特許第5773365号(P5773365)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5773365
(24)【登録日】2015年7月10日
(45)【発行日】2015年9月2日
(54)【発明の名称】省燃費性の内燃機関用潤滑油組成物
(51)【国際特許分類】
   C10M 163/00 20060101AFI20150813BHJP
   C10M 159/22 20060101ALN20150813BHJP
   C10M 159/24 20060101ALN20150813BHJP
   C10M 139/00 20060101ALN20150813BHJP
   C10M 137/10 20060101ALN20150813BHJP
   C10M 133/16 20060101ALN20150813BHJP
   C10N 10/04 20060101ALN20150813BHJP
   C10N 10/12 20060101ALN20150813BHJP
   C10N 20/02 20060101ALN20150813BHJP
   C10N 30/00 20060101ALN20150813BHJP
   C10N 30/06 20060101ALN20150813BHJP
   C10N 40/25 20060101ALN20150813BHJP
【FI】
   C10M163/00
   !C10M159/22
   !C10M159/24
   !C10M139/00 Z
   !C10M137/10 A
   !C10M133/16
   !C10M139/00 A
   C10N10:04
   C10N10:12
   C10N20:02
   C10N30:00 Z
   C10N30:06
   C10N40:25
【請求項の数】15
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2011-286254(P2011-286254)
(22)【出願日】2011年12月27日
(65)【公開番号】特開2013-133453(P2013-133453A)
(43)【公開日】2013年7月8日
【審査請求日】2014年6月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】391050525
【氏名又は名称】シェブロンジャパン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】潮田 伸雄
(72)【発明者】
【氏名】宮本 剛
(72)【発明者】
【氏名】小笠原 靖宏
【審査官】 中野 孝一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−047667(JP,A)
【文献】 特開2011−132404(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10M101/00−177/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
潤滑油基油及び過塩基性金属含有清浄剤とモリブデン含有摩擦低減剤とを含む潤滑油添加剤を含有する内燃機関用潤滑油組成物であって、前記潤滑油基油の量は前記潤滑油添加剤の量より多く、過塩基性金属含有清浄剤が、平均炭素原子数が14〜18の範囲にあって、かつ炭素原子数が14〜18の範囲にあるアルキル基が60モル%以上であるアルキル基を持つカルシウムサリシレートと平均炭素原子数が20〜24の範囲にあって、かつ炭素原子数が20〜24の範囲にあるアルキル基が60モル%以上であるアルキル基を持つカルシウムスルホネートもしくは平均炭素原子数が20〜28の範囲にあって、かつ炭素原子数が20〜28の範囲にあるアルキル基が60モル%以上であるアルキル基を持つカルシウムサリシレートとを含むことを特徴とする内燃機関用潤滑油組成物。
【請求項2】
モリブデン含有摩擦低減剤がモリブデンジチオカーバメートである請求項1に記載の内燃機関用潤滑油組成物。
【請求項3】
平均炭素原子数が14〜18の範囲にあって、かつ炭素原子数が14〜18の範囲にあるアルキル基が60モル%以上であるアルキル基を持つカルシウムサリシレートが過塩基化度1〜4のカルシウムサリシレートであって、平均炭素原子数が20〜24の範囲にあって、かつ炭素原子数が20〜24の範囲にあるアルキル基が60モル%以上であるアルキル基を持つカルシウムスルホネートもしくは平均炭素原子数が20〜28の範囲にあって、かつ炭素原子数が20〜28の範囲にあるアルキル基が60モル%以上であるアルキル基を持つカルシウムサリシレートが過塩基化度6〜24のカルシウムスルホネートもしくはカルシウムサリシレートである請求項1に記載の内燃機関用潤滑油組成物。
【請求項4】
平均炭素原子数が14〜18の範囲にあって、かつ炭素原子数が14〜18の範囲にあるアルキル基が60モル%以上であるアルキル基を持つカルシウムサリシレートの過塩基化度に対する、平均炭素原子数が20〜24の範囲にあって、かつ炭素原子数が20〜24の範囲にあるアルキル基が60モル%以上であるアルキル基を持つカルシウムスルホネートもしくは平均炭素原子数が20〜28の範囲にあって、かつ炭素原子数が20〜28の範囲にあるアルキル基が60モル%以上であるアルキル基を持つカルシウムサリシレートの過塩基化度の比が2〜12の範囲にある請求項3に記載の内燃機関用潤滑油組成物。
