【実施例】
【0048】
以下、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0049】
なお、本実施例に利用した材料及び実験手法は、下記の通りである。
【0050】
[1] マウスにおける二重鎖切断誘導性のジーンターゲティングへのBlmおよびExo1の関与の解析
【0051】
<プラスミドの作成>
ジーンターゲティングの基質は、下記表1でリストされているプライマーによって増幅した。増幅されたPCR産物は、pCR2.1-TOPOベクター(Invitrogen)を用いてクローン化した。
【0052】
【表1】
【0053】
<細胞培養、DNA形質転換、放射線照射>
細胞は、10
-5Mメルカプトエタノール、10%ウシ胎児血清、1%ニワトリの血清(Sigma, St Louis, MO, USA)を含むRPMI1640培養液を用いて39.5℃で培養した。
【0054】
安定した形質転換体を作成するためのDNA形質転換の方法と遺伝毒性の処理の方法は、文献(Takata, M. et al. 1998. EMBO J 17: 5497-5508)に記載の通りである。
【0055】
放射線として、137Cs(0.02 Gy/s; Gammacell 40, Nordion, Kanata, Ontario, Canada)を用いた。
【0056】
<Ig遺伝子変換の解析>
sIgM陰性のDT40細胞のサブクローンであるCL18から、Ig遺伝子が変換したBLM-/-細胞を確立した(Buerstedde, J.M. et al. 1990. EMBO J 9, 921-927)。IgV
l領域の塩基配列決定により、BLM-/-細胞が、野生型CL18細胞と同じフレームシフト変異を保持していることを確認した。Ig遺伝子変換の割合は、文献(Kawamoto, T. et al. 2005. Mol Cell 20, 793-799)に記載の通り、sIgM発現の獲得を測定することによって評価した。sIgM獲得復帰突然変異体は、サブクローニングから3週間経った細胞のフローサイトメトリー分析でモニターし、抗ヤギ-ニワトリIgM(Bethyl, Montgomery, TX)を結合させたフルオレセインイソチオシアネート(FITC)で染色した。Ig遺伝子変換を強化するため、TSA(和光大阪、濃度:1.25ng/ml)を
図3のsIgM陽性サブクローンの混合物に添加した。各々の解析において、sIgM陽性細胞の存在量は、FITC蛍光がsIgM陰性細胞のFITC蛍光ピークよりも、少なくとも8倍以下に低下した生細胞のパーセンテージとして決定した。
【0057】
<IgV
λヌクレオチド配列の解析>
DNAは、TSA処理後、4週間培養したサブクローンから抽出した。PCRで増幅したVセグメントのフラグメントは、プラスミドを用いてクローン化し、塩基配列解析を行った。再編成されたV
λは、文献(Sale, J.E. et al. 2001. Nature 412, 921-926)に記載の通り、Pyrobest DNA ポリメラーゼ(Takara Bio)とプライマー「5'-CAGGAGCTCGCGGGGCCGTCACTGATTGCCG-3'(配列番号:21)と5'-GCGCAAGCTTCCCCAGCCTGCCGCCAAGTCCAAG-3'(配列番号:22)」を用いて、「94℃で30秒を30サイクル、60℃で1分、72℃で1分」の反応条件にて、PCRで増幅した。PCR産物は、TOPO pCR2.1クローニングベクター(Invitrogen)でクローン化し、M13フォワードプライマーとリバースプライマーを用いて、ABI PRISM 3100 sequencer(Applied Biosystems)によって塩基配列決定した。GENETYX-MAC(Software Development, Tokyo, Japan)を使用した塩基配列の整列では、それぞれのクローンのパラレルな塩基配列の変化を識別することができた。鋳型なしでのヌクレオチド置換と遺伝子変換との識別は、文献(Sale, J.E. et al. 2001. Nature 412, 921-926)記載の方法で行った。
【0058】
<I-SceIで誘導したジーンターゲティング>
10
