(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0029】
《第1の実施形態》
以下、本発明の第1の実施形態を、図面を参照しつつ説明する。説明にあたっては、便宜上、相互に直交する3軸からなるXYZ座標系を用いる。この座標系では、Z軸が鉛直線と平行である。
【0030】
図1は、本実施形態に係る誘引装置10の斜視図である。この誘引装置10は、害虫を誘引するための装置である。
図1に示されるように、誘引装置10は、長方形の筐体20と、筐体20に取り付けられた長方形板状のプレート31,32を有している。
【0031】
図2は、誘引装置10の展開斜視図である。
図2に示されるように、筐体20は、+X側が開放されたケースである。筐体20の内部には、プレート31,32を照明するためのLEDユニット21が収容されている。
【0032】
図3は、LEDユニット21を示す斜視図である。
図3に示されるように、LEDユニット21は、プリント配線基板22と、プリント配線基板22に実装された複数(60個)のLED(Light Emitting Diode)23を有している。
【0033】
プリント配線基板22は、ガラス繊維に樹脂を含浸させることにより形成された、いわゆるガラエポ基板である。プリント配線基板22は、Z軸方向を長手方向とする長方形に成形されている。このプリント配線基板22には、LED23の他、これらのLED23を発光させるための回路を構成する電子部品が実装されている。
【0034】
LED23は、白色光を+X方向へ射出する発光素子であり、プリント配線基板22の+X側の面に実装されている。本実施形態では、LED23は、Y軸方向を行方向とし、Z軸方向を列方向とする10行6列のマトリクス状に配列されている。
【0035】
図4は、筐体20の斜視図である。筐体20は、例えば樹脂を射出成形することによって形成されたケースである。
図4に示されるように、筐体20は、底板部20aと、底板部20aの外縁に沿って形成された矩形枠状のフレーム部20bの2部分からなる。
【0036】
図2に示されるように、上述したLEDユニット21は、筐体20の内部空間に収容される。この状態のときには、プリント配線基板22は、筐体20の底板部20aとほぼ平行になっている。
【0037】
プレート31は、例えば半透明の樹脂からなり、長手方向をZ軸方向とする長方形板状の部材である。このプレート31は、例えば370nm程度の光に対しての透過性を主として有している。このため、当該プレート31の透過光は、波長が370nm程度の紫外光を相対的に多く含む。
【0038】
プレート32は、例えば半透明の樹脂からなり、長手方向をZ軸方向とする長方形板状の部材である。このプレート32は、例えば520nm程度の光に対しての透過性を主として有している。このため、当該プレート32の透過光は、波長が520nm程度の緑色光を相対的に多く含む。
【0039】
上述した相互に異なる色のプレート31,32の側面は、照明光に対する遮光性を有するシート、或いは塗料等によって被覆されている。そして、
図1に示されるように、プレート31,32それぞれは、Y軸方向に隣接した状態で、筐体20を構成するフレーム部20bに固定されている。
【0040】
上述したように構成された誘引装置10は、不図示の電源ケーブルを介して、例えば商用電源に接続される。そして、商用電源から供給される電力によって、LEDユニット21を構成するLED23が発光すると、プレート31を介して、波長が370nm程度の紫の光が射出され、プレート32を介して、波長が520nm程度の緑の光が射出される。これにより、プレート31とプレート32との境界線上に、プレート31からの光と、プレート32からの光のコントラストによる鉛直方向のエッジが現れる。
【0041】
以上説明したように、本実施形態に係る誘引装置10では、プレート31及びプレート32を透過する光によって、プレート31及びプレート32の境界上に鉛直方向のエッジが形成される。このため、誘引装置10は、波長が300〜600nmの光を相対的に多く射出する水銀灯などの光源を用いる場合に比較して、害虫を効率よく誘引することができる。以下、本実施形態に係る誘引装置10を用いたときの効果を説明する。
【0042】
図5は、害虫がエッジに誘引される事実を検証するために用いられた検証装置100を示す図である。
図5に示されるように、検証装置100は、環状のフレーム101と、フレーム101の下方を塞ぐ底板102から構成されている。
【0043】
フレーム101には、中心角αが60度の弧に沿って、透過部101aが形成されている。この透過部101aは、白色の樹脂からなる。また、フレーム101の透過部101a以外の本体部101bは、黒色又は濃紺色の樹脂からなる。このフレーム101の内側の面には、透過部101aと本体部101bとの境界に、光の明暗によるエッジが現れる。