【請求項5】
過塩基性金属含有清浄剤が、平均炭素原子数が14〜18の範囲にあって、かつ炭素原子数が14〜18の範囲にあるアルキル基が60モル%以上であるアルキル基を持つカルシウムサリシレートと平均炭素原子数が20〜24の範囲にあって、かつ炭素原子数が20〜24の範囲にあるアルキル基が60モル%以上であるアルキル基を持つカルシウムスルホネートとを含む請求項1に記載の内燃機関用潤滑油組成物。
【請求項6】
過塩基性金属含有清浄剤が、平均炭素原子数が14〜18の範囲にあって、かつ炭素原子数が14〜18の範囲にあるアルキル基が60モル%以上であるアルキル基を持つカルシウムサリシレートと平均炭素原子数が20〜28の範囲にあって、かつ炭素原子数が20〜28の範囲にあるアルキル基が60モル%以上であるアルキル基を持つカルシウムサリシレートとを含む請求項1に記載の内燃機関用潤滑油組成物。
【請求項7】
モリブデン含有摩擦低減剤が潤滑油組成物の全体量に対して、モリブデン量換算で0.01〜0.15質量%の範囲の量で含まれる請求項1に記載の内燃機関用潤滑油組成物。
【請求項8】
平均炭素原子数が14〜18の範囲にあって、かつ炭素原子数が14〜18の範囲にあるアルキル基が60モル%以上であるアルキル基を持つカルシウムサリシレートと平均炭素原子数が20〜24の範囲にあって、かつ炭素原子数が20〜24の範囲にあるアルキル基が60モル%以上であるアルキル基を持つカルシウムスルホネートもしくは平均炭素原子数が20〜28の範囲にあって、かつ炭素原子数が20〜28の範囲にあるアルキル基が60モル%以上であるアルキル基を持つカルシウムサリシレートが潤滑油組成物の全体量に対して、それぞれ独立に、カルシウム量換算値で0.01〜0.4質量%の範囲の量で含まれる請求項1に記載の内燃機関用潤滑油組成物。
【請求項9】
平均炭素原子数が14〜24の範囲にあって、かつ炭素原子数が14〜24の範囲にあるアルキル基が60モル%以上であるアルキル基を持ち、過塩基化度が0.1〜2の低塩基性カルシウムスルホネートをさらに含む請求項1に記載の内燃機関用潤滑油組成物。
【請求項10】
窒素含有無灰分散剤、リン酸亜鉛系の酸化防止剤もしくは摩耗防止剤、そしてフェノール系酸化防止剤およびアミン系酸化防止剤からなる群から選ばれる潤滑油添加剤をさらに含む請求項1に記載の内燃機関用潤滑油組成物。
【請求項11】
リン酸亜鉛系の酸化防止剤もしくは摩耗防止剤が、ジ(第一アルキル)ジチオリン酸亜鉛とジ(第二アルキル)ジチオリン酸亜鉛との質量比で1/9〜9/1の割合の混合物を含む請求項10に記載の内燃機関用潤滑油組成物。
【請求項12】
窒素含有無灰分散剤がエチレンカーボネートあるいはホウ酸化合物で後処理されていてもよいこはく酸イミド系分散剤である請求項10に記載の内燃機関用潤滑油組成物。
【請求項13】
硫黄を含んでいてもよいこはく酸イミドのモリブデン錯体をさらに含む請求項1に記載の内燃機関用潤滑油組成物。
【請求項14】
潤滑油基油が粘度指数120〜160の油である請求項1に記載の内燃機関用潤滑油組成物。
【請求項15】
SAE粘度グレードで0W20の潤滑油組成物である請求項1に記載の内燃機関用潤滑油組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関用の潤滑油組成物として用いた場合に高い省燃費性を示すガソリンエンジン、ディーゼルエンジンあるいはガスエンジンなどの特に陸上で用いる内燃機関の潤滑に有用な潤滑油組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年のガソリンエンジンやディーゼルエンジンなどの内燃機関を搭載し、陸上走行する自動車などの車両に対する省燃費性の向上に対する要求は益々厳しくなっている。内燃機関を搭載する車両の省燃費性の向上に最も効果的なのは車両重量の低減であるが、内燃機関の潤滑のために用いる潤滑油組成物の選択による影響も少なからずあることが知られている。
【0003】
上記の理由から、潤滑油組成物を開発する企業あるいは潤滑油組成物に配合する潤滑油添加剤を開発する企業において、従来より、省燃費性の高い潤滑油組成物を開発するための研究が活発に行なわれている。
【0004】
潤滑油組成物による省燃費性能の向上は一般に、主としてエンジンの摺動部位の潤滑油組成物による摩擦軽減を介してのエンジンの回転のトルクの低減に起因する。そして、潤滑油組成物による省燃費性能の向上にとって大きな影響を持つものは、潤滑油組成物の粘度特性そして潤滑油組成物に配合する摩擦低減剤を中心とする各種の添加剤の選択である。たとえば、潤滑油組成物の調製に際して低粘度の潤滑油基油を使用することにより、潤滑油組成物が示す摩擦低減効果は向上する。しかしながら、低粘度の潤滑油基油を使用するとオイル消費量(エンジン運転中での潤滑油組成物の消費量)が高くなるという好ましくない現象が現れやすいため、潤滑油基油の低粘度化による省燃費性能の向上には限界がある。一方、近年の潤滑油組成物に各種添加される潤滑油添加剤の選択により、潤滑油組成物の省燃費性能の向上を実現するための研究も既に行なわれており、それらの研究の成果として生まれた発明が、これまでに少なからずの特許出願により開示されている。
