(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5773390
(24)【登録日】2015年7月10日
(45)【発行日】2015年9月2日
(54)【発明の名称】衝撃吸収索
(51)【国際特許分類】
F16F 9/19 20060101AFI20150813BHJP
E02B 3/06 20060101ALI20150813BHJP
【FI】
F16F9/19
E02B3/06 302
【請求項の数】6
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-118879(P2012-118879)
(22)【出願日】2012年5月24日
(65)【公開番号】特開2013-245453(P2013-245453A)
(43)【公開日】2013年12月9日
【審査請求日】2014年11月14日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】511019144
【氏名又は名称】株式会社落雷抑制システムズ
(74)【代理人】
【識別番号】100137338
【弁理士】
【氏名又は名称】辻田 朋子
(72)【発明者】
【氏名】松本 敏男
【審査官】
村山 禎恒
(56)【参考文献】
【文献】
特開平09−268802(JP,A)
【文献】
特開2005−315058(JP,A)
【文献】
実開昭55−163299(JP,U)
【文献】
実開平03−121242(JP,U)
【文献】
特開2006−342654(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 9/19
E02B 3/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
海岸線に沿って配置されて防波堤を形成する浮きブロックを、沖側の海底に設置されたアンカーに連結する衝撃吸収索であって、複数の緩衝器を直列に接続して構成され、かつ、これらの複数の緩衝器がそれぞれ異なるエネルギー吸収特性を備えていることを特徴とする衝撃吸収索。
【請求項2】
前記複数の緩衝器のそれぞれが、気密構造を有するシリンダーと、このシリンダー内にその長さ方向に摺動可能に装着され、かつ、このシリンダー内を長さ方向に2分割するピストンと、このピストンと一体に設けられ、前記シリンダーの一端を摺動可能に貫通して外部へ突出されたピストンロッドとを備え、前記ピストンには、このピストンをその摺動方向に貫通するオリフィスが形成され、前記シリンダー内には、前記ピストンの摺動時に前記オリフィスを通過させられることにより、前記ピストンにその摺動方向と逆方向の抗力を発生させる作動流体が充填され、前記複数の緩衝器のそれぞれのオリフィスが異なる開口面積となされて、前記複数の緩衝器が相互に異なるエネルギー吸収特性となされていることを特徴とする請求項1に記載の衝撃吸収索。
【請求項3】
前記作動流体が気体であることを特徴とする請求項2に記載の衝撃吸収索。
【請求項4】
前記作動流体が液体であることを特徴とする請求項2に記載の衝撃吸収索。
【請求項5】
前記各緩衝器のシリンダー内には、これらの緩衝器が非作動状態において、前記ピストンを一方向へ向けて付勢する付勢部材が設けられていることを特徴とする請求項2ないし請求項4の何れかに記載の衝撃吸収索。
【請求項6】
前記各緩衝器のうち、隣り合う緩衝器どうしが鎖又はワイヤの少なくとも一方で連結されていることを特徴とする請求項1ないし請求項5の何れかに記載の衝撃吸収索。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衝撃力が作用する物体と支持構造物との間に設けられて、前記物体に外力が作用した際に、この外力の伝達媒体が有するエネルギーを減少させてこの伝達媒体の挙動を沈静化させ、あるいは、前記物体への衝撃力を緩和してこの物体の健全性を確保するようにして衝撃吸収索に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、たとえば、衝撃力が作用する物体と支持構造物との間に設けられて、前記物体に外力が作用した際に、この外力の伝達媒体が有するエネルギーを減少させてこの伝達媒体の挙動を沈静化させる技術が提案されている(特許文献1)。
【0003】
