特許第5773373号(P5773373)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5773373グラフト重合体、その製造方法及びセメント混和剤
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5773373
(24)【登録日】2015年7月10日
(45)【発行日】2015年9月2日
(54)【発明の名称】グラフト重合体、その製造方法及びセメント混和剤
(51)【国際特許分類】
   C04B 24/26 20060101AFI20150813BHJP
   C04B 28/02 20060101ALI20150813BHJP
   C08F 283/06 20060101ALI20150813BHJP
   C08F 2/44 20060101ALI20150813BHJP
【FI】
   C04B24/26 E
   C04B24/26 F
   C04B24/26 H
   C04B24/26 Z
   C04B28/02
   C08F283/06
   C08F2/44 C
【請求項の数】9
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2013-520592(P2013-520592)
(86)(22)【出願日】2012年6月15日
(86)【国際出願番号】JP2012065304
(87)【国際公開番号】WO2012173218
(87)【国際公開日】20121220
【審査請求日】2013年9月27日
(31)【優先権主張番号】特願2011-135335(P2011-135335)
(32)【優先日】2011年6月17日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004628
【氏名又は名称】株式会社日本触媒
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】特許業務法人 安富国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森本 正和
(72)【発明者】
【氏名】服部 真美
(72)【発明者】
【氏名】湯浅 務
【審査官】 相田 悟
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−247346(JP,A)
【文献】 特開2005−179605(JP,A)
【文献】 特開平11−079817(JP,A)
【文献】 特開平11−080288(JP,A)
【文献】 特開平11−139855(JP,A)
【文献】 特開2004−002170(JP,A)
【文献】 特開2004−323347(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 7/00〜28/36
C08F 2/44,283/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
グリセリン類に、イオン性基含有単量体及び/又はそのエステルを含む単量体成分をグラフト重合させて得られ
該グリセリン類は、グリセリン及び/又はポリグリセリンであることを特徴とするセメント混和剤用グラフト重合体。
【請求項2】
前記イオン性基含有単量体は、カルボン酸系単量体、スルホン酸系単量体及びリン酸系単量体からなる群より選択される少なくとも1種の単量体であることを特徴とする請求項1に記載のセメント混和剤用グラフト重合体。
【請求項3】
前記イオン性基含有単量体は、モノカルボン酸系単量体及び/又はジカルボン酸系単量体であることを特徴とする請求項1に記載のセメント混和剤用グラフト重合体。
【請求項4】
前記グラフト重合体は、グリセリン類と、イオン性基含有単量体及び/又はそのエステルとの質量比(グリセリン類/イオン性基含有単量体及び/又はそのエステルの総量)が、60/40〜99/1であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のセメント混和剤用グラフト重合体。
【請求項5】
前記イオン性基含有単量体は、(メタ)アクリル酸系単量体であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のセメント混和剤用グラフト重合体。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載のセメント混和剤用グラフト重合体を含むことを特徴とするセメント混和剤。
【請求項7】
請求項6に記載のセメント混和剤、セメント及び水を含むことを特徴とするセメント組成物。
【請求項8】
グリセリン類に、イオン性基含有単量体及び/又はそのエステルを含む単量体成分をグラフト重合させて得られるグラフト重合体を製造する方法であって、
該製造方法は、グリセリン類に、イオン性基含有単量体及び/又はそのエステルを含む単量体成分をグラフト重合させるグラフト重合工程を有し、
該グラフト重合工程は、重合開始剤の存在下、実質的に溶媒を用いず、100℃以上の温度で行う工程であり、
該グリセリン類は、グリセリン及び/又はポリグリセリンであることを特徴とするグラフト重合体の製造方法。
【請求項9】
前記グリセリン類と、イオン性基含有単量体及び/又はそのエステルとの質量比(グリセリン類/イオン性基含有単量体及び/又はそのエステルの総量)は、80/20〜99/1であることを特徴とする請求項8に記載のグラフト重合体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グラフト重合体、その製造方法及びセメント混和剤に関する。より詳しくは、グリセリン類を用いたグラフト重合体、その製造方法、グラフト重合体を含むセメント混和剤、及び、それを含むセメント組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
グリセリンは、主に、油脂の加水分解やプロピレンを用いた合成手法等により得られ、医薬品、化粧品、樹脂、塗料等の原料として有用なものである。しかしながら、近年、グリセリンの有効利用が課題となっている。すなわち、環境保護の観点から、石油代替燃料としてバイオディーゼル燃料が注目されているが、バイオディーゼル燃料(脂肪酸エステル)を得るには、アルカリ触媒の存在下、植物油脂や動物油脂等の油脂と低級アルコールとをエステル交換反応させた後、副生されたグリセリンを除去して得る手法が一般的であり、このような手法では、原理的にグリセリンの副生を抑制することは難しい。今後、バイオディーゼル燃料の生産量増加に伴い、副生グリセリンが余剰となることが予想される一方で、現在のグリセリンの用途では消費量は限定されているため、グリセリンを有効に活用する技術が求められている。
【0003】
グリセリンを利用した技術としては、例えば、特許文献1に、グリセリンの脱水縮合重合で得られるグリセリン重合物を、モルタル及びコンクリート用混和剤として利用する手法が開示され、特許文献2には、グリセリン/ポリグリセリンと脂肪族カルボン酸とのエステルを用いたセメント分散組成物が開示されている。また、特許文献3には、不飽和結合を有するポリグリセリンエステル単量体と酸系単量体とを重合して得られる共重合体を含むコンクリート混和剤が開示されている。更に、特許文献4には、ポリグリセリンにアクリル酸又はその塩をグラフト重合させて得た吸水性グラフト重合体が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特公昭52−35048号公報
【特許文献2】特公昭58−135165号公報
【特許文献3】特開平7−215747号公報
【特許文献4】特開2005−179605号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したように、グリセリンの有効活用法が求められており、例えば、特許文献1〜3のように、セメントやコンクリート、モルタル等のセメント組成物に添加される減水剤用途が検討されつつある。減水剤は、通常、セメント組成物の流動性を高めてセメント組成物を減水させることにより、硬化物の強度や耐久性等を向上させる作用を発揮させることを目的として使用される剤であり、従来の減水剤として代表的なものにはリグニンスルホン酸塩を主成分とするAE(空気連行)減水剤がある。しかしながら、これまでのグリセリンを利用した技術では、従来の減水剤と同等の又はそれを凌駕する減水性(セメント分散性、流動性)を発揮できるレベルには至っていない。なお、特許文献3のコンクリート混和剤が必須とする共重合体は、その製造工程での反応温度や溶媒条件から勘案すると、通常のラジカル重合法により、単量体単位がランダムに結合した構造の共重合体と推測される。
【0006】
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、グリセリンの有効利用に効果的で、各種用途、特にセメント混和剤用途に有用なグラフト重合体、それを含むセメント混和剤及びセメント組成物を提供すること、並びに、該グラフト重合体を効率的に製造できる製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、グリセリンの有効利用に関し鋭意検討を重ねた結果、グリセリン類に、イオン性基含有単量体及び/又はそのエステルを含む単量体成分をグラフト重合させて得られるグラフト重合体が、この構造的特徴に起因して、各種用途に有用なものであることを見いだした。このようなグラフト重合体は、特に分散性能に優れ、セメント混和剤等の各種用途に好適に使用できるため、近年の課題であるグリセリンの有効利用に効果的である。特に、グリセリン類と、イオン性基含有単量体及び/又はそのエステルとの質量比が特定範囲内のものであると、分散性能がより一層向上されるため、分散性能が要求される分野に極めて好適なものとなる。また、グリセリンは廉価であるため、各種用途でこのグラフト重合体を原料とすれば、低コストで高性能の製品を提供することができる。本発明者等はまた、このようなグラフト重合体を得る際に特定条件下でグラフト重合を行う製造方法を採用すると、効率よく製造することができることを見いだし、本発明に到達した。
【0008】
すなわち本発明は、下記の発明(1)〜(6)からなる。