【0005】
たとえば、特許文献1には、潤滑油基油に、アルケニルこはく酸イミドのホウ素化合物誘導体、サリチル酸のアルカリ土類金属塩、及びジチオリン酸モリブデン及び/又はジチオカルバミン酸モリブデンを添加した組成を有する低摩擦特性のエンジン油組成物が開示されている。
【0006】
また、特許文献2には、潤滑油基油に、主として第二級アルキル基を有するジチオアルキルジチオリン酸亜鉛を含むジチオアルキルジチオリン酸亜鉛、カルシウムスルホネート(例えば、TBN200〜300)とカルシウムサリシレート(例えば、TBN10〜100)とからなる金属含有清浄剤、そして炭素原子数8〜23の炭化水素基を有するモリブデンジチオカーバメートを添加した潤滑油組成物が優れた低摩耗性と低摩擦性を示すとの開示がある。
【0007】
さらに、特許文献3には、特定の動粘度と特定の全芳香族含有量の基油に、アルカリ土類金属サリシレート、ジアルキルジチオリン酸亜鉛、分子量900〜3500のポリブテニル基を有するこはく酸イミド系無灰分散剤、フェノール系無灰酸化防止剤、そしてモリブデンジチオカーバメートを配合してなるエンジン油組成物が優れた燃費低減性を示すとの開示がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平5−163497号公報
【特許文献2】特開平6−336592号公報
【特許文献3】特開平8−302378号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、これまでに優れた摩擦低減特性を示す潤滑油添加剤であり、省燃費性の向上に有効であることが知られているモリブデン含有摩擦低減剤を含む潤滑油組成物であって、さらに優れた省燃費性を示す潤滑油組成物を提供することを、その課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の発明者は、上記の課題を解決するために、モリブデン含有摩擦低減剤に対する、これまでに多数知られている各種の潤滑油添加剤の併用効果を検討した。その結果、モリブデン含有摩擦低減剤を含有する潤滑油組成物に、平均炭素原子数が14〜18の範囲にあって、かつ炭素原子数が14〜18の範囲にあるアルキル基が60モル%以上であるアルキル基を持つカルシウムサリシレートと平均炭素原子数が20〜24の範囲にあって、かつ炭素原子数が20〜24の範囲にあるアルキル基が60モル%以上であるアルキル基を持つカルシウムスルホネート及び/又は平均炭素原子数が20〜28の範囲にあって、かつ炭素原子数が20〜28の範囲にあるアルキル基が60モル%以上であるアルキル基を持つカルシウムサリシレートとを組合せた過塩基性金属含有清浄剤(組成物)を配合することにより、高い省燃費性を示す潤滑油組成物が得られることを見出し、本発明に到達した。
【0011】
従って、本発明は、相対的に多量の潤滑油基油及び過塩基性金属含有清浄剤とモリブデン含有摩擦低減剤とを含む相対的に少量の潤滑油添加剤を含有する内燃機関用潤滑油組成物であって、過塩基性金属含有清浄剤が、平均炭素原子数が14〜18の範囲にあって、かつ炭素原子数が14〜18の範囲にあるアルキル基が60モル%以上(好ましくは70モル%以上)であるアルキル基を持つカルシウムサリシレートと平均炭素原子数が20〜24の範囲にあって、かつ炭素原子数が20〜24の範囲にあるアルキル基が60モル%以上(好ましくは70モル%以上)であるアルキル基を持つカルシウムスルホネートもしくは平均炭素原子数が20〜28の範囲にあって、かつ炭素原子数が20〜28の範囲にあるアルキル基が60モル%以上(好ましくは70モル%以上)であるアルキル基を持つカルシウムサリシレートとを含むことを特徴とする内燃機関用潤滑油組成物にある。
【0012】
なお、本発明の内燃機関用潤滑油組成物に含まれる潤滑油基油は一般に、潤滑油組成物の全量に対して70質量%以上、好ましくは80質量%以上である。
【0013】
本発明の潤滑油組成物の好ましい態様を以下に記載する。
(1)モリブデン含有摩擦低減剤がモリブデンジチオカーバメートである。
【0014】
(2)平均炭素原子数が14〜18の範囲にあって、かつ炭素原子数が14〜18の範囲にあるアルキル基が60モル%以上であるアルキル基を持つカルシウムサリシレートが過塩基化度1〜4のカルシウムサリシレートであって、平均炭素原子数が20〜24の範囲にあって、かつ炭素原子数が20〜24の範囲にあるアルキル基が60モル%以上であるアルキル基を持つカルシウムスルホネートもしくは平均炭素原子数が20〜28の範囲にあって、かつ炭素原子数が20〜28の範囲にあるアルキル基が60モル%以上であるアルキル基を持つカルシウムサリシレートが過塩基化度6〜24のカルシウムスルホネートもしくはカルシウムサリシレートである。
【0015】
(3)平均炭素原子数が14〜18の範囲にあって、かつ炭素原子数が14〜18の範囲にあるアルキル基が60モル%以上であるアルキル基を持つカルシウムサリシレートの過塩基化度に対する平均炭素原子数が20〜24の範囲にあって、かつ炭素原子数が20〜24の範囲にあるアルキル基が60モル%以上であるアルキル基を持つカルシウムスルホネートもしくは平均炭素原子数が20〜28の範囲にあって、かつ炭素原子数が20〜28の範囲にあるアルキル基が60モル%以上であるアルキル基を持つカルシウムサリシレートの過塩基化度の比(後者/前者)が2〜12の範囲にある。