この技術は、防波堤に適用されて、外力の伝達媒体としての波のエネルギーを減少させることにより、波による侵食等を抑制するようにしたもので、海岸線に沿って設置された支持構造物(堤)の外海側に、衝撃吸収壁を移動可能に設け、これらの支持構造物と衝撃吸収壁との間に緩衝器を設けた構成となっている。
【0004】
そしてこの技術は、波が海岸へ向けて進行した際に、この波によって前記衝撃吸収壁が前記支持構造物側へ押圧移動させられ、これに伴う前記衝撃吸収壁と前記支持構造物との相対移動によって前記緩衝器が作動させられ、この緩衝器の作動時におけるエネルギー吸収作用により前記波のエネルギーを吸収ないしは分散させるようにしている。
【0005】
これによって、前記支持構造物もしくは海岸線の侵食を防止し、あるいは、消波を行なうようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平5−302310号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前述した従来の技術によって、海岸線の侵食等を抑制することが期待できるようになったが、なお、次のような改善すべき問題点が残されている。
【0008】
すなわち、前述した波のエネルギーを吸収ないしは分散させるために、緩衝器を用いているが、その緩衝器のエネルギー吸収量が一定であることから、その効果を有効に発揮できる波の大きさが制限されるといった問題点である。
【0009】
たとえば、平時の波による侵食を防止するために、平時の波のエネルギーに対応して緩衝器の特性を設定した場合、高潮や津波等の大きなエネルギーを有する波が作用した場合には、そのエネルギーの吸収若しくは分散を行うことができず、残余のエネルギーが提や海岸線に到達してしまうことが考えられる。
【0010】
また、高潮や津波等の大きなエネルギーの波を想定して緩衝器の特性を設定した場合にあっては、それよりも小さなエネルギーの波に対して、そのエネルギーを吸収若しくは分散することができず、緩衝機能が得られない。
【0011】
本発明は、このような従来の技術において残されている問題点を解消するためになされたもので、広範囲のエネルギー量に対応可能な衝撃吸収索を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の請求項1に記載の衝撃吸収索は、複数の緩衝器を直列に接続してなり、これらの複数の緩衝器がそれぞれ異なるエネルギー吸収特性を備えていることを特徴としている。
【0013】
このような構成とすることにより、想定されるエネルギー領域を、その最大値を基準にして複数領域に区画し、前記複数の緩衝器のエネルギー吸収特性を、前記区画されたエネルギー領域に対応して設定することにより、広範囲のエネルギー領域に対する緩衝機能を得ることができる。
【0014】
大きなエネルギーが加わる場合、その大きなエネルギー領域に対応して設定された緩衝器が作動する前に、それより小さなエネルギー領域に対応して設定された緩衝器が作動して、前記大きなエネルギーの一部を吸収することにより、最終的に作動する大きなエネルギー領域に対応して設定された緩衝器の負担が軽減される。
【0015】
本発明の請求項2に記載の衝撃吸収索は、請求項1に記載の前記複数の緩衝器のそれぞれが、気密構造を有するシリンダーと、このシリンダー内にその長さ方向に摺動可能に装着され、かつ、このシリンダー内を長さ方向に2分割するピストンと、このピストンと一体に設けられ、前記シリンダーの一端を摺動可能に貫通して外部へ突出されたピストンロッドとを備え、前記ピストンには、このピストンをその摺動方向に貫通するオリフィスが形成され、前記シリンダー内には、前記ピストンの摺動時に前記オリフィスを通過させられることにより、前記ピストンにその摺動方向と逆方向の抗力を発生させる作動流体が充填され、前記複数の緩衝器のそれぞれのオリフィスが異なる開口面積となされて、前記複数の緩衝器が相互に異なるエネルギー吸収特性となされていることを特徴としている。
【0016】
このような構成とすることにより、前記緩衝器に外力が作用すると、この外力が、前記ピストンロッドと前記シリンダーとに作用して、これらを相対移動させる。
【0017】
これによって、前記ピストンロッドに固定されている前記ピストンが、前記シリンダー内を摺動させられ、これに伴い、前記ピストンの一方の面側に封印されている前記作動流体が、前記ピストンに形成されているオリフィスを通って他方の面側に封印されている作動流体中へ移動する。
【0018】