発明(1):グリセリン類に、イオン性基含有単量体及び/又はそのエステルを含む単量体成分をグラフト重合させて得られるセメント混和剤用グラフト重合体。
発明(2):グリセリン類に、イオン性基含有単量体及び/又はそのエステルを含む単量体成分をグラフト重合させて得られるグラフト重合体であって、該グラフト重合体は、グリセリン類と、イオン性基含有単量体及び/又はそのエステルとの質量比(グリセリン類/イオン性基含有単量体及び/又はそのエステルの総量)が、1/99〜99/1であるグラフト重合体。
発明(3):上記セメント混和剤用グラフト重合体を含むセメント混和剤。
発明(4):上記グラフト重合体を含むセメント混和剤。
発明(5):上記セメント混和剤、セメント及び水を含むセメント組成物。
発明(6):グリセリン類に、イオン性基含有単量体及び/又はそのエステルを含む単量体成分をグラフト重合させて得られるグラフト重合体を製造する方法であって、該製造方法は、グリセリン類に、イオン性基含有単量体及び/又はそのエステルを含む単量体成分をグラフト重合させるグラフト重合工程を有し、該グラフト重合工程は、重合開始剤の存在下、実質的に溶媒を用いず、100℃以上の温度で行うグラフト重合体の製造方法。
以下に本発明を詳述する。なお、以下に記載される本発明の個々の好ましい形態を2つ又は3つ以上組み合わせた形態も、本発明の好ましい形態である。
【0009】
<グラフト重合体>
本発明のグラフト重合体は、グリセリン類に、イオン性基含有単量体及び/又はそのエステルを含む単量体成分をグラフト重合させて得られるものであり、具体的には、グリセリン類に、イオン性基含有単量体及び/又はそのエステルに由来するイオン性基含有単量体単位がグラフト結合された構造を有する。グリセリン類及び単量体成分は、それぞれ、1種のものを使用してもよいし、2種以上のものを使用してもよい。このような本発明のグラフト重合体は、後述するようにセメント混和剤用途に特に有用であるが、このようにグリセリン類に、イオン性基含有単量体及び/又はそのエステルを含む単量体成分をグラフト重合させて得られるセメント混和剤用グラフト重合体は、本発明の1つである。
なお、本発明のグラフト重合体は、おそらく、グリセリン類を構成する炭素原子の少なくとも1つに、イオン性基含有単量体単位が結合した構造を持つものと推測される。
【0010】
上記グリセリン類に単量体成分をグラフト重合させる方法としては、例えば、重合開始剤の存在下、実質的に溶媒を用いず、100℃以上の温度でグラフト重合工程を行うことが好適である。これによって、分散性能に優れるグラフト重合体を効率的に得ることが可能になる。このようなグラフト重合工程の好ましい形態は、後述するとおりである。
なお、グリセリン類に上記単量体成分がグラフト重合されていることは、例えば、キャピラリー電気泳動法や、GPCにより確認することができる。
【0011】
上記グラフト重合体の重量平均分子量は、1000〜200000であることが好適である。この範囲にあることで、分散性能をより高めることができるため、例えばセメント混和剤用途に用いた場合に、少ない添加量でより高いセメント分散性を発揮することができる。より好ましくは3000〜100000、更に好ましくは5000〜50000である。
なお、重量平均分子量は、例えば、ポリエチレングリコール換算によるゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)によって、後述するGPC測定条件にて測定することができる。
【0012】
上記グラフト重合体において、グリセリン類と、イオン性基含有単量体及び/又はそのエステルとの質量比(グリセリン類/イオン性基含有単量体及び/又はそのエステルの総量)は、1/99〜99/1であることが好適である。このようにグリセリン類に、イオン性基含有単量体及び/又はそのエステルを含む単量体成分をグラフト重合させて得られるグラフト重合体であって、該グラフト重合体は、グリセリン類と、イオン性基含有単量体及び/又はそのエステルの総量との質量比(グリセリン類/イオン性基含有単量体及び/又はそのエステルの総量)が、1/99〜99/1であるグラフト重合体もまた、本発明の1つである。
【0013】
上記イオン性基含有単量体及び/又はそのエステルとの質量比(グリセリン類/イオン性基含有単量体及び/又はそのエステルの総量)としてより好ましくは、60/40〜99/1である。この範囲内であれば、グラフト重合体の分散性能をより高めることができるため、分散性能が要求される分野(例えば、セメント混和剤用途)でより有用なものとなる。なお、イオン性基含有単量体及び/又はそのエステルの総量の割合が上記範囲内にあることで、減水効果がより充分になるとともに、重合を容易に行うことが可能になる。上記質量比として更に好ましくは、70/30〜99/1である。
【0014】
−グリセリン類−
上記グラフト重合体を構成するグリセリン類とは、1分子中に平均3個以上の水酸基を含有する化合物を意味し、炭素、水素及び酸素の3つの元素から構成される化合物であることが好ましい。このようなグリセリン類が有する水酸基の数は、3個以上が適当であるが、グラフト重合を行う際の重合性の観点から、100個以下であることが好適である。より好ましくは4〜50個、更に好ましくは5〜20個である。
上記グリセリン類はまた、不飽和結合を有しないことが好適である。
なお、上記グラフト重合体におけるグリセリン類に由来する骨格の結合形状は、直鎖状、環状又は分岐状のいずれであってもよいし、これらのうち2以上の結合形状を有するものであってもよい。
【0015】
上記グリセリン類としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリグリシドール、グリセリン、ポリグリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,3,5−ペンタトリオール、エリスリトール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、ソルビトール、ソルビタン、ソルビトールグリセリン縮合物、アドニトール、アラビトール、キシリトール、マンニトール等が好適である。また、糖類として、グルコース、フルクトース、マンノース、インドース、ソルボース、グロース、タロース、タガトース、ガラクトース、アロース、プシコース、アルトロース等のヘキソース類の糖類;アラビノース、リブロース、リボース、キシロース、キシルロース、リキソース等のペントース類の糖類;トレオース、エリトルロース、エリトロース等のテトロース類の糖類;ラムノース、セロビオース、マルトース、イソマルトース、トレハロース、シュウクロース、ラフィノース、ゲンチアノース、メレジトース等のその他糖類;これらの糖アルコール、糖酸(糖類;グルコース、糖アルコール;グルシット、糖酸;グルコン酸)も好適である。更に、これら例示化合物のアルキレンオキシド付加物や、部分エーテル化物、部分エステル化物等の誘導体も好適である。なお、上記グリセリン類がアルキレンオキシド基を含む化合物(例えば、上記例示化合物のアルキレンオキサイド付加物)である形態は、本発明の好適な形態の1つである。このアルキレンオキシド基を含む化合物として好ましくは、後述するようにポリグリセリンのアルキレンオキシド付加物である。
【0016】
上記グリセリン類の中でも、本発明においては、グリセリン、ポリグリセリン及びポリグリセリンのアルキレンオキシド付加物が好適である。より好ましくは、ポリグリセリン及びポリグリセリンのアルキレンオキシド付加物である。
なお、バイオディーゼル燃料の製造時に生じる副生グリセリンの有効活用の観点からは、副生グリセリンや、それを用いたポリグリセリン及びポリグリセリンのアルキレンオキシド付加物を使用することが好適である。
【0017】
上記ポリグリセリンは、分子内にグリセリン骨格(グリセリン単位)を2以上有する化合物を意味する。ポリグリセリンは、製造したものを用いてもよいし、市販のものを用いてもよい。ポリグリセリンの製造方法としては、例えば、(1)グリセリンの脱水縮合反応、(2)グリセリン蒸留成分からの回収、(3)グリセリン類似化合物(例えば、グリシドール)からの合成、という3つの手法が挙げられる。一般に、手法(1)又は(2)のように出発原料をグリセリンとして得られるポリグリセリンは、直鎖状の構造を有する。また、手法(3)のうち、出発原料をグリシドールとして得られるポリグリセリンは、分岐状の構造を有する。例えば、阪本薬品工業社製のポリグリセリン(♯500、750)は、出発原料がグリセリンであり、直鎖状ポリグリセリンとなる。一方、ダイセル工業社製のポリグリセリン(PGL 06、PGL 10)は、出発原料がグリシドールであり、分岐状ポリグリセリンとなる。
なお、上記ポリグリセリンの中でも、本発明では、分岐状のポリグリセリンを用いることが好適である。すなわち、上記グリセリン類が分岐型ポリグリセリンである形態もまた、本発明の好適な形態の1つである。
【0018】
上記ポリグリセリンにおけるグリセリン骨格の平均繰り返し数は、2〜300であることが好ましく、より好ましくは2〜100、更に好ましくは2〜50である。
【0019】
上記ポリグリセリンのアルキレンオキシド付加物とは、ポリグリセリンに、アルキレンオキシド(アルキレングリコール)を1種又は2種以上付加反応させて得られる化合物であり、その付加反応方法は特に限定されるものではない。例えば、アルキレンオキサイドを付加させる際の反応温度は、副生成物の発生をより抑制するとともに、付加速度を高めて生産性を向上できる観点からは、60〜180℃とするのが好ましい。また、触媒として、例えば、アルカリ金属、アルカリ土類金属及びそれらの水酸化物を用いることが好適である。更に、付加反応は、窒素、アルゴン、ヘリウム等の不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましく、より好ましくは窒素雰囲気下である。また加圧下で行うことも好適である。
【0020】
上記アルキレンオキシドとしては、炭素数2〜18のアルキレンオキシドが好適である。中でも、反応性の観点や、また分散性能の向上の観点、特にセメント混和剤用途に用いた場合にセメント粒子の分散性や親水性をより向上させる観点から、炭素数2〜8のアルキレンオキシドが好ましい。より好ましくは炭素数2〜4のアルキレンオキシド、更に好ましくは炭素数2〜3のアルキレンオキシドであり、特に好ましくは、炭素数2のアルキレンオキシド(エチレングリコール、エチレンオキシド)が主であることであり、これにより、グラフト重合体により充分な親水性及び分散性能が付与されることとなる。