7個の細胞を、0.1mlのNucleofector Solution T(Amaxa biosystems)に懸濁し、Amaxa(Amaxa biosystems)のプログラムB-23を用いてエレクトロポレーションした。2gのターゲティングDNAフラグメントおよび発現ベクター(Gd-BLM-GFP、EXO1およびヒトBLM)を、ヌクレアーゼ発現ベクターと共に、形質転換した。pBluescript I II KS+を陰性対照として使用した。ターゲティングDNAフラグメントは、Mneo1〜Mneo4基質プラスミドから、Pyrobest DNA polymerase(Takara Bio)とプライマー「5'-GGATCGGCCATTGAACAAGATGGATTGCAC-3'(配列番号:23)と5'-GGAAACAGCTATGACCATGATTACGCCAAG-3'(配列番号:24)」を用いて、「94℃で30秒を30サイクル、60℃で30秒、72℃で2分」の反応条件にて、PCRにより増幅した。エレクトロポレーションの24時間後、FACSによって生細胞数を計数し、G418(2.0mg/mL)を添加または無添加の96穴トレイへ移した。細胞は7〜10日培養した後に、下記に示す式で相同組み換え頻度を計算した。染色体の異常は、文献(Fujimori, A. et al. 2001. EMBO J 20, 5513-20)に記載の通り、計測した。
【0059】
「相同組み換え頻度(コロニー/細胞)」
= G418耐性のコロニー数 /
(形質移入された細胞のG418非存在下でのプレーティング効率×エレクトロポレーション後にFACSで計測した生細胞数)
【0060】
[2] イネにおける二重鎖切断誘導性のジーンターゲティングへのExo1の関与の解析
<プラスミドの作成>
ジーンターゲティングに用いたアクセプターサイト構築物およびジーンターゲティング構築物を構成する遺伝子断片は、下記表2でリストされているプライマーによって増幅した。
【0061】
【表2】
【0062】
増幅されたPCR産物は、pDONR201、pDONR221(P1-P4)、pDONR221(P4r-P3r)及びpDONR221(P3-P2)ベクター(Invitrogen)を用いてクローン化した。クローン化したDNA断片は、バイナリーベクターpPZP201(文献_Hajdukiewicz, P. et al. 1994. Plant Mol Biol, 25: 989-994)に組み込み、各構築物を作製した。
【0063】
<イネカルス培養、DNA形質転換>
安定した形質転換体を作成するためのイネカルス培養とアグロバクテリウム法によるDNA形質転換の方法は、文献(Toki, S. et al.2007. Plant J 17: 5497-5508)に記載の通りである。
【0064】
<I-SceIで誘導したジーンターゲティング>
イネ種子から誘導したカルス塊を用いてアグロバクテリウム法により行った。遺伝子導入はジーターゲティング構築物を保持するアグロバクテリウムおよびI-SceI発現構築物(あるいはI-SceI+Exo1発現構築物)を保持するアグロバクテリウムの2種類のアグロバクテリウムをイネカルスに共感染させることにより行った。3日間のアグロバクテリウム共感染後、アグロバクテリウムの除菌処理後に形質転換処理カルスを10mg/LのブラストサイジンS(和光純薬)を含むイネカルス誘導培地上に置床し、ブラストサイジンS耐性を示し、かつ、GFPの緑色蛍光を示す個体をジーンターゲティング個体として選抜した。選抜開始から2〜3週間後に、PCR解析(
図8)によって、得られたカルス系統についてジーンターゲティングが成立していることを確認し、下記に示す式で相同組み換え頻度を計算した。
【0065】
「相同組み換え頻度」
= ブラストサイジンS耐性及びGFP蛍光シグナルを発するコロニー数 /
(形質転換に使用したカルス塊数)
【0066】
[実施例1] マウスにおける二重鎖切断誘導性のジーンターゲティングへのBlmおよびExo1の関与の解析
【0067】
(1) BLM-/-細胞におけるIg遺伝子変換の解析
合成依存的な鎖アニールにおけるBlmの役割を調査するために、まず、Ig遺伝子変換の動態を測定した。野生型およびBLM-/-細胞(文献[Nakahara,M. et al. 2009. PLoS Genet.5(1):e1000356, Kawamoto, T. et al. 2005. Mol Cell 20, 793-799、Buerstedde, J.M. et al. 1990. Embo J 9, 921-927]において報告されたようにIgVセグメントにフレームシフト変異を持つ)から派生したサブクローンにおいて、sIgM発現の獲得を測定した。フレームシフト変異は、pseudo-VセグメントからIgVへの遺伝子変換によって除去されるため、sIgM獲得のレベルは、遺伝子変換の頻度を反映する(