このように前記作動流体が前記オリフィスを通過する際の流路抵抗により、前記緩衝器に作用する外力のエネルギーが吸収されて緩衝作用が得られる。
【0019】
そして、前記オリフィスの開口面積によって前述した流路抵抗が変化することから、複数の緩衝器間において、それぞれのオリフィスの開口面積を異ならせることにより、各緩衝器に異なるエネルギー吸収特性を与えることができる。
【0020】
かつ、前記オリフィスの開口面積の調整は、内装するピストンを取り替えることによって容易に行うことができ、したがって、請求項1における衝撃吸収索を簡便に構成することができる。
【0021】
前記作動流体は、本発明の請求項3に記載のように気体が用いられ、あるいは、請求項4に記載のように液体が用いられる。
【0022】
後者のように液体を作動流体として用いると、前者の気体に比して粘性が高いことから、この作動流体が前記オリフィスを通過する際の流路抵抗が大きくなり、その分、前記緩衝器のエネルギー吸収量が高められる。
【0023】
本発明の請求項5に記載の衝撃吸収索は、請求項2ないし請求項4の何れかに記載の前記各緩衝器のシリンダー内には、これらの緩衝器が非作動状態において、前記ピストンを一方向へ向けて付勢する付勢部材が設けられていることを特徴としている。
【0024】
このような構成とすることにより、外力を受けて前記ピストンと前記シリンダーとの相対移動が行なわれると、前記ピストンの移動によって前記付勢部材が弾性変形させられて、その弾性力が前記ピストンの移動を和らげるように作用する。これによって、前記ピストンが、その移動の終端位置において前記シリンダーに接触する際の衝撃力が緩和される。
【0025】
また、前記付勢部材の弾性力も前記外力のエネルギーを吸収するように作用し、これによって、前記緩衝器のエネルギー吸収量が高められる。
さらに、前述した外力が解放された状態では、前記付勢部材の付勢力によって、前記ピストンがシリンダーに対して非作動状態における初期位置に復帰させられ、待機状態となされる。
【0026】
本発明の請求項6に記載の衝撃吸収索は、前記各緩衝器のうち、隣り合う緩衝器どうしが鎖又はワイヤーの少なくとも一方で連結されていることを特徴としている。この構成により、高強度で、全体として若干伸縮性のある衝撃吸収索を得ることができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、幅広いエネルギー量の外力に対して適切な衝撃吸収作用を発揮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】本発明の一実施形態が適用された防波堤の要部の概略図である。
【
図2】本発明の一実施形態を示す緩衝器の一部を断面した斜視図である。
【
図4】本発明の一実施形態が適用された防波堤の概略平面図である。
【
図5】本発明の一実施形態が適用された防波堤の概略配置図である。
【
図9】本発明の一実施形態のエネルギー吸収特性図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明を、海岸線に沿って設置される防波堤に適用した一実施例に基づき説明する。
【0030】
図1中、符号1は、海岸線に沿って配置されて防波堤を形成する浮きブロックを示し、この浮きブロック1は、その下部が、海底に設置された第1のアンカー2にワイヤー3を介して連結されていることにより、その上部が海面Sから所定高さ突出した状態で係留されている。
【0031】
そして、前記浮きブロック1の側面と、この浮きブロック1の沖側の海底に設置された第2のアンカー4との間に、本実施形態に関わる衝撃吸収索5が設置されている。
【0032】
本実施形態に係わる衝撃吸収索5は、複数の(本実施形態においては3個の)緩衝器6(6a・6b・6c)を直列に接続してなるもので、それぞれの緩衝器6(6a・6b・6c)は、
図2に示すように、気密構造を有するシリンダー7と、このシリンダー7内にその長さ方向に摺動可能に装着され、かつ、このシリンダー7内を長さ方向に2分割して第1の部屋7aと第2の部屋7bとを画成するピストン8と、このピストン8と一体に設けられ、前記シリンダー7の一端を摺動可能に貫通して外部へ突出されたピストンロッド9とを備え、前記ピストン8には、このピストン8をその摺動方向に貫通するオリフィス10(10a・10b・10c)が形成され、前記シリンダー7内には、前記ピストン8の摺動時に前記オリフィス10(10a・10b・10c)を通過させられることにより、前記ピストン8にその摺動方向と逆方向の抗力を発生させる作動流体Zが充填され、前記複数の緩衝器6のそれぞれのオリフィス10(10a・10b・10c)が異なる開口面積となされて、前記複数の緩衝器6(6a・6b・6c)が相互に異なるエネルギー吸収特性となされている。
