【実施例】
【0035】
(実施例1)
Si(純度99.9999%)からなる第一原料粒子(Si粒子)と、Mg(純度99.9%以上)からなる第二原料粒子(Mg粒子)とを用意した。
Si粒子としては、Si塊をアルミナ製の乳鉢で粉砕後、目開きがそれぞれ500、250、150、106、75、53、38、20μmのふるいを用いて、粒径が150μmを超え250μm以下、106μmを超え150μm以下、75μmを超え106μm以下、53μmを超え75μm以下、38μmを越え53μm以下、20μmを超え38μm以下に分級したものを用意した。
Mg粒子としては、粒径約3〜8mmのものと約1〜3mmのものを用意した。
Mg粒子とSi粒子とを配合比(Mg:Siの原子比)が2.02対1.00となるようにそれぞれ秤量した。
【0036】
図1に示すように、Mg粒子2を加熱容器10(カーボンボード)の底面に均一に敷き詰め、
図2に示すように、Si粒子1を、Mg粒子2を覆うようにMg粒子2上に敷き詰めた。加熱容器10を加熱炉内に収容し、0.1MPaのアルゴン−3%水素混合ガス雰囲気下で加熱処理を行った。加熱温度は700℃または870℃とした。加熱時間は870℃の場合は2時間または4時間とした。700℃の場合は10時間とした。
【0037】
加熱処理後、加熱容器10内の生成物について、目視による状態観察、ふるいによる分級、X線回折による相分析、走査型電子顕微鏡による形状・表面観察と組成分析を行った。結果を表4に示す。
目視による状態観察の結果、Si粒子の粒径が150μmを超え250μm以下である場合と、106μmを超え150μm以下である場合は、生成物はすべて粒子状であり、塊状にはなっていなかった。
しかし、加熱処理温度が870℃で、Si粒子の粒径が38μmを超え53μm以下、および20μmを超え38μm以下である場合は、生成物は粒子同士が結合した塊状となった。
【0038】
生成物のX線回折による相分析の結果を
図3に示す。得られたX線回折プロファイルは逆蛍石構造からの回折ピークのみであり、MgやSiからの回折ピークおよび未確認の回折ピークは観察されなかった。このことから生成物はMg
2Si単相であることが確認された。
【0039】
加熱処理前のSi粒子と、加熱処理によって得られた化合物粒子を走査型電子顕微鏡により観察した。
図4は、上述の乳鉢による粉砕、分級により得られた、粒径が106μmを超え150μm以下であるSi粒子であり、扁平な板状や粒状のものが多い。
図5は、粒径が53μmを超え75μm以下であるSi粒子であり、これも扁平な板状や粒状のものが多い。
図6は、
図5に示すSi粒子(粒径は53μmを超え75μm以下)を加熱処理することによって得られた化合物粒子(粒径は106μmを超え150μm以下)であり、この化合物粒子は加熱処理前に比べ、丸みを帯びた形状である。
図7は、1つの化合物粒子を拡大した写真である(後述する実験番号4−05)。
図8は化合物粒子の表面状態を示すもので、この図に示すように、化合物粒子の表面はなめらかではなく、多数の微小なとげ状の突起物が観察された。
【0040】
図9は、870℃で2時間の加熱処理を施した化合物粒子を樹脂に埋め込んで研磨して得られた化合物粒子断面の組成像を示す(後述する実験番号4−02)。
粒子断面全体が均一に灰色となっている粒子と、中心部が白色で外周部が灰色となっている多層構造の粒子が観察された。
組成像において、色調の違いは、平均原子量の違いを示しており、組成が違うことを示す。そこで、化合物粒子の組成の均一性を調べるためにエネルギー分散形X線分光器を使ったX線分光法を用いて、Mgの特性X線像とSiの特性X線像を得た。
【0041】
図10は、多層構造の化合物粒子の組成像であり、中心部で白色、外周部で灰色となっている。
図11はこの粒子のSiの特性X線像である。この像においては、Si濃度が高いほど明るい灰色となる。
図12はこの粒子のMgの特性X線像である。
Mgの特性X線像により、外周部にはMgが存在するが、中心部にはMgがほとんど存在しないことがわかった。また、Siの特性X線像によって、中心部にSi濃度が高く、外周部ではSi濃度が低いことがわかった。
これらより、外周部は化合物の組成(Mg