【0044】
発明者等は、水平に配置された検証装置100の内側の中心点S1に、羽を切断することにより飛行不可能となった複数のチャバネアオカメムシを放し、それぞれのカメムシが、どの方向へ移動したかを観察した。
図6は、カメムシの移動結果を示す図である。
図6に示される円C1の周りに位置する黒丸は、点S1から移動したカメムシが、当該黒丸を通る破線に沿って移動したことを意味している。また、同一方向に黒丸が連続している場合には、連続する黒丸の個数が、当該黒丸に対応する方向に移動したカメムシの数を示している。例えば、円C1の右上に連続する8つの黒丸は、8匹のカメムシが、当該黒丸を通る破線に沿って移動したことを意味する。
【0045】
図6を参照するとわかるように、点S1から移動したカメムシの大多数は、フレーム101の透過部101aと本体部101bの境界、すなわち、フレーム101の透過部101aと本体部101bとによって形成されるエッジに向かって移動している。
【0046】
また、発明者等は、複数の種類の害虫がエッジに誘引される事実を検証した。具体的には、発明者等は、
図7に示されるように、黒く塗りつぶされた背景板Bに、拡散板DP1を配置した。そして、発明者等は、暗室にて、拡散板DP1の背面から白色光を入射させて、拡散板DP1を発光させた。発明者等は、発光する拡散板DP1から所定距離隔てた地点から、3種の害虫を放ち、それぞれの種類の害虫が背景板B及び拡散板DP1に衝突する位置を調査した。3種の害虫は、カメムシ目のツヤアオカメムシ、チョウ目のオオタバコガ、及びコウチュウ目のアオドウガネである。
【0047】
図8は、ツヤアオカメムシの調査結果を示す図である。また、
図9は、オオタバコガの調査結果を示し、
図10は、アオドウガネの調査結果を示す。
図8〜
図10中の黒丸は、害虫の衝突位置を示している。
図8〜
図10からわかるように、いずれの種類の害虫も、背景板Bと拡散板DP1とのエッジの近傍に衝突する傾向がある。したがって、害虫は、分類群に関わらずエッジへ定位するという一般的な性質を有していると推測することができる。
【0048】
このため、プレート31及びプレート32の境界に鉛直方向のエッジが形成される本実施形態に係る誘引装置10は、例えば単色光等によって害虫を誘引する場合に比べて、捕虫手段の中心に害虫を誘導することが可能になるため、害虫を効率よく誘引することができることがわかる。
【0049】
本実施形態に係る誘引装置10では、波長が370nm程度の紫外光を主として透過するプレート31と、波長が520nm程度の緑色光を主として透過するプレート32とによって、エッジが形成される。このため、誘引装置10は、害虫を効率よく誘引することができる。以下、本実施形態に係る誘引装置10を用いたときの効果を説明する。
【0050】
図11は、点S2を中心とする目標物の配置を模式的に示す図である。
図11に示されるオブジェクトT1〜T10は、点S2を囲むように位置している。オブジェクトT1,T2,T4,T5,T6は人工物であり、オブジェクトT3,T7,T8,T9,T10は、樹木などの自然物である。
【0051】
具体的には、オブジェクトT1,T4は、鉄筋コンクリート造りの建造物である。オブジェクトT2は、オブジェクトT1の上に配置された給水塔である。オブジェクトT5,T6は、オブジェクトT4に設置された空調機の室外機である。また、オブジェクトT3,T9,T10は、アメリカフウ(樹木)であり、オブジェクトT7,T8は、メタセコイア(樹木)である。
【0052】
発明者等は、
図11に示される点S2から、複数のチャバネアオカメムシを飛翔させ、それぞれのカメムシが、どの方向へ飛行したかを観察した。
図12は、晴天時のカメムシの飛行結果を示す図である。
図12に示される円C2の周りに位置する黒丸は、点S2から飛翔したカメムシが、当該黒丸を通る破線に沿って飛行したことを意味している。また、同一方向に黒丸が連続している場合には、連続する黒丸の個数が、当該黒丸に対応する方向に飛行したカメムシの数を示している。例えば、円C2の右側(東側)に連続する6つの黒丸は、6匹のカメムシが、当該黒丸を通る破線に沿って、東へ向かって飛行したことを意味する。
【0053】
図12を参照するとわかるように、点S2から飛翔したカメムシの大多数は、自然物を示す特定のオブジェクトT3,T7,T8,T9,T10に向かって飛行している。この結果から、カメムシは、特定のオブジェクトに強く定位することがわかる。特定のオブジェクトへの定位は、天候によって左右される。例えば、曇天下では、特定のオブジェクトへの定位傾向が弱まる結果となる。
【0054】
上記
図12に示される結果から、カメムシは、樹木の葉の色に近い緑色の光に対して、誘引されると考えられる。そこで、発明者等は、対象物の少ない開放空間に、緑色の布による長方形のランドマークLMを設置した。