ここで、「主である」とは、例えば、アルキレンオキシドの全量100モル%に対し、エチレンオキシドが50モル%以上であることが好ましい。より好ましくは70モル%以上、更に好ましくは90モル%以上である。
【0021】
上記ポリグリセリンのアルキレンオキシド付加物において、アルキレンオキシド単位の平均繰り返し数は、例えば、1〜20であることが好適である。より好ましくは1〜10、更に好ましくは1〜3である。
なお、1つのアルキレンオキシド鎖が2種以上のアルキレンオキシドから構成される場合、その結合形態はブロック状であってもよいし、ランダム状であってもよい。
【0022】
上記ポリグリセリン及びポリグリセリンのアルキレンオキシド付加物の重量平均分子量は、150〜25000であることが好適である。これにより、分散性能をより高めることができる。より好ましくは150〜7500、更に好ましくは150〜4000である。
なお、重量平均分子量は、例えば、ポリエチレングリコール換算によるゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)によって、後述するGPC測定条件にて測定することができる。
【0023】
−イオン性基含有単量体及び/又はそのエステル−
上記単量体成分において、イオン性基含有単量体及び/又はそのエステルは、重合に供されて上記グラフト重合体中にイオン性基含有単量体単位を与えるものである。イオン性基含有単量体単位とは、イオン性基含有単量体及び/又はそのエステルに由来する構成単位を意味し、イオン性基含有単量体及び/又はそのエステルが有する不飽和二重結合部分(C=C)が、単結合(−C−C−)となった構造を意味する。
上記イオン性基含有単量体としては、カチオン性基含有単量体であってもよいし、アニオン性基含有単量体であってもよいが、後述するようにアニオン性基含有単量体であることが好ましい。
【0024】
上記カチオン性基含有単量体としては、少なくとも1つの窒素原子を含むカチオン性基含有単量体が好適である。そのようなカチオン性基含有単量体として、例えば、ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート、ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミド、ビニルイミダゾール、ビニルピリジン、ジアリルアルキルアミン及びこれらの四級化物;ジアリルアミン等が挙げられる。
【0025】
上記四級化物は、上記ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート等を四級化剤で四級化したものである。当該四級化剤としては、四級化剤として通常用いられているものを使用することができ、例えば、塩化メチル、塩化エチル、臭化メチル、臭化エチル、ヨウ化メチル、ベンジルクロリド等のハロゲン化アルキル;ジメチル硫酸、ジエチル硫酸等のアルキル硫酸塩;等を用いることができる。
【0026】
上記ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレートとしては、具体的には、ジメチルアミノメチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノメチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジプロピルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノブチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノブチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノヘキシル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノオクチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノドデシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0027】
上記ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレートの四級化物としては、具体的には、トリメチルアンモニウムエチル(メタ)アクリレートクロリド、トリメチルアンモニウムエチル(メタ)アクリレートサルフェート、ジメチルエチルアンモニウムエチル(メタ)アクリレートサルフェート、トリメチルアンモニウムプロピル(メタ)アクリレートクロリド、トリメチルアンモニウムプロピル(メタ)アクリレートサルフェート、ジメチルエチルアンモニウムプロピル(メタ)アクリレートサルフェート、トリメチルアンモニウムブチル(メタ)アクリレートクロリド、トリメチルアンモニウムブチル(メタ)アクリレートサルフェート、ジメチルエチルアンモニウムブチル(メタ)アクリレートサルフェート等が挙げられる。
【0028】
上記ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミドとしては、具体的には、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノブチル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノオクチル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノドデシル(メタ)アクリルアミド、ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
【0029】
上記ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミドの四級化物としては、具体的には、(メタ)アクリルアミドエチルトリメチルアンモニウムクロリド、(メタ)アクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロリド、(メタ)アクリルアミドブチルトリメチルアンモニウムクロリド等が挙げられる。
【0030】
上記ビニルイミダゾール及びその四級化物としては、具体的には、ビニルイミダゾール、3−メチル−1−ビニルイミダゾリウムクロリド、3−メチル−1−ビニルイミダゾリウムメチルサルフェート、3−エチル−1−ビニルイミダゾリウムエチルサルフェート、3−エチル−1−ビニルイミダゾリウムクロリド、3−ベンジル−1−ビニルイミダゾリウムクロリド等が挙げられる。
【0031】
上記ビニルピリジン及びその四級化物としては、具体的には、ビニルピリジン、1−メチル−4−ビニルピリジニウムクロリド、1−メチル−4−ビニルピリジニウムメチルサルフェート、3−ベンジル−1−ビニルピリジニウムクロリド等が挙げられる。
【0032】
上記ジアリルアルキルアミン及びその四級化物としては、具体的には、ジアリルメチルアミン、ジアリルエチルアミン、ジアリルジメチルアンモニウムクロリド、ジアリルジエチルアンモニウムクロリド、ジアリルメチルエチルアンモニウムクロリド、ジアリルジプロピルアンモニウムクロリド等が挙げられる。
【0033】
上記イオン性基含有単量体としては、アニオン性基含有単量体が好ましい。アニオン性基含有単量体としては、カルボン酸系単量体、スルホン酸系単量体、リン酸系単量体、ホスホン酸系単量体、硫酸系単量体等の1種又は2種以上が好適である。中でも、より優れた分散性能を発揮できる観点から、カルボン酸系単量体、スルホン酸系単量体及びリン酸系単量体からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。すなわち、上記イオン性基含有単量体として、カルボン酸系単量体、スルホン酸系単量体、及び、リン酸系単量体からなる群より選択される少なくとも1種を用いることが好適である。言い換えれば、上記グラフト重合体は、カルボン酸系単量体単位、スルホン酸系単量体単位及びリン酸系単量体単位からなる群より選択される少なくとも1種の単量体単位を有することが好適である。上記イオン性基含有単量体としてより好ましくは、カルボン酸系単量体及びリン酸系単量体からなる群より選択される少なくとも1種を用いることである。
【0034】
上記カルボン酸系単量体は、不飽和二重結合(炭素炭素二重結合)と、カルボキシル基及び/又はカルボン酸塩とを含む単量体である。
ここで、カルボキシル基及び/又はカルボン酸塩を含むとは、−COOZ(Zは、水素原子、金属原子、アンモニウム基又は有機アミン基を表す。)で表される基を、1分子中に1個又は2種以上有することを意味する。金属原子としては、例えば、ナトリウム、リチウム、カリウム、ルビジウム、セシウム等の1価金属;マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム等の2価金属;アルミニウム等の3価金属;鉄等のその他の金属;等が挙げられる。また、有機アミン基としては、例えば、モノエタノールアミン基、ジエタノールアミン基、トリエタノールアミン基等のアルカノールアミン基;モノエチルアミン基、ジエチルアミン基、トリエチルアミン基等のアルキルアミン基;エチレンジアミン基、トリエチレンジアミン基等のポリアミン基等が挙げられる。上記カルボン酸塩としては、これらの中でも、アンモニウム塩、ナトリウム塩又はカリウム塩が好ましく、より好ましくはナトリウム塩である。
【0035】
上記カルボン酸系単量体としては、1分子内に不飽和二重結合と1つのカルボキシル基又はカルボン酸塩とを含むモノカルボン酸系単量体や、1分子内に不飽和二重結合と2つのカルボキシル基又はカルボン酸塩とを含むジカルボン酸系単量体が好適である。本発明のグラフト重合体は、これらの単量体に由来する構成単位、すなわちモノカルボン酸系単量体単位及び/又はジカルボン酸系単量体単位を含むことが好適である。この場合、本発明のグラフト重合体は、より高い分散性能を発揮できるため、セメント混和剤用の重合体としてより一層好適なものとなる。このように上記イオン性基含有単量体が、モノカルボン酸系単量体及び/又はジカルボン酸系単量体である形態もまた、本発明の好適な形態の1つである。
【0036】