2Si)で、中心部はSiのみの組成であることがわかった。これは中心部では合成反応が進んでいないことを示している。中心部における合成反応は、加熱処理時間を長くすることにより促進できる可能性がある。
図13は、粒子断面が均一に灰色となっている粒子の組成像で、
図14はMgの特性X線像、
図15はSiの特性X線像を示す。Mgの特性X線像とSiの特性X線像ともに粒子断面全体で均一の色調であり、このことから、この粒子の組成が断面全体で均一となっていることがわかった。
【0042】
各加熱処理条件による単相の生成物をふるいにより分級し、それぞれの粒子の収率を測定した。以下、収率は%(質量基準)で示す。
図16は、粒径が約3〜8mmのMg粒子を使用して、870℃で4時間の加熱処理を行ったときの化合物粒子の収率を示す。
Si粒子が粒径106μm以下の場合には化合物(生成物)は少なくとも一部が粒子状ではなく大きな塊状となり、その収率は、Si粒子の粒径が75μmを超え106μm以下では43.0%、Si粒子の粒径が53μmを超え75μm以下では34.0%、Si粒子の粒径が53μm以下では100%であった。
この結果より、Si粒子の粒径が53μm以下では粒子状の化合物は得られないことがわかった。
【0043】
図16に示すように、粒径が106μmを超える場合のSi粒子を用いる場合における粒径500μm以上の化合物粒子の収率は、Si粒子の粒径が150μmを超え250μm以下では43.7%、粒径が106μmを超え150μm以下では45.2%であった。
150μmを超え250μm以下のSi粒子を使用する場合において、化合物粒子の収率は、250μmを超え500μm以下が35.3%、150μmを超え250μm以下が20.6%、106μmを超え150μm以下では0.4%、75μmを超え106μm以下では0.06%、75μm以下では0.02%であった。
【0044】
粒径が106μmを超え150μm以下のSi粒子を使用する場合において、化合物粒子の収率は、粒径が250μmを超え500μm以下では1.2%、粒径が150μmを超え250μm以下では46.7%、粒径が106μmを超え150μm以下では6.6%、粒径が75μmを超え106μm以下では0.3%、粒径75μm以下では0.05%であった。
粒径が75μmを超え106μm以下のSi粒子を使用する場合において、化合物粒子の収率は、粒径が250μmを超え500μm以下では0.6%、粒径が150μmを超え250μm以下では14.5%、粒径が106μmを超え150μm以下では38.4%、粒径が75μmを超え106μm以下では3.3%、粒径75μm以下では0.3%であった。
粒径が53μmを超え75μm以下のSi粒子を使用する場合において、化合物粒子の収率は、粒径が250μmを超え500μm以下では0.7%、粒径が150μmを超え250μm以下では2.8%、粒径が106μmを超え150μm以下では27.8%、粒径が75μmを超え106μm以下では31.7%、粒径75μm以下では3.0%であった。
この結果より、化合物単相の粒子は、使用したSi粒子よりも大きい粒径になるものが多く、Si粒子よりも小さい粒径の化合物粒子は非常に少ないことがわかった。
また、使用したSi粒子よりも大きい粒径の化合物粒子と、塊状物とで全体の80%以上を占め、それ以外の粒径の化合物粒子は非常に少ないことがわかった。
【0045】
なお、
図16、
図17、および
図21では、500μmを超える粒径を「−500」、250μmを超え500μm以下の粒径を「500−250」、150μmを超え250μm以下の粒径を「250−150」、106μmを超え150μm以下の粒径を「150−106」、75μmを超え106μm以下の粒径を「106−75」、53μmを超え75μm以下の粒径を「75−53」、75μm以下の粒径を「75−」、38μmを越え53μm以下の粒径を「53−38」、38μm以下の粒径を「38−」と表示する。
【0046】
粒径が約1〜3mmのMg粒子を使用して、870℃で4時間の加熱処理を施した場合には、約3〜8mmのMg粒子を使用したときよりも単相の化合物粒子の収率が高くなった。