図13は、点S3とランドマークLMとの位置関係を模式的に示す図である。
図13に示されるように、ランドマークLMは、点S3を基準として、南東の方向に設置されている。
【0055】
図14は、ランドマークLMとして用いられた布の反射スペクトルを示す図である。
図14に示されるように、この布では、入射する自然光のうち、波長が500nm〜550nm程度の光に対する反射率が高くなっている。このため、ランドマークLMは、樹木の葉色と同等の色として視認される。
【0056】
発明者等は、
図13に示される点S3から、複数のカメムシを飛翔させ、それぞれのカメムシがどの方向に飛行したかを観察した。
図13に示される円C3の周りに位置する黒丸は、点S3から飛翔したカメムシが、当該黒丸を通る破線に沿って飛行したことを意味している。また、同一方向に黒丸が連続している場合には、連続する黒丸の個数が、当該黒丸に対応する方向に飛行したカメムシの数を示している。
図13を参照するとわかるように、点S3から飛翔したカメムシの大多数は、ランドマークLMに向かって飛行する。
【0057】
図15は、昆虫の複眼の感度を表す特性曲線を示す図である。なお、図中のλ1の値は、約350nmであり、λ2の値は、約530nmである。一般に昆虫の複眼は、紫外光と緑色光に対する感度が強い。すなわち、
図15の特性曲線は、波長λ1近傍と、波長λ2近傍にピークを有している。このため、カメムシがランドマークLMに向かって飛行する理由は、空からの紫外光と、ランドマークLMからの緑色の反射光とによるエッジに定位するためであるという仮説が成立する。
【0058】
そこで、発明者等は、この仮説を裏付けるための検証を行った。
図16には、点S4を中心とする円に沿って配置された5つのLEDパネルP1〜P5が示されている。LEDパネルP1〜P5それぞれは、例えば
図17に示されるように、正方形の発行面を有している。この発行面の幅D及び縦Dの大きさは、26mmである。
【0059】
LEDパネルP1からは、波長が375nmの照明光(紫外)が射出される。LEDパネルP2からは、波長が450nmの照明光(青)が射出される。LEDパネルP3からは、波長が470nmの照明光(青)が射出される。LEDパネルP4からは、波長が525nmの照明光(緑)が射出される。LEDパネルP5からは、波長が590nmの照明光(黄)が射出される。また、各LEDパネルP1〜P5からの照明光は、点S4に向かって射出される。
【0060】
まず、発明者等は、
図16に示される点S4から、複数のカメムシを飛翔させ、それぞれのカメムシが、どのLEDパネルへ向かって飛行したか観察した。
図18は、5つのLEDパネルP1〜P5すべてを発光させた状態のときの観察結果である。
図19は、4つのLEDパネルP2〜P5を発光させた状態のときの観察結果である。
図20は、3つのLEDパネルP3〜P5を発光させた状態のときの観察結果である。
図21は、2つのLEDパネルP4,P5を発光させた状態のときの観察結果である。なお、図中の誘引率は、該当するLEDパネルに飛来したカメムシの数を、飛翔させたカメムシの総数で除した結果である。
【0061】
図18〜
図21を参照するとわかるように、点S4から飛翔したカメムシは、波長が短い照明光を射出するLEDパネルに優先的に誘引されている。
【0062】
次に、発明者等は、
図22に示されるように、LEDパネルP1とLEDパネルP2とを組み合わせたユニットU1と、LEDパネルP1とLEDパネルP4とを組み合わせたユニットU2とを、点S5の両側に配置した。そして、発明者等は、点S5から複数のカメムシを飛翔させ、カメムシの飛行する方向を観察した。
【0063】
図23に示されるように、ユニットU2に向かって飛行したカメムシの数は、ユニットU1に向かって飛行したカメムシの数の約3倍になった。
【0064】
図18〜
図21に示される観察結果から、カメムシは、単色の光源に対しては、波長が短い光に誘引される傾向があることがわかる。一方、
図23に示される観察結果からは、カメムシは、波長が短い光源同士の組み合わせよりも、特定の波長の光源同士の組み合わせに対してより強く誘引される傾向があることがわかる。そして、光源の組み合わせとしては、昆虫の複眼の感度を示す特性曲線のピークに対応する波長の光を射出する光源の組み合わせに、最も誘引効果があることが推測できる。
【0065】
本実施形態に係る誘引装置10では、波長が370nm程度の紫外光を主として透過するプレート31と、波長が520nm程度の緑色光を主として透過するプレート32とによって、エッジが形成される。つまり、昆虫の複眼の感度を示す特性曲線のピークに対応する波長の光を透過するプレート31,32の組み合わせからエッジが形成される。このため、本実施形態に係る誘引装置10では、高い誘引効果が実現され、誘引装置10は、害虫を効率よく誘引することができる。