上記モノカルボン酸系単量体として具体的には、例えば、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、αーヒドロキシアクリル酸、α−ヒドロキシメチルアクリル酸及びその誘導体等の不飽和カルボン酸や、これらの塩等が挙げられる。また、モノカルボン酸系単量体として、ジカルボン酸系単量体と後述するアルコール類とのハーフエステルを用いることもできる。なお、アクリル酸及びメタクリル酸を総称して「(メタ)アクリル酸」という。
【0037】
上記ジカルボン酸系単量体として具体的には、例えば、マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸、フマル酸、メサコン酸等の不飽和ジカルボン酸、これらの塩、及び、これらの無水物等が挙げられる。
【0038】
上述した中でも、カルボン酸系単量体としては、重合性の観点から、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸塩、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸及びこれらの塩が好適である。より好ましくは、(メタ)アクリル酸及び/又はその塩(これらを総称して「(メタ)アクリル酸系単量体」という。)であり、上記グラフト重合体が(メタ)アクリル酸系単量体やそのエステルに由来する単位を有することで、より少量で優れた分散性能を発揮することが可能になる。このように、上記イオン性基含有単量体が(メタ)アクリル酸系単量体である形態もまた、本発明の好適な形態の1つである。より好ましくは、アクリル酸系単量体(アクリル酸若しくはその塩)である。
【0039】
上記スルホン酸系単量体は、不飽和二重結合(炭素炭素二重結合)と、スルホン酸基及び/又はスルホン酸塩とを含む単量体である。スルホン酸基及び/又はスルホン酸塩を含むとは、−SOZ(Zは、上述したとおりである。)で表される基を、1分子中に1個又は2種以上有することを意味し、スルホン酸塩として好ましくは、アンモニウム塩、ナトリウム塩又はカリウム塩であり、より好ましくはナトリウム塩である。
【0040】
上記スルホン酸系単量体としては、例えば、ビニルスルホン酸、(メタ)アリルスルホン酸、メタリルオキシベンゼンスルホン酸、イソプレンスルホン酸、2−メチルプロパンスルホン酸(メタ)アクリルアミド、スチレンスルホン酸、2−ヒドロキシ−3−アリルオキシスルホン酸、スルホエチル(メタ)アクリレート、スルホプロピル(メタ)アクリレート、スルホブチル(メタ)アクリレート等の不飽和スルホン酸類、並びに、これらの一価金属塩、二価金属塩、アンモニウム塩及び有機アンモニウム塩が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。また、塩としては一価金属塩が好ましい。
【0041】
上記リン酸系単量体は、不飽和二重結合(炭素炭素二重結合)と、リン酸基及び/又はリン酸塩とを含む単量体である。リン酸基及び/又はリン酸塩を含むとは、−(PO(Z)(Zは、上述したとおりであり、異なる2種以上でもよい。mはPOの価数、nはZの価数である。)で表される基を、1分子中に1個又は2種以上有することを意味し、リン酸塩として好ましくは、アンモニウム塩、ナトリウム塩又はカリウム塩であり、より好ましくはナトリウム塩である。
【0042】
上記リン酸系単量体としては、例えば、不飽和カルボン酸と1分子中に2個以上の水酸基を有する化合物とのエステル化物と、リン酸とのエステル化物が好適である。具体的には、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールモノ(メタ)アクリレート等の水酸基含有(メタ)アクリレートとリン酸とのエステル化物;ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート等のポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレートとリン酸とのエステル化物等が好適であり、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
【0043】
また上記イオン性基含有単量体のエステルとは、加水分解によりイオン性基含有単量体(塩を含む)となる構造を有する化合物である。例えば、上述したイオン性基含有単量体とアルコール類とを通常の手法でエステル化反応して得られる化合物の他、該化合物に該当しない、不飽和結合を有するカルボン酸エステル(例えば、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等の水酸基含有(メタ)アクリレート)、不飽和結合を有するスルホン酸エステル、及び、不飽和結合を有するリン酸エステル等が挙げられる。上記イオン性基含有単量体のエステルとして好ましくは、上述したアニオン性基含有単量体のエステルである。より好ましくは、カルボン酸系単量体のモノエステル及びジエステルであり、更に好ましくは、(メタ)アクリル酸系単量体のエステル、すなわち(メタ)アクリル酸エステルである。
【0044】
上記アルコール類としては、例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、3−ペンタノール、1−ヘキサノール、2−ヘキサノール、3−ヘキサノール、オクタノール、2−エチル−1−ヘキサノール、ノニルアルコール、ラウリルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール等の炭素数1〜30の脂肪族アルコール類;シクロヘキサノール等の炭素数3〜30の脂環族アルコール類;(メタ)アリルアルコール、3−ブテン−1−オール、3−メチル−3−ブテン−1−オール等の炭素数3〜30の不飽和アルコール類等の1価アルコール類の他、(ポリ)アルキレングリコール等の2価アルコール類;上述したグリセリン類等の3価以上の多価アルコール類;等も挙げられ、これらの1種又は2種以上を使用することができる。また、これら例示化合物のアルキレンオキシド付加物や、部分エーテル化物、部分エステル化物等の誘導体も好適である。
なお、このアルキレンオキシド付加物として具体的には、上記1価アルコール類にアルキレンオキシドを付加反応して得られる、(アルコキシ)(ポリ)アルキレングリコール類が挙げられる。この場合、上記アニオン性基含有単量体のエステルとしては、(アルコキシ)(ポリ)アルキレングリコールモノ/ジ(メタ)アクリレートが例示でき、例えば、メトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0045】
−その他の単量体−
上記単量体成分ではまた、イオン性基含有単量体及び/又はそのエステル以外の単量体(「その他の単量体」とも称する。)を含んでもよい。すなわち上記グラフト重合体は、イオン性基含有単量体単位(イオン性基含有単量体及び/又はそのエステルに由来する構成単位)だけでなく、その他の単量体単位を含むものであってもよい。その他の単量体単位とは、その他の単量体が有する不飽和二重結合部分が、単結合となった構造を意味する。
上記その他の単量体単位は、上記グリセリン類に由来する骨格に結合されていてもよいし、イオン性基含有単量体単位に結合されていてもよく、特に限定されるものではない。
【0046】
上記単量体成分におけるその他の単量体の割合は、イオン性基含有単量体単位に起因する作用効果を充分に発揮させるために、全単量体成分(イオン性基含有単量体及び/又はそのエステルと、その他の単量体との合計量)100質量%に対し、30質量%以下であることが好適である。より好ましくは20質量%以下、更に好ましくは10質量%以下である。
【0047】
上記その他の単量体としては特に限定されないが、例えば、下記化合物の1種又は2種以上を使用することもできる。
ビニルアルコールアルキレンオキシド付加物、(メタ)アリルアルコールアルキレンオキシド付加物、3−ブテン−1−オールアルキレンオキシド付加物、イソプレンアルコール(3−メチル−3−ブテン−1−オール)アルキレンオキシド付加物、3−メチル−2−ブテン−1−オールアルキレンオキシド付加物、2−メチル−3−ブテン−2−オールアルキレンオキシド付加物、2−メチル−2−ブテン−1−オールアルキレンオキシド付加物、2−メチル−3−ブテン−1−オールアルキレンオキシド付加物等の不飽和アルコールポリアルキレングリコール付加物;
上記不飽和ジカルボン酸系単量体と炭素原子数23〜30のアミンとのハーフアミド、ジアミド類;マレアミン酸と炭素原子数5〜18のグリコール又はこれらのグリコールの付加モル数2〜500のポリアルキレングリコールとのハーフアミド類;
メチル(メタ)アクリルアミドのように不飽和モノカルボン酸類と炭素原子数1〜30のアミンとのアミド類;スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、p−メチルスチレン等のビニル芳香族類;1,4−ブタンジオールモノ(メタ)アクリレート、1,5−ペンタンジオールモノ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールモノ(メタ)アクリレート等のアルカンジオールモノ(メタ)アクリレート類;ブタジエン、イソプレン、2−メチル−1,3−ブタジエン、2−クロル−1,3−ブタジエン等のジエン類;(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリルアルキルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド等の不飽和アミド類;(メタ)アクリロニトリル、α−クロロアクリロニトリル等の不飽和シアン類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等の不飽和エステル類。
【0048】
<グラフト重合体の製造方法>
本発明のグラフト重合体は、例えば、グリセリン類に、イオン性基含有単量体及び/又はそのエステルを含む単量体成分をグラフト重合させるグラフト重合工程を有する製造方法により得ることができ、このような製造方法もまた、本発明の1つである。
なお、グラフト重合工程に供する単量体成分が、イオン性基含有単量体のエステルを含む場合は、上記グラフト重合工程後に、エステル基を加水分解させる加水分解工程を行うことが好適である。
【0049】