【0016】
(4)過塩基性金属含有清浄剤が、平均炭素原子数が14〜18の範囲にあって、かつ炭素原子数が14〜18の範囲にあるアルキル基が60モル%以上(好ましくは70モル%以上)であるアルキル基を持つカルシウムサリシレートと平均炭素原子数が20〜24の範囲にあって、かつ炭素原子数が20〜24の範囲にあるアルキル基が60モル%以上(好ましくは70モル%以上)であるアルキル基を持つカルシウムスルホネートとを含む。
【0017】
(5)過塩基性金属含有清浄剤が、平均炭素原子数が14〜18の範囲にあって、かつ炭素原子数が14〜18の範囲にあるアルキル基が60モル%以上(好ましくは70モル%以上)であるアルキル基を持つカルシウムサリシレートと平均炭素原子数が20〜28の範囲にあって、かつ炭素原子数が20〜28の範囲にあるアルキル基が60モル%以上(好ましくは70モル%以上)であるアルキル基を持つカルシウムサリシレートとを含む。
【0018】
(6)モリブデン含有摩擦低減剤が潤滑油組成物の全体量に対して、モリブデン量換算で0.01〜0.15質量%の範囲の量で含まれる。
【0019】
(7)平均炭素原子数が14〜18の範囲にあって、かつ炭素原子数が14〜18の範囲にあるアルキル基が60モル%以上であるアルキル基を持つカルシウムサリシレートと平均炭素原子数が20〜24の範囲にあって、かつ炭素原子数が20〜24の範囲にあるアルキル基が60モル%以上であるアルキル基を持つカルシウムスルホネートもしくは平均炭素原子数が20〜28の範囲にあって、かつ炭素原子数が20〜28の範囲にあるアルキル基が60モル%以上であるアルキル基を持つカルシウムサリシレートが潤滑油組成物の全体量に対して、それぞれ独立に、カルシウム量換算値で0.01〜0.4質量%の範囲の量で含まれる。
【0020】
(8)平均炭素原子数が14〜24の範囲にあって、かつ炭素原子数が14〜24の範囲にあるアルキル基が60モル%以上(好ましくは70モル%以上)であるアルキル基を持ち、過塩基化度が0.1〜2の低塩基性カルシウムスルホネートをさらに含む。
(9)窒素含有無灰分散剤、リン酸亜鉛系酸化防止剤(あるいはリン酸亜鉛系摩耗防止剤)、そしてフェノール系酸化防止剤およびアミン系酸化防止剤からなる群から選ばれる酸化防止剤をさらに含む。
(10)リン酸亜鉛酸化防止剤が、ジヒドロカルビルジチオリン酸亜鉛の混合物であって、特に、ジ(第一アルキル)ジチオリン酸亜鉛とジ(第二アルキル)ジチオリン酸亜鉛との質量比で1/9〜9/1の割合の混合物を含む。
(11)窒素含有無灰分散剤がエチレンカーボネートあるいはホウ酸化合物で後処理されていてもよいこはく酸イミド系分散剤である。
(12)硫黄を含んでいてもよいこはく酸イミドのモリブデン錯体をさらに含む。
【0021】
(13)潤滑油基油が粘度指数120〜160の油である。
(14)SAE粘度グレードで0W20の潤滑油組成物である。
【発明の効果】
【0022】
本発明の潤滑油組成物は、ガソリンエンジンやディーゼルエンジンなどの内燃機関に高い省燃費性を付与することができるため、それらの内燃機関を搭載した車両の省燃費性の向上に寄与することができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
[基油]
本発明の潤滑油組成物における基油としては、通常、100℃における動粘度が2〜50mm2/sの鉱油や合成油が用いられる。基油として用いられる鉱油や合成油の種類、あるいは各種性状については特に制限はないが、硫黄含有量が0.1質量%以下であることが好ましく、この硫黄含有量は0.03質量%以下であることが特に好ましく、0.005質量%以下であることがさらに好ましい。
【0024】
鉱油系基油は、鉱油系潤滑油留分を溶剤精製あるいは水素化処理などの処理方法を適宜組み合わせて利用して処理したものであることが望ましく、特に高度水素化精製基油(特に、粘度指数が120〜160、芳香族含有量が5質量%以下、窒素および硫黄の含有量がそれぞれ50ppm以下である基油)が好ましく用いられる。
なかでも、スラックワックスやGTLワックスを水素化異性化して得られる高粘度指数基油(例えば、粘度指数140〜160)が特に好適に用いられる。
【0025】
合成油(合成潤滑油基油)としては、例えば炭素原子数3〜12のα−オレフィンの重合体であるポリ−α−オレフィン、ジオクチルセバケートに代表されるセバシン酸、アゼライン酸、アジピン酸などの二塩基酸と炭素原子数4〜18のアルコールとのエステルであるジアルキルジエステル、1−トリメチロールプロパンやペンタエリスリトールと炭素原子数3〜18の一塩基酸とのエステルであるポリオールエステル、炭素原子数9〜40のアルキル基を有するアルキルベンゼンなどを挙げることができる。一般に合成油は実質的に硫黄分を含まず、酸化安定性、耐熱性に優れ、一旦燃焼すると残留炭素や煤の生成が少ないので、本発明の潤滑油組成物では好ましく使用できる。
【0026】
鉱油系基油および合成系基油は、それぞれ単独で使用することができるが、所望により、二種以上の鉱油系基油、あるいは二種以上の合成系基油を組合わせて使用することもできる。また、所望により、鉱油系基油と合成系基油とを任意の割合で組合わせて用いることもできる。