図1A)。本発明者は、限界まで希釈した野生型およびBLM-/-株から誘導されるマルチプルサブクローンを培養した。その結果、驚くべきことに、3週間のクローン培養期間を通じて、BLM-/-細胞のわずか0.6%程度がsIgMの獲得を示したのに対し、野生型クローンでは4%程度のsIgM陽性細胞を示した(
図2A)。
【0068】
BLM-/-細胞においてsIgMの獲得は稀であったため、この稀な遺伝子変換現象をより効率的に検出するために、本発明者は、ヒストンデアセチラーゼ阻害剤であるTSAの存在下において、sIgMの獲得を解析した。TSAは、DT40細胞において、Ig遺伝子変換の頻度を増加させることが報告されている(Seo, H. et al. 2005. Nat Biotechnol 23, 731-735)。本発明者は、98%以上の細胞がsIgMを発現しない細胞集団を培養し、sIgM獲得を2週間モニターした。その結果、野生型細胞の10%がsIgM発現を獲得したのに対し、BLM-/-細胞のうちの0.92%のみがsIgM陽性に変換した(
図2B)。このことから、Blmの非存在下では、Ig遺伝子の変換が損なわれることが推測された。この結論はまた、野生型およびBLM-/-クローンに由来する、それぞれ独立した22と24のサブクローンのsIgM獲得のゆらぎ解析によっても支持される(
図2C)。これらの結果は、IgV遺伝子座における効率的な遺伝子変換において、Blmが中心的役割を担うことを示す。
【0069】
(2) Ig遺伝子変換におけるドナー選択プロセスへのBlmの関与の解析
Blm欠損細胞における、Ig遺伝子変換生産物を解析するため、次に、IgVセグメントのヌクレオチド配列を決定した。この目的のため、本発明者はTSAの存在下で細胞を4週間培養し、PCRでIgVセグメントを増幅させてヌクレオチド配列を決定した。その結果、野生型の細胞内において、遺伝子変換区域は、分析した44のIgV配列のうちの37(84%)から検出された。これに対し、BLM-/-細胞からの47のIgV配列の分析では、7の遺伝子変換(15%)しか検出できなかった(
図2D)。BLM-/-細胞において、異常な遺伝子変換現象が観察されなかったことは、相同組み換えの正確さがBlmの欠損によって失われないことを示す。これらの結果は、Blmが、DT40細胞におけるIg遺伝子変換の動態を増加させ得ることを示す。
【0070】
BLM-/-クローンにおける遺伝子変換現象の前後関係を解析するため、本発明者はsIgM発現を獲得したBLM-/-細胞におけるIgV遺伝子の配列の解析を行った。
【0071】
本発明者は、TSAの存在下で4週間増殖させた後のBLM-/-細胞からsIgM陽性細胞を選別し、46セグメントのヌクレオチド配列を決定した。その結果、野生型細胞は、ドナーとして様々なpseudo-V
λセグメントを使用していた(
図2D)。対照的に、BLM-/-細胞はドナーとして制限された数のpseudo-Vセグメントをのみを使用するようであった。実際、解析された92の遺伝子変換現象のうち46と45は、それぞれpseudo-8とpseudo-12セグメント由来の遺伝子変換区域を含んでおり、1つの遺伝子変換(1.1%)だけが他のpseudo-Vセグメントと関連していた(
図2D)。注目すべきことに、pseudo-V8とpseudo-V12セグメントのヌクレオチド配列は、野生型細胞にのみ使用された他のセグメントと比較して、再編成したV
λセグメントとより高い相同性を有している。以上から、Blmが、特に、分岐したドナーセグメントとの効率的な遺伝子変換に必要である可能性が示唆される。
【0072】
(3) 姉妹染色分体の組み換え修復へのBlmの関与の解析
BLM-/-細胞において、同一の配列間での相同組み換えの頻度を調査するため、本発明者は、G2期における電離放射線(IR)照射に続いて生じる、細胞における染色体の切断を計測した。この二重鎖切断は、DT40細胞では、非相同的末端結合(Non-homologous end joining)による修復よりも、無傷なもう一方の姉妹染色分体を利用した、損傷をうけた姉妹染色分体の相同組み換えによって優先的に修復される(Takata, M. et al. 1998. Embo J 17, 5497-508)。IR照射の後、S期ではなくG2期の細胞が3時間以内でM期に移行すると考えられるため、IR照射の3時間後に有糸分裂細胞の中で染色体切断を分析することによって、相同組み換えによる二重鎖切断修復を選択的に評価することができる(Sonoda, E. et al. 2003. EMBO J 22, 3188-3197)。その結果、従前の報告(Imamura,O. et al. 2002. Oncogene 21: 954-963、Kohzaki,M. et al. 2007 Mol. Cell Biol. 27(8): 2812-2820、Otsuki, M. et al. 2007. J Cell Biol 179, 53-63)と同様に、BLM-/-細胞は、自然発生的に生じる染色体切断のレベルを増加することが示された(