上記製造方法において、グラフト重合工程は、重合開始剤の存在下、実質的に溶媒を用いず、100℃以上の温度で行うことが好適である。通常の重合では、重合溶媒として水又はアルコールやトルエン等の有機溶剤が使用されるが、これらを実質的に使用せずに、かつ100℃以上の温度条件下で重合を行うことによって、効率的にグラフト重合体を得ることができる。なお、このような製法で得られるグラフト重合体は、おそらく、グリセリン類を構成する炭素原子の少なくとも1つに、イオン性基含有単量体単位が結合した構造を有すると推測されるが、この構造的特徴に起因して、とりわけ分散性能に優れることになるものと思われる。
【0050】
上記重合開始剤としては、通常のラジカル開始剤を使用することができるが、反応性等の観点から、有機過酸化物を用いることが好適である。
【0051】
上記有機過酸化物としては特に限定されないが、例えば、下記化合物等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を使用することができる。なお、有機過酸化物と共に、有機過酸化物の分解触媒や、還元性化合物を併用してもよい。
メチルエチルケトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド、3,3,5−トリメチルシクロヘキサノンパーオキサイド、メチルシクロヘキサノンパーオキサイド、メチルアセトアセテートパーオキサイド、アセチルアセトンパーオキサイド等のケトンパーオキサイド類;
tert−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジハイドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、2−(4−メチルシクロヘキシル)−プロパンハイドロパーオキサイド等のハイドロパーオキサイド類;
ジ−tert−ブチルパーオキサイド、tert−ブチルクミルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、α,α’−ビス(tert−ブチルパーオキシ)p−ジイソプロピルベンゼン、α,α’−ビス(tert−ブチルパーオキシ)p−イソプロピルヘキシン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3等のジアルキルパーオキサイド類;
tert−ブチルパーオキシアセテート、tert−ブチルパーオキシラウレート、tert−ブチルパーオキシベンゾエート、ジ−tert−ブチルパーオキシイソフタレート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、tert−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、tert−ブチルパーオキシイソブチレート、tert−ブチルパーオキシビバレート、tert−ブチルパーオキシネオデカノエート、クミルパーオキシネオデカノエート、tert−ブチルパーオキシ−2−エチルエキサノエート、tert−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルシクロヘキサノエート、tert−ブチルパーオキシベンゾエート、tert−ブチルパーオキシマレイン酸、クミルパーオキシオクトエート、tert−ヘキシルパーオキシビバレート、tert−ヘキシルパーオキシネオヘキサノエート、クミルパーオキシネオヘキサノエート等のパーオキシエステル類;
【0052】
n−ブチル−4,4−ビス(tert−ブチルパーオキシ)バレエート、2,2−ビス(tert−ブチルパーオキシ)ブタン、1,1−ビス(tert−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(tert−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2−ビス(tert−ブチルパーオキシ)オクタン等のパーオキシケタール類;
アセチルパーオキサイド、イソブチリルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、3,3,5−トリメチルシクロヘキサノイルパーオキサイド、サクシニックアシッドパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、m−トルイルパーオキサイド等のジアシルパーオキサイド類;
ジ−イソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、ビス−(4−tert−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジミリスチルパーオキシジカーボネート、ジ−メトキシイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ(3−メチル−3−メトキシブチル)パーオキシジカーボネート、ジ−アリルパーオキシジカーボネート等のパーオキシジカーボネート類;
アセチルシクロヘキシルスルフォニルパーオキサイド、tert−ブチルパーオキシアリルカーボネート等のその他の有機過酸化物類等。
【0053】
上記重合開始剤の量は特に限定されないが、例えば、グリセリン類の総量100重量部に対し、0.1〜15重量部とすることが好適であり、この場合、グリセリン類へのグラフト効率がより充分なものとなる。より好ましくは0.5〜10重量部である。
なお、重合開始剤は、予めグリセリン類に添加しておくこともできるが、単量体成分に添加しておいたり、単量体成分と同時に反応系に添加したりすることもできる。
【0054】
上記グラフト重合工程は、実質的に溶媒を用いずに、すなわち実質的に無溶媒で行われることが好適である。「実質的に溶媒を用いず」とは、溶媒の量が、反応系の全量(すなわち、重合反応に供する全成分の総量)100質量%に対して5質量%以下であることを意味する。好ましくは3質量%以下、より好ましくは1質量%以下である。
なお、重合開始剤や単量体成分の添加のために溶剤を使用する場合には、その量を極力少なくすることが好ましく、例えば、反応系の全量100質量%に対して1質量%以下にするか、又は、添加後、反応系からただちに留去することが好適である。
【0055】
上記グラフト重合工程はまた、100℃以上の温度で行われることが好ましいが、グリセリン類及び得られるグラフト重合体の熱分解を充分に抑えるために、160℃以下であることが好適である。重合温度としてより好ましくは110℃〜160℃であり、更に好ましくは120〜140℃である。
なお、重合は、回分式でも連続式でも行うことができる。
【0056】
上記グラフト重合工程に供するグリセリン類及び単量体成分については上述したとおりである。
【0057】
上記グラフト重合工程において、原料等の添加順序は特に限定されないが、グリセリン類は、その一部又は全量を初期に仕込むことが好適である。また、上記イオン性基含有単量体及び/又はそのエステルとして、不飽和ジカルボン酸系単量体及び/又はそのエステルを用いる場合は、不飽和ジカルボン酸系単量体及び/又はそのエステルの使用量の半量以上を、グリセリン類の一部又は全量とともに初期に仕込むことが好ましい。そして、これらをグリセリン類の流動点(流動温度)以上に加熱した後、残りの単量体成分及び重合開始剤を別々に添加して、グラフト重合することが好適である。この手法により、不飽和ジカルボン酸系単量体及び/又はそのエステルのグラフト重合体への導入率をより高めることができる。なお、グリセリン類の一部を初期に仕込む場合は、残りのグリセリン類は、単量体成分又は重合開始剤と混合して滴下してもよい。
【0058】
上記製造方法ではまた、イオン性基含有単量体のエステルを含む単量体成分をグラフト重合工程に供する場合は、上述したように、上記グラフト重合工程の後に、エステル基を加水分解させる加水分解工程を行うことが好適である。このような、グリセリン類にイオン性基含有単量体のエステルを含む単量体成分をグラフト重合させるグラフト重合工程と、該グラフト重合工程後に、エステル基を加水分解させる加水分解工程とを有する製造方法もまた、本発明の好適な形態の1つである。この場合、副生成物の生成をより抑制することができ、純度の高いグラフト重合体を得ることが可能になる。
【0059】
上記加水分解工程は、通常の方法で行えばよく特に限定されるものではないが、例えば、塩基の水溶液を添加して、溶液のpHを10以上(好ましくはpH13以上)にした後、加温して加水分解させる手法が挙げられる。反応温度及び時間は特に限定されない。
【0060】
上記グラフト重合工程を経て得られる反応生成物は、本発明のグラフト重合体の他、副生成物として種々の重合体を含むことがある。そのため、必要に応じて、個々の重合体を単離する工程に付してもよいが、作業効率や製造コスト等の観点から、個々の重合体を単離することなく、各種用途に使用してもよい。
【0061】
上記グラフト重合体はまた、水やアルコール等の溶剤に溶解させたものを各種用途に使用することもできる。また、塩基を添加して、グラフト重合体が有する酸基やエステル基を塩に変換したものを使用してもよく、この場合、グラフト重合体の貯蔵安定性が向上されるため、好適である。このように、上記製造方法が更に塩基で処理する工程を有する形態もまた、好適な形態の1つである。
上記塩基としては特に限定されないが、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化リチウム等の1価金属又は2価金属の水酸化物;炭酸ナトリウム、炭酸カルシウム、炭酸リチウム等の1価金属又は2価金属の炭酸塩;アンモニア;モノエタノールアミン、トリエタノールアミン等の有機アミン塩等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。また、溶剤としては、水が好ましく使用される。
【0062】