【0027】
[モリブデン含有摩擦低減剤]
本発明の潤滑油組成物には、モリブデン含有摩擦低減剤が含まれる。モリブデン含有摩擦低減剤については各種の化合物及び組成物がこれまでに知られており、それらの化合物及び組成物の具体例は、前記の特許文献1〜3の各々に記載されている。
【0028】
モリブデン含有摩擦低減剤の好ましい例としては、硫化オキシモリブデンジチオカーバメート、硫化オキシモリブデンジチオホスフェート、アミンモリブデン錯体化合物、オキシモリブデンジエチラートアミド、そしてオキシモリブデンモノグリセリドを挙げることができる。本発明の潤滑油組成物には、なかでも、モリブデンジチオカーバメート系摩擦低減剤を用いることが特に好ましい。
【0029】
本発明の潤滑油組成物に含まれるモリブデン含有摩擦低減剤は、一般に潤滑油組成物の全量に対してモリブデン量換算値で0.01〜0.15質量%の範囲の量である。
【0030】
[過塩基性金属含有清浄剤]
本発明の潤滑油組成物には下記の過塩基性金属含有清浄剤が含まれる。
(a)成分:平均炭素原子数が14〜18の範囲にあって、かつ炭素原子数が14〜18の範囲にあるアルキル基が60モル%以上であるアルキル基を持つカルシウムサリシレート(特にモノアルキルサリシレート)、そして
(b)成分:平均炭素原子数が20〜24の範囲にあって、かつ炭素原子数が20〜24の範囲にあるアルキル基が60モル%以上であるアルキル基を持つカルシウムスルホネート(特にモノアルキルスルホネート)、及び/又は平均炭素原子数が20〜28の範囲にあって、かつ炭素原子数が20〜28の範囲にあるアルキル基が60モル%以上であるアルキル基を持つカルシウムサリシレート(特にモノアルキルサリシレート)。
【0031】
なお、上記の(b)成分の内の前者の平均炭素原子数が20〜24の範囲にあって、かつ炭素原子数が20〜24の範囲にあるアルキル基が60モル%以上であるアルキル基を持つカルシウムスルホネートと(b)成分の内の後者の平均炭素原子数が20〜28の範囲にあって、かつ炭素原子数が20〜28の範囲にあるアルキル基が60モル%以上であるアルキル基を持つカルシウムサリシレートは、いずれも単独で用いることができるが、必要により、それらを組合せて用いることができる。
【0032】
本発明の潤滑油組成物に含まれる(a)成分、すなわち、平均炭素原子数が14〜18の範囲にあって、かつ炭素原子数が14〜18の範囲にあるアルキル基が60モル%以上であるアルキル基を持つカルシウムサリシレートとしては、炭素原子数が14〜18の範囲内にあるアルキル基を持つ複数のカルシウムサリシレートを60モル%以上(特に70モル%以上)含む混合物であることが好ましい。
【0033】
また、(b)成分の一つである、平均炭素原子数が20〜24の範囲にあって、かつ炭素原子数が20〜24の範囲にあるアルキル基が60モル%以上であるアルキル基を持つカルシウムスルホネートとしては、炭素原子数が20〜24の範囲内にあるアルキル基を持つ複数のカルシウムスルホネートを60モル%以上(特に70モル%以上)含む混合物であることが好ましい。
【0034】
そして、(b)成分の一つである、平均炭素原子数が20〜28の範囲にあって、かつ炭素原子数が20〜28の範囲にあるアルキル基が60モル%以上であるアルキル基を持つカルシウムサリシレートとしては、炭素原子数が20〜28の範囲内にあるアルキル基を持つ複数のカルシウムサリシレートを60モル%以上(特に70モル%以上)含む混合物であることが好ましい。
【0035】
(a)成分と(b)成分とは一般に、いずれも潤滑油組成物の全体量に対してカルシウム量換算値として0.01〜0.4質量%の範囲の量で潤滑油組成物に含まれる。
【0036】
上記(a)成分のカルシウムサリシレートは、過塩基化度1〜4(特に過塩基化度1.5〜3)のカルシウムサリシレートであることが好ましい。なお、カルシウムサリシレートとしては非硫化あるいは硫化のカルシウムサリシレートを用いることができる。
【0037】
上記(b)成分のカルシウムスルホネートとカルシウムサリシレートは、それぞれ独立に、過塩基化度6〜24のカルシウムスルホネートとカルシウムサリシレートであることが好ましい。この過塩基化度は、カルシウムスルホネートについては、14〜20の範囲にあることが好ましく、カルシウムサリシレートについては、6〜12の範囲にあることが好ましい。
【0038】
上記の(a)成分と(b)成分とは、過塩基化度比「(b)成分/(a)成分」として、2〜12の範囲にあることが好ましい。
【0039】
なお、本発明の潤滑油組成物は、平均炭素原子数が14〜24の範囲にあって、かつ炭素原子数が14〜24の範囲にあるアルキル基が60モル%以上(特に70モル%以上)であるアルキル基を持ち、過塩基化度が0.1〜2の低塩基性カルシウムスルホネートをさらに含むことが好ましい。
【0040】
また、これまでに述べた過塩基性金属含有清浄剤に含まれないサリシレート系金属含有清浄剤、カルボキシレート系金属含有清浄剤、スルホネート系金属含有清浄剤、及び/又はフェネート系金属含有清浄剤などの過塩基性もしくは低塩基性の金属含有清浄剤も本発明で用いる過塩基性金属含有清浄剤に対して相対的に少量で併用することができる。