【0033】
前記オリフィス10(10a・10b・10c)は、例えば、波のエネルギーを津波時、高潮時、平常時との3領域に区画したとすると、前記緩衝器6aを平常時に対応させて大きなオリフィス10aに、前記緩衝器6cを津波時に対応させて小さなオリフィス10cに、また、前記緩衝器6bを高潮時に対応させて中のオリフィス10bに設定される。
【0034】
前記作動流体Zは、気体若しくは液体が用いられ、好ましくは粘性の高い油等の液体が用いられる。
これは、前記作動流体Zが前記オリフィス10(10a・10b・10c)を通過する際の流路抵抗を大きくするためである。
【0035】
また、前記各緩衝器6(6a・6b・6c)のシリンダー7内には、これらの緩衝器6(6a・6b・6c)が非作動状態にある際に、前記ピストン8を押圧して、前記ピストンロッド9を前記シリンダー7内へ収納するように付勢する圧縮バネ等の付勢部材11が設けられている。
【0036】
また、前記ピストンロッド9が貫通させられる前記シリンダー7の端面にはシール部材12が装着されており、このシール部材12によって、前記シリンダー7の密閉がなされている。
【0037】
そして、このような複数の緩衝器6(6a・6b・6c)は、
図3に示すように、鎖もしくはワイヤー等を介して相互に直列に連結されて衝撃吸収索5を構成しているとともに、それぞれの端部が前述した鎖やワイヤー等を介して、前記浮きブロック1と前記第2のアンカー4とに連結される。
【0038】
このような浮きブロック1は、
図4に示すように複数並列的に設置して10Km程度の1ユニットUの防波堤とし、複数のユニットUを、
図5に示すように、津波の発生が予測される地域の海岸線に沿って配置することにより、防波堤としての消波機能に用いられる。
【0039】
そして、波のエネルギーが比較的小さな平常時において前記浮きブロック1に波が作用すると、
図6に示すように、前記衝撃吸収索5の内の、大きなオリフィス10aを備えた緩衝器6aが作動させられ、
図9にXで示すようなエネルギー減衰曲線の内のaで示す領域内でのエネルギー吸収作用が得られる。
【0040】
前記波のエネルギーが減衰させられた時点で、前記緩衝器6aが、付勢部材11の作用によって待機位置に復帰させられる。
この間、他の緩衝器6b・6cは非作動状態に保持される。
【0041】
また、高潮時等の、平常時よりも大きく津波時よりも小さなエネルギーを有する波が生じた場合には、まず、前記平常時に対応して設定されている緩衝器6aが作動させられた後に、
図7に示すように、中の大きさのオリフィス10bを備えた緩衝器6bが作動させられて、前記エネルギー減衰曲線Xの内のbで示す領域内でのエネルギー吸収作用が得られる。
【0042】
前記波のエネルギーが減衰させられた時点で、前記緩衝器6a・6bが、付勢部材11の作用によって待機位置に復帰させられる。
この間、他の緩衝器6cは非作動状態に保持される。
【0043】
さらに、津波時等の大きなエネルギーを有する波が生じた場合には、前述した前記緩衝器6a・6bの作動に続いて、
図8に示すように、小さなオリフィス10cを備えた緩衝器6cが作動させられることにより、前記エネルギー減衰曲線Xの内のcで示す領域内でのエネルギー吸収作用が得られる。
【0044】
このように、本発明によれば、小さなエネルギーから大きなエネルギーに至る広範囲のエネルギー帯に対して有効なエネルギー吸収作用を得ることができる。
【0047】
また、作動流体Zとオリフィス10とによるエネルギー吸収作用に代えて、摩擦によるエネルギー吸収作用を得るようにしてもよい。
この場合には、摩擦発生手段における摩擦係数を調整することにより、複数の緩衝器6のエネルギー吸収特性に差を設けるようにすればよい。
【符号の説明】
【0048】
1 浮きブロック
2 第1のアンカー
3 ワイヤー(鎖)
4 第2のアンカー
5 衝撃吸収索
6 緩衝器
6a 緩衝器
6b 緩衝器
6c 緩衝器
7 シリンダー
7a 第1の部屋
7b 第2の部屋
8 ピストン
9 ピストンロッド
10 オリフィス
10a オリフィス8(大)
10b オリフィス(中)
10c オリフィス(小)
11 付勢部材
12 シール部材
S 海面
Z 作動流体