本発明のグラフト重合体は、水に難溶性の無機物又は有機物の分散剤として良好な性能を発揮する。例えば、紙コーティングに用いられる重質又は軽質炭酸カルシウム、クレイ等の無機顔料の分散剤;セメント、石炭等の水スラリー用分散剤;等として良好な性能を発揮できる。その他にも、冷却水系、ボイラー水系、海水淡水化装置、パルプ蒸解釜、黒液濃縮釜でのスケール防止の水処理剤;スケール防止剤;染色助剤や繊維の帯電防止助剤等の繊維処理剤;接着剤;シーリング剤;各種重合体への柔軟性付与成分;洗剤ビルダー等にも好適に使用することができる。更には、シャンプー、リンス、ボディーソープ等の身体用洗剤、繊維加工、建材加工、塗料、窯業等の分野において幅広く応用することが可能である。中でも、セメント混和剤用途に用いることが好適であり、この場合、より低コストで、従来品と同等又はそれ以上のセメント分散性能を発揮するセメント混和剤を提供できる。このように、上記グラフト重合体がセメント混和剤用グラフト重合体である形態は、本発明の好適な形態であり、また、上記グラフト重合体を含むセメント混和剤は、本発明の1つである。
【0063】
<セメント混和剤>
本発明のセメント混和剤は、上記グラフト重合体を含むが、この場合、上記グラフト重合体中のイオン性基含有単量体単位におけるイオン性基(カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基等)が、セメント粒子を吸着する吸着基として作用し、グリセリン類がセメント粒子を分散させる分散基として作用すると考えられ、これらの相互作用に起因して、高いセメント分散性能(減水性能)を発揮できると推測される。
【0064】
上記セメント混和剤は、上記グラフト重合体を含むものあれば、その含有形態は特に限定されず、例えば、上記製造方法により得られた反応生成物をそのままセメント混和剤として使用してもよいし、上記グラフト重合体を単離して、セメント混和剤として使用してもよい。また、上記セメント混和剤は、必要に応じて溶剤や他の添加剤を含んでもよい。
上記他の添加剤は、通常、セメント分野で使用されるものであればよく特に限定されないが、例えば、減水剤、AE減水剤、流動化剤、高性能減水剤、高性能AE減水剤、増粘剤、消泡剤、収縮低減剤、膨張剤、防錆剤、強度増進剤、防カビ剤、セメント分散剤、AE(空気連行)剤、セメント湿潤剤、水溶性高分子物質、防水剤、硬化遅延剤、硬化促進剤、急結剤、凝集剤等が挙げられる。これらは1種類のみを用いてよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。また、その配合割合は特に限定されるものではない。
【0065】
上記セメント混和剤は、各種水硬性材料、すなわちセメントや石膏等のセメント組成物やそれ以外の水硬性材料に用いることができる。このような水硬性材料と水と上記セメント混和剤とを含有し、更に必要に応じて骨材(砂等の細骨材や、砕石等の粗骨材)を含む水硬性組成物の具体例としては、セメントペースト、モルタル、コンクリート、プラスター等が挙げられる。これらの水硬性組成物の中でも、水硬性材料としてセメントを使用するセメント組成物が最も好ましい。上記セメント混和剤、セメント及び水を含むセメント組成物もまた、本発明の1つである。
【0066】
<セメント組成物>
本発明のセメント組成物は、上記セメント混和剤、セメント及び水を必須成分として含むが、セメントとしては、例えば、ポルトランドセメント(普通、早強、超早強、中庸熱、耐硫酸塩及びそれぞれの低アルカリ形);各種混合セメント(高炉セメント、シリカセメント、フライアッシュセメント);白色ポルトランドセメント;アルミナセメント;超速硬セメント(1クリンカー速硬性セメント、2クリンカー速硬性セメント、リン酸マグネシウムセメント);グラウト用セメント;油井セメント;低発熱セメント(低発熱型高炉セメント、フライアッシュ混合低発熱型高炉セメント、ビーライト高含有セメント);超高強度セメント;セメント系固化材;エコセメント(都市ごみ焼却灰、下水汚泥焼却灰の1種以上を原料として製造されたセメント)等の他、これらに高炉スラグ、フライアッシュ、シンダーアッシュ、クリンカーアッシュ、ハスクアッシュ、シリカヒューム、シリカ粉末、石灰石粉末等の微粉体や石膏を添加したもの等が挙げられる。
上記セメント組成物はまた、必要に応じて骨材を含んでもよい。骨材としては、砂利、砕石、水砕スラグ、再生骨材等の他、珪石質、粘土質、ジルコン質、ハイアルミナ質、炭化珪素質、黒鉛質、クロム質、クロマグ質、マグネシア質等の耐火骨材等が挙げられる。
【0067】
上記セメント組成物において、その1mあたりの単位水量、セメント使用量及び水/セメント比は特に限定されず、例えば、単位水量は100〜185kg/mであることが好ましく、より好ましくは120〜175kg/mである。セメント使用量は250〜800kg/mであることが好ましく、より好ましくは270〜800kg/mである。また、水/セメント比(質量比)は0.1〜0.7であることが好ましく、より好ましくは0.2〜0.65である。このように本発明のセメント組成物は、貧配合〜富配合まで幅広く使用可能であり、単位セメント量の多い高強度コンクリート、単位セメント量が300kg/m以下の貧配合コンクリートのいずれにも有効である。また、本発明のセメント組成物は、比較的高減水率の領域、すなわち、水/セメント比(質量比)=0.15〜0.6(好ましくは0.15〜0.5)といった水/セメント比の低い領域においても、良好に使用することができる。
【0068】
ここで、本発明のセメント混和剤は、高減水率領域においても優れた諸性能を高性能で発揮でき、優れた作業性を有することから、レディーミクストコンクリート、コンクリート2次製品(プレキャストコンクリート)用のコンクリート、遠心成形用コンクリート、振動締め固め用コンクリート、蒸気養生コンクリート、吹付けコンクリート等にも有効に適用できるものである。また、中流動コンクリート(スランプ値が22〜25cmの範囲のコンクリート)、高流動コンクリート(スランプ値が25cm以上で、スランプフロー値が50〜70cmの範囲のコンクリート)、自己充填性コンクリート、セルフレベリング材等の高い流動性を要求されるモルタルやコンクリートにも有効である。
【0069】
上記セメント組成物において、本発明のセメント混和剤の配合割合としては、例えば、本発明の必須成分であるグラフト重合体が、固形分換算で、セメントの全量100質量%に対して、0.01〜10質量%となるように設定することが好ましい。0.01質量%未満では性能的に充分とはならないおそれがあり、逆に10質量%を超えると、その効果は実質上頭打ちとなり経済性の面からも不利となるおそれがある。より好ましくは0.02〜5質量%、更に好ましくは0.05〜3質量%である。なお、本明細書中、固形分含量は、以下のようにして測定することができる。
(固形分測定方法)
1、アルミ皿を精秤する。
2、1で精秤したアルミ皿に固形分測定物を精秤する。
3、窒素雰囲気下130℃に調温した乾燥機に、2で精秤した固形分測定物を1時間入れる。
4、1時間後、乾燥機から取り出し、室温のデシケーター内で15分間放冷する。
5、15分後、デシケーターから取り出し、アルミ皿+測定物を精秤する。
6、5で得られた質量から1で得られたアルミ皿の質量を差し引き、2で得られた固定分の質量を除することで固形分を測定する。
【発明の効果】
【0070】
本発明のグラフト重合体は、上述のような構成よりなるので、特に分散性能に優れ、セメント混和剤等の各種用途に好適に使用でき、近年の課題であるグリセリンの有効利用に効果的である。また、グリセリンは廉価であるため、各種用途でこのグラフト重合体を原料とすれば、低コストで高性能の製品を提供することができる。また、このようなグラフト重合体を製造する際に、本発明の製造方法を採用すれば、グラフト重合体を効率よく製造することができるため、工業的に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0071】
図1】実施例1で得たグラフト重合体、アクリル酸及びポリグリセリンの各々について、電気泳動分析により解析したチャート図である。
図2】実施例1で得たグラフト重合体及びポリグリセリンの各々について、GPCにより解析したチャート図である。
図3】表1の結果をグラフ化したものである。なお、表1の実施例1−1及び1−2は、実施例1で得たグラフト重合体の添加量を異ならせたものであり、図3では「実施例1」と表記した。また、表1の比較例2−1〜2−3は、リグニンスルホン酸ナトリウムの添加量を異ならせたものであり、図3では「比較例2」と表記した。
図4】表2の結果をグラフ化したものである。なお、表2の実施例2−1及び2−2は、実施例2で得たグラフト重合体の添加量を異ならせたものであり、図4では「実施例2」と表記した。同様に、図4においては、表2の実施例3−1及び3−2を「実施例3」と、実施例4−1及び4−2を「実施例4」と、実施例5−1及び5−2を「実施例5」と、それぞれ表記した。また、表2の比較例4−1及び4−2は、ポリグリセリンの添加量を異ならせたものであり、図4では「比較例4」と表記した。同様に、図4においては、表2の比較例6−1及び6−2を「比較例6」と、比較例7−1及び7−2を「比較例7」と、それぞれ表記した。
図5】表3の結果をグラフ化したものである。なお、表3の実施例6−1及び6−2は、実施例6で得たグラフト重合体の添加量を異ならせたものであり、図5では「実施例6」と表記した。同様に、図5においては、表3の実施例7−1及び7−2を「実施例7」と、実施例8−1及び8−2を「実施例8」と、実施例9−1及び9−2を「実施例9」と、実施例10−1〜10−3を「実施例10」と、それぞれ表記した。また、表3の比較例4−3及び4−4は、ポリグリセリンの添加量を異ならせたものであり、図5では「比較例4」と表記した。
【発明を実施するための形態】
【0072】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。「wt%」は「質量%」を、「vol%」は「体積%」を意味するものとする。なお、GPC及びキャピラリー電気泳動分析は、下記条件下で行った。
【0073】
<GPC測定条件>
装置:Waters社製、Waters Alliance(2695)
解析ソフト:Waters社製、Empowerプロフェッショナル+GPCオプション
使用カラム:東ソー社製
・TSKguard column α
・TSKgel α―3000
・TSKgel α―4000
・TSKgel α―5000
検出器:示差屈折率計(RI)検出器(Waters社製、Waters 2414)
溶離液:100mMホウ酸水溶液14304gに50mM水酸化ナトリウム水溶液96gとアセトニトリル3600gを混合した溶媒
較正曲線作成用標準物質:ポリエチレングリコール[ピークトップ分子量(Mp)300000、200000、107000、50000、27700、11840、6450、1470、1010、400]