粒径が150μmを超え250μm以下のSi粒子を使用する場合において、粒子同士が焼結した状態の塊状物は12.6%、化合物粒子の収率は、粒径が250μmを超え500μm以下では59.9%、粒径が150μmを超え250μm以下では26.9%、粒径が106μmを超え150μm以下では0.5%、粒径が75μmを超え106μm以下では0.03%、粒径75μm以下では0.04%であった。
粒径が106μmを超え150μm以下のSi粒子を使用する場合において、粒子同士が焼結した状態の塊状物は8.4%、化合物粒子の収率は、粒径が250μmを超え500μm以下では3.3%、粒径が150μmを超え250μm以下では74.0%、粒径が106μmを超え150μm以下では13.7%、粒径が75μmを超え106μm以下では0.5%、粒径75μm以下では0.08%であった。
この結果からMg粒子の粒径が収率に大きく影響を与え、約3〜8mmよりも約1〜3mmを使用する方が高い収率が得られ、塊も少なくなることがわかった。
【0047】
図17は、粒径が約1〜3mmのMg粒子を使用して、加熱処理温度700℃で10時間の加熱処理を行ったときの化合物粒子の収率を示す。
塊状物の収率は非常に小さく、化合物粒子の収率は、Si粒子の粒径が106μmを超え150μm以下では3.5%、Si粒子の粒径が75μmを超え106μm以下では0%、Si粒子の粒径が53μmを超え75μm以下では56.6%、Si粒子の粒径が53μmを超え75μm以下では0%、38μmを超え53μm以下では23.1%であった。
このことから、Mg粒子を約1〜3mmとし、加熱処理温度を低くすると、塊状物は生成せず、粒子のみが得られることがわかった。
Si粒子の粒径によってはまだ塊状物が生ずる場合もあるが、加熱処理温度870℃ではSi粒子の粒径53μm以下の場合には化合物はすべて塊状となったのに対し、本試験の条件(加熱処理温度700℃)ではSi粒子の粒径20μmを超え38μm以下でも粒子状の化合物が得られた。
【0048】
粒径が106μmを超え150μm以下のSi粒子を使用する場合において、化合物粒子の収率は、粒径が250μmを超え500μm以下では0%、粒径が150μmを超え250μm以下では89.4%、粒径が106μmを超え150μm以下では7.1%、粒径が75μmを超え106μm以下では0.05%、粒径75μm以下では0.04%であった。
粒径が75μmを超え106μm以下のSi粒子を使用する場合において、化合物粒子の収率は、粒径が250μmを超え500μm以下では1.9%、粒径が150μmを超え250μm以下では21.9%、粒径が106μmを超え150μm以下では70.9%、粒径が75μmを超え106μm以下では5.1%、粒径75μm以下では0.3%であった。
粒径が53μmを超え75μm以下のSi粒子を使用する場合において、化合物粒子の収率は、粒径が250μmを超え500μm以下では0.7%、粒径が150μmを超え250μm以下では0.8%、粒径が106μmを超え150μm以下では16.2%、粒径が75μmを超え106μm以下では24.3%、粒径75μm以下では2.3%であった。
粒径が38μmを超え53μm以下のSi粒子を使用する場合において、化合物粒子の収率は、粒径が250μmを超え500μm以下では3.0%、粒径が150μmを超え250μm以下では0.3%、粒径が106μmを超え150μm以下では0.2%、粒径が75μmを超え106μm以下では38.9%、粒径が53μmを超え75μm以下では46.7%、38μmを超え53μm以下では9.4%、粒径38μm以下では1.6%であった。
粒径が20μmを超え38μm以下のSi粒子を使用する場合において、化合物粒子の収率は、粒径が250μmを超え500μm以下では0.9%、粒径が150μmを超え250μm以下では0.7%、粒径が106μmを超え150μm以下では0.4%、粒径が75μmを超え106μm以下では3.7%、粒径が53μmを超え75μm以下では28.2%、38μmを超え53μm以下では28.5%、粒径38μm以下では14.5%であった。
【0049】
このように、粒径が約1〜3mmのMg粒子を使用して加熱処理温度700℃で10時間の条件で合成した化合物粒子の収率は非常に高くなり、最大で89.4%を示した。