図3A)。
【0073】
また、本発明者は、IR照射の三時間後の染色体の切断から自然発生的な染色体切断の数を引き算することによって、2Gy-rayの照射によって誘導された染色体切断の数を計測した(
図3A)。算出したIR誘導性の切断は、野生型細胞と比較してBLM-/-細胞において僅かに増加していた(1.5倍)(
図3B)。しかしながら、この観察結果は、RAD54-/-細胞における劇的な増加(11倍)(Takata, M. et al. 1998. EMBO J 17, 5497-5508)とは、著しく対照的であった。以上から、姉妹染色分体の組み換え修復をもう一方の姉妹染色分体を用いて行う際は、Blmは、マイナーな役割しか担わないと考えられる。Ig遺伝子変換におけるBlmの重要な役割を考えると、BLM-/-細胞における効率的な姉妹染色分体の相同組み換えは、Blmが分岐した配列間で相同組み換えを促進するが、同一の配列間では促進しないことを示唆している。
【0074】
(4) ヘテロガスな配列を有するDNAフラグメントの二重鎖切断誘導性のジーンターゲングへのBlmの関与の解析
分岐した配列間の相同組み換えへのBlmの関与を調査するために、二重鎖切断誘導によるジーンターゲティング解析を行った(
図1B)。ターゲティングDNAフラグメント(ドナー)において、S2neo(ゲノム内のレシピエント)の二重鎖切断部位に対応する配列の近傍に異なった数の配列分岐がある場合の、二重鎖切断誘導性のジーンターゲティングの効率を調査した(
図4A)(Kikuchi, K. et al. 2005. Mol Cell Biol 25, 6948-6955)。
【0075】
まず、卵アルブミン遺伝子座にS2neo構築物を保有するBLM-/-細胞を作製した。I-SceI制限酵素の一過性の形質転換により、S2neo遺伝子のオープンリーディングフレーム(ORF)に存在する切断部位が切断される。この切断は、S2neo遺伝子内への、同時導入したドナーDNAフラグメントの標的組込みを刺激して、この遺伝子(
図4Bの配列に下線を引いた)のORFに存在する終止コドンを除去する。これにより無損傷のネオマイシン耐性遺伝子が再構成される。本発明者は、S2neoのI-SceI部位からの分岐が最も少ない配列を持つMneo1と共に、様々な数の異種配列を有する一連のジーンターゲティングのドナーフラグメントを調製した(
図4BのMneo1〜Mneo4)。
【0076】
個々のターゲティングドナーフラグメントをI-SceI発現ベクターと共に、S2neoを保有するBLM-/-クローンに形質転換した。ドナーフラグメントの中の異種配列の挿入が、再構成されたネオマイシン耐性遺伝子内のアミノ酸の欠失または付加を生じるが、本発明者は、結果として生じる修飾されたネオマシン耐性酵素が機能的であることを確認した(Kikuchi, K. et al. 2005. Mol Cell Biol 25, 6948-6955)。次いで、本発明者は、ネオマイシン耐性コロニーの数を計数することによってジーンターゲティングの頻度を測定した。その結果、BLM-/-細胞でのMneo1フラグメントが引き起こしたジーンターゲティングの頻度は、BLMトランスジーンの一時的な発現によって相補される対照細胞と比較して、約10倍少なかった(
図4C)。注目すべきことに、最も分岐したドナー構築物であるMneo4は、対照細胞と比較して、BLM-/-細胞において起こすジーンターゲティングの頻度が約100倍少なかった。さらに、本発明者は、対照細胞と比較したBLM-/-細胞のジーンターゲティング頻度の割合を算出した。その結果、
図4Dに示すように、ドナーフラグメントにおけるより多数の異種配列の存在下において、BLM-/-細胞は、相補された対照細胞と比較して、ジーンターゲティング効率のより顕著な減少を示した(