【0066】
本実施形態に係る誘引装置10では、プレート31,32によって鉛直線にほぼ平行な垂直エッジが形成される。このため、誘引装置10は、害虫を効率よく誘引することができる。一例として、
図24に示されるように、鉛直線に平行な垂直エッジに誘引されるカメムシの数は、鉛直線に直交する水平エッジに誘引されるカメムシの数の約3倍程度となる。したがって、プレート31及びプレート32の境界に鉛直方向のエッジが形成される本実施形態に係る誘引装置10は、害虫を効率よく誘引することができることがわかる。
【0067】
《第2の実施形態》
次に、本発明の第2の実施形態を、図面を参照しつつ説明する。なお、第1の実施形態と同一又は同等の構成については、同等の符号を用いるとともに、その説明を省略又は簡略する。
【0068】
図25は、本実施形態に係る誘引装置11の斜視図である。本実施形態に係る誘引装置11は、混色光と単色光とによってエッジが形成される点で、上記第1の実施形態に係る誘引装置10と相違している。
図25に示されるように、誘引装置11は、長方形の筐体120と、筐体120に取り付けられた長方形板状のプレート131,132を有している。
【0069】
図26は、筐体120の斜視図である。
図26に示されるように、筐体120は、例えば樹脂を射出成形することによって形成されたケースである。この筐体120は、底板部120aと、底板部120aの外縁に沿って形成された矩形枠状のフレーム部120bの2部分を有している。底板部120aとフレーム部120bによって規定される空間は、厚さ0.2mm程度の薄い内壁120cによって2つの空間141,142に仕切られている。筐体120に形成された2つの空間141,142には、プレート131,132を照明するためのLEDユニット121A,121Bがそれぞれ収容される。
【0070】
図27は、筐体120とともにLEDユニット121A,121Bを示す斜視図である。
図27に示されるように、LEDユニット121Aは、プリント配線基板122と、プリント配線基板122に実装された複数のLED123aを有している。これらのLED123aは、プリント配線基板122に10行3列のマトリクス状に配置されている。そして、それぞれの、LED123aは、波長が520nm程度の緑色光を主として射出する。
【0071】
また、LEDユニット121Bも、同様に、プリント配線基板122と、プリント配線基板122に実装された複数のLED123a,123bを有している。これらのLED123a,123bは、プリント配線基板122に10行3列のマトリクス状に配置されている。LED123aは、波長が520nm程度の緑色光を主として射出し、LED123bは、波長が370nm程度の紫外光を主として射出する。また、LEDユニット121Bでは、LED123aとLED123bとが隣接するように、それぞれのLEDが配置される。
【0072】
図27を参照するとわかるように、上述のように構成されたLEDユニット121Aは、筐体120の空間141に収容され、LEDユニット121Bは、筐体120の空間142に収容される。
【0073】
プレート131,132は、光を拡散する性質を有する長方形の拡散板である。プレート131は、空間141を塞ぐように、筐体120に固定される。また、プレート132は、空間142を塞ぐように筐体120に固定される。
図25に示されるように、筐体20に固定されたプレート131,132は、内壁120cに密着した状態になる。
【0074】
上述のように構成された誘引装置11は、不図示の電源ケーブルを介して、例えば商用電源に接続される。そして、商用電源から供給される電力によって、LEDユニット121A,121Bを構成するLED123a,123bが発光する。これにより、LEDユニット121Aからは、波長が520nm程度の緑色光が射出され、LEDユニット121Bからは、波長が520nm程度の緑色光と、波長が370nm程度の紫外光が射出される。
【0075】
LEDユニット121Aからの緑色光は、プレート131に入射して均等に拡散する。このため、プレート131は、視覚的には緑色に変化する。また、LEDユニット121Bからの緑色光と紫外光は、プレート132に入射して均等に拡散する。このため、プレート132からは、緑色光と紫外光とが混ざり合うことによる混色光が拡散する。そして、プレート132は、視覚的には緑色と紫色とが混ざった色に変化する。これにより、プレート131とプレート132の境界線上に、緑色光と、緑色光と紫外光とが混ざり合った混色光のコントラストによる鉛直方向のエッジが現れる。
【0076】