【0041】
[その他の添加剤]
本発明の潤滑油組成物はさらに他の潤滑油添加剤を含むことができる。そのような潤滑油添加剤の代表例としては、窒素含有無灰分散剤、ジヒドロカルビルジチオリン酸亜鉛などのリン酸亜鉛系酸化防止剤(あるいはリン酸亜鉛系摩耗防止剤)、そして有機酸化防止剤(例、フェノール系酸化防止剤およびアミン系酸化防止剤)を挙げることができる。
【0042】
窒素含有無灰分散剤としては、ポリオレフィンから誘導されるアルケニルもしくはアルキルこはく酸イミドあるいはその誘導体を用いることが好ましい。その添加量は、組成物の全質量に基づき、窒素含有量換算値で、0.01〜0.3質量%の範囲である。代表的なこはく酸イミドは、高分子量のアルケニルもしくはアルキル基で置換された、こはく酸無水物と1分子当り平均4〜10個(好ましくは5〜7個)の窒素原子を含むポリアルキレンポリアミンとの反応により得ることができる。高分子量のアルケニルもしくはアルキル基は、数平均分子量が約900〜3000のポリブテンであることが好ましい。
【0043】
ポリブテンと無水マレイン酸との反応により、ポリブテニルこはく酸無水物を得る工程では、多くの場合、塩素を用いる塩素化法が用いられているが、塩素を用いない熱反応法によっても得ることができる。この熱反応法で得られたポリブテニルこはく酸無水物からのこはく酸イミドを用いることが望ましい。こはく酸イミドは更にホウ酸化合物、アルコール、アルデヒド、ケトン、アルキルフェノール、環状カーボネート、有機酸等と反応させ、いわゆる変性こはく酸イミドにして用いることができる。特に、ホウ酸あるいはホウ酸化合物などのホウ素含有化合物との反応で得られるホウ素含有アルケニル(もしくはアルキル)こはく酸イミドは、熱・酸化安定性の点から有利である。
【0044】
本発明の潤滑油組成物は、上記のアルケニルもしくはアルキルこはく酸イミドあるいはその誘導体に加えて、あるいはそれらに代えて、アルケニルベンジルアミン系やアルケニルこはく酸エステル系の無灰分散剤を用いることもできる。
【0045】
本発明の潤滑油組成物はリン酸亜鉛系酸化防止剤(あるいはリン酸亜鉛系摩耗防止剤)を含むことができる。リン酸亜鉛系酸化防止剤(あるいはリン酸亜鉛系摩耗防止剤)は一般に、ジアルキルジチオリン酸亜鉛、ジアルキルモノチオリン酸亜鉛、およびジヒドロカルビルリン酸亜鉛からなる群より選ばれる。これらのリン酸亜鉛系摩耗防止剤の基本的な製造方法と特性については詳しく知られている。このリン酸亜鉛系摩耗防止剤は、リン含有量換算値で0.01〜0.12質量%の範囲で用いるが、低リン含量と低硫黄含量の観点からは、0.01〜0.06質量%の範囲の量で用いることが好ましい。
【0046】
ジアルキルジチオリン酸亜鉛は、炭素原子数3〜18のアルキル基もしくは炭素原子数3〜18のアルキル基を含むアルキルアリール基を有することが望ましい。特に好ましいのは、摩耗の抑制に特に有効な、炭素原子数3〜18の第二級アルコールから誘導されたアルキル基、あるいは炭素原子数3〜18の第一級アルコールと炭素原子数3〜18の第二級アルコールとの混合物から誘導されたアルキル基を含むジアルキルジチオリン酸亜鉛である。第一級アルコールからのジアルキルジチオリン酸亜鉛は耐熱性に優れる傾向がある。これらのジアルキルジチオリン酸亜鉛は、単独で用いてもよいが、第二級アルキル基タイプのものおよび/または第一級アルキル基タイプのものを主体とする混合物で用いることが好ましい。
【0047】
本発明の潤滑油組成物は有機酸化防止剤を含むことが好ましい。有機酸化防止剤としては、酸化防止性のフェノール化合物および/または酸化防止性のアミン化合物を0.01〜5質量%(好ましくは0.1〜3質量%)の範囲の量で用いることが好ましい。なかでも、ジアリールアミン系酸化防止剤及び/またはヒンダードフェノール系酸化防止剤が好ましい。これらの酸化防止剤は高温清浄性の向上にも効果的である。特にジアリールアミン系酸化防止剤は、窒素に由来する塩基価を有しているので、この点で有利である。一方、ヒンダードフェノール系酸化防止剤は、NOx酸化劣化の防止に有利である。
【0048】
ヒンダードフェノール系酸化防止剤の例としては、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、4,4’−メチレンビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノール)、4,4’−メチレンビス(6−t−ブチル−o−クレゾール)、4,4’−イソプロピリデンビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノール)、4,4’−ビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス(2−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2−チオ−ジエチレンビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、そして3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸オクチル、3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸オクタデシルなどのヒンダードフェノール類を挙げることができる。