このことから、
図18に示すMg−Si状態図におけるI領域とII領域の共晶温度637.6℃と、III領域とIV領域の共晶温度950℃との間の温度領域であれば、効率のよい化合物粒子の作製が可能であることがわかった。また、Mgの融点である650℃近傍で、Mg粒子が粒径3mm程度(例えば1〜3mm)であれば化合物粒子の収率が高いことがわかった。
【0050】
【表4】
【0051】
図20は、実験番号4−19で得られた化合物の写真である。この試験では、粒状でなく塊状の化合物が得られたことがわかる。
【0052】
(実施例2)
Si(純度99.9999%)からなる第一原料粒子(Si粒子)と、Mg(純度99.9%以上)からなる第二原料粒子(Mg粒子)とを用意した。
Si粒子としては、粒径が106μmを超え150μm以下、75μmを超え106μm以下に分級したものを用意した。
Mg粒子としては、粒径約1〜3mmのものを用意した。
添加元素として、粒径が75μmを超え250μm以下のアンチモン(Sb)粉末(純度99.99%)、粒径が約1〜3mmのビスマス(Bi) 粒子(純度99.999%)、粒径が75μmを超え150μm以下のアルミニウム(Al)粒子(純度99.9%)を準備した。
これらの各粒子を、Mg
2.02Si
0.99Sb
0.01、Mg
2.02Si
0.99Bi
0.01、Mg
2.01Al
0.01Si
0.99Sb
0.01という組成の無機化合物が得られるように秤量した。
【0053】
図1に示すように、Mg粒子2を加熱容器10(カーボンボード)の底面に均一に敷き詰め、
図2に示すように、Siおよび添加元素の粒子1(Si、Sb、Bi、Al)を、Mg粒子2を覆うようにMg粒子2上に配置した。加熱容器10を加熱炉内に収容し、0.1MPaのアルゴン−3%水素混合ガス雰囲気下で加熱処理を行った。加熱温度は800℃、加熱時間は4時間とした。
【0054】
生成物について、目視による状態観察、ふるいによる分級、X線回折による相分析、走査型電子顕微鏡による形状・表面観察と組成分析を行った。結果を表5に示す。
図21は、化合物粒子の収率を示すグラフである。
この図に示すように、Sbを添加したMg
2Si(組成式:Mg
2Si
0.99Sb
0.01)からなる化合物粒子を得る実験番号5−01では、化合物粒子の収率は、粒径250μmを超え500μm以下が12.2%、150μmを超え250μm以下が26.7%、106μmを超え150μm以下では45.2%、75μmを超え106μm以下では7.1%、75μm以下では0.5%であった。
Bi添加したMg
2Si(組成式:Mg
2Si
0.99Bi
0.01)からなる化合物粒子を得る実験番号5−02では、化合物粒子の収率は、粒径250μmを超え500μm以下が12.5%、粒径150μmを超え250μm以下が23.9%、粒径106μmを超え150μm以下では50.1%、粒径75μmを超え106μm以下では5.4%、75μm以下では0.4%であった。
Sb添加の場合(実験番号5−01)とBi添加した場合(実験番号5−02)は、Si粒子径(75μmを超え106μm以下)が互いに同じであり、加熱処理条件も同じであるため、化合物粒子の収率も同程度の結果となった。
【0055】
SbとAlを添加したMg
2Si(組成式:Mg
1.99Al
0.01Si
0.99Bi
0.01)からなる化合物粒子を得る実験番号5−03では、化合物粒子同士が結合した塊状物は21.8%、化合物粒子の収率は、粒径粒径250μmを超え500μm以下が26.8%、粒径150μmを超え250μm以下が44.8%、粒径106μmを超え150μm以下が6.1%、粒径75μmを超え106μm以下が0.3%、75μm以下では0.2%であった。
実験番号5−03は、実験番号5−01、5−02に比べてSi粒子径が大きいため(106μmを超え150μm以下)、化合物粒子の収率は、粒径150μmを超え250μm以下が最も高かった。
この結果より、MgおよびSi以外に第3元素(添加元素)を添加した場合には、簡便に化合物粒子が得られることがわかった。
【0056】
【表5】