以上説明したように、本実施形態に係る誘引装置11では、プレート131を透過し拡散する緑色光と、プレート132を透過し拡散する緑色光と紫外光とによる混色光によって、プレート131及びプレート132の境界上に鉛直方向のエッジが形成される。このため、誘引装置11は、波長が300〜600nmの光を相対的に多く射出する水銀灯などの光源を用いる場合に比較して、害虫を効率よく誘引することができる。以下、本実施形態に係る誘引装置11を用いたときの効果を説明する。
【0077】
第1の実施形態に係る誘引装置10のように、緑色光と紫外光などの単色光同士によって形成されるエッジは、害虫を効率よく誘引する効果を発揮する。しかしながら、発明者等は、鋭意研究の結果、緑色光と、緑色光と紫外光との混色光によって形成されるエッジが、単色光同士によって形成されるエッジよりも高い害虫の誘引効果を発揮することを見出した。
【0078】
発明者等は、まず、
図7に示されるように、黒く塗りつぶされた背景板Bに、拡散板DP1を配置した。発明者等は、暗室にて、当該拡散板DP1の背面から緑色光、青色光、紫外光をそれぞれ入射させて拡散板DP1を発光させた。緑色光、青色光、紫外光は、カメムシ等の害虫にとって視覚的な感度が比較的高いと考えられる光である。そして、発明者等は、拡散板DP1から所定距離隔てた地点からカメムシを放ち、3つの色の光のうち、どの色の光にもっとも強くカメムシが誘引されたか調査した。
【0079】
その結果、カメムシは、紫外光によって発光させた拡散板DP1と、黒色の背景板Bとによって形成されるエッジに最も強く誘引されることがわかった。
【0080】
そこで、発明者等は、紫外光と黒色とによって形成されるエッジと、黒色以外の光同士によって形成されるエッジとを比較した。具体的には、発明者等は、まず、
図28に示されるように、背景板Bに、紫外光で発光させた拡散板DP1と、青色光で発光させた拡散板DP2とを配置して、図中の矢印に示されるように、背景板Bと拡散板DP1からなるエッジと、拡散板DP1,DP2からなるエッジを形成した。そして、発明者等は、これらの拡散板DP1,DP2から所定距離隔てたところからカメムシを放った。
【0081】
その結果、
図29のグラフに示されるように、拡散板DP1と背景板Bによって形成されるエッジ(UV−Black)の誘引率よりも、拡散板DP1と拡散板DP2によって形成されるエッジ(UV−BL)の誘引率の方が高くなることがわかった。なお、誘引率は、すべてのエッジの近傍に到達したカメムシの総数で、特定のエッジ近傍に到達したカメムシの数を除したものである。
【0082】
次に、発明者等は、
図30に示されるように、背景板Bに、紫外光で発光させた拡散板DP1と、緑色光で発光させた拡散板DP2とを配置して、図中の矢印に示されるように、背景板Bと拡散板DP1からなるエッジと、拡散板DP1,DP2からなるエッジを形成した。そして、発明者等は、これらの拡散板DP1,DP2から所定距離隔てたところからカメムシを放った。
【0083】
その結果、
図31のグラフに示されるように、拡散板DP1と背景板Bによって形成されるエッジ(UV−Black)の誘引率よりも、拡散板DP1と拡散板DP2によって形成されるエッジ(UV−GR)の誘引率の方が高くなることがわかった。
【0084】
次に、発明者等は、
図32に示されるように、背景板Bに、紫外光で発光させた拡散板DP1と、青色光で発光させた拡散板DP2と、緑色光で発光させた拡散板DP3を配置して、図中の矢印に示されるように、背景板Bと拡散板DP1からなるエッジと、拡散板DP2,DP3からなるエッジを形成した。そして、発明者等は、これらの拡散板DP1〜DP3から所定距離隔てたところからカメムシを放った。
【0085】
その結果、
図33のグラフに示されるように、拡散板DP1と背景板Bによって形成されるエッジ(UV−Black)の誘引率よりも、拡散板DP2と拡散板DP3とによって形成されるエッジ(BL−GR)の誘引率の方が高くなることがわかった。
【0086】
以上の結果から、紫外光と黒色とによって形成されるエッジと、黒色以外の光同士によって形成されるエッジとを比較した場合には、黒色以外の光同士によって形成されるエッジの方が害虫の誘引率が高いことがわかる。
【0087】
そこで、発明者等は、黒以外の光同士によって形成されるエッジのうちから、最も誘引率が高くなるときの色の組み合わせを特定した。具体的には、発明者等は、まず、
図34に示されるように、背景板Bに、青色光で発光させた拡散板DP1と、紫外光で発光させた拡散板DP2と、緑色光で発光させた拡散板DP3を配置して、図中の矢印に示されるように、拡散板DP1,DP2からなるエッジと、拡散板DP2,DP3からなるエッジを形成した。そして、発明者等は、これらの拡散板DP1〜DP3から所定距離隔てたところからカメムシを放った。
【0088】
その結果、