較正曲線:上記ポリエチレングリコールのMp値と溶出時間とを基礎にして3次式で作成
流量:1.0mL/min
カラム温度:40℃
測定時間:60分
試料液注入量:100μL(試料濃度0.5wt%の溶離液調製溶液)
【0074】
<キャピラリー電気泳動測定条件>
装置:P/ACE MDQ(Beckman Coulter社製)
キャピラリー:eCAP Capillary Tubing(Beckman Coulter社製)、長さ57cm、有効長50cm、内径 75μm
検出器:PDA Detector(Beckman Coulter社製)
緩衝液:四ホウ酸ナトリウム十水和物を50mMになるように精製水に溶かして泳動液とした。
−電気泳動条件−
泳動液の充填及びキャピラリー内の平衡化:加圧法(1min)
試料導入:加圧法(0.5psi:5sec)
印加電圧:20kV
キャピラリー温度:25℃
検出波長:210nm
【0075】
実施例1
温度計、攪拌機、真空ポンプ接続菅を備えたガラス製反応容器に、重合度6のポリグリセリン(阪本薬品工業社製、#500)を入れ、128℃、減圧下で加熱脱水を行った(これを「脱水ポリグリセリン」と称す。)。
温度計、攪拌機、窒素導入菅、還流冷却器を備えたガラス製反応容器に、脱水ポリグリセリンを80g仕込んで、窒素気流下、加熱し、攪拌下128℃まで昇温した。次に窒素雰囲気下、温度を128℃〜130℃に保ちながら、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート(日油社製:パーブチルI)2.0g、アクリル酸20gを別々に3.5時間にわたって連続的に滴下した。滴下終了後すぐに冷却し、蒸留水100gを加え充分に攪拌し、グラフト重合体の水溶液を得た。その後、得られたグラフト重合体水溶液を限外濾過膜(ザルトリウス・ステディム・ジャパン社製、VIVASPIN20 MWCO3000)を用いて、精製することで実施例1のポリマーを得た。
【0076】
実施例1で得たグラフト重合体について、電気泳動分析及びGPCにより構造を解析したデータを、図1及び2にそれぞれ示す。図1では、アクリル酸及びポリグリセリン(阪本薬品工業社製、#500)の電気泳動データも併記し、図2では、ポリグリセリン(阪本薬品工業社製、#500)のGPCチャートも併記した。これらの結果から、アクリル酸が、ポリグリセリンにグラフト重合されていることが確認できる。
【0077】
<モルタル試験>
実施例1で得たグラフト重合体の水溶液を用いて、以下のようにしてモルタルを調製し、初期の空気量及び15打フロー値を測定した(実施例1−1〜1−2)。また、比較のため、ポリグリセリン(阪本薬品工業社製、#500)のみを用いた例(比較例1−1)、リグニンスルホン酸ナトリウム(No.70、BASFポゾリス社製)のみを用いた例(比較例2−1〜2−3)、及び、プレーン(水のみ。添加剤なし。)(比較例3−1)についても、初期の空気量及び15打フロー値を測定した。結果を表1に示す。また、表1の結果をグラフ化したものを図3に示す。
なお、モルタル試験では、プレーン(比較例3−1)を除き、消泡剤としてMA−404(BASFポゾリス社製)を有姿で10質量%対各成分固形分となる量を、各成分に添加した。
【0078】
−モルタルフロー試験−
モルタル試験は、温度が20℃±1℃、相対湿度が60%±10%の環境下で行った。
モルタル配合は、C/S/W=550/1350/225(g)とした。
ただし、
C:普通ポルトランドセメント(太平洋セメント社製)
S:セメント強さ試験用標準砂(セメント協会製)
W:本発明のグラフト重合体の水溶液(実施例1)、ポリグリセリン(比較例1)又はリグニンスルホン酸ナトリウム(比較例2)、及び、消泡剤のイオン交換水溶液
Wとして、表1に示した添加量の各成分を量り採り、消泡剤MA−404を有姿で各成分の固形分に対して10質量%加え、更にイオン交換水を加えて所定量とし、充分に均一溶解させた。表1において、各成分の添加量は、セメント質量に対する各成分の固形分の質量%で表されている。
ホバート型モルタルミキサー(型番N−50;ホバート社製)にステンレス製ビーター(撹拌羽根)を取り付け、C、Wを投入し、1速で30秒間混練した。更に1速で混練しながら、Sを30秒かけて投入した。S投入終了後、2速で30秒間混練することでモルタルを調製した。
【0079】
−モルタル空気量(初期空気量)測定−
モルタルを500mLのガラス製メスシリンダーに約200mL詰め、径8mmの丸棒で突き、手で軽く振動させて粗い気泡を抜いた。更にモルタルを約200mL加えて同様に気泡を抜いた後、モルタルの体積と質量を測り、各材料の密度から空気量を計算した。
【0080】
−15打フロー値測定−
モルタルを混練容器からポリエチレン製1L容器に移し、スパチュラで20回撹拌した後、直ちにフローテーブル(JIS R5201−1997に記載)に置かれたフローコーン(JIS R5201−1997に記載)に半量詰めて15回つき棒で突き、更にモルタルをフローコーンのすりきりいっぱいまで詰めて15回つき棒で突き、最後に不足分を補い、フローコーンの表面をならした。その後、直ちにフローコーンを垂直に引き上げ、広がったモルタルの直径(最も長い部分の直径(長径)及び前記長径に対して90度をなす部分の直径)を2箇所測定し、その平均値を0打フロー値とした。0打フロー値を測定後、直ちに15秒間に15回の落下運動を与え、広がったモルタルの直径(最も長い部分の直径(長径)及び前記長径に対して90度をなす部分の直径)を2箇所測定し、その平均値を15打フロー値とした。15打フロー値は、数値が大きいほど分散性能が優れている。
なお、下記の表1〜3において、実施例の15打フロー値は、各実施例で得た重合体水溶液の有効成分量換算で評価している。有効成分換算添加量とは、「有効成分換算添加量=固形分換算添加量/有効成分比率」から求められる値である。一方、比較例の15打フロー値は、固形分換算で評価しているが、これは、有効成分が100質量%(すなわち有効成分比率=1)であるため、固形分換算添加量と、有効成分換算添加量とが、等しいことに基づく。
【0081】
【表1】
【0082】
実施例2
温度計、攪拌機、真空ポンプ接続菅を備えたガラス製反応容器に、平均重合度10のポリグリセリン(阪本薬品工業社製、#750)を入れ、128℃、減圧下で加熱脱水を行った(これを「脱水ポリグリセリン」と称す。)。
温度計、攪拌機、窒素導入菅、還流冷却器を備えたガラス製反応容器に、脱水ポリグリセリンを95.3g仕込んで、窒素気流下、加熱し、攪拌下128℃まで昇温した。次に窒素雰囲気下、温度を128℃〜130℃に保ちながら、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート(日油社製:パーブチルI)4.38g、アクリル酸(AA)23.84gを別々に3.5時間にわたって連続的に滴下した。滴下終了後すぐに冷却し、蒸留水を加え充分に攪拌し、グラフト重合体(実施例2)の水溶液を得た。その後、GPCによる分析結果において、有効成分と未反応ポリグリセリンの面積比率が、有効成分:ポリグリセリン=41.6:58.4であったことから、有効成分を41.6質量%とした。
なお、仕込み単量体組成比(質量比、グリセリン類/AA)は、80/20であった。
【0083】
実施例3
温度計、攪拌機、真空ポンプ接続菅を備えたガラス製反応容器に、平均重合度20のポリグリセリン(ダイセル社製、PGL 20PW)を入れ、128℃、減圧下で加熱脱水を行った(これを「脱水ポリグリセリン」と称す。)。
温度計、攪拌機、窒素導入菅、還流冷却器を備えたガラス製反応容器に、脱水ポリグリセリンを96.2g仕込んで、窒素気流下、加熱し、攪拌下128℃まで昇温した。次に窒素雰囲気下、温度を128℃〜130℃に保ちながら、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート(日油社製:パーブチルI)2.2g、アクリル酸(AA)10.7gを別々に3.5時間にわたって連続的に滴下した。滴下終了後すぐに冷却し、蒸留水を加え充分に攪拌し、グラフト重合体(実施例3)の水溶液を得た。その後、GPCによる分析結果において、有効成分と未反応ポリグリセリンの面積比率が、有効成分:ポリグリセリン=39.6:60.4であったことから、有効成分を39.6質量%とした。
なお、仕込み単量体組成比(質量比、グリセリン類/AA)は、90/10であった。
【0084】
実施例4
温度計、攪拌機、真空ポンプ接続菅を備えたガラス製反応容器に、平均重合度40のポリグリセリン(ダイセル社製、PGL X)を入れ、128℃、減圧下で加熱脱水を行った(これを「脱水ポリグリセリン」と称す。)。
温度計、攪拌機、窒素導入菅、還流冷却器を備えたガラス製反応容器に、脱水ポリグリセリンを101.3g仕込んで、窒素気流下、加熱し、攪拌下128℃まで昇温した。次に窒素雰囲気下、温度を128℃〜130℃に保ちながら、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート(日油社製:パーブチルI)1.2g、アクリル酸(AA)11.3gを別々に3.5時間にわたって連続的に滴下した。滴下終了後すぐに冷却し、蒸留水を加え充分に攪拌し、グラフト重合体(実施例4)の水溶液を得た。その後、GPCによる分析結果において、有効成分と未反応ポリグリセリンの面積比率が、有効成分:ポリグリセリン=41.4:58.6であったことから、有効成分を41.4質量%とした。
なお、仕込み単量体組成比(質量比、グリセリン類/AA)は、90/10であった。
【0085】
製造例1
温度計、攪拌機、圧力計を備えた圧力容器に、平均重合度20のポリグリセリン(ダイセル社製、PGL 20PW)を250.0g、水酸化ナトリウム1.2gを入れ、攪拌しながら、窒素で充分に置換した後、温度を150℃まで昇温した。次いで、エチレンオキサイド744.1gをゆっくりと添加しながら反応させ、全て添加してから同温度で30分間熟成させ、ポリグリセリンのアルキレンオキサイド付加物(PGL−20PW+5EO)を得た。
【0086】
実施例5