【0049】
ジアリールアミン系酸化防止剤の例としては、炭素原子数が4〜9の混合アルキルジフェニルアミン、p,p’−ジオクチルジフェニルアミン、フェニル−α−ナフチルアミン、フェニル−β−ナフチルアミン、アルキル化−α−ナフチルアミン、そしてアルキル化−フェニル−α−ナフチルアミンなどのジアリールアミン類を挙げることができる。ヒンダードフェノール系酸化防止剤とジアリールアミン系酸化防止剤とは、それぞれ単独で使用することができるが、所望により組合せて使用する。また、これら以外の油溶性酸化防止剤を併用してもよい。
【0050】
本発明の潤滑油組成物は、酸化防止性をさらに向上させるために、こはく酸イミドのオキシモリブデン錯体、特にこはく酸イミドの硫黄含有オキシモリブデン錯体を含有することができる。こはく酸イミドの硫黄含有オキシモリブデン錯体は、特に上記のフェノール系もしくはアミン系の酸化防止剤と併用することにより、酸化防止性のさらなる向上が発現する。
【0051】
本発明の潤滑油組成物はさらに、アルカリ金属ホウ酸塩水和物を各々5質量%以下、特に0.01〜5質量%含有することができる。これらの化合物は灰分あるいは硫黄分等を含むものが多いが、本発明の潤滑油組成物全体の性状を考慮しながら、添加量を調整して使用することができる。アルカリ金属ホウ酸塩水和物としては、米国特許3929650および4089790に記載されている方法により合成される化合物に代表される化合物を挙げることができる。例えば、アルカリ金属またはアルカリ土類金属中性スルホネートをアルカリ金属水酸化物の存在下で炭酸化して過塩基性スルホネートを得、これにホウ酸を反応させて得られるアルカリ金属ホウ酸塩の微粒子分散体(炭酸化反応の時、こはく酸イミドのような無灰性分散剤を共存させるのが望ましい)を挙げることができる。ここでアルカリ金属としては、カリウムあるいはナトリウムが望ましい。その具体例として、中性カルシウムスルホネートおよびこはく酸イミド系に分散させた組成式:KB35・H2Oで表される粒径約0.3μm以下の微粒子分散体を挙げることができる。
【0052】
本発明の潤滑油組成物はさらに、粘度指数向上剤を20質量%以下(好ましくは1〜20質量%の範囲)の量で含むことが望ましい。粘度指数向上剤の例としては、ポリアルキルメタクリレート、エチレン−プロピレン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、そしてポリイソプレンなどの高分子化合物を挙げることができる。あるいは、これらの高分子化合物に分散性能を付与した分散型粘度指数向上剤もしくは多機能型粘度指数向上剤を用いることができる。これらの粘度指数向上剤は単独で用いることができるが、任意の粘度指数向上剤を二種以上組合せて使用しても良い。
【0053】
本発明の潤滑油組成物はさらに、各種の補助的な添加剤を含んでいてもよい。そのような補助的な添加剤の例としては、酸化防止剤あるいは摩耗防止剤として、亜鉛ジチオカーバメート、メチレンビス(ジブチルジチオカーバメート)、油溶性銅化合物、硫黄系化合物(例、硫化オレフィン、硫化エステル、ポリスルフィド)、リン酸エステル、亜リン酸エステル、チオリン酸エステル、有機アミド化合物(例、オレイルアミド)などを挙げることができる。また金属不活性剤として機能するベンゾトリアゾール系化合物やチアジアゾール系化合物などの化合物を添加することもできる。また、防錆剤あるいは抗乳化剤として機能するポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、エチレンオキシドとプロピレンオキシドとの共重合体などのポリオキシアルキレン非イオン性の界面活性剤を添加することもできる。また、摩擦調整剤として機能する各種アミン、アミド、アミン塩、およびそれらの誘導体、あるいは多価アルコールの脂肪酸エステル、あるいはそれらの誘導体を添加することもできる。さらにまた、消泡剤や流動点降下剤として機能する各種化合物を添加することもできる。なお、これらの補助的な添加剤は、潤滑油組成物に対して、それぞれ3質量%以下(特に、0.001〜3質量%の範囲)の量にて使用することが望ましい。
【実施例】
【0054】
[実施例1]〜[実施例3]、[比較例1]〜[比較例3]
(1)潤滑油組成物の製造
性能評価に供する潤滑油組成物(試験油)として、下記の添加剤成分を基油に添加して、表1に記載の処方により、本願発明に従う潤滑油組成物([実施例1]〜[実施例3])と比較用の潤滑油組成物([比較例1]〜[比較例3])を製造した。潤滑油組成物は、粘度指数向上剤の添加により、0W20のSAE粘度グレードであって、100℃での動粘度が7.7〜7.8mm2/sとなるように調整した。
【0055】
(2)基油及び添加剤
1)基油
スラックワックスを原料として水素化、分留、脱蝋の各プロセスを経て製造した鉱油系基油(100℃での動粘度:4.1mm2/s、粘度指数:137)
2)添加剤
【0056】
[窒素含有無灰分散剤]
数平均分子量が約2300のポリブテンから誘導されたビスタイプのこはく酸イミドをエチレンカーボネートで後処理して得たこはく酸イミド系分散剤(N含量:1.0質量%)
【0057】