図35のグラフに示されるように、拡散板DP1と拡散板DP2とによって形成されるエッジ(UV−BL)の誘引率よりも、拡散板DP2と拡散板DP3とによって形成されるエッジ(UV−GR)の誘引率の方が高くなることがわかった。
【0089】
次に、発明者等は、
図36に示されるように、背景板Bに、紫外光で発光させた拡散板DP1と、緑色光で発光させた拡散板DP2と、青色光で発光させた拡散板DP3を配置して、図中の矢印に示されるように、拡散板DP1,DP2からなるエッジと、拡散板DP2,DP3からなるエッジを形成した。そして、発明者等は、これらの拡散板DP1〜DP3から所定距離隔てたところからカメムシを放った。
【0090】
その結果、
図37のグラフに示されるように、緑色光によって発光する拡散板DP2と青色光によって発光する拡散板DP3とによって形成されるエッジ(BL−GR)の誘引率よりも、紫外光によって発光する拡散板DP1と緑色光によって発光する拡散板DP2とによって形成されるエッジ(UV−GR)の誘引率の方が高くなることがわかった。
【0091】
次に、発明者等は、
図38に示されるように、背景板Bに、紫外光で発光させた拡散板DP1と、青色光で発光させた拡散板DP2と、緑色光で発光させた拡散板DP3を配置して、図中の矢印に示されるように、拡散板DP1,DP2からなるエッジと、拡散板DP2,DP3からなるエッジを形成した。そして、発明者等は、これらの拡散板DP1〜DP3から所定距離隔てたところからカメムシを放った。
【0092】
その結果、
図39のグラフに示されるように、紫外光によって発光する拡散板DP1と青色光によって発光する拡散板DP2とによって形成されるエッジ(UV−BL)の誘引率よりも、青色光によって発光する拡散板DP2と緑色光によって発光する拡散板DP3とによって形成されるエッジ(BL−GR)の誘引率の方が高くなることがわかった。
【0093】
以上の結果から、青色光と紫外光とによって形成されるエッジ、紫外光と緑色光によって形成されるエッジ、及び緑色光と青色光とによって形成されるエッジを比較した場合には、紫外光と緑色光によって形成されるエッジの誘引率が最も高く、紫外光と青色光とによって形成されるエッジの誘引率が最も低いことがわかる。
【0094】
図40は、紫外光によって発光する拡散板DP1と、青色光によって発光する拡散板DP2と、緑色光によって発光する拡散板DP3と、紫外光によって発光する拡散板DP4を順番に配置した状態を示す図である。そして、図中の黒丸は、これらの拡散板DP1〜DP4に対してカメムシを放ったときに、カメムシが到達した地点を示している。緑色光によって発光する拡散板DP3と紫外光によって発光する拡散板DP4によって形成されるエッジ、すなわち、紫外光と緑色光によって形成されるエッジの誘引率が高ことは、
図40に示される結果からも明らかである。
【0095】
そこで、発明者等は、紫外光と緑色光との混色光と、他の色の光とによるエッジの誘引率について、検証を行った。具体的には、発明者等は、
図41に示されるように、紫外光によって発光する拡散板DP1と、緑色光によって発光する拡散板DP2と、紫外光と緑色光の混色光によって発光する拡散板DP3とを順番に配置した。そして、発明者等は、これらの拡散板DP1〜DP3に対してカメムシを放った。
図41中の黒丸に示されるように、カメムシは、緑色光によって発光する拡散板DP2と混色光によって発光する拡散板DP3によって形成されるエッジに、最も強く誘引された。
【0096】
同様に、発明者等は、
図42に示されるように、紫外光によって発光する拡散板DP1と、緑色光によって発光する拡散板DP2と、紫外光と緑色光の混色光によって発光する拡散板DP3と、紫外光によって発光する拡散板DP4とを順番に配置した。そして、発明者等は、これらの拡散板DP1〜DP4に対してカメムシを放った。
図42中の黒丸に示されるように、カメムシは、緑色光によって発光する拡散板DP2と混色光によって発光する拡散板DP3によって形成されるエッジに、最も強く誘引された。
【0097】
以上の結果から、カメムシ等の害虫は、紫外光と緑色光との混色光と、緑色光とによって形成されるエッジに強く誘引されることがわかる。本実施形態に係る誘引装置11では、プレート131から緑色光が拡散し、プレート132から紫外光と緑色光が拡散する。これによって、緑色光と、紫外光と緑色光との混色光とによるコントラストが形成される。したがって、誘引装置11は、害虫を効果的に誘引することができる。
【0098】
なお、上記実施形態では、紫外光と緑色光との混色光と、緑色光とによるコントラストが形成される場合について説明した。しかしながら、例えば紫外光と緑色光との混色光と、青色光とによるコントラストを形成してもよい。この場合にも、誘引装置11は、害虫を効果的に誘引することができる。