温度計、攪拌機、窒素導入菅、還流冷却器を備えたガラス製反応容器に、製造例1で得たポリグリセリンのアルキレンオキサイド付加物(PGL−20PW+5EO)80.35gを仕込んで、窒素気流下、加熱し、攪拌下128℃まで昇温した。次に窒素雰囲気下、温度を128℃〜130℃に保ちながら、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート(日油社製:パーブチルI)0.6g、アクリル酸(AA)8.4gを別々に3.5時間にわたって連続的に滴下した。滴下終了後すぐに冷却し、蒸留水を加え充分に攪拌し、グラフト重合体(実施例5)の水溶液を得た。その後、GPCによる分析結果において、有効成分と未反応ポリグリセリンの面積比率が、有効成分:ポリグリセリン=66.7:33.3であったことから、有効成分を66.7質量%とした。
なお、仕込み単量体組成比(質量比、グリセリン類/AA)は、90/10であった。
【0087】
<モルタル試験>
実施例2〜5で得たグラフト重合体の水溶液の各々を用い、実施例1と同様にしてモルタルを調製し、初期の空気量及び15打フロー値を測定した。なお、実施例2−1〜2−2では、実施例2で得たグラフト重合体の水溶液を使用し、実施例3−1〜3−2では、実施例3で得たグラフト重合体の水溶液を使用し、実施例4−1〜4−2では、実施例4で得たグラフト重合体の水溶液を使用し、実施例5−1〜5−2では、実施例5で得たグラフト重合体の水溶液を使用した。また、比較のため、プレーン(水のみ。添加剤なし。)(比較例3−2)、ポリグリセリン#750(阪本薬品工業社製)のみを用いた例(比較例4−1、4−2)、ポリグリセリンPGL 20PW(ダイセル社製)のみを用いた例(比較例5−1)、ポリグリセリンPGL X(ダイセル社製)のみを用いた例(比較例6−1、6−2)、製造例1で得たポリグリセリンのアルキレンオキサイド付加物(PGL−20PW+5EO)のみを用いた例(比較例7−1、7−2)についても、初期の空気量及び15打フロー値を測定した。結果を表2に示す。また、表2の結果をグラフ化したものを図4に示す。
なお、モルタル試験では、プレーン(比較例3−2)を除き、消泡剤としてMA−404(BASFポゾリス社製)を有姿で10質量%対各成分固形分となる量を、各成分に添加した。
【0088】
【表2】
【0089】
比較例4〜7で用いたポリグリセリン又はポリグリセリンのアルキレンオキサイド付加物は、実施例2〜5で得たグラフト重合体の原料であるが、表2の比較例4−1〜7−2より、該ポリグリセリン又はポリグリセリンのアルキレンオキサイド付加物の添加量を増やしても、15打フロー値が増大しないことが分かる。これに対し、実施例2−1〜5−2では、実施例2〜5で得たグラフト重合体の添加量の増加に伴って15打フロー値が増加し、分散性を発現していることが明らかである。
【0090】
実施例6
温度計、攪拌機、真空ポンプ接続菅を備えたガラス製反応容器に、平均重合度6のポリグリセリン(阪本薬品工業社製 #500)を入れ、128℃、減圧下で加熱脱水を行った(これを「脱水ポリグリセリン」と称す。)。
温度計、攪拌機、窒素導入菅、還流冷却器を備えたガラス製反応容器に、脱水ポリグリセリンを119.9g仕込んで、窒素気流下、加熱し、攪拌下128℃まで昇温した。次に窒素雰囲気下、温度を128℃〜130℃に保ちながら、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート(日油社製:パーブチルI)6.85g、アクリル酸−2−ヒドロキシエチル(HEA)30.0gを別々に3.5時間にわたって連続的に滴下した。滴下終了後すぐに冷却し、蒸留水を加え充分に攪拌し、グラフト重合体(実施例6)の水溶液を得た。その後、GPCによる分析結果において、有効成分と未反応ポリグリセリンの面積比率が、有効成分:ポリグリセリン=18.5:81.5であったことから、有効成分を18.5質量%とした。
なお、仕込み単量体組成比(質量比、グリセリン類/HEA)は、80/20であった。
【0091】
実施例7
温度計、攪拌機、真空ポンプ接続菅を備えたガラス製反応容器に、平均重合度10のポリグリセリン(阪本薬品工業社製 #750)を入れ、128℃、減圧下で加熱脱水を行った(これを「脱水ポリグリセリン」と称す。)。
温度計、攪拌機、窒素導入菅、還流冷却器を備えたガラス製反応容器に、脱水ポリグリセリンを94.5g仕込んで、窒素気流下、加熱し、攪拌下128℃まで昇温した。次に窒素雰囲気下、温度を128℃〜130℃に保ちながら、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート(日油社製:パーブチルI)4.3g、アクリル酸(AA)17.3g、メタクリル酸(MAA)5.8gを別々に3.5時間にわたって連続的に滴下した。滴下終了後すぐに冷却し、蒸留水を加え充分に攪拌し、グラフト重合体(実施例7)の水溶液を得た。その後、GPCによる分析結果において、有効成分と未反応ポリグリセリンの面積比率が、有効成分:ポリグリセリン=25.3:74.7であったことから、有効成分を25.3質量%とした。
なお、仕込み単量体組成比(質量比、グリセリン類/AA/MAA)は、80/5/15であった。
【0092】
実施例8
温度計、攪拌機、真空ポンプ接続菅を備えたガラス製反応容器に、平均重合度6のポリグリセリン(阪本薬品工業社製 #750)を入れ、128℃、減圧下で加熱脱水を行った(これを「脱水ポリグリセリン」と称す。)。
温度計、攪拌機、窒素導入菅、還流冷却器を備えたガラス製反応容器に、脱水ポリグリセリンを90.9g、マレイン酸(MA)5.7gを仕込んで、窒素気流下、加熱し、攪拌下128℃まで昇温した。次に窒素雰囲気下、温度を128℃〜130℃に保ちながら、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート(日油社製:パーブチルI)4.2g、アクリル酸(AA)17.1gを別々に3.5時間にわたって連続的に滴下した。滴下終了後すぐに冷却し、蒸留水を加え充分に攪拌し、グラフト重合体(実施例8)の水溶液を得た。その後、GPCによる分析結果において、有効成分と未反応ポリグリセリンの面積比率が、有効成分:ポリグリセリン=44.7:55.3であったことから、有効成分を44.7質量%とした。
なお、仕込み単量体組成比(質量比、グリセリン類/AA/MA)は、80/15/5であった。
【0093】
実施例9
温度計、攪拌機、真空ポンプ接続菅を備えたガラス製反応容器に、平均重合度6のポリグリセリン(阪本薬品工業社製 #750)を入れ、128℃、減圧下で加熱脱水を行った(これを「脱水ポリグリセリン」と称す。)。
温度計、攪拌機、窒素導入菅、還流冷却器を備えたガラス製反応容器に、脱水ポリグリセリン84.5g、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸ナトリウム(AMPS)9.4gを仕込んで、窒素気流下、加熱し、攪拌下128℃まで昇温した。次に窒素雰囲気下、温度を128℃〜130℃に保ちながら、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート(日油社製:パーブチルI)3.9gを3.5時間にわたって連続的に滴下した。滴下終了後すぐに冷却し、蒸留水を加え充分に攪拌し、グラフト重合体(実施例9)の水溶液を得た。その後、GPCによる分析結果において、有効成分と未反応ポリグリセリンの面積比率が、有効成分:ポリグリセリン=15.7:84.3であったことから、有効成分を15.7質量%とした。
なお、仕込み単量体組成比(質量比、グリセリン類/AMPS)は、80/20であった。
【0094】
実施例10
温度計、攪拌機、真空ポンプ接続菅を備えたガラス製反応容器に、平均重合度10のポリグリセリン(阪本薬品工業社製 #750)を入れ、128℃、減圧下で加熱脱水を行った(これを「脱水ポリグリセリン」と称す。)。
温度計、攪拌機、窒素導入菅、還流冷却器を備えたガラス製反応容器に、脱水ポリグリセリンを90.1g仕込んで、窒素気流下、加熱し、攪拌下128℃まで昇温した。次に窒素雰囲気下、温度を128℃〜130℃に保ちながら、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート(日油社製:パーブチルI)4.1g、アクリル酸(AA)16.9g、(2−ヒドロキシエチル)メタクリレートアシッドホスフェート(JPA−514、城北化学工業社製)5.6gを別々に3.5時間にわたって連続的に滴下した。滴下終了後すぐに冷却し、蒸留水を加え充分に攪拌し、グラフト重合体(実施例10)の水溶液を得た。その後、GPCによる分析結果において、有効成分と未反応ポリグリセリンの面積比率が、有効成分:ポリグリセリン=28.5:71.5であったことから、有効成分を28.5質量%とした。
なお、仕込み単量体組成比(質量比、グリセリン類/AA/JPA−514)は、80/15/5であった。
【0095】
<モルタル試験>
実施例6〜10で得たグラフト重合体の水溶液の各々を用い、実施例1と同様にしてモルタルを調製し、初期の空気量及び15打フロー値を測定した。なお、実施例6−1〜6−2では、実施例6で得たグラフト重合体の水溶液を使用し、実施例7−1〜7−2では、実施例7で得たグラフト重合体の水溶液を使用し、実施例8−1〜8−2では、実施例8で得たグラフト重合体の水溶液を使用し、実施例9−1〜9−2では、実施例9で得たグラフト重合体の水溶液を使用し、実施例10−1〜10−3では、実施例10で得たグラフト重合体の水溶液を使用した。また、比較のため、プレーン(水のみ。添加剤なし。)(比較例3−3)、ポリグリセリン#500(阪本薬品工業社製)のみを用いた例(比較例1−2)、ポリグリセリン#750(阪本薬品工業社製)のみを用いた例(比較例4−3、4−4)についても、初期の空気量及び15打フロー値を測定した。結果を表3に示す。また、表3の結果をグラフ化したものを図5に示す。
なお、モルタル試験では、プレーン(比較例3−3)を除き、消泡剤としてMA−404(BASFポゾリス社製)を有姿で10質量%対各成分固形分となる量を、各成分に添加した。
【0096】
【表3】
【0097】
比較例1、4で用いたポリグリセリンは、実施例6〜10で得たグラフト重合体の原料であるが、表3の比較例1−2、4−3及び4−4より、該ポリグリセリンの添加量を増やしても15打フロー値が増大しないことが分かる。これに対し、実施例6−1〜10−3では、実施例6〜10で得たグラフト重合体の添加量の増加に伴って15打フロー値が増加し、分散性を発現していることが明らかである。
図1
図2
図3
図4
図5