図4D)。これらの結果は、Ig遺伝子変換における結果と共に、Blmが、分岐した配列間の相同組み換えを促進するために必要なことを強く示唆する。
【0077】
(5) 分岐した配列間の相同組み換えにおけるBlmとExo1の関係の解析
分岐した配列間の相同組み換えにおけるBlmとExo1との間の可能な協調を検討するために、本発明者は、卵アルブミン遺伝子座にS2neo構築物を有する野生型細胞において、BlmとExo1とを同時に過剰発現させ、Mneo3をドナー配列として用いて、ジーンターゲティング効率を測定した。その結果、驚くべきことに、ジーンターゲティング効率は、BlmかExo1のいづれか一方の過剰発現だけで劇的に増加した(
図5A)。さらに、ジーンターゲティング効率は、BlmとExo1の同時発現でも、いずれかを発現する場合より僅かに増加するだけであった(
図5A)。これらの結果は、BlmとExo1が部分的に重なり合う役割を有する可能性を示唆する。
【0078】
(6) 二重鎖切断により誘導される分岐した配列間のジーンターゲティングへのBlmの作用における、ATPアーゼ活性依存性の解析
本発明者は、次に、分岐した配列間の相同組み換えに、BlmのATPアーゼ活性が必要かどうかを調査した。卵アルブミン遺伝子座にS2neo構築物を有する野生型細胞において、Blm K695A変異体(ATPアーゼが失活している)を過剰発現させ、ドナー配列としてMneo3を用いて、ジーンターゲティングの効率を計測した。その結果、野生型のヒトBlmを発現させたときに、ジーンターゲティング効率は劇的に増加した(
図5B)。さらに、Blm K695A変異の発現もまた、野生型のBlmと同様に、ジーンターゲティング効率を向上させた(
図5B)。Bugreevらによる生化学データと共に、これらの結果は、BlmがATPアーゼ活性非依存性の機構を通じて、分岐した配列間の相同組み換えを促進することを示す。
【0079】
[実施例2] イネにおける二重鎖切断誘導性のジーンターゲティングへのExo1の関与の解析
【0080】
高等植物であるイネにおいて、分岐した配列間の相同組み換えへのExo1の関与を調査するために、二重鎖切断誘導によるジーンターゲティング解析を行った(
図7)。
【0081】
まず、イネゲノム中に切断酵素I-SceIの切断認識配列を組込んだ不活性型gfbsd2遺伝子構築物を導入したイネ系統を作出した(
図7)。このイネ系統では、不活性型gfbsd2遺伝子断片中にI-SceI切断認識配列が挿入されることにより、gfbsd2タンパク質の読み枠がずれることに加えて、終止コドンが生じている。このため、このイネ系統は、正常なタンパク質が発現できず、gfbsd2タンパク質は不活性型である。
【0082】
I-SceI制限酵素のイネ細胞内における発現により、不活性型gfbsd2遺伝子中に存在する切断部位が切断される。この切断により、同時に導入したジーンターゲティング構築物の、不活性型gfbsd2遺伝子内への標的組込みが刺激され、この遺伝子のORFに存在する終止コドンが除去される。これにより活性型gfbsd2遺伝子が再構成される。
【0083】
不活性型gfbsd2遺伝子の5’側および3’側には、それぞれイネグリセロール3-リン酸デヒドロゲナーゼ遺伝子プロモーター領域(2.5kb)およびターミネーター領域があらかじめ連結されているため、相同組換えによる活性型gfbsd2遺伝子の再構成の結果、ブラストサイジンS耐性およびGFPタンパク質の緑色蛍光シグナルにより、ジーンターゲティング個体の選抜が可能となる。
【0084】
本発明者らは、不活性型gfbsd2遺伝子をジーンターゲティングのアクセプターサイトとして保持するイネ細胞に対して、ジーンターゲティング構築物と共にI-SceI発現カセット構築物を用いて遺伝子導入を行った。その結果、ジーンターゲティング頻度が、I-SceI制限酵素による二重鎖切断誘発を用いない場合と比較して、約30倍上昇することが判明した(
図9)
【0085】
さらにI-SceI発現カセット構築物及びExo1発現カセット構築物をイネ細胞に同時に導入した結果、劇的なジーンターゲティング頻度の上昇が認められた。この上昇は、I-SceI制限酵素による二重鎖切断誘発を行わない条件におけるジーンターゲティング頻度の約158倍であり、I-SceIのみ発現させた条件のジーンターゲティング頻度の約5倍であった(
図9)。
【0086】
この結果は、Exo1の過剰発現によるジーンターゲティング効率の劇的な増加が、ニワトリDT40細胞にとどまらず、高等動植物に普遍的な現象である可能性を示唆する。