【0099】
この場合には、LEDユニット121Aを構成するLEDとして、青色光を射出するLED等を用いることが考えられる。
【0100】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態によって限定されるものではない。例えば、上記実施形態に係る誘引装置10のプレート31,32、或いは誘引装置11のプレート131,132の上面に、粘着テープ等の捕虫手段を設けることで、害虫を捕虫するための捕虫装置を実現することができる。この場合には、例えば
図1,25に示される誘引装置10,11の+X側の面が、害虫を捕虫するための捕虫面になる。本実施形態では、プレート31とプレート32とによって形成されるコントラスト、或いはプレート131とプレート132とによって形成されるコントラストが、捕虫面の中心に位置するので、効果的に害虫を捕虫することができる。
【0101】
また、誘引装置10,11の周囲に、殺虫手段や捕捉手段を配置することによっても、誘引装置10,11を備える捕虫装置を実現することができる。
【0102】
例えば
図43には、殺虫手段としての電撃格子52を備える捕虫装置41が示されている。
図43に示されるように、捕虫装置41は、誘引装置10と、誘引装置10を収容するケーシング51と、誘引装置10を構成するプレート31,32の前面側(+X側)に支持される電撃格子52を備えている。
【0103】
この捕虫装置41では、誘引装置10に誘引された害虫は、電撃格子52に接触することによって感電し死傷する。そして、ケーシング51に設けられた捕集部51aの内部に落下する。これにより、捕虫装置41によって害虫が捕虫される。
【0104】
また、
図44には、捕捉手段としての貯水部61aを備える捕虫装置42が示されている。
図44に示されるように、捕虫装置42は、誘引装置10と、誘引装置10を収容するケーシング61を有している。また、誘引装置10を構成するプレート31,32の表面には、摩擦係数が比較的小さい虫滑落シート62が貼り付けられている。
【0105】
この捕虫装置42では、誘引装置10に誘引された害虫は、当該誘引装置10のプレート31,32に貼り付けられた虫滑落シート62にとまろうとするが、そのまま虫滑落シート62の表面にそって滑落する。そして、害虫は、ケーシング61に形成された貯水部61aに落下する。貯水部61aに落下した害虫は、当該貯水部61aに貯水された水70に水没するため、外部への脱出がほぼ不可能な状態になる。これにより、捕虫装置42によって害虫が捕虫される。
【0106】
以上、殺虫手段としての電撃格子52を有する捕虫装置41と、捕捉手段としての貯水部61aを備える捕虫装置42について説明したが、捕虫装置は、殺虫手段及び捕捉手段の双方を備えていてもよい。
【0107】
上記第1の実施形態では、プレート31が、例えば370nm程度の光に対しての透過性を主として有しており、プレート32が、例えば520nm程度の光に対しての透過性を主として有していることとした。これに限らず、誘引効果は低くなるが、プレート31とプレート32の境界にエッジが形成されるのであれば、プレート31,32の色が異なってもよい。
【0108】
上記第1の実施形態では、プレート31を370nm程度の光が透過し、プレート32を520nm程度の光が透過する場合について説明した。これに限らず、プレート31の代わりに、自発的に発光して波長が370nm程度の光を射出する部材を用い、プレート32の代わりに、自発的に発光して波長が520nm程度の光を射出する部材を用いてもよい。
【0109】
誘引装置10は、例えば、
図1に示されるように、プレート31,32によって形成されるエッジが、鉛直軸(Z軸)に平行になるような姿勢で用いられることが好ましい。しかしながら、誘引装置10を配置するときの姿勢は、特に限定されるものではなく、例えばプレート31,32が上面に位置した状態で、誘引装置10を、床面等に配置して用いることもできる。
【0110】
上記第1の実施形態では、誘引装置10が光源としてのLEDユニット21を備えている場合について説明した。これに限らず、誘引装置10は、LEDユニット21等の光源を備えていなくてもよい。この場合には、プレート31として、例えば波長が370nm程度の光に対する反射率が高い素材を用い、プレート32として、例えば波長が520nm程度の光に対する反射率が高い素材を用いることが考えられる。
【0111】
上記第2の実施形態では、誘引装置11が光源としてのLEDユニット121A,121Bを備えている場合について説明した。これに限らず、誘引装置11は、LEDユニット121A,121B等の光源を備えていなくてもよい。この場合には、プレート131として、例えば波長が520nm程度の光に対する反射率が高い素材を用い、プレート132として、例えば波長が520nm程度の光と波長が370nm程度の光に対する反射率が高い素材を用いることが考えられる。