[金属含有清浄剤]
a)過塩基性Ca−サリシレート(1)[Ca−サリ−1]:炭素原子数14〜18のアルキル基を持つ(但し、炭素原子数が14〜18の範囲にあるアルキル基はアルキル基全体の約80モル%である)カルシウム・モノアルキルサリシレート(Ca:6.1質量%、S:0.1質量%、TBN:170mg KOH/g、過塩基化度:2.3)
b)過塩基性Ca−スルホネート[Ca−スル−1]:炭素原子数20〜24のアルキル基を持つ(但し、炭素原子数が20〜24の範囲にあるアルキル基はアルキル基全体の約80モル%である)カルシウム・アルキルトルエンスルホネート(Ca:16.0質量%、S:1.6質量%、TBN:423mg KOH/g、過塩基化度:17)
c)過塩基性Ca−サリシレート(2)[Ca−サリ−2]:炭素原子数20〜28のアルキル基を持つ(但し、炭素原子数が20〜28の範囲にあるアルキル基はアルキル基全体の約80モル%である)カルシウム・モノアルキルサリシレート(Ca:11.4質量%、S:0.2質量%、TBN:320mg KOH/g、過塩基化度:8.2)
d)低塩基性Ca−スルホネート[Ca−スル−2]:炭素原子数14〜24のアルキル基を持つ(但し、炭素原子数が14〜24の範囲にあるアルキル基はアルキル基全体の約80モル%である)カルシウム・アルキルベンゼンスルホネート(Ca:2.4質量%、S:2.9質量%、TBN:17mg KOH/g、過塩基化度:0.34)
【0058】
[モリブデン含有摩擦低減剤]
硫化オキシモリブデンジチオカーバメート(Mo−DTC、Mo:10質量%、S:11質量%)
【0059】
[リン酸亜鉛酸化防止剤]
ジ(第二アルキル)ジチオリン酸亜鉛(ZnDTP−1、P:7.2質量%、Zn:7.8質量%、S:14質量%)
ジ(第一アルキル)ジチオリン酸亜鉛(ZnDTP−2、P:7.3質量%、Zn:8.4質量%、S:14質量%)
[酸化防止剤]
アミン系酸化防止剤:ジアルキルジフェニルアミン
[こはく酸イミド硫黄含有モリブデン錯体]
硫黄を含有するオキシモリブデン−こはく酸イミド錯体化合物(Mo含有錯体、Mo:5.5質量%、S:0.2質量%、N:1.6質量%、TBN:10mg KOH/g)
[粘度指数向上剤]
ポリメタクリレート系粘度指数向上剤
【0060】
(3)潤滑油組成物の評価
a)試験方法
直列4気筒、排気量1.8Lのガソリンエンジン(動弁機構はローラータイプ)を用い、トルクメーターを介しクランクシャフトを電動モーターで駆動し、回転トルクを測定した。ただし、ピストンのポンピング損失の影響を最小限にするために、点火プラグをはずし、大気開放の状態で試験を実施した。油温を100℃に維持し、各回転数で150秒間の試験を実施し、試験の開始から30秒間経過した後の120秒間に測定されたトルクから平均トルク値を算出した。
また、モリブデン含有摩擦低減剤を添加しないで作製した参照油(SAE粘度グレード:0W20、100℃での動粘度:8.9mm2/s)を調製し、この参照油のトルク値と上記の平均トルク値から、各試験油のトルク低減率(%)を求めて、表1に記載した。
【0061】
b)試験結果
上記の試験方法による試験結果を表1に示す。
【0062】
表1
────────────────────────────────────
試験油組成 実施例1 実施例2 実施例3 比較例1 比較例2 比較例3
────────────────────────────────────
窒素含有
無灰分散剤 0.03 0.03 0.03 0.03 0.03 0.03
Ca−サリ−1 0.12 0.06 0.12 0.18 - -
Ca−スル−1 0.06 0.12 - - 0.18 -
Ca−サリ−2 - - 0.06 - - 0.18
Ca−スル−2 0.02 0.02 0.02 0.02 0.02 0.02
Mo−DTC 0.07 0.07 0.07 0.07 0.07 0.07
ZnDTP−1 0.03 0.03 0.03 0.03 0.03 0.03
ZnDTP−2 0.05 0.05 0.05 0.05 0.05 0.05
酸化防止剤 1.2 1.2 1.2 1.2 1.2 1.2
Mo含有錯体 0.4 0.4 0.4 0.4 0.4 0.4
────────────────────────────────────
[試験結果]
トルク低減率(%)
550rpm 6.2 5.9 6.0 5.5 5.3 5.7
950rpm 4.1 4.2 3.9 3.5 3.7 3.6
1500rpm 2.0 2.2 2.0 1.6 1.9 1.3
────────────────────────────────────
【0063】
注:表1に記載の添加剤の添加量は、酸化防止剤とMo含有錯体については、そのもの自体の添加量(単位:質量%)であって、窒素含有無灰分散剤、Ca含有清浄剤(Ca−サリ−1、Ca−スル−1、Ca−サリ−2、Ca−スル−2)、MoDTC、そして亜鉛含有化合物(ZnDTP−1、ZnDTP−2)については、それぞれN量、Ca量、Mo量、Zn量そしてP量の換算値(単位:質量%)である。
【0064】
上記の評価試験結果から明らかなように、本願発明に従う潤滑油組成物(実施例1〜3)は、過塩基性金属含有清浄剤の組成が異なる潤滑油組成物(比較例1〜3)に比べて、明らかに高いトルク低減率を示す。