣQ)の大きさには関係なく、たとえば常に2L)に設定したり、あるいは一定の比率((TC−ΣQ)のたとえば10%)に設定するといったことが可能である。
【0042】
前記した湯水の入れ替え動作を行なった際には、貯湯タンク1内の湯水の滞留時間が変化するため、これに対応すべく記憶部20のデータを更新する(S9)。このデータ更新は、たとえば
図3(f)に示すように、アドレスa48の積算出湯量に関するデータをクリアするとともに、アドレスa1の最新の2時間の積算出湯量の値をQ48’とする。このQ48’は、具体的には、同図(e)の積算出湯量Q48に、前記した湯水の入れ替え時に排出された湯水量(TC−ΣQ)を加えた値となる。
【0043】
前記したデータ更新の後において、貯湯タンク1内の湯水温度が未だ十分に上昇せず、ステップS10の湯水入れ替え解除条件が満たされない場合には、前記した湯水入れ替えのための制御が繰り返される(S9,S10:NO,S3)。このため、前記したデータ更新の後において、さらに2時間が経過すると、
図3(g)に示すように、最新の2時間おける貯湯タンク1からの積算出湯量Q49のデータが、アドレスa1に書き込まれる。同図(f)のアドレスa1〜a47に書き込まれていたデータは、アドレスa2〜a48に移行する。これに伴い、制御部2は、貯湯タンク1の容量TCと、アドレスa1〜a48に書き込まれた積算出湯量の合計値ΣQとを比較し、TC>ΣQであれば、湯水の滞留時間が96時間に達したものと判断するとともに、(TC−ΣQ)が排水対象量とされて、貯湯タンク1の湯水の入れ替え動作が実行される。
【0044】
前記したような湯水の入れ替えのための制御は、ステップS10の湯水入れ替え解除条件が満たされない限り繰り返されるために、その後も2時間が経過する毎に、貯湯タンク1内の湯水の滞留時間が96時間に達したか否かが判断され、96時間に達していれば、その都度、滞留時間が96時間に達したものと判断された量、またはこれに余裕を加えた量の湯水が排出されて湯水の入れ替え動作がなされる。湯水の滞留時間の判断に際し、滞留時間が96時間に達する湯水が貯湯タンク1に存在しないと判断された場合であっても、予め定められた制御終了条件にならない限りは、その2時間後には、湯水の滞留時間の判断が再度繰り返される(S12,S13:NO,S3)。
【0045】
前記したような動作処理手順によれば、貯湯タンク1内には60℃以下の湯水が96時間以上滞留することを適切に防止し、貯湯タンク1内および貯湯タンク1から出湯される
湯水を衛生的なものとすることができる。また、貯湯タンク1内の湯水の入れ替え量は、滞留時間が96時間に達した湯水の量、またはこれに余裕を加えた量であって、貯湯タンク1内の湯水の全量が入れ替えられるものではないために、大幅な節水を図り、水資源を大切にすることもできる。さらに、本実施形態では、先に述べたように、貯湯タンク1内の湯水の入れ替え時において、貯湯タンク1内が大きく攪拌されて滞留時間が短い湯水と長い湯水とが混合することは適切に抑制され、滞留時間が長い湯水を効率良く排水することができるために、節水をより的確に図ることが可能である。
【0046】
図5および
図6は、本発明の他の実施形態を示している。これらの図において、前記実施形態と同一または類似の要素には、同一の符号を付している。
【0047】
図5に示す実施形態においては、排水弁V2’が流量調整弁とされている。この排水弁V2’は、流路の全閉動作が可能であることは勿論のこと、開状態時には、その弁開度が比較的小さく、オリフィスとしての機能を果たすように構成されている。したがって、この排水弁V2’自体が、本発明でいう流量絞り構造部の具体例に相当している。本実施形態においては、排水弁V2’を開状態とした際に、出湯管11内から排水管部12に流れ込む湯水の流量を絞ることができ、本発明が意図する作用が得られる。
【0048】
図6に示す実施形態においては、排水管部12が小径の管体を用いて構成されており、その内径d1は、出湯管11の内径d2よりも小さいものとなっている。このような構成では、排水管部12の略全域が、本発明でいう流量絞り構造部となっており、やはり出湯管11から排水管部12に流れ込む湯水の流量を絞ることができる。
【0049】
本発明は、上述した実施形態の内容に限定されない。本発明に係る貯湯式給湯装置の各部の具体的な構成は、本発明の意図する範囲内において種々に設計変更自在である。
【0050】
排水管部にオリフィスを設ける場合、このオリフィスの具体的な構造や取り付け手段などは限定されない。要は、排水管部を利用した湯水の排水が行なわれるときに、出湯管から排水管部に流れ込む湯水の流量を絞ることが可能であればよい。
【0051】
本発明においては、貯湯タンク内の湯水の滞留時間が所定の制限時間に達した場合に、上述した実施形態とは異なり、貯湯タンク内の一部の湯水のみを入れ替えるのではなく、貯湯タンク内の湯水の全量を入れ替えるように構成することも可能である。貯湯タンクに貯留される湯水の加熱手段としては、貯湯タンク内に内蔵された熱交換器や、電熱式などのヒータを用いれば、貯湯タンク内の湯水を大きく攪拌させることがないが、これら以外の加熱手段を採用することもできる。主熱源や補助熱源を具備させる場合、これらの具体的な種類も問わない。