【0112】
例えば
図45は、変形例に係る誘引装置12を示す図である。この誘引装置12は、円形の底部を有する容器25と、当該容器25の底面に貼り付けられた、相互に色の異なる半円形のシート33,34とを有している。これによって、容器25の底面には、色の異なる2つの領域が形成され、領域同士の境界には、エッジが形成されている。シート33,34については、一方を例えば370nm程度の光に対する反射率が高いものとし、他方を例えば520nm程度の光に対する反射率が高いものとすることが好ましい。上述の誘引装置12は、容器25に、水或いは殺虫性の液体を満たした状態で用いることができる。
【0113】
上記実施形態では、プレート31を透過する透過光とプレート32を透過する光、或いはプレート131を透過する透過光とプレート132を透過する透過光といったように、2色の光を使ってエッジを形成した。これに限らず、偏光方向が異なる2種類の光を使ってエッジを形成することとしてもよい。
【0114】
例えば、
図46には変形例に係る誘引装置13が示されている。この誘引装置13は、プレート31に代わる偏光板231と、プレート32に代わる偏光板232を有している。
【0115】
偏光板231は、筐体20に収容されたLEDユニットから射出され偏光板231に入射する光を、振動方向が鉛直方向の縦偏光として外部へ射出する。また、偏光板232は、筐体20に収容されたLEDユニットから射出され偏光板232に入射する光を、振動方向が水平方向の横偏光として外部へ射出する。このため、偏光板231と偏光板232の境界に、縦偏光と横偏光とによって形成されるエッジが現れる。これにより、カメムシ等の害虫を効果的に誘引することができる。以下、その理由について説明する。
【0116】
図47は、縦偏光を射出する偏光板VPを示す図である。また、
図48は、横偏光を射出する偏光板HPを示す図である。発明者等は、偏光板VP,HPそれぞれに対して、当該偏光板VP,HPから所定距離隔てたところからカメムシを放った。この場合には、
図47及び
図48の中の黒丸に示されるように、カメムシは、偏光板VP,HPの外縁部に主として誘引された。
【0117】
図49には、水平方向に隣接する偏光板HPと偏光板VPが示されている。偏光板HPからは横偏光が射出され、偏光板VPから縦偏光が射出される。このため、偏光板HPと偏光板VPとの境界には、長手方向を鉛直方向とするエッジが形成される。発明者等は、当該偏光板HP,VPから所定距離隔てたところから、偏光板HP,VPそれぞれに対して、カメムシを放った。この場合には、
図49の中の黒丸に示されるように、カメムシは、偏光板VP,HPの境界に強く誘引された。
【0118】
また、
図50には、鉛直方向に隣接する偏光板VPと偏光板HPが示されている。偏光板VPからは縦偏光が射出され、偏光板HPから横偏光が射出される。このため、偏光板VPと偏光板HPとの境界には、長手方向を水平方向とするエッジが形成される。発明者等は、当該偏光板VP,HPから所定距離隔てたところから、偏光板VP,HPそれぞれに対して、カメムシを放った。この場合には、
図50の中の黒丸に示されるように、カメムシは、偏光板VP,HPの境界に強く誘引された。以上の結果から、カメムシは、縦偏光と横偏光とによって形成されるエッジに強く誘引されることがわかる。
【0119】
本変形例に係る誘引装置13では、偏光板231から射出される縦偏光と、偏光板232から射出される横偏光とによって、偏光板231,232との境界にエッジか形成される。このため、誘引装置13は、カメムシ等の害虫を効果的に誘引することができる。
【0120】
また、本変形例に係る誘引装置13では、光源として用いるLED等の色が限定されない。このため、蛍光灯等の安価な照明装置を光源として用いることができる。これにより、装置の低コスト化を図ることができる。
【0121】
上記実施形態では、光源としてLEDを用いたが、光源は、これに限定されるものではなく、自然光や他の光源を用いてもよい。
【0122】
なお、本発明は、本発明の広義の精神と範囲を逸脱することなく、様々な実施形態及び変形が可能とされるものである。また、上述した実施形態は、本発明を説明するためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。
【0123】
本出願は、2011年9月20日に出願された日本国特許出願2011−205132号及び2012年3月6日に出願された日本国特許出願2012−49842号に基づく。本明細書中に日本国特許出願2011−205132号及び日本国特許出願2012−49842号の明細書、特許請求の範囲、図面全体を参照として取り込むものとする。